[文書名] 2030アジェンダの履行に関する自発的国家レビュー2021 ~ポスト・コロナ時代のSDGs達成へ向けて~
1.巻頭メッセージ
新型コロナウイルスの感染拡大により、人間の安全保障が脅かされており、持続可能な開発目標(SDGS)の達成に向けた取組を一層加速させることが求められています。2030年までに、このSDGSの達成を実現するためには、世界が団結して取り組むとともに、各国が、前例にとらわれない戦略を立てて、取組を拡大・加速していかなくてはなりません。多国間主義アプローチを重視する日本は、自らが率先して、こうした国際社会の努力をリードしていく決意です。
私はこれまで、人間の安全保障の理念に立脚し、「誰の健康も取り残さない」という考えの下、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを推進すると共に、グリーン社会の実現やデジタル改革に向けた取組などを進めてきました。ポストコロナ時代におけるSDGSの達成に向けては、あらゆる分野において革新的なイノベーションを活用し、様々な政策を総動員し、未来を先取りする社会変革に取り組まなければなりません。
特に、気候変動問題は、人類全体で解決を目指すべき待ったなしの課題です。そのため、気候変動への対応が、日本、そして、世界経済を長期にわたり力強く成長させる原動力になるとの考えの下、日本は、2030年度において、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、更に、50%の高みに向けた挑戦を続け、2050年には、カーボンニュートラルの実現を目指します。
日本は、新型コロナからの「より良い回復」を遂げるため、この自発的国家レビュー(VNR)にとりまとめたビジョンや取組、現状を踏まえ、あらゆる国・地域、組織・団体、市民社会、そして個人との協力を深めながら、SDGS達成の実現に向けた取組を加速してまいります。
内閣総理大臣
SDGS推進本部長
菅義偉
2.要約
「行動の10年」の宣言を踏まえ、国際社会がSDGs達成に向けた取組を加速することを再認識した矢先、新型コロナウイルス感染症の拡大が起き、世界中で人々の命・生活・尊厳が脅かされ、特に脆弱な状況にある人々が大きな打撃を受けた。SDGs達成に向けた取組も大きな影響を受けており、まさに人間の安全保障に対する危機が生じている。このような中、新たな時代を見据え、未来を先取りする社会変革に取り組む上で、SDGsは重要な羅針盤となる。そのため、今回の自発的国家レビュー(VNR)では、新型コロナウイルス感染症の拡大を越えて、「よりよい回復」に向けて取り組むため、日本がどのようにSDGs推進に取り組んできたかを振り返り、SDGs達成に向けた進捗を確認した。
SDGs達成には、あらゆるステークホルダーが連携して取組を進めることが不可欠である。本VNRでは、SDGs推進に向けた国内の体制を振り返る中で、内閣総理大臣を本部長とするSDGs推進本部の下、SDGsに取り組む先進企業や団体等を表彰する「ジャパンSDGsアワード」のような枠組みを通じて、様々なステークホルダー間の連携が広がり、国内におけるSDGsの認知度向上や取組の進展につながっていったことを確認した。
特に、地方自治体においては、2018年から、SDGs達成に向けて優れた取組を提案する自治体を「SDGs未来都市」に選定し、先導的なモデル事例を国内に普及展開してきたほか、「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」や「地方創生SDGs金融」等によってSDGs推進に向けた機運を高め、一人ひとりがSDGsを自分事として取り組むように促した結果、少子高齢化や人口減少等、地域課題解決をSDGsの理念を通じて推進する動きが浸透してきている。前回VNRを提出した2017年にはSDGsに取り組む地方公共団体の割合が1%だったが、2020年には39.7%となっており、政府としては、2024年度末までにこの割合を60%にすべく取組を進めている。そのため、本VNRでは、自発的ローカルレビュー(VLR)を行った4つの都市を始め、国内のモデル都市として先導的な事業に取り組んだ地方自治体の取組例を記載した。
政府はSDGs実施指針において、日本として特に注力すべきものを8つの優先課題として定めており、本VNRでは、各優先課題について国内実施と国際協力の両面で進めた主な取組を記載するとともに、そのような取組を通じて17の目標においてどのような進捗が得られたのかを、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響も踏まえつつ記載した。
SDGs達成には幅広い関係者の取組が必要なところ、本VNRの作成に当たっては、政府内で議論を行うだけではなく、様々な分野の代表者から構成される円卓会議や市民社会、これからの社会をリードするユース世代等との意見交換等を行い、パブリックコメントを行うことで、幅広い市民の声を取り入れるよう努めた。また、取組の評価に当たっては、政府以外の関係者から見た進捗評価も掲載することが望ましいと考え、円卓会議の民間構成員からの評価も得た。
本VNRの作成を通じて、これまでのSDGs推進体制や主な取組を振り返り、今後SDGs推進に向けてどのように取り組むかを考える機会となったところ、有識者や市民の声を踏まえて、本VNRの最後に、今後日本がSDGs達成に向けてどのように取組を進めていくかを記載した。
日本は、引き続き国際社会と連携し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成を含めたグローバル・ヘルスへの対応に取り組むとともに、SDGsが達成された「誰一人取り残さない」社会の実現に向けた取組を進めていく。
3.報告書作成方法
本年、日本は2017年7月の持続可能な開発のための国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)に提出したVNR以来、4年ぶり2回目のVNRを作成することとした。
2017年の報告書では、2015年のSDGs採択以後、日本がSDGs推進に向けてどのような体制を構築し、取組を行っているかについて記載した。その後、世界規模で、政府、地方自治体、民間企業、市民社会等の様々なステークホルダーがSDGs達成に向けた行動を起こし、国内外でSDGsの認知向上やSDGs達成に向けた取組拡大がみられる。
その一方で、幾つかの課題への対応に遅れが見られており、2019年9月に開催された「SDGサミット2019」で採択された「SDGサミット政治宣言」では、「極度の貧困、子供の死亡率、電気・水へのアクセス等で一定の進展があったものの、飢餓、ジェンダー、格差、生物多様性、環境破壊、海洋プラスチックごみ、気候変動、災害リスクへの対応に遅れが見られる」との分析が示され、グテーレス国連事務総長は、2030年までをSDGs達成に向けた取組を拡大・加速するための「行動の10年」とし、国際社会に強く行動を呼びかけた。
しかし、「行動の10年」の宣言により世界がSDGs達成に向けて再度ギアを入れ直す必要性を再認識した矢先、世界は新型コロナウイルス感染症の拡大という未曽有の危機に見舞われることになった。世界中で人々の命・生活・尊厳が脅かされ、特に脆弱な状況にある人々が大きな打撃を受ける形となり、まさに人間の安全保障に対する危機に直面している。こうした状況の中にあって、SDGsの進捗も大きな影響を受けている。
世界が今、大きな変化に直面する中で、新たな時代を見据え、未来を先取りする社会変革に取り組むことが不可欠である。日本としても、国全体で危機感を共有し、国連や国際社会において呼びかけられているように、新型コロナウイルス感染症の拡大を越えて、「よりよい回復」に向けて取り組む必要がある。目標とする2030年まで10年を切った中、これまで日本がどのようにSDGs推進に取り組んできたかを振り返り、今後の取組を加速化していくことが重要と考え、本VNRを作成することとした。
SDGs達成には幅広い関係者の取組が必要なところ、本VNRの作成に当たっては、内閣総理大臣を本部長とするSDGs推進本部の下、関係省庁の枠を超えて議論を行うだけではなく、様々な分野の代表者から構成される円卓会議や市民社会、これからの社会をリードするユース世代等との意見交換等を行い、その声を取り入れるようにした。また、報告書をパブリックコメントにかけることで、幅広い市民の声を取り入れることとした。
取組の評価に当たっては、政府の自己評価だけではなく、政府以外の関係者から見た進捗評価も掲載することが望ましいと考え、円卓会議の民間構成員を中心に政府の取組を評価してもらうこととした。
2017年に提出したVNRを基としつつ、2015年のSDGs採択以降、今まで日本が進めてきた幅広い取組を振り返り、特に国内外のSDGs推進に影響を与えた取組についてはコラムの形で取り上げることとした。特に、日本では多くの地方自治体が持続可能なまちづくりや地域活性化に向けて取組を行う上でSDGsを取り入れており、このような日本各地に広がる幅広いSDGsの取組を紹介するよう心がけた。また、課題や反省点、今後留意すべき点を取り上げ、今後のSDGs推進に向けた進め方についても検討を行った。
4.SDGs達成に向けたビジョン
(1)なぜ日本がSDGs達成に向けて取り組むのか
日本は、第二次世界大戦後、着実な経済成長を遂げ、高度に発展した社会を築き上げてきた。しかし近年、少子高齢化の進行、働き方や家族・地域社会の在り方の変容など国民の生活を巡る状況は大きく変化してきた。
1990年に12.1%であった日本の高齢化率は2019年までの間に16.3ポイント上昇して28.4%に達した。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2017年推計)」によれば、2040年の高齢化率(推計)は35.3%と見込まれており、2040年には働き手の中心を担う20~64歳の人口が全体のちょうど半分になるまでに減少すると推計されている。このような中、新たな状況に対応して社会の在り方を考えていく必要がある。
特に地方においては、少子高齢化に歯止めをかけ、地域の人口減少と地域経済の縮小を克服することが急務であり、そのためには、地方が将来にわたって成長力を確保することが不可欠である。人々が将来的に安心して暮らせるような、持続可能なまちづくりと地域活性化のためには、経済成長や社会課題の解決に加えて、地球環境にも十分に考慮する必要がある。気候変動、資源循環、生物多様性などの問題は、年々深刻化しており、将来の世代が豊かに生きていける社会を実現するためには、従来型の大量生産・大量消費・大量廃棄の社会システムを見直し、経済・社会・環境が統合的に発展する社会システムへ変革していくことが不可欠である。そのため、経済・社会・環境の観点を包括的に取り入れたSDGsは、日本が持続可能な形で発展する上で重要な指針となると考えられる。
また、グローバル化が進み、人、物、資本、情報等が大量かつ短時間で国境を越えて移動することが可能となり、日本の経済活動・成長は国際経済活動と深く関わるようになった一方、新型コロナウイルス感染症の拡大で明らかになったように、貧困、格差の拡大、ジェンダーに基づく課題、感染症を含む国際保健課題、気候変動や生物多様性の損失、その他の環境問題、食料安全保障、更には内戦、災害等による人道上の危機といった一国のみでは対応できない地球規模の課題が、国境を越えて個人の生存と尊厳を脅かすようになっている。今後、更なる地球規模の課題が、国際社会の平和と安定そして日本の経済成長や社会課題にも波及して深刻な影響を及ぼす可能性がある一方、逆に2030年までに全てのSDGsを実現することができれば、日本を含む世界の人々の生活は大いに改善され、我々はより良い世界へと進むことができる。こうした観点から、日本は国際社会の責任ある一員として、人間の安全保障の理念の下、国際社会と連携して、SDGs達成に向けて取り組む必要がある。
(2)新型コロナウイルス感染症の拡大からの「よりよい回復」のためのSDGs
世界は今、歴史的な危機に直面している。新型コロナウイルス感染症の拡大は、人々の生命や生活のみならず、経済、社会、国際政治経済秩序、更には人々の行動・意識・価値観にまで多方面に影響を及ぼしつつある。また、世界各地で、感染症拡大に伴う混乱や不安が広がる中で、各社会レベル(コミュニティ、地域、国家、国際社会)で分断が見られている。この影響は広範で長期にわたると考えられ、我々は、新型コロナウイルス感染症が収束したポスト・コロナの世界へ向けた、時代の大きな転換点に直面しており、この数年で、気候変動、デジタル化、ジェンダー平等の実現等に向けて思い切った変革が実行できるかどうかが、日本、そして世界の未来を左右する。
2020年10月、菅内閣総理大臣は所信表明演説で、政府が成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、 グリーン社会の実現に最大限注力し、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする、「カーボンニュートラル」 の実現を目指すことを表明した。その中で、温暖化への対応は経済成長の制約ではなく、積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要である旨を述べた。同様に、SDGsの文脈においても、革新的なイノベーションを活用し、規制改革などの政策を総動員することで、効率的・効果的に目標を達成することができる。しなやかで強靱な、経済と環境の好循環のあるウィズ・コロナ、ポスト・コロナの時代を実現するには、何かを犠牲にするのではなく、経済・社会・環境、全ての観点を取り入れて取組を進めるSDGsを羅針盤として掲げつつ、あらゆる関係者を巻き込み、社会全体の行動変容を進めることが必要である。今、世界が大きな変化に直面する中で、新たな時代を見据え未来を先取りする社会変革に取り組むことが重要であり、そのためには政府、企業、市民社会、アカデミア、個人等それぞれの立場で変革への取組を始めることが不可欠である。
特に、脆弱な環境に置かれている人々は新型コロナウイルス感染症の拡大のために一層厳しい状況に置かれており、国際的な連携・協力が不可欠である。新型コロナウイルス感染症の拡大を1日も早く収束させ、次なる危機にも備えるため、国際保健課題で中核的役割を担うWHOの検証・改革や機能強化、途上国の保健・医療システムの強化に積極的に貢献していくことが重要であり、日本としては、人間の安全保障の理念の下、「誰の健康も取り残さない」との考えの下、国際社会におけるUHCの達成に向け、途上国を含めたワクチンへの公平なアクセスの確保を全面的に支援していく。加えて、国際社会においては、長期化・複雑化する人道危機に対処することが引き続き重要な課題であり、日本は政府としては、グテーレス事務総長のグローバル停戦要求を想起するとともに、改めて、「人道と開発と平和の連携」を重視し、「誰一人取り残さない」との考え方の下、SDGs達成に向けて取り組んでいく。
以下、これまでどのようにSDGsを推進してきたかを振り返るとともに、今後の取組の進め方を検討することとしたい。
5.国内のSDGs推進体制・主な取組
(1)SDGs推進に向けた国内体制
政府は、関係行政機関相互の緊密な連携を図り、SDGsを国内外で総合的かつ効果的に推進するため、2016年5月に内閣総理大臣を本部長、官房長官及び外務大臣を副本部長、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」を内閣に設置した。SDGs達成には、あらゆるステークホルダーとの連携が不可欠であるところ、官民パートナーシップを重視する観点から、同年9月、民間セクター、NGO/NPO、有識者、国際機関、各種団体など広範なステークホルダーが集まる「SDGs推進円卓会議」を立ち上げた。その後、円卓会議における活発な意見交換も踏まえ、同年12月にSDGs推進のための中長期戦略である「SDGs実施指針」を策定し、政府が率先してリーダーシップをとり、各ステークホルダーの取組と連携・協力しながら、相乗効果を生み出していくべく、SDGs実施の基盤を固めた。
{図は省略}
2015年に国連でSDGsが採択されてから4年、2016年に政府がSDGs実施指針を策定してから3年が経過する中、2019年9月、SDGsの採択後初めて、SDGsの進捗について首脳級で議論する国連「SDGサミット2019」が開催された。日本からは安倍内閣総理大臣(当時)が出席し、日本が議長国として開催したG20大阪サミットや第7回アフリカ開発会議(TICAD7)において、環境、教育、保健、質の高いインフラ投資等の取組を議長として主導したことを共有した上で、SDGs推進本部の本部長として、これまでのSDGs推進にかかる取組を紹介するとともに、次のSDGサミットまでに、国内外における民間企業や地方創生の取組を一層加速させる決意を表明した。グテーレス国連事務総長からは、世界におけるSDGs達成に向けた取組の遅れについて懸念が表明されるとともに、2030年までをSDGs達成に向けた取組を拡大・加速するための「行動の10年」とし、国際社会に強く行動を呼びかけた。
国際社会が新たな課題や一段と深刻化した課題に直面する中、気候変動や貧困・格差の拡大による社会の分断・不安定化などの地球規模課題に対して、システムレベルのアプローチやインパクトの大きい取組を通じて、経済や社会の変革を加速し、解決に向けて成果を出していくことがより一層必要となっていた。そのため、政府は、SDGs実施指針において、2019年までを目途に最初の見直しを実施することとしていたことも踏まえ、2019年12月に開催されたSDGs推進本部第8回会合において、時代に即した形でSDGs実施指針を改定することとした。
改定プロセスにおいては、SDGsの理念に則り、政府だけでなく、マルチステークホルダーで連携してSDGsを進めていくという強い決意の下、SDGs推進円卓会議の構成員と頻繁に議論・意見交換を重ね、多くの市民が参加するステークホルダー会議やパブリックコメントも経て多様な意見を取り入れるよう努力した。パブリックコメントでは、303件の意見が提出され、SDGs実施指針改定版には、主なステークホルダーの役割がより広範に明記された。
SDGsの17の目標と169のターゲットの中には、日本国内においては既に達成されているものも多いが、そのようなターゲットの中にも、世界全体における達成に向け、日本として国際協力面で取り組むべき課題も多く含まれている。そのため、SDGs推進本部はSDGs実施指針において、8つの優先課題を取組の柱として掲げることとした。これらの優先課題は、SDGsの目標とターゲットのうち、日本として特に注力すべきものを示すべく、日本の文脈に即して再構成したものであり、全ての優先課題について国内実施の側面と国際協力の側面の両面が含まれる。また、これらの優先課題はそれぞれ、2030 アジェンダに掲げられている5つのP(People(人間)、 Planet(地球)、 Prosperity(繁栄)、 Peace(平和)、Partnership(パートナーシップ))に対応する分類となっている。SDGsにおける全ての目標とターゲットが不可分であり、統合された形で取り組むことが求められているのと同様、これらの優先課題も密接に関わる不可分の課題であり、どれ一つが欠けてもSDGsは達成されないという認識の下、その全てに統合的な形で取り組むこととしている。
(People 人間)
1 あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
2 健康・長寿の達成
(Prosperity 繁栄)
3 成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
4 持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
(Planet 地球)
5 省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
6 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
(Peace 平和)
7 平和と安全・安心社会の実現
(Partnership パートナーシップ)
8 SDGs 実施推進の体制と手段
政府の具体的な取組を加速させるため、SDGs推進本部は、2017年12月以来、全府省庁による具体的な施策を盛り込んだ「SDGsアクションプラン」を毎年策定している。SDGsアクションプランは、2030年までに目標を達成するために、政府が行う具体的な施策やその予算額を整理し、各事業の実施によるSDGsへの貢献を「見える化」することを目的としており、SDGs推進円卓会議を始めとするステークホルダーの意見を踏まえて、取組の総額や担当省庁、対象とする目標などを明記する等発展してきている。
2020年12月に決定された、「SDGsアクションプラン2021」では、新型コロナウイルス感染症の拡大で、SDGs達成に向けた取組の遅れが深刻に懸念されていることを踏まえた上で、「SDGsが達成された、しなやかで強靱な、経済と環境の好循環のあるウィズ・コロナ、ポスト・コロナの時代を実現するには、社会全体の行動変容が必要であり、あらゆる関係者が一体となって取り組んでいく必要がある」との考えの下、以下の4つを重点事項と掲げ、取組を加速化していくこととした。
①感染症対策と次なる危機への備え
②よりよい復興に向けたビジネスとイノベーションを通じた成長戦略
③SDGsを原動力とした地方創生、経済と環境の好循環の創出
④一人ひとりの可能性の発揮と絆の強化を通じた行動の加速
また、具体的な施策として、新型コロナウイルス感染症の治療・ワクチン・診断の開発・製造・普及の包括的な支援及びこれらへの公平なアクセスの確保、UHCの推進、デジタルトランスフォーメーションの推進、ESG投資の推進、「2050カーボンニュートラル」への挑戦、海洋プラスチックごみ対策、SDGsを原動力とした地方創生、持続可能な開発のための教育(ESD)の推進等を盛り込んだ。この他にも非常に多くの案件が各省庁から提出され、新型コロナウイルス感染症対策の支援を含むSDGsアクションプランの総額は前年(約1.7兆円)の4倍近い約6.5兆円にのぼり、政府一丸となってSDGsを勘案しながら様々な施策に取り組んできている姿を示すものとなった。
{図は省略}
SDGs推進本部とSDGs推進円卓会議は、発足以後、およそ1年に2回のペースで開催し(2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、1回のみ開催)、SDGs達成に向けた日本の取組について意見交換を行ってきた。2019年12月に改定されたSDGs実施指針では、SDGs採択後4年間の進捗により、SDGsは極めて多様な分野で広がりをもって推進されてきている現状があることから、「実質的な課題解決に資するよう幹事会や円卓会議の開催頻度を上げる。また、これらを補完するものとして、分野横断的な課題の解決のため、円卓会議課題別分科会や関連ステークホルダー会議の開催等、体制強化を検討する」旨記載された。これを踏まえ、2020年7月の円卓会議において、教育、環境、進捗管理・モニタリング、広報の4つの分科会を立ち上げて議論を一層加速していくことが重要である旨指摘があり、2021年夏までを目途に、4つの分科会で議論を進めていくことになった。各分科会における議論の概要は以下のとおり。
*教育分科会
教育行政及びSDG4(教育)のリーディングエージェンシーであるユネスコの目的を実現するための活動を担う文部科学省(日本ユネスコ国内委員会事務局)と、SDGs全体の推進に当たる外務省とが連携し、日本ユネスコ国内委員会教育小委員会と連携して議論を進めた。
*環境分科会
2016年度から環境省が進めてきた「SDGsステークホルダーズ・ミーティング」と連携し、環境問題について幅広い関係者を巻き込んだ議論を開催した。
*広報分科会
メディア、広告代理店等すでにSDGs広報に携わっている専門家から効果的な広報のノウハウやグッドプラクティス、戦略等について意見を聴取し、今後SDGs広報を一層強化していく上での議論を開催した。
*進捗管理・モニタリング分科会
SDGグローバル指標を補完する国内における指標や評価の状況について意見交換を行い、本VNRの作成に当たっては、円卓会議の民間構成員からの進捗評価について議論を実施した。
(2)国内普及の動き
2030 アジェンダには、以下のように記されている。
「今日2030 年への道を歩き出すのはこの『われら人民』である。我々の旅路は、政府、国会、国連システム、国際機関、地方政府、先住民、市民社会、ビジネス・民間セクター、科学者・学会、そしてすべての人々を取り込んでいくものである。」
日本においても2030 アジェンダの実施、モニタリング、フォローアップ・レビューに当たっては、省庁間や国と自治体の壁を越え、公共セクターと民間セクターの垣根も越えた形で、広範なステークホルダーとの連携を推進していくことが必要である。また、特定の社会課題への対応に当たっては、包摂性・参画型の原則を踏まえ、当事者団体の意見を十分に踏まえる必要がある。そのため、まずは国民一人ひとりにSDGsとは何かについての理解を広めることが重要であり、政府は、推進本部の下、SDGsの国内的な認知度向上や啓発、普及のための広報・啓発活動を積極的に実施してきた。
民間企業を始めとする実施団体の優良事例の共有のため、「JAPAN SDGs Action Platform」を設置し、SDGsに取り組む団体に対するロゴマーク(ジャパンマーク)の活用を推奨してきたほか、SDGsに取り組む企業や団体等を表彰する「ジャパンSDGsアワード」やSDGs達成に向けて優れた取組を提案する自治体を選定する「SDGs未来都市」により、地域におけるSDGsモデル事例の普及展開を図ってきた。また、「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」や「地方創生SDGs金融」等により、SDGsの理念を通じた地域課題解決を推進し、国内でのSDGs推進に向けた機運を高め、一人ひとりがSDGsを自分事として取り組むように促してきた。更に、全国各地での講演やイベントへの参加、出版物への寄稿、ハローキティを始めとするインフルエンサーや様々な業界と連携した広報・啓発(メディア、エンタメ業界、運輸業界等)、ホームページやSNS、動画作成による発信等を積極的に行ってきた。こうした取組の成果もあり、国内のSDGsの認知度は年々向上しており、2021年に電通が行った調査によれば、2021年4月現在で、2020年の調査の29.1%から54.2%に上昇した。
<ジャパンSDGsアワード>
SDGs推進本部では、国内で実施されているSDGs達成のための取組を見える化し、より多くのステークホルダーによる行動を促すために、2017年以来、SDGs達成に資する優れた取組を行っている企業・団体等を表彰する「ジャパンSDGsアワード」を実施している。
2017年に開催した第1回「ジャパンSDGsアワード」では、町の基本条例に「持続可能な地域社会の実現」を定め、林業やエネルギー産業といった地域産業を通じて、地域課題に統合的に取り組む北海道下川町をSDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞として表彰した。また、「誰一人置き去りにしない」という考えの下、障害者の就労向上を目指す特定非営利活動法人や無駄のない消費を推進する生活協同組合、次世代リーダーの育成に取り組む大学、途上国における手洗い普及活動やマラリア対策等に取り組む企業等も表彰した。
2018年に開催した第2回「ジャパンSDGsアワード」では、捨てられてしまう食品を活用した液体飼料の製造により「循環型社会」の構築に貢献する日本フードエコロジーセンターをSDGs推進本部長賞として表彰した。また、高い資源リサイクル率で国内外のモデルとなっている地方自治体や地域の海洋ごみ問題に果敢に挑む女子中高生、数百年にわたる持続的経営で地域の伝統文化を発展させる長寿企業、SDGs推進の機運を後押しするメディア、医療機関や地域金融機関等も表彰した。
2019年に開催した第3回「ジャパンSDGsアワード」では、商店街として初めて「SDGs宣言」を行い、イベントやサービスを通じて人や環境に優しい活動を実践する福岡県北九州市の魚町商店街振興組合をSDGs推進本部長賞として表彰した。また、SNS投稿を通じてアフリカやアジアの子供たちに給食を届ける市民参加型の取組を行う特定非営利活動法人、海外の難民キャンプにおいて難民・国内避難民の視力支援活動を行う眼鏡メーカー、古着を回収して開発途上国にて再利用すると同時にポリオワクチンを寄付できるビジネスモデルを構築したリサイクル企業、市内全ての公立小・中・特別支援学校においてESDを推進する教育委員会、就学前児童から大人までが一緒になって身近なSDGsに取り組む保育園等も表彰した。
2020年に開催した第4回「ジャパンSDGsアワード」では、再生可能エネルギーを通じた地域間連携の促進に取り組むみんな電力株式会社をSDGs推進本部長賞として表彰した。また、農業を基盤に循環型社会の構築を進める自治体、環境・農業技術開発に取り組む高校、日本とラオスの障害者支援やアフリカ・アジアの元子供兵への自立支援を行うNPO、農業振興、防災・減災、女性活躍の場づくり、地域の多様なパートナーシップの構築を進める農業協同組合等も表彰した。
【事例】ジャパンSDGSアワード受賞団体
第1回推進本部長賞受賞団体:北海道下川町
下川町は人口約3400人、高齢化率約39%の小規模過疎地域かつ少子高齢化が顕著な課題先進地域である。町の憲法とも言われる「下川町自治基本条例」に、「持続可能な地域社会の実現」を定め、①森林総合産業の構築(経済)、②地域エネルギー自給と低炭素化(環境)、③超高齢化対応社会の創造(社会)に統合的に取り組んでいる。
具体的には、持続可能な森林経営を中心に、適正な木材、木製品の生産と供給、健康や教育への森林の活用、未利用森林資源の再エネ活用、再エネ熱供給システムを核としたコンパクトタウン等を推進しており、これらの取組を通じて、「誰もが活躍の場を持ちながら良質な生活を送ることのできる持続可能な地域社会」の実現を目指している。
第2回推進本部長賞受賞団体:株式会社日本フードエコロジーセンター
「食品ロスに新たな価値を」という企業理念の下、食品廃棄物を有効活用するリキッド発酵飼料(リキッド・エコフィード)を産学官連携で開発し、廃棄物処理業と飼料製造業の2つの側面を持つ新たなビジネスモデルを実現した。国内で生じる食品残さから良質な飼料を製造し、輸入飼料の代替とすることで、飼料自給率の向上と共に、穀物相場に影響を受けにくい畜産経営を支援し、食料安全保障に貢献している。同社の飼料を一定割合以上用いて飼養された豚肉をブランド化し、養豚事業者や製造業、小売り、消費者を巻き込んだ継続性のある「リサイクルループ(循環型社会)」を構築している。
第3回推進本部長賞受賞団体:魚商店街振興組合(福岡県北九州市)
商店街として「SDGs宣言」を行い、「誰一人取り残さない」形で人々のニーズに応えるイベントやサービスを様々なステークホルダーと連携しながら実施している。
具体的には、ホームレス自立支援・障害者生活支援などの社会的包括に視点を置いた活動や、飲食店等と協力したフードロスの削減、規格外野菜の販売等の地産地消を推進している。商店街内のビルをリノベーションし、若手起業家やワーキングマザーのための環境整備を実践しているほか、透過性太陽光パネルを設置して商店街の電力として活用している。また、公共交通機関を利用した来店を促進しており、憩いの場所の新設や商店街内の遊休不動産を再生するリノベーションまちづくりを実施している。
第4回推進本部長賞受賞団体:みんな電力株式会社(東京都世田谷区)
「顔の見える電力」をコンセプトに再生可能エネルギーを供給する小売り事業を2016年から実施している。需要家が選んだ発電事業者に基本料金の一部を届けることができ、契約を継続すると需要家に特典が届く仕組みを導入している。
また、ブロックチェーンを活用した「電力トレーサビリティ」システムの商用化を世界で初めて実現し、「どの発電所からどれだけの電気を買ったのか」を見える化した。2019年には、神奈川県横浜市の需要家と青森県横浜町の発電事業者を電気で結ぶ「横横プロジェクト」を開始。エネルギーの大消費地である横浜市と再エネが豊富な横浜町との間で、賛同企業等と連携しつつ、電気を通じた地域循環共生圏を構築し、都市の脱炭素化の推進と地方の経済活性化を目指している。
<SDGs未来都市>
政府は、2018年から、SDGs達成に向けて経済、社会、環境の三側面を統合した優れた取組を提案する自治体を「SDGs未来都市」に選定し、SDGs未来都市の中で特に先導的な自治体の取組を「自治体SDGsモデル事業」として選定している。2021年度までに4回の選考を行い、計124都市が「SDGs未来都市」に選ばれている。そのうち、毎年10事業が「自治体SDGsモデル事業」として選定され、政府から補助金が付与されている。
選定された都市は、内閣府及び有識者・自治体SDGs関係省庁タスクフォースによる助言等を受けながら、目標達成に向けた重要業績評価指標(KPI)を掲げた計画を策定しており、KPIの設定においては、政府が公表している「地方創生SDGsローカル 指標リスト(2019年8月版(第1版))」の活用を推奨している。また、毎年取組の進捗を報告し、有識者等によるフォローアップを受けながら進捗管理を行っている。これらの進捗管理を踏まえて、各都市は取組等を見直しながら計画を推進していくことで、PDCAサイクルを有効に機能させながら、目標達成を目指している。これらのサイクルによって形成された地方創生に向けたSDGsモデル事例を、政府のホームページ等で情報発信し、各地方自治体等への普及展開を図ることで、SDGsのローカライゼーションを後押ししている。
{図は省略}
上図の折れ線グラフは、SDGsに取り組む地方公共団体の割合の推移を示すものである。政府は、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中で、2024年度末までにSDGsに取り組む自治体の割合を60%とする目標を掲げている。2017年には1%であったが、現在(2020年)では、39.7%となっている。また、同総合戦略の中で、SDGs未来都市については、2024年度末までに累計210都市を選定すること等をKPIとして掲げており、今後も地方創生に向けたSDGsモデル事例を形成し、国内に横展開していく。
<地方創生SDGs官民連携プラットフォーム>
内閣府では、SDGsの国内実施を推進し、より一層の地方創生につなげることを目的に、地方公共団体と地域課題の解決や地域経済の活性化に取り組む企業・NGO・NPO・大学・研究機関など、多様なステークホルダーとのパートナーシップを深める官民連携の場として、2018年8月に地方創生SDGs官民連携プラットフォームを設置した。会員数は、2021 年5月末現在で5,423団体となっており、うち地方公共団体は全都道府県・全政令指定都市を含む907団体(全地方公共団体の51.2%)が参画している。
同プラットフォームでは、SDGs達成とともに地域課題の解決を目指す会員同士のマッチング支援や、会員からのテーマ提案に基づき分科会を設置し、共通する課題に対する官民連携や異分野連携による新たな価値の創出を促進している。また、2020年度には、新たな試みとして、SDGsを通じた地域課題の解決等に向けた官民連携による事例を公募し、その中でも特に優れた事例を公表した。
第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中で、「官民連携マッチング件数」を2020~2024年度の5年間で累計1,000件とすることを目標としており、2021年2月末現在で502件となっている。今後も引き続きマッチング支援事業や分科会の開催等を積極的に実施し、地域課題の解決に向けた官民連携を進めていく。
{図は省略}
<地域における自律的好循環の形成を目指した地方創生SDGs金融>
地方創生の推進においては、SDGsの理念に沿って、積極的に地域課題の解決に取り組む地域事業者等に対して重点的に支援が行われ、その地域事業者等の得た収益が地域に再投資される「自律的好循環」の形成が重要である。内閣府は、この「自律的好循環」を形成する第一歩として、「地方公共団体のための地方創生SDGs登録・認証等制度ガイドライン」を2020年10月にとりまとめ、公表した。同ガイドラインを参考に、地方公共団体が中心となって、地域事業者等の登録・認証制度を構築し、地方創生SDGsに積極的に取り組む地域事業者等の「見える化」を行い、地域金融機関や様々なステークホルダーと連携して地域事業者等を支援することで、地域課題の解決や地域経済の活性化につなげることが可能となる。また、登録・認証制度の構築を機に、これから地方創生SDGsに取り組む地域事業者等の裾野の拡大が図られ、地域課題等の解決に向けた取組の拡大が期待できる。
第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、「地方創生SDGs金融に取り組む地方公共団体の数」を2020~2024年度の5年間で100団体とすることを目標としており、2020年12月現在で58団体となっている。
{図は省略}
<ステークホルダーの役割>
SDGsの推進・普及のためには、様々なステークホルダーの関与・連携が重要との観点から、SDGs実施指針では、11のステークホルダーの役割について、以下のとおり定めた。以下、各ステークホルダーの主な取組と共に紹介する。
①ビジネス
それぞれの企業が経営戦略の中にSDGsを据え、個々の事業戦略に落とし込むことで、持続的な企業成長を図っていくことが重要である。また、官民が連携し、企業が本業を含めた多様な取組を通じてSDGs達成に貢献する機運を、国内外で醸成することが重要である。
また、ジェンダー平等及び女性のエンパワーメントのために、包摂的かつ公正な労働市場を促進する。
地球規模課題や社会課題に企業活動が与える影響に対する消費者の関心の向上や、ESG投資の活発化により、大企業を中心に経営層へのSDGsの浸透は一定程度進んできたが、企業数でみると99.7%を占める中小企業への更なる浸透が課題となっている。中小企業は、地域社会と経済を支える存在であり、SDGsへの取組を後押しすることが重要である。
ビジネスと人権、責任あるサプライ・チェーン、企業の社会的責任に関する取組は、各企業に対する国際社会からの信頼を高め、グローバルな投資家の高評価を得る上で重要であるとともに、生産と消費の中核を担う民間セクターが、SDGsが目指す持続可能な経済・社会・環境づくりに貢献する上で不可欠である。政府は、行動計画の策定を始めとして関係省庁が連携し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を踏まえて、適切な対応及び企業のSDGsに資する取組の促進を行う。
【事例】経団連の取組
1.企業行動憲章の改定*1*
経団連では、企業の創造性とイノベーションが最も発揮されるアプローチとして、Society 5.0 の実現を通じたSDGs達成を掲げ、これを企業に浸透させるため、2017年11月に会員企業が遵守すべき行動原則である「企業行動憲章」を全面的に改定した。Society 5.0は、デジタル技術を多様な人々が想像力と創造力を発揮して活用し、社会課題の解決と経済的価値の創造を目指す人間中心の創造社会である。
2.「。新成長戦略」*2*の公表
2020年11月に「。新成長戦略」を公表し、多様なステークホルダーの英知を結集し、デジタル革新(DX)により多様な価値を協創する、持続可能な資本主義を目指している。その中で、「2050年カーボンニュートラル」を目指すべき社会として掲げ、「チャレンジ・ゼロ」*3*を通じて、脱炭素に向けた取組を加速している。また、「2030年までに役員に占める女性比率を30%以上にする」ことを目指すと発表した。
3.協働のきっかけとなる事例の収集と公開
会員企業のSociety 5.0 for SDGsの実現に向けたイノベーション事例を集め、SDGsの17の目標、169のターゲット、企業名で検索できるSDGsの特設サイトを開設*4*し、随時アップデートしている。競合他社や他業界、大学や研究機関や地域社会など多様なステークホルダーが連携しオープンイノベーションを図るきっかけとなることを企図している。
4.ステークホルダーとの協働促進に向けた取組
持続可能な開発に関するHLPFや国連総会ウィークに開催されるサイドイベントに参加して経団連や日本企業の取組について情報発信するとともに、国連機関やグローバルなSDGs推進機関との連携に向けた対話を行っている。国連開発計画(UNDP)とは連携覚書に基づき、シンポジウム等を共催している。また、経団連、東京大学、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の三者で共同研究を行い、Society 5.0 for SDGsの実現に資するESG投資の進化について具体的方策を提示する報告書*5*を発表している。
②ファイナンス
SDGs達成に必要な資金を確保するためファイナンスの裾野を継続的に拡大していく観点から、SDGs達成に向けた取組を様々な手法で経済活動の中に組み込んでいくことが重要である。公的資金と民間資金の両者の有効な活用・動員、資金量の拡大・質の充実を考える必要がある。
SDGs達成のために、持続可能な社会の創り手として社会課題の解決を進める市民社会団体・民間非営利団体等への資金的な支援も不可欠である。
SDGsは、経済、社会及び環境という持続可能な開発の三側面を調和させるものであることから、環境・社会・ガバナンスの要素を考慮するESG金融やインパクトファイナンス、ソーシャルファイナンス、SDGsファイナンス等と呼ばれる経済的リターンのみならず社会的リターンを考慮するファイナンス(社会貢献債としてのJICA債の発行など)の拡大が、SDGs達成に向けた民間資金動員の上で重要である。今後、ESG金融の拡大に向けた支援やこれらファイナンスを実用化するに際しては、それらの仕組みの情報開示に努め、有効性を検証していく必要がある。
また、気候変動対策、脱炭素化等を進めるためのファイナンスは重要である。近年、G20の要請を受けて金融安定理事会(FSB)により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が2017年に公表した「TCFD提言」を踏まえた企業の気候関連情報の開示への関心が国際的に高まってきており、今後、TCFD提言の考え方に基づく企業の積極的な情報開示や、投資家等による開示情報の適切な活用を進めていく必要がある。
【事例】SDGS達成のための新たな資金を考える有識者懇談会
2019年7月に立ち上げ、以後、租税の徴収等による資金調達に関し、出入国時の課税、旅券・査証を財源とする措置、金融取引税(株式・債券取引及び為替取引への課税)デジタル課税について、また、民間資金動員を促す施策に関し、インパクト投資の促進、SDGs債券投資の促進、ブレンディッド・ファイナンスの活用などについて意見交換を累次有識者間で実施した。2020年7月に以下の点を含む報告書が提示された。
1.国際連帯税を含む租税の徴収等による資金調達
・出入国時の課税は、新型コロナウイルスの拡大により、国際航空事業が危機を迎えている状況を要考慮。
・旅券及び査証を財源とする措置は、コスト・ベネフィットは極めて低いと考えられる。
・金融取引税のうち株式・債券取引税は市場への負の影響が大きい。為替取引税は実現には国際協調が不可欠だが、現時点で見込みはない。
・ 枠組交渉中のデジタル課税は、議論の状況を注視。
2.民間資金動員を促す施策
・インパクト投資拡大には、インパクト評価の国際的基準作成と国内への浸透等が必要。
・ESG投資促進には、税制面のインセンティブを付与する措置を講じることが有効。また、SDGs関連のプロジェクトに特化した債券の国内の援助機関による発行の検討も一案。
・ブレンディッド・ファイナンスにおいては、民間の資金動員が容易でない栄養・公衆衛生・国際保健のような社会分野における案件を増やしていくことが重要。
③市民社会
市民社会は、「誰一人取り残さない」社会を実現するため、現場で厳しい状況に直面している人々や最も取り残されている人々、取り残されがちな人々の声を拾い上げ、政府・地方自治体へとそれらの声を届け、知見を共有する存在であり、SDGs関連施策の企画立案プロセスにおいてこうした人々の声が反映されるよう、橋渡しをすることが期待されている。
同時に、国際社会及び国内におけるネットワークを活かし、国内外に対する問題提起や発信、政策提言、SDGs推進を加速化・拡大するためのアクションを推進していく旗振り役となること等の役割も期待されている。
【事例】SDGS市民社会ネットワーク
1.SDGs達成に向けた市民社会の取組
前回のVNR提出以降、市民社会によるSDGs達成に向けた取組は飛躍的に増加した。SDGs達成を目的として活動してきたNGOであるSDGs市民社会ネットワーク(以下、SDGsジャパン)が関わってきた主要な事例を以下に挙げる。
① 政府が策定するSDGsアクションプランを市民社会の視点から補完し、「誰一人取り残さずに」SDGsを達成するための具体的な政策提言文書として、SDGsジャパンが中心になって『SDGsボトムアップアクションプラン』を2018年以来、作成・公表してきた。
② SDGsジャパンが中心になり、環境、教育、国際保健、貧困、ジェンダー、社会的責任、障害、地域、開発、開発資金、防災・減災、ユースの各分野におけるSDGs達成に向けた提言やイベントを実施してきた。
③ 様々なステークホルダーのネットワークとパートナーシップによりSDGsへの関心を高め行動を促す場として、JICAなど2つの政府機関、国際開発学会など2つの学会、SDGsジャパンなど5つのNGO・NPOが参加して「みんなのSDGs(Our SDGs)」が設立され、パンデミック下の2020年にも「SDGsとコロナ」をテーマにしたオンラインセミナーを6回開催し、多くの市民の参加を得た。
④ SDGs関連の書籍が次々に出版される機会を捉え、朝日新聞社とSDGsジャパンの共催によりオンラインセミナー『著者に聞く』(全6回、全登録者約6000人)を開催し、SDGsへの理解と関心を高め具体的な行動を促した。
⑤ 「パンデミックからの回復にはSDGsの理念に沿った対応が必要不可欠」との立場から、2020年3月以降5回の声明(和英)を発表し、また市民社会による声明をウェブサイトで紹介してきた。
これ以外にも多種多様な取組が、様々な分野、そして様々な地域で実践されてきている。SDGs達成を測る指標を地域のNGO・NPOが主導しマルチセクターで設定しようという取組も出てきているなど、SDGs達成に向けた市民の関心は確実に高まっている。
パンデミック下で、これまでも存在した格差、不平等、貧困、差別が更に悪化しているという現状を踏まえ、「誰一人取り残さない」ための市民社会の実践がSDGs達成において主流化される必要がある。
2 新型コロナウイルス感染症の拡大と貧困に関わる市民社会の取組
新型コロナウイルス感染症の拡大と貧困に関わる市民社会の取組について言えば、全国のフードバンク等の民間支援団体や子供食堂などの取組、母子世帯の女性への支援や自殺対策、ホームレス支援や生活困窮者支援の活動は、それぞれの団体が感染予防を徹底しつつも、その活動を維持、拡大して取り組んでいることは特筆するべきことである。
公的支援というよりは、民間の寄付や助成によって、地域での活動がまかなわれているところも多い。こういった活動をどう維持、拡大させていくことができるのか、「誰一人取り残さない」という観点からも重要な視点となるだろう。
また、例えば、NPO法人ETICとアビームコンサルティングとが100を超えるNPO等の団体に対して2020年7月に実施した「社会課題・地域課題に取り組むリーダーたちへのアンケート調査」によると、新型コロナウイルスの拡大により約84%の団体がマイナス影響を受けたことが報告されている。市民活動、市民社会の維持、拡大については、課題を残していると言える。
3 国際協力に関わる市民社会の取組
日本の市民社会の国際協力の取組は、2000年代を通じて定式化された、政府や民間セクター等との連携・協議・関与などの枠組みの中で発展を続け、前回のVNRが提出された2017年以降現在までの期間については、いわば「成熟期に達した」状況にあるといえる。
2017年以降現在までの日本の市民社会の国際協力に関する取組を量的にみると、「国際協力」を事業項目に掲げるNPO法人の数は、内閣府によれば2017年から2019年にかけて9300-9800団体、日本の国際協力NGOによる途上国での経済社会開発事業に外務省が政府開発援助(ODA)資金を供与する「日本NGO連携無償資金協力」の契約額は50億円台、NGOと政府、経済界が対等なパートナーシップに基づいて緊急人道支援のために協働する仕組みであるジャパン・プラットフォームの事業費支出も60億円台で、傾向的な変化はみられていない。一方、民間セクターや民間財団とNGOの連携については、IT技術の発展やESG投資の拡大などを踏まえ、一定の進展がみられる。
政府との対話などを含むマルチセクターとの連携や政策提言などについては、NGO・外務省定期協議会を始めとして、公式の対話枠組みに基づく対話が積み重ねられている。外務省NGO研究会での「コロナ拡大に対するNGO/NPOの対応戦略」や、GII/IDI懇談会での新型コロナウイルス感染症対策に関する定期的な公式対話などの成果もあった。また、日本の市民社会は、G7やG20、国連SDGsプロセスなどにおいて、「ビジネスと人権」、国際保健、科学技術イノベーション政策に関する提言を行い、世界の市民社会の中で存在感を発揮している。
この4年間、世界では、国際協力を巡って、途上国自身の市民社会の能力の向上が目に見える状況となったこと、気候変動を原因とする災害や、新型コロナウイルス感染症など地球規模で未曽有の危機が生じていること、途上国を含め、様々な科学技術イノベーションの導入が進んでいることなど、大きな変化が生じている。国際協力にかかわる日本の市民社会は、こうした変化に対応して、現状の「成熟」を質的・量的に超える大きな変化を作り出していく必要性を自覚している。
④消費者
生産と消費は密接不可分であり、持続可能な生産と消費を共に推進していく必要があるとの認識の下で、消費活動において大きな役割を担う消費者や市民の主体的取組を推進していく。
特に、SDG12(生産・消費)の観点からは、消費者が、環境に対する負荷が低く循環型経済への移行に資するなど、持続可能な消費活動を行うことで、持続可能な生産消費形態を確保できるように、健全な市場の実現に加え、経済・社会の仕組み作りと啓発を促進する。
【事例】「エシカル甲子園2019」での全国の高校生の取組
2019年12月27日、徳島県において「エシカル甲子園2019」を開催し、エシカル消費の推進につながる活動に取り組む高等学校等を表彰した。
取組の内容は、多岐にわたっており、高校生が地域や社会の課題と向き合い、自分たちに何ができるかを考え、地域の方や多様な団体と協力して実践している様子が見受けられた。
審査の結果、カンボジアの友好学園と共同でヤシ砂糖を増産し、商品開発を行っている徳島県立徳島商業高等学校が、「内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)賞」を受賞した。
また、放置竹林の再生という地域課題解決のため、竹を原料とした竹紙作り、竹パウダーを使った堆肥作りや米作りを行っている徳島県立阿南支援学校が、「消費者庁長官特別賞」を受賞した。
このほか、地元への人材の定着率向上のため、衣食住の観点から伝統文化「裂さき織おり」の復活、橙を使った商品開発、防災本の作製等を行っている愛媛県立三崎高等学校が「徳島県知事賞」、養蜂を校舎の屋上で行い、採れたはちみつを「徳川はちみつ」として商標登録し、そのはちみつを使用した商品の開発等を行っている愛知県立愛知商業高等学校が「徳島県教育委員会教育長賞」、SDGs及びフェアトレードを題材とした教材開発、地元産業と連携した商品開発やエコラップの制作販売を行っている北海道札幌市立札幌大通高等学校が「日本エシカル推進協議会会長賞」を受賞した。
本大会には、発表校のほか、全国から約20校の高校生が参加するなど、多く来場者が訪れ、高校生等によるエシカル消費の取組を全国へ広く発信し、エシカル消費の普及・推進の機運を高める機会となった。
⑤新しい公共
現在、「新しい公共」すなわち、従来の行政機関ではなく、地域の住民やNPO等が、教育や子育て、まちづくり、防犯・防災、医療・福祉、消費者保護など身近な課題を解決するために活躍している。
協同組合を始め、地域の住民が共助の精神で参加する公共的な活動を担う民間主体が、各地域に山積する課題の解決に向けて、自立と共生を基本とする人間らしい社会を築き、地域の絆を再生し、SDGsへ貢献していくことが期待されている。
【事例】第2回ジャパンSDGSアワード副本部長賞(日本生活協同組合連合会)
生協の全国連合会として、2018年に全国の生協がSDGs達成に大きく貢献することを社会的にコミットした「コープSDGs行動宣言」を策定・採択した。行動宣言の採択にあわせ、「日本生協連SDGs取組方針2018」をとりまとめ、様々な取組を実施した。
具体的には、地域、環境、社会、人々に配慮した「エシカル消費」に対応した商品を開発・供給するとともに、こうした商品の利用を組合員に促す活動を全国の生協を通じて行っている。
その他、再生エネルギーの活用やユニセフを通じた子供支援、被災地支援も積極的に実施している。
⑥労働組合
労働組合は、社会対話の担い手として、集団的労使関係を通じた適正な労働条件の確保を始め、労働者の権利確立・人権・環境・安全・平和などを求める国内外の取組を通じ、働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)の実現や持続可能な経済社会の構築に重要な貢献を果たすことが期待されている。
また、適正な職場環境・労働条件の確保を通じて、SDG8(成長・雇用)のみならず、SDG1(貧困)、SDG5(ジェンダー平等)、SDG10(不平等)、SDG12(生産・消費)、SDG16(平和と公正)等の複数の目標達成への貢献が期待されている。
【事例】日本労働組合総連合会の取組
SDGs実施指針において、労働組合は、社会対話の担い手として、集団的労使関係を通じた適正な労働条件の確保を始め、労働者の権利確立・人権・環境・安全・平和などを求める国内外の取組を通じ、ディーセント・ワークの実現や持続可能な経済社会の構築に重要な貢献を果たすことが期待されている。
労働組合のナショナルセンターである日本労働組合総連合会(以下、連合)では、2016年以降、SDGsに関連する諸課題の解決に向けた取組を運動方針に記載し、希望ある未来が次の世代に続いていく「持続可能性」と、互いに認め支え合い、誰一人取り残されることのない「包摂」を基軸とし、労働運動に取り組んでいる。具体的な活動方針や政策には関連するSDGsの17の目標が全ての取組に関連付けられている。その意味では、労働運動はSDGsそのものであり、連合はSDGs達成に向けて、政府・行政・経営者団体・NPOなどの様々な団体・組織と対話し、連携・協力している。
連合では、春季生活闘争を始めとする労働運動を通じて、企業規模間・雇用形態間・男女間の格差の是正、長時間労働の是正などの取組を進めている。
しかしながら、連合が全国で行っている労働相談(2020 年(1月~12月)の年間相談受付件数20,828 件)には、雇用、差別、賃金などに関する様々な相談があり、働く者たちは多くの問題を抱えていることがうかがえる。これらはSDGsを達成する上でも解決すべき課題であり、こうした課題解決を通じてディーセント・ワークの実現に向けて取り組んでいく必要がある。
また、「カーボンニュートラル」の実現に向けて「グリーンリカバリー」を推進する上では、SDGsの理念に基づき、各国が連携・協調しつつ、世界全体としての持続可能な開発に取り組む必要がある。とりわけ、働く者の雇用への影響を抑える「公正な移行」の実現は極めて重要である。その実現に向けて、経済・社会状況などの不確実性を踏まえて複数のシナリオやオプションを示し、丁寧な国民的議論を通じた合意形成を図るためにも、労働組合を含む関係当事者との積極的な社会対話が必要である。
連合が加盟している国際労働組合総連合(ITUC)においては、特に労働者に関係の深いSDG1、5、8、10、13、16を重点目標とし、各種キャンペーンを通じて目標達成に取り組んでいる。そのキャンペーンの一つに毎年10月7日を「ディーセント・ワーク世界行動デー」と定め、労働者が自らの働き方を見直す日として世界一斉行動を行う取組がある。連合は、毎年、キャンぺーンに参加して街頭行動や連合の定期大会などの各種会議において、ディーセント・ワークの啓発を行っている。
市民社会との連携においては、20年前に設立した「NGO―労働組合国際協働フォーラム」をNGOと労働組合がそれぞれの特性を活かして国際的な社会課題の解決に取り組む場と位置付け、SDGs達成につながるよう取り組んでいる。現在は、児童労働グループ【SDG8】、HIV/AIDS等感染症グループ【SDG3,8,10】、母子保健グループ【SDG3,5】の各課題別グループの活動を通じて、組合員と広く一般に向けた啓発活動とNGOとの協力による課題解決の取組を推進している。また、労働組合や市民社会組織から構成された「児童労働ネットワーク」の運営委員として、啓発活動や政策提言を行っている。
⑦次世代
次世代の若者たちは、2030年やその後の社会、そしてポストSDGsの議論の中核を担う存在である。2018年12月に立ち上げられた「次世代のSDGs推進プラットフォーム」も活用しながら、2020年の段階から、いかにSDGsを推進し、自分たちが主役となる時代をどのような社会に変革していくかを考え、持続可能な社会の創り手として、多様な人々と協働しながら行動し、国内外に対して提言・発信していくことが期待されている。
こうした観点から、特定の目標に限定せずに幅広い分野における貢献が期待されているが、様々な背景を持つ次世代層がSDG4(教育)を始めとする各目標の達成に貢献できるようにするために、教育にかかる政策・制度の充実も重要である。
【事例】「次世代のSDGS推進プラットフォーム」
2030年以降にSDGs推進の主役となる次世代によるSDGsへの関与を深め、主体的な推進を加速化し、次世代のSDGs推進に関する日本の「SDGsモデル」を国際社会に示すため、2018年12月のSDGs推進本部にて「次世代のSDGs推進プラットフォーム」を立ち上げた。
プラットフォームに参加するそれぞれの団体ごとの活動に加え、同プラットフォームとして主に下記の活動を実施した。
① 2019年3月、国際女性会議WAW!開催の機会に、プラットフォームメンバーがマララ・ユスフザイ氏と、女子教育の推進や質の向上、女性の社会・経済的進出に果たす企業の役割等につき意見交換した。
② 2019年4月、ニューヨークで開催された国連経済社会理事会ユースフォーラムにおいて、プラットフォームメンバーが日本代表団として、SDGs達成に向けた日本の若者の参画の重要性について発言。また、SDGs達成に向けた若者による制度的・包摂的な参画を推進し、そのための諸外国の若者同士のネットワークを強化することを目的とするサイドイベントを実施した。
③ 2019年5月、ドイツ・ボンで開催されたUNDP主催「SDG Global Festival of Action 2019」において、プラットフォームメンバーが日本の次世代の取組を国際社会に対して発信した。
④ 2019年7月、HLPFに際して開催された日本政府主催レセプションにプラットフォームメンバーが参加し,次世代を含む日本のSDGsモデルを発信した。
⑤2020年2月、来日したジャヤトマ・ウィクラマナヤケ ユース担当国連事務総長特使と、SDGsで謳われている「誰一人取り残さない」社会に向けた日本の若者による貢献の在り方やこれまで取り上げられてこなかった課題について議論した。
⑧教育機関
学校、地域社会、家庭、その他あらゆる教育・学習機会をとらえ、「持続可能な社会の創り手」を育成するという観点から、教育は、SDG4(教育)の達成において重要な役割を果たすとともに、持続可能な社会の創り手として地域や世界の諸課題を自分事として考え課題解決を図る人材の育成に寄与し、SDGsの全ての目標の達成の基盤を作るという極めて重要な役割を担っている。
SDGsの全ての目標の達成に貢献する枠組みである「持続可能な開発のための教育:SDGs達成に向けて(ESD for 2030)」がユネスコ及び国連において採択されたことを支持し、国内外の活動の充実に貢献する。国内においては、「持続可能な社会の創り手」の育成を目指した学習指導要領改訂も受け、ESDの推進拠点であるユネスコスクール・ネットワークの活性化を図るとともに、社会教育関連機関も含め、SDGsに資するように多様な文化とつながりながら学習できる環境づくりを促進する。
【事例】学習指導要領の改訂に伴うESDの推進強化
日本においては、ユネスコ憲章に示されたユネスコの理念を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校である「ユネスコスクール」をESDの推進拠点と位置付け、ESD実践を支援している。加えて、2020年度より順次実施されている新しい学習指導要領においては、前文及び総則において「持続可能な社会の創り手」となることが掲げられた。
2021年には、国内の多様なステークホルダーを巻き込みながらESDを推進するために、2020年から開始されているESDの国際的な枠組みであるESD for 2030に基づき、ESDに関する国内実施計画の改訂を行った。また、文部科学省において、ESDの担い手を育成する教員の養成やカリキュラムの開発を行う大学、自治体、NPO等に対する支援も行っている。
新学習指導要領に基づきESDを着実に実施することで、若い世代やその親の世代でSDGsの認知度が高まることや、SDGsを学校で学んだ世代が2030年やその先の未来で活躍することが期待される。
⑨研究機関
研究機関による学術研究や科学技術イノベーションは、それ自体がSDGs達成の手段として大きな役割を果たし得ることはもちろんのこと、地球観測などの現状把握のためのツールや目標設定の根拠としての活用や、ターゲット相互の関係分析、達成度評価、そしてポストSDGsの議論においても、国内外において貢献することが期待されている。また、研究機関は、これらの科学的根拠に基づき、今後の科学技術イノベーションの飛躍的変革につなげることが期待されている。
なお、イノベーションと変革は目標達成の鍵ではあるが、技術的なものだけを偏重するのではなく、社会的なものを含むより広範な概念として扱うべきとの点に留意する必要がある。
市民や企業、政府等と科学者との間でビジョンや情報を共有することは、科学技術イノベーションがSDGs達成の手段として大きな役割を果たし得ることを認識し、種々の課題や緊急性に対する認識を高めるためにも必要である。また、フューチャー・アース等国際的取組の下、科学者コミュニティがその他の広範なステークホルダーと連携・協働していくことも重要である。
【事例】国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS )の取組
国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は日本に設置された国連機関のシンクタンクとして、政策対応型の研究、大学院教育、能力開発等を通じて地球規模の課題の解決に取り組むことを使命としている。UNU-IASでは、2020-2024年の戦略計画の下、生物多様性、水資源管理、ESD、持続可能な開発のガバナンスなどの分野で研究プログラムが実施されており、研究論文やポリシーブリーフの発出、SATOYAMAイニシアティブ(世界271団体(2021年4月現在))、ESD地域拠点(RCEs、世界179拠点(2021年4月現在))などを通じた国際的なネットワーク活動、国連持続可能な開発に関するHLPFやUNESCO等によるイベント及びUNCBD、UNFCCC等の国際条約等を通じた国際的なアウトリーチ活動を実施している。ガバナンス分野では各国政府が国連に提出するVNRを分析し、各国のSDGsに関する政策に関する研究を行った。
UNU-IASの教育プログラムについては、アジア、アフリカ、南北アメリカ地域を含む世界各国の学生を対象とした大学院教育課程(修士・博士)が設置され、上記の研究プログラムと連携した高等教育が実施されている。また、2020年にはSDGsを軸とした国内の大学連携強化を目的とした「SDG大学連携プラットフォーム(SDG-UP)」を設立し、高等教育のパートナーシップを通じて国内外の持続可能な開発に貢献している。
UNU-IASはSDGsのローカライゼーションにも貢献してきた。2019年から国連アジア太平洋経済社会委員会 (UNESCAP)等のパートナー機関とともに「持続可能な都市開発のためのアジア太平洋首長アカデミー」を設立し、持続可能な都市開発にコミットする地域のリーダーのネットワークを構築・支援している。日本国内ではSDGs未来都市の選定等に貢献するとともに、UNU-IASが石川県及び金沢市と共同で運営している「いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)」では2019年12月に北陸SDGsステークホルダーミーティング2019を金沢工業大学と共催し、地域において企業、地方自治体、市民団体など様々な立場のSDGsに関わる人々が参加し、ありたい未来を議論する機会を提供した。
UNU-IASでは、新戦略計画におけるSDGs間のシナジー強化というコンセプトの下、気候変動分野などの重要政策とSDGsに関するモニタリング評価システム、サステナブルファイナンス、人工知能(AI)と社会的価値創出など、新たなテーマを設定して研究、教育、アウトリーチ活動を展開している。
⑩ 地方自治体
国内において「誰一人取り残さない」社会を実現するためには、広く日本全国にSDGsを浸透させる必要がある。そのためには、地方自治体及びその地域で活動するステークホルダーによる積極的な取組が不可欠であり、SDGsの一層の浸透・主流化を図ることが期待される。
現在、日本国内の地域においては、人口減少、地域経済の縮小等の課題を抱えており、地方自治体におけるSDGs達成へ向けた取組は、まさにこうした地域課題の解決に資するものであり、SDGsを原動力とした地方創生を推進することが期待されている。政府としても、引き続き地方創生に資するSDGs達成に向けて優れた取組を提案する地方自治体を「SDGs未来都市」に選定し、先導的なモデル事例の普及展開を支援していく。
地方自治体は、SDGs達成へ向けた取組を更に加速化させるとともに、各地域の優良事例を国内外に一層積極的に発信、共有していくことが期待されている。具体的には、「SDGs日本モデル」宣言や「SDGs全国フォーラム」等のように、全国の地方自治体が自発的にSDGsを原動力とした地方創生を主導する旨の宣言等を行うとともに、国際的・全国的なイベントを開催する等により、海外や、全国又は地域ブロック、若しくは共通の地域課題解決を目指す地方自治体間等での連携がなされ、相互の取組の共有等により、より一層、SDGs達成へ向けた取組が行われることが期待される。また、今後は、より多くの地方自治体において、更なるSDGsの浸透を目指し、多様なステークホルダーに対してアプローチすることが期待されている。
地方自治体においては、体制づくりとして、部局を横断する推進組織の設置及び執行体制の整備を推進すること、各種計画への反映として様々な計画にSDGsの要素を反映すること、進捗を管理するガバナンス手法を確立すること、情報発信と成果の共有としてSDGsの取組を的確に測定すること、更に、国内外を問わないステークホルダーとの連携を推進すること、ローカル指標の設定等とその進捗評価の公表を行うことが期待されている。また、地域レベルの官、民、マルチステークホルダー連携の枠組みの構築等を通じて、官民連携による地域課題の解決を一層推進させることが期待されている。更に、「地方創生SDGs金融」を通じた自律的好循環を形成するために、地域事業者等を対象にした登録・認証制度の構築等を目指すことが期待されている。
地方自治体においては、各地域のエネルギー、自然資源や都市基盤、産業集積等に加えて、文化、風土、組織・コミュニティなど様々な地域資源を活用し、持続可能な社会を形成する「地域循環共生圏」の創造に取り組む等、自治体における多様で独自のSDGsの実施を推進することが期待されている。
【事例】日本の地方自治体によるVLRの実施
2018年に富山県富山市、北海道下川町及び福岡県北九州市が、2019年に静岡県浜松市が公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)と連携して、ローカルレベルにおけるVLRを実施した。VLRを実施したこれらの地方自治体はHLPFでそれぞれのVLRを発表しており、また、IGESは自治体によるVLRの実施を推進するため、世界のVLRに関する情報をまとめたプラットフォーム「VLR Lab」を整備している。VLRは各自治体において実施されるものだが、その作業において各自治体のSDGs推進体制やこれまでの取組を見直し、国内外に取組・課題を共有することにつながるところ、政府は2019年に改定したSDGs実施指針において、VLRの積極的な実施も後押しすることとした。VLRを実施し、HLPFのような国際的な場で発表することは、地方自治体の国際的な相互の学び合いや連携にもつながるところ、地方自治体による更なるVLRの実施が期待される。
⑪議会
2030アジェンダにおいても、効果的な実施と説明責任の観点から国会議員が不可欠な役割を果たすとの認識が示されているとおり、国会及び地方議会は、国内において「誰一人取り残さない」社会を実現するため、広く日本全国から国民一人ひとりの声を拾い上げ、国や地方自治体の政策に反映させることが期待されている。更に、行政機関、市民社会、国際機関等と連携し、国や地域が直面する社会課題を解決するための具体的な政策オプションを提案することが期待されている。
【事例】議員による取組
SDGs実施指針の策定に当たっては、様々な政党が政府や民間団体からのヒアリングのための会合を開催した。
公明党は、市民団体などNGOと協働して政府のSDGsに関する取組を推進するため、2016年1月に「SDGs推進委員会」を設置した。2019年12月には、政府に対して「SDGs実施指針改定に向けた提言」を提出し、国内外におけるSDGs達成に向けた取組をより一層加速化するよう政府に申入れを行った。その後、同委員会は、SDGs推進に向けた取組を更に強化するため、2020年12月に同委員会を「SDGs推進本部」に格上げした。
更に、2017年4月には、自民党のSDGs 外交議員連盟が発足した。新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえ、2020年7月には同議員連盟から政府に対して、「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた持続可能な開発目標(SDGs)の課題 議会、政府、経済界、市民社会のパートナーシップによるSDGsの強力な推進」が手交され、このような危機的な状況においてこそ、SDGsの理念が重要であり、これまで日本が進めてきた人間の安全保障やUHCといった取組も引き続き進めていくことが重要である等の指摘がなされた。
2021年4月には、超党派議員連盟の「NGO・NPOの戦略的あり方を検討する会」が開催され、本VNR作成に当たり政府と市民社会との対話が重要である旨、SDGs推進本部事務局宛に決議が提出された。
その他、各党においてSDGsに関する取組が行われ、政府や市民社会等との対話の場が設けられている。
(3)8つの優先課題と主な取組
上述のとおり、政府としては、SDGs推進に向けた取組の柱として8つの優先課題を掲げている。これは、SDGs の目標とターゲットのうち、日本として特に注力すべきものを示すべく、日本の文脈に即して再構成したものであり、全ての優先課題について国内実施の側面と国際協力の側面の両面が含まれる。以下、各優先課題におけるこれまでの主な取組や今後の課題について見ていきたい。
優先課題1 あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
「誰一人取り残さない」とのキーワードは、2030アジェンダの根底に流れる基本的理念を示しており、2030アジェンダは、女性、子供、若者、障害者、HIV/エイズと共に生きる人々、高齢者、先住民、難民、国内避難民、移民などへの取組を求めている。
国際社会における普遍的価値としての人権の尊重と、ジェンダー平等の実現及びジェンダーの視点の主流化は、分野横断的な価値としてSDGsの全ての目標の実現に不可欠なものであり、あらゆる取組において常にそれらの視点を確保し施策に反映することが必要であり、この旨、SDGs実施指針にも明記している。
日本は、国内実施、国際協力のあらゆる課題への取組において、脆弱な立場におかれた人々にこそ最初に手が届くように焦点を当ててきた。特に、国際協力においては、人間の安全保障の理念に基づき、持続可能な開発と平和の持続が表裏一体であることを踏まえ、一人ひとりの保護と能力強化を貫徹するために切れ目のない支援を行う「人道と開発と平和の連携」の考え方を重視してきた。
脆弱な立場に置かれた人々が新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を大きく受けており、一層の対応が求められる。
(1)国内の課題と取組
(ジェンダー主流化・女性の活躍推進)
男女共同参画・女性活躍の推進については、1999年に制定された「男女共同参画社会基本法」に基づき、5年ごとに施策の基本的な方向や具体的な取組などを定めた「男女共同参画基本計画」を策定し、施策を総合的かつ計画的に推進している。また、女性の活躍を加速するために、2015年以降、毎年6月を目途に「女性活躍加速のための重点方針」を決定し、各府省の概算要求に反映させている。
2020年12月に閣議決定した「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~」では、①あらゆる分野における女性の参画拡大、②女性に対する暴力の根絶、③男女共同参画の裾野を広げる地域における取組、④新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に関する視点などについて盛り込むとともに、2030年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指すこと、そのための通過点として、2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう目指して取組を進めることを掲げている。
この第5次計画の推進に当たっては、男女共同参画会議において、特に重要な項目について毎年度、進捗状況を点検し、2023年には、全89項目の成果目標の達成状況について点検・評価を行うこととしている。これらの成果目標は、SDGsにおけるゴール5の目標達成に向けた各種の取組とも関連するものである。また、必要に応じて、内閣総理大臣及び関係大臣に意見を述べ、更なる取組を促すこととしている。
また、内閣総理大臣からの指示を受け、基本計画に盛り込んだ女性の登用・採用目標の達成に向けて、2021年度・2022年度に取り組むべき具体案を盛り込むんだ「女性活躍・男女共同参画の重点方針2021」を2021年6月に策定した。
法制面では、2018年5月には、政治分野における男女共同参画を効果的かつ積極的に推進し、もって男女が共同して参画する民主政治の発展に寄与することを目的とした「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が成立した。この法律は、衆議院、参議院及び地方議会の選挙において、男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指すことなどを基本原則とし、国・地方公共団体の責務や、政党等が所属する男女のそれぞれの公職の候補者の数について目標を定める等、自主的に取り組むよう努めることなどを定めている。第5次男女共同参画基本計画では、我が国における取組の進展がいまだ十分でない要因としては、政治分野において立候補や議員活動と家庭生活との両立が困難なこと、人材育成の機会の不足、候補者や政治家に対するハラスメントが存在すること等、そして、社会全体において固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)が存在していること等が考えられるとされている。政党等における実効性のある積極的改善措置(ポジティブ・アクション)の取組の要請を始め、政党や国会、地方議会等と連携を強化し、男女共同参画に関する議論を進めていく必要がある。
また、2015年8月に、働く場面で活躍したいという希望を持つ全ての女性が、その個性と能力を十分に発揮できる社会の実現を目的とした「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」が成立した。これにより、国や地方公共団体、常用労働者数301人以上の企業に対し、女性の採用割合や管理職割合等の数値目標を盛り込んだ行動計画の策定・公表や、女性の活躍に関する情報の公表が義務付けられた。2019年には行動計画の策定義務の対象拡大や情報公表の強化等が盛り込まれた一部改正法が成立し、2022年度から常用労働者数101人以上の企業へ拡大される。
企業の取組も促すべく、経済産業省では、2012年度から東京証券取引所と連携して「女性活躍推進」に優れた上場企業を、「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄(「なでしこ銘柄」)として、年度ごとに約50社選定している。更に、女性を始め多様な人材の能力を活かして、イノベーションの創出、生産性向上等の成果を上げている企業を「新・ダイバーシティ経営企業100選」、「100選プライム」等で表彰・選定しており、ダイバーシティ経営の普及啓発を実施している。
更に、コーポレートガバナンス改革により、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を促す観点からは、2018 年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂及び投資家と企業の対話ガイドラインにおいて、取締役会におけるジェンダーや国際性等の多様性確保を明記した。また、2021 年6月のコーポレートガバナンス・コード及び投資家と企業の対話ガイドラインの改訂においては、管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用等)についての考え方と測定可能な自主目標の設定を求めている。
また、働く女性の妊娠・出産等ライフイベントに起因する望まない離職等を防ぎ、個人のウェルビーイングと企業の人材の多様性を高めるため、2021年度から、フェムテック企業、女性を雇用する企業、医療機関、自治体等が連携してフェムテック等の製品・サービスを活用したサポートサービスを提供する事業を補助していく。
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響が女性の生活や雇用に深刻な影響を与えていることを踏まえ、政府の新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針において、「各種対策を実施する場合において、女性に与える影響を十分配慮して実施する」旨を明記し、対策を実施している。
【事例】福井県鯖江市の取組
昔から家族経営が多く女性が社会参画しやすい風土があるという地域特性を活かし、女性活躍プラットフォームを創出することで、国際的な情報発信、意識啓発、活動拠点でのステークホルダーの連携を推進している。女性起業家の育成、サテライトオフィス誘致による雇用創出、市民協働のまちづくり等を通して、女性が輝くまちづくりを軸とした「居場所」と「出番」づくりを創出しながら、女性のエンパワーメントを生み、子供や男性、地域全体のエンパワーメントにつなげている。
(ダイバーシティ・バリアフリーの推進)
日本は、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会の実現に向け、障害者基本計画を策定し、障害者の自立と社会参加の支援等のための施策等の推進を図っている。
移動等円滑化の観点から、旅客施設・車両等のバリアフリー化、市町村によるマスタープラン又はバリアフリー基本構想の作成を通じた駅周辺等の面的なバリアフリー化、国民の理解と協力を求める心のバリアフリーを総合的に推進している。更に、障害者雇用の推進のため、法定雇用率を達成していない事業主に対しての達成に向けた指導等、障害者の希望や特性に応じた職業紹介、定着支援、合理的配慮の周知啓発等に取り組んでいる。
また、人種、障害の有無などの違いを理解し、認め合うことの重要性を認識してもらうため、啓発冊子の配布や啓発動画の配信を行ったり、学校等で人権教室を実施したりするほか、様々な民間団体等と連携・協力して、車椅子体験・障害者スポーツ体験などの体験型の人権教室も広く実施している。障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に教育を受けられるように環境整備を行うことも重要であり、学校設置者による学校施設のバリアフリー化に対する支援、障害の状態に応じた学びが保障出来るよう、医療的ケア児等も含めた子供への支援に必要な人材の確保、適切な就学先決定に向け必要な情報提供や医療・福祉等との連携の促進にも取り組んでいるところ。
さらに、在留外国人との共生社会を実現するため、2018年12月に「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を策定(2019年12月及び2020年7月に改訂)し、行政・生活情報の多言語・やさしい日本語化、相談体制の整備等の暮らしやすい地域社会づくり、医療機関における外国人患者受入環境整備、日本語教育の充実、外国人の子供に係る対策等、全ての人が互いの人権を大切にし、支え合う共生社会の実現のため、各種人権啓発活動を実施するなどして、受入れ環境整備を推進している。
(高齢者・障害者等の消費者被害防止のための見守りネットワークの構築)
認知症高齢者や障害者等の配慮を要する消費者を見守るためのネットワークとして、2014年の消費者安全法の改正により規定された、「消費者安全確保地域協議会」(見守りネットワーク)の設置促進に取り組んでおり、2021年3月までに327の地方公共団体で設置された。消費者安全確保地域協議会は、既存の福祉のネットワーク等に地域の消費生活センターや消費者団体等の関係者を追加することで、消費者被害の未然防止、拡大防止、早期発見、早期解決に資する見守りサービスの提供を可能にする取組である。
(働き方改革)
日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要である。そのため、個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指し、以下のような「働き方改革」のための取組を推進している。また、新型コロナウイルス感染症の拡大後、テレワークが広がっており、働き方改革や女性活躍に資するテレワークの普及展開や、中小企業向けセミナーや相談会、専門家によるテレワーク導入支援、先進事例の表彰等を行っている。
* 同一労働同一賃金など非正規雇用労働者の待遇改善
* 長時間労働の是正や柔軟な働き方がしやすい環境整備
(時間外労働の上限規制、産業医・産業保健機能の強化等)
* 生産性向上、賃金引上げのための支援
* 女性・若者の活躍の推進(子育て等で離職した正社員女性等の復職支援や男性の育休取得の促進、若者に対する一貫した新たな能力開発等)
* 人材投資の強化、人材確保対策の推進
* 治療と仕事の両立、障害者・高齢者等の就労支援
(貧困・格差解消に資する社会保障制度措置)
生活に困窮される方については、生活困窮者自立支援制度による包括的な支援を行っており、困窮のため最低限度の生活を維持できない方については、生活保護法に基づき、健康で文化的な最低限度の生活に必要な保障を行っている。
また、年金を受給しながら生活をしている高齢者や障害者等の中で、年金を含めても所得が低い方々を支援するため、月額約5千円を基準とし、年金に上乗せして支給する年金生活者支援給付金について、引き続き着実に支給していくこととしている。
生活保護受給者の推移を見ると、2018年における被保護人員数の総数は前年から横ばいとなる中で、65歳以上の生活保護受給者は104万人で、前年(103万人)より増加している。また、65歳以上人口に占める生活保護受給者の割合は2.93%で、前年と同じ水準であった。
新型コロナウイルス感染症の拡大が人々に及ぼす影響について、引き続き注視していく必要がある。
(子供の貧困対策の推進)
子供の貧困問題への対応については、2013年6月に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が成立し、これを受け、政府において、子供の貧困対策に関する基本的な方針を始め、子供の貧困に関する指標、指標の改善に向けた当面の重点施策、子供の貧困に関する調査研究等及び施策の推進体制等を定めた「子供の貧困対策に関する大綱」を策定し、子供の貧困対策を総合的に推進してきた。
これらを踏まえ、2019年6月、議員立法による「子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」が成立した。同法による改正後の法律では、目的として、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、子供の「将来」だけでなく「現在」の生活等に向けても子供の貧困対策を総合的に推進すること、子供の最善の利益が優先考慮されること、貧困の背景に様々な社会的要因があること等が明記された。政府は、法改正の趣旨や幅広く関係者から意見聴取を行った子供の貧困対策に関する有識者会議における提言等を踏まえ、同年11月に新たな「子供の貧困対策に関する大綱」を閣議決定した。
政府は同大綱に基づき、貧困の連鎖を断ち切るため、子供の現在及び将来を見据えた対策を実施するとともに、全ての子供が夢や希望を持てる社会の実現を目指し、子供のことを第一に考えた支援を包括的かつ早期に講じていくこととしている。子供の貧困対策を進めるに当たっては、親の妊娠・出産期から子供の社会的自立までの切れ目のない支援体制を構築し、支援が届いていない又は届きにくい子供・家庭を早期に発見し、早期に対策を講じるとともに、地域の実情を踏まえた地方公共団体による取組の充実を図ることとしている。また、子供の貧困に対する社会の理解を促進するため、「子供の未来応援国民運動」の展開等、どんな環境であっても前向きに伸びようとする子供たちを支援する環境を社会全体で構築する官公民の連携・協働を積極的に進めている。
(次世代の教育振興・あらゆる人々の教育機会の確保)
幼児期の教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであること等に鑑み、全ての子供に質の高い幼児教育を受ける機会を保障するため、幼児教育・保育の無償化(段階的無償化を経て2019年10月より完全無償化)、高等教育の修学支援新制度(授業料等減免制度の創設及び給付型奨学金の拡充)等による経済的支援の充実などに取り組んでいるほか、その質の向上にも取り組んでいる。また、障害のある児童生徒の教育の一層の充実を図るための学校における特別支援教育の推進、学校卒業後の障害者の生涯学習の推進等や、男女共同参画を推進する教育・学習に取り組んでいる。
また、前述のとおり、「持続可能な社会の創り手」となることが新学習指導要領で掲げられており、同指導要領の着実な実施を通じて、若い世代やその親の世代でSDGsの認知度が高まることや、SDGsを学校で学んだ世代が2030年やその先の未来で活躍することが期待される。SDGsが目指す持続可能な社会の構築を目的とする環境教育等促進法に基づき、環境教育・ESD(持続可能な開発のための教育)も推進しており、教育者研修、体験学習の推進、情報発信、表彰制度による取組奨励等を行っている。持続可能な社会の実現に向け、ESDに関わる多様な主体が分野横断的に協働・連携してESDを推進することが重要であり、例えば、環境省と文部科学省は、共同でESD推進ネットワークを整備運用している。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大により、オンライン教育が教育現場に取り入れられつつあり、義務教育段階の児童生徒「1人1台端末」や学校における高速大容量の通信ネットワークの整備等、学校におけるICT 環境の実現に向けて、ハード・ソフト・人材を一体とした整備を行っている。
(「ビジネスと人権」に関する行動計画の策定・実施)
国際的に企業に対する人権尊重を求める声が高まる中、国連人権理事会では「ビジネスと人権に関する指導原則」が支持され、また、SDGs達成に当たっては、人権の保護・促進が重要な要素と位置付けられている。こうした背景の下、2020年10月、関係府省庁が協力し、企業活動における人権尊重の促進を図るため、「ビジネスと人権」に関する行動計画を策定した。
同行動計画においては、「ビジネスと人権」に関して、今後政府が取り組む各種施策が記載されているほか、企業に対し、企業活動における人権への影響の特定、予防・軽減、対処、情報共有を行うこと、人権デュー・ディリジェンスの導入促進への期待が表明されている。
同行動計画の実施や周知を通じて、「ビジネスと人権」に関する関係府省庁の政策の一貫性を確保するとともに、責任ある企業行動の促進を図り、企業活動により人権への悪影響を受ける人々の人権保護・促進、ひいては、国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進に貢献すること、日本企業の企業価値と国際競争力の向上、及びSDGs達成への貢献に繋がることが期待されている。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、労働条件に関するサプライ・チェーン及び会社運営における脆弱性が浮き彫りになったことが指摘されている。このような国際社会の動きも踏まえ、政府として、人間の安全保障の理念に基づき、SDGs実現に向けた取組をより一層推進すべく、責任ある企業活動の確保に向け、同行動計画を着実に実施していく。
(2)国際協力
(女性の活躍推進)
日本は、女性が持つ力を最大限発揮できるようにすることは、社会全体に活力をもたらし、成長を支える上で不可欠との考えのもと、ジェンダー平等の実現・女性のエンパワーメントの促進に向け、国際社会との協力や途上国支援を進めている。2016年5月には、「開発協力大綱」に基づく新たな分野別開発政策の一つとして「女性の活躍推進のための開発戦略」を発表するとともに、2016年から2018年までの3年間で、約5千人の女性行政官等の人材育成と約5万人の女児の学習改善の改善を実施する旨を表明した。その結果、11,345人の女性行政官等を育成し、61,173人の女児の学習改善を実施した。また、2019年3月に開催された5回目となる国際女性会議WAW!において、途上国における女性の活躍推進のために、2020年までの3年間で最低400万人の途上国の女性たちに対して質の高い教育や人材育成の機会を提供する旨表明した。
(国際平和協力におけるジェンダー平等の推進)
政府は、安保理決議第1325号(女性と平和・安全保障の問題を明確に関連づけた初の安保理決議)等の履行に関する行動計画を策定し、2015年9月、ニューヨークで開催された国連総会一般討論演説において、安倍内閣総理大臣(当時)から策定につき発表した。2016年から3年間の実施を経て、2019年3月、政府関係省庁、NGO・有識者との意見交換、パブリックコメントを経て行動計画を改訂し、第二次行動計画を策定した。
平和維持活動(PKO)の取組において、女性要員の重要性は一層増加している。日本は、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に対し、現在4名の司令部要員を派遣しているが、2018年以降、継続して25~50%の割合で女性要員を派遣しており、引き続き女性要員の派遣を含め、ジェンダーへの取組を推進していく。なお、PKO法の下で派遣される日本の要員は、ジェンダーに関する派遣前研修を受講しており、派遣先では、ジェンダーに配慮した活動を行うことが期待されている。
(教育)
日本は従前から、国づくりと成長の礎である人材育成を重視して、開発途上国の基礎教育や高等教育、職業訓練の充実などの幅広い分野において教育支援を行っており、2015年9月に発表した「平和と成長のための学びの戦略」では、①包摂的かつ公正な質の高い学びに向けた教育協力、②産業・科学技術人材育成と持続可能な社会経済開発の基礎づくりのための教育協力、③国際的・地域的な教育協力ネットワークの構築と拡大を基本原則とし、途上国のSDGs達成を支援していくことを定めた。
例えば、産業人材育成と日本企業のアフリカビジネスをサポートする「水先案内人」の育成を目的とする「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ」(ABEイニシアティブ)を通じ、アフリカの若者を日本に招き、日本の大学での修士号取得と日本企業などでのインターンシップの機会を提供し、2014年度から2019年度までに1,285名(うち女性329名)の研修員を受け入れ、既に計1,028名がプログラムを修了している。更に、日本とASEANの頭脳を集結し、科学技術イノベーションの分野で両者の更なる発展を支援すべく、2003年から工学系分野を対象に日本の14の大学とASEANの26の工学系トップ大学をネットワークで繋ぐ「AUN/SEED-Net」を構築している。また、JICAは、政府が推進する「明治150年」関連施策の一つとして2018年にJICA開発大学院連携構想を発足させ、途上国からの優れた人材の受入れを通じた国内の地域活性化や大学教育の活性化、日本でのグローバル人材育成等を進めている。
(障害者・紛争被害者支援)
国際協力事業では、障害者の参加を促進し、途上国における障害者の自立生活促進を支援している。また、障害者・紛争被害者の自立生活支援に取り組む日本のNGOも多く、第4回ジャパンSDGsアワードでは、ラオスと日本の障害事業所が協力し、お土産品を製造、地元企業に納品することで、国を超えて障害者が支え合う仕組みを確立した「特定非営利活動法人Support for Woman’s Happiness」と、元子供兵の社会復帰支援や、性的暴力を含む紛争被害者の生計向上支援を実施する「特定非営利活動法人テラ・ルネッサンス」にSDGs推進本部副本部長賞が授与された。
(スポーツの価値の拡大)
東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け、日本は「スポーツ・フォー・トゥモロー」プログラムを推進しており、スポーツを通じて、インクルーシブな社会の構築支援や、紛争、災害後のケアなどの国際協力に取り組んでいる(2020年9月末までに204か国・地域の約1,200万人が裨益)。また、今後、東京オリンピック・パラリンピック競技大会やワールドマスターズゲームズ2021関西等、大規模国際競技大会の連続開催の機会を活用し、SDGs の認知度を高め、スポーツが多様な社会課題の解決に貢献しうることについて啓発活動を行う予定である。
優先課題2 健康・長寿の達成
新型コロナウイルス感染症の拡大により、保健・医療システムの重要性が再確認された。感染症は一国だけの問題ではなく、国際社会が一丸となって取り組む必要がある。日本は従前から、人間の安全保障の理念の下、保健・医療分野での取組を重視してきたが、次なる危機にも備えるため、国際保健課題で中核的役割を担うWHOの検証・改革や機能強化、途上国の保健・医療システムの強化が不可欠である。
日本国内では、50年以上にわたる国民皆保険制度等を通じて、世界一の健康長寿社会を実現した実績を有している。日本の健康寿命は男性72.14歳、女性74.79歳(2016年)と世界的に見て高い水準にあるが、健康寿命と平均寿命に乖離が大きいことが課題として指摘されている。介護する負担の軽減と、高齢者本人の健康な暮らしのため、健康寿命の延伸は重要である。
(1)国内の課題と取組
日本における医療及び介護の提供体制は、世界に冠たる国民皆保険を実現した医療保険制度及び創設から21年目を迎え社会に定着した介護保険制度の下で、着実に整備されてきた。しかし、高齢化の進展に伴う高齢者の慢性疾患の罹患率の増加により疾病構造が変化し、医療ニーズについては、病気と共存しながら、生活の質(QOL)の維持・向上を図っていく必要性が高まってきている。一方で、介護ニーズについても、医療ニーズを併せ持つ重度の要介護者や認知症高齢者が増加するなど、医療及び介護の連携の必要性はこれまで以上に高まってきている。特に、認知症への対応については、地域ごとに、認知症の状態に応じた適切なサービス提供の流れを確立するとともに、早期からの適切な診断や対応等を行うことが求められている。また、人口構造が変化していく中で、医療保険制度及び介護保険制度については、給付と負担のバランスを図りつつ、両制度の持続可能性を確保していくことが重要である。
こうした中で、医療及び介護の提供体制については、サービスを利用する市民の視点に立って、ニーズに見合ったサービスが切れ目なく、かつ、効率的に提供されているかどうかという観点から再点検していく必要がある。また、高齢化が急速に進む都市部や人口が減少する過疎地等といったそれぞれの地域の高齢化の実情に応じて、安心して暮らせる住まいの確保や自立を支える生活支援、疾病予防・介護予防等との統合も必要である。
政府としては、このように、利用者の視点に立って切れ目のない医療及び介護の提供体制を構築し、国民一人ひとりの自立と尊厳を支えるケアを将来にわたって持続的に実現していくことを目指して取組を進めている。
企業等が従業員の健康保持・増進に戦略的に取り組む「健康経営」を推進することも重要であり、健康経営に取り組む企業等がより評価される環境の整備等を行うため、経済産業省では健康経営に関する顕彰制度(健康経営銘柄、健康経営優良法人)を実施している。
また、栄養バランスに配慮した食生活の実践等により生涯を通じた心身の健康を支えることが重要であり、政府は2021年3月に、持続可能な食を支える食育の推進を重点事項とする「第4次食育推進基本計画」を作成した。これに基づき、国民の健全な食生活の実現と、環境や食文化を意識した持続可能な社会の実現のために、SDGsの考え方を踏まえながら、多様な関係者が相互の意見を深め、連携・協働し、国民運動として食育を推進することとしている。
【事例】新潟県見附市の取組
日常生活で必要な運動量が確保できる「歩いて暮らせるまちづくり」の推進と社会参加を通じた交流の喜びや生きがいの享受をポイントに、コミュニティーバスのルート最適化、ウエルネスタウンの拠点化整備、SDGsとプログラミング教育を連携させたモデル授業などを実施している。まちなかに歩行者を増やし、人と人とが触れ合え交流でき、賑わいのある中心市街地として都市機能を集約することで、将来に渡り持続できる都市形成を図っている。
(2)国際協力
日本は従前から、人間の安全保障に直結する保健医療分野での取組を重視している。2015年2月の「開発協力大綱」の閣議決定を受け、同年9月、政府は、保健分野の課題別政策として「平和と健康のための基本方針」を定めた。この方針は、日本の知見、技術、医療機器、サービスなどを活用しつつ、①すべての人への生涯を通じたUHCを目指していくこと、②エボラ出血熱などの公衆衛生危機に対応する体制を構築することを示しており、これらの取組は、SDGsに掲げられた保健分野の課題解決を追求し、被援助国が自ら保健課題を検討・解決していく上でも重要なものである。
また、2014年7月に閣議決定された「健康・医療戦略」において、健康・医療に関する国際展開の促進が柱の一つとして掲げられ、2016年7月に「アジア健康構想に向けた基本方針」、2019年6月には「アフリカ健康構想に向けた基本方針」が決定された。
政府は、G7、アフリカ開発会議(TICAD)、国連総会などの国際的な議論の場においても、「日本ブランド」としてのUHCの達成に向けた取組を積極的に主導してきており、2017年12月には「UHC FORUM 2017」を、WHOや世界銀行、国連児童基金(UNICEF)、UHC2030と共催し、2030年までにUHCを達成すべく取組を加速させるためのコミットメントとして「UHC東京宣言」を採択した。
日本が議長国として開催した2019年6月のG20大阪サミットでは、UHCの達成、健康で活力ある高齢化、薬剤耐性(AMR)を含む健康危機について、課題解決に向けた具体的な施策を議論した。また、大阪サミット開催に合わせて、G20で初めてとなるG20財務大臣・保健大臣合同セッションを開催し、経済発展の早い段階でUHCに取り組むことが重要であり、そのためには財務当局と保健当局が連携して保健財政制度を設計する取組が重要であること等について議論した。同年10月には「G20岡山保健大臣会合」を開催し、UHCの達成に必要な政策の方向性を盛り込んだ大臣宣言を採択した。
2019年8月の第7回アフリカ開発会議(TICAD7)では、TICAD VIやG20大阪サミットの成果も踏まえ、「横浜宣言2019」を採択し、「横浜行動計画2019」をその付属文書として発表した。その中で、アフリカにおいてUHCの達成にむけた取組を更に推進することが確認された。また、同会議においては、保健・財政当局の連携強化を通じた持続可能な保健財政等の保健システム強化、能力開発の強化、感染症・非感染性疾患対策、母子保健、栄養改善および水・衛生、民間セクターとの連携促進などについて議論され、アフリカにおけるUHCの達成にむけた取組を一層推進することが確認された。
また、日本は、ヘルスケア産業の国際展開を通じた新興国の医療向上への貢献も行っている。具体的には、持続可能な形で、新興国等における医療・介護・健康課題の解決に貢献するため、政府は日本の病院や企業等が、海外において医療・介護・健康サービス等の事業を行うための事業化を支援している。2010~2020年までに、約165件の新興国・途上国への海外展開実証事業の支援を実施した。
新型コロナウイルス感染拡大に関し、日本は、国民皆保険制度等、これまで築き上げてきた保健システムにより、新型コロナウイルス感染症による死亡率を世界でも低水準に抑えてきている。この経験を活かし、人間の安全保障への脅威である新型コロナウイルス感染症との世界的な闘いにおいて、「誰の健康も取り残さない」という理念のもと、UHCの達成に向けて国際社会と協力を進めている。
この考え方に基づき、日本は、新型コロナウイルス感染症の危機に際し、1,700億円(約15.4億ドル)を超える支援を、2020年2月からの数か月間にかつてないスピードで実施した。日本は、(1)現下の感染症危機を克服し、(2)将来の健康危機への備えにも資する保健システムを強化し、(3)より幅広い分野での健康安全保障を確実にするための国際的な環境を引き続き整備する。 また、JICAでは、新型コロナウイルス感染拡大が女性や、開発協力を実施する際のアクションにかかるガイダンスノート「ジェンダー視点に立ったCOVID-19対策の推進(2020年6月)」を作成し、新型コロナウイルス感染症の拡大において女性や少女を取り残さない事業を進めている。
【事例】COVAXワクチン・サミット(AMC増資首脳会合)の開催
2021年6月、日本政府とGaviの共催でCOVAXワクチン・サミット(AMC増資首脳会合)がオンライン形式で開催された。本会合は、新型コロナウイルス感染症の収束のため、COVAXファシリティを通じて、途上国のために安全性、有効性及び品質が保証されたワクチンへの公平なアクセスを確保すべく、2021年末までに必要なワクチンの確保のための資金調達を目的に開催されたもの。
菅総理大臣からは、新型コロナウイルス感染症との闘いにおける国際社会の更なる連帯とコミットメントを呼びかけ、日本として、人間の安全保障の理念の下、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向け、安全で効果的なワクチンを公平かつより多くの人々に届けることを全面的に支援する旨述べた。その上で、菅総理大臣は、日本がCOVAXファシリティの取組を支持し、2億ドルの貢献を行ってきていることを紹介した上で、今後更に8億ドルを追加拠出することを表明した。また、環境が整えば、しかるべき時期に、日本国内で製造するワクチンを、3,000万回分を目途として、COVAXファシリティ等を通じて各国・地域に供給していく考えも示した。
茂木大臣からは、各国・機関による更なる協力に期待する旨述べたほか、特に民間セクターを含むパートナーとの協力に関するセッションにおいて、日本の技術や強みを活かし各国の接種現場までワクチンを届ける「ラスト・ワン・マイル支援」の考え方を強調しつつ、COVAXファシリティとの協働を呼びかけた。
今次会合の結果、各国政府及び民間セクターから、多くの追加の資金拠出が表明され、18億回分(対象となる途上国の人口約30%相当)のワクチンを確保する上での資金調達目標(83億ドル)を大きく超える額を確保することができた。
【事例】「誰の健康も取り残さない」ための日本の協力ー世界のUHC達成に向けてー
(これまでに行ってきた協力例)
1.ベトナムの新型コロナウイルス感染症対策(医療・検査体制の強化)への協力:
日本は、1970年代以降、ベトナム国内3か所の中核病院を含め延べ24病院を支援し、医療体制の基盤整備と専門人材育成に貢献してきた。2003年のSARS流行時におけるバックマイ病院の経験や、15年にわたる感染症研究及び検査体制強化支援が、今次ベトナムの新型コロナウイルス感染症対策の成功に寄与している。
南部拠点病院のチョーライ病院では、新型コロナウイルス感染症患者第1号の受入・治療を実施した。ベトナム中部で発生した第2波においては、チョーライ病院が人工肺などの医療機器および医療従事者をチームで派遣し、重症患者の対応を支援した。また、チョーライ病院は南部25省へマニュアル配布・研修を実施し底上げを図っている。
国立衛生疫学研究所(NIHE)は、全国の新型コロナウイルス感染症検査ネットワーク構築・拡大の中核的な役割を果たしており、2020年2月以降、政府及びJICAは、検査体制の強化を図るため追加支援を行い、ベトナム国における新型コロナウイルス感染症検査認証機関の増加(4機関→86機関)につながる貢献をしている 。また、NIHEは、長崎大学とともに新型コロナウイルス感染症抗体検査キットの共同開発や、検査ガイドライン作成に携わっている。
2.ケニア及びガーナの感染症検査・研究・人材育成への協力:
ケニア中央医学研究所(KEMRI)及びガーナ野口記念医学研究所(ガーナ野口研)に対し、技術協力によるソフト面と無償資金協力によるハード面で中核研究拠点としての支援を継続して実施している。JICA支援の下で共同研究協力も実施しており、国際機関や世界の大学等との共同研究を多数行っている。
2020年2月以降は、新型コロナウイルス感染症対策支援として、検査キット、検査用消耗品の資機材供与も実施している。ケニア国内の新型コロナウイルス感染症のPCR検査数のうち、ピーク時で6割をKEMRIで検査を行ったほか、ガーナ国内の新型コロナウイルス感染症のPCR検査数のうち、ピーク時で8割を野口研で検査を行った。KEMRIは東アフリカ地域向け、ガーナ野口研は西アフリカ地域向けへそれぞれ感染症対策の検査能力強化研修も実施している。
3.ASEAN 感染症対策センターの設立
新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中、ASEAN 事務局の要請を受け、2020 年4月14 日に開催された新型コロナウイルス感染症に関するASEAN+3特別首脳テレビ会議において、ASEAN感染症対策センターの設立を全面的に支援する旨を表明した。地域の中核拠点として、ASEAN の公衆衛生の危機や新興感染症への準備・探知・対応能力の強化を通じ、同地域の感染症対策能力を強化することすることを目的としている。具体的には、感染症の発生動向・状況に関する調査の強化、ラボネットワークの形成や感染症対策担当者への研修などを行う予定である。同センター設立に向けて、日・ASEAN 統合基金に約55 億円(5000 万ドル)を拠出した。
2020 年11 月12 日に開催された日・ASEAN 首脳会議に引き続き開催された設立行事において、同センターの設立が正式に発表され、菅内閣総理大臣から、設立後も継続的な支援を惜しまない考えを表明した。日本は、同センターがASEAN の人々を感染症の脅威から守る組織へと発展するよう、JICA の技術協力による専門家派遣や研修の実施を検討中であり、これからも継続的な支援を実施していく。
4.世銀グループを通じた途上国による感染症への対応・備えの強化に向けた取組
日本は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、2020年4月、世銀とともに、途上国による感染症への迅速な対応と将来の感染症への備えの強化を一層支援するため、「保健危機への備えと対応に係るマルチドナー基金(Health Emergency Preparedness and Response Multi-Donor Trust Fund:HEPRTF)」を立ち上げた。2020年9月には、同基金による第一号案件として、スーダンに対し、パンデミック対応計画の策定、検査・監視体制の構築等の保健システム強化のための支援を決定しており、今後更に途上国への支援を実施していく。
(母子健康手帳の普及)
母子健康手帳とは、妊娠中及び出産時の母子の状態、子供の成⾧・健康状況を、継続的に記録するための冊子で、日本では、1948年にそれまで妊産婦自身の健康管理に使われていた妊産婦手帳の対象を乳幼児まで拡大した母子健康手帳の活用が始まり、今では母子の死亡が最も少ない国の一つになっている。母子健康手帳は、母親や子供が必要なケアを継続的に受けられるようにするための重要なツールの一つであると共に、家庭で参照できる育児書としての特徴もある。自らの経験を踏まえ、日本は、世界の母子の命と健康を守るため、開発途上国における母子健康手帳の導入・普及を支援しており、毎年、世界で生まれる新生児とその母親のうち7組に1組が母子健康手帳を使うようになっている(2019年ユニセフ世界こども白書における年間世界出生数及び母子健康手帳の年間発行数より推計)。
優先課題3 成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
新型コロナウイルス感染症の拡大前から各国がデジタル分野等で激しい国際競争を展開していたが、今般のグローバルな規模での感染症拡大は、パラダイムシフトとも言うべき大きな変化を世界に引き起こしている。
日本は、従前からデジタル化を原動力としたSociety 5.0実現の取組を推進してきていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、行政分野を中心に社会実装が大きく遅れ活用が進んでおらず、先行諸国の後塵を拝していることが明白となった。デジタル化、そしてSociety 5.0 の実現は、経済社会の構造改革そのものであり、制度・政策の在り方や行政を含む組織の在り方なども併せて変革していく、社会全体の変容が不可欠である。特に、この分野の人材の獲得競争は世界的に激化しており、性別を問わず人材育成が急務である。STEM分野やデジタル・テクノロジー分野でのジェンダー・ギャップを縮小させ、経済発展の原動力たるイノベーション領域で女性が公平に評価され、活躍できるような環境整備が求められる。また、デジタル化社会到来の中で、デジタル・デバイドを防ぐことが肝要であり、教育や地域社会での取組が求められる。さらに、AI の情報リソースとなる蓄積された過去のデータやアルゴリズムに含まれるジェンダー・バイアスを認識する必要がある。今般の感染症拡大の局面で現れた国民意識・行動の変化などの新たな動きを後戻りさせず社会変革の契機と捉え、少子高齢化や付加価値生産性の低さ、東京一極集中などの積年の課題を解決するとともに、通常であれば10年かかる変革を、将来を先取りする形で一気に進め、「新たな日常」を実現することが重要である。
(1)国内の課題と取組
(スマートシティの推進)
AI、IoT 等の新技術やビッグデータといった先進的技術の活用が進められている中、日本はSociety5.0の実現を目指し、先進的技術や新たなモビリティサービスである MaaS (Mobility as a Service)、官民データ等をまちづくりに取り入れ、市民生活・都市活動や都市インフラの管理・活用の高度化・効率化や施設立地の最適化、データ連携基盤の構築など都市のマネジメントを最適化し都市・地域課題の解決を図る「スマートシティ」の取組を推進している。これにより、住民満足度の向上、産業の活性化、グリーン化・資源利用の最適化・自然との共生の実現など社会的価値、経済的価値、環境的価値等を高める多様で持続可能な都市や地域の形成を進めている。
2017年度から、総務省は都市OSの整備に対する補助事業を通じて、データ利活用型スマートシティの構築を進めている。2019年度から、国土交通省は先駆的な取組を行っているスマートシティモデル事業の選定・支援を実施しており、モデル事業において得られた知見や経験等の横展開にも取り組んでいる。また、同年度から、MaaSの実証実験のほか、AIオンデマンド交通の導入やキャッシュレス決済の導入、交通事業者におけるデータ化といった基盤整備へ支援を実施している。各地のスマートシティの実現の実証・実装に向けた取組を支援する予算として、科学技術関係経費の総額の減少に関わらず、必要額を確保するとともに、関係府省が連携・協調して支援を実施している。加えて、内閣府ではスマートシティの標準的な設計の考え方であるリファレンス・アーキテクチャを構築し、各地のスマートシティ開発に活用することで、相互接続性・拡張性のあるスマートシティの展開を進めている。これらの取組から得られた知見をもとに内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省共同で2021年4月に「スマートシティ・ガイドブック」を作成し、全国におけるスマートシティの構築に役立てている。
また、2020年に策定された「インフラシステム海外展開戦略2025」においても、「質高インフラと現地との共創の推進」は重要施策の1つとして取り上げられおり、スマートシティ、MaaS等関連事業の海外への情報発信・展開に取り組んでいる。特にASEANにおいては、2020年12月16日に開催した第2回日ASEANスマートシティネットワークハイレベル会合において、日本がASEAN各国に対する支援パッケージ「Smart JAMP(Smart City supported by Japan ASEAN Mutual Partnership:日ASEAN相互協力による海外スマートシティ支援策)」を提案し、ASEAN 10カ国26都市から歓迎された。
(地方創生SDGsの推進)
SDGsを原動力とした地方創生を推進するため、前述のとおり、地方創生に係る地方公共団体における優れたSDGsの取組を「SDGs 未来都市」として選定し、内閣府及び有識者・自治体SDGs関係省庁タスクフォースによる助言等を行いながら、各都市の計画策定や進捗管理への総合的な支援をしている。SDGs未来都市に選定された地方自治体の中で、特に優れた先導的な取組である「自治体 SDGs モデル事業」に対しては資金的な支援も行いながら、地方創生に向けたSDGsモデル事例を形成し、その成功事例の普及展開・国内外への情報発信を継続している。また、地域課題の解決に向けて、民間企業等の参画を促進し、官民連携を推進するため、「地方創生SDGs 官民連携プラットフォーム」を立ち上げ、マッチング事業や分科会の活動等を実施している。更に、「地方創生SDGs金融」を通じた自律的好循環を形成するため、地方公共団体が地域課題の解決等に取り組む地域事業者等の取組を可視化する登録・認証等制度展開のため「地方創生SDGs登録・認証等ガイドライン」を2020年10月にとりまとめ、公表した。
新型コロナウイルス感染症の拡大により地域経済・生活に甚大な影響が生じていることを踏まえ、引き続き、地方創生SDGsの理念に沿って「新たな日常」に対応した経済活動の立て直しや危機に強い経済構造の構築等、持続可能なまちづくりに向けた地方公共団体の取組を支援していく。
(持続可能な観光)
「住んでよし、訪れてよし」の観光地域づくりを実現するためには持続可能な観光が重要であり、国際機関等と連携してシンポジウムを開催し、新型コロナウイルス感染症による影響からの回復等も含めた持続可能な観光地マネジメントの取組について情報共有を行い、持続可能な観光の推進を促している。また、観光庁長官をトップとして発足した「持続可能な観光推進本部」において2019年に報告書「持続可能な観光先進国に向けて」を公表。その後、効果的な観光地マネジメントに資する国際基準に準拠した「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」の普及、また当ガイドラインの効果的運用を目指したモデル地区の選定並びに支援、モデル事業等も活用した混雑・マナー違反対策等の促進により、持続可能な観光の実現に向けた取組を強化している。また、国立公園の保護と利用の好循環による地域活性化を目指した「国立公園満喫プロジェクト」を展開し、自然環境の保全を図りつつ、自然の魅力そのものを活かした誘客、受入環境整備、公園利用者による保全協力金などが地域の自然環境の保全に活かされる仕組みの構築、脱炭素、プラスチックゴミ削減等を含めた持続可能な観光地づくり等を推進している。
さらに、感染症を含む観光危機への対応を強化するため、自治体・観光事業者等が観光危機管理を導入するための手引書等を作成している。
宿泊施設及び観光スポットには、全ての訪日外国人旅行者がストレスフリーで快適に旅行できる環境を整備するため、宿泊施設が実施する客室や共用部のバリアフリー化改修等の取組を支援するとともに、観光地を代表する観光スポットにおけるバリアフリー化を推進している。
また、誰もが安心して旅行を楽しむことができる環境を整備するため、地方自治体、NPO等の幅広い関係者の協力の下、地域の受入体制を強化するほか、ユニバーサルツーリズムの普及・促進を図っている。
(原子力災害からの創造的復興とイノベーションの創出)
原子力災害によって甚大な被害を受けた福島において、「創造的復興の中核拠点」として、国内外の叡智を結集して、新産業の創出等、福島の創造的復興に不可欠な研究開発及び人材育成を行い、発災国の国際的責務としてその経験・成果等を世界に発信・共有するとともに、そこから得られる知見を基に、日本の産業競争力の強化や、日本・世界に共通する課題解決に資するイノベーションの創出を目指す国際教育研究拠点を新設する予定。
具体的には、基礎研究も対象としつつ、これまでの既存施設による分野縦割りの研究では解決が困難であった課題に対して、新たに、技術・手法等を学際的に融合させて取り組み、産学官一体の取組を通じて研究成果の社会実装・産業化を実現することにより、産業構造・社会システムの転換につなげる。また、大学院生等に対する人材育成や、小中高校生等や地元企業の人材育成を推進するとともに、他の研究機関が有する世界最先端の人材を活用し、研究開発・実証を担う人材を集積・育成する。2021年度中に新拠点に関する基本構想を策定する予定である。
【事例】京都府舞鶴市の取組
企業や教育機関と連携する中でAIやICT等の先進技術を積極的に導入し、エネルギーや交通、生活(マッチング・キャッシュレス)、公共(インフラや人の見守り)等をつなぎ合わせて有効に活用するための「舞鶴版Society5.0」の実装を推進している。共生型MaaS導入への実証実験やICTを活用した防災・減災システム実装に向けたモニタリング事業などに取り組み、人、物、情報、あらゆる資源がつながる持続可能な地域の実現を目指している。
(2)国際協力
(科学技術イノベーションの国際展開)
科学技術イノベーションは、経済・社会の発展を支え、安全・安心の確保においても重要な役割を果たす、平和と繁栄の基盤的要素である。そのため、2021年3月に策定した「第6期科学技術・イノベーション基本計画」においては、地球規模課題の解決に対し、日本のポテンシャルを活かして国際連携・協力に積極的に関与することが重要であるとして、①地球規模の気候変動への対応及び②生物多様性への対応を重要政策課題として設定し、研究開発の重点化を行うことを定めた。日本はその優れた科学技術を活かし、「科学技術外交」の推進を通じて、日本と世界の科学技術の発展、各国との関係増進、国際社会の平和と安定及び地球規模課題の解決に貢献している。
(途上国における栄養不良の改善等に資する国際共同研究)
アフリカ等の開発途上地域において、栄養不良の改善や所得の向上が課題となっている。そのため、国際農業研究協議グループ(CGIAR)と共同研究を実施し、マメ類及びイモ類の高栄養化・高付加価値化や、市場ニーズに適合した良食味・高栄養なイネ系統の開発を実施しており、このような主要作物の育種基盤の整備と栄養強化新品種等の開発を通じて、開発途上地域の食料・農林水産業に貢献することとしている。
【事例】持続可能な開発目標達成のための科学技術イノベーション
2019年6月のG20大阪サミットでは、科学技術イノベーション(STI)の重要性、並びにSTIの潜在力を活用する上で、政府、学術界、研究機関、市民社会、民間セクター及び国際機関を含む様々な利害関係者の効果的な関与が不可欠であることが確認され、同サミットの成果文書である「大阪首脳宣言」の附属文書として、G20開発作業部会で作成された「持続可能な開発目標達成のための(STI for SDGs)ロードマップ策定の基本的考え方」が承認された。
内閣府では、途上国のニーズと日本の科学技術シーズとのマッチングを図る「STI for SDGsプラットフォーム」の調査・分析を実施している。この実証試験として、2020年度はケニアを対象国として、農業分野及び医療分野における、両国のステークホルダーによる会合を実施した。
また、JICAでは2019年度にケニア、ナイジェリア、ウガンダ及びルワンダ、2020年度にセネガル、ガーナ、ザンビア、タンザニア、モザンビーク、ベナンを対象に、STIを用いて社会開発課題を解決するオープンイノベーションに取り組んでおり、新型コロナウイルス感染症の拡大における渡航制限下においても、スマートグラスなど遠隔コミュニケーション技術を活用した、効果的な技術指導の実証実験等を推進している。
【事例】地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)
日本の科学技術とODAとの連携により、開発途上国のニーズに基づき、環境・エネルギー分野、防災分野、生物資源分野、感染症分野における地球規模課題の解決と将来的な社会実装につながる国際共同研究を推進するとともに、SDGs 達成に向け研究成果の社会実装を加速させるべく、相手国政府の協力を得て国内外のステークホルダーとの連携・協働に繋げる橋渡しを実施している。令和3年4月までに52か国で156課題を実施し、SDGs達成に向け研究成果の社会実装の加速に貢献している。
優先課題4 持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
日本は、過去の幾多の災害の経験を踏まえ、国内では、「強さ」と「しなやかさ」を持った安全・安心な国土・地域・経済社会の構築に向けた「国土強靱化」(ナショナル・レジリエンス)を推進している。
また、国際協力においても、質の高いインフラの整備は、そこに暮らす人々の生活の改善につながるとともに、国内・域内の経済活動を刺激するものであり、各国の高い成長を支える重要な取組の一つであるとの認識の下、それぞれの国・地域の経済・開発戦略に沿った形で、官民一体となって質の高い成長につながるような質の高いインフラの整備を積極的に支援している。
(1)国内の課題と取組
(持続可能で強靭なまちづくり)
日本は、その国土の地理的・地形的・気象的な特性ゆえに、数多くの災害に繰り返しさいなまれてきた。そして、規模の大きな災害であればあるほど、まさに「忘れた頃」に訪れ、その都度、多くの尊い人命を失い、莫大な経済的・社会的・文化的損失を被り続けてきた。しかし、災害は、それを迎え撃つ社会の在り方によって被害の状況が大きく異なる。大地震等の発生の度に甚大な被害を受け、その都度、長期間をかけて復旧復興を図る、といった「事後対策」の繰り返しを避け、今一度、大規模自然災害等の様々な危機を直視して、平時から大規模自然災害等に対する備えを行うことが重要である。
「仙台防災枠組2015-2030」では、大規模災害の発生は、とりわけ、女性や子供、脆弱な状況にある人々がより多くの影響を受けることが指摘されており、女性と男性が災害から受ける影響の違いなどに十分に配慮された災害対応が行われることが必要である。非常時には、固定的な性別役割分担意識を反映して、増大する家事・育児・介護等の女性への集中や、配偶者等からの暴力や性被害・性暴力が生じるといったのジェンダー課題が拡大・強化されることから、平常時からあらゆる施策の中に、ジェンダー平等の視点を含めることが肝要である。
東日本大震災を始めとする過去の大規模自然災害から得られた教訓を踏まえ、2014年に定められた「国土強靱化基本計画」では、①人命の保護が最大限図られること、②国家及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けず維持されること、③ 国民の財産及び公共施設に係る被害の最小化、 ④迅速な復旧復興を基本目標と定め、「強さ」と「しなやかさ」を持った安全・安心な国土・地域・経済社会の構築に向けた「国土強靱化」(ナショナル・レジリエンス)を推進することとした。
気候変動の影響による災害の頻発化・激甚化に対応するため、抜本的な治水対策として、集水域と河川区域のみならず、氾濫域も含めて一つの流域として捉え、地域の特性に応じ、ハード・ソフトの両面からあらゆる関係者が流域全体で行う持続可能な「流域治水」を推進している。
災害脆弱性とインフラ老朽化を克服した安全・安心な社会、人・モノ・情報が行き交う活力ある社会を実現するため、人・地域をつなぎ、地域・まちを創る道路ネットワークを構築する「安全(Safe)、スマート(Smart)、持続可能(Sustainable)な道路交通システムの構築」に関する施策を推進している。
また、社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある地域づくり等を推進することが重要であり、2020年3月に設立した「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」を通じ、多様な主体の知見や技術を活用して、グリーンインフラの社会的な普及、技術に関する調査・研究、資金調達手法の検討等を進めるとともに、地方公共団体や民間事業者等への支援を充実させることでグリーンインフラの社会実装を加速している。
各種測量や位置情報サービスの正確性・効率性の確保や持続可能で強靭な国土形成のためには、地球上のどこでも正確な位置情報を与える共通の基盤である、地球の正確な形とその変化を表した地球規模の測地基準座標系(GGRF)の維持・普及が有益である。そのため、日本は国連総会で採択された GGRF に関する決議の共同提案国として、以下の取組を推進している。
• GGRF の構築や維持管理に関する途上国への技術移転
• 地球規模の地理空間情報に関する国連専門家委員会(UN-GGIM)の測地準委員会への参画
• GGRF 構築・維持に必要な国際的に連携した全球統合測地観測等による GGRF の普及支援
【事例】熊本県熊本市の取組
2016年に発生した熊本地震の経験と教訓から、包摂的な避難所運営組織の設置など地域を単位とした防災力(ソフト面)の向上、持続可能で利便性の高い公共交通網の形成と地下水や再生可能エネルギーなどが有効活用できる都市基盤(ハード面)の強靭化を目指すとともに、地域経済の活性化に取り組み、復興を加速化させている。これまでに、電気自動車の電力供給に係る官民連携協定の締結や、地域エネルギーの地産地消による経済の域内循環を行っている。
(2)国際協力
(質の高いインフラ)
開発途上国が自立的発展に向けた経済成長を実現するには、単なる量的な経済成長ではなく、成長の果実が社会全体に行き渡り、誰一人取り残さない「包摂的」なものであり、社会や環境と調和しながら継続していくことができる「持続可能」なものであり、経済危機や自然災害などの様々なショックに対して「強靱性」を兼ね備えた「質の高い成長」である必要がある。これらは、日本が戦後の歩みの中で実現に努めてきた課題でもあり、日本は、自らの経験や知見、教訓及び技術を活かし、途上国が「質の高い成長」を実現できるよう支援を行っている。
「質の高い成長」のためには、開発途上国の発展の基盤となるインフラ(経済社会基盤)の整備が重要である。また、インフラ投資を行う上では、インフラ自体が使いやすく、安全で、災害にも強い、「質」の高いものであるだけでなく、インフラ計画が相手国のニーズを踏まえたものであることが重要である。日本は、開発途上国の経済・開発戦略に沿った形で、その国や地域の質の高い成長につながるような質の高いインフラを整備し、これを管理、運営するための人材を育成している。技術移転や雇用創出を含め、開発途上国の「質の高い成長」に真に役立つインフラ整備を進めることは、日本の強みでもある。例えば、ASEANにおいて持続可能な開発を実現するためには、ASEAN地域内の膨大なインフラ需要に応えつつ、経済格差を是正し、地域内の安定的な発展を実現することが重要である。そこで日本は、2019 年11 月のASEAN 関連首脳会議に際して、「対ASEAN海外投融資イニシアティブ」を発表し、質の高いインフラ、金融アクセス・女性支援、グリーン投資の分野について、3年間(2020 年~2022 年)で官民合わせて30 億ドル規模の資金の動員を目指すべく、12 億ドルの出融資を提供する用意がある旨を表明した。
こうした「質の高い成長」に役立つインフラ整備への投資、すなわち「質の高いインフラ投資」の基本的な要素について認識を共有する第一歩となったのが、2016年のG7伊勢志摩サミットで合意された「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」である。2019年6月に開催されたG20大阪サミットでは、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」が、今後の質の高いインフラ投資に関する共通の戦略的方向性と志を示すものとして、新興ドナーを含むG20首脳間で承認された。政府は今後も、世界の成長や貧困、格差、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントなどの開発課題の解決のため、環境社会配慮の統合等を含む「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を国際社会全体に普及させ、アジアを含む世界の国々や経済協力開発機構(OECD)・世界銀行等の国際機関と連携し、「質の高いインフラ投資」の国際スタンダード化の推進や、実施に向けた取組を進めていく考えである。
(道路交通安全)
近年世界で深刻化する交通事故状況を踏まえ、開発途上国において道路交通安全に関する支援を展開している。ハード面では、資金協力を通じた道路交通安全を考慮した道路施設(歩道や標識、ガードレール等の設置)や交通管制システムの整備、ソフト面では技術協力プロジェクトや課題別研修等を通じて、交通安全教育や交通規制や取締り等に関する能力強化等を実施してきた。また、近年では民間企業の提案による道路交通安全に貢献する事業・調査も展開している。
(都市公共交通)
開発途上国において、信頼性・安全性・環境にやさしい公共交通(都市鉄道及びバス)の推進を図るため、都市鉄道の建設に加え、計画立案や公共交通政策改善、鉄道・バスの運行・維持管理人材育成、安全マネジメント、ICカード導入等の支援を行ってきた。
【事例】インドでの協力事例
インドのデリーでは、経済成長により都市化が進み、道路の渋滞と、排気ガスによる大気汚染が深刻であることから、1995年の計画段階から「デリーメトロ」(地下鉄)の整備に協力し、デリーメトロは2002年に運行を開始した。現在は市民の足として定着(毎日200万人が利用)し、渋滞・大気汚染軽減に貢献している。また、優れた省エネ・安全対策技術、明るい車内や女性専用車両の導入、車椅子でも乗車可能な駅構内の設計など、日本のノウハウが採用されている。
この取組は、ジェンダー平等等にも貢献している。デリーメトロ公社は女性が働きやすい職場環境にも力を入れている。女性職員向けの寮を始め、職員用保育所や男女別休憩所の設置、産休育休制度の整備を推進している。また、全職員を対象にしたジェンダー研修の受講義務化やセクシュアルハラスメント対策委員会の設置も進めた。女性の駅員、運転手などが活躍する姿は職業ジェンダーへの固定観念を打破し、人々の認識を変革する契機にもなっている。結果として、インドで女性の社会進出に貢献している。
【事例】ASEANとの連携
日本とASEANは「インド太平洋に関するASEAN・アウトルック(AOIP)」の主要分野の1つであるSDGsに関して具体的な協力案件を進めることを確認している。日本は、「ASEAN 連結性マスタープラン(MPAC)2025」及び「ACMECS マスタープラン」に基づき、ASEAN 域内の格差を是正し、ASEAN 共同体の統合深化を後押しするため、ASEAN による連結性強化の取組を一貫して支援している。2020 年11月の日ASEAN 首脳会議に際して、現在実施中の計約2兆円の質の高いインフラプロジェクトを中心とする「日ASEAN 連結性イニシアティブ」を立ち上げた。インフラ整備を通じて陸海空の回廊による連結性を強化し、今後3年間で連結性強化に資する1000 人の人材育成を行うことを表明した。
また、JAIF(日ASEAN統合基金)の支援のもと、SDGsと都市のアクションの整合性をとることで、ASEANの都市が「ASEANビジョン2020」に沿った、包摂的で持続可能な、回復力のある、ダイナミックな発展を達成できるよう支援することを目的とし、「ASEAN SDGsフロントランナーシティ都市プログラム」を実施した。2020年12月までに、シンガポールとブルネイを除くASEAN8カ国において、12のフロントランナー候補都市と12のモデル都市、合計24の参加都市を支援した。
(水インフラ)
海外水インフラの整備拡充のため、事業実施可能性調査(F/S)、官民ミッション、相手国との政策対話、要人招へい事業等を継続的に実施し、日本の質の高い水インフラの関連設備の導入や日本企業からの事業投資拡大を支援している。
また、2019年6月から、海外水ビジネスに関与する企業や業界団体、自治体等で構成する官民プラットフォームを支援し、ミッション団の派遣や、二国間のビジネスセミナー、マッチング等を実施し、アジア各国の水事情の改善に寄与している。
更に、2021年3月に水インフラの海外展開に関する新たな方向性等をとりまとめた「水ビジネス海外展開施策の10年の振り返りと今後の展開の方向性に関する調査報告書」を公表した。
(防災)
毎年世界で2億人が被災し(犠牲者の9割が開発途上国の市民)、自然災害による経済的損失は、国連防災機関の試算によれば、年平均約1,400億ドルに及ぶ。防災の取組は、貧困撲滅と持続可能な開発の実現にとって不可欠である。
日本は、幾多の災害の経験により蓄積された防災・減災に関する知見を活かし、防災の様々な分野で国際協力を積極的に推進している。2015年3月に第3回国連防災世界会議を仙台で開催し、同年から15年間の国際社会の防災分野の取組を規定する「仙台防災枠組」の採択を主導した。また、日本独自の貢献として「仙台防災協力イニシアティブ」を発表し、2015年から2018年までの4年間で計40億ドルの協力の実施や計4万人の人材育成を行うという目標を発表した。これが達成されたことを踏まえ、2019年6月に「仙台防災協力イニシアティブ・フェーズ2」を発表し、2019年から2022年の間に洪水対策等を通じ少なくとも500万人に対する支援を実施する予定である。
更に、日本が提案し2015年12月に第70回国連総会において全会一致で制定された「世界津波の日(11月5日)」に合わせ、日本では2016年以降、世界各国の高校生を招へいし、日本の津波の歴史や、震災復興、南海トラフ地震への備え等の実習を通じ、今後の課題や自国での展開等の提案を行う「世界津波の日 高校生サミット」を毎年実施している。
2019年8月には、官民一体となって日本の防災技術の海外展開を促進し、世界各国の防災能力向上を主導するため、「防災技術の海外展開に向けた官民連絡会(Japan International Public-Private Association for Disaster Risk Reduction:JIPAD)」を設立した。JIPADは、2019年10月から2020年2月にかけて、海外各国に対し、計14回の「官民防災セミナー」を開催し、日本の防災政策、技術やノウハウを一体的に紹介するとともに、官民ネットワークの構築や防災協力関係の強化を図っている。2020年11月末現在において、JIPADの会員企業・団体数は196にのぼっており、防災技術の海外展開に関心のある様々な分野の企業・団体が会員となっている。
2016年12月の国連決議(A/RES/71/222)、「国際行動の10年『持続可能な開発のための水』、2018-2028」では、SDGsの水関連の目標の実現の中でも防災の重要性が強調されており、日本は国連及びその他の国際機関とも連携した取組に継続的かつ積極的に参画し、開発政策に防災の観点を取り入れる「防災の主流化」を主導している。また気候変動の影響は水関連災害の形で現れることが多いことから、気候変動への適応として防災の取組を強調している。例えば、2019年6月に国連本部で開催された「第4回 国連 水と災害に関する特別会合」では、防災への事前投資の重要性や日本が過去の災害から得た教訓を説明し、水と災害に関する世界的な問題の解決に貢献する日本の取組を発信した。2020年7月のHLPFサイドイベントでは、流域のあらゆる関係者が協働し治水を進める「流域治水」等を通じ、SDGs達成に貢献していくことを発信した他、2021年1月のオランダ気候適応サミットでも気候変動による降雨量の増加などを考慮した抜本的な水関連災害対策として「流域治水」の推進、その前提として防災・減災があらゆる開発政策の主流となり、流域計画において気候変動の影響を考慮して安全・安心な社会を構築していくことの重要性を発信した。更に2021年3月の国連総会議長主催の「SDGs水関連目標実施に関する国連ハイレベル会議」では、水・衛生関連の目標であるSDG6のみならず、災害による被害の削減を目指すSDG ターゲット11.5のフォローアップの重要性を強調し、必要な進捗管理に貢献していくことを発信するなど、これらの取組を継続・深化し、防災分野における日本の取組や知見を国際社会で共有する取組を推進している。
その他、アジア防災センターと連携しながら、同センター加盟国(31か国)に対する災害情報の共有、人材育成及び「アジア防災会議」開催等の活動を促進しており、今後も災害で得た経験と教訓を世界と共有し、各国の政策に防災の観点を導入する「防災の主流化」を引き続き推進する。
優先課題5 省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
日本は、持続可能な社会の実現に向けて、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロとする「2050 年カーボンニュートラル」を宣言し、実現に向けた様々な取組を促進している。また、日本は、世界の脱炭素化にも貢献するため、途上国における省・再生可能エネルギーに係る取組を積極的に支援しているほか、防災等、気候変動への適応策に係る支援にも取り組んでいる。
循環型社会の構築にについては、循環型社会形成推進基本計画に基づき日本国内における3R(廃棄物の発生抑制(リデュースReduce)、再使用(リユースReuse)、再生利用(リサイクルRecycle))の取組を推進している。また、国際協力として、質の高いインフラの整備支援に加えて、開発途上国に対する3R及び廃棄物管理の知見共有等を通じて各国での循環型社会の構築を支援している。
(1)国内の課題と取組
(2050年カーボンニュートラルの実現)
2020年10月、日本は「2050 年カーボンニュートラル」を宣言した。温暖化への対応を、経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会と捉える時代に突入した。従来の発想を転換し、積極的に対策を行うことが、産業構造や社会経済の変革をもたらし、次なる大きな成長につながっていく。こうした「経済と環境の好循環」を作っていく産業政策が必要である。産業界には、これまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えていく必要がある企業が数多く存在し、実際に企業の研究開発方針や経営方針の転換といった動きも始まっている。この変革は、新しい時代をリードしていくチャンスでもある。政府としては、大胆な投資を行い、イノベーションを起こすといった民間企業の前向きな挑戦を支援するため、高い目標を掲げて、可能な限り具体的な見通しを提示するとともに、企業の取組への支援策を推進するべく、2020年12月に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定し、2021年6月には更なる具体化を行った。
さらに、2021年4月に行われた地球温暖化推進本部、気候サミットにおいて、菅総理は、「2050年カーボンニュートラルと整合的で、野心的な目標として、我が国は、2030年度において、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指します。さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けてまいります。」と表明した。
(改正地球温暖化対策推進法)
2021年5月、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(改正温対法)が成立した。改正のポイントは、①地球温暖化対策を推進する上での基本理念を新設し、我が国における2050年までの脱炭素社会の実現を明記するとともに、関係者を規定する条文の先頭に「国民」を位置づける前例のない基本理念とすること。②地域の再エネを活用し、地域の脱炭素化や地域の課題の解決に貢献する事業を市町村が認定する制度を創設し、併せて、関係する行政手続のワンストップ化などの特例を導入することにより、地域における円滑な合意形成を図り、地域に貢献する再エネの導入を促進すること。③企業等の温室効果ガス排出量の算定報告公表制度について、電子システムによる報告を原則化し、開示請求の手続なしで公表される仕組みとすることで、本制度のデジタル化・オープンデータ化を推進し、企業の脱炭素経営の取組を促進すること。の3点である。
(サステナブルファイナンス)
政府は、2050年のカーボンニュートラルの実現を念頭に、日本におけるサステナブルファイナンスの課題や対応策について議論を行うべく、2020年12月に産業界・金融界・学者等から構成されるサステナブルファイナンス有識者会議を設置した。また、企業や投資家のための気候変動関連のリスクと機会の開示を促進するため、TCFDの提言に基づく開示の取組を推進しており、TCFD開示推進の議論を活性化させるべく、2019年には「TCFDサミット」を、2020年10月にはその第2回会合を開催した。更に、2021年6月のコーポレートガバナンス・コード再改訂では、東京証券取引所プライム市場の上場企業に対しTCFD又はそれと同等の国際的枠組みに基づく開示の質と量の充実を求めている。
(地域における脱炭素化)
2050 年カーボンニュートラルの実現に向け、「2050年までのCO2排出量実質ゼロ」を表明した自治体である「ゼロカーボンシティ」は、2019年9月には4都市だったが、2021年6月には400都市に達し、既に人口規模で一億人を超えている。政府としては、ゼロカーボンシティを始めとした地方自治体の取組を支援し、エネルギーの地産地消やレジリエントな地域の構築を進めながら、地域における温室効果ガスの大幅削減を図っている。
また、2020年12月から開催している「国・地方脱炭素実現会議」では、国と地方自治体が連携して、地域の取組と国民のライフスタイルに密接に関わる主要分野において議論を進め、2021年6月に地域脱炭素ロードマップを決定した。今後5年程度を集中期間として、適用可能な最新技術を地域に実装し、脱炭素のモデルケースを各地に創り出しながら、次々と先行地域を広げていく「脱炭素ドミノ」を実現していくこととしている。今後、2030年度までに少なくとも100か所の脱炭素先行地域を創出する目標を掲げ、国による支援を集中的に進めていく。具体的には、地域脱炭素の取組に対し、①人材派遣・研修、②情報・ノウハウ、③資金の観点から、国が積極的、継続的かつ包括的に支援するスキームを構築する。
(消費者志向経営の推進)
持続可能な社会の実現に向けては、消費者、事業者、行政が連携・協働することが求められ、社会的課題に目を向けた事業者が、市場経済の中で、消費者に適切に理解、評価され後押しされることで、企業価値が高まるという仕組みが重要である。
政府は、消費者団体・事業者団体と連携して、事業者が消費者の声を聴きながら、消費者と連携・協働して社会課題に取り組むことを促進している。消費者志向経営の理念に基づく事業者の取組を社会に周知するため、「消費者志向自主宣言・フォローアップ活動」を推進しているほか、2018年度から、消費者志向経営に関して優れた取組を行っている事業者を表彰しており、2021年3月には3回目の表彰式を開催した。
(エシカル消費の普及啓発)
持続可能な社会を実現するためには、消費者が自らの社会に与える影響力を自覚し、地域の活性化や雇用等も含む、人や社会・環境に配慮した消費行動、すなわち「エシカル消費」を実践していくことが欠かせない。エシカル消費の普及・啓発に向け、地方公共団体との共催による啓発イベント「エシカル・ラボ」や体験型ワークショップの実施などに取り組んできた。更に、パンフレット、ポスターや動画、学校でも活用できる教材の作成・普及のほか、特設サイトを通じた先進的な事例の紹介などを通し、一人ひとりの消費行動が「世界の未来を変える」大きな可能性の発信に取り組んでいる。
(食品ロス削減の推進)
日本の食品ロスの量は、年間600万トン(2018年度)と推計されており、その内訳としては、家庭系・事業系の双方から、ほぼ同量が発生している。食品ロスの削減に向けて、政府、地方公共団体、事業者、消費者等の多様な主体がそれぞれの立場において主体的にこの課題に取り組み、社会全体として対応していくことが重要である。
2019年10月に、「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行され、2020年3月に「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」が閣議決定された。これらを踏まえ、関係省庁が連携しつつ様々な施策を推進している。
同方針では、食品ロスの問題を「他人事」ではなく「我が事」として捉え、行動に移すことが重要としている。消費者の役割としては、「日々の生活の中で食品ロスを削減するために自らができることを一人ひとりが考え、行動に移す」ことが挙げられており、政府は、日々の生活の中で取り組める内容を掲載したパンフレット・冊子の配布や、食品ロス削減月間(毎年10月)中の集中的な啓発、WEBサイトでの情報発信等により、消費者への啓発を実施している。
(みどりの食料システム戦略)
近年の農林水産業を取り巻く環境は、地球温暖化や新型コロナウイルス感染症の拡大の影響等、多くの課題がある。こうした中、様々な産業や国際的な議論においてもSDGsや環境への対応が重視されるようになり、今後、日本の食料・農林水産業においても的確に対応する必要がある。また、国際的な議論の中で、日本としてもアジアモンスーン地域の立場から新しい食料システムを検討していく必要があることから、農林水産業や地域の将来も見据えた持続可能な食料システムの構築が急務となっている。このため、農林水産省では、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させるための新たな方策として、「みどりの食料システム戦略」を2021年5月に策定した。
2050年までに目指す姿として、農林水産業のCO2ゼロエミッション化、化学農薬の使用量をリスク換算で50%低減、化学肥料の使用量の30%低減、有機農業の取組面積の割合を25%(100万ha)に拡大、2030年までに持続可能性に配慮した輸入原材料調達の実現等を掲げており、これらの実現に向け、中長期的な観点から調達、生産、加工・流通、消費の各段階の取組と、カーボンニュートラル等の環境負荷軽減のイノベーションを推進していくこととしている。
2021年9月には、持続的な食料システムの実現に向けての議論を行う国連食料システムサミットが開催される。同サミットにおいて、気候風土の実態に即した持続可能な食料・農林水産業を促進する「みどりの食料システム戦略」について発信すること等により、国際ルールメーキングに積極的に参画する予定である。
(水産資源の持続可能な漁業の推進)
2020年12月に「漁業法等の一部を改正する等の法律」が施行されたことに伴い、新たな資源管理の推進に向けたロードマップに沿って、科学的な資源評価の結果に基づき、最大持続生産量(MSY)の達成を目標としている。また、数量管理を基本とする新たな資源管理システムの導入を進め、2030年度には漁獲量を2010年度の水準(444万トン)まで回復させることを目指している。養殖業においても、人工種苗生産技術及び魚粉代替原料の開発・普及を通して漁場環境や天然資源への負荷軽減に貢献していく。
2017年5月に違法漁業防止寄港国措置協定を締結して以降、日本は未締結国に対して締結に向けた働きかけを実施している。また、2019年7月には中央北極海無規制公海漁業防止協定も締結する等、漁業分野における法の支配及び持続可能な資源管理の促進に係る一貫した貢献を継続している。加えて、外国漁船の違法漁業の撲滅に向け、2020年12月に、違法に採捕された水産動植物を流通から排除する水産流通適正化法を制定した他、違法・無報告・無規制(IUU)漁業対策に関心が高いEU、米国等の国々との国際場裏における連携も進めている。更に、従来のマグロ類や底魚の資源管理への取組に加え、サンマやウナギに関する国際的な資源管理の取組を主導し、生物多様性の確保に一層貢献している。
【事例】岡山県真庭市の取組
地域内外の多様なステークホルダーとの連携により、木質バイオマス発電の推進によるエネルギー自給率の向上や、木材需要拡大へ向けたCLT等の活用促進を行っている。更に、蓄積したノウハウを生かし、バイオ液肥や牡蠣殻を活用した里山里海資源循環農業を展開・推進し、市民を巻き込み地域資源を活用した新たな地域経済構造の定着を目指している。
(2)国際協力
(気候変動対策)
日本は、2015年にCOP21首脳会合において発表された「美しい星への行動(ACE2.0)」も踏まえ、アジア、大洋州、アフリカ、中南米地域をはじめとする途上国に対し、様々な支援を行ってきている。そのような支援の例として、気候変動対策に関する専門家を派遣し、災害に脆弱な太平洋島嶼国などの人材育成に努めているほか、各地域での再生可能エネルギーの導入促進にも貢献している。
また、世界最大の多国間気候基金である「緑の気候基金(GCF)」に対して最大30億ドルの拠出を表明するなど、同基金の第2位のドナー国として、気候変動の影響に脆弱な国々への支援に貢献している。GCFでは、2020年12月までに159件の案件がGCFの支援事業として承認・実施されており、全体で12億トンの温室効果ガス削減と、適応策支援による4.1億人の裨益が見込まれている。
さらに、途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、削減の成果を両国で分け合う二国間クレジット制度(JCM)を通じ、17か国で約190件の脱炭素・低炭素プロジェクトを実施している。JCMを通じ、2030年度までの累積で5,000万~1億トンの温室効果ガスを排出削減・吸収することを見込んでおり、現在、約180件のプロジェクトにより、2030年度までに1,700万トン以上の削減を見込んでいる。JCMを通じたSDGsへの貢献に関し、JCM設備補助事業におけるプロジェクトを通じた SDGsの各目標への具体的な貢献例をまとめたレポートを策定した。また、JCM設備補助事業のプロジェクト関係者、とりわけ実施主体である代表事業者、共同事業者に対し、ジェンダー平等に向けた行動を促すことを目的として、「JCM設備補助事業ジェンダー・ガイドライン」も策定した。
そのほか、環境協力の覚書や姉妹都市協定等による国内都市と海外都市の連携を活用し、国内都市が有する脱炭素・低炭素社会形成に関わる経験やノウハウ等を共有する「脱炭素社会実現のための都市間連携事業」も行っており、途上国における脱炭素化を推進している。
同事業では、民間事業者は国内都市と海外都市を含むコンソーシアムを組織し、海外都市における脱炭素化プロジェクト形成や制度基盤構築支援、また優良事例の横展開を目指している。日本の質の高い脱炭素・低炭素技術をベースに、日本と途上国の協働を通じて、双方に裨益あるイノベーション(コ・イノベーション)を創出し、国内の技術開発への還元や途上国への日本の低炭素・脱炭素技術の波及等を促進することを目指している。これまで、2018年に14件、2019年に17件、2020年に20件を採択しており、現在、日本の15の自治体及び世界の13か国・地域の39都市が参画している。2019年に8件、2020年に5件のコ・イノベーション創出を目指す研究開発・実証事業を支援した。
また、環境省は、2020年9月に、新型コロナウイルス感染症からの復興と気候変動・環境対策に関する「オンライン・プラットフォーム」閣僚級会合を、UNFCCC(国連気候変動枠組条約事務局)と共に主催した。小泉環境大臣が議長を務め、各国46人の大臣・副大臣から発言があったほか、最終的に計96か国が参加し、気候変動関連のオンライン国際会議としては、これまでの世界最大規模の会議となった。会議では、「脱炭素社会への移行」・「循環経済への移行」・「分散型社会への移行」という3つの移行に向け社会をリデザイン(再設計)していくことの重要性を確認した。さらに、脱炭素化に向けた都市の取組を世界的に加速させることを目的として、2021年3月、環境省はUNFCCCの協力の下オンラインで脱炭素都市国際フォーラムを開催した。フォーラムでは、コミュニティに直結する都市の脱炭素政策と中央政府・国際機関による後押しの重要性を確認し、今後、都市の先進的な取組を世界に広げて、世界で「脱炭素ドミノ」の輪を広げていくことを確認した。
(G7サミットにおける日本の貢献)
2021年6月に開催されたG7サミットには我が国から菅総理が出席し、国内電力システムを2030年代に最大限脱炭素化すること、国際的な炭素密度の高い化石燃料エネルギーに対する政府による新規の直接支援を、限られた例外を除き、可能な限り早期にフェーズアウトすること、国内的に、NDC及びネット・ゼロのコミットメントと整合的な形で、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電からの移行を更に加速させる技術や政策を急速に拡大すること、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援の年内の終了にコミットすることについて、G7各国で一致した。
菅総理からは、総理就任以来、気候変動対策を最優先事項に掲げてきたことを強調し、2050年にカーボンニュートラルを目指す決意や日本の技術力を生かしたイノベーションと地域での取組を推進していくことを表明した。また、先進国が高い目標を掲げるだけでなく、他の国、特に大きな排出国に更なる取組を求めていく重要性を指摘した上で、途上国に対しては、その固有の事情を踏まえ、多様なエネルギー源・技術を活用しつつ、脱炭素社会に向けた現実的な移行を包括的に支援していくことを述べた。さらに、菅総理は、真に支援を必要とする途上国に対しては支援を惜しむべきではないとして、日本は2021年から2025年までの5年間において、6.5兆円相当の支援を実施することと、適応分野の支援を強化していく考えを表明し、G7としても、2025年までの国際的な公的気候資金全体の増加及び改善にコミットした。
(循環型社会への移行促進)
2021年6月に成立したプラスチック資源循環促進法などを通じて、プラスチック製品の設計・製造から使用後の処理までのライフサイクル全体での資源循環の取組を促進し、循環経済への移行を実現していく。また、経団連と政府の官民連携によるパートナーシップを通じて、我が国の循環経済への移行を着実に推進する。さらに、G7気候・環境大臣会合の成果に基づき、グローバル企業や金融界が規範とする「循環経済及び資源効率性の原則(CEREP“Circular Economy and Resource Efficiency Principles”)」をG7各国と連携して作り上げ、世界全体のグリーン成長を加速させていく。
優先課題6 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
現代の私たちの経済、社会は安定的で豊かな環境の基盤の上に成立している。しかしながら人間活動の増大は、地球環境に大きな負荷をかけており、環境問題として顕在化し、私たちの生活にも様々な影響が生じている。持続可能な開発を実現するため、海洋、海洋資源、及び陸上資源の持続可能な形での利用を推進することが重要である。社会・経済の基盤である生物多様性の保全を推進するとともに、森・里・川・海といった自然環境が提供する生態系サービスの維持・向上を図ることが急務である。
(1)国内の課題と取組
(海洋保全、海洋プラスチックごみ対策)
プラスチックを含む海洋ごみは、生態系を含めた海洋環境の悪化や海岸機能の低下、景観への悪影響、船舶航行の障害、漁業や観光への影響など、様々な問題を引き起こしている。日本は2019年5月に「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」「プラスチック資源循環戦略」を策定した。また、海岸漂着物処理推進法に基づく基本方針を変更し、循環型社会の形成を通じたごみの発生抑制や漂流ごみ・海底ごみの回収を図ることとした。船舶起源の海洋プラスチックごみの削減に向けて、実態の把握や指導・啓発活動に取り組むとともに、海洋環境の保全のため、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」に基づき、船舶起因の油・有害液体物質・廃棄物・排ガス等による汚染や水生生物の越境移動による生態系破壊の防止を推進しているほか、国際海事機関(IMO)等における新たな環境規制の審議に積極的に参画している。
また、2019年度、総合海洋政策本部参与会議において、SDG14についての研究会が実施された。“国際機運の高まりを受けた、SDG14を含むSDGsの「日本モデル」の構築を通じた推進”としてまとめられた同研究会の成果は、2020年6月に参与会議から同本部長である内閣総理大臣へ提出された意見書に含められる形で、SDGsの推進が政府に提言された。上記研究会の報告書は、海洋に関係する国際会議等(APEC海洋漁業作業部会等)の機会に、海外のステークホルダーへも共有され、日本の取組として発信された。
(持続可能な森林経営)
国内の森林資源が本格的な利用期を迎えており、適切な間伐の実施に加え、「伐って、使って、植える」という森林資源の循環を確立することが、森林の多面的機能の持続的な発揮を確保し、森林の経済的、社会的、環境的な便益を強化する。このため、資源の循環利用に向けた林業の成長産業化、林業経営に適さない森林における公的管理等の推進、更には、森林資源に関するモニタリングの適切な実施等を推進している。
【事例】岡山県西粟倉村の取組
林業を主軸に地域再生を目指し、森林信託事業による森林の集約化や森林経営にそぐわない民有林について経済価値を判定した上での公有林化等を通し、地域全体の森林価値の最大化と最適化を目指している。資金調達にあたっては森林ファンドを組成するとともに、投資家を関係人口として位置づけ巻き込んでいく等、金融機関も含めた官民連携を進めている。
(2)国際協力
(海洋保全、海洋プラスチックごみ対策)
2019年6月のG20大阪サミットでは、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を各国と共有するとともに、同ビジョンを実現するための「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」に合意した。また、日本は開発途上国の廃棄物管理に関する能力構築及びインフラ整備などを支援していく「マリーン・イニシアティブ」を同時に表明した。2025年までに世界の廃棄物管理の人材を1万人育成することとしたほか、国連環境計画(UNEP)等の国際機関と協力し、海洋プラスチックごみの流出防止策に必要な科学的知見の蓄積支援及びモデル構築支援等、アジア地域における環境上適正なプラスチック廃棄物管理・処理技術支援を行っている。
また、国際的に海洋資源の適切な管理が求められている中で、大洋州やカリブ、インド洋の小島嶼国においては、数少ない開発オプションである水産資源の持続的な利用を促進している。例えば日本は、“里海”の概念を導入して、水産資源の持続可能な利用により、六次産業化や観光産業への貢献などを通じたフードバリューチェーンの構築を図ることで地域経済の活性化など経済便益を高める取組を、国連食糧農業機関(FAO)や地域国際機関であるメラネシアン先鋒グループ(MSG)や南太平洋大学(USP)、太平洋諸国共同体(SPC)、カリブ地域漁業機構(CRFM)などと連携しつつ大洋州、カリブ地域、インド洋島嶼国において展開している。
その他、令和2年7月25日(土)にモーリシャス共和国沿岸で座礁した、ばら積み貨物船「WAKASHIO」による油流出事故に対して、我が国は、同国政府からの要請を受けて3回にわたり国際緊急援助隊・専門家チームを派遣した。同国政府や関係国・機関と協力し、モーリシャス沿岸での油の流出状況の調査、油防除作業等に関する支援、海洋汚染の状況調査やマングローブ・サンゴ群集・鳥類の調査、長期的に必要となるモニタリングのための計画の策定の支援など、様々な活動を実施した。更に、同国の復旧と復興に向け、海難防止、環境、漁業、経済の回復・後押しのため、迅速かつ中長期的な視点から、これまでにない規模での協力を進めている。
(持続可能な森林経営)
JICAとJAXAとの間で2016年に作成した連携協定に基づき、JAXAの陸域観測技術衛星(だいち2号)のデータを活用した熱帯林早期警戒システム(JJ-FAST)を開発し、77か国のデータを公開した。同システムを用いて森林保全を行う人材を育成し、本システムを活用した技術協力/研修をこれまで計15か国で実施している。また、国際熱帯木材機関(ITTO)への拠出を通じ、熱帯地域における森林火災の予防・応答体制の構築や持続可能な森林経営体制の構築を支援した。これらを通じ、熱帯林の保全と、それを通じた気候変動対策や生物多様性保全に貢献している。
また、国際的に持続可能な森林経営の推進に貢献するため、民間企業等によるREDD+活動を推進するとともに、日本の治山技術を活用して、途上国における森林の防災・減災機能の強化や山地流域の強靱化方策の普及を支援している。
(生物多様性)
自然共生社会の実現を目指す「SATOYAMAイニシアティブ」の活動促進を目的に、生物多様性条約COP10(2010年、愛知県名古屋市)において、国際パートナーシップ(事務局:国連大学)を設立し、73か国・地域の271団体(2021年3月現在)が参加している。関係国際機関等との連携により、たとえばウガンダにおける地域特有の植物を活用したジャムやワインの商品開発などのプロジェクト等、約40か国・地域で約450のプロジェクトを実施している。
また、生物多様性条約COP15(2021年予定、中国・昆明市)を機に、日本の取組事例の国際展開を含め、「SATOYAMAイニシアティブ」 を一層推進し、2021年以降の新たな世界目標(ポスト2020生物多様性枠組)の実施に向けた取組を強化していく。
SDG14(海洋資源)とSDG15(陸上資源)の生物多様性に関する目標群の一部は、目標年が2020 年までとなっており、2030年までの目標設定がない。これについて日本は、2020年7月に生物多様性条約により行われたポスト2020生物多様性枠組に関する意見照会の機会を捉え、ポスト2020生物多様性枠組がSDGsの生物多様性関連の目標を引き継ぐべきであり、その旨を生物多様性条約COP15における決定事項に含めるべきであるとの意見を提出した。
(G7サミットにおける2030年自然協約)
2021年6月に開催されたG7サミットに先立ち、日本は2021年5月、2030年までに生物多様性を回復させることを約束する「リーダーによる自然への誓約:Leaders’ Pledge for Nature」に賛同した。さらに、G7サミットにおける生物多様性に関する議論の結果、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させるという世界的な任務を支える「G7・2030年自然協約」をG7として採択した。この自然協約においてG7各国は、上記の目的のための行動として、国内の状況に応じて、2030年までにG7各国の陸地及び海洋の少なくとも30%を保全又は保護すること、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を基礎として、プラスチックによる海洋汚染の深刻化に対処するための行動の加速化等にコミットしている。
(北極・南極域)
日本は60年以上にわたり南極での観測研究を実施し、気候変動に関するデータを継続的に取得している。また、北極は地球上で最も温暖化が進行している地域であり、「第3期海洋基本計画」(2018年5月閣議決定)等に基づき、北極域の環境変化の実態把握とプロセス解明、気象気候予測の高度化・精緻化などの先進的な研究を推進している。加えて、北極域の国際研究プラットフォームとして、砕氷機能を有し、北極海海氷域の観測が可能な北極域研究船の建造に向けた検討や研究開発、基本設計を実施し、2021年度から建造に着手することを決定した。
【事例】山陽女子中学校・高等学校地歴部
瀬戸内海におけるプラスチックごみやマイクロプラスチックなどの海洋汚染にいち早く着目し、地元漁師と協働して海洋ごみの回収・分析を実践した。回収の際には、メディアや近隣府県の中高生を招き、情報発信や学びの場としている。
海洋ごみ問題の解決に向けては、海洋ごみの回収と合わせて、海洋ごみの発生量を減少させることを重視し、海洋ごみの起源地である内陸部や沿岸地域において、海洋ごみ問題の啓発活動を行っている。行政やNPO、地元メディアが協働することにより、地域に根差した継続的な取組となっている。
優先課題7 平和と安全・安心社会の実現
平和と安全・安心な暮らしの確保は、あらゆる人々の生活の基盤を成すものである。
しかし、国際社会のパワーバランスの変化は加速化・複雑化し、既存の秩序をめぐる不確実性は増大しており、こうした中、自らに有利な国際秩序の形成や影響力の拡大を目指した国家間の競争が顕在化している。更に、国際社会においては、安全保障上の課題が広範化・多様化し、一国のみでの対応が困難になっており、宇宙領域やサイバー領域などでは、国際的なルール作りが安全保障上の観点からも課題となっている。海洋においては、既存の国際秩序とは相いれない独自の主張に基づいて自国の権利を一方的に主張し、又は行動する事例が見られ、公海における自由が不当に侵害される状況が生じている。
このような中、日本は、平和国家としての歩みを引き続き堅持しつつ、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保に一層積極的に貢献していく必要がある。
また、日本国内においても、子供や女性が被害者となる犯罪は後を絶たず、高齢者を狙った特殊詐欺の被害は深刻な情勢が続くなど、犯罪に対して不安を抱く人が少なくない。人権が保障され、安全で安心して暮らせるまちを実現するため、それぞれの地域における取組も重要である。
(1)国内の課題と取組
(子供の安全)
社会経済の構造が変化し、家庭や地域の子育て機能が低下するに伴って、児童虐待等が深刻な問題となっている。子供たちのいじめや教師による体罰も依然として大きな問題である。また、情報通信技術の急速な発展も相まって、インターネットを通じて子供が犯罪に巻き込まれるなどの事態が生じている。更に、親の社会経済的状況によっては子供が十分な教育の機会が得られなくなる等の問題がある。次世代を担う子供たち一人ひとりが心身に有害な影響を受けることなく健やかに成長することができる社会を創り上げていくことは、我々が等しく共有する課題であり、対策が必要である。
いじめは決して許されないことである。このため、いじめの未然防止、早期発見・早期対応等の実現に向けて、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置充実、SNS 等を活用した相談体制の整備推進等により、地方公共団体におけるいじめ問題等への対応を支援している。
また、体罰禁止の徹底を図るため、体罰の実態調査を実施するとともに、各都道府県教育委員会等の生徒指導担当者向けの会議等において、懲戒と体罰の区別、体罰防止に関する取組についての通知内容を周知している。
児童の性的搾取等は、児童の心身に有害な影響を及ぼし、かつ、その人権を著しく侵害する極めて悪質な行為であり、断じて許されるものではない。そのため、2017年4月、犯罪対策閣僚会議において策定した「子供の性被害防止プラン」(児童の性的搾取等に係る対策の基本計画)に基づき、企業及び民間団体とも連携しながら、子供の性被害防止に係る対策を推進している。
また、コミュニケーション手段の多様化を踏まえ、人権侵害の被害に遭った子供が相談しやすくするため、2019年度には、一部の法務局において、SNSを活用した相談窓口を設置し、2020年度以降も、SNSを活用した人権相談体制の整備を引き続き進めているほか、人権相談窓口の更なる周知広報を図るなど、いじめ・虐待を始めとする子供の人権問題対策の強化を図っている。そして、これらを通じて人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査し、学校や関係機関と連携しながら被害の救済に努めている。
また、日本では、窒息や溺水などの不慮の事故によって、14歳以下の子供が毎年約200人亡くなっている。こうした子供の不慮の事故を可能な限り防止するために、①注意喚起資料の公表、「子どもを事故から守るTwitter」等の発出、「子どもを事故から守る!事故防止ハンドブック」の配布等を通じた保護者等への周知啓発活動、②子供の不慮の事故の実態や認知度に関する調査分析など、関係府省庁が連携した取組を推進している。
(女性に対するあらゆる暴力の根絶)
性犯罪・性暴力や、配偶者等からの暴力、セクシュアルハラスメント等の女性に対する暴力は重大な人権侵害であり、決して許されるものではない。情報通信技術(ICT)の進化やSNS などの新たなコミュニケーションツールの広がりに伴い、女性に対する暴力の形も一層多様化している。2019年6月には、2001年に成立した「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」の一部改正を含む「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」が成立し、児童虐待と密接な関連があるとされる配偶者等からの暴力(DV)被害者の適切な保護が行われるよう、相互に連携・協力すべき関係機関として児童相談所が法文上明確化された。
また、DV等の被害者支援強化のため、DV 相談プラスの実施や被害者支援に重要な役割を果たしている民間シェルター等の先進的取組の支援をしている。
2020年6月には「性犯罪 ・性暴力対策強化のための関係府省会議」において「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を決定し、2020年度から2022年度までの3年間を、性犯罪・性暴力対策の「集中強化期間」とし、関係府省が連携して取組を推進している。
(満期釈放者対策を始めとする再犯防止対策の推進)
犯罪をした者等の立ち直りを支援することは、「誰一人取り残さない」社会の実現に資するものであり、「再犯の防止等の推進に関する法律」(2016年12月)、「再犯防止推進計画」(2017年12月)、「再犯防止推進計画加速化プラン」(2019年12月)等に基づき、満期釈放者対策の充実強化、犯罪をした者等の特性に応じた指導、就労・住居の確保、保健医療・福祉サービスの利用の促進、学校等と連携した修学支援、地方公共団体との連携強化の推進、民間協力者の活動の促進等の再犯防止対策を推進している。
【事例】広島県の取組
原子爆弾による破壊を経験し、「核兵器のない平和な世界の実現」に向けた取組を進めている。「国際平和のための世界経済人会議」の開催により、マルチステークホルダーと連携を深め、協働して平和の取組を生み出すためのプラットフォームの整備を進め、県内企業等へSDGsに係る普及啓発を行っている。また、世界の人々、特に次世代を担う若者に対し、平和学習の機会を提供し、平和貢献人材の育成を図っている。
(2)国際協力
(法の支配の促進)
「法の支配」とは、全ての権力に対する法の優越を認める考え方であり、国内において公正で公平な社会に不可欠な基礎であると同時に、友好的で平等な国家間関係から成る国際秩序の基盤となっている。更に、法の支配は国家間の紛争の平和的解決を図るとともに、各国内における「良い統治(グッド・ガバナンス)」を促進する上で重要な要素でもある。このような考え方の下、日本は、法の支配の強化を外交政策の柱の一つとしており、力による一方的な現状変更の試みに反対し、領土の保全、海洋権益や経済的利益の確保、国民の保護などに取り組んでいるほか、安全保障、経済・社会、刑事など、様々な分野において二国間・多国間でのルール作りとその適切な実施を推進している。
日本は、これまで国連アジア極東犯罪防止研修所を通じて、汚職、組織犯罪対策などSDGsに掲げられた国際社会の優先課題をテーマとする刑事司法及び犯罪者処遇に関する研修・セミナーを、139の国・地域の6,000名を超える刑事司法実務家を対象に実施し、開発途上国等の刑事司法の発展や刑事司法実務家の能力向上等に貢献している。また、日本は、各国における法の支配の確立と健全な経済発展の基盤作りに寄与するため、開発途上国の法令の起草・改正、法令を運用する制度の整備、司法アクセス改善のための制度の整備、 法務・司法分野の人材育成等を支援する法制度整備支援として、関係者を日本に招いての研修や現地でのセミナー等を実施するとともに、法曹などを長期専門家として支援対象国に派遣している。
2021年3月、犯罪防止・刑事司法分野における国連最大規模の会議である国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)が京都で開催された。京都コングレスでは、SDGs達成のための犯罪防止・刑事司法分野のアプローチについて議論がなされ、成果文書として「京都宣言」が採択された。「京都宣言」では、刑事司法分野における国際協力の一層の促進や、マルチステークホルダー・パートナーシップ、持続可能な開発の前提となる法の支配の促進などに対する各国のコミットメントが示された。日本は、今後、「京都宣言」の確実な実施に向け、リーダーシップを発揮し、刑事分野における協力促進のための地域プラットフォーム創設や、マルチステークホルダー・パートナーシップによる再犯防止のための国連準則作りなどを提案・推進し、SDGs達成に貢献していく。
(子供に対する暴力撲滅・児童労働撤廃)
日本は、2018年以降、「子どもに対する暴力撲滅グローバル・パートナーシップ」(GPeVAC)に参加し、子供に対する暴力の撲滅に向けて取り組む「パスファインディング国」として、GPeVACの活動に積極的に関与している。その一環として、市民社会、企業、有識者、関係府省庁等により構成される「子どもに対する暴力撲滅円卓会議」において、我が国の「子どもに対する暴力撲滅行動計画」の策定に向けた具体的な議論を進めている。その策定のプロセスにおいては、子供の意見を聴取することが重要との認識の下「子どもパブコメ」を実施した。現在、関係府省庁、市民社会等関係者の対話と連携の下、同行動計画の策定に取り組んでいる。
また、国際機関、NGO、民間企業等との連携の下での途上国における最悪な形態の児童労働の撤廃を目指して取り組んでおり、例えば、2020年1月にはガーナでカカオ産業における児童労働を含む開発課題の解決に向けた共創を目的とする「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」を設立し、2020年10月から児童労働フリーゾーン設立に向けたパイロット活動をJICAの事業を通じて行っている。さらに、「児童労働撤廃国際年」(2021年)の実施を主導しているILOの呼びかけに応じて、2021年12月までに達成可能な具体的な行動(2021アクション・プレッジ)として厚生労働省が日本を含むアジア地域の児童労働撤廃に向けた取組を行うことを表明した。
(PKO法に基づく国際社会の平和と安定に資する取組)
持続可能な開発と平和の持続は表裏一体であり、政府は、人間の安全保障の理念に基づき、世界の「国づくり」と「人づくり」に貢献することを国際協力全般の基本的立場として打ち出している。国際平和協力についても、人間の安全保障に立脚して着実に進めると共に、切れ目のない支援を行う「人道と開発と平和の連携」への貢献を重視して取り組んできている。
1992年の国際平和協力法(PKO法)施行以来、日本は、28件の国際平和協力業務、約12,500名の人的協力を実施してきており、2021年4月現在は国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に対し4名、多国籍部隊・監視団(MFO)に対し2名、計6名の司令部要員を派遣している。日本が派遣してきた施設部隊は、南スーダンなどで現地コミュニティが裨益する道路建設・改修等を行ってきたが、道路整備は、人道救援のアクセス向上、開発の基礎を為す各種交流の促進をもたらすと共に、状況によっては共同体間の理解や融和を促進する効果が期待されるとも言われる。
また、物的協力については、PKO法に基づく物資協力を29件実施し、直近では2019年12月に南スーダン和平プロセスにおける治安部門改革(SSR)を支援する政府間開発機構(IGAD)に対し、日本から南スーダン政府・反主流派の要員を一時的に仮宿営させるためのテント等を無償譲渡した。
今後とも「積極的平和主義」の旗の下、これまでの活動の上に立ち、日本の強みを活かし、能力構築支援の強化、部隊及び個人派遣、物的協力など、国際平和協力分野において一層積極的に貢献し、人道、開発及び平和という分野の連携を意識した切れ目のない支援を実現することで、日本が掲げる積極的平和主義を実践し、もって国際社会の平和と安定に貢献していく。
(各国平和維持活動要員の訓練)
日本は、国連PKOに参加する各国の平和維持活動要員の能力向上を支援するため国連、支援国及び要員派遣国の三者が互いに協力し、国連PKOに派遣される要員に必要な訓練を行う枠組みである国連三角パートナーシップ・プロジェクト(UN Triangular Partnership Project)への協力を、2015年から継続して行っている。具体的には、自衛官など延べ172人を教官としてケニアやウガンダなどに派遣し、国連PKOへ施設部隊を派遣する意思を表明したアフリカ8か国の277人の要員に対して重機操作の訓練を実施している。本プロジェクトの対象地域は、2018年からアジア及び同周辺地域にも拡大され、ベトナムに自衛官など延べ68人を派遣し、アジア及び同周辺地域9か国の56人の要員に対して重機操作の訓練を行った。更に、2019年10月から、国連PKOにおいて深刻な問題となっている医療分野においても国連野外衛生救護補助員コース(UNFMAC)への教官派遣を開始した。
【事例】紛争影響国等における平和構築支援
国際社会の平和と安定のため、平和構築は重要であり、日本は「開発協力大綱」においても重点課題の一つとして位置付けている。人道危機への対応においても、人道支援と開発協力の連携に、平和構築・紛争予防を組み合わせることが効果的である。
紛争発生後の対応のみならず、人道危機の要因である紛争の発生・再発予防にも重点を置き、平時からの国造り、社会安定化といった、紛争の根本原因に抜本的に対処することが重要であり、日本は、このような「人道と開発と平和の連携」の考え方を重視し、平和構築支援を進めている。
日本はこれまで、脆弱・紛争影響国において、住民に最も近い地方行政を中心に包摂的な行政サービスの提供や共存可能な社会の形成に向けた支援により、政府と住民及び住民間の信頼醸成に取り組んでいる。例えば、40年以上にわたり紛争の影響を受けてきたフィリピン・ミンダナオでは、20年以上にわたって平和と安定のための支援を継続的に行うことで、様々なレベルでの信頼醸成に取り組んできた。現在ではバンサモロ暫定自治政府の能力向上支援を通じて、暫定自治政府と住民の信頼が醸成されることを目指しており、もって当該紛争影響地域の平和の定着と開発に貢献している。また、難民・国内避難民の受入地域では「人道と開発と平和(HDP)のネクサス」の観点から、難民・避難民と受入地域の信頼醸成に特に配慮し、ホストコミュニティと共存できる社会の形成を支援している。例えば、紛争の影響を受けまた難民の受け入れ地域になってきた北部ウガンダにおいては、難民のニーズも開発計画に含める統合開発計画を策定する政策を決定しており、これまで同地域で行ってきた参加型開発など地方政府の住民に対するアカウンタビリティ及び透明性の改善も踏まえ、統合開発計画の策定の支援を行う予定である。
優先課題8 SDGs 実施推進の体制と手段
近年、経済のグローバル化の進展に伴い多くの開発途上国が新たな投資先・市場として注目され、かつ、ODAを上回る民間資金が開発途上国に流入する年もあるなど、開発援助をめぐる国際環境は大きく変化している。同時に、政府・開発機関のみならず、民間企業、NGOなどによる活動が重要性を増しており、地方自治体や中小企業なども新たな開発パートナーとして注目されている。様々なアクターが、それぞれの得意分野を活かした多様なアプローチで途上国の開発に取り組んでいる中、そうした一つ一つをODAがつなぎ、厚みのあるアプローチをとることで、相乗効果によってより大きな開発効果を上げることを目指して取り組んでいる。
(1)国内の課題と取組
(企業におけるSDGsの取組支援)
2017年5月、ESG・非財務情報開示・投資家との対話の手引きとなる『価値協創ガイダンス』を策定し、企業の情報開示や投資家との対話の質の向上を促進している。また、2019年5月、SDGs経営イニシアティブ推進として、SDGs経営の良好事例の共通項や、投資家がそれを評価する視座等を整理した「SDGs 経営ガイド」を策定した。G20等の場を通じて、本ガイドを広く国内外に発信しており、企業経営へのSDGs の取り込みを後押ししている。
企業と投資家との間で、前提とする時間軸の差異や、SDGs/ESGの経営・投資判断への落とし込みに課題があるという現状認識を踏まえ、2020年8月、企業の稼ぐ力の持続的向上に向けた長期の時間軸を前提に、企業の稼ぐ力(企業のサステナビリティ)とSDGs/ESG(社会のサステナビリティ)を同期化させ、社会課題を企業経営に時間軸を踏まえて取り込んでいく経営及びそれに関する企業と投資家の対話の在り方を、『サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)』として提唱し、企業と投資家の対話の更なる実質化を後押ししている。
(地方におけるSDGsの主流化)
2017年12月、SDGs理解向上と活動の連携促進を目的とし、産官学民の多様なアクターで構成される関西SDGsプラットフォームが創設された(事務局:JICA関西、近畿経済産業局、関西広域連合)。同プラットフォームの会員数は1,000団体を超え(2020年12月現在)、分科会活動が盛んになっており、地域の活発な団体が会員を巻き込みつつ活動を牽引している(設立済の分科会:関西SDGs貢献ビジネスネットワーク、SDGs環境ビジネス分科会、共育分科会、食品ロス削減分科会、教育分科会、バリアフリーマップ分科会、大学分科会)。プラットフォームが後援等を行う会員によるSDGsイベント・アクションはこれまで約200件(2020年12月現在)実施している。
(ステークホルダーが連携して進める取組)
2020年6月、国連が提唱する「行動の10年」に沿った具体的な取組「ジャパンSDGsアクション」を官民一体となって推進するため、政府、自治体、経済界、市民団体、次世代等が参画する「ジャパンSDGsアクション推進協議会」を、事務局である神奈川県が中心となって立ち上げ、SDGsアクションを推進するための活動を行った。
2021年3月には、ジャパンSDGsアクション推進協議会と国連SDGアクションキャンペーン/UNDP共催による「SDGグローバル・フェスティバル・オブ・アクションfrom JAPAN」をオンラインで開催し、日本の取組を世界に発信した。これと連動する形で、国内向けに、「気候変動」「いのち/貧困・格差」「次世代・ジェンダー」などをテーマとした「ジャパンSDGsアクションフェスティバル」を開催し、2日間で延べ160人を超えるキーパーソンが20のセッションに登壇し、先進事例の共有や具体的なアクションを提案した。
【事例】北海道下川町の取組
地域における経済・社会・環境の様々な地域課題を町内外の行政・企業・団体等との連携により政策提案・ビジネスプラン化し、技術や資金等のマッチングも含めた支援により、多様な主体による自立展開を促す“協創と展開の拠点”であるパートナーシップセンターを創設し取り組んでいる。また、2018年に策定した下川町の2030年ビジョン「2030年における下川町のありたい姿(下川版SDGs)」の達成度を測定するためのモノサシとなる下川町独自の指標を開発し、普及展開を図っている。
(ステークホルダーズ・ミーティング)
また、SDGSの環境的側面における各主体の取組を促進するため、環境省では2016年から「ステークホルダーズ・ミーティング」を開催している。これは、先行してSDGSに取り組む企業、自治体、市民団体、研究者や関係府省が一堂に会し、互いの事例の共有や意見交換、さらには広く国民への広報を行う公開の場である。先駆的な事例を認め合うことで、他の主体の行動を促していくことを目的としている。2020年度は地方の取組を重視するため、SDGS未来都市にも選定された神奈川県小田原市の協力を得て、2020年11月に第12回ステークホルダーズ・ミーティング兼SDGS推進本部円卓会議環境分科会を、関東地方環境事務所と共に現地会合+オンラインのハイブリッド形式で開催した。
(2)国際協力
(民間資金の動員)
年間2.5兆ドルとも言われるSDGs達成に向けた資金ギャップを埋めるには、民間資金の動員が不可欠である。日本は、ESG投資を活性化するとともに、国内の民間資金を成長市場である開発途上国のために動員するため、SDGs達成に向けたソーシャルボンドとして、年間約5.5億ドルのJICA債を発行している(発行実績2,900億円:2020年12月現在)。
(途上国の行政能力強化)
途上国におけるSDGs推進のためには、大きな資金ギャップがあり、徴税能力向上が重要である。そのため、日本では、国際機関等を通じた途上国の税制・税務執行に関する技術支援・能力構築支援を積極的に実施している。途上国の国内資金動員を支援するOECD・IMF・世界銀行・ADBの活動を資金面から支えドナー会議等を通して運営に参画しているだけでなく、租税専門家を派遣して人材面からも貢献している。これらの国際機関における国内資金動員の支援活動の協調を促進するPCT(Platform for Collaboration on Tax)の活動も支援している。
また、途上国の租税犯罪調査官等を対象とした「OECDアジア太平洋租税・金融犯罪調査アカデミー」をOECDと協力して設立し、資金拠出するとともに、同アカデミーの研修を定期的に開催している。
更に、JICAと連携し、途上国へ税務行政アドバイザーを派遣しているほか、JICAが日本に招へいした途上国の税務当局職員に対して研修等の支援を行っている。
ベトナム、インドネシア、モンゴル等国家財政基盤強化を通じた国内資金動員の向上に向けた支援として、アジアを中心に税務実務の改善や納税者管理改善等の税務行政改善を目的とする技術協力を実施している。特にモンゴルにおいては、既往の技術協力プロジェクトの提言も反映する形で四半世紀ぶりに本格的な税法改正が実現したことを受けて、更に改正税法の執行能力強化を目的とする技術協力プロジェクトを実施している。
また、インドネシアにおいても、同政府によるナショナルターゲット・指標の設定、中央及び対象州政府の行動計画の策定、モニタリング・評価体制の構築を支援し、指標解説書(メタデータ)、対象5州の地方行動計画(案)、モニタリングITシステム等が策定・開発中である。
(途上国でのビジネス展開)
2018年9月から、途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査、中小企業海外展開支援事業等を統合・整理した「中小企業・SDGsビジネス支援事業」を開始し、途上国のSDGs推進にビジネスで貢献することを目指す企業の現地調査、事業化に向けた普及・実証活動を支援している。2010年度に開始した前身の制度から累計で1,333件(2020年度末現在)の提案を採択しており、終了案件の約7割が途上国でのビジネス展開を継続・準備している。
(SDGsを通じた連携)
国際的なSDGsを通じた連携の具体例としては、2019年11月の第11回日メコン首脳会議で採択された東南アジア・メコン地域諸国との「2030年に向けた日メコンSDGsイニシアティブ」があり、今後、官民合同での「日メコンSDGsフォーラム」を開催し、各国のSDGs達成に向けた取組を共有しながら課題解決を目指していく。
また、大阪・関西万博が開催される 2025 年は、SDGs達成の目標年である2030年を5年後に控え、SDGs達成状況を検証し、その先に向けた取組を加速させる上で重要な年となる。大阪・関西万博をSDGs達成、更にはSDGs+beyondに貢献する国際博覧会とするため、政府は2020年12月21日に閣議決定された万博開催の基本方針において、開催期間前から住民や企業を含む多様なプレイヤーを巻き込み、開催期間後もその取組が自律的に発展していくものとしていく旨を定めている。更に、途上国に対しては必要な支援を実施し、150か国・25国際機関の出展を目指している。
【事例】持続可能性をレガシーとする東京オリンピック・パラリンピック競技大会
東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京大会)では、大会を社会全体に対して持続可能性の重要さの認識を高め持続可能な社会構築への行動を後押しする機会として捉え、「持続可能性に配慮した運営計画」や「持続可能性に配慮した調達コード」を策定するなどして大会を通じてSDGsの実現に貢献する様々な取組を実施している。
脱炭素化の分野においては、大会史上初めて、再生可能エネルギー由来の水素が聖火台史上初めて、再生可能エネルギー由来の水素が聖火台や聖火リレー等に使用されるとともに、大会時の運営電力の全量を再生可能エネルギーにや聖火リレー等に使用されるとともに、大会時の運営電力の全量を再生可能エネルギーにより供給し、更には、開催都市等のより供給し、更には、開催都市等の200200以上の事業者の協力の下にカーボンオフセットを以上の事業者の協力の下にカーボンオフセットを行うなどして、大会で排出される行うなどして、大会で排出されるCO2CO2ををゼロ以下にする「カーボンマイナス大会」を実現ゼロ以下にする「カーボンマイナス大会」を実現していく。
また、循環型社会の分野においては、市民参加型の取組として「みんなのメダルプロジ
ェクト」を実施している。金銀銅のメダルは、全国の 9 割の自治体が参加して、大会史上初めてその全てが使用済み携帯電話等の小型家電等から抽出されたリサイクル金属で製造される。また、 43 の会場で使用される表彰台も全国の小売店舗等から集められた使用済みプラスチックや海洋プラスチックで製造される。更に 、選手村ビレッジプラザ(休憩施設)
は、全国の 63 の自治体から無償で借り受けた国産木材で建築され、大会後は各自治体で活
用される木材活用リレープロジェクトが行われる。大会では、こうした市民参加型の取組
を含め、大会により排出される廃棄物も過去大会と比較して最も高いリユース・リサイク
ル率を掲げ、物資の調達段階から大会後の資源循環を見据えた取組を講じている。
更に、東京大会では、大会史上初めて、「ビジネスと人権に関する指導原則」に則った大会運営を目指す。障害者接遇研修の実施や、車いす対応車両の導入、段差解消などのアクセシビリティの確保、国際労働機関(ILO)との連携によるディーセント・ワークの推進など様々な取組を実施する。大会に出場する女子選手の割合も、オリンピック大会上最も高い約49%となることを始め、大会組織委員会においても、女性会長の下、理事会の女性比率を42%に引き上げるなど「あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等」を推進している。
このように、東京大会では、日本・世界にレガシーとして継承され、多様に発展していくことを目指し、SDGsを推進している。
6.各目標の達成状況
SDGs達成に向けては、推進状況を的確に把握し、着実に推進していくことが重要である。そのため、SDGs実施指針では、SDGs推進本部、幹事会、円卓会議において、SDGs実施指針及びSDGsアクションプランに基づく取組の進捗状況を定期的に確認し、必要に応じて見直しを行う旨を定めると共に、その際には、ステークホルダー会議等、可能な限り多くのステークホルダーの声を反映させる機会を設けるよう新たな仕組みを確立することを定めた。
SDGs達成度を的確に把握するため、2017年7月、国連においてグローバル指標が活用されることが決まり、2019年8月、政府はSDGsのグローバル指標に関する日本の達成状況のデータを公表した*6*。現時点で公開しているのは、全247指標のうち55.9%となる138指標であり(2021年4月現在)、更に7指標の公開を予定している。SDGグローバル指標の進捗結果はホームページで公表しているが、SDGグローバル指標の中には、途上国を念頭に作成された指標も多く、日本国内の進捗を測るのに必ずしもふさわしくないものもある。そのため、SDGs実施指針では、グローバル指標の検討・見直し状況に留意しつつ、海外及び国内の研究機関等による評価、ローカル指標の検討状況等に留意し、進捗評価体制の充実と透明性の向上を図ることとした。
政府としては、各ステークホルダーの評価などを踏まえ、2030年の目標達成に向けてSDGsの進捗状況に関する評価を行い、進捗が遅れている課題を洗い出し、政策の見直しやステークホルダーの更なる参画促進を行うなど、2030年における国内外のSDGs達成を目指し取組を加速化することが重要と考えており、本VNRの作成に当たっては、政府の評価と円卓会議民間構成員の評価を併記することとした。
(1)政府による進捗評価
SDGs達成状況については、国際機関やシンクタンクなどが様々な評価を行っており、日本が先進的な取組を行っていると評価されている分野もある一方、更に取組を強化すべき分野について指摘する調査もある。
例えば2021年6月に発表されたベルテルスマン財団及び持続可能な開発方法ネットワーク(SDSN)による報告書では、日本についてSDG4(教育)やSDG9(インフラ・産業化・イノベーション)、SDG16(平和と公正)に関する達成度合いが高いと評価される一方、SDG5(ジェンダー平等)やSDG13(気候変動)、SDG14(海洋資源)、SDG15(陸上資源)、SDG17(実施手段)に関する達成度合いが低いと評価されている。
上述のとおり、現時点では、SDGsの全てのターゲットに則した指標がなく、一つ一つのターゲットについて進捗評価をするのは難しいが、以下SDGsの目標について、主な進展や課題について、統計データを活用しながら取り上げたい。
{図は省略:ベルテルスマン財団及びSDSNによる報告書「持続可能な開発報告書2021」*7*より}
目標1:あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
本目標の達成状況を直接的に示す指標ではないが、国内の所得の分布や格差に注目する指標である2019年国民生活基礎調査に基づけば、2018年の1世帯当たり平均所得金額は、「全世帯」が552万3千円となっている。また、「高齢者世帯」が312万6千円、「高齢者世帯以外の世帯」が659万3千円、「児童のいる世帯」が745万9千円となっている。
{図表は省略}
所得金額階級別に世帯数の相対度数分布をみると、「100万円未満」が6.4%、「100~200万円未満」が12.6%、「200~300万円未満」が13.6%、「300~400万円未満」が12.8%、となっている。
「子供の貧困率」については、「子供の貧困対策に関する大綱」が最初に策定された2014年当時、同調査に基づく2012年値が16.3%だったが、2018年値では、13.5%となっている。子供の貧困について、「子供の貧困対策に関する大綱」が掲げる多くの指標で改善が見られており、子供の貧困に対する社会の認知が進んできたこと等については評価されているが、現場には今なお支援を必要とする子供やその家族が多く存在し、特にひとり親家庭の貧困率は高い水準にあるなど、その状況は依然として厳しい等指摘があるところ、政府としては、「子供の貧困対策に関する大綱」に基づき、引き続き取組を進めていく。
生活に困窮される方に対しては、生活困窮者自立支援法に基づき、自立の促進を図るための支援を行っている。2015年4月に生活困窮者自立支援法が施行されてから2020年3月末までの新規相談者は延べ約116.5万人であった。
更に、利用しうる資産、能力その他あらゆるものを活用してもなお生活に困窮する方については、生活保護による支援を行っており、生活保護の被保護者数は、2015年3月に過去最高を記録したが、以降減少に転じ、2020年12月には約205.0万人となり、ピーク時から約12万人減少している。
今般の新型コロナウイルス感染症の拡大は、世帯の経済的状況等にも様々な影響を及ぼすことが懸念されるところ、今後もその動向を注視し、人々の暮らしを守っていくために必要な対応を図っていく必要がある。この観点から、貧困・格差解消に資する社会保障制度の措置や子供の貧困対策の推進など、SDGsアクションプラン2021に記載した取組を着実に実施するとともに、国際協力についても引き続き進めていく必要がある。
指標1.3.1が掲げる社会保障制度に関して、日本は、第二次世界大戦直後の混乱と貧困を乗り越え、1961年に国民皆保険制度を導入し、UHCを達成した。支払可能な費用で保健医療サービスを受けることが可能となり、日本の社会経済発展、健康長寿の達成を支えるとともに、新型コロナウイルス感染症の拡大においても、医療提供体制の強化や、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響等により収⼊が下がっている方々、休業を余儀なくされている方々、事業環境が悪化している中小企業、小規模事業者等への支援等の観点に基づき、随時、必要な対策を実施してきた。このような経験に基づき、日本は、「誰の健康も取り残さない」との考えの下、引き続き世界の人々にUHCの必要性を広く訴えていく。
世界には、未だに多くの貧困層が存在しており、世界における貧困削減、とりわけ絶対的貧困の撲滅は、もっとも基本的な開発課題である。特に、様々な理由で発展の端緒をつかめない脆弱国、脆弱な状況に置かれた人々に対しては、人道的観点からの支援、そして、発展に向けた歯車を始動させ、脆弱性からの脱却を実現するための支援を行うことが重要である。指標1.a.1では、貧困削減に焦点を当てたODA贈与の合計額を示している。
目標2:飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
「子供の貧困対策に関する大綱」(2019年11月閣議決定)において設定された子供の貧困に関する指標のうち、子供がいる世帯のうち、過去1年間に経済的な理由で家族が必要とする食料が買えない経験があったと答えた世帯は2017年値で16.9%(よくあった世帯は2.5%、ときどきあった世帯は5.1%、まれにあった世帯は9.2%)となっており(出所:国立社会保障・人口問題研究所「生活と支え合いに関する調査」(特別集計))、生まれ育った環境によって、栄養バランスの取れた食事ができない子供たちがいることが明らかとなっている。
同大綱では、生活保護制度による教育扶助や就学援助制度による学校給食費の補助を行い、低所得世帯への支援を実施することや、学校給食の普及・充実及び食育の推進を図り、適切な栄養の摂取による健康の保持増進に努めることが定められた。
また、近年、地域住民等による民間発の取組として無料または安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供する子供食堂等が広まっており、家庭における共食が難しい子供たちに対し、共食の機会を提供する取組が増えている。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、このような取組の重要性は増しており、NPO等に対する緊急支援事業が行われている。また、子供食堂等へ食品の提供を行っているフードバンクの役割も重要となっており、フードバンクに対して、食品の受入れ・提供を拡大するための支援も行われている。さらに、食育を通じて栄養・食事の在り方を見直すとともに、食料自給率の向上、食料安全保障の確立に向けた取組を進めていく。
また、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させるため、新たな政策方針として「みどりの食料システム戦略」が2021年5月に策定された。同戦略では、2050年までに目指す姿として、農林水産業のCO2ゼロエミッション化、化学農薬の使用量をリスク換算で50%低減、化学肥料の使用量の30%低減、有機農業の取組面積の割合を25%(100万ha)に拡大、2030年までに持続可能性に配慮した輸入原材料調達の実現等を掲げている。
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、脆弱地域のみならず世界各地において栄養不良が深刻化しており、我が国は世界的な栄養改善に向けた貢献を強化している。2021年9月に国連食料システムサミットが開催され、同年12月には栄養サミットを東京で開催することにも鑑み、我が国の100年以上にわたる栄養政策の経験を基に、全てのライフステージの人々を対象とした「誰一人取り残さない」栄養政策を一層推進する。その一環として、健康的で持続可能な食環境づくりの推進に関して、栄養サミットのコミットメントとすることやアジア諸国等への国際展開について検討を進めることとしている。そして世界の食料問題の改善を通じ栄養改善につなげるよう国際協力を行い、加えて各国が国際的な栄養改善のための資金及び支援方針等にかかるコミットメントを作成するよう働きかけていく予定である。
目標3:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
日本は、健康増進法に基づき「健康日本21(第二次)」を2012年に策定し、今後10年間に向けた健康に関する様々な指標や目標を定め、企業・民間団体・自治体相互の連携により、健康寿命の延伸、健康格差の縮小等を図っていくこととした。健康寿命の延伸と健康格差の縮小については改善が見られるが、循環器疾患や糖尿病など、更なる取組が必要と見られるものもあるところ、引き続きの取組が必要である。
喫煙については「成人の喫煙率の減少(喫煙をやめたい者がやめる)」を目標(目標値12%)に、各種施策に取り組んでいる。また、2018年に健康増進法を改正し、施設の類型毎に喫煙禁止場所を定めるなど受動喫煙対策を強化した。
{図表は省略}
日本は世界全体の中でも自殺率が高く、G7の中ではトップを記録しており、体の健康だけでなく、心の健康も課題となっている。2016年の自殺対策基本法改正の趣旨や日本の自殺の実態を踏まえ、2017年7月、「自殺総合対策大綱~誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して~」を閣議決定した。同大綱では、先進諸国の現在の水準まで自殺率を減少させるべく、2026年までに、自殺死亡率を2015年比で30%以上減少させる(2015年18.5 ⇒ 13.0以下)に目指すことを掲げた。その後、自殺者数は減少してきていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大後、2020年は11年ぶりに自殺者数が増加しており、特に女性の自殺者数は前年と比べて935人増加している。女性の自殺の背景には、健康問題、経済・生活問題、勤務問題、家庭問題など様々な問題が潜んでいるが、新型コロナウイルス感染症の拡大において、これらの問題が深刻化し、女性の自殺者の増加に影響を与えている可能性があるとされている。引き続き、自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指し、総合的な対策を推進してまいりたい。
{図表は省略}
ターゲット3.6で掲げる道路交通事故による死者については、2015年には5,039人(人口10万人当たり4.0人)だったが、年々減少し、2019年には3,819人(人口10万人当たり3.1人)にまで減少している。
{図表は省略}
目標4:すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
(1)教育の無償化・負担軽減に向けた取組
日本では、幼児教育・保育の無償化、就学援助の充実、高等学校等就学支援金・高校生等奨学給付金の充実、高等教育の就学支援を実施し、幼児期から高等教育段階まで切れ目のない教育費負担の軽減に取り組んでいる。
{図は省略}
幼児教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培うものであり、子供たちに質の高い幼児教育の機会を保障することは極めて重要である等の背景を踏まえ、段階的に推進してきた取組を一気に加速するため、子ども・子育て支援法を改正し、2019年10月1日から、幼児教育・保育の無償化が実施された。これにより、現在は、3歳から5歳までの全ての子供についての幼稚園、保育所、認定こども園等の費用が無償化されている。
加えて、高等教育は、「教育・研究・社会貢献」という本来的な機能の発揮を通じてイノベーションを創出し、国の競争力を高める原動力でもあると同時に、知と人材の集積拠点として、思考力、判断力、俯瞰力、表現力の基盤の上に、幅広い教養を身に付け、高い公共性・倫理性を保持しつつ、時代の変化に合わせて積極的に社会を支え、論理的思考力を持って社会を改善していくための基礎を培うものでもある。大学改革、アクセスの機会均等、教育研究の質の向上を一体的に推進し、高等教育の充実を進める必要がある。また、低所得の家庭の子供たちは大学への進学率が低いという実態がある。
このため、真に支援が必要な低所得世帯の子供たちに対し、質の高い高等教育機関への修学に係る経済的負担を軽減し、日本における急速な少子化の進展への対処に寄与するという目的のもと「大学等における修学の支援に関する法律」に基づき、2020年4月から、授業料等減免制度の創設と給付型奨学金の支給の拡充が実施されている。支援対象となる学生等については、高校在学時の成績だけで否定的な判断をせず、高校等が、レポートの提出や面談等により本人の学修意欲や進学目的等を確認することとしている。
(2)学習指導要領の改訂
近年、情報技術の飛躍的な進化等を背景としたAIの急速な進化やグローバル化の進展などに伴い、社会の変化は加速度を増し、複雑で予測困難となってきている。一人ひとりの子供たちが、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められている。
このような時代において、子供たちが未来を切り拓くために必要な資質・能力を確実に育成するため、学習指導要領の改訂が行われた。新学習指導要領には、これからの学校教育や教育課程の役割として「持続可能な社会の創り手」を育むことが前文と総則において掲げられ、ESDの理念が組み込まれた。この新学習指導要領を踏まえ、全ての学校で、次世代を担う子供たちが、地域や社会の諸課題を自らの問題として捉え、身近なところから主体的に取り組む態度を育成するESDが推進されている。新学習指導要領は、小学校・特別支援学校小学部では2020年4月から、中学校・特別支援学校中学部では2021年4月から全面実施されており、高等学校・特別支援学校高等部では2022年4月から順次実施される予定となっている。
小学校新学習指導要領(2017年3月告示)
【前文】
これからの学校には、・・・一人一人の児童が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる。
【第1章 総則】
第1 小学校教育の基本と教育課程の役割
3 ・・・豊かな創造性を備え持続可能な社会の創り手となることが期待される児童に、生きる力を育むことを目指すに当たっては、学校教育全体・・・各教科・・・の指導を通して、どのような資質・能力の育成を目指すのか明確にしながら、教育活動の充実を図るものとする。・・・
(※中学校、高等学校、特別支援学校学習指導要領においても同趣旨の記載あり)
(3)男女共同参画を推進する教育・学習の推進
男女共同参画社会の実現は、社会全体で取り組むべき最重要課題であり、日本においては、「男女共同参画社会基本法」や「男女共同参画基本計画」等に基づき総合的かつ計画的な取組を進めている。
2020年に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」では、第4次基本計画に引き続き、男女共同参画社会の形成に関する施策の推進を図ることとしている。SDG4(教育)に関わる分野として、例えば、教育等を通じた意識改革、理解の促進が挙げられている。政府は、教育機関、地方公共団体等との連携を深めつつ、男女共同参画の理解の促進に向けた教育等を展開するとともに、その推進体制を強化する観点から、学校教育等の分野における政策・方針決定過程への女性の参画拡大を図ることとされた。
第5次計画等に基づき、学校教育については、小・中・高等学校において、児童生徒の発達段階に応じて男女の平等や相互の理解と協力について適切に指導が行われるとともに、男女が共に各人の生き方、能力、適性を考え、主体的に進路を選択する能力と態度を身に付けられるようなキャリア教育が行われるよう努めている。また、次世代を担う若者が、固定的な性別役割分担意識にとらわれず主体的に多様な進路を選択することができるよう、学校教育段階から男女共同参画意識の醸成を図るため、「次世代のライフプランニング教育推進事業」において、学校で活用できるライフプランニング教育プログラム(高校生・大学生対象)の開発を行った。
{図表は省略}
「Education for All、すべての人々に教育の機会を」の考え方に基づく国際的な働きかけとして、例えばJICAはアフリカ地域を対象に「みんなの学校プロジェクト」に取り組んでいる。コミュニティと学校の協働を促進し、子どもの読み書き・算数スキルの向上や、女子教育の改善、学校給食による栄養改善や衛生教育による保健の改善など、マルチセクターでの取組を行い、ニジェールではコミュニティへの啓発活動を通じ、女子を取り巻く教育環境の改善、2019/20年には前年比にして中学1年女子の中退率を33.4%から20.9%へ13.4%減少させるなどの成果を上げている。
目標5:ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う
女性は、日本の人口の約51%、有権者の約52%を占めている。政治、経済、社会などあらゆる分野において、政策・方針決定過程に男女が共に参画し、ジェンダー平等が進むことは、日本の経済社会の持続的発展を確保するとともに、あらゆる人が暮らしやすい社会の実現につながる。
近年、様々な取組を進めてきた結果、日本の女性活躍は一定の前進が見られている。例えば、上場企業の女性役員数は5年間で約2.2倍に増加し、民間企業の各役職段階に占める女性の割合も上昇するなど、指導的地位に就く女性が増える道筋はついてきた。加えて、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」や「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」等、女性活躍に向けた法制度面の整備も着実に進んできた。
しかしながら、日本のジェンダー・ギャップ指数の総合順位は156か国中120位と、大変残念な状況にある。我が国における男女共同参画社会の実現に向けた取組の進展が未だ十分でない要因としては、①政治分野において立候補や議員活動と家庭生活との両立が困難なこと、人材育成の機会の不足、候補者や政治家に対するハラスメントが存在すること等、②経済分野において女性の採用から管理職・役員へのパイプラインの構築が途上であること、そして、③社会全体において固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)が存在していること等が考えられると総括できる。グローバル化が進む中、男女共同参画の取組は、世界的な人材獲得や投資を巡る競争を通じて、日本経済の成長力にも関わる問題である。
{図表は省略}
加えて、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大の影響が、特に女性に強く出ている。例えば、非正規雇用労働者を中心に、2020年4月の女性の雇用者数が対前月比で男性の約2倍減少している。また、2020年4月から2021年3月のDV相談件数は前年度の約1.6倍に増加しており、2020年の女性の自殺者数は、前年と比べて935人増加している。更に、感染症の拡大が続く中で、家事や育児などの無償ケアの責任が女性に大きくかかっているという指摘もある。こうしたDVや性暴力の増加・深刻化の懸念や、女性の雇用、所得への影響等は、男女共同参画の重要性を改めて示すものである。
{図表は省略}
政府としては、2020年12月に閣議決定した「第5次男女共同参画基本計画」を着実に推進するとともに、新型コロナウイルス感染症の拡大が女性の雇用や生活に与える影響等にしっかりと対処していく。また2021年の3月、男女共同参画が日本政府の重要かつ確固たる方針であることを、全閣僚を構成員とする会議において改めて確認したところであり、基本計画に盛り込んだ女性の登用・採用に関する目標の達成に向けて、2021年度及び2022年度に取り組む具体策を、2021年6月に策定した「女性活躍・男女共同参画加速の重点方針2021」に盛り込んだ。
男女共同参画社会の実現に向けて取組を進めることは、男女にとどまらず、年齢も、国籍も、性的指向・性自認(性同一性)に関すること等も含め、幅広く多様な人々を包摂し、全ての人が幸福を感じられる、インクルーシブな社会の実現にもつながるものである。今後とも、ジェンダー平等及びジェンダーの視点をあらゆる施策に反映(ジェンダー主流化)し、政府機関、民間企業や若者を含めた市民社会など全てのステークホルダーが連携して、一層の取組を進めていく。
目標6:すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
日本は、世界でも有数の多雨地帯であるモンス-ンアジアの東端に位置し、年平均降水量は 1,668mmで、世界(陸域)の年平均降水量約 1,171 mmの約1.4倍となっている。一方、一人当たり年降水総量でみると、日本は約 5,000㎥/人・年となり、世界の一人当たり年降水総量約20,000㎥/人・年の4分の1程度となっている。また、降水が梅雨期、台風期、降雪期に集中するなど、気象に大きく左右されるほか、地形が急峻で短い河川が多いため、降った雨のかなりの部分が短時間のうちに海へ流出してしまうなど、水資源を利用するには不利な条件にある。
{図表は省略}
このような条件の下、日本では、水資源を確保するために様々な努力を重ね、水インフラが築かれてきた。そのため、今や水道普及率は98%を超えているが、1965 年頃から、全国的に雨が少なくなる傾向にあり、各地で渇水が発生している。渇水が発生すれば、食事の用意ができない、水洗トイレが使えないなど家庭生活や社会活動に大きな影響を及ぼすほか、工業用水では工場の操業短縮や停止、農業用水では農作物の生育不良や枯死が起こるなど経済社会活動に大きな被害が生じることにもなる。水は1日たりとも欠かせない重要な資源であり、安定的で安心な水の供給に引き続き取り組む必要がある。
水へのアクセスは人間の基本的人権であり、我が国は国際的にも安全な水の安定供給、トイレなどの衛生的環境の改善、持続的な水資源管理などに取り組んでいる。昨今の新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、JICAは、開発途上国政府機関や開発パートナーと協働し、感染症予防において最も重要な「手洗い」の習慣化、それに必要となる安全な水の供給に向けた取り組みを強化している。
目標7:すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
日本は、石油危機を契機に、1979年に制定された省エネ法による規制措置と、予算や税制の支援措置の両面で、徹底した省エネの取組を推進してきた。こうした官民の努力により、エネルギー消費効率を約4割改善し、世界最高水準の省エネを実現してきた。今後も、省エネ法に基づく規制を始めとするあらゆる政策を総動員し、省エネを推進していく。
再エネについては、2012年にFIT制度を導入し、この結果、10%(2012年度)であった再エネ比率は18%(2019年度)にまで拡大し、導入量は再エネ全体で世界第6位(2018年)、太陽光発電は世界第3位(2018年)となり、発電電力量の伸びは、2012年以降、約3倍に増加というペースで、欧州や世界平均を上回る等、再エネの導入は着実に進展している。政府においても、各府省で2021年度分の電力につき、再エネ比率30%以上の電力調達の実施に取り組むなど、再生可能エネルギー電力の調達促進に取り組んでいる。
2050年カーボンニュートラル及び2030年度の温室効果ガス排出削減目標の実現を前提に、「エネルギー基本計画」を見直す。エネルギー政策の原則である3E+S(安全、安定供給、経済効率性、環境適合)の考え方を大前提に、政策連携や取組の強化を図る。こうした考え方の下、電力部門の脱炭素化に向け、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、再生可能エネルギーに最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促す。立地規制の見直し、系統制約の克服、EVを含めた蓄電池やディマンドレスポンスの活用等による柔軟性の確保や電力市場制度の大胆な改革を進める。また、必要な送配電網・電源への投資を着実に実施し、コスト効率化や、分散型エネルギーシステムなど真の地産地消にも取り組むよう促す。火力については、CCUS/カーボンリサイクルを前提とした利用や水素・アンモニアによる発電を選択肢として最大限追求する。原子力については、可能な限り依存度を低減しつつ、安全最優先の原発再稼働を進めるとともに、実効性ある原子力規制や、道路整備等による避難経路の確保等を含む原子力防災体制の構築を着実に推進する。安全性等に優れた炉の追求など将来に向けた研究開発・人材育成等を推進する。電力部門以外は、炭素生産性が欧州に比べ劣っている中、省エネルギーを徹底し、未利用熱等も活用するとともに、供給側の脱炭素化を踏まえた電化を中心に進める。電化できない熱需要については、水素などの脱炭素燃料やカーボンリサイクルも活用していく。
{図表は省略}
目標8:包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用 ディーセント・ワーク を促進する
雇用情勢を見ると、近年では2008年9月のリーマンショックの後、2009年夏には過去最低の有効求人倍率(2009年8月で0.42倍)、過去最高に並ぶ完全失業率(2009年7月で5.5%)となったが、その後、経済の回復が見られ、有効求人倍率、雇用人員判断DIのいずれも1990年代初めのバブル経済の頃に匹敵するほど人手不足が深刻化していた。その後、2020年4月から6月を見ると、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、有効求人倍率は大きく低下(2020年4月:1.32倍、同年6月:1.11倍)したものの、完全失業率は緩やかな上昇(2020年4月:2.6%、同年6月:2.8%)となった。特に、4月には休業者が大きく増加したが、5月と6月には、その増加幅は大きく縮小した。総務省統計局「労働力調査」により、2か月目の調査世帯のみを対象とした集計結果を見れば、休業者であった人の約40%強の人が、従業者に戻る動きが続いた。
{図表は省略}
また、近年、パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者は全体として増加傾向にあり、2019年には2,165万人と、雇用者の約4割を占める状況にある。これらは、高齢者が増える中、高齢層での継続雇用により非正規雇用が増加していることや、景気回復に伴い女性を中心にパートなどで働き始める労働者が増加していることなどの要因が大きい。正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金カーブを比較すると、「一般労働者(正社員・正職員)」は年齢を重ねると賃金額が上昇していくのに対し、「短時間労働者(正社員・正職員以外)」や「一般労働者(正社員・正職員以外)」は横ばいのままとなる形状の違いが存在している。この形状の違いは、ここ10年間でほとんど変化がみられない。一方で、非正規雇用労働者の待遇の改善に向けては、最低賃金の引上げや同一労働同一賃金(不合理な待遇差の解消)の実現等の取組が進められており、2010年と2019年で比較すると、「一般労働者(正社員・正職員)」に比べて「短時間労働者(正社員・正職員以外)」や「一般労働者(正社員・正職員以外)」の伸びの方が大きくなっている。
{図表は省略}
働き方を巡っては、労働力人口・就業者数の将来的な減少見通しを踏まえた労働参加、女性のライフコースにかかる意識の変化と共働きの増加への対応、足元の雇用情勢を踏まえた人手不足への対応等の必要性が高まっており、仕事と生活の調和のとれた働き方を実現していくことが重要な課題となっている。 2007年の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」策定以降のワーク・ライフ・バランスにかかる希望と現実の推移を見ると、2019年に行った調査においても、なお希望と現実は乖離している。「仕事を優先したい」との希望が少ないのに対し、現実には「仕事を優先」しているとの回答が多い状況は変わっておらず、特に20~29歳男性、20~29歳、30~39歳、40~49歳女性において乖離の幅が大きい。また、男女とも約2~3割の人は、「仕事」と「家庭生活」だけでなく、「地域・個人の 生活」も優先したいとする希望がある。働く側の意識の変化などを背景として就業形態の多様化や就業時間の短縮等が進んできたが、働き方改革の推進とあいまって、異なる就業形態間で公平な待遇、ワーク・ライフ・バランスの実現などを進めていくことが重要となっている。
なお、国内の技能実習生を含む外国人労働者は172万人と過去最高を更新しているところ、新型コロナウイルス感染症等の影響を受けて困窮する外国人失業者等もいることから、ハローワークでは関係機関とも連携しつつ、就労支援を行っている。ODAの実施を通じて開発途上国及び日本国内において幅広いネットワークを有するJICAは、国内外のステークホルダーと連携し、技能人材・ビジネス人材の育成支援等を積極的に行っており、日本が「選ばれる国」となることを目指している。
引き続き、新型コロナウイルス感染症の拡大が雇用に与える影響を注視しつつ、新型コロナウイルス感染症の拡大防止と雇用・生活を守るために、必要な対策を講じていく必要がある。
目標9:強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
日本のイノベーションに関して、世界知的所有権機関(WIPO)が発表した「Global Innovation Index: GII」では、日本は、2010年代前半には20位圏内を推移していたが、近年少しずつ順位を上げており、2019年には15位となった。日本は、GIIを構成する項目のうち、公的機関、インフラストラクチャー、市場の成熟度、ビジネスの高度化、知識と技術アウトプットの指標については総じて10位圏内に入る実力を示している。しかし、人的資本と研究と創造的アウトプットの指標については、総じてランクは低くなっている。人的資本と研究については、教育に対する政府の支出の少なさや、高等教育に関して海外からの留学生の数の少なさが挙げられる。同様に、創造的アウトプットの指標でも、総じてスコアが低い。
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政府としては、カーボンニュートラルを目指すことを宣言するとともに、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げ、グリーン社会の実現に最大限注力し、革新的なイノベーションの促進や規制改革などの政策を総動員して、脱炭素社会の実現に取り組むこととしている。2021年3月に決定された「第6期科学技術・イノベーション基本計画」に基づき、科学技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図っていく。
目標10 :各国内及び各国間の不平等を是正する
2019年国民生活基礎調査に基づけば、2018年の貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)は127万円となっており、「相対的貧困率」(貧困線に満たない世帯員の割合)は15.4%(対 2015年△0.3 ポイント)となっている。2014年から実施されてきた社会保障・税一体改革において、低所得世帯に対する介護保険料の軽減強化など、社会保障を通じた所得再分配に寄与する取組が進められてきており、これらの措置により、相対的貧困率等の上昇が抑えられてきたが、暮らしに関わる課題も生じている。
当面の緊急課題は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、離職を余儀なくされたり、生活に困難が生ずるなどした者・世帯への対応である。今回、労働・福祉の両面において、従来の制度では対象とならなかった者に対しても、実態を踏まえて、前例 のない対応が行われているが、今後の状況変化を注視しつつ、労働・福祉の両面で臨機応変に対応していく必要がある。また、今後、同様のリスクに対して、どう対応していくことが適当かを含めて、今回の事態が落ち着いた段階で支援状況などを検証しつつ、考えていく必要がある。中長期的には、貯蓄分布の二極化という趨勢的な変化が見られることから、今後とも社会保障等を通じた所得再分配が適切に機能し、経済的な格差が拡大しないよう取り組んでいく必要がある。今後とも、経済的な格差が拡大することがないよう、就業や所得の状況、住まいや生活支援のニーズなどを適切に把握し、経済的に厳しい状況にある者・世帯の暮らしや仕事が守られるよう、取り組んでいくことが重要である。
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目標11 :包摂的で安全かつ強靱 レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
日本は自然災害が多いことから、平常時には堤防等のハード整備やハザードマップの作成等のソフト対策を実施し、災害時には救急救命、職員の現地派遣による人的支援、被災府県からの要請を待たずに避難所避難者へ必要不可欠と見込まれる物資を緊急輸送するプッシュ型物資支援、激甚災害指定や被災者生活再建支援法等による資金的支援等、「公助」による取組を絶え間なく続けているところである。
日本では、昭和36年に災害対策基本法を制定し、災害対策全体を体系化し、総合的かつ計画的な防災行政の整備及び推進を図るとともに、当該法律に基づく政府の防災に関する基本的な計画として、昭和38年に防災基本計画を策定した。防災基本計画は、前年度の災害等を踏まえて毎年検討を加え、必要があると認められるときは修正することとしている。令和2年においては、新型コロナウイルス感染症の拡大への対応等を踏まえた修正を行った。また、防災基本計画に基づき、全ての都道府県及び市区町村において、地域防災計画が作成されている。
さらに、人口急減や少子高齢化など、日本が直面する経済面・社会面の大きな変化に的確に対応した交通体系を構築していくことも重要である。特に地方圏においては、地域鉄道・営業用バスともに輸送人員が減少傾向にあるため、交通事業者の経営は厳しい状況にあり、営業用バスについては約9割が赤字となっている。また、2050年における人口推計を見ると、全国の居住地域の約半数で2015年時点に比べて人口が50%以上減少し、人口規模が小さい市区町村ほど人口減少率が高くなる傾向があり、特に人口が1万人未満の市区町村では人口が約半分になるなど、地方で更なる人口減少が起こると見込まれている。その結果、小規模な市町村においては公共交通の利用者が一層減少することから、交通事業者の経営はこれまで以上に厳しくなり、サービスが維持できなくなる可能性がある。
公共交通サービスの維持・確保が厳しさを増している一方、高齢者の運転免許の返納が年々増加し、受け皿としての移動手段を確保することが、益々重要な課題になっている。こうしたことを踏まえ、地域のニーズにきめ細やかに対応できる市町村等が、地域交通に関するマスタープランである地域公共交通計画を策定した上で、公共交通の改善や移動手段の確保に取り組むことができる仕組みを盛り込んだ「持続可能な運送サービスの提供の確保に資する取組を推進するための地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律」が2020年11月に施行された。本改正法により、例えば過疎地等で市町村等が行う自家用有償旅客運送において、バス・タクシー事業者がノウハウを活用して協力し、地域の輸送資源を最大限活用する取組を推進するための制度を創設し、継続的な輸送サービスの提供が可能となる。市町村等とバス・タクシー事業者の双方にとってメリットがあるほか、利用者にとっても安全、安心な交通サービスの提供を受けられるなどの効果が期待される。また、本改正法に基づく地域公共交通利便増進事業等により、路線・ダイヤ・運賃の見直し等の利用者目線による公共交通サービスの改善を図ることとしており、利便性が高く持続可能な交通サービスの提供が図られるなどの効果が期待される。
{図表は省略}
目標12 :持続可能な生産消費形態を確保する
世界では途上国を中心に9人に1人が栄養失調となっている一方、日本では食べられるのに捨てられる「食品ロス」の量が年間600万トン(2018年度推計値)、1人当たり1年で約47㎏となっている。これは、国連世界食糧計画(WFP)による食糧援助量(約420万トン)の1.4倍に当たり、毎日大型トラック(10トントラック)1640台分を廃棄していることになる。
このような現状にも鑑み、2019年10月に「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行され、2020年3月には、「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」が閣議決定された。その中で、日本は、事業系・家庭系ともに2000年度比で2030年度までに食品ロス量を半減させる目標を設定した(事業系:2000年度547万トン→2030年度273万トン、家庭系:2000年度433万トン→2030年度216万トン)。
2018年度時点で事業系食品ロスは324万トン、家庭系食品ロスは276万トンとなっているところ、食品ロス削減に向けては、事業者・家庭双方の取組が必要である。
事業者については、フードサプライチェーン全体で食品ロスを削減させる必要があり、①商慣習の見直し(小売店舗での納品期限の緩和や、賞味期限表示の年月表示化、賞味期限の延長)の推進に向けて、食品製造・卸売・小売といった民間企業の参画を得て、検討・実証の実施、②食品の寄附を受けて食品を必要としている者に提供する「フードバンク」の取組について、食品企業における活用促進の働きかけ、③飲食店等における「食べきり」や、食べ残しの「持ち帰り」、④食品事業者の店舗等における消費者への食品ロス削減の普及啓発等に取り組んでいる。
また、消費者に対しては、日々の生活の中でできることを一人ひとりが考え、行動に移してもらうことが重要であるため、①消費期限・賞味期限の正しい意味の理解の促進、②使用時期を考慮した食品の選び方や、家庭にある食材を無駄なく使いきる工夫に関する情報提供、③外食時のおいしい食べきり行動の促進の普及啓発等に取り組んでいる。
食品ロスは国民一人ひとりの生活意識によって変化する面もあり、日々の生活のなかで意識されることが重要である。
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目標13:気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
個々の気象災害と地球温暖化との関係を明らかにすることは容易ではないが、地球温暖化の進行に伴い、世界で豪雨災害や猛暑のリスクが高まることが予想されている。例えば、世界の年平均気温と同様、日本でも年平均気温は変動を繰り返しながら上昇を続けており、100年当たり1.21%の割合で上昇している。気候変動は日本の経済・社会活動や生物多様性などの他の環境問題に甚大な影響を与える、喫緊の課題であるという認識の下、日本は気候変動対策の取組を継続して行っている。
日本は、2015年7月に、温室効果ガスの排出量を2030年度に2013年度比で26%削減する目標を含む「国が決定する貢献案(INDC)」を国連に提出した(2016年11月の日本のパリ協定締結に伴って「国が決定する貢献(NDC)」と位置づけられた)。2020年3月に国連に提出したNDCでは、地球温暖化対策計画の見直しに着手すること、また、その後の削減目標の検討は、エネルギーミックスの改定と整合的に更なる野心的な削減努力を反映した意欲的な数値を目指し、次回のパリ協定に基づく5年ごとの提出期限を待つことなく実施することを表明している。2019年には「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定し、脱炭素社会実現に向けたエネルギー、産業、運輸、地域・暮らし等の各分野でのビジョンとそれに向けた対策・施策の方向性を示し、横断的に取組を進めている。
2019年度の速報値では、温室効果ガスの総排出量は、2014年度以降、6年連続で減少しており、排出量を算定している1990年度以降、前年度に続き最小値を更新した。また、実質GDP当たりの温室効果ガスの排出量は、2013年度以降7年連続で減少した。
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また、日本は国際的な気候変動対策への引き続きの取組を進めている。2015年に「美しい星への行動2.0(ACE2.0)」で2020年に官民合わせて1兆3,000億円の気候変動対策支援実施を発表した。2019年に約1.37兆円の気候変動に係る支援を実施し、着実に目標を達成している。また、緑の気候基金(GCF)に対しては、日本は初期拠出(2015-2018年)における15億ドルの拠出に続き、2019年には、2020年から2023年の4年間で、GCFの活動状況に応じて最大15億ドルを拠出する意向を表明した(日本の累積拠出規模は、英国に次いで第2位)。
更に、2020年10月には、菅内閣総理大臣は2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」、脱炭素社会の実現を目指すと宣言した。2030年のNDCについては、「2050年カーボンニュートラル」の宣言を踏まえ、エネルギー政策のあり方、地方の脱炭素化や、国民のライフスタイルの転換も含め、幅広く議論を進めていく。
目標14:持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
海上保安庁が2020年に日本周辺海域において確認した海洋汚染の件数は、453件となっている。2020年の汚染確認件数は、前年の432件に比べ21件増加している(過去 10 年の平均件数 415件)。汚染確認件数の汚染物質別(油、廃棄物、有害液体物質及びその他の別)では、油による汚染確認件数が最も多く286件(64%)で、前年の275件に比べ11件減少している(過去10年の平均件数266件)。油の次に汚染確認件数が多いのは、廃棄物によるもので、その件数は158件(36%)であり、前年の144件に比べ14件増加している(過去10年の平均件数129件)。特に一般市民によるものは、前年の84件から95件となり、1.1倍に増加している。有害液体物質による汚染確認件数は1件(1%)で、前年の3件に比べ2件減少している(過去 10 年の平均件数7件)。
加えて、年間数百万トンを超えるプラスチックごみが海洋に流出しているとの推定もあり、日本の海岸にも、海外で流出したと考えられるものも含めて多くのごみが漂着している。海に流出したプラスチックごみは、海鳥や海洋生物が誤食することによる生物被害や、投棄・遺失漁具(網やロープ等)に海洋生物が絡まって死亡するゴーストフィッシング、海岸の自然景観の劣化など、様々な形で環境や生態系に影響を与えるとともに、漁獲物へのごみの混入や漁船のスクリューへのごみの絡まりによる航行への影響など、漁業活動にも損害を与える。更に、紫外線等により次第に劣化し破砕・細分化されてできるマイクロプラスチックは、表面に有害な化学物質が吸着する性質があることが指摘されており、吸着又は含有する有害な化学物質が食物連鎖を通して海洋生物へ影響を与えることが懸念されている。
日本では、2018年5月に閣議決定された「第3期海洋基本計画」の中で、関係省庁が取り組む施策として海洋ごみへの対応が位置付けられたほか、同年6月に改正された海岸漂着物処理推進法においてマイクロプラスチックの海域への流出抑制のため、事業者による廃プラスチック類の排出抑制の努力義務が規定された。更に、2019年5月には、「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」が関係閣僚会議で策定されたほか、海岸漂着物処理推進法に基づく「海岸漂着物対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」の変更及び「第四次循環型社会形成推進基本計画」に基づく「プラスチック資源循環戦略」の策定が行われ、海洋プラスチックごみ問題に関連する政府全体の取組方針が示された。
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目標15:陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
日本の森林面積はほぼ横ばいで推移しており、2017年3月末現在で2,494万㏊であり、 国土面積3,780万㏊のうち約3分の2が森林となっており、過去半世紀程度一定の面積を保っている。また、森林の18.2%が、国立公園、原生自然環境保全地域、保護林、緑の回廊など法的に保護されており、森林の生物多様性の保全に取り組んでいる。日本の森林蓄積は人工林を中心に年々増加してきており、2017年3月末現在で約52億㎥となっている。これは、森林の地上部バイオマス量で表すと㏊当たり113トンである。このうち人工林が約33億㎥と約6割を占める。
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国内の森林資源が本格的な利用期を迎えており、森林の有する多面的機能を持続的に発揮させるためには、森林を適正に整備し、保全するとともに、「伐って、使って、植える」という森林資源の循環を確立することが重要であり、日本では国、都道府県、市町村による森林計画制度の下、森林のほぼ全てが長期的な森林管理計画の下に置かれている。政府は、「森林・林業基本法」に基づき、「森林・林業基本計画」を策定し、森林及び林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進している。この「森林・林業基本計画」に即して政府は「全国森林計画」を策定し、全国の森林を対象として、森林の整備及び保全の目標、伐採立木材積、造林面積等の計画量、施業の基準等を示している。
目標16:持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
刑法犯により死亡し、又は傷害を受けた者の数の推移は、2003年以降、いずれの数も減少傾向にある。
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児童虐待については、児童相談所への虐待相談対応件数は、一貫して増加を続け、2019年度中に、全国215か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は193,780件で、過去最多となった。虐待により多くのかけがえのない子供の命が失われている状況を受け、児童虐待防止対策の強化を図るため、2019年に、体罰禁止の法定化、児童相談所における一時保護等を行う「介入」の担当者と「保護者支援」の担当者の分離、児童相談所における弁護士等の配置促進、DV対策との連携強化を内容とする「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」が成立した(一部の規定を除き2020年4月1日に施行。)。
目標17:持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
(1)開発資金
2019年の日本のODA実績は、2018年からOECD開発援助委員会(DAC)の標準のODA計上方式として導入された贈与相当額計上方式(Grant Equivalent System:GE方式)では、約155億 8,766万ドル(約1兆6,998億円)となった。支出総額は、約189億1,977万ドル(約2兆631億円)で、前年(2019年)に比べ、ドルベースで約9.7%増(円ベースで約8.3%増)となった。この結果、DAC諸国における日本の順位は、GE方式、支出総額ともに米国、ドイツ、英国に次ぎ第4位となった。対国民総所得(GNI比) では、2010年は0.20%だったが、2019年には0.29%になった。また、2019年のLDCS向けODA実績のGNI比は、0.10%(支出純額ベース)であった。
新型コロナウイルス感染症の拡大以前に年間2.5兆ドルと言われていたSDGs達成に向けた資金ギャップが、今後更に広がるとみられている。SDGs達成に向けては、途上国への資金の流れを正確に把握し、限りある開発資金を効果的に活用することが不可欠である。現在、OECDや様々な国際的な議論の場において、新興ドナーによる援助や民間資金の活用を含む国際的な援助のルールや枠組みを作るための議論が行われているところ、日本としても引き続き積極的に議論に関与していく。
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(2)マルチステークホルダーの取組
SDGs推進にはマルチステークホルダーの取組が不可欠であり、前述のとおり、政府としては、幅広いステークホルダーと啓発・連携事業を行っている。2020年に電通が行った調査では、SDGsという言葉の認知率は29.1%で、2019年度の調査から13.1ポイント上昇した。男性10代、女性20代など、若い世代で認知の伸び率が高くなっている。着実に認知度は高まっているが、具体的な取組、人々の行動変容につなげるため、より幅広い層への働きかけに努めていきたい。
地方自治体については、2017年にはSDGsの取組を行っていた自治体が1%にすぎなかったが、2020年には39.7%まで上昇した。今後、2024年度末までに、SDGsに取り組む自治体の割合を60%とするとの目標を掲げて取り組んでいく。
また、開発途上国の経済・社会課題の解決に向けて民間資金の重要性が問われる中、JICAが行う中小企業・SDGsビジネス支援事業等では、民間企業等のビジネスを通じた様々な課題解決を推し進めるとともに、地方創生や地域活性化に貢献している。
(2)円卓会議民間構成員による進捗評価
SDGsの現状と課題
―コロナ禍の先のSDGs実現へむけたステークホルダーによる評価2021―
本報告は、日本政府によるSDGs円卓会議構成員が中心となり、SDGsの現状を評価したうえで、今後の取り組みへの課題を明らかにしたものである。
1) 2017年VNRからの進捗
日本政府が2017年に作成したVNR以降、以下の諸点において進捗が認められた。
1. 推進本部、円卓会議の取り組み(毎年のアクションプラン、ジャパンSDGsアワード、分科会の設置など)、2019年の実施指針の改定など、政府としての枠組み構築は一定程度進捗を見た。円卓会議構成員は、SDGs推進のために主体的に政策提言を行った。とりわけ実施指針改定に向けては、市民社会側構成員を始めとする円卓会議構成員有志の呼びかけにより、2019年9月に、多様なステークホルダーが参加する意見交換会が実施された。推進本部は、円卓会議との対話を通じて、SDGs政策の改善に積極的に取り組んだ。
2. SDGs全体に関わり人類・地球の将来を脅かす気候危機について、菅義偉首相が2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロ、2030年の46%削減の中間目標を公表するに至った。
3. ビジネス、市民社会、地方自治体、教育など各界におけるSDGsの認知及びそれを支援する広報体制も大幅な進捗を見た。目標別進捗として後述する点のほか、以下の点は特に進捗があった点として指摘できる。
企業行動
・ 経団連企業行動憲章に関するアンケート調査結果(2020年7~8月実施)によれば、「SDGsの経営への統合(ビジネス戦略にSDGsを組み込む)」と回答した企業は、2年前の10%から42%と約4倍に増加しており、SDGsの経営への統合が着実に進んでいる。また、取り組みについては、中期経営目標に基づくマテリアリティを対象に、SDGsと自社独自の評価指標を用いて進捗を評価し、結果を報告するものが多く見られている。
・ 2011年に国連人権理事会で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて2020年10月に日本政府は「ビジネスと人権に関する行動計画(NAP 2020-2025)」を公表。人権デュー・ディリジェンスの導入促進などが記載された。また、外国人労働者の問題に関しては、コロナ下で労働権や保健へのアクセスの保障など共生社会に向けて課題が山積する中、デベロッパーおよびサプライ・チェーン上にある建設会社が共同で、人権DDの仕組みを構築する、日本で働く外国人労働者(含 技能実習生として働く外国人労働者)のディーセント・ワークを実現するための企業、JICA、NGOが連携するプラットフォーム「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」の設立等の進展が見られた。
金融
・ ESG投資、SDGs投資、インパクト投資と、名称は様々であるものの、SDGs達成に貢献するような投資が盛んになった。また、地方創生SDGs金融の概念が提示され、SDGsを推進する企業へ積極的支援を行う考え方も生まれた。
・ 企業と投資家の間のサステナビリティに関する建設的対話を促すべく、コーポレートガバナンス・コードおよび投資家と企業の対話ガイドラインの改訂が行われた。
認知向上・広報
・ GCNJと地球環境戦略研究機関(IGES)の「SDGs実態調査」によれば、経営陣のSDGs認知・定着率は85%(2020年)となり、企業経営にSDGsが浸透してきた。また、一般のSDGs認知度調査でも、2021年調査には50%を初めて超えたものがある。
・ SDGsに関する学びが学校のカリキュラムにも盛り込まれ、10代・20代の年齢層におけるSDGsの認知の伸びが顕著である。中高生を対象とした169ターゲットアイコン日本語コピー作成プロジェクトには2万を超える応募があり、日本語版アイコンのコピーが決定された。
・ 国連とメディアとの連携の枠組みであるSDGメディア・コンパクトへの日本のメディアの加盟は4月半ばの時点で70に達し、一国からの加盟としては最多となった。また、SDGsに関して行動を促す継続的なキャンペーンに取り組むメディアが2020年から増加している。
・ UNDPによるSDGグローバル・フェスティバル・オブ・アクションでは、from Japanとして初めてドイツ以外の国で実施し、国別参加者数では世界一位となった。
地方自治体の取組
・ SDGs未来都市が93都市に増加し、30モデル事業が実施された(2021年4月現在)。今後も継続的に毎年30都市程度増加予定。
1. COVID-19により日本社会における持続可能でない側面が様々にあぶりだされた。とりわけ、脆弱な立場に置かれている人がより大きな影響を受け、孤立感を強めている若年層の増加したほか、特に、高齢者、女性・少女(women and girls)、子ども、若者、生活困窮者、外国人、障害者、LGBTIQ、基礎疾患を持つ人々が「取り残され」がちであることが明らかとなった。
2. また、各ステークホルダーの役割が整理されておらず、トレードオフ解消やシナジー創出へ向けた政策的調整が不十分であり、分野間の連携も不足しており、好事例はいくつか見られ始めているものの、それらを組織化し、体系化するというところまでは進んでいない。
2) 目標ごとの評価
新型コロナウィルス感染症による影響も含め、2017年以降各目標の進捗について、とりわけステークホルダーが重視する評価を以下に示す。これらの各目標の取組の多くは他の複数の目標達成にも貢献していることに留意する。
目標1
・ 貧困率は2018年で15.4%、6人に1人が貧困である。子どもの貧困率は13.5%で7人に1人の子どもが貧困だと言われており、「貧困率を半減させること(1.2)」には程遠い(いずれも厚労省「2019年国民生活基礎調査」)。このための政策の形成と実施が必要である。
・ グローバル指標の「1.2.1 各国の貧困ラインを下回って生活している人口の割合(性別、年齢別)」について、「現在、提供できるデータはありません」とされている状態を改善するべきである。
・ 生活保護利用が条件設定などにより困難になるなか、返済が必要な特例貸付で生活を維持する人が急増している。
目標2
・ 全般的に高齢化と人口減により、地域の持続可能性が大きく低下している。これは農林水産業の持続可能性にも影響を与えている。
・ 協同組合(農協、漁協、森林組合など)はSDGsの実現を事業や活動の目的に掲げ、地域の活性化、災害や感染症に強い環境づくり、農山漁村の経済活動の維持・発展に取り組んでいる。
・ NPO、地縁型組織、また、自伐型林業などを含む、地域の特性を生かした起業活動が、地方自治体や大学・研究機関などとの連携により進展している地域も多い。これらの地域では、新たな形での持続可能な地域づくり、高齢化に関連した農業・林業と福祉の連携などにより、高齢化・過疎化の現実の中で持続可能な地域づくりがめざされている。これらの取り組みが進む地方自治体には、SDGs未来都市に認定されたところも多い。
目標3
・ ターゲット3.8(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)に関する国際社会における政策の優先度は上がっており、日本の貢献は高く評価できる。コロナ下において、その重要性に関する国際的な認知の向上をさらに進める必要がある。また、日本が2020年初頭からコロナ克服のための国際協調に取り組み、COVAX、ACTアクセラレーターの創設や資金拠出にも積極的に取り組んだことは高い評価に値する。
・ 他方、国内においては同じくターゲット3.8の観点から、検査およびコンタクト・トレーシング(積極的疫学調査)、予防手段(マスク、PPE)、予防メッセージの提供方法と効果など、隔離・医療施設へのアクセス等の状況は不十分であり、新型コロナにより検査や医療について十分なアクセスが得られないことが露呈した。とりわけ、在日外国人の医療・福祉・保健サービスへのアクセスが整備されていないことが明らかとなった。一方、日本でユニバーサル・ヘルス・カバレッジを支えている公的医療保険制度や社会福祉・社会保障制度、生活保護制度についての教育・啓発や正しい理解の促進についても、より一層進める必要がある。
・ ワンヘルス(人、動物、環境の衛生)の重要性が認識され、政府及び一部地方自治体において関連する取組が進められつつある。また、地球規模の生態系変化との関係に焦点を当てたプラネタリーヘルスの研究も進められている。
・ コロナ禍により2020年は11年ぶりに自殺者数が増加した。
目標4
・ 2000年から順次改訂されている小・中・高の新学習指導要領において、いずれも「持続可能な社会の創り手の育成」が明記され、SDGsに関する学習が様々な教科に組み込まれるようになった。また学生主導のものも含め、大学(研究・教育双方)における取組が広がった。1人1台端末と高速で大容量の通信ネットワークを中心とする、GIGAスクール構想が進展し、教育ICT環境が整備された。コロナ禍はこれを促進し、オンライン教育が進んだ一方で、先進国である日本においてもデジタルデバイド問題も明らかとなり、だれ一人取り残されない教育へのアクセスが改めて課題となった。また、オンライン授業を含めた新しい形の教授法に関する研修も十分とは言えない課題に直面しており、今後の方策が重要である。
・ 外国籍の児童・生徒のうち、6人に1人(約16%)が未就学状態であり、COVID-19の影響でさらに悪化する可能性がある。
目標5
・ 男女における家庭内労働時間に大きな差があり、依然として固定的な性別役割分担意識が根強く、無償の家庭内労働(ケアワーク)に従事する時間が女性に大きく偏っていることが、休校措置やテレワーク導入下における女性の負担増につながり、就労面での不安が重なる場合には特に女性にとって深刻な影響を及ぼしている。
・ ジェンダーギャップ指数がG7各国中最下位(120位)であるなど課題が大きいジェンダーギャップがさらに深刻化している。公務労働の70%ほどが非正規の女性労働者であり、また、非正規労働者の約70%は女性となっている(2020年労働力調査)。四年制大学進学率も男女格差がある(2018年男女共同参画白書)。また、コロナ禍で、短期雇用契約の継続さえも枯渇し、家賃延滞などの深刻な問題が生じており、特にシングルマザーの状況は深刻である。パンデミックの影響を強く受けた飲食業や宿泊業は女性が多数を占める業種でもあり、2020年4月には特に女性の雇用者数が大きく減少した(男性35万人に対し女性74万人)。また、若年女性の望まない妊娠の増加や「生理の貧困」等、コロナ禍は、性と生殖に関する健康の課題も明らかにした。外国人女性が妊娠・出産あるいは避妊・中絶といったサービスにアクセスができなかった事例も報告されている。
・ 経済界では、2030年までに役員に占める女性比率を30%以上にする」ことを目指す活動に163社の主要企業が賛同を表明しており、TOPIX100 の女性役員割合は12.9%(2020年7月末時点)となっている。
・ コロナ禍により自殺者数、特に女性の自殺者数が上昇した。2020年10月の調査によれば前年比86%増で、20代、40代では2倍に増加した。
・ コロナ禍で政府が支給した特別定額給付金の受給権者が世帯主となっていたため、別居中の女性やDV被害者が受給できないケースが報告された。
・ 外出自粛やテレワーク、さらに経済的不安等により家族間のストレスが高まったことを背景に2020年4月から2021年2月のDV相談件数は前年度の約1.5倍に増加した。
目標6
・ 安全な飲料水へのアクセスはほぼ100%に達しているものの、今後は取り残されている人々をなくすことが求められる。現在、水道事業により給水されている人口の割合は98%。一方、年間2万件を超える漏水・破損事故が発生するなど水道インフラの老朽化、耐震化の遅れなどの課題がある。
・ 全国で3152(全体の16%)の浄水場が浸水想定地域にあり、うち2552施設に浸水災害対策が講じられていないなど、水の安定供給のための気候変動対応が不十分である。
目標7
・ 2050年に実質的排出をゼロにするという目標にかんがみると、再生可能エネルギーの大幅な増加には未だほど遠い。わが国の発電電力量に占める再エネ比率(水力除く)は2017年時点で8.1%と世界第6位であり、更なる導入拡大が必要である。
目標8
・ コロナ禍のもと、企業は雇用調整助成金などの支援策を活用し、事業の継続と雇用の維持に最大限努めた結果、我が国の失業率は3%弱と、リーマンショック時や欧米諸国に比べて低位にとどまっている。
・ 連合が2020年12月に公表した「コロナ禍における雇用に関する調査2020」によると、「コロナ禍の影響や会社の業績を考えると、自身の雇用に不安を感じる」と答えた人は、58.1%で過半数を超えている。
・ コロナ禍でパートタイマー、アルバイト、派遣社員を含む非正規労働者の雇用者数が100万人を超えて減少した。
労働者協同組合法が制定され、脆弱な状況に置かれている人々の就労機会の保障に新たな選択肢を開くことが期待される。
目標9
・ 科学的に正確な情報提供が不十分であり、科学と政策のインターフェイスに課題がある。これはCOVID-19対策にも顕著に表れ、実証された予防策を打ち出すことの重要性が浮き彫りとなった。
目標10
・ パルマ比率(最富裕層10%と下位層40%の所得比)の改善が進んでいない。また所得の再配分機能の低さが指摘されており、不平等が拡大している
・ コロナ禍において医療従事者や感染者への差別・偏見が拡大しているが、これに対処するため、政府の「#広がれありがとうの輪」プロジェクトや地方における「シトラスリボンプロジェクト」などが展開され、一定の効果が上がっている。
・ 指標10.7.2に関連して、日本は人口減が続く一方、外国人の受け入れと共生社会の実現については大きな課題を抱えてきた。現在も、技能実習生や就学生として働く外国人労働者の労働権や保健へのアクセスの権利の保障をはじめとする安全で秩序の取れた適切な移民政策の実現や難民の受け入れなどについて、大きな課題を抱えている。地方自治体や市民社会、研究機関などと連携した政策の再検討や改革が必要とされている。
目標11
・ コロナ以前より課題とされていたゴール11 の指標11.1.1(インフォーマルな居住地や不適切住宅に居住する人口)、11.2.1(公共交通機関に容易にアクセスできる人口)、11.3.2(都市計画や管理に市民社会が直接参加する仕組みがある都市) において、都市部と地方部の格差が顕著となった(2020年版国土交通白書)
・ SDGs未来都市が毎年増加し、93都市、30モデル事業に(2021年4月現在)。今後も継続的に毎年30都市程度増加予定。未来都市の中にはSDGs達成へ向けた行動について予算に組み込んでいる事例も出ている。特に登録・認証制度の事例は多くみられるようになっており、長野県、熊本県、横浜市、神奈川県、真庭市、つくば市、さいたま市等でその先進事例が見られる。また、地域住民の発案による地域の問題解決や新たな価値創造を参加型で一定の予算をつける形で行政政策に導入する「住民提案型事業」のパイオニア自治体が「SDGs未来都市」に名を連ねていることは高く評価できる。
目標12
・ 政府のプラスチック資源循環戦略の策定、産業界・流通業界でのペットボトルの完全リサイクルの動きはあるものの、日本は一人あたり使い捨てプラスチック容器量は世界で2番目となっている。
・ 海洋プラスチック問題の解決を目指す「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」やPETボトル有効利用率100%を目指す活動など、プラスチック資源循環の推進に向けて取り組みが進んでいる。
・ 食品ロス削減法が2019年10月に施行され、様々なレベルで食品ロス削減の取り組みが拡大している。
・ 消費者の観点からは、SDGsの考え方が浸透し、エシカル消費など、少しずつ取組が進んでいる。
・ 他方、マテリアル・フットプリントならびにゴミの排出の大幅削減に至っていない。
・ 企業によるサステナビリティ・SDGs報告書策定の動きが広がっている。
目標13
・ 日本企業は、気候変動と環境に関する国際的イニシアチブ(TCFD、SBT、RE100など)に積極的に参加。日本の参加企業数を世界との対比で見ると、TCFD:342/ 1791、SBT: 91/ 615、RE100:50/291となっており、国内大手先進企業で脱炭素経営の取組みが広がっている。
・ 経団連では、日本政府と連携し、脱炭素社会に向けた企業・団体のアクションを加速するため、「チャレンジ・ゼロ」を通じて、イノベーション創発に向けた同業種・異業種・産学官の連携やESG投資の呼び込みを図っている(2021年4月現在、183社・団体がチャレンジに署名)。
・ 国内では300を超える自治体がゼロカーボンシティを表明。企業レベルにおいても、「SDGs実態調査」では90%以上の企業が脱炭素化に向けた取組を進めている。
・ 世代間衡平性にも考慮した持続可能な社会と脱炭素を共に目指すシナリオ構築に向け、政府、大学、民間において研究や取組が始まっている。
・ 市民レベルでの気候変動の理解は国際的に見て低く(IPSOS調査)、パリ協定への支持も低い(イエール大学・Facebook共同調査)。脱炭素社会に向けた、暮らしの中での選択はまだ野心的なムーブメントになっていない。
目標14、目標15
・ 各主体による生物多様性に関する普及啓発活動の強化など、「生物多様性の社会への浸透」 に向けた進展がある中、目標値75%以上として設定していた「生物多様性」の言葉の認知度は、51.8%と目標を下回る結果になっている(環境問題に関する世論調査2018年)。一方、経団連調査によると9割の企業経営層が生物多様性という言葉の意味を知っている。
・ 2018年10月に改訂した経団連生物多様性宣言について、2020年6月現在、236社・団体が賛同し、取り組みを進めている(経団連生物多様性イニシアティブ)。
・ SDGsの生物多様性の目標群は、2020 年までとなっていながら未達成である。また、2030年までの目標設定がない。ポスト2020 枠組みをSDGs の生物多様性関連目標の更新と位置付ける方向を打ち出すべきである。
目標16
・ 16.a(暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅)の観点から、京都コングレスを開催して国際的な役割を果たしており、司法・犯罪対策、途上国の法制度整備に取り組んでいる。
・ 刑務所や外国人収容所、老人病院、高齢者施設、精神病院等、公共・民間を問わず、収容施設における人権侵害や虐待は、国連自由権規約に関する審査などにおいても課題となっている。
・ COVID-19対策を含め、意思決定への十分な参画(16.7)ができていない。多様なステークホルダーが、VNR策定も含む意思決定過程に参画する機会を増やすべき。特に、市民社会、次世代の声、ジェンダーの観点などが不足している。一方、多くの地方自治体では、「協働のまちづくり条例」といった形で、地域住民の発案による地域の問題解決や新たな価値創造について、これを参加型で一定の予算をつける形で行政政策に導入する「住民提案型事業」の仕組みが導入されている。また、2019年のSDGs実施指針策定へ向けたステークホルダー会議などの事例もある。これらは参加型意思決定の一つの在り方として、より積極的に推進される必要がある。
・ 特に脆弱な状況に置かれた人々やコミュニティとの関係で、公共機関や政策の運営が、十分な透明性、公開性、説明責任に基づいて行われていない。
目標17
・ ODAについて、LDCへの援助は高くないものの、UHCについて国際社会の取組を主導してきた点や、とりわけ「人間の安全保障」との関連で、特に国際保健に関わる政策を主導してきたこと、COVID-19後、政府がグローバル・ヘルスの取組に重点を置いていることは評価できる。
・ ターゲット17・14(持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する)の観点からは、菅総理による昨年の国連総会での演説は評価できるのではないか。
・ 気候変動由来の自然災害が増加するなかで、人間の安全保障の観点から防災対策においてイニシャティブを発揮している点も評価できる。防災、脱炭素技術などは、企業の観点からも、日本に潜在力があると考えられる。
・ 国連SDGアクションキャンペーン/国連開発計画及びジャパンSDGsアクション推進協議会が2021年3月に共同開催したSDGグローバル・フェスティバル・オブ・アクションfrom JAPANはステークホルダー主導でのグローバル・パートナーシップ推進へ向けた事例といえる。
3) 課題と変革へ向けた提言
日本のSDGs達成に向けた総体的で客観的な目標、科学に基づくターゲットや指標の整備が重要になるが、現状遅れている。言い換えれば、日本の地方や各企業、各団体における取組みを、国全体、世界のゴール達成と連結させるツールが未発達である。これは、企業が、目標とのギャップやその要因などを評価・分析することによって、SDGs達成に向けたPDCA(マネジメントサイクル)を回すことができるという観点からもマイナスである。目標設定は喫緊の課題である。生まれてきている好事例を「誰一人取り残さない」ための具体的な変革に結びつけるには、より分野横断的かつ統合的にSDGsに取り組む体制が政府内でつくられ、グローバル指標を始めとする達成目標に基づいて具体的な進捗状況が明らかにされ、「いつまでに何を達成すべきか」「そのためには何が必要か」が社会全体で共有されることが重要である。
また、毎年発表されるアクションプランも定量化すべきである。エビデンスベースの政策策定を行うため、アクションプランではベースラインデータとターゲット及びその達成期限を明確にし、これに基づいて、ギャップ分析をおこなうべきである。
取り組みを加速化するためには、認知度向上に向けた取り組みは今後量から質へと転換させる必要がある。様々な行動を変革へ向けた大きなうねりへと変えていくことが重要なフェーズに入る。例えば、政府・自治体・企業と並び市民レベルでも、脱炭素社会実現に向けた暮らしの中での選択が必要だ。排出削減効果の大きなインパクトをもたらすアクションとしてどのようなものがあるのか、ムーブメントとしていくためには情報の提供が不可欠となる。
SDGsの目標達成のためには、新しいビジネスモデルや、その運用が必要となるが、旧来の規制や業界ルールなどが阻害要因となる恐れがある。例えば、CO2削減に重要な「再生エネルギー」の送電線への系統制約が、再エネ投資が進まない阻害要因になっていると指摘されている。再エネに限らず、EV化や運輸、新エネルギーなど、CO2ネットゼロに向けた、新しいビジネスモデル展開上の阻害要因を積極的に取り除き、また、推進する仕掛けに取り組むべきである。
企業では、自社の取り組み目標設定を行い、成果の把握及び評価を深化させる必要がある。また、ビジネスと人権については、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、効果的モニタリング体制を整えてPCDAサイクル回すことが重要となる。就職活動におけるハラスメント被害の声も聞こえており、パンデミック下において、オンライン上での就職活動でもそうした被害が発生していることが報告されている。デジタルトランスフォーメーションやこれによる「新しい働き方」は、ワークライフバランスの改善や生産性向上につながっているが、一方で、これがハラスメントや労働者の権利、労働の安全の侵害、さらにはデジタルデバイドといったことにつながらないよう、SDGsの理念に沿ったデジタル化を進めることが重要である。
コロナ危機は、パンデミック下において、保健システムの重要な構成要素である「リーダーシップの確保とガバナンス」の重要性への認識が欠落していたことを明るみに出した。パンデミックへの危機管理の観点からも、今回の教訓を踏まえた適切なリーダーシップとガバナンスの強化が必要である。
公正な司法へのアクセスや、より迅速な人権救済のための独立した国内人権機関の設置、特に刑事や入管収容施設における人権侵害を許さない制度改革が必要である。
フォローアップとレビューの方法については、以下の点を指摘する。
1. また、指標についてはグローバル指標の整備を進め、代替指標の活用とあわせ、現在、出せるデータが存在しない場合は、「出す時期」を表明すべきである。
2. SDGsの「誰一人取り残さない」という基本的な考え方を踏まえると、人口全体のみならず、制度的、社会的、経済的、環境的な側面で脆弱性を抱えるグループにおける各ターゲットの進捗状況について、できる限り細分化されたデータ(性別統計・年齢別データ・障害の有無など)を示す必要がある。
3. また、制度は確立されているものの運用上の課題があるものについては、グローバル指標を補完する国内指標の設定が必要である(例えばターゲット16.10)。
4. 脆弱性の状況を具体的に明らかにするため、定量的な手法のみならず、定性的な内容も可能な限り収集し、その発現の態度なども含めて示す必要がある。また、評価にあたっては、課題の当事者や、当事者の最も近くで、その信頼を得て活動する市民社会団体などの参加を最大限確保する必要がある。
5. 目標毎のレビューのみならず、マルチベネフィット創出・複数目標間のシナジーの観点でも評価すべきである。例えば、気候変動とジェンダーについては、パリ協定でジェンダー平等と女性のエンパワーメントの重要性が謳われ、国連機関による自然エネルギー導入における女性の雇用促進のような取組も進められている。日本は2050年温室効果ガス排出実質ゼロ及び女性活躍を推進しているが、双方の同時達成のためにどのような取組が行われているかの評価も行うべきだろう。例えば、クリーンエネルギー(SDG7)、産業と技術革新(SDG9)、都市防災(SDG11)、生物多様性保全(SDG15など)、COVID対策(SDG3)などに対する副次的効果を定性的、定量的に分析することが考えられる。環境省が実施しているSDGsのモニタリング評価に関するパイロットプログラムにおいても、複数ゴール間のシナジーが取り組まれている。
6. 評価報告書には、「モデル提示」や到達度や成功事例のみならず、現行の課題や失敗事例、困難に直面している事例なども紹介することが、他国の共感を得る上でも重要である。また、モデル提示の場合には、普遍性、模倣可能性の高さをアピールし、その中において、戦略性や手法の質の高さを示すことが重要である。
7. SDGsは若者の将来を左右する課題であり、SDGsのフォローアップとレビューにおいて若者の意見を政策に反映させるために、継続的な意見交換の場を設けることが不可欠である。
このような評価システムを機能させるためには、科学・政策枠組みを構築し、よりよい科学と政策のインターフェイスを確立することが重要である。政府、自治体、企業の取り組みを橋渡しするような進捗・モニタリングツールの開発の検討はこの観点から重要になる。
そのため、2025年ごろに評価報告書を提出するべきである。各国がこれを行うことで、SDGs達成へ向けた集合知を創出するべきである。
4) コロナの先のSDGsへ向けて
コロナ禍は多くの傷跡を残したが、これを契機として生まれた変革を求める機会は、SDGs達成へ向けた好機ととらえるべきである。「2050年温室効果ガス排出ネットゼロ」実現をはじめとする地球環境問題や、リモートワークを通じた生産性向上、働き方の見直しとワークライフ・バランスの実現、非正規雇用問題の解決、サーキュラー・エコノミーの実現、そして、ジェンダー平等の実現や外国人の人権確保といった多様性の実現は、日本社会を変革する鍵となる。まずは国会運営や公務員など公共部門がこのような取り組みを率先して進めることを期待したい。
一方で、例えばテレワークの進展は、場所と時間にとらわれない働き方の実現に寄与する一方で、労働者の負担とならない環境の整備、とりわけ公私の時間の線引きが曖昧になりがちな労働時間管理への対応が不可欠となる。今後変革を推進していく中で、ネガティブな影響を受ける側面にも同時に留意し対策をとっていく必要がある。例えば「公正な移行」、「失業なき労働移動」など、SDGsの17目標の相互関与の観点からの行動の検証が不可欠である。SDGsの17目標の観点からの行動の検証が不可欠である。
SDGsの認知度は上がっている。さらに、コロナ禍を受けてSDGsへの関心が高まりつつあり、SDGs達成に貢献するような商品やサービスが浸透するきっかけになる可能性もうかがえる。SDGsをきっかけに、その奥にある価値観や社会の変革にも議論の目を向けることが重要である。例えば、2030年や2050年の世界像や日本像、資本主義や社会システムのあり方、SDGsを実践する経営哲学、平和と持続可能な社会の共同構築、人権やWell Beingのようなテーマである。これは、価値観の画一化を計るものでは無く、むしろ人々が多様性を認め合うことを通じて、これを変革へ向けた力に変えるような動きである。こうした議論が行われることで、国民や企業等の行為主体は持続可能な社会に向けた変革モデルをイメージしやすくなるだろう。その際には、特に、未来を生きる若者、現在脆弱な立場にある人々の参画を得ることが有益である事も指摘しておきたい。
今後日本は、SDGsを政策や企業経営の軸に据え、また次世代により多くの活躍の機会を与え、持続可能な社会を実現する変革のモデルを構築することで、国際社会におけるリーダーシップを発揮することを目指すべきである。
7.今後の進め方
今回VNRを作成し、包括的なレビューを行い、取組を振り返ることは、特にコロナからの「よりよい回復」を遂げ、SDGS達成に向けた取組を加速していく上で有意義であった。円卓会議民間構成員や市民社会との意見交換、パブリックコメントにおいて得られた様々な提言も踏まえ、今後以下のような点に留意しながら取組を進めていきたい。
1.SDGS推進体制の強化
SDGS推進には、幅広いステークホルダーの関与が不可欠であり、可能な限り多くのステークホルダーの声を反映させる機会を設けられるような体制が不可欠である。VNRの起案において、各セクターでSDGSに取り組む組織やネットワークの代表的な存在が構成員として参加するSDGS推進円卓会議は、マルチステークホルダーの声や見方をSDGSの実施に活かす上で、極めて重要な役割を果たしていることが再確認された。
多様なステークホルダーの声を正確かつタイムリーに反映させるため、今後も分科会やステークホルダー会議等を活用し、可能な限り多くのステークホルダーの声を反映させる機会を設けるように努めたい。なお、その際には、SDGS推進円卓会議の議論が既存の議論の枠組みと重複しないように注意したい。
また、円卓会議民間構成員や市民社会との意見交換、パブリックコメントにおいて、若者の意見を反映させることが重要であると指摘があったところ、若者の意見を取り入れられる体制の構築について検討したい。
2.目標や指標の整備を含めた進捗評価体制の整備
円卓会議民間構成員や市民社会との意見交換、パブリックコメントにおいて、日本のSDGS達成に向けた総体的で客観的な目標、科学に基づくターゲットや指標の整備の必要性について指摘があった。
今回VNRを作成し、2030年までの目標設定や指標の整備が行われている分野とそうでない分野が明らかになった(例:VNRの目標5(ジェンダー)の記載にあるように、「第5次男女共同参画基本計画」に盛り込まれた目標の達成に向けて、具体策を「女性活躍・男女共同参画加速の重点方針2021」に盛り込むなど、「SDGSアクションプラン」の中に上げられている施策の中でも取組が進んでいるものがある)。SDGS の推進状況を的確に把握し、着実に推進していくため、推進本部、幹事会、円卓会議において、実施指針及びアクションプランに基づく取組の進捗状況を定期的に確認し、必要に応じて見直しを行う旨、2019年12月に改定したSDGS実施指針で定めているところ、今後は目標や指標の更なる整備、代替指標の活用可能性等に向けて議論を進めていきたい。各府省が行う具体の評価のあり方についても指摘があったところ、評価対象となる個々の政策の特性に留意しつつ、そのあり方につき検討したい。
環境省のように、SDGSの配慮に関するPDCAサイクル(1)SDGSに関する目標設定、(2)事業の実施、(3)SDGS目標に関する実績の把握と自己点検、(4)次年度目標の再設定と事業実施からなるサイクル)を導入している省庁もあるところ、今後、SDGS推進円卓会議の下での議論も通じ、議論を進めていきたい。
また、SDGSについて先進的な取組を行う国々の実施体制についての調査・研究や、各国のグローバル指標の検討・見直し状況、指標の検討状況等に留意し、いかに進捗評価体制の充実と透明性の向上を図っていけるか検討していきたい。
3.日本の取組の国際展開
本VNRに多くの地方自治体の取組を記載したように、様々な地方自治体が、地域課題の解決のためにSDGSの考え方を取り入れ、SDGSローカライゼーションが進んでいるのは、日本のSDGS推進の特徴と考えられる。他方、このような取組の多くは日本国内にとどまっているところ、持続可能な開発のための国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)などの場を通じて日本の取組を他国に共有し、各国の自治体等との連携を深めていくことで、更なる協力・SDGS達成に向けた取組を進めることができると考える。
地方自治体の課題・取組を国内外に共有する上で、自発的ローカルレビュー(VLR)の作成は有意義と考えるところ、各自治体のVLR作成を後押しすると共に、国際的な自治体間協力にもつながるよう促していきたい。
4.今後の国内啓発
SDGSに関する国内の認知度が50%を超えた(出典:2020年度の電通調査)ことも踏まえ、今後取組を加速化するためには、一人ひとりがSDGSを自分事とし、行動変容を進めていくようにする必要がある。政府、地方自治体、企業、市民レベルでも、大きなうねりを起こしていくためにも、行動変容につながるような国内啓発に努めていきたい。
5.今後のVNR作成
本VNRの起案に当たり、短時間で幅広い関係者と調整を行うことが最も大きな課題の一つであった。円卓会議民間構成員や市民社会との意見交換、パブリックコメントの実施においても、今後のVNRにおいては余裕のあるスケジュール作成や事前の日程共有が望ましいと指摘があったところ、今後のVNR作成については、中長期的な進捗評価プロセスを踏まえつつ、望ましいタイミングで実施を検討していきたい。
別添:SDGグローバル指標
目標1:あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
Indicatorの状況
Target 1.3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。
Indicator 1.3.1
社会保障制度によって保護されている人口の割合(性別、子供、失業者、年配者、障害者、妊婦、新生児、労務災害被害者、貧困層、脆弱層別)
定義:
社会保険制度(医療保険、介護保険、年金)のカバレッジ(%)を掲載。
{図表は省略}
Target 1.5 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。
Indicator 1.5.1
10 万人当たりの災害による死者数、行方不明者数、直接的負傷者数(指標11.5.1 及び13.1.1 と同一指標)
定義:
人口10 万人あたりの災害によって死亡した、行方不明になった、又は直接被害を受けた者の数を測定する。
{図表は省略}
Indicator 1.5.2
グローバルGDP に関する災害による直接的経済損失
定義:
GDP に対する災害に起因する直接的な経済損失の割合を測定する。
{図表は省略}
Indicator 1.5.3
仙台防災枠組み2015-2030に沿った国家レベルの防災戦略を採択し実行している国の数(指標11.b.1及び13.1.2と同一指標)
{図表は省略}
Indicator 1.5.4
国家防災戦略に沿った地方レベルの防災戦略を採択し実行している地方政府の割合(指標11.b.2及び13.1.3と同一指標)
{図表は省略}
Target 1.a あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国を始めとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。
Indicator 1.a.1
貧困削減に焦点を当てた、全てのドナーからのODA贈与合計(受益国の国民総所得に占める割合)
定義:
貧困削減に焦点を当てたODA贈与の合計額および対GNI比。貧困削減に関する分野は、基礎的社会サービス(基礎保健、基礎教育、基礎的な水と衛生(上下水道)、人口プログラム及びリプロダクティブ・ヘルス)並びに開発目的の食糧援助として定義付けられる。
{図表は省略}
目標2:飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
Indicatorの状況
Target 2.1 2030年までに、飢餓を撲滅し、全ての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。
Indicator 2.1.2
食料不安の経験尺度(FIES)に基づく、中程度又は重度な食料不安の蔓延度
定義:
食料不安の経験尺度(FIES)に基づいて、参照期間中に中程度又は重度なレベルの食料不安を経験した国民の割合として定義される。FIESは、国境を越えて食料不安のレベルを比較するために、「飢餓プロジェクトの声(VOH)」の下でFAOによって開発された測定基準である。
{図表は省略}
Target 2.2 5歳未満の子供の発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。
Indicator 2.2.1
5歳未満の子供の発育阻害の蔓延度(WHO子供成長基準で、年齢に対する身長が中央値から標準偏差-2未満)
{図表は省略}
Indicator 2.2.3
15~49歳の女性における貧血の蔓延度(妊娠状況別、%)
定義:
血色素量(血中ヘモグロビン濃度)が12.0mg/dL未満となっている20〜49歳の女性の割合(貧血治療のための薬の使用者含む)
{図表は省略}
Target 2.5 2020年までに、国、地域及び国際レベルで適正に管理及び多様化された種子・植物バンクなども通じて、種子、栽培植物、飼育・家畜化された動物及びこれらの近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基づき、遺伝資源及びこれに関連する伝統的な知識へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する。
Indicator 2.5.1
中期又は長期保存施設に保存されている食料及び農業のための(a)植物及び(b)動物の遺伝資源の数
定義:
遺伝資源を保存するために設置された中長期保存施設に保存されている食料及び農業のための植物及び動物の遺伝資源の数として定義される。
{図表は省略}
Target 2.a 開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。
Indicator 2.a.1
政府支出における農業指向指数
定義:
政府支出における農業指向指数(AOI)は、林業、漁業及び狩猟を含む農業について、政府支出における農業が占める比率をGDPにおける農業が占める比率で除したもの、として定義される。
{図表は省略}
Indicator 2.a.2
農業部門への公的支援の全体的な流れ(ODA及び他の公的支援の流れ)
定義:
農業分野へのODA支出総額の合計
{図表は省略}
Target 2.b ドーハ開発ラウンドのマンデートに従い、全ての農産物輸出補助金及び同等の効果を持つ全ての輸出措置の同時撤廃などを通じて、世界の市場における貿易制限や歪みを是正及び防止する。
Indicator 2.b.1
農業輸出補助金
{図表は省略}
Target 2.c 食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食料市場及びデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、食料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にする。
ndicator 2.c.1
食料価格の変動指数(IFPA)
定義:
食料価格の変動指数(IFPA)は、一定期間の食料価格で発生する、異常に高い又は低い価格を特定するもの。
{図表は省略}
目標3:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
Indicatorの状況
Target 3.1 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。
Indicator 3.1.1
妊産婦死亡率
定義:
年間の妊娠中または妊娠終了後満42日未満に、妊娠の期間及び部位には関係しないが、妊娠もしくはその管理に関連した又はそれらによって悪化した全ての原因による妊産婦死亡の数を出生10万人当たりで表したもの。
{図表は省略}
Indicator 3.1.2
専門技能者の立ち会いの下での出産の割合
定義:
熟練した医療従事者の立ち会いの下での出産の割合とは、救命的な産科医療の提供に当たって、訓練された保健医療従事者が立ち会う分娩の割合をいい、妊娠、分娩及び産褥期における女性への必要な監督、ケア及び助言の提供、分娩の実施、並びに新生児ケアの提供が含まれるものである。
{図表は省略}
Target 3.2 全ての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、
5歳未満死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、 2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。
Indicator 3.2.1
5歳未満児死亡率
定義:
5歳未満児死亡率(U5MR)は、ある年に生まれた子供が、現在の年齢別死亡率で死亡していった場合に、5歳に到達する前に死亡する確率をいう。
{図表は省略}
Indicator 3.2.2
新生児死亡率
定義:
新生児死亡率(NMR)は、ある年に生まれた子供が、現在の年齢別死亡率で死亡していった場合に、4週に到達する前に死亡する確率をいう。
{図表は省略}
Target 3.3 2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝
染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。
Indicator 3.3.1
非感染者1,000 人当たりの新規HIV 感染者数(性別、年齢及び主要層別)
定義:
年間の新規HIV 感染者数として定義される。
{図表は省略}
Indicator 3.3.2
10 万人当たりの結核感染者数
定義:
人口10 万人当たりの結核感染者数とは、特定の年に発生した新規及び再発性結核(HIV に感染しているケースを含む全ての結核)の推定数を10 万人当たりで表したものである。
{図表は省略}
Indicator 3.3.4
10万人当たりのB型肝炎感染者数
定義:
人口10万人当たりの肝炎ウイルス新規感染者数(E型肝炎ウイルス及びA型肝炎ウイルスを除く)と、B型肝炎ウイルスの持続感染者(B型肝炎ウイルスに起因する肝炎、肝硬変、肝がん患者のうち、治療を受けている患者数)の和と定義する。
{図表は省略}
Indicator 3.3.5
「顧みられない熱帯病」(NTDs)に対して介入を必要としている人々の数
定義:
WHO のNTD ロードマップ及びWHO 総会決議の対象となっている、顧みられない熱帯病(NTDs)の治療及びケアを必要としている人々の数として定義されている。
{図表は省略}
Target 3.4 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。
Indicator 3.4.1
心血管疾患、癌、糖尿病、又は慢性の呼吸器系疾患の死亡率
定義:
年間の死亡者年齢30~69 歳(集団)の死因(心血管疾患、癌、糖尿病、又は慢性の呼吸器系疾患の合計)死亡数を日本人人口で除したものであり、10 万人当たりで表される。
{図表は省略}
Indicator 3.4.2
自殺率
定義:
年間の自殺死亡者数を日本人人口で除したものであり、10万人当たりで表される。
{図表は省略}
Target 3.5 薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。
Indicator 3.5.2
15 歳以上の人口一人当たり年間純アルコール消費量(ℓ)
定義:
1年間(年度)の純アルコール量における、20 歳以上の1人当たりのアルコール消費量とする。
{図表は省略}
Target 3.6 2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。
Indicator 3.6.1
道路交通事故による死亡率
定義:
年間の「路上交通事故による死亡」者数を日本人人口で除したものであり、人口10万人当たりで表される。
{図表は省略}
Target 3.7 2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスを全ての人々が利用できるようにする。
Indicator 3.7.1
近代的手法によって、家族計画についての自らの要望が満たされている出産可能年齢(15~49歳)にある女性の割合
{図表は省略}
Indicator 3.7.2
女性1,000人当たりの青年期(10~14歳;15~19歳)の出生率
定義:
女性人口千人当たりの母の年齢階級が「15〜19歳」の年次別出生率及び母の年齢が14歳以下の出生数。
{図表は省略}
Target 3.8 全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、UHCを達成する。
Indicator 3.8.1
必要不可欠な保健サービスによってカバーされる対象人口の割合
定義:
必要不可欠な保健サービスのカバー率は、一般及び最も不利な立場の人々についての、生殖、妊婦、新生児及び子供の健康、感染症、非感染性疾患、サービス能力とアクセスを含む追跡可能な介入を基にした必要不可欠なサービスの平均的カバー率と定義される。0-100のスケールのインデックス(UHCサービスカバレッジインデックス)で示され、ヘルスサービスカバレッジの14分野のインディケーターの幾何平均から計算される。
{図表は省略}
Indicator 3.8.2
家計の支出又は所得に占める健康関連支出が大きい人口の割合
定義:
家計の支出に対する健康関連支出の割合が10%超及び 25%超の人口の割合。分子は家計調査の「保健医療」から「健康保持用摂取品」、「紙おむつ」及び「出産入院料」を除いたもの。分母は家計調査の「財・サービス支出計」から「出産入院料」及び「寄付金」を除いたもの。
{図表は省略}
Target 3.9 2030年までに、有害化学物質、並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。
Indicator 3.9.2
安全ではない水、安全ではない公衆衛生及び衛生知識不足(安全ではないWASH(基本的な水と衛生)にさらされていること)による死亡率
定義:
年間の「安全ではない水、安全ではない公衆衛生及び衛生知識不足(安全ではないWASH(基本的な水と衛生)にさらされていること)による」と定義されている死亡者数を日本人人口で除したものであり、人口10万人当たりで表される。
{図表は省略}
Indicator 3.9.3
意図的ではない汚染による死亡率
定義:
年間の「意図的ではない汚染」と定義されている死亡数を日本人人口で除したものであり、人口10 万人当たりで表される。
{図表は省略}
Target 3.a 全ての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を
適宜強化する。
Indicator 3.a.1
15 歳以上の現在の喫煙率(年齢調整されたもの)
定義:
現在習慣的に喫煙している20 歳以上の者(たばこを「毎日吸っている」又は「時々吸う日がある」と回答した者)の割合。
{図表は省略}
Target 3.b 主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特に全ての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。
Indicator 3.b.1
各国の国家計画に含まれる全てのワクチンによってカバーされている対象人口の割合
定義:
定期の予防接種(予防接種法に基づく予防接種)の実施率。各年度における定期の予防接種の実施人口を、対象人口で除したものとして表される。
{図表は省略}
Inidicator 3.b.2
薬学研究や基礎的保健部門への純ODAの合計値
定義:
医療研究及び基礎保健の分野へのODA支出総額の合計
{図表は省略}
Target 3.d 全ての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。
Indicator 3.d.1
国際保健規則(IHR)が規定する健康危機に対する基本的能力
{図表は省略}
目標4:すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
Indicatorの状況
Target 4.1 2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。
Indicator 4.1.1
(i)読解力、(ii)算数について、最低限の習熟度に達している次の子供や若者の割合(性別ごと)(a)2~3学年時、(b)小学校修了時、(c)中学校修了時
定義:
小学校4年生及び中学校2年生において、算数・数学について、最低限の習熟度に達している子供又は若者の割合(%)
{図表は省略}
Target 4.2 2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。
Indicator 4.2.2
小学校に入学する年齢より1年前の時点で体系的な学習に参加している者の割合(性別ごと)
定義:
体系的な学習プログラムに参加している、初等教育への理論的な入学年齢よりも1歳若い年齢の子供の割合として定義される。日本においては、5歳児人口における幼稚園(特別支援学校幼稚部含む、以下同じ)、保育所、幼保連携型認定こども園に在籍している者の割合(%)と定義される。
{図表は省略}
Target 4.3 2030年までに、全ての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。
Indicator 4.3.1
過去12か月に学校教育や学校教育以外の教育に参加している若者又は成人の割合(性別ごと)
定義:
一定期間中に、特定の年齢層が学校教育や学校教育以外の教育に参加した割合として定義される。日本においては、OECDが2011年度に実施した国際成人力調査(PIAAC)に基づき、この調査の参加者のうち、過去12か月の間に学校教育や学校教育外の教育に参加していると回答した成人(25~65歳)の割合と定義される。
{図表は省略}
Target 4.4 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
Indicator 4.4.1
ICTスキルを有する若者や成人の割合(スキルのタイプ別)
定義:
12歳以上の調査対象者に占めるICTスキル別の割合
{図表は省略}
Target 4.5 2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子供など、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
Indicator 4.5.1
詳細集計可能な、本リストに記載された全ての教育指数のための、パリティ指数(女性/男性、地方/都市、富の五分位数の底/トップ、またその他に、障害状況、先住民、紛争の影響を受けた者等の利用可能なデータ)
{図表は省略}
Target 4.6 2030年までに、全ての若者及び大多数(男女ともに)の成人が、読み書き能力及び基本的計算能力を身に付けられるようにする。
Indicator 4.6.1
実用的な(a)読み書き能力、(b)基本的計算能力において、少なくとも決まったレベルを達成した所定の年齢層の人口割合(性別ごと)
定義:
特定の年齢層において(a)読み書き能力、(b)基本的計算能力が一定の習熟度を超えた割合として定義される。日本においては、OECDが2011年度に実施した国際成人力調査(PIAAC)に基づき、この調査の参加者のうち、(a)読解力、又は(b)数的思考力の習熟度レベル1以上の16~65歳の割合として定義される。
{図表は省略}
Target 4.a 子供、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、全ての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。
Indicator 4.a.1
基礎的サービスを提供している学校の割合(サービスの種類別)
定義:
以下の施設・設備へのアクセスが可能な、教育段階別(初等教育、前期中等教育、後期中等教育)の学校の割合。(a)電気、(b)教育目的のインターネット、(c)教育目的のコンピュータ、(d)障害を持っている学生のための適切な設備・教材、(e)基本的な飲料水、(f)男女別の基本的なトイレ、(g)基本的な手洗い設備
{図表は省略}
目標5:ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う
Indicatorの状況
Target 5.1 あらゆる場所における全ての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
Indicator 5.1.1
性別に基づく平等と差別撤廃を促進、実施及びモニターするための法律の枠組みが制定されているかどうか
定義:
ジェンダーの平等を促進、実施及び監視する法的枠組みを整備する政府の取組を測定するもの。
{図表は省略}
Target 5.2 人身売買や性的、その他の種類の搾取など、全ての女性及び女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。
>Indicator 5.2.1
これまでにパートナーを得た15歳以上の女性や少女のうち、過去12か月以内に、現在、または以前の親密なパートナーから身体的、性的、精神的暴力を受けた者の割合(暴力の形態、年齢別)
定義:
過去1年以内に配偶者からの身体的暴行、心理的攻撃、経済的圧迫、性的強要の被害経験のある女性の割合
{図表は省略}
Indicator 5.2.2
過去12か月以内に、親密なパートナー以外の人から性的暴力を受けた15歳以上の女性や少女の割合(年齢、発生場所別)
定義:
無理やり性交等された被害経験があり、加害者が配偶者・元配偶者以外の女性の割合
{図表は省略}
Target 5.3 未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。
Indicator 5.3.1
15歳未満、18歳未満で結婚又はパートナーを得た20~24歳の女性の割合
定義:
人口動態調査の調査年に届出をした妻の同居時年齢が24歳以下の婚姻件数(日本では、女性の婚姻は、民法上16歳以上とされていることから届出時年齢が16歳未満の婚姻は把握していない。)
{図表は省略}
Target 5.4 公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、並びに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。
Indicator 5.4.1
無償の家事・ケア労働に費やす時間の割合(性別、年齢、場所別)
定義:
男性と女性による無給の家事及び介護労働に1日に費やされた時間の割合(%)
{図表は省略}
Target 5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効
果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。
Indicator 5.5.1
国会及び地方議会において女性が占める議席の割合
定義:
(a) 衆議院議員に占める女性議員の割合(%)
(b) 地方議会議員の総議員数に占める女性議員の割合(%)
{図表は省略}
Indicator 5.5.2
管理職に占める女性の割合
定義:
管理的職業従事者に占める女性の割合(%)。管理的職業従事者とは、事業経営方針の決定・経営方針に基づく執行計画の樹立・作業の監督・統制など、経営体の全般又は課(課相当を含む)以上の内部組織の経営・管理に従事するものをいう。国・地方公共団体の各機関の公選された公務員も含まれる。
{図表は省略}
Target 5.b 女性の能力強化促進のため、ICTを始めとする実現技術の活用を強化する。
Indicator 5.b.1
携帯電話を所有する個人の割合(性別ごと)
定義:
携帯電話の男女別の保有割合(%)
{図表は省略}
Target 5.c ジェンダー平等の促進、並びに全ての女性及び女子のあらゆるレベルでの能力強化のための適正な政策及び拘束力のある法規を導入・強化する。
Indicator 5.c.1
ジェンダー平等及び女性のエンパワーメントのための公的資金を監視、配分するシステムを有する国の割合
定義:
この指標は、公的財務管理周期を通じて「ジェンダー平等及び女性の能力強化」(gender equality and women’s empowerment, GEWE)のための予算配分の変化を把握し、それらを公表している国の割合として定義され.る。3つの基準に沿って、以下のとおり表わされる。
3つ全ての基準を満たす場合は2:「完全に要件を満たす」
1~2の基準を満たす場合は1 :「要件に近づいている」
1つも基準を満たさない場合は0:「要件を満たさない」
{図表は省略}
目標6:すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
Indicatorの状況
Target 6.1 2030年までに、全ての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成する。
Indicator 6.1.1
安全に管理された飲料水サービスを利用する人口の割合
定義:
水道事業により給水されている人口の割合(%)
{図表は省略}
Target 6.3 2030年までに、汚染の減少、投棄廃絶と有害な化学物質や物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模での大幅な増加させることにより、水質を改善する。
Indicator 6.3.1
安全に処理された家庭排水及び産業排水の割合(%)
定義:
汚水処理施設の普及率を測定するものとし、下水道、農業集落排水施設等を利用できる人口に合併処理浄化槽等を利用している人口を加えた値を、総人口で除すことで算出される。
{図表は省略}
Indicator 6.3.2
良質な水質を持つ水域の割合
定義:
本指標は、水質汚濁防止法に基づき、国及び地方公共団体が実施する公共用水域の水質調査結果から、人の健康の保護に関する環境基準及び生活環境の保全に関する環境基準について達成状況を算出することで表される。
{図表は省略}
Target 6.5 2030年までに、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する。
Indicator 6.5.1
統合水資源管理(IWRM)の度合い
定義:
統合水資源管理(IWRM)の実行度指標は、0(未実施)から100(完全実施)までのパーセント(%)で測定され、IWRMの開発から実施までの様々な段階で測定される。
{図表は省略}
Target 6.a 2030年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術など、開発途上国における水と衛生分野での活動や計画を対象とした国際協力と能力構築支援を拡大する。
Indicator 6.a.1c
政府調整支出計画の一部である上下水道関連のODAの総量
定義:
水と衛生分野へのODA支出総額の合計
{図表は省略}
目標7:すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセス を確保する
Indicatorの状況
Target 7.1 2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
Indicator 7.1.1
電気を受電可能な人口比率
{図表は省略}
IIndicator 7.1.2
家屋の空気を汚さない燃料や技術に依存している人口比率
{図表は省略}
Target 7.2 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
IIndicator 7.2.1
最終エネルギー消費量に占める再生可能エネルギー比率
定義:
一次エネルギー供給量に占める再生可能エネルギー比率は、再生可能な資源から得られるエネルギーの供給量のパーセンテージである
{図表は省略}
Target 7.3 2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
IIndicator 7.3.1
エネルギー強度(GDP当たりの一次エネルギー)
定義:
エネルギー強度は、実質GDP(1兆円)あたりの一次エネルギー国内供給量(PJ)
{図表は省略}
Target 7.a 2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
IIndicator 7.a.1
クリーンなエネルギー研究及び開発と、ハイブリッドシステムに含まれる再生可能エネルギー生成への支援に関する発展途上国に対する国際金融フロー
{図表は省略}
目標8:包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働き がいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
Indicatorの状況
Target 8.1 各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ。
Indicator 8.1.1
一人当たりの実質GDPの年間成長率
定義:
一人当たり実質GDPの年間成長率は、連続する二年間の一人当たり実質GDPの変化率から計算される。一人当たり実質GDPは実質GDPを人口で除すことで求める。
{図表は省略}
Target 8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
Indicator 8.2.1
就業者一人当たりの実質GDPの年間成長率
定義:
就業者一人当たり実質GDPの年間成長率は、就業者一人当たり実質GDPの年次変化率である。
{図表は省略}
Target 8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。
Indicator 8.3.1
総雇用におけるインフォーマル雇用の割合(部門、性別ごと)
定義:
非農林業就業者に占める自営業主・家族従業者の割合
{図表は省略}
Target 8.4 2030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10か年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。
Indicator 8.4.2
天然資源等消費量(DMC)、一人当たりのDMC及びGDP当たりのDMC (指標12.2.2と同一指標)
定義:
「天然資源等消費量(DMC)」は、物質フロー会計(MFA)指標であり、国内の経済活動のために消費した国産・輸入天然資源及び輸入製品の合計量
{図表は省略}
Target 8.5 2030年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。
Indicator 8.5.1
労働者の平均時給(性別、職業、年齢、障害者別)
定義:
10 人以上の常用労働者を雇用する民営事業所における
①一般労働者の月間所定内給与額・男女計・年齢計を一般労働者の月間所定内実労働時間数・男女計・年齢計で除したもの
②一般労働者の月間所定内給与額・男・年齢計を一般労働者の月間所定内実労働時間数・男・年齢計で除したもの
③一般労働者の月間所定内給与額・女・年齢計を一般労働者の月間所定内実労働時間数・女・年齢計で除したもの
{図表は省略}
Indicator 8.5.2
失業率(性別、年齢、障害者別)
定義:
労働力人口に占める完全失業者の割合
{図表は省略}
Target 8.6 2020年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。
Indicator 8.6.1
就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない15~24歳の若者の割合
定義:
15~24歳の人口に占める就学していない非労働力人口の割合。職業訓練に従事している者の数は不明であるため、類似として「就学していない非労働力人口」を使用する。
{図表は省略}
Target 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
Indicator 8.8.1
労働者100,000人当たりの致命的及び非致命的な労働災害(性別、移住状況別)
定義:
全産業における年間の労働災害の発生状況を労働者100,000人当たり(※)に換算したもの
{図表は省略}
Target 8.9 2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な
観光業を促進するための政策を立案し実施する。
Indicator 8.9.1
全GDP 及びGDP 成長率に占める割合としての観光業の直接GDP
定義:
内部観光消費に対応する全産業の名目GDP を推計する
{図表は省略}
Target 8.10 国内の金融機関の能力を強化し、全ての人々の銀行取引、保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する。
Indicator 8.10.1
成人10 万人当たりの商業銀行の支店数及びATM 数
定義:
(a)成人10 万人あたりの商業銀行の支店数
(b)国内にある成人10 万人あたりの現金自動預払機(ATM)数
{図表は省略}
Target 8.a 後発開発途上国への貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)などを通じた支援を含む、開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する。
Indicator 8.a.1
貿易のための援助に対するコミットメントや支出
定義:
貿易のための援助に対するODA 支出総額の合計
{図表は省略}
Target 8.b 2020年までに、若年雇用のための世界的戦略及びILOの仕事に関する世界協定の実施を展開・運用化する。
Indicator 8.b.1
国家雇用戦略とは別途あるいはその一部として開発され運用されている若年雇用のための国家戦略の有無
{図表は省略}
目標9:強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及び イノベーションの推進を図る
Indicatorの状況
Target 9.1 全ての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。
Indicator 9.1.2
旅客と貨物量(交通手段別)
定義:
輸送活動に従事する内航運送事業者、鉄道事業者、航空事業者及び自動車から報告された旅客輸送量、貨物輸送量及びその輸送距離から集計・推計された合計として定義される。
{図表は省略}
Target 9.2 包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030年までに各国の状況に応じて雇用及びGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。
Indicator 9.2.1
GDPに占める製造業付加価値の割合及び一人当たり製造業付加価値
定義:
製造業付加価値(MVA)と国内総生産(GDP)の比(パーセント表示)によって定義される。
{図表は省略}
Indicator 9.2.2
全産業就業者数に占める製造業就業者数の割合
{図表は省略}
定義:
全産業就業者に占める製造業就業者の割合
Target 9.3 特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融サービスやバリューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。
Indicator 9.3.1
産業の合計付加価値のうち小規模産業の占める割合
定義:
全企業等の付加価値額に占める小規模企業の付加価値額の割合
{図表は省略}
Target 9.4 2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
Indicator 9.4.1
付加価値の単位当たりのCO2排出量
定義:
CO2排出量と、関連する経済活動の付加価値の比として定義される。
{図表は省略}
Target 9.5 2030年までにイノベーションを促進させることや100万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国を始めとする全ての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。
Indicator 9.5.1
GDPに占める研究開発への支出
定義:
一定期間内に企業、非営利団体・公的機関及び大学等の内部(社内)で使用した研究費総額の国内総生産(GDP)に占める割合
{図表は省略}
Indicator 9.5.2
100 万人当たりの研究者(フルタイム相当)
定義:
ある時点における国内の企業、非営利団体・公的機関及び大学等に所属する国内人口100 万人当たりの研究者(フルタイム換算)
{図表は省略}
Target 9.a アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する。
Indicator 9.a.1
インフラへの公的国際支援の総額(ODAその他公的フロー)
定義:
インフラ支援のODA支出総額の合計
{図表は省略}
目標10:各国内及び各国間の不平等を是正する
Indicatorの状況
Target 10.1 2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。
Indicator 10.1.1
1人当たりの家計支出又は所得の成長率(人口の下位40%のもの、総人口のもの)
定義:
年間収入階級下位40%の世帯と全体(100%)の1人当たりの(1)実質消費支出又は(2)実質可処分所得(勤労者世帯)の5年平均成長率(年率)
{図表は省略}
Target 10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
Indicator 10.2.1
中位所得の半分未満で生活する人口の割合(年齢、性別、障害者別)
定義:
平均所得の50パーセントを下回る人口の割合とは、その国の等価可処分所得分布の中央値の半分未満で暮らす国内の人口の割合(%)をいう。
{図表は省略}
Target 10.4 税制、賃金、社会保障政策を始めとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。
Indicator 10.4.1
GDP労働分配率
定義:
労働分配率は国民所得(要素費用表示)に占める雇用者報酬の割合で得られる。
{図表は省略}
Indicator 10.4.2
財政政策の再分配インパクト
定義:
所得などの分布の均等度を示す指標として用いられるジニ係数(再分配前・再分配後)により測定する。世帯員を所得の低い順に並べ、世帯員の累積比率を横軸に、所得額の累積比率を縦軸にとってグラフを描く(この曲線を「ローレンツ曲線」という)。ジニ係数は、ローレンツ曲線と均等分布線とで囲まれる弓形の面積が均等分布線より下の三角形部分の面積に対する比率をいい、0から1までの値をとる。0に近いほど所得格差が小さく、1に近いほど所得格差が大きいということになる。
{図表は省略}
Target 10.5 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。
Indicator 10.5.1
金融健全性指標
定義:
総資産(貸借対照表)に対する中核資本(Tier 1)の比率
{図表は省略}
Target 10.7 計画に基づき良く管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。
Indicator 10.7.2
秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する移住政策を持つ国の数
定義:
この指標は、国内の移住政策の現状と,そのような政策が時間の経過とともにどのように変化するかを説明することを目的とする。
{図表は省略}
Indicator 10.7.4
難民の人口の割合(出身国別)
定義:
この指標は、「条約難民」、「その他の庇護」及び「定住難民」の人数を合計したものとして定義される。
(a) 「条約難民」とは、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)の規定に基づき、難民として認定された者の数である。
(b) 「その他の庇護」とは、難民の認定をしない処分をされたものの人道的な配慮を理由に在留が認められた者(入管法による在留特別許可又は在留資格変更許可を受けた者)の数である。
(c) 「定住難民」とは、インドシナ難民(昭和53年4月28日の閣議了解等に基づき、ベトナム・ラオス・カンボジアにおける政治体制の変革等に伴い周辺地域へ逃れた者及び昭和55年6月17日の閣議了解の3の定める呼寄せ家族で我が国への定住を認めたもの)及び第三国定住難民(平成20年12月16日及び同26年1月24日の閣議了解に基づき、タイ又はマレーシアから受け入れたミャンマー難民)であり、昭和53年から平成17年まではインドシナ難民、平成22年以降は第三国定住難民の数である。定住難民として受け入れられた後、条約難民として認定された者もおり、合計では重複して計上されている。
{図表は省略}
Target 10.b 各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、ODA及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。
Indicator 10.b.1
開発のためのリソースフローの総額(受援国及び援助国、フローの流れ(例:ODA、外国直接投資、その他)別)
定義:開発のためのリソースフローの総額,受援国及び援助国によるもので, ODA,その他の公的資金(OOF)及び民間資金から成る。
{図表は省略}
目標11:包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
Indicatorの状況
Target 11.5 2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
Indicator 11.5.1
10万人当たりの災害による死者数、行方不明者数、直接的負傷者数(指標1.5.1及び13.1.1と同一指標)
定義:
人口10万人あたりの災害によって死亡した、行方不明になった、又は直接被害を受けた者の数を測定する。
{図表は省略}
Indicator 11.5.2
災害によって起こった、グローバルなGDPに関連した直接経済損失、重要インフラへの被害及び基本サービスの途絶件数
定義:
災害によって起こった、GDPに関連する直接的な経済損失の割合、重要なインフラ損害、並びに基本的なサービスの中断件数の3つの要素を測定する。
{図表は省略}
Target 11.6 2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
Indicator 11.6.1
発生した都市ごみ全体のうち、収集され、管理された施設で処理された都市ごみの割合(都市別)
{図表は省略}
Indicator 11.6.2
都市部における微粒子物質(例:PM2.5やPM10)の年平均レベル(人口で加重平均したもの)
定義:
粒径2.5μm以下の微小粒子状物質(PM2.5)及び粒径10μm以下の浮遊粒子状物質(SPM)について、全国の一般環境大気測定局の有効測定局を対象とし、都道府県別の人口による重み付けをした年平均値
{図表は省略}
Target 11.b 2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。
Indicator 11.b.1
仙台防災枠組み2015-2030に沿った国家レベルの防災戦略を採択し実行している国の数(指標1.5.3及び13.1.2と同一指標)
{図表は省略}
Indicator 11.b.2
国家防災戦略に沿った地方レベルの防災戦略を採択し実行している地方政府の割合(指標1.5.4及び13.1.3と同一指標)
{図表は省略}
目標12:持続可能な生産消費形態を確保する
Indicatorの状況
Target 12.1 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、全ての国々が対策を講じる。
Indicator 12.1.1
持続可能な消費と生産への移行を支援することを目的とした政策手段を開発、採用、又は実施している国の数
定義:
拘束力の有無に関わらず、持続可能な消費と生産(SCP)を支援することを目的とした国家行動計画を有する又は国の政策に優先事項若しくはターゲットとしてSCPが組み込まれているか否か
{図表は省略}
Target 12.2 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
Indicator 12.2.2
天然資源等消費量(DMC)、一人当たりのDMC及びGDP当たりのDMC (指標8.4.2と同一指標)
定義:
「天然資源等消費量(DMC)」は、物質フロー会計(MFA)指標であり、国内の経済活動のために消費した国産・輸入天然資源及び輸入製品の合計量
{図表は省略}
Target 12.3 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライ・チェーンにおける食料の損失を減少させる。
Indicator 12.3.1
a) 食料損耗指数、及び b) 食料廃棄指数
定義:
事業系食品ロス量:本来食べられるにも関わらず廃棄された食品(食品ロス)のうち、食品関連事業者(食品の製造業者、加工業者、卸売業者、小売業者及び飲食店業者その他食事の提供を伴う事業を実施する者)から排出された量。 家庭系食品ロス量:本来食べられるにも関わらず廃棄された食品(食品ロス)のうち、家庭から排出された食品の量。
{図表は省略}
Target 12.4 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
Indicator 12.4.1
有害廃棄物や他の化学物質に関する国際多国間環境協定で求められる情報の提供(報告)の約束・義務を果たしている締約国の数
定義:
5つの国間環境協定(MEA)について、各MEAの事務局に関連情報を提出した締約国(5つのMEAについて、批准、受諾、承認又はアクセスした国)の数をいう。
{図表は省略}
Indicator 12.4.2
(a)有害廃棄物の1人当たり発生量、(b)処理された有害廃棄物の割合(それぞれ処理手法ごと)
定義:
(a)特別管理産業廃棄物の一人当たり排出量。
この指標は、当該年度の特別管理産業廃棄物の全国排出量を日本の人口で除して一人当たりとした数値。
(b)処理された特別管理産業廃棄物の割合(処理手法ごと)。
この指標は、当該年度に処理された特別管理産業廃棄物の総量に対する、再生利用、減量化及び最終処分された量の割合。
{図表は省略}
Target 12.b 雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
Indicator 12.b.1
観光の持続可能性の経済及び環境的側面を測定するための標準的な計算ツールの導入
{図表は省略}
目標13:気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
Indicatorの状況
Target 13.1 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。
Indicator 13.1.1
10万人当たりの災害による死者数、行方不明者数、直接的負傷者数(指標1.5.1及び11.5.1と同一指標)
定義:
人口10万人あたりの災害によって死亡した、行方不明になった、又は直接被害を受けた者の数を測定する。
{図表は省略}
Indicator 13.1.2
仙台防災枠組み2015-2030に沿った国家レベルの防災戦略を採択し実行している国の数(指標1.5.3及び11.b.1と同一指標)
{図表は省略}
Indicator 13.1.3
国家防災戦略に沿った地方レベルの防災戦略を採択し実行している地方政府の割合(指標1.5.4及び11.b.2と同一指標)
{図表は省略}
Target 13.2 気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む。
Indicator 13.2.1
国が決定する貢献、長期戦略、国内適応計画、適応報告書及び国別報告書で報告されている戦略を有する国の数
{図表は省略}
Indicator 13.2.2
年間温室効果ガス総排出量
定義:
気候変動枠組条約等に基づき算定・報告している、日本の温室効果ガス総排出量
{図表は省略}
目標14:持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
Indicatorの状況
Target 14.3 あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し、対処する。
Indicator 14.3.1
承認された代表標本抽出地点で測定された海洋酸性度(pH)の平均値
定義:
東経137度・北緯7度~33度の冬季表面海水中の海洋酸性度の平均値(pH)で定義します。
{図表は省略}
Target 14.5 2020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する。
Indicator 14.5.1
海域に関する保護領域の範囲
{図表は省略}
Target 14.6 開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、WTO漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、IUU漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する。
Indicator 14.6.1
IUU漁業と対峙することを目的としている国際的な手段の実施状況
定義:
漁業対策を目的とする国際的な手段の実施に係る進捗状況(%)
{図表は省略}
Target 14.b 小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する。
Indicator 14.b.1
小規模・零細漁業のためのアクセス権を認識し保護する法令/規制/政策/制度枠組みの導入状況
定義:
小規模・零細漁業のためのアクセス権を認識し保護する法令/規制/政策/制度枠組みの導入の度合い(%)
{図表は省略}
Target 14.c 「我々の求める未来」のパラ158において想起されるとおり、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用のための法的枠組みを規定する海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施することにより、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用を強化する。
Indicator 14.c.1
海洋及び海洋資源の保全と持続可能な利用のためにUNCLOSに反映されているとおり、国際法を実施する海洋関係の手段を、法、政策、機関的枠組みを通して、批准、導入、実施を推進している国の数
定義:
この指標は、海洋及び海洋資源の保全と持続可能な利用のために、海洋法に関するUNCLOS及びその2つの実施協定を批准し、実施し、及び関連する施策を政府全体として総合的に推進する仕組みを構築する程度と定義される
{図表は省略}
目標15:陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠 化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
Indicatorの状況
Target 15.1 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地を始めとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。
Indicator 15.1.1
土地全体に対する森林の割合
定義:
ある国の総土地面積に占める森林面積の割合として定義される。
{図表は省略}
Indicator 15.1.2
陸生及び淡水性の生物多様性に重要な場所のうち保護区で網羅されている割合(保護地域、生態系のタイプ別)
定義:
「KBAかつ陸域の場所」を(1)「陸生の生物多様性に重要な場所」、「KBAかつ淡水性の地形の場所」を(2)「淡水性の生物多様性に重要な場所」と、2つの生態系タイプの地域を定義し、それぞれ生態系タイプ毎に保護区で網羅されている割合を指標とした。
{図表は省略}
Target 15.2 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。
Indicator 15.2.1
持続可能な森林経営における進捗
定義:
持続可能な森林経営(Sustainable forest management: SFM)への進捗状況を測定するものであり、5つのサブ指標から構成される。
{図表は省略}
Target 15.4 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。
Indicator 15.4.1
山地生物多様性のための重要な場所に占める保全された地域の範囲
定義:
「山地かつKBAの場所」を「山地の生物多様性のための重要な場所」と定義し、その地域の保護区で網羅されている割合を指標とした。
{図表は省略}
Indicator 15.4.2
山地グリーンカバー指数
定義:
山地グリーンカバー指数(MGCI)は、山地における植生被覆の割合(%)で示される。 高精度土地分類図グリッドデータを用いる場合、山地グリーンカバー指数(MGCI)=山地の植生画素数/山地の総画素数x100により計算することができる。
{図表は省略}
Target 15.5 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。
Indicator 15.5.1
レッドリスト指数
定義:
レッドリスト指数は、種群間の絶滅リスク総量の変化を測定する指数である。環境省レッドリストの各カテゴリーにおける種の数に基づいており、0から1までの指数の変化で表される。
{図表は省略}
Target 15.6 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。
Indicator 15.6.1
利益の公正かつ衡平な配分を確保するための立法上、行政上及び政策上の枠組みを持つ国の数
定義:
名古屋議定書の実施のための立法上、行政上及び政策上の措置をとっているか否か
{図表は省略}
Target 15.8 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、更に優先種の駆除または根絶を行う。
Indicator 15.8.1
外来種に関する国内法を採択しており、侵略的外来種の防除や制御に必要な資金等を確保している国の割合
{図表は省略}
Target 15.a 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。
Indicator 15.a.1
(a) 生物多様性の保全と持続的な利用に係るODA及び(b) 生物多様性関連の経済的手段から生み出された収入と資金(指標15.b.1と同一指標)
定義:生物多様性の保全及び持続可能な利用に関するODA(生物多様性のためのODA支出総額の合計として定義づけられる)。
{図表は省略}
Target 15.b 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。
Indicator 15.b.1
(a) 生物多様性の保全と持続的な利用に係るODA及び(b) 生物多様性関連の経済的手段から生み出された収入と資金(指標15.a.1と同一指標)
定義:
生物多様性の保全及び持続可能な利用に関するODA(生物多様性のためのODA支出総額の合計として定義づけられる)。
{図表は省略}
目標16:持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
Indicatorの状況
Target 16.1 あらゆる場所において、全ての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
Indicator 16.1.1
10万人当たりの意図的な殺人行為による犠牲者の数(性別、年齢別)
定義:
1年間(暦年)に都道府県警察で認知した殺人事件の死者数を、人口で割った数値
{図表は省略}
Indicator 16.1.3
過去12 か月において(a) 身体的暴力、(b) 精神的暴力、(c)性的暴力を受けた人口の割合
定義:
犯罪被害実態(暗数)調査の調査実施年の前年に、暴行又は脅迫の被害に遭った者の割合及び性的な被害に遭った者の割合
{図表は省略}
Indicator 16.1.4
自身の居住区地域を一人で歩いても安全と感じる人口の割合
定義:
自身の居住地域を夜間一人で歩いて安全と感じる者の割合
{図表は省略}
Target 16.2 子供に対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。
Indicator 16.2.1
過去1か月における保護者等からの身体的な暴力及び/又は心理的な攻撃を受けた1歳~17 歳の子供の割合
定義:
過去1 年間(会計年度)の児童相談所における児童虐待相談の対応件数
{図表は省略}
Indicator 16.2.2
10 万人当たりの人身取引の犠牲者の数(性別、年齢、搾取形態別)
定義:
日本で認知された人身取引被害者の総数として定義される。
{図表は省略}
Target 16.3 国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、全ての人々に司法への平等なアクセスを提供する。
Indicator 16.3.1
過去12か月間に暴力を受け、所管官庁又はその他の公的に承認された紛争解決機構に対して、被害を届け出た者の割合
定義:
これまでに暴行又は脅迫の被害に遭った者のうち被害者本人又は誰かが捜査機関に被害を届け出た者の割合及び性的な被害に遭った者のうち被害者本人又は誰かが捜査機関に被害を届け出た者の割合
{図表は省略}
Indicator 16.3.2
刑務所の総収容者数に占める判決を受けていない勾留者の割合
定義:ある時点における、刑事施設に収容されている(a)被告人、(b)被疑者の合計の、被収容者の総数に対する割合
{図表は省略}
Target 16.6 あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発
展させる。
Indicator 16.6.1
当初承認された予算に占める第一次政府支出(部門別、(予算別又は類似の分類別))
定義:
決算における第一次政府支出額の、当初予算における歳出額に対する割合。実際の総支出が当初承認された予算額をどの程度反映しているかを測定する。
{図表は省略}
Indicator 16.6.2
最後に利用した公共サービスに満足した人の割合
定義:
全国の一般病院を10月のある1日に利用した患者が、この病院における受診及び入院について、全体としてこの病院に関して「満足」としている割合
{図表は省略}
Target 16.7 あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する。
Indicator 16.7.1
国全体における分布と比較した、国・地方の公的機関((a) 議会、(b) 公共サービス及び(c)司法を含む。)における性別、年齢別、障害者別、人口グループ別の役職の割合
定義:
(a):国会における役職に占める女性議員の割合
(a):地方議会議員(都道府県・市区町村議会議員の合計)に占める女性議員の割合
(b):一般職国家公務員(常勤職員)の総数に対する女性職員数及び35歳未満の職員数の割合
(b):地方公務員の職員数(一般職に属する職員)に対する女性職員数及び35歳未満の職員数の割合
(b):障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の規定に基づき、国、地方公共団体及び独立行政法人等(以下「国の機関等」という。)及び民間企業に義務付けられている法定雇用率以上の障害者を雇用しなければならないとされており、毎年6月1日現在の障害者の任免状況通報及び雇用状況報告を提出することとなっている。それらを集計したもの。
{図表は省略}
Target 16.9 2030年までに、全ての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。
Indicator 16.9.1
5歳以下の子供で、行政機関に出生登録されたものの割合(年齢別)
定義:
過去5年における出生届の件数を基とした子供の数のうち、出生届の件数の割合
{図表は省略}
Target 16.10 国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。
Indicator 16.10.2
情報へのパブリックアクセスを保障した憲法、法令、政策の実施を採択している国の数
定義:
情報へのパブリックアクセスを保障した憲法、法令、政策の実施の採択の有無
{図表は省略}
Indicator 16.a.1
パリ原則に準拠した独立した国内人権機関の存在の有無
定義:
本指標は、国家人権機関世界連盟(GANHRI、旧「人権の促進及び擁護のための国家機関の国際調整委員会」、ICC)の手続規則に基づき、総会によって採択された、国家機関の地位に関する原則(パリ原則)を有する独立国家人権機関の存在を評価するものである。
{図表は省略}
目標17:持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
Indicatorの状況
Target 17.1 課税及び徴税能力の向上のため、開発途上国への国際的な支援なども通じて、国内資源の動員を強化する。
Indicator 17.1.1
GDPに占める政府収入合計の割合(収入源別)
定義:
本指標は、GDPに占める政府収入合計の割合(収入源別)を示している。
{図表は省略}
Indicator 17.1.2
国内予算における、自国内の税収が資金源となっている割合
{図表は省略}
Target 17.2 先進国は、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.20%にするという目標を達成するとの多くの国によるコミットメントを含むODAに係るコミットメントを完全に実施する。ODA供与国が、少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与するという目標の設定を検討することを奨励する。
Indicator 17.2.1
OECD/DAC による寄与のGNI に占める純ODA 総額及び後
発開発途上国を対象にした額
{図表は省略}
Target 17.6 STI及びこれらへのアクセスに関する南北協力、南南協力及び地域的・国際的な三角協力を向上させる。また、国連レベルを始めとする既存のメカニズム間の調整改善や、全世界的な技術促進メカニズムなどを通じて、相互に合意した条件において知識共有を進める。
Indicator 17.6.1
100人当たりの固定インターネットブロードバンド契約数(回線速度別)
定義:
①ブロードバンドの世帯での利用割合:通信利用動向調査における、過去1年間に自宅でパソコン等からインターネットを利用した際にブロードバンドを利用していると回答した20歳以上の世帯主がいる世帯の割合。
②固定ブロードバンド契約数:下り256Kbpsを超える速度での公衆インターネットへの高速アクセスへの加入を指す。
{図表は省略}
Target 17.9 全ての持続可能な開発目標を実施するための国家計画を支援するべく、南北協力、南南協力及び三角協力などを通じて、開発途上国における効果的かつ的をしぼった能力構築の実施に対する国際的な支援を強化する。
Indicator 17.9.1
開発途上国にコミットした財政支援額及び技術支援額(南北、南南及び三角協力を含む)(ドル)
定義:
技術協力合計(ODA支出総額)
{図表は省略}
Target 17.13 政策協調や政策の首尾一貫性などを通じて、世界的なマクロ経済の安定を促進する。
Indicator 17.13.1
マクロ経済ダッシュボード
定義:
・商品の貿易額(輸出額・輸入額)は、日本から輸出され又は日本に輸入された貨物の金額である。
・為替レートは、インターバンク市場におけるドル/円のスポットレートである。
・銀行の自己資本比率は、総資産(貸借対照表)に対する中核資本(Tier 1)の比率である。
・銀行の総貸付残高に対する不良債権比率は、不良債権の価額を分子とし、ローンポートフォリオの合計額(不良債権を含む、特定の引当金控除前)を分母として使用して計算される。
・広義マネー成長率は、連続する二年間の広義マネー(M3)の変化率から計算される。
・失業率は、労働力人口に占める完全失業者の割合である。
・消費者物価指数インフレ率は、家計の消費構造を基準時で一定のものに固定し、これに要する費用が物価の変動によってどう変化するかを示した指数(総合)の年平均変化率である。
{図表は省略}
Target 17.16 全ての国々、特に開発途上国での持続可能な開発目標の達成を支援すべく、知識、専門的知見、技術及び資金源を動員、共有するマルチステークホルダー・パートナーシップによって補完しつつ、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する。
Indicator 17.16.1
持続可能な開発目標の達成を支援するマルチステークホルダー開発有効性モニタリング枠組みにおいて進捗を報告する国の数
定義:
この指標は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を支援するマルチステークホルダー開発有効性モニタリング枠組みにおいて進捗状況を報告する国の数を測定する。
2017年から進捗状況を報告
Target 17.18 2020年までに、後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国に対する能力構築支援を強化し、所得、性別、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置及びその他各国事情に関連する特性別の質が高く、タイムリーかつ信頼性のある非集計型データの入手可能性を向上させる。
Indicator 17.18.2
公的統計の基本原則に準じた国家統計法のある国の数
{図表は省略}
Indicator 17.18.3
十分な資金提供とともに実施されている国家統計計画を持つ国の数(資金源別)
{図表は省略}
Target 17.19 2030年までに、持続可能な開発の進捗状況を測るGDP以外の尺度を開発する既存の取組を更に前進させ、開発途上国における統計に関する能力構築を支援する。
Indicator 17.19.1
開発途上国における統計能力の強化のために利用可能となった資源のドル額
{図表は省略}
{*1* http://www.keidanren.or.jp/policy/cgcb/charter2017.html}
{*2* http://www.keidanren.or.jp/policy/2020/108.html}
{*3* https://www.challenge-zero.jp/}
{*4*https://www.keidanrensdgs.com/}
{*5*https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/026.html}
{*6* https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/index.html}
{*7* 「持続可能な開発報告書2021」https://dashboards.sdgindex.org/static/profiles/pdfs/SDR-2021-japan.pdf}
{写真は削除}