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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第2回ASEAN地域フォーラム(ARF)議長声明

[場所] バンダルスリーブガワン
[年月日] 1995年8月1日
[出典] 外交青書39号,229−232頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1.第2回ASEAN地域フォーラム(ARF)は、1995年8月1日、バンダル・スリー・ブガワンにて開催された。議長はブルネイ外務大臣モハメッド・ボルキア閣下が務めた。

2.本フォーラムは全てのARF参加国の出席を得て行われた。ASEANの事務局長も出席した。

3.閣僚は、カンボディアのARF参加を歓迎した。

4.閣僚は、アジア太平洋地域の安定の度合に満足の意を表明した。閣僚は、協力的関係が建設的に進展している態様に留意した。この点に関し、閣僚は1994年7月にバンコクにて開催された第1回ARF以降、特に信頼醸成や透明性向上の分野で多くの前向きな進展がみられたことに留意した。この点で、閣僚は、相互尊重、平等、協力の精神に則り安全保障上の実質的な問題に対処したいとする参加国の意向に留意した。

5.閣僚は、ARFの準備に際し、各参加国よりの意見を聴取するため議長国ブルネイが行った各参加国との協議に感謝の意を表した。申し入れ及び提案に基づきASEANは、「ARF−コンセプト・ペーパー」(別添:略)を作成した。

6.閣僚は、ARF高級事務レヴェル協議(ARF・SOM)の議長報告を検討し、了承した。特に、閣僚は、コンセプト・ペーパーの関連で以下の提案を採択した。

 A.目標及び期待

  i.ARF参加国は、平和で繁栄し安定しているアジア太平洋の現在の環境を保証し、維持するために、引き続き緊密に作業を継続する。

  ii.ARFは、引き続き地域的政治・安全保障問題に関するオープンな対話と協議の場であり続け、安全保障面の危険を少なくするためにARF参加国間で異なる見解につき議論し、これを調和させる。

  iii.ARFは、包括的な安全保障概念は軍事的な側面のみならず、政治的、経済的、社会的及びその他の問題を含むものであると認識する。

 B.方法及びアプローチ

  i.ARFが成功するためには、全ての参加国による、活発、十分かつ平等な参加と協力が必要である。他方でASEANは主要な推進力になる義務を負う。

  ii.ARFのプロセスは全ての参加国にとって快適なペースで進められる。

  iii.アプローチは漸進的ではなければならず、信頼醸成の促進、予防外交の推進、紛争へのアプローチへの充実、という3つの段階に沿って進められる。

    現在のARFプロセスは第1段階にあり、引き続き信頼醸成の実施手段につき議論を継続する。

    第2段階は、特に問題が重なっている箇所は、第1段階と併行して取り進めることができる。「紛争へのアプローチの充実」を最終的にARFプロセスに取り入れることについては、引き続き議論が行われる。

  iv.ARFにおける意思決定は、全ての参加国による注意深くかつ十分な協議の後に、コンセンサスによって行われる。

 C.参加国

  i.ARFの参加国はASEAN加盟国、ASEANのオブザーバー、協議国、及び対話国から構成されている。新規加盟申請はARF議長国に対して提出され、同議長国は他のARF参加国と協議する。

  ii.次期議長国に対して、将来の参加問題を検討し、ARF・SOM通じて第3回ARFでの検討のために加盟に関する基準作りをするよう要請した。

 D.ARFの組織

  i.ARFは毎年ASEAN外相会議及び拡大外相会議と関連して開催され、これに先立ちARF・SOMが開催される。

  ii.ARFプロセスは二つのトラックに沿って取り進められる。第1トラックの活動はARFに参加する政府によって執り行われる。第2トラックの活動は戦略研究機関及び関連する非政府組織によって実施されるが、右活動には全てのARF参加国が参加できるものではなければならない。そのような活動を意義のあるものとするため、ARF議長は(コンセプト・ペーパーの)付属書Bにある第2トラックの活動がARF全参加国との十分な協議を経たもとであることを確保しなければならない。

  iii.ARFは、第1トラック及び第2トラックを結ぶ主たる役割を果たすこととなる議長を通じて、全ての第1トラック及び第2トラックの活動について承知する。

 E.考え及び提案の実施

  i.ARF・SOM議長が、コンセプト・ペーパーの付属書Aに示されたARF参加国による提案の実施について検討しARFに勧告することを支援するために、以下の政府間会合が開催される。

   a.信頼醸成−特に安全保障認識に関する対話及び防衛政策ペーパー−に関するインターセッショナル支援グループ(ISG)

   b.平和維持等の、協力的活動に関するインターセッショナル諸会合(ISMs)

  ii.ISGとISMsは、以下のガイドラインによって行われる。

  −ISGとISMsはASEANの国と非ASEANの国によって共催されるものとする。

  −ISGとISMsは、ARF・SOMと翌年のARF・SOMの間に開催される。

  −ISGとISMsの結果は1996年インドネシアでのARF・SOMに提出される。ISGとISMsのマンデート継続の可能性はその際審議する。

7.この点については、閣僚は、インドネシアがCBMに関するISGを日本と共催し、マレイシアがPKOに関するISMを加と共催し、シンガポールが捜索・救難時における調整・協力に関するISMセミナーを米と共催することについて合意した。

8.閣僚は、ARFとして以下の点についても合意した。

  i.全てのARF参加国に対して、二国間、サブ・リージョナル、全域のレベルにおける政治・安全保障協力に関する対話と協議の強化を慫慂すること。

  ii.ARF参加国が任意ベースでARF乃至ARF・SOMに対して、毎年防衛政策に関する文書を提出することについて合意すること。

  iii.ハイレベルの接触並びにミリタリー・アカデミー、幕僚学校、及び、訓練における相互交流を高めることは有益であるとの点で合意すること。

  iv.第1回ARF以来の国連軍備登録制度への参加国の拡大に留意し、未参加国に対しては速やかに参加することを慫慂すること。

9.閣僚は、これらの具体的な考え方及び提案が承認されたことにより、ARFプロセスに現段階において十分な方向性が与えられたとの認識を表明した。また、アジア太平洋地域は現在、平和と安定のための長期的な環境を確立し、確固たるものとするための歴史的に前例のない機会を得ているとの認識を再確認した。

10.閣僚は、1994年11月、豪州のキャンベラで開催されたアジア太平洋地域における信頼醸成に関するセミナー、1995年3月、ブルネイのバンダル・スリー・ブガワンで開催された平和維持−−ARFにとっての挑戦と課題−−に関するセミナー、及び、1995年5月、韓国のソウルで開催された予防外交に関するセミナーの報告書を受領した。これらのセミナーの主催者及び後援者の努力を賞賛し、第2トラックのプロセスにおける措置の継続を合意した。閣僚は、また、アジア太平洋の安全と安定に関する原則(ロシア提案)に関する第2トラック・セミナーを1996年春に主催するとのロシアの申し出に留意した。さらに、閣僚は、南シナ海の潜在的紛争を管理するためのインドネシアによる一連のワーク・ショップ(カナダが支援している)を含め、アジア太平洋地域で行われていいる二国間、多国間、政府間、非政府間の協議とセミナーを、対話と協力を高めるための有益な手段として賞賛した。

11.閣僚は、全般的には、環境が安定していること、及び多くの分野において地域協力が進行中であることに留意しつつ、本地域における安全保障問題について意見交換を行い、以下の点を強調した。

 −この地域における主権的要求の重複に関し懸念を表明した。全ての当事者が、関連する国際法規及び「南シナ海に関する1992年ASEAN宣言」にある原則の遵守を改めて確認するよう慫慂した。

 −朝鮮半島問題は、アジア太平洋の平和と安定に直接的な影響を有していることを認識した。クアラルンプールでの最近の米朝間の対話を歓迎し、右が1994年10月の「(米朝)枠組み合意」の完全履行に至ることへの期待を表明した。閣僚は、韓国と北朝鮮の間における対話の再開を促し、右が枠組み合意の実施の成功と朝鮮半島の平和と安定を助けるものと認識した。閣僚は、また、米朝枠組み合意の実施のためには、KEDOへの国際的な支援が重要であることを認識した。

 −カンボディア王国が安全を確保し、自国の安定と経済回復を促進するため行っている努力を支援する旨表明した。

 −地域の平和と安定を高める上での核不拡散の重要性を強調した。全てのNPT締約国が1996年までに全面核実験禁止条約の妥結を図るとのコミットメントを行ったことを歓迎した。今後核実験を計画している国は、他の全てのARF参加国により、実験を即時中止するよう求められた。閣僚は、国際的な不拡散体制を強化するものとして、南太平洋非核地帯などの非核地帯を支持し、近い将来全ての核兵器国がその議定書を支持することへの希望を表明した。閣僚は、東南アジア非核地帯の設置に向けての進展を満足をもって留意し、この非核地帯の設置によって大きな影響を受ける国との間で本件に関する更なる協議を行うよう慫慂した。