[文書名] 2016年核セキュリティ・サミットコミュニケ
核・放射線テロの脅威は依然として国際社会の安全保障に対する最大の挑戦の一つであり,その脅威は継続的に増大し続けている。2016年4月1日,第4回核セキュリティ・サミットの機会にワシントンに集まった我々首脳は,2010年以来,核セキュリティ・サミットがこの脅威について認識を高め,核セキュリティにおける多くの具体的,効果的及び長期的な改善を促進してきたことを誇りに思う。核セキュリティ・サミットはまた,核セキュリティ関連の国際的法的文書の批准と履行を拡大させることなどを通じ,国家レベル,地域レベル及び世界レベルの核セキュリティ構造を強化した。我々は,核物質の防護に関する条約と2005年の同条約の改正及び核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約の重要性を強調し,引き続きこれらの条約の普遍化と完全な履行に向け取り組んでいく。(我々は,2005年の核物質の防護に関する条約の改正の速やかな発効を歓迎し,同条約改正の更なる締結を奨励する。)
我々は,核軍縮,核不拡散及び原子力の平和的利用という共通の目標に向けたコミットメントを再確認する。我々はまた,核セキュリティ強化のための措置が,平和的目的のために原子力を開発し利用する国家の権利を妨げないことを再確認する。我々は,各国がそれぞれの義務に応じて,核兵器に使われているものを含む全ての核物質及びその他の放射性物質並びに各国の管理下にある原子力関連施設のセキュリティを,あらゆる段階において効果的に維持する国家の基本的責任を再確認する。
非国家主体が,悪意ある目的に使用され得る核物質及びその他の放射性物質を入手することを防止するために,より多くの取組が必要である。我々は,核テロの脅威の減少と核セキュリティの強化を通して,平和で安定した国際環境の醸成にコミットする。
核セキュリティを引き続き改善するためには,あらゆるレベルにおいて継続的な警戒が必要である。我々の国家は,引き続き核セキュリティを永続的な優先課題とすることを誓約する。我々は,国家の指導者としてこの責任を認識する。本日我々がとる行動は明日の核セキュリティの事件を阻止し得る。各国の状況を考慮し,機微な情報を保護しながら,これらのステップを目に見える形で進めることにより,我々は国家レベルの核セキュリティ体制の有効性に対する信頼を醸成し,強化する。
核・放射性物質を用いたテロを防止する対策には国際協力が必要であり,それには各国の法と手続に従った情報共有も含まれる。国際協力は,全ての国の共通利益と安全確保のための,より包括的で,調整され,持続可能で,強力な国際的核セキュリティ構造に貢献できる。
我々は,国際的核セキュリティ構造の強化及び国際指針の作成における国際原子力機関(IAEA)の重要な責任と中心的役割を再確認する。また,国際機関及び国際枠組みにおける核セキュリティに関する活動を促進及び調整し,国家が核セキュリティ上の責任を果たすための取組を支援するIAEAの主導的役割を再確認する。我々は,政治的モメンタムの維持及び全てのステークホルダー間の核セキュリティの認識を向上させるため,IAEAが2016年12月の閣僚級会合を含む核セキュリティ国際会議のような定期的なハイレベルの国際会議を実施することについて,歓迎し支持する。
我々は,核セキュリティ・サミットのプロセスを支えてきた政府関係者や政府専門家の国際ネットワークを維持し,より広範な国々を取り込むことを追求するとともに,原子力産業界及び市民社会の関係者の継続した関与を奨励する。
政治的モメンタムを確保し,また,国レベル,地域レベル及び世界レベルで核セキュリティを継続的に強化するという我々の継続した共同の決意により,我々は,それぞれが属する国際機関及び国際枠組み(国際連合,IAEA,国際刑事警察機構,核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ及び大量破壊兵器・物質の拡散に対するグローバル・パートナーシップ)を支持するための添付の行動計画の実施を決定する。これらの行動計画は自発的に,国内法及びそれぞれの国際的義務に従って実施されるものである。これらのプランは参加国の政治的意思を反映している。
2016年サミットをもって現行の形式による核セキュリティ・サミットは終了する。2010年,2012年及び2014年サミットのコミュニケ並びに2010年サミットの作業計画は,我々がこれらを完全に履行するよう努力することで,引き続き我々の核セキュリティに関する取組の指針となることを確認する。
(了)