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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] U20公式コミュニケ U20は、G20に対し環境に配慮した公正な復興がなされるよう都市に力を与えることを要望する

[場所] 
[年月日] 2021年6月17日
[出典] 東京都庁
[備考] 
[全文] 

U20は、G20に対し環境に配慮した公正な復興がなされるよう都市に力を与えることを要望する。(仮訳)

U20公式コミュニケ

2021年6月17日


共同議長都市であるローマ市とミラノ市のリーダーシップのもと、我々、本コミュニケの署名者である都市の市長と知事は、Urban 20(U20)としてここに集結し、G20首脳に対し、人間中心の平等でカーボンニュートラルな、気候危機に強く、包摂的で繁栄した社会の実現に向けて都市と協働するよう要望する。

変革力を持つ2030アジェンダは、新しい持続可能な開発の枠組みの推進と、新型コロナウイルス感染症に起因する人道的危機からの強靭な復興に向けて動きだすうえで、重要な機会を都市に提供する。

各都市の市長及び知事は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック及び気候危機の双方に最前線で対処している。新型コロナウイルス感染症からの復興のための資金をこれら首長がどのように振り分けるかということが、これらのアジェンダに対する各政府の果たすべき重要課題である。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、都市の連帯を強調し、いかなる人も、いかなる地域も取り残されないようにするための地域の解決策に共に取り組むことの重要性を浮き彫りにしている。コミュニティの結束やユニバーサルヘルスケアを全ての人に等しく保証するためには、強力な公的機関とサービスの提供が不可欠であることも強く示されている。

地域の公共サービスの提供を維持し、市民を保護し、新型コロナウイルス感染症のパンデミックから環境に配慮した公正で持続可能な復興(サステナブル・リカバリー)がなされるよう取り計らうには、国の復興計画など、各都市が国内外の財源から直接資金と物資を調達できることを求める。また、特に途上国の都市において、ワクチンへの公平なアクセスがすべての人に保証されなければならない。グリーン投資の規模が拡大されることや、財政分権化、及び、自律的な地方金融機関・行政機関が国家発展に向けた経済波及効果の担い手と見なされることが求められるべきである。さらに、地域統治を改善し、国・地方によるマルチレベル(多次元多層的)統治枠組みのプロセスに到達して、政策と民間投資の統一性と影響力を高めるための鍵として、権限移譲の原理に従う必要がある。都市も意思決定の場に参加する、より包括的な多国間システムもまた、国際的な課題解決に地域の行動が重要であることを認めるために必要であり、「自発的自治体・地方レビュー」のような変革ツールを促進する場でなければならない。

SDGs の目標17に沿って、SDGsの目標 11と2030アジェンダを総体として実現するための持続可能な都市間パートナーシップを促進し、あらゆるレベルの政府、企業、労働組合、投資家、学術界、青年運動、市民社会に我々と共に地球規模の気候危機を認識するとともに、それを克服するための科学に基づく行動を実現することを呼びかける。我々は、過去のU20が築いた土台の上に、G20諸国に対し、環境に配慮した公正な地域復興の実現に向けた都市との協働を求めるため、本コミュニケを発出する。


[人]

1. 保健システムの強化-基本的サービスの強固な枠組みと複数のステークホルダーによる関与をサポートすることで保健への権利を保障すること、対応型から予防型への移行を進め、公共部門と民間部門の緊密な協働によりワクチンを世界的な公共財とする責務を果たし、世界中の

人々に公平に行き渡らせること、ワクチンへのアクセスが不公平であることが南北間の格差を拡げているため、開発途上国に対する時宜に応じた支援を強化し、生産体制の強化と国際貿易の規制における保健と福祉を優先し、ワクチン輸出規制の撤廃に取り組むことをG20に求める。

2. 地方の公共サービス提供を保証-地方自治体における人材への投資と能力開発、及び資金の直接調達を通じ、保健システムや環境に配慮した公正な復興の要石としての地方公共サービスの強固な枠組みを推進するための法的枠組みの実現をG20に求める。

3. 誰一人取り残さない平等なアクセスの優先化-地域経済の強化、公共部門と民間部門の協働による適切な住宅、社会的セーフティーネット、不可欠な公共サービスの供給、とりわけ教育、保健、移動の権利、不平等や(ガス)排出を軽減し接続性とアクセスを保証する安全な公共交通が、全ての人から遍く公平かつ誰もが手ごろな価格でアクセスでき、いかなる種類の差別とも無縁であることの保証をG20に求める。

4. 文化的生活への投資-自己表現や伝統的知識、次世代の教育への支援によって、また、既存の文化をさらに発展させる仕組みを涵養することによって、持続可能な開発、平等、正義、人間の尊厳、多様性、そして気候変動との闘いの重要な柱となる文化的生活を保証できるように、都市に力を与えることをG20に求める。文化部門がパンデミックの深刻な影響を受けていることを理解し、変化、革新を起こし、そしてコミュニティとアイデンティティの強化のための力を備えた都市の社会的経済的回復における本質的な役割を果たしていることを認識すべきである。

5. 社会的結束の促進-人権保護を保障し、社会的結束を促進し、インフォーマル部門で生活、労働している最も脆弱な立場の人々を守るとともに、都市発展や自らが属する都市の構築、ジェンダー包摂的な政策、女性のリーダーシップ、無償・有償の労働における平等の推進、長らく続いてきた差別、ハラスメント、人種差別、性差別の積年の構造を廃絶するための強力な推進力として、(多様性を生む)移住を重要視する、環境に配慮した公正な復興の取組を先導できるように、都市に力を与えることをG20に求める。

[地球]

1. 環境に配慮した公正な復興に向けたスマート投資-高炭素インフラストラクチャに対する公共投資から環境に優しい解決策への移行及び化石燃料への投資撤退の加速により、すべての景気刺激策をグリーンな景気刺激策に転換し、エネルギーの貧困と戦うこと、気候変動関連投資の40%から50%が、気候変動の最前線に立ち、脆弱な立場にあるか、取り残されたコミュニティの利益になるように取り計らうことをG20に求める。このことは第一に、改修技術、能力開発と持続可能で安全な公共交通に関する研究、ネット・ゼロ・カーボンビルディング、成熟したクリーンエネルギー技術の展開、グリーン水素やグリーンおよびブルーインフラなどの革新的なクリーンエネルギーソリューション、炭素除去、廃棄物ゼロに向けた循環型経済、公共交通指向型開発、気候にやさしい食料システムへの投資を通じて、第二に都市の気候変動への強靭性を加速及び拡大するための資金の流れと能力開発を確保することで都市に力を与えるため、適応、気候変動への強靭性の強化と気候回復のための資金調達を行うことを通じて、行われなければならない。緑豊かな空間を通じて都市再整備を促進し、自然生態系を再生し、「スマートシティ」が市民のニーズに焦点を当てたものであることを保証する。

2. COP26に先立つ気候変動対策の加速-今こそ世界的な気候危機に取り組むために行動する時(TIME TO ACT)であることを共に認識し、世界の気温上昇を、Race to Zeroの目的である1.5°C目標の範囲内に抑えることにコミットし、あらゆる意思決定の中心に、科学に基づく包摂的な気候変動対策を据えることで、野心的なCOP26を先導するよう、G20に求める。2040年代まで、または遅くとも2050年までに温室効果ガスの排出の実質ゼロを達成することを確約する。そして、IPCC特別報告書「1.5℃の地球温暖化」によって示された「2030年までに二酸化炭素の排出を50%削減する」という目標を公平に分担するよう反映させた、各国の状況に照らして分担された責任とそれぞれの能力に基づく共通原則に従って、次の10年間で達成する中間目標を設定し、以下の事柄についてもコミットする。新たに強化されたパリ協定に基づく自国が決定する貢献(NDCs)と成長戦略としての長期戦略(LTS)の提出、発展途上国がこれらの目標を達成するのを支援するために、少なくとも0.7%のODAを含む適切な財政支援の確保、2040年までの100%クリーンエネルギーの実現に向けた取り組み、内燃エンジンを段階的に廃止し、2035年までにできるだけ早く100%ゼロエミッション・ビークルの販売を達成すること、新たな建築物の資源効率を高め、2030年までにネット・ゼロ・カーボンによって稼働し、2050年までに既存のすべての建築物をネット・ゼロ・カーボンで稼働するよう改修および改造すること。さらに、多くの国にとって、気候変動対応への意欲と行動は外部資金の利用可能性に大きく依存していることを認識する。都市との連携により、石炭やその他の化石燃料からの脱却を図り、都市のニーズに耳を傾けながら、エネルギー転換に必要な重要な決定と行動にそれらを盛り込む。

3. 中間都市の支援-農村地帯と都市の共生関係に基づいて地域的な結束、強靭性、地域間の平等性を確保しながら、方向づけされた政策と投資による持続可能な開発及び持続可能で変革的な生産・消費モデルの触媒として、中間都市の大きな潜在能力を活用するようG20に求める。

4. 気候変動への強靭性と住民の幸福を目指した自然を活かした都市開発-気候変動に対するリスクや脆弱性を低減するため都市環境において「自然を基盤とした解決策(NbS)」を強化しハリケーン、地震、津波などの自然災害の影響を最小限に抑えるとともに、変化する環境条件に適応するより幅広い生態系サービスの維持、生態系の尊重と生物多様性の保護によって、矢面に立たされているコミュニティが強靭性を構築し、酷暑、干ばつ、火災、洪水、海面上昇などの気候変動に適応できるように取り計らい、2030年までに自然環境へのアクセスが誰にでも平等に開かれていることを保証するために都市に力をあたえるようG20に求める。

5. 食糧システムの転換-都市が持続可能な食糧システムの主たる担い手として、飢餓との闘い、健康的な食生活、意識的な消費、農地と水資源の保護を促進する都市の食糧政策を通じて、消費や生産における変革を先導するための支援をG20に求める。持続可能な生物多様性のある食糧環境、サプライチェーン、都市の食糧生産の開発のための資金調達と革新的なソリューション、またすべての人々の食糧安全保障を確保し、CO2の排出を最小化するための循環型経済モデルへの都市のアクセスを促進する。また、科学研究と食文化の相互作用を目的とした政策を推進する。地域の有機栽培生産者を支援し、都市と地方の連携に目を配りつつ、地域および文化の違いを考慮して、栄養価の高い持続可能な選択肢を全ての人に提供する強靭かつ包括的な食糧システムを構築する。

[繁栄]

1. 未来の働き方と公正な職業転換への取組-労働や、労働者の権利の保障は、不平等やジェンダー、人種格差に取り組むための最も強力な手段である。環境に配慮した公正な復興策は、2025年末までに5000万人もの持続的な雇用を創出し得るものであり、これは従来の炭素を多く排出する復興策に比べて3割ほど多い数字である。G20は、デジタルエコノミーに起因する労働の二極化を含む、今後の働き方を再形成する構造的変化に対応できるように都市に力を与え、気候変動緩和に向けた取組から収益を挙げる適正かつ高報酬雇用への投資、化石燃料関連産業従事者の公正な職業移行支援、そして地域雇用の影響を考慮し、労働市場への女性参画を拡大する国家的戦略の展開といった構造的変化に対し、都市が取組を進められるようにするべきである。G20は、質の高い教育への全ての人の公平なアクセスの提供や、若者や障害者への雇用機会の提供、高度な職業訓練の提供、ソフトスキル及びデジタルスキルの向上支援、規制のメカニズムやインフォーマルワーカー及び契約労働者らの福利や保護など私たちのコミュニティに影響を与えている行政、経済、技術の障壁に対処すべきである。

2. 地域民主主義の強化-データや透明性、報道・表現の自由を含む都市のニーズすべてを内包し、これらニーズに対応する法的かつ制度的枠組みを構築することで、地域の意思決定及び市民参加のメカニズムを実態及びデジタル両面において保護し、向上させるようG20に求める。社会における各都市の社会構成と広範囲にわたる知見や意見がより適切に反映されるよう、意思決定の場への全ての人の関与、とりわけ社会における発言権が小さく、脆弱なコミュニティからの直接的な関与を強める。

3. 財政的自律性の促進-都市の財政的自律を再構築することで、よりよい計画、借入れ、投資のための収入源を確保するとともに、必要不可欠な資金調達のために相互に支援を行える官民財政パートナーのエコシステム実現を可能にする条件を整えるよう、G20に求める。例えばデータの生産や循環経済及び脱炭素モデルにより生み出される新たな財源を開拓したりする能力や、公共調達を行ったりするうえで、都市のコンプライアンス及び健全性を確保するための能力を強化する。「ブレンドファイナンス」(官民連携による資金調達)のモデルを拡大し、多角的かつ国境を越えた革新的な財政手法の補完や地域の財政能力の強化を行う。そして特に未開拓の市場において、変革に向けた投資を可能にする国内外からの資金の流れを促進する活動を行う一方で、そうした投資が地域の生活を害することのないようにする。

4. 地域の経済発展強化-近接地域内での生産・消費モデルや、持続可能なツーリズム、グリーンな製造業を強化することや、国際的なバリューチェーンへ結びつけるなど、経済を支える基盤としての地域の中小及び零細規模の事業を支援することを、G20に求める。包摂的なイノベーションや、社会的プラットフォームを介した複数のステークホルダーによる関与と協力を、引き続き促進、活用する。地域経済の一部としての都市の重要性を認識し、経済的打撃が地域の財政に強く影響を及ぼす局面において、地方公共サービスの一貫性と持続可能性を維持できるようにする。地域レベルのSDGsにより直接的に貢献できるよう、企業及び投資ファンドの国際規格や認証メカニズムを揃えて拡大する。

5. デジタル権の保護-デジタル権や透明性、プライバシーの向上によって、人権をデジタル時代へと適応させ、国際的なデジタルサービスの運営と提供が、規制や税にどのような影響を及ぼすかを考慮した新たな形のデータ規制及びデジタルガバナンスの速やかな構築を可能とすることで、パンデミック禍中及びそれ以降における、平等と市民参加へのデジタル化の永続的な影響を認識するよう、G20へ求める。デジタルデバイド(接続性、設備環境及びスキル)を解消し、スマートシティにおける今後の投資がオープンで倫理的なデジタル基準に従い、技術やデータが人々にとって手に届くものにし、市民により管理され、普遍的にアクセスできるものであるようにし、デジタルリテラシーを支援し、アルゴリズム、AIにおいて検閲や差別的偏見が生じないよう確保する。


U20都市による承認都市による承認
1. ヴィルジニア・ラッジ ローマ市長
2. ジュゼッペ・サラ ミラノ市長
3. フェンケ・ハルセ アムステルダム市長
4. アダ・クラウ バルセロナ市長
5. ミヒャエル・ミュラー ベルリン市長
6. オラシオ・ロドリゲス・ラレッタ ブエノスアイレス市長
7. ンコリシ・カウンダ ダーバン市長
8. ヤン・ヴァパーヴオリ ヘルシン市長
9. エクレム・イマモールイスタンブール市長
10. トゥンチ・ソイエル イズミール市長
11. アニス・バスウェダン ジャカルタ特別市知事
12. ジェフリー・マクーボ ヨハネスブルグ市長
13. フェルナンド・メディーナ リスボン市長
14. サディク・カーン ロンドン市長
15. エリック・ガルセッティ ロサンゼルス市長
16. ホセ・ルイス・マルティネス・アルメイダ マドリード市長
17. ヴァレリー・プラント モントリオール市長
18. ビル・デブラシオ ニューヨーク市長
19. 松井一郎 大阪市長
20. アンヌ・イダルゴ パリ市長
21. エドゥアルド・パエス リオデジャネイロ市長
22. アハメッド・アブターレブ  ロッテルダム市長
23. リカルド・ヌネスサンパウロ市長
24. オ・セフン ソウル特別長
25. 小池百合子 東京都知事


オブザーバー都市による承認都市による承認
1. モハメド・ボウドラ アルホセイマ市長
2. ユセフ・シャワーベー アンマン市長
3. コスタス・バコヤニス アテネ市長
4. クラウディア・ロペス ボゴタ市長
5. アルダーマン・ダン・プラト ケープタウン市長
6. ラース・ワイス コペンハーゲン市長
7. ゴーパル・ライ デリー準州環境森林・野生生物大臣
8. イブンヌ・アキ・ソーヤー フリータウン市長
9. スーザン・エイトケン グラスゴー市長(リーダー)
10. エデデュアード・ファビアン・マルティネス・ロメニ グアダラハラ市長代理
11. ホルヘ・ムニョス リマ市長
12. ダニエル・キンテロ・カル メデジン市長
13. アディティア・タークレー マハーラーシュトラ州気候変動環境大臣
14. レイモンド・ヨハンシェン オスロ市長
15. ロンドン・ブリード サンフランシスコ市長
16. クラウディオ・オレーゴ サンティアゴ市長