データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第1回ASEAN地域フォーラム(ARF)議長声明

[場所] バンコク
[年月日] 1994年7月25日
[出典] 外交青書38号,210−211頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1.第1回ASEAN地域フォーラム(ARF)は、ASEAN各国元首・政府首脳がアジア太平洋地域諸国との協力的きずなを構築する手段として、域外国との政治・安全保障対話を強化する意図を宣言した。1992年の第4回ASEAN首脳会議のシンガポール宣言に従い、1994年7月25日、バンコックで開催された。

2.会議は、ASEAN各国、ASEANの対話国、ASEANの協議国及びASEANのオブザーバー各国(注)の外相又はその代理が出席した。タイの外相が会議の議長を務めた。

3.政治・安全保障協力問題について特に議論するために、アジア太平洋地域の大多数の国のハイレベルの代表が初めて一堂に会したという点で、会議は、同地域にとって一つの歴史的な出来事と考えられた。さらに重要なことととして、会議は、東南アジアの平和、安定及び協定の新たな一章を開いたことを意味する。

4.会議出席者はアジア太平洋地域の一部における動きが地域全体に影響を及ぼしうることを認識しつつ、同地域における最近の政治・安全保障状況についての有益な意見交換を行った。ARFがハイレベルの協議のフォーラムとして、アジア太平洋地域諸国が共通の利益と関心を有する政治・安全保障問題に関しての建設的な対話と協議の慣例化を促進するのを可能にしたことが合意された。この点においてARFはアジア太平洋地域の信頼醸成と予防外交に向けての努力に対し重要な貢献を行う立場におかれることになる。

5.国際の平和及び安全の維持のために核兵器の不拡散が重要であることに留意し、会議は米朝交渉の継続を歓迎し、南北対話の早期再開を支持した。

6.会議は、次の点で合意した。

 (a)毎年1回ARFを開催し、1995年にブルネイで第2回会議を開催すること及び

 (b)国家関係を規律する行動規範並びに地域の信頼醸成、予防外交及び政治・安全保障協力のための独特な外交文書として、東南アジア友好協力条約の目的及び原則を支持すること。

7.会議は、次回議長国たるブルネイが必要に応じ他のARF出席者と協力しつつ次の責務を果たすことを委任することについても合意した。

 (a)ブルネイで開催されるARF・SOMを踏まえて第2回ARFに提出するため、バンコックでのARF及びARF・SOM開催中に提案されたすべての文書と構想を整理し、検討すること。このような今後の検討の対象となる構想には、信頼安全醸成、核不拡散、地域平和維持訓練センターを含むPKO協力、非機密軍事情報の交換、海上安全問題及び予防外交が含まれる。

 (b)アジア太平洋地域にふさわしい経済社会面を含む安全保障の包括的概念につき検討すること、

 (c)地域的政治・安全保障協力のため、国際的及び地域的な政治・安全保障協力に適した国際的に認められた規範と原則を検討すること、

 (d)最終的にすべてのARF参加国が国連軍備登録制度に参加することを促進すること及び

 (e)ARFの過程を前進させるためすべての関連文書及び示唆を検討する非公式事務レベル会合を必要に応じ開催すること。

8.会議は、アジア太平洋地域でのより予見可能なかつ建設的な関係を発展させる必要性を認識しつつ、同地域及び同地域の人々にとっての恒久的平和、安定及び繁栄を確保する手段として同地域内の政治・安全保障協力の強化と拡大に向けて作業を続けていくとの強い信念を表明した。

注:ASEANはブルネイ、インドネシア、マレイシア、フィリピン、シンガポール及びタイより成り、ASEANの対話国はオーストラリア、カナダ、欧州連合、日本、ニュー・ジーランド、大韓民国及び合衆国であり、ASEANの協議国は中国及びロシアであり、ASEANのオブザーバーはラオス、パプア・ニューギニア及びヴィエトナムである。

第1回ASEAN地域フォーラム(ARF)バンコック会合の出席者リストは付属1参照(省略)