データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 地方創生2.0基本構想

[場所] 
[年月日] 2015年6月13日
[出典] 内閣官房
[備考] 閣議決定
[全文] 

地方創生2.0基本構想



令和7年6月13日
閣議決定



{目次は省略}

第1章 はじめに

  明治維新以降、日本は約160年にわたり、社会構造・産業構造・人口構造の大きな変化を乗り越えながら、着実に国づくりを進めてきた。近代国家の成立、戦後復興と高度経済成長、バブル経済の経験、そして成熟社会への移行といった歴史の転換点において、我が国はその都度、新たな国家像を模索し、国民の知恵と努力によって進路を切り開いてきた。

 この間、地方は常に国づくりの基盤として重要な役割を担ってきた。明治期には、地租改正や学制の普及を通じて制度的基盤が地方において整備され、戦後には農村や地域産業が復興の原動力となった。高度経済成長期には、地方から都市部への労働力の供給が、全国的な経済発展に大きく寄与した。

 1980年代のバブル経済とその崩壊を経て、1990年代以降の日本は、経済成長の持続を図りつつ、少子高齢化の進行や多様化する国民ニーズへの対応などの新たな社会的課題に直面し、更に2011年以降は、総人口が一貫して減少するという、これまで経験したことのない長期的な課題にも本格的に向き合う局面を迎えた。

 こうした中、2014年に「地方創生」を開始して以降、まち・ひと・しごと創生法*1*の制定、政府関係機関の地方移転や地方創生の交付金などにより、全国各地で地方創生に向けた取組が行われ、様々な好事例が生まれたことは、大きな成果である。一方、こうした好事例が次々に「普遍化」することはなく、人口減少や、東京圏への一極集中の流れを変えるまでには至らなかった。

 好事例の普遍化は、なぜ進まなかったのか。地方公共団体は、国・都道府県・市町村という「縦」のつながりのみならず、他の町といった「横」の関係を改めて意識することが必要ではないか。各地域において、若者や女性も含め、産官学金労言士等の地域の多様なステークホルダーが、「若者や女性にも選ばれる」地域となるため、自ら考え、行動を起こすことが必要ではないか。その際、RESAS*2*等の情報基盤を活用した客観的なデータの分析も重要ではないか。

 明治維新後の中央集権国家体制において、「富国強兵」のスローガンの下で「強い国」が目指され、戦後、敗戦からの復興や高度経済成長期の下で「豊かな国」が目指された。こうした中、効率的に資源を集積する形で、東京圏への一極集中が進んできた。世界を見渡しても、極端に人口・経済が一極に集中する国は日本と韓国のみであるとも言われている。

 一方、国民の持つ価値観が多様化する中で、多様な地域・コミュニティの存在こそが、国民の多様な幸せを実現する。そのためには、一人一人が自分の夢を目指し、「楽しい」*3*と思える地方を、民の力をいかしつつ、官民が連携して作り出していく必要がある。「都市」対「地方」という二項対立ではなく、都市に住む人も、地方に住む人も、相互につながり、高め合うことで、全ての人に安心と安全を保障し、希望と幸せを実感する社会を実現する。

 人口減少が進む中、かつて人口増加期に作り上げられた経済社会システムを検証し、中長期的に信頼される持続可能なシステムへと転換していくことが求められている。今後、人口減少のペースが緩まるとしても、当面は人口・生産年齢人口が減少するという事態を正面から受け止めた上で、人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる適応策を講じ、そして地方を元気にする。このため、これまで10年間の地方創生の成果を継承・発展させつつ、直面する現実から目をそらすことなく、地域に生きる全ての主体の力を再び結集し、「強く」、「豊か」で、「新しい・楽しい」地方の実現に向けて取り組んでいくことが求められる。

 「地方創生2.0」は、10年前の「1.0」ではなく、これを全く新しいものにするという意味を込めて名付けており、「地方創生2.0」を「令和の日本列島改造」として、力強く進めていく。

 「地方創生2.0」は、単なる地域活性化策ではない。我が国の活力を取り戻す経済政策であり、多様な幸せを実現するための社会政策であり、そして地域が持つ本来の価値や楽しさを再発見する営みである。

 本基本構想は、今後10年間を見据えた「地方創生2.0」の方向性を提示する。人口減少が進んでいく以上、地方を「強く」、「豊か」で、そして「新しい・楽しい」ものにしていく取組は、1日も早く動き出し、具体化していかなければならない。本基本構想に沿った地方創生の取組を、国を挙げて、迅速、かつ、着実に進めていく。


第2章 地方創生をめぐる現状認識

1.人口・東京一極集中の状況

(1)人口動態

 我が国の人口は、2008年をピークに減少局面に入っている。2024年10月1日現在の人口推計*4*によると、我が国の人口は約1億2,400万人と、2014年の人口推計(約1億2,700万人)から10年間で約340万人減少している。

 この間、生産年齢人口の減少と高齢化の進行も続いている。2024年の生産年齢人口(15~64歳人口)は約7,400万人と、10年間で約410万人減少した。一方、65歳以上の高齢者人口は約3,600万人と、10年間で約320万人増加し、総人口に占める割合は過去最高の29.3%となった。

(2)人口の移動、若者と女性の地方からの流出

 総人口が減少を続ける一方で、地方から都市圏、特に東京圏への転入超過が続いている。大阪府、愛知県はそれぞれ関西、中部地方の中で転入超過である一方、東京圏に対しては大幅な転出超過であり、福岡県、宮城県、広島県等でも同様の傾向が確認できる。すなわち、地方から地域の中心都市に、その中心都市から東京圏へと人口が移動する状況となっている。

 東京圏への転入超過数を世代別に見ると、若年層がその大半を占めている。2024年は、10代と20代を合わせて13万人を超える転入超過となっている。この背景として、若年層が進学や就職を契機に東京圏に転入する傾向があると考えられる。

 東京圏への転入者数と東京圏からの転出者数を性別ごとに見ると、2024年に男性は約5万5,000人の転入超過、女性は約6万4,000人の転入超過*5*となっている。また、男性に比べ、一度東京圏に転入した女性は、地方に戻らない傾向にある。

 人口減少の状況には大きな地域差がある。都市圏では人口は微増あるいは微減にとどまる一方、地方部では大幅な減少傾向となっている。東京圏を始めとする都市圏では、生産年齢人口が僅かに減少し、高齢者人口の大幅な増加が見込まれる一方で、東北や中国、四国を始め地方部では、生産年齢人口のみならず、高齢者人口の減少も見られており、今後、その減少が更に進むことが見込まれる。

2.地域経済の状況

(1)経済成長の動向

 我が国経済において、地方部のGDPが半分程度を占めており、この比率は10年間で大きな変化は見られない。実質GDP成長率への寄与度も、都市圏と同程度となっており、我が国全体にとって、地方部の経済成長が重要である。

 生産年齢人口が減少する中、地方部から都市圏への若者や女性の転入超過を背景に、都市圏に比べ、地方部での労働力の減少が大きくなっている。また、地方部では高齢者を含めた人口全体の減少が急速に進んでおり、消費の減少を通じて地域経済全体の縮小につながることも懸念される。

(2)労働生産性及び賃金

 特に地方において需要の減少が懸念される中、地方が豊かになるためには、①生産性の向上に加え、②付加価値に見合った価格設定を行い、「海外に高く売れるモノを作って売る」こと、③地域資源の高付加価値化により、拡大するインバウンド需要を最大限活用することで、「稼げる」地域経済を作り、実質賃金の上昇を図ることが必要である*6*。

 大企業に比べ、中小企業は輸出企業の割合や売上げに占める輸出額の比率が小さく、この比率は過去10年間伸びていない。

 また、都市圏と地方部で、生産性及び賃金の格差が見られる。業種ごとの労働生産性はほとんどの産業で都市圏の方が高く、地方部では労働生産性の低い労働集約的なサービス業の比率が高くなっている。

 男女間の賃金格差は、縮小傾向にあるものの国際的に見て依然大きい*7*が、都市圏と地方部で格差の程度に大きな違いは認められない。

3.地方創生をめぐる社会情勢の変化

 過去10年の間、地方創生をめぐる様々な社会情勢に、大きな変化が生じている。地方にとって厳しさを増す変化としては、想定を超える人口及び生産年齢人口の減少や高齢化の進展が労働供給制約を強め、様々な分野において人手不足が生じていることが挙げられる。この結果、買物、医療・福祉、交通、教育等、日常生活に不可欠なサービスを維持することが難しくなってきており、住民の生活の安心を守ることの重要性が一層増している。

 都市部と地方部、男性と女性の賃金格差が存在し、地方に根付くアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)等により、若者や女性の地方離れが進行している。東京圏への一極集中の大きな流れは、不動産価格や生活コストの高騰につながっていることに加え、首都直下地震などの大規模災害時のリスクを高めている。

 他方で、地方にとって追い風となるような変化も見られている。地域の食や景観、文化芸術、スポーツ等の地域資源に対する海外からの評価は着実に高まっており、地方を訪れる外国人が増えている。インバウンドは、コロナ禍の落ち込みから大きく回復し、2024年には訪日外国人旅行者数、訪日外国人旅行消費額共に過去最高となるなど、地域経済の活性化や雇用創出が強く期待される分野となっている。

 AI・ロボット・ドローン等の新技術やNFT*8*を始めとするデジタル技術の発展は、人々の生活の利便性を飛躍的に高めるとともに、様々な課題への新たな対応の選択肢を増やした。こうした新技術は、あらゆる分野の事業・業務における省力化や付加価値創出、若者や女性にとって活躍しやすい環境づくりにつながり、地方の社会課題解決に寄与することが期待される。例えば、AIによる生育予測や衛星測位技術による農業機械の自動操舵等が作業の効率化と省力化を実現することで、担い手不足の解消に寄与する農業分野における取組のほか、AIを活用した高等専門学校生によるスタートアップなども生まれている。また、ドローンによる配送サービスは先行地域で社会実装され、住民の日常の買物に活用されているなど、AI・デジタル等の新技術は、地方創生2.0を推進させる大きな可能性を持っている。働き方改革やリモートワークの普及により、地方における働き方や暮らし方に多様な形が生まれていることも大きな変化の一つと言える。

4.これまでの地方創生10年の成果と反省

(1)これまでの成果

 過去10年の地方創生の取組(以下「地方創生1.0」という。)では、人口減少に対し強く警鐘を鳴らし、まち・ひと・しごと創生法を制定し、まち・ひと・しごと創生総合戦略に基づき、政府として総合的に人口減少問題に立ち向かうことを示した。各地方公共団体でも人口見通しを含めた地方版総合戦略*9*に基づき、政府の動きに呼応して、全国津々浦々で創意工夫をいかした地方創生の取組が開始された。

 各地方公共団体が積極的に地方創生に取り組んだ結果、企業の地方移転による雇用の創出、地域における産官学連携の促進、地方移住への関心の高まりや移住者数の増加など、一定の成果が見られている。

 民間の取組においても、例えば、旅館業の業務をクラウド上で管理する基幹システムを構築して経営改善につなげた老舗旅館「陣屋」や、赤字ローカル線を沿線自治体が支え合うことで地域社会のインフラとして活躍している「えちぜん鉄道」を始めとして、全国で数多くの優良事例が生じた。

 2022年からは、デジタル田園都市国家構想の下、デジタルを活用した地方創生の加速化・深化に向けた取組が進められた。オンライン申請やキャッシュレス決済など地方公共団体の行政手続のデジタル化が進み、交通・医療・教育・防災など様々な分野でデジタルを活用した取組が展開されている*10*。

(2)反省すべき点

 まち・ひと・しごと創生総合戦略及びデジタル田園都市国家構想総合戦略のKPIの進捗状況なども踏まえ*11*、地方創生1.0について、以下の反省すべき点があると考えられる。

 ①人口減少を受け止めた上での対応の不足

 2014年に策定したまち・ひと・しごと創生総合戦略*12*においては、人口減少が地方経済に与える深刻な影響、すなわち消費の縮小にとどまらず、地域の担い手である労働力の著しい減少を重く受け止め、人口減少に歯止めを掛けるとの考え方で施策が進められてきた。人口減少そのものを食い止める視点が前面に出た結果、自然増・社会増を促す施策としての子育て支援や移住促進などが中心となり、地方公共団体間での人口の奪い合いにつながったとの指摘がある。

 地域住民の減少に伴う生活サービス利用者の縮小、地域産業を支える働き手の慢性的な不足といった、現場が直面する現実の変化に目を向ける姿勢が不十分であったのではないか。すなわち、人口減少の中でも、機能し得る地域社会や産業構造の再構築と、それを可能にする制度設計に向けた本格的な議論や取組が後回しにされたのではないか。

 生産年齢人口の急激な減少という避け難い現実に直面する中で、それを前提とした地域の担い手の育成・確保策、労働生産性の抜本的向上に向けた施策、さらには日常生活に不可欠なサービス基盤の維持・確保といった根幹部分に対する戦略的な対応が、十分に講じられてこなかったのではないか。

 ②若者や女性が地域から流出する要因へのリーチの不足

 自然増減に関しては、出生率の地域比較が注目されたが、各地の出生数の大幅な減少に対して、より目を向けるべきだったのではないか。また、社会増減に関し、地方創生1.0で様々な対策が打ち出されたにもかかわらず、人口流出に歯止めが掛からなかったのは、若者や女性の流出に関する問題の根源の一つである、地域に魅力的な職場がなかったことやアンコンシャス・バイアス等に対し有効にアプローチできなかったことが要因ではないか。

 地方から首都圏等に転出した当事者からは、男女共に地域におけるアンコンシャス・バイアスを息苦しく感じたことが転出の理由であったという声が挙げられている*13*。

 若者や女性の人生設計において地方での生活の選択が後押しされるよう、若者や女性の視点から自己実現を達成し、やりがいを感じることができるような魅力ある職場の創出や、結婚・出産や子育て環境の充実、アンコンシャス・バイアスの変革など、若者や女性にとって魅力的で、働きやすく、暮らしやすい地域づくりに向けた取組が十分になされなかったのではないか。

 ③国と地方の役割の検討の不足、関係機関等の連携の不足

 人口が減少する中でも、人々が将来にわたって地域で安心して快適な暮らしを営んでいくためには、持続可能な形で行政サービスを受けられることが必要である。過去30年間にわたり取り組んできた地方分権改革等によって、地方公共団体に様々な権限や財源の移譲がなされ、地方公共団体自らの創意工夫により地域の特性をいかした取組は一定の成果を見せた。

 しかし、急速な人口減少や東京一極集中により、地方公共団体における人材等の資源の不足や偏在が深刻化している。特に地方では、保健師や技術職等の専門人材が確保できないといった理由で、福祉やインフラ管理など様々な行政分野において、法令に基づく事務の実施に課題が生じている市町村も存在している。

 地方創生を進める難しさは、既に進行している少子高齢化等の目の前の課題への対策を行うと同時に、医療や交通、教育といった生活に必要なサービスをどのように維持していくか、道路や橋、上下水道、公共施設といったインフラをどのように管理していくか、地域の産業や雇用をどのように維持・発展させるか、といった将来視点での対策を考えなければならないことにある。しかし、市町村では、法令に基づく目の前の事務処理自体に大半のリソースを割かざるを得ない状況であり、地域と向き合い未来のビジョンを議論し、地方創生の取組を進めることに、十分に注力できていないという指摘がある。

 地方が直面する課題は、人口減少、高齢化、産業の衰退、担い手不足など多岐にわたり、相互に絡み合いながら進行しており、このような状況では、従来の一律的な制度や、特定分野だけによる対応では限界がある。こうした中で、「官」のみならず、「民」の力を十分にいかした取組を進めるべきではないか。国・地方公共団体の相互の役割を再検討することが必要なのではないか。国と地方公共団体、省庁間や地方公共団体間、また、各組織の部局間での情報やデータ、政策などの連携が不足していたのではないか。法令に基づく事務処理を効率的・効果的に実施できるようにするための情報の可視化やデータの共有、多様な立場の人々の連携や地域を越えた連携など、柔軟で開かれたアプローチが欠けていたのではないか。

 東京圏へのヒト・モノ・カネの一極集中が進行した結果、地方公共団体が行う行政サービスに地域差・偏在が生じ、そのことが更なる一極集中を招いているとの指摘もある。さらに、財政力の高い地方公共団体が行う子育て世帯等への様々な負担軽減策について、それ以外の地方公共団体においても同様の施策を住民から求められることもあり、ナショナルスタンダードの観点から全国的な支援の在り方の検討を求める意見や、こども・子育て政策の強化に向けては、全国一律で行う施策と地方がその実情に応じて行うきめ細かな事業が組み合わさることが効果的との意見もある。

 ④地域の多様なステークホルダーが一体となった取組の不足

 地方創生1.0では、それぞれの地域において産官学金労言士等の多様なステークホルダーが参画する関係者会議が開かれたものの、その「意見を聴く」にとどまり「議論」には至らなかった、また、地方公共団体が地方創生に係る戦略や企画の立案の大部分を外部に委託し、当事者意識を持って主体的に取り組まなかった事例があるなどと指摘されている。

 地域自らが主体的に考える姿勢、地域を支える多様なステークホルダーが、地域の課題を自分ごととして捉え、相互に連携しながら一緒に議論し行動する取組が不十分だったのではないか。こうした当事者意識や協調姿勢の不足が、地方創生の大きなうねりにつながらない要因となったのではないか。国としても多くの関係者を地方創生に巻き込み、地方に人材や資金などの新しい流れを生むための制度面も含めた後押しが不十分だったのではないか。また、地方公共団体の取組を支援する地方創生交付金は、これまで、縦割り・単独事業が大半であり、小粒で補助金化していたのではないか。事業の効果測定や検証・改善が形式的に行われてきたのではないか。


第3章 地方創生2.0の起動

1.目指す姿

 人口減少が進む中にあっても、我が国の成長力を維持していくためには、都市も地方も、そして性別や世代を問わず、楽しく、安心・安全に暮らせる持続可能な社会を創っていく必要がある。我が国の基盤である「強い」経済と、「豊かな」生活環境を更に発展させ、その基盤の上に、地域や人々の多様性が、国民の多様な幸せ、「新しい日本・楽しい日本」を創り出していく。

 これまでにも増して、人材や労働力が希少となる人材希少社会においては、国民一人一人を大事にする社会、すなわち、人が中心の国づくりを進め、全ての人を尊重する「人財尊重社会」を築いていく必要がある。そのため、教育・人づくりにより一人一人の人生の可能性を最大限引き出すとともに、その選択肢を拡大していく。

 多様な価値観を持つ一人一人が互いに尊重し合い、日本中のあらゆる地域が自己実現を図っていくことのできる魅力あふれる場となることを目指す。地域社会の多様性は、文化や産業の多彩な可能性を引き出す源である。地域の未来を担う若い世代一人一人が、地域に愛着を持ち、それぞれの個性や特性をいかしながら主体的に考え、選択・行動できる力が育まれるような人づくりを行うとともに、自然環境や文化資源など、それぞれの地域の特性をいかすことで、個性ある地方創生が実現する。

 急速に進行する人口減少や少子化に対応するため、地方創生への取組は一刻の猶予も許されない状況にある。それぞれの地域の「新しい・楽しい」取組が広がっていくよう、次の10年を見据え、「地方創生2.0」を力強く推進し、地域の住民と共に地域の多様なステークホルダーを巻き込んで展開することで、この国の在り方、経済・社会を変革する大きな流れを創り出していく。

 地方創生2.0は、国と共に、地域の住民や産官学金労言士等が一体となって実現を目指すものであり、「みんなで取り組むもの」、「みんなで実現を目指す社会像」である。そのため、目指す姿を共有し、共通の理解の下で進められることが重要である。少子化対策の実施により人口減少のペースを緩和し、一定のレベルで歯止めが掛かる社会が実現することを目指した上で、「新しい日本・楽しい日本」の実現に向け、東京圏転出入均衡を目指してきた「デジタル田園都市国家構想」も発展的に継承し、10年後に目指す姿(社会像)として、定量的なものを提示する。

【10年後に目指す姿】

〇 若者や女性にも選ばれる地方をつくる

・ 若者が地方に残りたい、東京圏から地方に戻りたい、地方に行きたいと思うことができる。また、地方に魅力的な学び場、働き場があり、若者が地方で学びたい、働きたいと思うことができる

 : 地方の魅力を高め、地方への転入希望を増やす環境整備を進めること等により、東京圏から地方への若者の流れを倍増する

・ 性別にかかわらず、自分の能力や可能性を発揮し、働きたい人がいきいきと働き続けられる

 : アンコンシャス・バイアスへの気付きや、多様な選択・生き方が尊重される地域社会への変革を促す取組を全国に広げるとともに、男女共に若い世代の「働きがい」・「働きやすさ」を向上させ、女性のM字カーブとL字カーブを解消する

・ 若者や女性が地域づくりの議論に参加している

 : 国及び地方公共団体における地方創生の議論の場において、若者や女性のそれぞれの人口比並みに若者や女性の構成員が参画している

(1)「強い」経済

 人口減少が進行し、将来の不確実性が増す現在では、将来にわたる経済成長への継続的な期待が、賃金上昇や投資の拡大を通じて新たな成長を生み出すような好循環につながることが求められている。人口減少が進む地方では、地域の特性をいかすことで、持続的な競争力を備えた、変化や逆境に強い経済を築く必要がある。

 そのような強い経済基盤を地方に構築することにより、豊かな社会生活の環境を形成し、域外への人口流出を抑制するとともに、新たな人材や企業を呼び込む力を高め、地域内における一層強い地方経済を生み出すことができる。ひいては、強い地方経済が日本経済全体の成長ポテンシャルを引き出す原動力となり、グローバルサプライチェーンを支え、経済安全保障につながる力ともなり得る。

 人口減少や地域の産業構造を踏まえれば、従来のように規模の経済を追求し、コスト削減を図る手法ではなく、地域に根ざした産業分野においてこそ、イノベーションを創出し、付加価値労働生産性の高い、稼ぐ力を備えたビジネスモデルを確立し、地方を元気にする、地方に活力をもたらすことが不可欠である。

 そのためには、都市部にはない地域独自の資源、例えば、食、自然、文化、芸術、景観といった多様な魅力を組み合わせ、モノや資源の循環も進めながら、新たな産業・事業・イノベーションの拠点を地方に創出することが重要である。また、地産外商や観光誘客の促進を通じて、国内外の需要を地域に取り込むこと、EBPMの考え方に基づきマーケティング等へのデータ活用や、AI・デジタル等の先端技術を徹底して活用することが求められる。

 たとえ生産年齢人口が減少する局面にあっても、潜在成長性の高い産業を中心に、地方において自立的かつ持続的に「稼げる」地方経済をつくり出していく。

【10年後に目指す姿】

〇 地域資源を活用した高付加価値型の地方経済をつくる

・ 地域資源を活用した新たな産品、サービスが生み出せる

 : 東京圏以外の道府県の就業者1人当たり年間付加価値労働生産性を東京圏と同水準とする

・ 地域で国際競争力のある産品を生み出し、世界に向けても売り込める

 : 地方発の代表的な産品である農林水産物・食品(日本産酒類を含む。)の輸出額とインバウンドによる食関連消費額の合計を3倍とする*14*

・ 新たな起業に挑戦できる環境が整っている

 : スタートアップ企業など地域の課題解決や新しい産業の創出を通じて価値創造をしていこうとする企業がある市町村の割合を10割とする

(2)「豊かな」生活環境

 地域における生活基盤には、官民を問わず多様な主体によって提供される、買物、子育て支援、医療、教育、通信、交通といった、日々の暮らしに欠かせない機能が存在する。これらはそれぞれが独立しているわけではなく、相互に補完し合いながら地域住民の生活を支えており、地域によっては、一たび、いずれかのサービスが失われた場合、人口流出につながるおそれがある。一方で、従来型の一律的なインフラ維持やサービス提供モデルでは、もはや十分に対応できない局面に差し掛かっている。

 当面の人口減少を正面から受け止め、新たなサービスモデルの創設や地域づくりの機会と捉えることが重要である。人口が減少する中でも、誰もが安心して生活できる適応策を講じ、必要な生活機能を持続的に確保できる制度と体制を整えることが必要である。

 その際、将来の地域の人口、その構成や分布などの具体的な姿を前提として、地域の在り方をそれぞれの地域で考えていくことが求められる。具体的には、買物や交通など、日常生活に不可欠なサービスが将来にわたり安定的に提供されるためには、一定の生活機能を備えた拠点を形成し、それを軸とした持続可能な暮らしの在り方について、地域ごとに検討を進めていくことが求められる。地域生活の基礎となる自然環境などの持続可能性にも配慮し、地域資源を活用した資源循環モデル等を地域で作っていくことも重要である。あわせて、従来の延長ではない、地域の実情を踏まえた新たなサービス提供や運営手法を打ち立て、地域の合意の下で展開されることが必要である。

 行政のみならず、地域住民や民間企業、NPO、さらには新たなスタートアップやローカル・ゼブラ企業*15*といった多様な主体が連携し合い、役割を分担しながら柔軟に支え合う新たな社会モデルを構想し、新技術を徹底的に活用した多極分散で多様な社会を構築していく。また、激甚化・頻発化する災害や、高度化・複雑化する犯罪などへの対応も進めていく。

人口減少が進む中でも、地域に生きる人々の不安を解消することで、新たなチャレンジや自己実現を図るための基盤を形成することができる。これらの取組の結果、多様で豊かな地域コミュニティの形成が図られ、地方に新たな魅力と活力をもたらし、一層豊かな生活環境の創生につながっていく。

【10年後に目指す姿】

〇 安心して暮らせる地方をつくる

・ 身近な生活必需品の買物に不自由しない

 : 地域の買物環境を維持・向上する取組が行われている市町村の割合を10割とする

・ 日常の医療・介護サービスに不自由しない

 : 地域の医療・介護サービスを維持・確保する取組が行われている地方公共団体の割合を10割とする

・ 日常の移動に不自由しない

 : 「交通空白」地区において、それを解消する取組が行われている市町村の割合を10割とする

・ 災害時も避難所の生活環境が確立されている

 : スフィア基準を満たす避難所を整備するための災害用物資・資機材の備蓄を行っている市町村の割合を10割とする

・ 人々が地域での暮らしに満足感を持っている

 : 生活がこれからよくなっていくと思う人の割合を3倍とする

(3)「新しい日本・楽しい日本」

強い経済基盤と豊かな生活基盤を構築した上で、若者や女性にも選ばれる地方(=新しい地方・楽しい地方)、高齢者も含め誰もが安心して暮らし続けることができ、一人一人が幸せを実現できる地方を創っていく。全ての人が安心と安全を感じ、自分の夢に挑戦し、「今日より明日はよくなる」と実感できる。多様な価値観を持つ一人一人が、互いに尊重し合い、自己実現を図っていくことができる活力ある地方・国家、それが「新しい日本・楽しい日本」である。

特に、若者には、進学・就職・結婚等、その人生において多くの選択の分岐点が存在するとともに、様々な可能性が広がっている。こうした可能性の広がりがある若者が、多様な生き方を選択できることを大切にし、性別等にかかわらずやりがいのある仕事に就きながら自立して成長していくことができ、多様な生き方を尊重され、安心して生活することができる地域社会を目指していく。若者が進学等を機に地域を離れる選択をした場合でも、都市や海外等で自己実現を果たし、10年、20年の歳月を経て地域に戻り、培った経験や人的ネットワークなどをいかして活躍することも、地域にとって大きな力となる。

地域コミュニティには顔の見える関係性があり、互いを気にかける温かさは地域の強みである。一方で、アンコンシャス・バイアスによる画一的な役割・期待が伴うと、若者や女性にとっては心理的な負担となり、都市部の匿名性に自由を求める傾向が強まる可能性がある。今後は、こうした「顔の見える関係性」に「多様な生き方の尊重」を組み合わせ、誰もが安心して暮らせる地域づくりを進めていくことが、目指すべき地域社会の変革の基本的な方向性となる。

一人一人が等しく尊重される地域は、多様な人々が集まる場となる。さらに、地域には、産官学金労言士等、様々な力を持ち地域をリードする関係者がいる。くわえて、都市に住みながら地域への関心を持つ人がいる。性別や世代、立場を越えて、そうした関係者が互いに連携し、地域の人々を巻き込み、人や組織のつながりを強化することで、新しい価値が生まれる。そして、それがまた新たな人を呼び、地域は更に多様になり、人々が混ざり合うことでより豊かで強い好循環が生まれ、新たな価値創造の場となる。都市と地方の二項対立を越えて、より融合的な日本をつくる。そして、地方は直接海外と結び付く。このような多様性の好循環によって、地方が新しく生まれ変わる。

【10年後に目指す姿】

〇 都市と地方が互いに支え合い、一人一人が活躍できる社会をつくる

・ 都市か地方かにかかわらず、互いに交流し、助け合える

 : 関係人口を実人数1,000万人、延べ人数1億人創出する

・ 人材が希少となる中で、一人一人が活躍できる

 : 希望する職員の副業・兼業が可能な職場環境を整備した事業者数を10割とする

〇 AI・デジタルなどの新技術が活用される地方をつくる

・ 全国津々浦々でデジタル基盤が整備され、AI・デジタルなどの新技術が活用できる

 : AIやデジタルなども活用しながら生活環境の維持向上や地方経済の高付加価値化など地域の課題解決に向けた取組が行われている市町村の割合を10割とする

2.地方創生2.0の基本姿勢・視点

 「新しい日本・楽しい日本」の実現のためには、国や地方公共団体を始めとしたあらゆる関係者の力を総動員し、多岐にわたる分野について総合的に取組を推進する必要がある。

 その際、個々のプロジェクトを立案・推進する全ての関係者が、地方創生1.0の反省を踏まえ、以下の基本姿勢・視点に基づき、関連施策を展開することが極めて重要である。

(1)人口減少を正面から受け止めた上での施策展開

 地方創生1.0では、人口減少に歯止めを掛けるとの考え方の下、東京圏から地方への移住施策や、若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる施策など、人口減少や少子高齢化等の課題解決の取組が中心に行われた。

 地方創生2.0では、少子化対策等により、今後の人口減少のペースが緩まるとしても、当面は人口・生産年齢人口が減少するという事態を正面から受け止めた上で、人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる適応策を講じていく。

 今後は、これまで以上に都市と地方の間で人的資源を含めたリソースの差が顕在化する。特に、急激な人口減少に直面している地域では、制度やサービスの担い手となる人材の確保が難しくなり、従来型の手法では立ち行かない事態が生じる可能性が高まっている。例えば、上下水道、道路、公共交通、医療・福祉サービスなど、これまで当然のように維持されてきた社会インフラでさえも保ち続けることが難しくなってきている。公共サービスのみならず、買物、医療・介護、交通・物流等の民間サービスや、これらに関わる人材の確保も年々困難になっており、住民の基本的な生活を支える仕組みをどのように守るかが、喫緊の課題である。地方経済においても、コストカット型から高付加価値型の経済へと移行することが、人口規模が縮小しても、経済を成長させるために不可欠となる。

 厳しい状況の中にあっても、限られた財源や人材を最大限にいかしながら、地域にとって本当に必要なサービスを、過不足なく、かつ持続可能な形で提供し続ける体制や制度を構築することが必要である。具体的には、例えば、郵便局や廃校など既存施設の活用等を通じて、1か所で複数のサービスを提供する総合的な地域の拠点づくりの展開が必要となる。また、人口減少下でも、生活サービスや地域経済を維持する持続可能な都市構造を実現するためには、居住と都市機能をまちの中心拠点や生活拠点に誘導する立地適正化計画等を活用して、まちづくり制度の実効性を向上させ、「密度の経済」を発揮させる考え方が、より重要となる。

 様々な公共サービスやインフラの整備・維持管理を行う上で、これまでにも増して官民の連携を進めることが重要であり、民間の参画を得るためにも、地方公共団体間の広域連携でその経済規模や事業規模を確保することが求められる。また、地域の将来像を踏まえて必要なインフラを広域的観点から判断し、集約・再編を進めることが必要となる。さらに、「どのようなまちにしたいか」というビジョンを官民で共有し、意欲と能力のある「民」の力をいかし、官民共創のまちづくりを行うことも有効である。

 くわえて、シェアリングエコノミーの考え方により、地域内外に埋もれている官民の資源(人材、スキル、拠点等)の可能性を引き出し、地域における課題解決と付加価値創出へとつなげる観点や、これからの10年だけでなく、更にその先の10年を見据えて生じる課題等に対し備えておくべき観点も含め、個別の分野ごとに地域に求めていた機能や設備について、分野横断的な視点での活用の在り方や多機能化を検討するなど、幅広い視点で検討を行う必要がある。

(2)若者や女性にも選ばれる地域づくり

 地方創生1.0では、地方における安定的な雇用の創出や、若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえること等により、地方への人の流れをつくることで東京一極集中の是正を目指した。しかし、地域に魅力的な職場がないことや、アンコンシャス・バイアス等に対して有効にアプローチできなかったことなどから、若者や女性の地域からの流出が継続した。

 地方創生2.0では、若者や女性にも選ばれる地域づくりを、地域に関わる政策の基本的な姿勢・視点として重視する。

 若い世代の男女の意識が着実に変わり、男女共に働き、共に子育てをする「共働き・共育て」の感覚が一般化してきている一方で、地域社会の中には、「男は仕事・女は家庭」等の固定的な性別観に関わるアンコンシャス・バイアスが残っていると指摘されている。こうした「若い世代の変化した意識」と、「職場を含む地域社会」との間のギャップが、若者や女性の地方からの転出行動につながっている面がある。

 こうした問題は、男性の家事育児時間の少なさ(女性への家事育児負担の集中)や、低所得男性の婚姻率の低さ等を通じ、我が国の少子化につながる要因にもなっている。

 地方には、都市部では得難い多様で恵まれた自然環境、ゆとりある生活空間、そして季節の移ろいを身近に感じられる東京圏にはない「豊かさ」がある。さらに、東京圏に比べ、食料費や家賃などの基礎支出や通勤・通学時間が相対的に少ないといった特徴もある*16*。

 こうした強みがありながら、若年層、取り分け若年女性の地方からの人口流出に歯止めが掛からない状況を打開するには、地方の強みをいかしつつ、若い世代の行動や意識の変化を直視し、地方が抱える弱みを克服していくための大胆かつ地域に根ざした着実な取組が必要となる。そのため、地方創生に取り組む際には、議論や検討の場に、若者や女性の参画を確保し、当事者である若者や女性の視点を取り入れることが重要である。また、将来にわたって若者や女性にも選ばれる地方となり続けるためには、今の若者世代だけでなく、地域社会を担っていくこどもたちにも目を向けて考える必要がある。

 若者や女性にも選ばれる地域づくりとは、若者や女性のためにのみ必要なものではなく、性別や世代にかかわらず、誰もが活躍できる可能性と選択肢を確保するためのものである。

 若者や女性の活躍推進は、地域社会の多様性を高め、変化への対応力や新たな価値創出を促す原動力となる。多様な視点や経験を持つ人材の参画は、地域産業やサービスの革新、持続可能な成長力の強化にも直結する。

(3)異なる要素の連携と「新結合」

 地方創生1.0では、地方における「しごと」づくりの観点から、企業誘致や産業の活性化等により、安定した雇用を創出することを目指した。しかし、地方では、人手不足、取り分け専門人材の深刻な不足に対し、それを補う省庁間の連携や様々な主体間の連携を促す仕組み、中小企業の輸出支援等の取組の効果は必ずしも十分でなく、地方の生産性は伸び悩んだ。また、かつて活発だったアジアへの工場移転は、近年では鈍化傾向にあるが、一部では依然として低コストを求めた海外展開として行われている。

 地方創生2.0では、異なる分野や領域に属する要素同士を従来にはなかった形で組み合わせる「新結合」の視点を重視する。新結合は単なる「足し算」ではなく、「掛け算」として異質な要素同士が交わることで、想像を超えた新たな価値を創出するものであり、画期的な商品やサービスを生み出し、地域の所得と雇用の増大や、地域の課題解決につながる可能性を秘めているものである。

これまでの地方創生においては、農林水産業や商工業、観光業など、各省庁による産業ごとの政策体系の下、都道府県や市町村を主体として、民間事業者や大学等と連携しながら、現場の主体的な取組を後押しする施策が展開されてきた。また、全国各地の文化芸術、自然環境などについては、主に維持保全を目的とする観点からの政策が採られてきたが、人口減少や東京一極集中により、地域の様々な分野で人材の不足、円滑な承継・発展の困難などが生じ、地域が持つ様々な特性の持続可能性がリスクにさらされている。

 こうした中、足元の2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開催やインバウンドの増加等を契機として、我が国の多様な食や伝統産業の豊かさ、文化芸術やスポーツ、自然環境、アニメ・映画等のコンテンツの価値が国内外で評価され、地域資源をいかした高付加価値型の産業・事業の創出や、新たな海外マーケットの開拓への期待が高まっている。また、地方のゆとりある土地や豊かな水資源等を求めて、GX・DXやイノベーション拠点の地方への立地ニーズが生じており、地域経済の活性化や地域の魅力的な仕事づくりにつながることが期待される。

 このような動きに適切に対応していくためには、これまでの地域の産業・事業ごとの最適化から、文化芸術や自然環境、スポーツ等が生み出す新たな価値もいかしながら地域の産業・事業全体として最適化するなど、コストカット型から高付加価値型の経済への転換が求められる。そして、これを実現するのが「新結合」という考え方である。

 様々な「新結合」を全国各地で生み出すことにより、地方経済に活力を創出し、我が国の潜在的な成長力を引き出していく「地方イノベーション創生構想」を推進する。具体的には、①地域の食や伝統産業に、文化芸術、スポーツ、コンテンツやスタートアップを組み合わせるなど、関係府省庁が連携した支援により、地域資源を最大限活用した高付加価値化を図る「施策の新結合」、②若者や女性、産官学金労言士など、地域内外の様々な関係者の連携・協働、地域外の新たな人材を呼び込む「人材の新結合」、そして、③イノベーションの果実であるAI・デジタル技術等の新しい技術を組み合わせる「技術の新結合」に重点的に取り組む。

 これらの「新結合」の取組について、各地の産業基盤、交通ネットワーク等もいかし、広域的に連携しながら面的に展開することにより、相乗効果の高い、よりダイナミックな取組を地方から生み出していく。

(4)AI・デジタルなどの新技術の徹底活用と社会実装

 地方創生1.0では、ICT活用やブロードバンド整備が施策として盛り込まれたものの当時の技術が前提となったものであり、地方創生におけるデジタル技術の活用は2022年のデジタル田園都市国家構想基本方針*17*の策定等を機に本格的に進められた。

 地方創生2.0では、急速かつ飛躍的に発展するAIを始めとしたデジタル技術を徹底活用し、地域に展開させていく。

 我が国においては、スマートフォンの急速な普及を始めとする情報通信技術の進展に加え、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機として、社会全体のDXが加速した。これにより、行政サービスを含む各種サービスの提供形態や国民の生活様式等に大きな変化が生じている。あわせて、地方への移住に対する関心の高まりや、リモートを活用した場所にとらわれない新しい働き方の広がりなど、国民の意識・行動の変容がもたらされた。地方創生2.0では、デジタル田園都市国家構想を発展的に継承し、地方との関わりや暮らしを希望する人々が、どこでも不自由なく働き、安心して生活することのできる幸福度の高い社会を実現していく。

 AIやドローン等の新技術の活用は、人口減少が進む地域において様々な社会課題の解決を図る上で極めて有効な手段となり得る。こうした新技術の導入に際し、必要となる関連規制や制度の見直しを適切に行うことにより、例えば、密度の経済が働きにくい地域では、大規模な施設で集中的にサービス供給等を行うことで広いエリアに届ける仕組みと異なり、地域や施設単位で小規模に分けて行う分散型の仕組みを確立するなど、地域住民が安全かつ快適な生活環境を享受できる持続可能な地域社会の形成を図っていく。

 地域経済にとっても、AI等の新技術の導入は、地域における担い手不足や高齢化といった構造的課題への対応に資するとともに、農林水産業、製造業、観光、医療など幅広い分野において業務の効率化と高度化を実現し、若者や女性にも魅力的なものとなる。また、地域固有の自然資源や文化、伝統技術等を新技術と掛け合わせることで、付加価値の高い商品・サービスの創出が可能となり、地域経済の持続的な成長と競争力の強化につながっていく。こうした新技術が実証・実験にとどまることなく、地域社会で広くこれらのサービスが実装され、活用・定着する姿を創出していく。

(5)都市・地方の共生関係の強化と人材循環の促進

 地方創生1.0では、移住施策などにより、都市から地方への新しい人の流れをつくることを目指した。

 地方創生2.0では、都市と地方が相互に補完し合う共生関係を強めることで、我が国全体の持続可能性を高めていく。

 都市は、経済、情報、文化の集積地であり、ビジネスや雇用、研究、教育、芸術、サービスなど、様々な価値や消費を生み出す存在である。その一方で、地方が担う食料、水、エネルギー、自然資源の供給機能がなければ、都市の豊かさは維持できない。都市と地方は切り離せるものではなく、一体となって初めて国全体の持続可能性が保たれる。

 地方では、様々な日常生活サービスのみならず、地域文化の継承、コミュニティ活動など、あらゆる分野で深刻な人手不足が顕在化している。さらに、地方経済の高付加価値化に向け、農林水産業や中小企業において、付加価値の高いビジネスモデルの創出や海外展開等、新たな一歩を踏み出す必要がある中で、海外ニーズの把握や輸出に係る手続、経営の高度化などの専門性・経験を有する人材や、都市での経験をいかして地域で経営視点を持って新たなイノベーションを生むような人材が必要となる。企業、学生、専門人材、あるいはボランティアなど、都市には多様な人材が集積しており、これらを地域課題の解決や地方経済の高付加価値化に向けて流動化・循環させる仕組みづくりをパッケージで行うことが求められている。

 さらに、地方には都市が抱える閉塞感や疎外感を打破する「場」としての魅力がある。自然との共生、コミュニティのぬくもりなどといった価値が、都市住民にとっての生きがいややりがいにつながるケースも増えており、地方に身を置くことで新たな自己実現の形を見いだす人々も少なくない。地方は、都市部の企業や教育機関にとって、社員や学生が、地域課題に向き合いながら視野を広げ、実践的な課題解決力や主体性を育む「場」であり、重要な人材育成の機会を提供している。

 このように、都市と地方は二項対立的な構造ではなく、むしろ相互に補完し合い、結び付くことで全体の持続可能性を高めることができる。こうしたつながりの基盤として、特定の地域に継続的に多様な形で関わる関係人口を中心とした人材の結び付きが促進されることで、地域と人々との様々な関係が新たに生まれていく。二地域居住等の制度や、リモートワークなどの手段を最大限に活用しながら、都市と地方の間で、また地域の内外で人材をシェアし、人・モノ・技術の交流・結合、分野を越えた連携・協働の流れを創る。その積み重ねが、都市と地方の継続的な支え合い、共生関係の強化をもたらし、新しい価値の創造につながっていく。

(6)好事例の普遍化(点から面へ、地域の多様なステークホルダーの連携)

 地方創生1.0では、それぞれの市町村の現場主導で取組を進めることを目指した。しかし、各地で産官学金労言士等の地域の多様なステークホルダーを巻き込み、大きなうねりとして全国に広がるには至らなかった。

 地方創生2.0では、地方創生1.0を通じて各地で生まれた優良な事例や、新たに創出される好事例を点で終わらせず、面へと広げる「普遍化」を進めていく。各地域の多様なステークホルダーが、主体的に考え、選択し、行動する取組が、地方創生2.0の推進には不可欠である。

 その際、従来の「縦」の連携、すなわち国・都道府県・市町村という行政機関の階層的な関係性だけではなく、地域間の「横」のつながりを再認識し、強化していくことが極めて重要である。ここで肝要なのは、先進的な取組の成果を、そのまま他地域に模倣・移植するという「コピー」の考え方ではなく、それぞれの地域の特性や資源、課題に応じて柔軟に取り入れる「ローカライズ」の発想*18*である。その際、「民」の力を最大限にいかしていくことが求められる。

 好事例の普遍化を進めるためには、まず好事例を知る機会、そしてそれを学ぶことのできる環境づくりが不可欠である。他地域の取組に触れ、自らの地域と比較する視点を持つことが、地域の関係者自身の気付きと主体的な思考を促す。また、単に行政職員や政策担当者だけでなく、地域で活動する住民、企業、教育機関、NPOなどの多様な主体も当事者として参加することで、より実効性のある学びと行動へとつながっていく。

 主観的な成功体験の共有だけでなく、地域の人口動態や経済指標等といった客観的なデータを用いながら、施策の成果や課題等を分析することが重要である。その上で、急速に進行する人口減少への対処は待ったなしの課題であることから、地域の実情に応じ優先する取組を選択し、速やかに次のアクションへとつなげていく必要がある。その動機付けとなる周囲の働き掛けや制度面の後押しも重要である。


3.政策の5本柱

 「1.目指す姿」で掲げた「新しい日本・楽しい日本」を創り出していくため、「2.地方創生2.0の基本姿勢・視点」を十分に踏まえつつ、以下の5本柱により、地方創生2.0を力強く展開していく。

(1)安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生

 日本中いかなる場所も、安心して働き、暮らせる地域とするため、若者や女性にも選ばれるような地方となるための社会変革・意識改革や、魅力ある働き方・職場づくり、人づくりを進める。

 また、人口が減少しても、地域コミュニティや日常生活に不可欠なサービスを維持するための将来を見据えた地域の拠点づくりや、交通・医療・介護・子育てなど生活必需サービスの維持・確保、意欲と能力のある「民」の力をいかした人を惹(ひ)き付けるまちづくりを始めとする官民連携の推進、災害から地方を守るための防災力強化などを図る。

(2)稼ぐ力を高め、付加価値創出型の新しい地方経済の創生~地方イノベーション創生構想~

 多様な食や伝統産業、自然環境や文化芸術の豊かさといったそれぞれの地域のポテンシャルを最大限にいかすため、様々な「新結合」を全国各地で生み出すことにより、地方経済に活力を創出し、我が国の潜在的な成長力を引き出していく「地方イノベーション創生構想」を実現する。

 今後、地方において更なる需要の減少が懸念される中、地方そして日本全体が豊かになるためには、特に地方のサービス産業の生産性を向上させていくことが必要である。地域資源やサービスの高付加価値化により、拡大するインバウンドの需要を最大限取り込むことに加え、地域外、特に海外に高く販売することなどを通じ、地方が稼ぐ力を高めることが必要である。

 地方イノベーション創生構想の実現に向け、①地域資源を最大限活用した高付加価値化を図る「施策の新結合」、②地域内外の様々な関係者の連携・協働、地域の若者や女性などの活躍促進に加え、地域外の新たな人材を呼び込む「人材の新結合」、③イノベーションの果実であるAI・デジタル技術等の新しい技術を組み合わせる「技術の新結合」に取り組む。

(3)人や企業の地方分散~産官学の地方移転、都市と地方の交流等による創生~

 地方は過疎化が進むとともに、過度な東京圏への一極集中により、地方から東京圏に人口が流出し、地域コミュニティや地域経済の持続可能性に悪影響を与えている。また、東京圏においても、住宅価格や賃料の高騰、長時間通勤など、過密の進行に伴う弊害や、大規模災害リスクの可能性が指摘されている。国全体の持続的な発展のため、東京一極集中の是正に向けた人や企業の地方分散を図る。

 そのため、政府関係機関の地方移転や、企業・大学の地方分散などに取り組むとともに、地方大学による人材育成機能の強化や、関係人口の創出に向けた都市と地方の新たな結び付き、人材の交流・循環・結び付きを促進する政策の強化、都市と地方の間や、地域の内外で人材をシェアする政策を進め、地方への新たな人の流れを創っていく。

(4)新時代のインフラ整備とAI・デジタルなどの新技術の徹底活用

 GX・DXは、産業構造や立地動向の変容をもたらすとともに、地域の生活環境を改善するポテンシャルを秘めた新しい技術を生み出す。GX・DXが進展する新時代に、地域経済や地域社会を円滑に適応させていくことが重要である。

 このため、生活環境や地方経済を支える従来の基盤整備に加え、GX・DXによって創出・成長する新たな産業の集積に向け、ワット・ビット連携などによるインフラ整備等を進め、面的に展開していく。また、最先端の技術を用いて誰もが豊かに暮らせる社会(Society5.0)の実現に向け、AI・ドローンを始めとした様々なデジタル・新技術を徹底的に活用し、地方創生の推進を図っていく。

(5)広域リージョン連携

 地域における経済活動や人々の生活は、都道府県域、市町村域に限定されるものではなく、地域経済の成長につながる施策が面的に展開されていく状態を創出できるよう、地方公共団体と企業や大学、研究機関などの多様な主体が広域的に連携しながら地方創生2.0に取り組む「広域リージョン連携」を推進する。

そのため、既存の圏域を超える広域的なプロジェクトが効果的に行われるような枠組みを整えた上で、省庁横断的に産業振興、観光政策、インフラ整備等の取組を進めていく。


4.各主体が果たす役割

 地方創生2.0では、人口減少問題の対処に向けた10年前の熱意とモメンタムを取り戻し、あらゆる関係者の力を総動員して取り組む。地域における担い手不足や、より広域的な政策展開の必要性等を踏まえると、地方創生2.0は、地域の多様なステークホルダーが「みんなで取り組む」ことが必要である。

このため、以下の役割分担に基づき、各主体が相互理解と信頼の下、地域の力を結集して地方創生2.0を推進していく。

(1)国の役割

 地方創生1.0では、国による財政・人材・情報の支援を「三本の矢」として位置付け、各地域の取組を後押ししてきた。地方創生2.0では、これらの支援を一層柔軟かつ効果的に展開し、地域の実情に応じてより深く根ざした形へと進化させる。国は、省庁横断の連携体制を強め、地方の課題意識や意欲を踏まえ、地域に寄り添い、プロジェクトの案件形成や具体的な展開手法を共に考える。地域の主体的な取組、未来への成長につながる取組をより強力に後押しし、さらに、地域社会が直面する構造的課題に対応するため、地方起点の課題に対する規制改革や諸制度の見直しなど、制度的なアプローチを強化するとともに、国民全体の理解と参画を促す機運の醸成にも取り組む。

 ①人材支援・人材育成

 地方創生に関する総合的又は専門的な知見を有する人材を中小規模の地方公共団体に派遣する地方創生人材支援制度に加え、国の職員が本来の業務を行いながら中小規模の地方公共団体を支援する地方創生伴走支援制度を拡充するなど、より多くの人材がより多くの地域に寄り添うための人材支援の仕組みを充実させる。あわせて、地方公共団体の職員も含め、地域の多様な人材が、地域の様々な好事例など地方創生について共に学ぶ機会を拡充し、各地域での取組につなげるなど、好事例の普遍化に向けて、人材育成にも取り組む。

 ②情報支援・デジタルツールの整備

 i.RESAS、RAIDAによる情報支援の強化

規模の小さな地方公共団体も含めて多様な地域の担い手が、地方創生に関する議論や取組にデータを利活用できるよう、情報支援を強化する。

 具体的には、RESASについて、利用者の声を踏まえた掲載データや機能の高度化、利便性の向上等を進めるとともに、RESASを活用した学生・一般向け政策アイデアコンテストの開催、地域における研修等の実施などきめ細かな普及促進策に取り組む。

 また、RAIDA*19*についても、地方公共団体が主体的にエビデンスに基づく政策立案(EBPM)を推進することができるよう、地域におけるデータ分析、効果的なデジタル実装施策等の政策の企画立案・効果検証等を支援する機能を充実させる。あわせて、ダッシュボードやチャート等により地方公共団体の各種指標や分析を比較可能な形で可視化する取組を進める。

 ii.地方公共団体の負担軽減につながるデジタルの活用

 地方公共団体が標準準拠システムへの移行を進めるとともに、複数の団体と同じシステムを利用する形でサービス提供を受けること(いわゆる共通SaaSによる共通化)や、システム間の情報連携機能を担う公共サービスメッシュを活用することなどにより、システム改修や新たなサービス導入時におけるシステムコストを軽減し、必要な制度改正等に柔軟に対応できる情報システム環境を実現する。

 安全なAI利用環境を前提に各地方公共団体の主体的なAIの活用や、それによる行政サービスの向上と業務効率化を推進する。

 ③規制・制度改革

 i.地方起点の大胆な規制・制度改革

 地方が、地域資源の活用や生活環境の改善、人材のシェアや地域の実情を踏まえた運営体制・手法などの施策に具体的に取り組もうとしても、既存の制度が障壁となり、地方が思うように進めることができない場合がある。また、地域の事業者にとっても様々なハードルがあり、新しい分野への挑戦・参画等が難しい場合がある。このような障壁を取り払うため、地方の課題を起点とする大胆な規制改革を推進する。

 そのため、まずは、特区制度*20*の運用を抜本的に強化する。構造改革特区への移管も含む特例の全国措置化を早急に進め、主務官庁が主体的に対応し効果的に議論を行えるよう特区の検討体制を強化する。新たな規制改革に必要なデータ等の収集や先進的な取組の調査・実証等と一体的な財政・金融支援、多様な関係者の参画を促す情報発信やノウハウ支援等、地域のチャレンジを徹底してサポートする。

 このほか、地方分権改革の提案募集方式においても、持続可能な地方行財政の確保に向けて、計画策定等の効率化、経由事務*21*の廃止、経由調査*22*の見直し、デジタル化の推進等、地方公共団体の事務の簡素化・効率化を進め、当該方式を活用した地方創生の実現に積極的に取り組む。その際、個々の提案への対応にとどまらない横断的な見直しを進めるとともに、市町村からの提案に対する国や都道府県によるバックアップを拡充する。

 ii.子育て支援策の拡充

 全国どの地域に暮らす若者そして子育て世代にとっても、経済的な不安がなく、良質な雇用環境の下で、将来展望を持って生活できるようにするため、経済的支援の強化、こども・子育て支援の拡充、共働き・共育てを支える環境整備など*23*を一体として進める。その際、国と地方が連携して子育て支援等に取り組む観点から、国はこども・若者や子育て当事者の視点、地方公共団体の意見等を踏まえ、必要な施策を検討していくことが重要である。

 従来から全国一律で実施してきた児童手当の抜本的拡充・育児休業給付の充実に取り組むとともに、標準的な出産費用の自己負担無償化を含め、こども・子育てや教育に関する国の役割や、ナショナルスタンダードの観点も踏まえて、全国的な支援の在り方を財源も含め検討し、その結果に応じて必要な措置を講ずる。

 iii.税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築

行政サービスの地域間格差が顕在化する中、拡大しつつある地方公共団体間の税収の偏在や財政力格差の状況について原因・課題の分析を進め、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に向けて取り組んでいく。

 iv.分野横断的な制度の見直し

 社会における様々な課題が複雑化・多様化の一途をたどってきたことを受け、それらの課題に対処するために多くの国の法令が相次いで制定されるとともに、既存制度の精緻化・専門化が進められてきた。その結果、行政が担う役割や守備範囲は拡大し続け、地方公共団体は、必要な人員や体制の配置が求められてきた。こうした中で、地域の人口減少、担い手不足等が制度運営上の大きな課題として顕在化している。

 法令に基づく事務処理を、効率的・効果的に実施できるようにし、個々の市町村における基本的な行政サービスの提供に係る負担を軽減することが、地方創生の推進のためにも求められている。各分野の個別の事務について、それぞれの事務や地域に適した形で、垂直補完や水平連携、デジタル技術の活用等の取組を進めるとともに、市町村の体制や、国・都道府県が処理する他の事務との共通性等も踏まえ、地方公共団体と協力して、国・都道府県・市町村の役割分担や制度の枠組みの見直しまで踏み込んだ議論を進め、必要な対応を講じていく。

 また、国は、複数の地方公共団体による広域での連携や、地方公共団体と民間企業との連携による取組を支援し、地域の枠を超えた課題解決や資源の有効活用、持続可能な地域づくりを後押しする。

 ④財政・金融による支援等

 地域が自律的に成長していくためには、暮らしやすさや地域の魅力を高めて人材や資金を呼び込むことが不可欠である。そのために、新しい地方経済・生活環境創生交付金等について、地方の声を踏まえ使い勝手の向上を図りつつ、その活用を推進し、地域の自主性と創意工夫に基づく独自の取組について、本基本構想に沿って重点的に支援する。

 さらに、地域課題の解決に向けた民間資金の新たな流れを創り、企業の自主的な取組を促す必要がある。そのため、企業版ふるさと納税の更なる活用促進等を図るとともに、政策金融の活用や、地方公共団体と金融機関の連携を促進しながら、地方創生に資する利子補給制度の予算の一本化など資金ニーズに応じた柔軟な支援が可能となる仕組みなどを通じて、地域課題解決への金融機関の主体的な連携・参画を後押しする。さらに、地域金融機関が地方創生に資する役割を一層果たしていくための「地域金融力強化プラン」を策定・推進するとともに、地域等における課題解決と企業価値の向上を目指す企業への投資(インパクト投資)の担い手育成と実践の後押しを行う。

 ⑤広報周知活動と国民的な機運の向上

 地方創生2.0の実現には、地域における住民や多様な主体が、「今日より明日はよくなる」と自らの地域の潜在力や可能性を信じ、一人一人が何かできないか(できるはず)という意識を持ち、地域の課題解決に向けて主体的に一歩を踏み出すことが重要である。

 このため、地方創生2.0の推進の中核を担う地方公共団体に対し、職員の意識醸成・改革を図るための研修や伴走支援等の充実を図るとともに、自らの地域の現状や他地域との比較・分析を容易にする各種ツール・情報の提供について、ニーズを踏まえながら着実に実施していく。また、あらゆる層に対し、地方創生に対する興味・関心を引き起こすことを意識した情報提供・広報活動、各種イベントや講演会・車座対話等を実施するとともに、各地の地方創生2.0の取組状況を分かりやすく共有することなどを通じ、「みんなで取り組む」機運の醸成を図る。

 さらに、地方創生1.0では、各地の様々な好事例を普遍化することができなかった反省を踏まえ、今後は、内閣官房・内閣府の地方創生部局が中心となって各府省庁と共に全国の好事例を収集・共有し、他の地域が試行・応用できるよう効果的な情報発信を行う。その他、地方創生2.0の実践として他の手本となるような優れた取組に対する表彰の実施やネットワーク化等、あらゆる機会・手法を活用して好事例の普遍化を推進する。

(2)地方公共団体の役割

 ①市町村の役割

 基礎自治体である市町村は、地方創生2.0を現場で中心的に担う主体として、地域の多様なステークホルダーや住民を巻き込み、一緒になって地方創生2.0を推進するリーダーシップを発揮することが期待される。

 地方創生1.0の成果と反省を踏まえ、若者や女性を含め、地域の多様なステークホルダーと共に地方版総合戦略の評価・検証を進める必要がある。国や都道府県の支援も活用し、他の地方公共団体との比較や好事例を参考としつつ、人口構造の変化など自らの地域の将来の姿から逆算して着手すべき施策を考え、それらを担う人材育成を含め具体化していくことが重要である。

 人口減少を正面から受け止めた上での施策展開や、指定都市・中核市・一般市・町村といった人口規模や権限、地域特性等に応じてAI・デジタル等の新技術を活用して維持すべき行政サービスの高度化やサービス確保を図る取組を行うとともに、新たな資金の流れを自ら確保する取組、若者や女性にも選ばれる地域づくりなどの新しい視点も取り入れながら、必要に応じ、他の市町村とも連携を図りつつ、地方創生2.0の施策を力強く進めていくことが求められる。

 ②都道府県の役割

 市町村は、地域の力を結集し、地方創生2.0を推進する中核的な役割を担うことが期待されている。しかしながら、全ての市町村が十分なリソースを有しているとは限らず、体制面での課題を抱える地域も少なくない。

 このため、広域自治体である都道府県には、まずは、市町村に先行して、都道府県版総合戦略の評価・検証を進めることが求められる。都道府県が率先して、本基本構想に記載した観点を含め、地域の若者や女性、地域の多様なステークホルダーを巻き込みながら都道府県としての将来の在り方の検討を行うことや、統計指標や様々なデータを活用し市町村の状況を可視化することで、総合戦略の内容だけでなく、具体的な検討プロセスも含めて市町村の主体的な動きにつなげることが期待される。

 複数の市町村が共通して直面する課題に対する解決策や市町村間連携の枠組みの提示、地域の実情に応じ、市町村の取組を補完する支援体制の構築*24*、人材育成など、従来にも増して重要な役割を果たすことが求められている。あわせて、市町村の地方創生の取組が円滑に進展するよう、地域の経済界やメディア等との連携を促すことが重要である。

 さらに、国の人材支援・情報支援等との連携を図るとともに、国の様々な政策や制度を市町村に適切に伝達・展開することなど、地方創生2.0において、都道府県はこれまで以上に重要な役割を果たすことが求められる。

(3)地域の多様なステークホルダーの役割

 人口が減少していく中、地域を創り、支えていくためには、行政以外の多様なステークホルダーが果たす役割が重要であり、特に、「民」の力を最大限にいかしていくことが必要となる。

 企業、教育機関、金融機関など、地域を担うそれぞれの主体は、人口減少に加え、GX・DXなどの時代の変化にも適合しながら、それぞれの主体が付加価値を高め続け、様々な人に選ばれ続ける存在、「稼ぎ」続けることのできる存在となることが重要である。その上で、地域社会を担う主体の一つとして、それぞれの人材、資金、ノウハウ等をいかし、地域再生協議会*25*等の枠組みも活用しつつ、主体的に地域住民や産官学金労言士等の関係者を巻き込みながら、地方創生に貢献する役割が期待される。さらに、地域において中核となる企業群を中心に、まちの魅力を高める再開発や民間資金を活用したハード・ソフト事業、人材育成に向けた教育機関との連携など、官民が連携して地域づくりやまちづくりに取り組み、幅広い支援策を活用し、ハード整備からソフト運営まで地域課題の解決に多面的に貢献する「新たな企業城下町」の形成が期待される。

 地域を支える主体は、当該地域のステークホルダーだけではない。都市部にある企業、教育機関等においても、様々な地方に目を向けて、従業員や学生等が地方に触れる機会を増やしていくことが期待される。多様な地域との触れ合いは、一人一人の経験や成長、生きがいにつながるだけでなく、組織としての新たなチャンスにも発展し得る。あわせて、地域を担う人材を育成したり、関係が構築された地域に直接投資やノウハウを提供したりするなど、それぞれの強みをいかした地域貢献を行う役割が期待される。特に経済界においては、地方への企業人材や組織の移転・拡充を図ることなどにより、各地域における政策や事業の企画立案・実施能力を高め、社会課題の解決を図るとともに高付加価値型産業を作り出していけるよう、積極的に貢献することが求められる。


5.今後の進め方

 国は、本基本構想で示した方針を踏まえ、速やかに関連施策の展開及び新規施策の具体化を進めるなど、地方創生2.0の取組に早急に取り掛かるとともに、「1.目指す姿」の実現に向けた具体的な施策を記述した「総合戦略」(まち・ひと・しごと創生法第8条に規定するまち・ひと・しごと創生総合戦略をいう。)を2025年中に策定する。

 策定に当たっては、本基本構想で取りまとめた目指す姿、基本姿勢・視点等の内容と、それらを実現するための具体的な事業や戦略を整理するとともに、目指す姿の実現に向け、1年、3年、5年といった期間ごとの工程表を作成し、施策効果を着実に積み上げていく姿を示す。

 あわせて、各施策については、PDCAサイクルの徹底を前提に、進捗や成果を客観的かつ的確に把握できる評価指標(KPI)を適切に設定し、施策の不断の検証と改善を通じて、戦略全体の実効性を高めていく。

 地方においては、地方創生2.0を推進する取組に早期に着手するとともに、地方版総合戦略の検証及び見直しに取り組むことが求められる。本基本構想を踏まえ、当面の人口減少を正面から受け止めつつ、地域の多様なステークホルダーや、地域の若者や女性を巻き込んで主体的な検証・見直しを行うことが重要である。地方版総合戦略の議論の場には、各地方公共団体の若者や女性それぞれの人口比並みに、若者や女性の参画の確保に努めることが重要である。国は、各地方公共団体が適切に地方版総合戦略の検証・見直しができるよう、必要な支援を行う。

 本基本構想は、2034年度末までの10年間を対象とした構想として策定している。今後の様々な情勢変化を踏まえ、中間年度である2029年度中に必要な見直しを行うこととする。


6.政策パッケージ

(1)安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生

 ①若者や女性にも選ばれる地方となるための社会変革・意識変革

 i.地域の働き方・職場改革を起点とした社会変革

 若者や女性の転出行動に影響を与えている職場の重要性を踏まえ、地域の働き方・職場改革を起点として、地域社会の変革に取り組んでいく。

 公募した取組意欲ある68の地方公共団体(24県、44市町村。以下「取組参加自治体」という。)と各府省庁横断のサポートメンバーで「地域働き方・職場改革ネットワーク」を形成し、「若者や女性にも選ばれる地方」に向けた地域働き方・職場改革の取組を始動する。今後3~5年程度、これら取組参加自治体相互の経験・知見を共有し連携しながら、成果・成功体験の蓄積を進め、全国的な波及を目指していく。

 地域の働き方・職場改革においては、「働きがい」のある職場(=将来ある若者や女性が、自分たちの能力がいかされ、成長でき、希望するキャリアを実現できると感じられる職場)、また、「働きやすさ」のある職場(=将来において結婚・出産等のライフイベントがあった際にも、「共働き・共育て」の時代にふさわしく、男女共に柔軟な働き方ができる職場)を目指し、アンコンシャス・バイアスやそこから派生するものを含めた「働き方の課題」等への対応を進める。

 その際、都道府県労働局において、取組参加自治体に対して、参加企業等の掘り起こしやイベントの共催等を通じた支援を行う。また、働き方改革推進支援センター*26*において、改革を進めようとする個々の職場に対して、労務管理の専門家による無料コンサルティングの提供等により課題解決を支援する。

【当面の目標:68地方公共団体で先行実施】

 ii.地域共同での若者育成・職場情報の発信強化

 1社単位では若手社員の数が少数となる地域において、企業横断的に地域共同で行う若手社員の育成や仲間づくりの支援などを進める。また、就職・転職の機会に、地域の魅力ある職場が若者や女性の具体的な選択肢に挙がるよう、公的媒体である職場情報総合サイトへの情報集約や、民間サイトとの連携等により、地域全体で職場情報の発信を強化する取組を進める。

 iii.教育現場の意識改革

 教育に携わる者がアンコンシャス・バイアスのもたらす地域でいくことができるよう、アンコンシャス・バイアスへの気付き社会への影響への問題意識を持ちながら、こどもたちへの教育・進路選択の支援等に臨んでいくことができるよう、アンコンシャス・バイアスへの気付きを促すための教員研修を推進する。また、大学やNPO等の様々な関係者の協力を得ながら、科学技術分野で活躍するロールモデルと出会う機会の提供や保護者の理解を促すシンポジウム等を通じ、女子中高生の理系進路選択支援を推進する。

 iv.女性の起業を通じた新たな職場の創出

 地域に、「働きがい」や「働きやすさ」を実感することができる新たな職場を創出するためにも、女性の起業支援を強化する。

 具体的には、男女共同参画センターが、女性がアクセスしやすいサポート拠点として、既存の女性起業家支援ネットワークとも連携しつつ、様々なロールモデルとの出会いや新たなネットワーク形成の促進等を行うとともに、新設される独立行政法人男女共同参画機構*27*において、起業支援や意識改革等に係る専門人材をセンターの求めに応じマッチングするなど、全国の男女共同参画センターにおける取組を後押しする。

 ②魅力ある働き方・職場の創出

 i.実質賃金の引上げ等

 2029年度までの5年間で、実質賃金で年1%程度の上昇を賃上げの新たな水準であるとのノルム(社会通念)として定着させる。このため、地域経済において大半を占める中小企業・小規模事業者を対象に、サービス業等の12業種について業種別の「省力化投資促進プラン*28*」を策定するなど、経営変革に向けたきめ細かな支援策の充実や、低入札価格調査制度*29*・最低制限価格制度*30*の導入拡大等を通じた官公需の価格転嫁の促進、医療・介護・障害福祉分野等エッセンシャルワーカーの職員の処遇改善等を進める。あわせて、適切な価格転嫁と生産性向上支援により、最低賃金の影響を受ける中小企業・小規模事業者の賃上げを後押しする。

 ii.副業・兼業の推進

 地域で活躍する人材の層を厚くし、また、個人の多様な働き方を広げる観点から、地域内外の両面において副業・兼業を推進する。

 地域内人材の副業・兼業推進については、地方公共団体や地域金融機関、JA等において、希望する職員の副業・兼業が可能となるよう、許可基準の弾力化や就業規則の改定を促進することを含め、必要な環境整備を進めていく。

 また、地域外人材(都市部等)の副業・兼業推進については、都市部等の専門人材と地域企業とのマッチングをサポートするプロフェッショナル人材事業等において、地域企業が副業・兼業人材を初めて活用する場合に必要経費の補助を行うなど、副業・兼業人材の活用促進に向けた重点措置を講ずる。

 iii.地方公共団体の働き方・職場改革の推進

地域の中の主要な職場の一つである地方公共団体自身の働き方・職場改革を推進する。副業・兼業を希望する職員の環境整備に加え、地方公務員全体の約2割を占める会計年度任用職員を含めた「働きがい」と「働きやすさ」の確保に向けて、これまでの法改正等を踏まえ適正な処遇の確保・改善に取り組むとともに、職務経験等を考慮した適切な給与水準の決定や、能力実証を経た会計年度任用職員の常勤化の普及促進を図る。

 iv.ローカル・ゼブラ企業の活躍環境整備による魅力ある職場づくり

ローカル・ゼブラ企業は、若者や女性を始め多くの人たちにとって魅力的な地域の仕事・職場を創出し、地域の社会課題解決の新たな担い手となる重要な存在である。ローカル・ゼブラ企業を育成するエコシステム強化のため、多様なファイナンス手法や社会的インパクト評価手法の検討・整理、地域や業種を越えたコミュニティの形成促進等の環境整備に取り組む。

 v.地域を支える産業の相互連携・強化等

建設業や物流・運輸業、農林業、海事産業など地域の雇用を支えている産業を持続可能なものとし、地域の経済活動基盤を維持するため、官民が連携して将来にわたる担い手の確保に向けて、建設業法*31*に基づく労務費の基準の設定及び実効性確保等に取り組む。また、公共工事の品質を確保しつつ、建設業が地域の守り手としての役割を継続的に果たすため、地域のニーズを踏まえた上で、国直轄工事への新規参入の拡大を図る。くわえて、建設業と農林業等が連携して内部管理業務の共同化等による経営効率の最大化を図るため、好事例の収集、展開等に取り組むとともに、物流業と建設業が連携して建設資材の共同輸配送や配送計画の最適化による生産性向上を実現する。このような地域を支える様々な分野の業種の連携による、収益の多角化を通じ、地域に不可欠な各産業の「地域の総合サービス業化」を進める。

 ③地域に愛着を持ち、地域で活躍する人材の育成

 i.学校と地域との連携の深化、学校を核とした魅力的な地域づくり

保護者や地域住民等が学校運営に参画するコミュニティ・スクールと、地域住民や地元産業界等が参画する地域学校協働活動の一体的な取組の推進に向けて、地域学校協働活動推進員の配置促進を含む支援を行う。また、過疎・離島地域を含む公立高校などへの支援の拡充を図る。特に、専門高校においては、立地する基礎自治体や産業界等と連携した地域人材育成の取組(寮機能を含む交流拠点の整備を含む。)や、産業界等からの人材派遣(教師人材バンクの構築支援を含む。)等の伴走支援による実践的な専門高校運営モデルの構築等を進める。また、学校の通信ネットワークの改善に取り組む。地域コミュニティや産業界の学校教育への参画強化、キャリア教育やAI活用による英語での地域の魅力発信等を進めるとともに、郷土に関する教育の観点を含めて次期学習指導要領に向けた検討を進め、必要な措置を講ずる。

【当面の目標:全地方公共団体での郷土学習の実施に向け2026年度中に結論】

 ii.地方を担う人材の育成

 地方創生に関係するステークホルダー同士のつながりを構築しながら、地域課題の解決を目指す「地創塾」を開催するなど、地方を担う人材を育成しつつ、各地域における好事例を普遍化する。

 また、地域コミュニティの基盤強化を図るため、社会教育人材を養成する講習等について抜本的改革を行い、各分野の専門性を様々な場面にいかすことができる人材を各地域に創出するとともに、社会教育人材のネットワークの構築・活性化を図る。

 くわえて、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校及び養成校において、各地域の実情に応じたエッセンシャルワーカーや地域の担い手となる人材の養成を、関係機関と連携しながら進めるほか、大学等を核とした地域の産学官金等の連携基盤を整備する。

 このほか、官民協働の下、地域の食品・農林水産物などの地域資源を活用した様々な食育活動に取り組むことで、地域の農林水産業や食文化への理解を醸成する「豊かな食と農のまちづくり」を推進する。

 ④多様な人々が活躍する地域社会の実現

 地域における多様性はその活力の源泉であり、「新しい・楽しい」地方を生み出す原動力である。年齢、性別、国籍や民族、障害の有無等にかかわらず、多様な人々が活躍してこそ、地方はその魅力を発揮できる。そうした多様な人々一人一人が住みたいと感じる地域の実現に向けて、必要な施策を講じていく。

 i.包括的な福祉等の支援体制の構築による地域共生社会の実現

 地域共生社会*32*の構築に向け、市町村における包括的な支援体制の整備を進める。具体的には、包摂的な生活困窮者自立支援制度を基軸に相談対応の一体的実施や地域づくりの機能強化(相談対応人材の共通化や地域づくりを担う人材(コーディネーター)の一本化など)を図るとともに、労働者協同組合、地域運営組織(RMO)、指定地域共同活動団体等の福祉以外の幅広い他分野との連携・協働を進めるなどして、地域の互助機能の強化に向けて地域住民の参画を促す取組を展開する。また、高齢化等を背景とした地域社会における担い手不足について、多世代・横断的な担い手と地域課題をマッチングする仕組みの構築を推進する。

 特に、担い手不足が深刻化し、地域で支え合う機能が低下する中山間・人口減少地域では、新たに、高齢、こども、障害、生活困窮分野の相談支援・地域づくり事業を一本化し、機能強化を図るとともに、福祉以外の他分野を含めた地域内での連携・協働を図るための制度改正*33*を実施し、モデル事業を通じて地域での事例を蓄積し、他の地域へ展開する。

【当面の目標:制度的対応について2025年度中に結論】

 ii.多様な人材が活躍できる機会の創出

 誰もが活躍できる地域をつくるため、若者、女性、障害者、高齢者、外国人、就職氷河期世代等が能力を最大限に発揮できるよう、地方公共団体と企業・事業主が連携するなどし、地域の特性を踏まえた柔軟で多様な雇用創出に取り組む。

 具体的には、短時間正社員を始めとした多様な正社員制度の導入支援、フルタイム勤務が困難な障害者や高齢者等でも短時間で働けるよう業務の切り出し等に係る伴走型の助言・相談等や多様な人材のスキルアップ研修、企業と求職者のマッチング支援を実施する。また、労働者の健康確保を前提としつつ、副業・兼業における割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理の在り方について、労働政策審議会において検討し、結論を得る。

 iii.農福連携*34*の取組の推進

 地域協議会や伴走型コーディネーターの活動等を通じた、産官学金労言士等の多様なステークホルダーも参画する地域単位での農福連携の推進体制づくりの後押し、ノウフクの日(11月29日)等による企業や消費者も含めた多様な関係者を巻き込んだ普及・啓発、農業体験を通じて世代や障害の有無を越えた社会参画を図るユニバーサル農園の普及・拡大等により、農福連携の国民的運動につなげる。

 iv.地域における多文化共生の推進

 地域における外国人との共生に向けた担い手の支援・育成のため、地方公共団体の行政窓口等に対する通訳支援事業の実施や、生活上の困りごとを抱える外国人を適切な支援につないで解決に導くことができる外国人支援コーディネーターの育成・認証、法テラスによる外国人支援施策の充実強化、デジタル技術を活用した紛争解決手続(ODR)及び法教育の推進や育成就労制度の適正かつ円滑な運用等を進める。また、JICA海外協力隊経験者等のグローバル人材の活用や、JETプログラム経験者が地域へ定着できることを目指した支援、グローカル人材の育成、外国人生徒・学生の受入れとキャリア支援(就職・進学)の取組を進めることで、地域における多文化共生の推進を図る。

 ⑤社会の情勢変化に適応可能な将来を見据えた地域のサービス拠点づくり

 医療・福祉、教育・子育て等の公的サービス拠点や、スーパー、商店、公共交通等の民間事業者が主体となった拠点がそれぞれ整備され、必要なサービスが提供されてきた。地方においては、人口が急減する地域が顕在化していく中、今後のサービス拠点の整備に当たっては、郵便局や廃校などの既存施設の利活用、地方公共団体間の広域連携に伴う公共施設の集約化、広域的な拠点となる施設等の活用、民間事業者と地方公共団体が連携したサービス拠点施設の整備、これらにオンライン、ドローン、自動配送ロボット等のデジタル技術の活用による遠隔地へのサービス提供を組み合わせるなど、地域の実情に応じ、将来を見据えて持続可能なモデル案件の形成を進めていく。

 あわせて、これらのサービス拠点を運営する地域の人材を幅広く確保するため、地域内外の若者等に多様な就業の機会を提供する特定地域づくり事業協同組合や、地域運営組織(農村RMO*35*を含む。)の支援を含め、持続可能な運営体制を確保していく。

【当面の目標:暮らし続けるために必要なサービスを1か所で複数提供する拠点を整備】

 i.地域くらしサービス拠点構想

 各省庁・地方公共団体の連携の下、民間事業者の知見や資本も活用しつつ、既存の民間施設(スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニエンスストア等)への行政機能の併設等、1か所で複数のサービスを提供する総合的な「地域くらしサービス拠点」を整備する。

 地域の特性に合わせ、広域的な拠点となる施設等の活用や、廃校や柔軟な設計が可能なモジュール建築等を活用した低コストな拠点を、先駆的なモデル案件として整備し、他地域に展開する。

 また、社会情勢の変化に伴い、必要なサービスの内容や規模も変化していくことに鑑み、地域のニーズに応じ、増改築・減築や移設も含めた柔軟な設計変更が可能な施設の導入支援を進める。

 ii.「コミュニティ・ハブ」としての郵便局の利活用の推進

 過疎地を含む全国に約2万4,000の有人拠点を有する郵便局と、地域に必要なサービスの提供主体(地方公共団体・生活インフラ等)との連携を推進することで、新たな行政サービス・住民生活支援サービスの提供拠点「コミュニティ・ハブ」として郵便局を活用し、地域の持続可能性の確保に取り組む。

 iii.デジタル技術を活用した地域生活のハブ機能の整備

 日常生活に必要な様々なサービス等を維持するため、地域生活のハブとなる拠点を起点とした「暮らしの動線*36*」の集約・合理化を図る。公民館等の既存施設を有効に活用するとともに、様々なサービスにおけるデジタルのサポートを実現するため、必要なデジタルツールの共同利用・共同調達等により、廉価にその全国への普及を推進する。マイナンバーカードの個人認証機能を活用した無人店舗の整備や自動運転技術を活用したモビリティサービス等とも連携し、物流コストにも配慮した地域住民の生活拠点の整備を支援する。

 iv.市街地と農山漁村間における物流網の維持・確保

 農山漁村へのいわゆるラストワンマイル物流を確保するため、地域くらしサービス拠点構想の取組と併せ、農村RMO等の地域運営組織や物流事業者との連携などを促進する。

 v.「地域協同プラットフォーム」の構築

 人口・生産年齢人口の減少等により事業継続が難しい地域において、社会生活に不可欠なサービスの提供を可能とする共助型事業体を「地域協同プラットフォーム」と位置付け、省力化・デジタル化・協同化によって、事業継続に取り組む事業体への支援の枠組みを新たに設ける。

 ⑥交通・医療・介護・子育てなど生活必需サービスの維持・確保

 i.「交通空白」の解消等に向けた地域交通のリ・デザインの全面展開

 地方創生の基盤である地域交通が人口減少・少子高齢化や担い手不足の中においても地域の暮らしや経済を支えるため、「交通空白」解消に向けた取組方針*37*に基づき、まずは、集中対策期間(2025年度~2027年度)において、公共・日本版ライドシェア等の普及、民間技術・サービスの活用、地方運輸局などによる伴走、共同化・協業化や自治体機能の補完・強化を図る新たな制度的枠組みの構築などこれまでを上回る国の総合的支援の下、「交通空白」解消を図るとともに、省力化の推進、担い手の確保、自動運転の普及・拡大等地域交通のリ・デザインを全面展開する。

【当面の目標 : 「交通空白」地点(全国約2,000地区及び交通結節点約460地点)の解消に目途】

 ii.地域の医療提供体制の維持・確保

 中山間・人口減少地域を含め全ての地域・全ての世代の患者が、適切に医療を受けながら生活し、医療従事者も持続可能な働き方を確保できる医療提供体制を構築していくことを目指す。

 そのため、2040年頃を見据え、新たな地域医療構想において、入院医療だけではなく外来・在宅医療、介護との連携等を対象範囲に追加し、中山間・人口減少地域においても、地域の実情に応じた持続可能な医療提供体制を構築するとともに、医師偏在対策として、医師不足地域への支援策を強化する。あわせて、臨床実習に専念できる環境の整備や、大学・大学病院での医学教育や卒後の研修など医師養成過程を通じ総合的な診療能力を有する人材養成を促進する。また、中山間・人口減少地域における移動時間や担い手不足等の課題を踏まえ、医療MaaS、郵便局等を活用したオンライン診療を始めとして、患者が看護師等といる場合のオンライン診療(D to P with N)の積極的な活用を含めたオンライン診療や訪問看護の推進を図るとともに、妊娠期から産後における健診・分べん、へき地医療等のアクセス確保策に取り組む。

 また、全国規模で実施している医療DX等についても、地域において実施可能な体制構築を進める。さらに、地域の特性に応じた移植医療体制の構築を進める。

 iii.地域の介護・福祉サービス等の維持・確保

 人口が減少する地域の実情に応じた効果的・効率的なサービス提供体制の構築に向け、中山間・人口減少地域において、介護・福祉サービス提供体制の維持・確保をするために、人員配置基準等の弾力化や介護報酬の中で包括的な評価の仕組みを設けるなどの柔軟な対応を検討する。あわせて、特別養護老人ホーム等が小規模事業所と連携して地域における介護サービスを維持・確保すること等、複数事業者の連携・協働化を推進する。

また、中山間・人口減少地域においては、こどもから高齢者まで、年齢や障害の有無にかかわらず、介護予防を主軸とした多機能なサポート拠点の整備が重要である。地域共生社会の構築にも結び付く、こうした多機能の拠点の整備の推進について検討を進め、必要な措置を講ずる。

 iv.若者・子育て世帯に寄り添った結婚、妊娠・出産の希望をかなえる支援

 こども・若者が様々な事業や審議会等へ参画し、その意見が地域のまちづくりに反映されるよう好事例の普遍化に取り組むとともに、地方公共団体や民間事業者等と連携し、若者が結婚、妊娠・出産、子育てを含むライフデザイン(将来設計)を描く機会を提供する。

 また、地域全体で子育て世帯に選ばれる地方を構築する従来の子育て支援に加え、周産期から産後における健診・分べん等のアクセス確保、保育機能を中心とした総合拠点の整備やこどもの居場所づくり、悩みを抱えるこどもの見守りに取り組む。あわせて、地域コミュニティの希薄化や児童福祉・こども若者支援人材不足への対応、里親、社会的養護経験者、ひとり親、医療的ケア児など多様なニーズに即した地域の創意工夫を活用したサービスの提供を図る。

 ⑦将来を考えたまちづくり

 i.全世代・全員活躍型「生涯活躍のまち」(日本版CCRC)2.0の展開

 誰もが安心して暮らせる地域コミュニティと日常生活サービスを維持するため、「生涯活躍のまち」(日本版CCRC*38*)を進化させる。

 このため、小規模であっても年齢や障害の有無を問わず様々な人々が集い、それぞれが持つ能力を希望に応じて発揮し、生きがいを持って暮らすことができる場(小規模・地域共生ホーム型CCRC)の整備を進める。

 具体的には、老朽化した特別養護老人ホーム・老健施設等や病床削減に伴う医療機関の一部などを転換・活用し、シェアハウスやグループホーム等の居住機能と地域交流の機能を備えた施設の整備を支援する。

 さらには、これらの施設を中心とした農業、教育、スポーツなど地域のまちづくりと連携した多様な取組を支援する。地域の特性に合わせた導入の拡大のため、省庁横断的な「「生涯活躍のまち」(日本版CCRC)2.0検討チーム」を立ち上げ、関係府省庁が連携して制度・運用の見直しや先進事例等の周知等を行い、誰もが居場所と役割を持つ全世代・全員活躍型の「ごちゃまぜ」のコミュニティづくりを実現する。

【当面の目標:3年後に、全国で100か所小規模・地域共生ホーム型CCRCの展開を目指す】

 ii.農山漁村における官民共創の促進

 地方創生2.0を推進し、「おいしく豊かで楽しい」農山漁村を実現するために策定した「地方みらい共創戦略」に基づき、官民共創による農山漁村に係る課題解決を図るため、産官学金労言士等が集まる「「農山漁村」経済・生活環境創生プラットフォーム」を立ち上げ、様々な関係者とのつながりを創出する場として活用するとともに、農山漁村と都市・地域企業等とのマッチング、事例の収集、手引の作成、情報発信、好事例の普遍化、農山漁村の課題解決に貢献する企業の証明・表彰等を行う。また、農山漁村振興交付金の運用改善や、地域金融機関等の中間支援事業者と連携した案件形成を促進する。

 iii.地域生活圏の形成

 日常の暮らしに必要なサービスが持続的に提供されるため、日常の生活や経済の実態に即した圏域に着眼した「地域生活圏」を中心に、地方創生に資するファンド等の活用による民間投資の呼び込みを含めた資金調達支援や地域における信用・信頼付与など地域課題解決に取り組む民間事業者*39*の活動を支援するための新たな制度の構築に取り組む。

 iv.地域の個性をいかした地方都市再生

 地域に人や投資を呼び込む域内の磁力と域外から稼ぐ力を強化し、誇りや愛着を持てる個性ある持続可能な地方の都市再生を推進するため、まちの顔にふさわしい民間都市開発プロジェクトの促進や、歴史まちづくりの裾野の拡大・加速、地域資源の保全・活用、公共空間等の更なる利活用による居心地が良く歩きたくなる空間の形成、多様な主体の参画によるエリアマネジメントなどを図るための制度改正や支援策の充実により、中心市街地を含め、地域の核となるまちを育てていく。

 v.民主導でハード整備からソフト運営まで担う新しいタイプの企業城下町、人を惹(ひ)き付ける質の高いまちづくりの推進

 意欲と能力のある「民」の力をいかす観点から、まちづくりに関するビジョンを官民で共有し、地域の中核となる企業経営者や官民共創の「まちづくり組織」が、公共的な役割も担いながら、人を惹(ひ)き付ける質の高いまちづくりに取り組むことが重要である。このため、新しい地方経済・生活環境創生本部(新地方創生本部)の下に、内閣総理大臣をトップとする会議体を立ち上げ、民主導の地方創生の取組を進めるために必要となる行政の対応(規制制度改革や支援)の在り方などについて検討を行う。こうした取組を通じて、地方創生に民間の資金とエネルギーを投じ、新たなまちづくりに取り組む企業経営者をロールモデルとして、全国各地でこうした取組を普遍化させていく。

【当面の目標:本年6月中に総理をトップとする会議を新地方創生本部の下に創設】

 vi.人口減少を踏まえたコンパクト・プラス・ネットワークの深化・発展による都市の持続性の確保

 人口減少、少子高齢化が深刻化する中で、利便性の高い楽しく暮らせる持続的なまちにするため、生活サービス機能や居住の誘導、適切な土地利用の促進、公共交通ネットワークの形成によるコンパクト・プラス・ネットワークを深化・発展させる。

 具体的には、まちなかに業務機能(オフィス・研究施設等)を始めとした様々な機能を集積させることにより「稼ぐ力」、「イノベーション創発」、「地域の活力・にぎわい」等の創出を図るとともに、市町村域を越えた広域連携を推進することにより広域的な都市圏のコンパクト化に取り組む。

 あわせて、持続可能な都市構造の実現のため、国において、都市の基礎的なデータや評価指標の整備・提供、都市計画制度を含めた見直し方策の提案等、地方公共団体がまちづくりの適切な評価・見直しを行う環境を整備する。

 これらにより、「密度の経済」の発揮を通じた都市の持続性確保の実効性を向上させる。

 くわえて、地域における持続可能な行政サービスの提供に向けた課題に対応するため、地方公共団体間の連携などの取組を進め、その中で、一定の圏域人口を有し、活力ある社会経済を維持するための拠点を形成する連携中枢都市圏*40*などの枠組みも活用し、広域的な公共施設の集約化・複合化等や事務の共同処理等のハード・ソフト両面の取組を進める。

 vii.地域に根ざす国公有財産の戦略的マネジメントによるエリア価値向上

 まちなかにある国公有財産を戦略的にマネジメントすることにより、エリア価値を向上させる。

 具体的には、庁舎等の国有財産について、ハザードエリアや都市計画情報等を踏まえ、コンパクト・プラス・ネットワークの取組とも連携しつつ、国施設の再編等により、「まちなか拠点合同庁舎」等の地域防災にも資する拠点づくりを進める。また、各都道府県に所在する財務局等が地方公共団体とも連携し、交通、保育、福祉等のサービス提供事業者等への使用許可等により、地域社会への開放を進める。さらに、地方公共団体の公有財産について、複数の遊休地を有機的に連携させ、地域のステークホルダーと活用策を検討できるよう、LABV*41*等の新たなPPP手法の活用を促す。

 ⑧災害から地方を守るための国を挙げた防災力強化

 i.避難所の生活環境の抜本的改善を始めとした地域の防災力強化

 トイレやベッド等の整備等、スフィア基準を満たすよう、避難所の生活環境の抜本的な改善を支援する。また、災害時に活用可能なキッチンカーやトレーラーハウス等に係る登録制度の運用により、発災時における迅速な支援を可能とする。さらに、NPOや民間企業等の被災者支援活動への参画を促すための民間団体登録制度の構築等の環境整備や地域の防災拠点形成を推進する。

 ii.ソフト・ハードを組み合わせた地域防災力の強化

 ソフト・ハードを組み合わせた総合的な事前防災を推進する。具体的には、災害に強いまちづくりや密集市街地の改善、流域治水の推進のほか、自衛隊員や消防職団員、大工等の担い手の確保や建設業者の災害即応力向上といった人材面の対応、気象情報の高度化、気象防災アドバイザーの活用等きめ細かな解説による地方公共団体等の防災対応支援、災害時の支援ネットワークの構築と被災地における迅速な救助・救援活動を可能にするための空港・港湾の広域防災拠点化、災害廃棄物の適正かつ迅速・円滑な処理のための廃棄物処理システムの強靱化等を進める。

 iii.災害対応のデジタル化・被災者支援業務の高度化

 デジタル化を通じた、防災支援業務の効率化や一人一人の状況に応じた被災者支援の充実を図る。具体的には、避難所受付や被災者向け各種行政サービス等へのマイナンバーカードの利活用を広げるとともに、避難所運営システムの地方公共団体への普及促進や、市町村の区域を越えた被災者情報の共有を実現するための広域被災者データベースの活用などを進める。

 ⑨地域の防犯力強化と地方消費者行政の充実・強化

 安全・安心な社会の実現に向け、まちぐるみの防犯対策を促進するため、青色回転灯等装備車の整備、防犯カメラの設置、防犯ボランティア活動の拠点整備等の支援を進める。また、消費者問題が高度化・複雑化・広域化する中、被害の未然防止・救済を図るため、多様な主体の連携により地域に積極的に出向く見守り活動、人材確保・育成、広域連携等を進め、地方消費者行政を強化すべく、地方消費者行政強化交付金を見直す。

(2)稼ぐ力を高め、付加価値創出型の新しい地方経済の創生~地方イノベーション創生構想~

 ①施策の「新結合」:多様な地域資源の一体的な高付加価値化

多様な地域資源は、その分野を越えて組み合わせることで、そのポテンシャルを最大限に引き出すことができる。地域資源ごとの取組を強化するだけでなく、輸出・海外展開やインバウンド促進等に関係府省庁が連携して一体的な支援を行う。

 i.地域を支える企業の輸出・海外展開支援を通じた高付加価値化

 中堅・中小企業等の輸出額・現地法人売上高35.5兆円を目指し、商社やメーカー出身の専門家による販路開拓支援や越境EC(電子商取引)等を活用した輸出先の多角化など、全都道府県に支援拠点を持つ独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)を始めとする関係機関が連携し、「新規輸出1万者支援プログラム」を更に充実させる。さらに、地域産品等の地産外商・輸出拡大に向け、地域商社等がお互いの強みを補完する、民間の輸出支援コンソーシアムを新たに構築する。地域産品の一体的なプロモーションや、地産外商のポテンシャルの高い地域資源のロングリスト化や輸出支援業者とのマッチング等、「稼げる」地方経済の実現に向けた様々な取組を行う。

【当面の目標:新規輸出1万者】

 ii.観光・インバウンドの地方誘客の促進を通じた高付加価値化

 2030年訪日外国人旅行者数6,000万人・消費額15兆円を目指し、インバウンドの地方誘客を促進するため、「多様な地域資源」をいかした観光コンテンツ造成や観光客向けの移動手段などの受入環境整備等に取り組む地域等を支援し、観光地の高付加価値化を進める。

また、観光データの収集・分析・活用等に取り組む地域等を専門家の派遣等を通じて支援する。

【当面の目標:2030年訪日外国人旅行者数6,000万人・消費額15兆円】

 iii.産業集積の形成支援を通じた高付加価値化

 地域を主体にした戦略的な産業振興を一層後押しするため、地方公共団体による産業振興計画の策定を促し、地域未来投資促進税制における地域経済の成長発展に特に資する産業分野に対する重点措置等を通じて、地域の特性をいかした成長産業の産業集積を一体的に促進する。

 iv.地域資源の高付加価値化の取組の強化

 地域には、以下に掲げるような付加価値を生み得る様々な地域資源が存在する。これらの地域資源を最大限活用する観点から、地域資源ごとの高付加価値化の取組を強化するとともに、施策間連携及び地域間連携により更なる高付加価値化を図る。

 (農林水産物・食品)

 我が国の食料安全保障の観点も踏まえつつ、近年増加傾向にある農林水産物・食品の輸出やインバウンドに係る食関連消費額を更に拡大させる。そのため、観光事業者等とも連携しつつ、地域の特色ある農林水産物・食品など地域資源を活用した輸出拡大の加速化、食品産業の海外展開、農泊を始めとした里業、森業、海業等の取組へのインバウンド需要の取り込みを図る。また、地方経済の活性化のため、地方の食品産業と大学・スタートアップ企業の連携で生まれるフードテックビジネスや農林水産物の高付加価値化に向けた環境負荷低減の取組の「見える化」を推進する。さらに、多様な主体が参画する「「農山漁村」経済・生活環境創生プラットフォーム」等を通じて、農外企業との連携を促進する。

 (酒類)

 中小・小規模事業者が大半を占める酒類事業者の経営基盤の強化を図るべく、ブランド化・高付加価値化等による輸出拡大やインバウンドへの魅力訴求等による関連消費の拡大に係る取組を推進するとともに、原料の安定的な確保を図るための支援等を講ずる。

 酒蔵で修行を積んだ若者が酒蔵を引き継いで新たに酒造りを始めている例がみられるが、個別の少数の事例に留まっている。こうした中で、「伝統的酒造り」を次世代に継承していくため、2025年度に実施する予定の調査事業の結果も踏まえ、関係団体と連携して、意欲と能力のある者により酒造りがはじめられる取組として、まずは新たに酒蔵の事業承継を支援する事業に取り組み、国税庁が進捗をフォローアップしていくことを検討する。

 (地場産業・伝統工芸品)

 古くから地域に根ざしている地場産業を持続的に成長させていくため、その歴史や技術の継承と併せて商品価値を高めていく。そのため、国内デザイナーと連携したブランド化・高付加価値化や、外需獲得等に向けた海外企業が求める環境等への配慮に関する国際認証取得支援に加え、地域の人材の地元定着やインバウンド需要の獲得に向けたオープンファクトリーといった、地域の実情に応じた取組を新たに推進する。特に、伝統的工芸品の海外展開等の取組を更に後押しするため、製造協同組合等の取組及び民間団体の産地横断的事業への支援を行う。

 (文化・芸術)

 各地の文化資源(文化財や伝統行事、アート等)をいかし、インバウンドの呼び込み等を更に進めていくため、文化資源の発掘と磨き上げ、活用を行う「日本博」を、人材育成を含む一体的な伴走支援による、地域に根ざした文化観光コンテンツの創出に重点化する。また、文化庁と観光庁の連携の下で、文化資源の体験・体感による高度観光拠点の整備・充実を図る。

 (スポーツ)

 スポーツが持つ、地域に楽しみや交流拡大、経済活性化をもたらす等の地方創生への高いポテンシャルを発揮させるため、スポーツを活用して地方創生に取り組む地域を重点的に後押しするとともに、好事例の普遍化を図る。具体的には、スポーツコンプレックスやスポーツホスピタリティ、スポーツツーリズムの推進や地域スポーツコミッションの質の向上を始め、地域に応じた伴走支援や、関係府省庁連携によるハード・ソフト・インフラの一体的支援、スポーツ大会の開催支援などスポーツを活用したまちづくり・観光との連携の充実、スポーツリーグ・クラブの海外ファン獲得支援等に向けた取組の強化を行う。

【当面の目標:2026年までにスポーツツーリズム関連消費額3,800億円】

 (コンテンツ)

 マンガ、アニメ、ゲーム、映画等のコンテンツが有する、制作拠点による効果、作品の聖地化による効果、関連イベント開催による効果等の複合的な地方創生の力の発揮に向け、アニメツーリズムやロケ誘致、博物館・美術館等の拠点化、地域発のコンテンツ制作・関連商品開発やコンテンツの魅力をいかした高付加価値を生み出す拠点づくりを、「コンテンツと地方創生の好循環プラン*42*」に基づき、コンテンツ地方創生拠点として選定するなど関係府省庁、地方公共団体及び関係経済界が連携して推進する。

 (サイクルツーリズムの推進等による自転車の活用の推進)

 環境にやさしい交通手段であり、災害時の移動・輸送や国民の健康の増進、交通の混雑の緩和など多様な意義を持つ自転車の活用について、サイクルツーリズムの推進により、地域資源を活用した持続可能な観光地域づくりに貢献するとともに、安全で快適な自転車通行空間の整備や、自転車の公共交通連携等を通じた地域の足の確保により、安心して暮らせる生活環境を創出する。

 (豊かな自然環境・自然景観)

 ネイチャーポジティブ*43*の取組を進めるため、自然共生サイトや里海づくり等による自然資源の価値向上や、有機農業など環境と調和した農林水産業による付加価値創出、グリーンインフラの活用促進等の取組を通じて、地域の自然資源の豊かさと地域の価値を相互に高め合う「自然資本を核としたネイチャーポジティブな地域づくり」を、関係府省庁、地方公共団体、民間企業等のネットワークを構築し、分野間の連携を図りながら総合的に進めていく。

 国立公園等では、利用拠点を対象に、地域主体で多様な関係者の連携の下、滞在体験の魅力向上に資するソフト・ハード両面の取組(景観改善、宿泊施設等の上質化、多言語対応、アクティビティ創出、人材育成、受益者負担等)を総合的に実施し、世界遺産やジオパーク等の地域資源とも連携しながら、「保護と利用の好循環」を創出する。

【当面の目標:早期に自然共生サイトを500以上認定することを目指す】

 (地域の再生可能エネルギー)

 再生可能エネルギーの地産地消など地域脱炭素の推進による自立的な地域経済を実現するため、脱炭素先行地域や重点対策加速化事業等を通じて地域裨益型の再生可能エネルギー等の導入を複数年度・複合的に支援し、得られたノウハウの発信や人的支援等により先行モデルの普遍化につなげる。あわせて、熱の脱炭素化や水素・ペロブスカイト太陽電池*44*等の新技術を地域に実装する「地域GXイノベーションモデル」の構築の検討、適切な営農を確保しつつ農業者の所得向上にも資する営農型太陽光発電や炭素除去を含むカーボン・クレジットの促進、地域エネルギー会社による再生可能エネルギーの地産地消・地域課題解決の取組(日本版シュタットベルケ)を推進する。また、商用電動車の劣化バッテリーを再利用した再生可能エネルギー地産地消モデルを構築する。

【当面の目標:2030年度までに脱炭素先行地域を少なくとも100地域で実現し、先行的な取組を普遍化】

 (循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行(廃棄物等の活用))

 循環経済への移行により、廃棄物等を地域資源として活用し付加価値創出等を進めるため、先進技術の実装支援等により広域的な廃棄物等の回収や再生材の安定供給を行う新たな資源循環ネットワーク・拠点を構築する。さらに、「資源循環自治体フォーラム」の創設による地方公共団体・企業・スタートアップ等のマッチングや、これと連携した人材育成、技術実証・設備投資支援等を通じた地方のビジネス創出を進める。また、農山漁村のバイオマス資源や里山広葉樹材の活用、資源を可能な限り活用するまちづくり・インフラ整備等も進め、関係府省庁の施策を統合したパッケージにより、地域の資源循環の実現を総合的に推進する。

【当面の目標:先進技術の実装等の高度な資源循環事業を3年で100件以上認定】

 ②人材の「新結合」:多様な主体の連携による地域の支援体制の構築とイノベーティブな人材の呼び込み

 地方公共団体や地域企業等が、課題に応じた適切かつ高度な支援サービスにアクセスできるよう、地域の多様な主体の力を掛け合わせ補い合うことで、高度な支援体制を構築するとともに、全国の各支援機関が互いに連携できるよう、支援機関のネットワークの構築を進める。

 あわせて、地方に、新たなイノベーション・エコシステムや産業集積を生み出していくため、エコシステム等形成の中核となるイノベーション拠点の整備を、まちづくりや生活環境の改善と併せて積極的に行うことで、地方に熱意あるイノベーティブな人材を呼び込む。

 i.地域経済の更なる成長に向けた地域金融力の強化

 地域経済の更なる成長に向け、地域金融が地域の多様なステークホルダーと連携しつつ、融資にとどまらない多様な金融仲介機能を発揮することが重要であり、今後、地方創生2.0に向けた地域金融力を強化するため、地域の事業者に対する経営改善・事業再生等の支援や事業性融資の推進を含めた地域金融機関による地方創生の取組の後押しとともに地域金融機関自身の経営基盤強化(資本参加先の適切な経営管理と業務運営の確保策を含む資本参加制度や資金交付制度の延長・拡充等の検討)を柱とする地域金融力強化プランを策定し、推進する。あわせて、金融・資産運用特区の活用や周知の強化も通じた内外からの資金の呼び込みを図るとともに、地方公共団体、金融機関、政府系金融機関、企業等の連携を通じたエコシステム形成を促進する。

【当面の目標:2026年通常国会へ関連法案の提出を目指す】

 ii.地域経済をけん引する中堅・中小企業に対する地域の支援体制の構築

地域企業が、中小企業から中堅企業、更にその先へとシームレスに成長していく環境を整備していくため、成長志向の中堅・中小企業に対する設備投資やМ&Aに関する措置*45*を通じて企業の成長投資を後押しする。くわえて、高度化する経営課題への対応として、地方ブロックごとの広域的な支援の枠組みを通じて、地産外商に積極的に取り組む企業を重点支援企業として選定し、各省庁の地方支分部局や民間支援機関によるプッシュ型の伴走支援を行うなど、地方での企業支援体制を強化する。

【当面の目標:中堅企業の付加価値増加率実質4%/年(経済成長目標の4倍)以上を目指す】

 iii.地方の国際的取組に係る支援体制の構築

 外交面で国が持つ力を地方の国際展開にいかす取組を強化する。このため、国内においては飯倉公館や駐日外交団とのネットワーク、独立行政法人国際協力機構(JICA)の国内拠点等、海外においては在外公館*46*やジャパン・ハウス、国際交流基金の海外拠点、各国・地域の官民ネットワーク*47*等の国の強みを活用し、各地方公共団体が行う海外からの観光や企業・人材・投資等の誘致、地場産品や産業の海外展開、地域の魅力や文化の海外発信、姉妹都市・友好都市提携などの国際的な取組の効果的な実施に向け、これまで国際的取組が進んでこなかった地方公共団体も含め、連携や協力を行う。

 iv.対内直接投資に係る支援体制の構築

 海外からの投資を地方に呼び込むため、JETROにおける従来の外国企業向けワンストップ対応体制に加え、国内外の関係者(地方公共団体、ベンチャーキャピタル、大学・研究機関、アクセラレーター*48*、経済団体、金融機関等)同士のマッチング支援を強化するとともに、地方公共団体の対内直接投資誘致戦略の策定・ブラッシュアップを支援する。

 v.知的財産の戦略的活用に向けた地域の支援体制の構築

 革新的な製品・サービスを、地域での付加価値創出につなげる重要な経営資源である知的財産が、地域企業においても活用されるよう、独立行政法人工業所有権情報・研修館の機能の地方展開等に取り組む。また、同法人、地方公共団体、商工会議所、地域金融機関、弁理士会等関係者が連携して「知財経営支援ネットワーク」の取組を更に進めるとともに、知財経営支援人材の育成を進める。また、特に農林水産分野では、優良品種等の知的財産の流出防止に向けた管理の徹底、権利化やGI*49*登録による差別化・ブランド化を推進するとともに、農業知財の専門家による伴走支援体制を整備する。

 vi.福島県浜通り地域等の産業発展

 福島イノベーション・コースト構想を核とした産業発展として、スタートアップや成長企業の立地と産業集積形成を促進する。このため、創造的復興の中核である福島国際研究教育機構(F‐REI)や福島ロボットテストフィールド等の拠点を有効活用しながら、各種支援を総動員するとともに、プッシュ型の伴走支援を継続的に実施する。

 vii.産官学共創に向けた拠点の形成

 地方におけるオープンイノベーションの促進や産官学連携の更なる強化のため、従来のイノベーション拠点整備の取組*50*を強化する。具体的には、地方大学や国立研究開発法人等の産官学の連携拠点・地方創生型共創拠点を強化するとともに、地方大学、大学共同利用機関*51*等に自動化・自律化・遠隔化等の機能を有する先端研究設備等の共用拠点を整備しネットワークを構築する。また、これらを活用した産官学連携や技術実証を後押しするため、若手研究者が各地域で中心になり革新的・挑戦的な研究に取り組む共創の場のプログラムなどを推進する。

【当面の目標:地方における先端研究設備等の利用機会を3倍以上増加させることを目指す】

 viii.ディープテック分野を始めとしたスタートアップを生み出すエコシステムの形成

 地方において、ディープテック分野を始めとしたスタートアップを一層生み出していく環境を整備するため、スタートアップ・エコシステム拠点都市において、地域の産業や大学等の研究特性をいかした分野・領域の重点化、アントレプレナーシップ教育の充実、オープンイノベーションや公共調達の促進、核となる組織・人材の育成・確保等の取組を強化し、スタートアップの創出から創業後の成長までの一貫した支援を推進する。

【当面の目標:スタートアップ・エコシステム拠点都市を8都市から13都市へと拡大】

 ix.地方公共団体によるスタートアップからの調達促進

 地域課題の解決に資するスタートアップ企業の技術やノウハウを広く展開していくため、こうしたスタートアップのカタログ化や自治体ニーズとのマッチング・案件組成の支援、トライアル発注や随意契約の促進など契約の工夫、地域間の共同調達の円滑化に関するガイドの作成、知的財産の保護、インセンティブ措置の深掘り等、地方公共団体によるスタートアップからの調達を促進する多面的な取組を新たに実施する。

 ③技術の「新結合」:AI・デジタル技術等の組合せ

 AI・デジタル技術等の先端技術を始めとする多様な技術を、地域課題や現場ニーズに応じて効果的に組み合わせることで、新たなサービスや仕組みを創出する。

 i.生活必需品の物流へのドローンや自動配送ロボットの活用

 地方のラストワンマイル配送などの物流網を維持するため、リモート技術で遠隔監視・操作が可能なドローンや自動配送ロボットの社会実装を進める。ドローンについては、運航管理システム(UTM)を導入し、エリア単位でのレベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)や多数機同時運航の普及拡大に向けた取組を進める。また、自動配送ロボットについては、より配送能力の高い自動配送ロボットの地域実証を進めつつ、低速・小型の自動配送ロボットによる実装サービスの多地域展開を進める。

 ii.農林水産業の未来を創るスマート技術の開発・普及促進

 農林水産業の飛躍的な生産性の向上や環境負荷低減を実現するため、農地の大区画化、共同利用施設の再編・集約化、多収性・高温耐性等を備えた品種の開発・導入に加え、気象や市況情報、生育予測プログラム等の多様なAPIを活用したアプリやサービスの開発や、衛星情報等の宇宙技術やAI技術を利用した高度な管理や出荷手法等の導入、生産者の労働負担を軽減するリモート監視やリモート操作を活用した労働力の外部化・無人化等、新たに策定した「省力化投資促進プラン」に基づき、徹底的な効率化・省力化に向けたスマート農林水産業技術の開発及び普及を加速化する。あわせて、こうした革新的な技術が効果的に活用されるよう、自動収穫機で収穫しやすい品種への転換を始めとする新たな生産方式の導入推進やスマート農業教育の充実などの取組を進める。将来的には、農業者の指示でAIを搭載したロボット農機が様々な作業を行う姿を実現する。

【当面の目標:2030年までにスマート農業技術を活用した面積を50%にすることを目指す】

 ④「新結合」を全国各地で生み出す取組

 内閣官房を中心とする推進体制の下、関係府省庁が連携し、意欲ある地方公共団体をアイデア段階から支援することや、官民プラットフォーム等を通じた地域の地方公共団体、民間事業者や大学・高等専門学校、研究機関等の連携・マッチング支援など、新結合を面的に広げる取組を進める。また、地方の関係者に使いやすい、効果的な施策展開に向け、地方イノベーション創生構想関連施策を取りまとめ、分かりやすく一覧化する、新結合が期待される地域を地図上に示すなど、施策や地域の可視化といった取組を進める。

【当面の目標:本年7月に関係府省庁による「新結合」の支援体制を立上げ】

(3)人や企業の地方分散~産官学の地方移転、都市と地方の交流等による創生~

 ①政府関係機関の地方移転

 政府関係機関の地方移転については、2016年に決定した政府関係機関移転基本方針*52*に基づき、これまで文化庁を始めとした中央省庁7機関、研究・研修機関23機関50件において移転取組が実施されてきた。

 これまでの取組では、地方移転による地域ニーズの把握機会の増加、地域との連携による新たな事業展開の進展や勤務環境の改善による職員のモチベーション向上などの効果が認められた一方で、国会対応・企画立案や人事・人材確保、危機管理等の様々な課題が確認されている。

 こうした検証や、DXの進展、リダンダンシーの確保の必要性などこの10年間の変化等を踏まえ、政府関係機関の地方移転に向けた取組を着実に進める。その際、機関の全面的な移転だけでなく、業務形態及び地域の実情に応じ、職員が地方で一定期間業務を行うサテライト方式や部局単位での移転など様々な類型を提示した上で、地方からの提案を募集する。

 国においても、地方創生に寄与する政策実行機能を効果的に向上させる観点や、行政機能等を十全に発揮できる政府関係機関の国内最適立地を実現する観点から主体的に検討を進め、地方からの提案を踏まえて、国・地方双方にとって望ましい効果を生み出せるよう、順次結論を出す。

 なお、2026年度中に設置することとされている防災庁については、地方の防災拠点についても、検討を進める。

【当面の目標:移転の類型を提示し、地方からの提案を募集する。国でも主体的に検討し、順次結論を出す】

 ②本社機能の地方分散

 地方での雇用や、地方への新たな人や資金の流れを創出するため、域外からの本社機能の移転・拡充を促す地方拠点強化税制について、制度の活用促進などによる環境整備や、制度を補完する地方公共団体等の好事例の普遍化と併せ、活用実績等の分析を踏まえた制度の見直しを検討する。

【当面の目標:2027年度までの3年間で本社機能の移転・拡充に伴う従業員増加数を約1万人とすることを目指す】

 ③地方における高等教育の充実

 地域の産学官連携によって、若者にとって魅力的な地方大学の創出、デジタル分野を含む専門人材の育成等を促進するとともに、地方大学・産業創生法*53*に基づく東京23区内の収容定員の増加抑制*54*について、同法附則に基づき、2027年度末までに検討を行い、必要な措置を講ずる。

 あわせて、国内留学の促進等、都市・地方間を含む大学間連携の強化を進める。また、各地域の高等教育へのアクセス確保に向け、大学等を核とした地域の産学官金等の連携基盤を整備するほか、各地域の実情に応じたエッセンシャルワーカーや地域経済の担い手となる人材の輩出等を担う地方私立大学の取組等に応じた重点的な支援等を始め地域に不可欠な人材育成機能の強化や、高等専門学校の地域ニーズに即した改組・新設等への支援を推進する。

 ④関係人口の量的拡大・質的向上

 人口が減少しても多様な人材同士が影響し合い地域の活力を高める姿を目指すため、関係人口の量的拡大・質的向上(関わりの深化)を図る。具体的には、関係人口を可視化する仕組みを創設する。また、地域との関わり方等に応じて関係人口の類型化を行い、それぞれの類型に応じた施策を展開し、これらを一体的に地方公共団体や経済界等へ情報提供を行うとともに、関係人口に対する行政サービスの在り方等、制度面についても検討を行い、必要な措置を講じていく。

 各地方公共団体は、関係人口と自らの地域との関わり方や、関係人口や地域に対する具体的な支援の在り方などを検討し、地域住民や関係人口と共に、新たな地方創生を進める。

 i.関係人口を可視化する仕組み(ふるさと住民登録制度)の創設

 先行する地方公共団体の事例等を参考にしつつ、住所地以外の地域に継続的に関わる者を登録することで関係人口の規模や地域との関係性などを可視化し、地域の担い手確保や地域経済の活性化等につなげる仕組みを創設する。できるだけ多くの人が地域との関わりを深められるよう、誰もがアプリで簡単・簡便に登録でき、また地方公共団体の既存の取組を緩やかに包含できるような柔軟かつ間口の広い仕組みとし、関係府省庁が連携してプラットフォームとなるシステム構築を進める。

【当面の目標:関係人口を可視化。関係施策と連携し、今後10年間で実人数1,000万人、延べ人数1億人を目指す】

 ii.関係人口の量的拡大・質的向上に向けた環境整備等

 地方公共団体等が関係人口に係る取組を推進しやすい環境を整備するため、二地域居住等を含む地域と関係人口の関わり方を例示した地方公共団体向け手引の作成、新たな取組を生み出す場づくり等のための官民連携プラットフォームの運営、ふるさと納税の活用等を行う。また、関係人口と地域をマッチングする中間支援組織を育成しつつ、こどもの農山漁村体験の推進や棚田の保全・振興を通じた地域外の住民の参画など様々なコンテンツを活用し新しい人材の組合せを促す個別の取組への支援に取り組む。

 iii.若者や女性の地域交流の促進

 若者の移住や関係人口としての地域との関わりを創出・拡大し、地方への人の流れを年代の切れ目なく加速させるため、大学等と地域が連携した、学生のフィールドワークの受入れ等による、地域課題解決プロジェクト「ふるさとミライカレッジ」を推進する。また、小中高生を対象とし、比較的長期の受入れを行う「地域留学」について、中間支援組織なども活用しながら推進する。さらに、都市部の若者等が地域で働きながら地域の暮らしを体験する「ふるさとワーキングホリデー」や小中高生の短期の受入れを行う「子ども農山漁村交流プロジェクト」を併せて推進する。

 iv.二地域居住等の推進

 関係人口の中でも特に地域への関与が強い類型として、主な生活拠点とは別の特定の地域に生活拠点を設ける二地域居住等を社会政策・国土政策としての観点からも促進し、都市から地方へ、また地方間も含めた人流拡大、地域の担い手確保や消費等の需要創出、新たなビジネスや雇用の創出につなげる。

 このため、ふるさと住民登録制度や産業振興の取組など関係府省庁の施策と連携しながら、多様なライフスタイルを実現し地域社会をより発展させる制度面の検討を行いつつ、モデルとなる取組の創出等二地域居住の普及に取り組む。また、スモールコンセッション等空き家を活用した二地域居住者向けの住居の提供や、そうした住居の宿泊施設としての活用に加え、二地域居住者と地域をつなぐコーディネーターの育成・確保等を図る。あわせて、古民家の再生を図るため、建築基準法*55*による規制の弾力運用等の総合的な取組により、再生に係る案件形成や好事例の普遍化等を図るとともに、地域の建材利用の促進による地域での住まいの確保と地域経済の発展の実現等を進める。

 v.都市部人材の地方での活用促進

 自らの能力やスキルを活用して地域貢献を行う意欲のある都市部の経営人材、輸出等の知見を有する人材、デジタル人材等の地域企業での活躍を促すため、REVICareer*56*(レビキャリ)やプロフェッショナル人材事業(プロ人事業)等において、登録人材の増加に向けた大企業等への働き掛けを強化するとともに、民間データベースとの双方向の活用の在り方を含めた事業間連携を進める。また、副業・兼業人材の活用促進を図るセミナー等の開催やインセンティブ措置を講ずるなど、副業・兼業による専門人材の活用促進に向けた重点措置を講ずる。

 くわえて、地域の企業や関係機関(地方公共団体・経営支援機関・教育機関等)が一体となって人材の確保・育成・定着を行う「地域の人事部」の取組モデルを普遍化し、全国に展開する。

【当面の目標:2027年度までの3年間でレビキャリの大企業人材の登録を1万人、プロ人事業等における副業・兼業による専門人材の活用を1万人とすることを目指す】

 vi.地域おこし協力隊等の更なる拡充

 地方創生の大きな力となっている地域おこし協力隊、地域活性化起業人等について、更なる拡充を図る。具体的には、任期終了後も全国各地で活動を継続している地域おこし協力隊経験者によるネットワークを始め、JICA海外協力隊や集落支援員、中間支援組織等と連携し、新たな担い手の確保や隊員の定住・定着支援を強力に推進する。また、地域活性化起業人の副業人材やシニア層への展開、地方公共団体と企業・個人のマッチング支援を図る。さらに、官民の多様な主体と連携し、地方に拠点を有する人材に対し都市部における活動の場を提供するなど、移住・交流支援拠点の更なる活用を図る。

 vii.地方移住の更なる促進

 東京一極集中の是正に向け、地方創生移住支援事業について、現行の中小企業等への就職に加え、地域社会を下支えするために必要となる人材を確保するため、農林水産省や厚生労働省等の関係省庁と連携し、支援の対象業種に地域の基軸産業である農林水産業を始め、自営業、医療・福祉等のエッセンシャルワーカーを位置付ける。また、若者の地方への流れを強めるため、大学生・大学院生等の地方就職への支援等について関係府省庁が連携して取り組むなど、社会的なニーズが強まっている課題を踏まえ、移住支援を強化する。

【当面の目標:若者や、農林水産業、エッセンシャルワーカーへの支援を強化】

 viii.地域における事業承継の担い手の確保

 地域が有する優れた技術や人材の喪失を防ぎ、地域の経済基盤を維持するため、地域において円滑な事業承継ができる環境づくりに関係者が一体的に取り組む。そのため、商工団体や地域金融機関等による事業承継ネットワークを通じた地域の事業承継支援ニーズの掘り起こし、各都道府県に設置した事業承継・引継ぎ支援センターの体制強化に加え、市町村による人材マッチング支援の取組を後押しする。また、事業承継税制を含め、事業承継に係る政策の在り方について検討を深めるとともに、地域の企業や関係機関が一体となって後継者人材の確保・育成等を行う取組を重点的に支援する。

(4)新時代のインフラ整備とAI・デジタルなどの新技術の徹底活用

 成長分野での大規模投資プロジェクトは、地域経済に様々な波及効果を創出する。このため、経済安全保障等の観点も踏まえ、半導体部素材や蓄電池、データセンター等、全国各地で地域主体の大規模な投資の地方分散を促進し、関連産業の創出につなげる。これらも含め、地方経済の活性化のため、AI等のデジタル・新技術を徹底活用することなどにより、既存産業の高付加価値化を進め、新産業の創出を図る。

 ①GX・DX時代の新たな産業集積の形成に向けたインフラ整備

 i.ワット・ビット連携等の推進

 AI・デジタル技術の浸透に伴い重要性が増すデータセンターの地方分散を推進するため、電力と通信の効果的な連携(ワット・ビット連携)の下、オール光ネットワーク技術の実装を進めつつ、脱炭素電力が豊富な地域など電力インフラから見て望ましい地域や、大規模災害時のデジタルサービスの維持に資する地域へのデータセンターの誘導の観点も含め、光ファイバや5Gの全国展開とともに、電力と通信基盤を整合的・計画的に整備する。

 あわせて、海底ケーブルの地方分散、全国をカバーする衛星通信サービスの導入支援、拠点間で安全に情報共有できる量子暗号通信技術の開発・実装、公設光ファイバの円滑な民間移行を推進する。

【当面の目標:日本全国47都道府県で地域のニーズに即したDX化と地域に最適なAIサービスを享受できるよう、2030年代までにオール光ネットワークの全国的実装を進める】

 ii.GX産業立地の推進

 GX経済移行債による設備投資等の支援と国家戦略特区制度等を活用した規制・制度改革を一体で進め、新たな産業集積(GX戦略地域(仮称))を目指す。

 世界的に見ても基礎インフラが整う「貴重な固定資産」である日本のコンビナートを、例えば、スタートアップによる生産拡大の拠点として再生し、国内のみならず世界中のスタートアップが集まる新規産業創出の場として活用する。そのために、必要な規制・制度改革を進めつつ、新規事業創出のための新たな枠組みを検討する。

 さらに、スタートアップの製品やサービスの調達・事業化に向けた共同実証等を行うことを支援し、GX関連技術の早期の社会実装を強力に後押しする。

 これらを通して、世界からの投資資金を集めるとともに、AZEC*57*も活用してGXスタートアップの成長を後押しする世界のハブとなることを目指す。

 同時に、データセンターを含む電力多消費企業向けの「脱炭素型の新たな産業団地の整備」に向け、まずは、既存の電力インフラを前提として、一般送配電事業者に対し、早期に系統接続が可能なエリアを示すウェルカムゾーンマップの充実化を促し、データセンター等の立地誘導を図る。また、中長期的に大規模な電力多消費企業の集積地を選定するとともに、そうした地域において計画的・効率的な系統整備を行う仕組みの導入等、電力インフラと通信インフラの効果的な整備を進める(ワット・ビット連携)。こうした取組を通じて、AZECも念頭に、将来的には、我が国のデータセンターにより、アジアのデータ処理の需要を取り込み、アジアと日本の双方の成長に寄与するデータセンターの整備を目指す。

【当面の目標:大規模なデータセンターの適地やGXに不可欠な企業等を呼び込むための地域を5か所以上創出することを目指す】

 iii.GX・DX分野における大規模投資の促進や人材の育成・確保

 GX・DXを進める基盤である半導体・蓄電池等の分野は、関連産業の裾野も広く、広域的なエリアで大きな経済効果等を生んでいる。経済安全保障等の観点も踏まえ、こうした大規模投資を更に促進するとともに、既存産業の高付加価値化や関連産業を含めた新たな産業集積の形成を支えるため、地域の産官学が広域的に連携して行う関連人材育成・確保に向けたコンソーシアムの創設やイノベーション拠点整備、人材育成拠点の形成等を推進する。

【当面の目標:AI・半導体分野において今後10年間で50兆円を超える官民投資、GX分野では2032年度までの10年間に150兆円の官民投資を目指す】

 iv.産業用地・産業インフラの確保

 地域の産業用地・産業インフラを円滑に確保することを通じて、地方に効果的な投資が行われるよう、全国の産業用地情報を活用した産業用地マッチング事業を新たに創設し、既存の産業用地の利活用を促進するとともに、産業用地の計画的な整備を促進するため、関係法令の改正を含めた検討を行い、必要な措置を講ずる。また、GX・DXも踏まえた産業インフラへの支援を行う。

【当面の目標:2033年までに工業用地の1万ha程度の増加を目指す】

 v.ハイブリッドダムの推進等に併せた企業誘致の促進

 地域の再生可能エネルギーの活用や中山間地域の活性化のため、ダムの運用高度化やダムへの発電施設の設置等を行うハイブリッドダムの推進等により、水力発電の増強を図ることで、周辺への企業誘致に寄与する。

 ②デジタル・新技術の社会実装

 i.デジタルライフラインの整備

 地方における生活必需サービスの維持・継続に向け、地方において自動運転やドローン等のデジタル技術を活用したサービス展開が可能となるよう、自動運転サービス支援道、ドローン航路、インフラ管理DX等の早期実施プロジェクトの成果も踏まえ、ハード・ソフト・ルールの3つの側面からデジタルライフラインの全国展開を加速する。

【当面の目標:ドローン航路:全国の国管理の一級河川(1万km)、送電網上空(4万km)での整備を目指す自動運転サービス支援道:物流ニーズ等を踏まえ、東北から九州までをつなぐ幹線網の形成を図る】

 ii.新たなモビリティサービスの社会実装の実現

 新たなモビリティサービスの社会実装に向けたロードマップ*58*に基づき、満たされない移動需要の掘り起こしや、需給一体となったモビリティサービスの効率化に応える「交通商社機能*59*」の普及を進める。

 自動運転サービスの早期の社会実装に向け、具体的には、先行的事業化地域を設定し、関係府省庁の支援策を集中的に適用するとともに、安全・安心なサービス実現に向けたルール・体制の整備、道の駅等の地方創生拠点を活用した自動運転・観光・物流拠点化などを推進する。

 また、空飛ぶクルマの社会実装に向けた環境整備等を進める。さらに、小型無操縦者航空機の開発促進や、山間地や災害時の貨物輸送等での活用に向けて、必要な基準等の整備を進める。

 iii.電子渡航認証制度の導入による厳格・円滑な出入国審査の推進

 今後の更なるインバウンドの増加を踏まえ、厳格・円滑な出入国審査を実現するため、外国人からあらかじめ情報を取得して事前スクリーニングを行う電子渡航認証制度を導入するとともに、電子渡航認証を受けた外国人については、ウォークスルー型ゲート等を活用して出入国審査の円滑化を推進するなど、大都市圏の主要空港及びその他の空港におけるデジタル技術を活用した出入国審査の高度化を図る。

 iv.水道情報の福祉分野での活用や衛星データを活用した漏水検知

 検針訪問が不要な水道スマートメーターの導入促進を図り、リアルタイムの使用量データを活用した遠隔からの見守りサービスに取り組む。また、人工衛星からの電磁波の反射データをAIで解析し漏水可能性のある区域を検知する技術等の普及促進により、水道事業における維持管理の効率化を進める。

 ③デジタル技術の利活用に向けた環境整備

 i.地域におけるデジタル人材の育成・確保の推進

 特に地方において不可欠なデジタル人材の育成・確保に向け、関係府省庁が連携して総合的な対策に取り組む。具体的には、地域企業と協働した実践的DXスキルが習得できる場の提供や、大学や高等専門学校、高等学校などでの産業界等との連携強化、地方大学も含めたデジタル分野の学部再編等の支援、地方での職業訓練や能力開発におけるデジタル分野での重点化などに取り組む。また、地方独自の目線で独創的なアイデアや技術を持つ若手トップデジタル人材の輩出に向けたメンターによる育成を各地域で実施するほか、都市部等の人材と地域企業とのマッチングをサポートしているプロフェッショナル人材事業などによる副業・兼業によるデジタル人材の活用促進等を実施する。

 ii.地域におけるサイバーセキュリティ対策の促進

 DXが進展する中、地方でのサイバーセキュリティ対策も不可欠な状況となっている。このため、全国各地で実践的サイバー防御演習「CYDER」を実施し、地方においてもサイバー攻撃への対処能力をもつセキュリティ人材を育成するとともに、関係府省庁、業界団体や中小企業支援機関等が連携し、全国各地で共助的な活動体である「地域SECUNITY」の形成・活動を促進し、理解増進活動・施策広報という面的なアプローチを進める。また、都道府県警察において、重要インフラ事業者等との共同対処訓練やサイバーテロ対策協議会を通じた事業者間の情報共有を通じて官民一体の対処態勢の強化を推進する。

 iii.マイナンバーカードによる利便性の高い市民カードの実現と利活用促進

 マイナンバーカードを、地方におけるデジタル化の基盤とするため、住民の手続負担や利用における障壁を除去するとともに利活用促進を図る。具体的には、健康保険証や運転免許証など様々な機能のマイナンバーカードへの一体化を進めるとともに、地方公共団体における各種サービスのオンライン化・デジタル化、マイナポータルにおけるサービスの充実、本人認証機能の活用による民間ビジネスでの利活用シーン拡大を図る。

 iv.デジタル公共財の共同利用・共同調達の加速に向けた環境整備

 人口減少が進み、財政力の弱い地域にこそデジタル化の恩恵が行きわたるよう、デジタルを活用した地方創生を進める際に様々な地域で共通に必要となるデジタル公共財について、複数自治体における共同利用・共同調達の加速などを通じて、その廉価な普及を加速する。また、その導入を支援するに当たっては、新規のツールの開発ではなく、既にあるデジタル公共財を地域の実情に合わせて使いこなし、定着に重点を置いた支援を行う。また、デジタルマーケットプレイス*60*やデジタル地方創生サービスカタログ*61*等も活用し、デジタル公共財の理解促進に努め、その範囲の明確化に取り組むとともに、新技術の登場など市場の変化に応じて的確な範囲のバージョンアップを進めていく。

 v.デジタル行財政改革の推進による社会変革の実現

 教育、子育て、モビリティ、インフラ、医療・介護といった地域での豊かな生活、強い経済を支える基盤的分野について、データ利活用とそれにより可能となるAIの社会実装を促進するとともに、デジタル公共財を整備することを含め、サービスの利用者の視点でDXを推進する。このため、国・地方の統一的・標準的なデジタル基盤につながる見込みのある地方公共団体の先行的な取組等を支援することで、先行事例の創出を図るとともに、成功事例の普遍化を進めていく。あわせて、ブロックチェーンやNFT、DAO(分散型自律組織)等の新たなデジタル技術を用いることで、地域の魅力ある資源を、安全かつ効率的に海外を含む市場につなぐことを可能とし、質(価格)と量(販売量)の両面からポテンシャルを引き上げる。人口減少下においても地方の行政サービスを持続可能なものとするため、国・地方デジタル共通基盤の整備を推進する。

(5)広域リージョン連携

 ①都道府県域を超える広域リージョン連携の枠組みの創設

 複数都道府県の区域における地方公共団体と経済団体等の多様な主体による構成体が、複数のプロジェクトに連携して取り組むことを宣言する新たな広域リージョンの枠組み*62*を創設する。広域リージョンとして実施するプロジェクトに対しては、省庁横断的に支援を行い、成長やイノベーション創出のための取組を面的かつ分野横断的に広げる。

【当面の目標:先行して3か所の広域リージョンにおいてプロジェクトを開始し、全国展開を目指す】

 ②広域地方計画等に基づく「シームレスな拠点連結型国土*63*」の実現

 地元経済界などの民間主体と行政が有機的に連携し、各地域が有する文化・産業等の地域資源の強みを最大限いかす「シームレスな拠点連結型国土」の実現のため、広域リージョン連携の枠組みとも結合しながら、都道府県域を超える広域圏内外の交流・連携を図るため広域地方計画の策定を進める。「地域生活圏」を中心とした全国各地の地域課題の解決を図る新たな枠組みとも連動しつつ、こうした広域地方計画等*64*に基づく、既存の圏域を超える広域的なプロジェクトをハード・ソフト両面からの新たな枠組みで一括支援する。

【当面の目標:広域地方計画:全国8つの広域圏で2025年度末頃の策定を目指す】

 ③広域連携でのインフラ管理の推進

 能登半島地震や埼玉県八潮市での道路陥没事故の被害等を踏まえ、業務共通化や情報整備・管理の標準化の推進等により、地方公共団体間の広域的な連携による効率的なインフラの維持管理・経営等*65*を目指す。

 また、技術系職員が限られる中でも、的確なインフラメンテナンスの確保を目指すため、広域・複数・多分野のインフラを群として捉え、効率的・効果的にマネジメントする「地域インフラ群再生戦略マネジメント」を推進するとともに、地域の将来像を踏まえて必要なインフラを広域的観点から判断し、集約再編を進める。

【当面の目標:広域連携によるインフラ管理を全国の地方公共団体に拡大する】

 ④基幹的な道路・新幹線等の幹線鉄道等の交通ネットワークの整備

他地域とのヒト・モノの交流を支え、地域のにぎわいを創出するため、基幹的な道路・交通ネットワークの整備を進める必要がある。このため、高規格道路、新幹線等の幹線鉄道ネットワーク、都市鉄道、港湾、空港等の物流・人流ネットワークの早期整備・活用を推進する。



{表は省略}

{*1* 平成26年法律第136号。}

{*2* 地域経済に関するビッグデータを地図上やグラフで可視化する地域経済分析システム。}
{*3* 2025年大阪・関西万博の開催を迎える中、1970年大阪万博に参画された堺屋太一氏の最後の著書「三度目の日本幕末、敗戦、平成を越えて」(祥伝社新書)を参考としている。}
{*4* 総務省「人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)」。}
{*5* 総務省「住民基本台帳人口移動報告2024年(令和6年)結果」(2025年1月31日)。}
{*6* 過去10年間の日本経済は、実質GDPは僅かに増加、労働生産性も僅かな伸びとなった。一方で、労働分配率に大きな変化は見られなかった中で、実質賃金は低下傾向にある(2000年を100とした実質賃金指数の推移は、2013年105.1、2018年102.1、2023年97.1となっている)。}
{*7* 男性のフルタイム労働者の賃金の中央値を100とした場合の、女性のフルタイム労働者の賃金の中央値について、OECD諸国平均値は、88.4であるところ、我が国は78.7と、OECD諸国の平均値を下回っている(内閣府「男女共同参画白書令和6年版」(2024年6月14日閣議決定))。}
{*8* Non-Fungible Token:非代替性トークン。「偽造・改ざん不能のデジタルデータ」であり、ブロックチェーン上で、デジタルデータに唯一性を付与して真贋性(しんがんせい)を担保する機能や、取引履歴を追跡できる機能を持つ。}
{*9* まち・ひと・しごと創生法第9条に規定する都道府県まち・ひと・しごと創生総合戦略及び同法第10条に規定する市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略をいう。}
{*10* デジタル実装に取り組む地方公共団体数については、2027年度までに1,500団体を目標としているが、2024年時点で1,757団体となっており、目標を前倒しで達成している(内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局「地方創生10年の取組と今後の推進方向」(2024年6月10日))。}

{*11* デジタル田園都市国家構想総合戦略の期間(2023年度~2027年度)の中間検証は2025年度中に行うこととされている。}
{*12* 2014年12月27日閣議決定。}
{*13* 例えば、第1回地域働き方・職場改革等推進会議(2025年4月25日)では、生まれ育った地元を離れる決断をした若年層の女性たちからの「やりたい仕事がない」、「結婚・出産の圧力が息苦しい」、「地域で女性役割を求められるのが苦痛」等の意見が紹介された。また、「若者・女性にも選ばれる地方」に関する車座(2025年3月31日)においては、男性にとっても「男のくせに」、「一家の大黒柱なのだから」等の固定的な男性役割の期待による息苦しさの下にあるのではないかという意見や、長い人生の中では、雇用が流動化する日本社会で自身に様々な環境変化が起こり得る中で、「男性に稼ぎを依存することなく、女性が一人でも生計を立てていける仕事が地方にないのではないか」と不安視する意見もあった。}
{*14* 2030年目標。}
{*15* ビジネスの手法で地域課題の解決にポジティブに取り組み、社会的インパクト(事業活動や投資によって生み出される社会的・環境的変化)を生み出しながら、収益を確保する企業。}
{*16* 例えば、都道府県別に、住民の可処分所得から食費・家賃等の基礎支出を差し引くと、東京都の中間層の世帯は他地域に比べ経済的に豊かであるとは言えず(全国25位)、さらに、通勤時間を費用換算して差し引くと全国40位となる試算(国土交通省「国土審議会推進部会地域生活圏専門委員会とりまとめ報告書(案)参考資料」(2025年5月28日))もある。}
{*17* 2022年6月7日閣議決定。}
{*18* 例えば、ある町で住民の高齢化や過疎化に対応して、乗合タクシーやオンデマンドバスなどのデマンド型交通を導入し成功した事例があったとしても、それを別の地域でそのまま実行すれば同じ成果が出るとは限らない。地形や居住分布、住民ニーズ、地域ごとの固有の条件や、地元企業の参画体制などの地方創生を担う人々、社会的資源が異なるからである。}
{*19* 地域におけるデータ分析・政策検討等の基盤となる地方創生データ分析評価プラットフォーム。}
{*20* 構造改革特区、総合特区及び国家戦略特区(先端的サービスの実装等による地域課題の解決に取り組むモデル地域であるスーパーシティ、デジタル田園健康特区、連携“絆”特区等)をいう。}
{*21* 国等への申請等が地方公共団体を経由して行うこととされている場合において、当該地方公共団体が処理しなければならない事務。}
{*22* 地方公共団体が中間集計している調査。}
{*23* 「こども未来戦略」(2023年12月22日閣議決定)に基づき実施する。}
{*24* 例えば、県内の全市町村に県職員を配置した支援体制(高知県・地域支援企画員制度)、県と県内全地方公共団体が参加した官民出資会社による市町村の生活排水処理事業に関する事業・事務補完体制の構築(秋田県)、県と保健医療圏内の全ての市町村が参加した医療企業団(一部事務組合)の設立及び病院の機能分化・連携(奈良県・南和広域医療企業団)、県と市町村が連携したDX推進体制の構築等。}
{*25* 地方公共団体や地元商店街・地域住民などの地域の関係者を構成員とし、これらの構成員から広く地域の意見を集約し、連携して地域の再生の推進に取り組むことを目的とした協議会。}
{*26* 中小企業・小規模事業者等の働き方改革の取組を支援することを目的として47都道府県に設置されている組織。}
{*27* 独立行政法人男女共同参画機構法案を第217回国会に提出。}
{*28* 「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」(2025年6月13日閣議決定)}
{*29* 最低の価格で申込みをした者について調査を行い、契約に適合した履行がされないおそれがある等の場合に、その者を落札者としないことができる制度。}
{*30* あらかじめ最低制限価格を設けた上で、当該価格以上の申込みの中で、最も価格が低い者を落札者とする制度。}
{*31* 昭和24年法律第100号。}
{*32* 制度・分野ごとの「縦割り」や、「支え手」・「受け手」という関係を越えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を越えてつながることで、住民一人一人の暮らしと生きがい、地域を共に創っていく社会を指す。}
{*33* 高齢、こども、障害、生活困窮分野の相談支援・地域づくり事業の配置基準等の見直しや、地域との連携・協働機能強化のための支援の実施等について、社会保障審議会等において必要な検討を実施。}
{*34* 障害者等の多様な人材の農林水産業分野での活躍を通じて、自信や生きがいを創出し、社会参画を実現する取組。}
{*35* 農村型地域運営組織。}
{*36* 日々の暮らしに必要なサービスを受けるため、地域住民が日常生活の中で移動する経路や動き。}
{*37* 「「交通空白」解消に向けた取組方針2025」(2025年5月30日国土交通省「交通空白」解消本部決定)。}
{*38* Continuing Care Retirement Communityの略。都会の中高年齢者が地方に移り住み、健康状態に応じた継続的なケア環境の下、自立した社会生活を送ることができるような地域共同体として当初創設された。その後、移住者や関係人口と地元住民双方を対象とした「誰もが居場所と役割を持つコミュニティづくり」推進へと発展し、若者、女性、高齢者、障害者、こどもなど誰もが居場所と役割を持って活躍できるコミュニティづくりとして、「交流・居場所」、「活躍・仕事」、「住まい」、「健康」、「人の流れ」という視点で分野横断的・一体的に取り組まれている。}
{*39* 社会性(地域課題解決)と経済性(事業経営や地域経済の好循環)の両立を図りつつ、日常生活サービスの提供を横断的かつ長期的に担う民間の事業実施主体等(ローカルマネジメント法人)。}
{*40* 地方圏において、原則として、昼夜間人口比率おおむね1以上の指定都市・中核市と、社会的、経済的に一体性を有する近隣市町村とが連携し、経済成長のけん引等に取り組む圏域。}
{*41* Local Asset Backed Vehicleの略。PPP手法の一つであり、地方公共団体等が土地等の公有資産の現物出資を行い、民間事業者が資金出資を行って設立する官民共同事業体をいい、LABVを活用して事業開発を行うことをLABV方式という。}
{*42* 「知的財産推進計画2025」(2025年6月3日知的財産戦略本部決定)。}
{*43* 「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」ことを指し、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」で示された考え方。国際的組織としてTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が立ち上がるなど民間企業の価値創造の観点から重要性が増している。}
{*44* 3種類のイオン(代表的にはA:有機アンモニウム、B:鉛、X:ヨウ素)がABX3のペロブスカイト結晶構造で配列する材料を発電層に用いた太陽電池の総称。軽量・柔軟などの特徴をいかし、これまで太陽電池が設置困難であった場所にも設置し、再生可能エネルギー導入拡大と地域共生を両立するものとして期待される。}
{*45* 中堅企業も対象とした大規模成長投資補助金や中堅・中小グループ化税制、100億円超えの売上げを目指すことを宣言する企業に対する補助金や税制の重点措置等。}
{*46* 在外公館に配置されている「日本企業支援窓口」、「対日直接投資推進担当窓口」、「地方連携担当官」を活用した地方の国際的取組の効果的実施に向けた連携や協力を含む。}
{*47* JICAのネットワークを活用した地方の国際的取組の効果的実施に向けた連携や協力を含む。

{*48* 既存事業の成長・拡大をサポートする組織・個人。}
{*49* 地理的表示(Geographical Indication)の略。その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を指し、地域の知的財産として保護するもの。}
{*50* 例として、大学等での共用拠点、地方創生型共創拠点、地方創生推進交付金を活用した公設試験研究機関を含むローカルイノベーション拠点、地方大学・地域産業創生交付金を活用した産学連携拠点、国立研究開発法人産業技術総合研究所ブリッジ・イノベーション・ラボラトリ及び量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター並びに地域大学のインキュベーション・産学融合拠点の整備の取組、福島イノベーション・コースト構想の推進等が挙げられる。}
{*51* 「国公私立全ての大学の共同利用の研究所」として、個々の大学では整備・運営が困難な最先端の大型装置や大量の学術データ、貴重な資料等を、全国の研究者に提供することを通じて大学の枠を越えた共同研究を推進し、研究水準の向上を図ることを目的とする我が国独自の研究機関。}
{*52* 2016年3月22日まち・ひと・しごと創生本部決定。}
{*53* 地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律(平成30年法律第37号)。}
{*54* 2028年3月までの時限措置。}
{*55* 昭和25年法律第201号。}
{*56* 株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)のデータベースを活用した地域金融機関経由でのマッチング事業。}
{*57* Asia Zero Emission Community(アジア・ゼロエミッション共同体)の略。アジア各国が脱炭素化を進めるとの理念を共有し、域内のカーボンニュートラル/ネット・ゼロ排出に向けた協力を行うための枠組み。}
{*58* 「モビリティ・ロードマップ2025」(2025年6月13日デジタル社会推進会議決定)。}
{*59* 地域において掘り起こしきれていない移動需要の可視化や集約と、これに応える最適なモビリティサービスの企画・設計を一体的に行い、その具体化を関係事業者に促す機能。}
{*60* 優れたソフトウェア(SaaS(Software as a Service))等を行政機関等が迅速・簡易に調達する仕組みとして、2024年度に運用を開始したカタログサイトを利用した新しいソフトウェア調達手法。}
{*61* 地方公共団体におけるデジタルを活用した地方創生推進のため、優良なデジタル実装を支えるサービスをカタログ化したもの。}
{*62* 北海道及び沖縄県はそれぞれのエリアを広域リージョンとして扱う。}
{*63* 人口や諸機能が広域的に分散する国土構造に向け、多様な地域の拠点への諸機能の集約化を図りつつ、質の高い交通やデジタルのネットワークの強化を通じて、シームレスにつながり合う拠点連結型国土。}
{*64* 北海道総合開発計画及び沖縄振興開発計画を含む。}
{*65* 浄化槽の適切な利活用も含む。}