[文書名] 2022年U20コミュニケ
2022年U20コミュニケ
2022 年8月31日
歴史を通じて、都市は社会的、経済的に強靭性があり、大きな危機から立ち直ることができることを証明してきた。これは特に2022年に当てはまることで、都市が、パンデミック後の環境に配慮した公正な復興の原動力となることが期待されている。
現在進行中の新型コロナウイルス感染症の大流行とその影響、さらにエネルギー危機、気候危機、世界の格差の拡大、地政学的不安定、破壊的技術の台頭は、特にグローバル・サウスの都市に深刻な課題を与えている。
私たちの都市の活力と、社会の進歩と経済発展の達成への貢献は、世界各地で高まる緊張と増加する紛争による悪影響と切り離すことができない。このような状況において、U20都市は、2022 年3月2日に採択された「ウクライナへの侵略」に関する国連総会決議ES-11/1を再確認し、戦争を終わらせるために遅滞なく暴力を停止するようここに要請する。U20都市は一体となり、国際人道法のあらゆる違反と人権の侵害・濫用を非難する。我々は、ロシア連邦とウクライナの紛争を、政治的対話、交渉、調停、その他の平和的手段により、直ちに平和的に解決することを求める。激動と脅威の時代に、平和の文化を強化し、人道的対応への揺るぎない支援を強化し、地域の民主主義を育み、人権と国際法の尊重を強固にするために、U20が都市外交を推進し続けることが重要である。
従って、U20都市は、連携し、良い関係を築き、不当な被害や破壊、人命の喪失に苦しんでいるすべての人々や地域も含む、深い一体感と連帯に基づいた共通の解決策を見出すことを誓う。都市は、これまでも、そしてこれからも、難民の受け入れや救援・支援の最前線に立ち、持続可能で強靭、包括的、そして環境に配慮した復興に貢献する準備ができている。
それゆえ、都市、各国政府、すべての都市のステークホルダーが、2030アジェンダとニュー・アーバン・アジェンダの達成、SDGsのローカライゼーションの推進、パリ協定の迅速な実施という世界目標の実現に向け、協調して注力し続けることが重要である。私たちの緊密な協力を通じて、プラネタリー・バウンダリーを尊重し、不平等やパンデミックを終結させ、気候危機に効果的に対処する公正な経済復興を達成することができる。これは、都市の経済的社会的発展と活力の礎となる、国際的な安定と安全保障の向上に不可欠なものである。
U20都市として、私たちの目標は、より公平で、持続可能かつ強靭な未来を目指し、すべての人、特に過小評価され脆弱なコミュニティやマイノリティに恩恵をもたらすことである。私たちは、このビジョンを実現するために何が必要かを知っており、旧来の戦略や概念では、経済的繁栄、環境の安定、社会的公正という私たちの期待に応えることはできないのである。その代わりに、私たちは、世界中の大都市、小都市、中間都市における良質で安価な地方行政サービスの提供、男女平等と女性のエンパワーメントの達成、仕事の性質の変化への市民の対応力養成、故郷を追われた難民や移民を受け入れ、庇護するための都市の対応力向上に向けて、協力し合う必要がある。
最後に、この未来は、世界的な気候危機に対処するため、科学的根拠に基づく断固とした行動を求めている。そのために、私たちはG20各国政府に対し、パリ協定の公約と2030年までに世界の排出量を半減させ、遅くとも2050年までにネットゼロを達成するという目標に向けて、早急に対策を講じ、それを実現するために都市と協力するよう要望する。
2022 年のU20共同議長としてのジャカルタ市と西ジャワ州のリーダーシップのもと、「共に復興し、より強く復興する」を第一に、生産性が高く手頃な価格の住宅、再生可能エネルギーへの転換、持続可能なモビリティ、メンタルヘルス及びパンデミックからの復興への公平なアクセス、仕事の未来、持続的発展の原動力となる文化の重要な役割を含め、すべての人にとって持続可能な経済的・社会的復興を実現するため、ベストプラクティスを共有し、解決策について議論した。
私たち署名都市の市長及び知事は、U20としてここに集結し、すべての人々が、公平かつ適切にグリーン経済に参加し、連帯と世界平和の精神に基づき文化遺産と多様性を尊重しながら、差別や戦争、気候変動の恐れのない開かれた都市に住む権利を与えられた環境に配慮したオープンで包括的、公正かつ持続可能なパンデミック後の復興(サステナブル・リカバリー)をもたらすことを誓う。
私たちは、2022年11月15日から16日にかけてバリ島で開催されるG20に対し、都市への公共投資と直接資金が、包括的経済回復、気候危機への対処、社会の結束の促進、不平等への対処に向けて最大の効果を発揮できる3つの優先分野で具体的行動を起こすことで、世界平和と世界の発展を促進し、相互に望ましいパンデミック後の未来に向けて、都市と協力するよう訴える。よって、我々はG20に以下を要望する:
A すべての人のための経済的・社会的復興の礎としての医療及び住宅への投資
B 再生可能エネルギーへの転換及び、持続可能なモビリティへの公平なアクセスの促進
C すべての人が労働市場への公平なアクセスを可能にする未来の仕事につながる教育と訓練の提供
A すべての人のための経済的・社会的復興の礎としての医療及び住宅への投資
1. 医療システムの強靭性:地方行政サービスの提供と強固に細分化されたデータ収集システムに基づく監視システムの強化を通じて将来のパンデミックや社会的及び環境的危機への強靭性を高め、より強力な国際的保健の枠組と国内の衛生基準を統一的に構築し、プライバシーに配慮するため、医療システムを刷新する。新型コロナウイルス感染症のワクチン製造のための特許放棄の奨励と技術的ノウハウの自発的共有の円滑化により、ワクチン、治療法、診断法に関する協力を強化し、重要なバイオテクノロジーの発展途上国への公平なアクセスを確保する。
2. メンタルヘルス:とりわけ、若者、女性、子供、高齢者、社会経済的に不安定な状況にある人々、または慢性的な病気の人々のために、意識を高め、偏見を払拭し、メンタルヘルス治療の機会を拡大するための公共投資を大幅に増やすとともに、すべての人々のために、公的医療機関での心理的支援を、手頃かつ、いかなる差別も受けない環境下で提供する。
3. 社会的保護と結束:発展において中間都市が果たす役割を認識し、構造的不平等への対応と社会的公正及び領土的結束への投資のために、諸都市と連携する。都市部の貧しい人々、若者、及びパンデミックの影響を最も受けている経済活動をより適切にサポートし、食糧確保と持続可能な食糧システムを改善し、文化的生活を推進し文化遺産を発展させるとともに、女性と子供のエンパワーメントの促進、過小評価され脆弱なコミュニティの保護、差別、ハラスメント、人種差別、性差別を永続させる長年にわたる構造の解体を通じて、男女平等、人種的・民族的公正を含むあらゆる形態の平等を確保することで、あらゆる形態の差別との闘う、強固で公正な税制システムに基づいた包括的で財政的にも存続可能な社会的セーフティネットの提供を確保するため、生い立ち、性別、社会経済的状況にかかわらず、意思決定にすべての市民を含めること。
4. 持続可能で手頃な価格の住宅:住宅を取得する権利を認め、革新的で包括的な住宅ローンおよび賃貸スキームを可能にする公共・民間投資及び混合型融資モデルを強化し、特に若者、住宅購入希望者、住宅建設業者、不動産業界に対する住宅補助金及びインセンティブプログラムを拡大することにより、都市において健康的で、手頃な価格で、バリアフリーで、持続可能な住宅の供給を増大させる。エネルギーと廃棄物管理システムが持続可能な住宅をサポートするようにする。
5. 都市再開発地の利用:調和のとれた土地利用を促進し、住民の日常生活に必要なモノやサービスのほとんどが徒歩で誰でもアクセスできる15分都市など、よりコンパクトで統合された複合用途の公共交通指向型地区を促す規制を促進する。市民の暮らしを公共政策立案の中心的存在に据えることを考慮し、それらと共にあるグリーンインフラの開発を含め、集団的なメンタルヘルスとウェルビーイングを向上させるため、地域社会にレクリエーション、自然との触れ合い、運動、社会的交流のために持続可能でオープンな公共空間を創造し、アクセスを促進する。「自然を活用とした解決策(NbS)」としての持続可能なインフラへの平等なアクセスは、特に、住民の都市のストレス要因への対処を手助けすることで、身体的及び精神的公衆衛生の点において重要な役割を果たす。
B 再生可能エネルギーへの転換及び、持続可能なモビリティへの公平なアクセスの促進
1. 化石燃料の段階的な廃止:完全かつ迅速に、化石燃料を世界規模で段階的に廃止するべく、1.5°C目標の軌道に沿って、明確で拘束力のあるエネルギー転換ロードマップを発表するとともに、2030年までに世界の排出量を半減させ、2040年代又はそれ以前、遅くとも2050年までにネットゼロを達成するという目標に向け、都市環境における再生可能エネルギー転換を支援・加速するための国家的枠組を構築する。国レベルでの責務としては、地域レベルで迅速、公正、公平な石炭、石油、ガスの段階的廃止を支援しつつすべての人のためにとって普遍的なエネルギーへのアクセスを確保すること、社会及び環境上悪影響をもたらすことなく太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーにできるだけ直接的に転換すること、そして、安定供給を確保するための蓄電池やグリーン水素などのエネルギー貯蔵ソリューションの導入に対して支援することについて連携して行わなければならない。
2. 再生エネルギー転換のための資金調達:地域レベルのエネルギー転換の資金調達と都市主導のイニシアティブに直接資金を提供するエネルギー転換の革新的なブレンドファインス・スキームを可能にする多国間および国の公共投資を推進するとともに、公正な転換を支援し、特に地域レベル及びグローバル・サウスにおいて、石炭火力発電所の早期撤廃と再生可能エネルギーの導入の加速と拡大を可能にする費用対効果の高い官民パートナーシップを推し進める。
3. 障壁の低減:エネルギー転換に対する需要を拡大させるため、普遍的なアクセスを保証するための利害関係者(産業界、民間など)に対するインセンティブとディスインセンティブの創出と実施を含め、家庭、業務、産業部門における利用者に対する再生可能エネルギーの導入と省エネルギーの取組に係る体系的、技術的、財政的な障壁と制約に対処する。
4. 認識と理解を深めるための社会的なキャンペーンの実施:再生可能なエネルギー源への転換の重要性に関する認識と理解を深めるための社会的なキャンペーンを実施する。これは、再生可能エネルギーに対するボトムアップの需要と温室効果ガス排出削減に関する意識を高める取組として行う。
5. 持続可能なモビリティ:公衆衛生を改善し、不平等を減らし、都市を動かし経済を繁栄させるため主な手段の一つとして、自家用車の使用を減らし、公共交通機関、ウォーキング、サイクリングによる都市部の旅行の割合を増やす措置と投資を優先する。エネルギー転換を加速し、化石燃料を段階的に廃止するために、公共及び民間交通機関について、公正なゼロエミッションへの転換を確実に行うこと。公共交通機関は、安全で、清潔で、信頼性が高く、包括的で、かつ手頃な価格でなければならず、女性、子ども、高齢者、マイノリティ、社会の主流から取り残された脆弱なコミュニティ、移動に困難を抱える人々にとって、必要な要件や特定のニーズに対応したものでなければならない。
C すべての人が労働市場への公平なアクセスを可能にする未来の仕事につながる教育と訓練の
提供
1. 包摂的雇用機会:すべての部門において、特に、重要な雇用を生み出す源であるデジタル及び創造経済部門、低炭素技術と再生可能なエネルギー部門、また、文化・観光部門において、雇用機会及び政策が、最も脆弱で過小評価された労働者を考慮した、平等かつアクセスしやすいものとすることを保証する。環境に配慮した公正な経済の観点から未来の労働者のための教育カリキュラムを更新するとともに、政府と雇用者のパートナーシップを活性化し、カスタマイズされたスキルと再訓練の機会を拡大することで、未来の仕事に対応できる労働者を育成する。生涯学習の機会を確保し、可能にする。現在と未来の仕事に対する需要と供給に基づき労働政策を改善させるために、雇用を再定義し、データの精度を高める。
2. 労働者の総合的なウェルビーイング:未来の仕事を考慮しながら、規制の枠組みを強化するとともに、ワークライフバランス、雇用保障、公正な賃金及び福利厚生を支援するため民間部門との連携を強化することによって、時間に対する権利を考慮し、あらゆる側面での労働者の幸福を向上させる。社会経済の復興が、賃金格差の縮小、公正で生活していける額の賃金の提供、労働組合の組織・結成能力、労働者利益を守る能力の強化を含め、女性、特定の人種、低技能労働者、ギグワーカーなどすべての労働者に対し、等しく恩恵を与え、権利を守るよう努力する。下請け業者を含むすべての労働者について、国際労働機関(ILO)の中核的労働基準が尊重され、実施されるようにする。経済における創造性に拍車をかけるため、起業家、クリエイター、発明家のための知的財産権を保護する。
3. 持続可能な仕事:特に化石燃料への依存が続くグローバル・サウスの都市において、排出量を削減し、循環型アプローチを促進しながら、最も雇用を必要としている人々のための包括的で普遍的にアクセス可能な雇用の創造を確保するために、投資、人材開発、訓練、公正な移行政策を通じて公正かつ持続可能な雇用を強化する。再生可能エネルギーへの投資の障害を取り除き、持続可能性の高い雇用創出の可能性を有する更なるインセンティブを生み出す。
4. 零細・中小企業の生産性:大企業や輸出企業、地域との連携を促進し、コミュニティの利益と富の形成の促進、零細・中小企業のグローバルバリューチェーンや電子商取引、世界貿易への参加拡大、小規模やインフォーマルな事業におけるデジタル化の促進、零細・中小企業への研修機会の提供により、主要な雇用創出源としての零細・中小企業の潜在力を発揮させる。
5. デジタル化とイノベーションの活用:都市内・国内及び都市間・国家間のデジタルインフラ及びイノベーションの格差を埋め、社会の主流から取り残された地方のコミュニティや中間都市への安価で高速なデジタル通信を含むデジタルインフラの整備を促進する。国家間で技術的ノウハウを自発的に共有することを奨励し、すべての人に対するデジタル技術とリテラシーを高める。
デジタル権とデータへのアクセス向上、虚偽情報に対抗するための意識向上により、人権をデジタル時代へと適応させる。人間の労働者が行ってきた熟練作業をAIが代替するというよりはむしろ、仕事を補助するよう将来のAIイノベーションを後押しし、そうした労働者に優しいイノベーションを活かして労働者の保護と再訓練をするため財政政策を再構成する。
私たち U20 の市長・知事は、新型コロナウイルス感染症の危機から脱出しながら、G20 各国政府と手を取り合って取り組む用意がある。私たちは、G20議長国としてのインドネシアのリーダーシップの下で環境に配慮し、公正、公平、かつ持続可能なポストパンデミック都市を作っていく共通のビジョンを実現するため、また、共に、より強く復興するために、協力してビジョンをより良いものにし、コミットメントを強化していきたいと考える。
U20都市による承認
1. アムステルダム市長
2. バルセロナ市長
3. ベルリン市長
4. ブエノスアイレス市長
5. ヘルシンキ市長
6. イスタンブール市長
7 イズミール市長
8 ジャカルタ特別市知事
9 ヨハネスブルグ市長
10 リスボン市長
11. ロンドン市長
12 ロサンゼルス市長
13. マドリッド市長
14 メキシコシティ市長
15 ミラノ市長
16. モンテレイ市長
17. モントリオール市長
18. ムンバイ行政長官
19. ニューヨーク市長
20 大阪市長
21. パリ市長
22 ローマ市長
23. ロッテルダム市長
24. サンパウロ市長
25. ソウル市長
26. シドニー市長
27. 東京都知事
28. ツワネ市長
オブザーバー都市による承認
1. アンボン市長
2. バリクパパン市長
3. バンジャルマシン市長
4. バタム市長
5. グラスゴー市長(リーダー)
6. ジャンビ市長
7. ジャヤプラ市長
8. マカッサル市長
9. メダン市長
10. パダン市長
11. パレンバン市長
12. パル市長
13. スラバヤ市長
14. スラカルタ市長
15. 西ジャワ州知事
16. ジョグジャカルタ市長