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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第6回ASEAN閣僚会議共同声明

[場所] パタヤ
[年月日] 1973年4月18日
[出典] 外交青書17号,592−594頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 1. 第6回ASEAN閣僚会議は1973年4月16日から18日までタイのパタヤで開催された。

 会議ではタイ外務副大臣チャートチャイ陸軍准将閣下が議長となり,インドネシア外務大臣アダム・マリク閣下が副議長に選出された。

 2. 会議にはインドネシア外務大臣アダム・マリク閣下,マレイシア副首相イスマイル閣下,フィリピン外務大臣カルロス・ロムロ閣下,シンガポール外務大臣ラジャラトナム閣下,タイ外務副大臣チャートチャイ陸軍准将閣下が出席した。クメール共和国及びラオス王国の代表はタイ政府の賓客として公開の会合に出席した。

 3. 会議は仮議長であるシンガポール外務大臣ラジャラトナム閣下により開会を宣せられた。次いで仮議長はタイ首相タノム元帥閣下に開会演説を行なうよう要請した。

 4. タイ首相は,開会演説において,団結と協力の精神は,ASEANの様に志向を同じくする諸国の連合にふさわしいものであり,加盟国に真に役立ち,利益になって来たとして,さらに次のように述べた。6年の歳月を経て,ASEANは共同の努力を通じ発展を遂げるとともに実力をつけてきた。これらの努力は,類似性のある文化的基礎と歴史的遺産を強調し,加盟諸国を友好と相互信頼において着実により密接に結びつけ,またひるがえつて,現存する友好のきずなを強化発展させることに役立つて来ている。ASEANは域内国民の生活を真に改善しうるような具体的成果を達成するまでは引き続き共同の努力を続けなければならない。

 5. 閣僚は,ASEANの進歩に満足の意を表明し,連合は地域協力のための確固たる基盤をもたらすが如き団結力を樹立しえたという感触を持つた。加えて,閣僚は,ASEAN地域協力の必須の前提条件としての強固な政治的意志を,ASEANに重点をおきつつ,不断に発展させるべきことを認識した。

 6. 閣僚は,1972−73年の常任委員会年次報告を承認し,完遂された諸計画及びASEAN諸委員会によつてなされた作業を評価した。

 7. 閣僚は,インドシナ諸国再建復興のための調整委員会の設立に同意し,同事業に関しそれぞれの見解を表明した。閣僚は,ASEANの参加は関係諸国の希望を考慮することにより共同して達成しうるとの感触を得た。

 8. 閣僚は,地域における国際情勢の変化及びASEAN活動の拡大に対応して設置されたASEAN中央銀行,通貨当局特別委員会の設立を歓迎した。

 9. 閣僚は,経済,社会,文化の分野において,域内の政府及び国民間における協力促進の面におけるASEANの重要性を認識し,かつ,ASEANはより大きな協力に対する域内国民の要望に応ずるためますます多くの役割を期待されているという事実を認め,ASEAN中央事務局を創設することによつてASEANの機構を強化すべき時に到達した旨決定した。この目的のため閣僚は,特別委員会を任命した。同委員会は,各国のASEAN国内事務局長及びこれを補佐する各国の担当官より構成され,諸閣僚の検討に資するため,研究及び勧告を行う。閣僚は,他のASEAN加盟国から申し出がない場合にはインドネシアに事務局を設置する用意がある旨のインドネシア政府の申し出に謝意を表して留意した。閣僚は,また,中央事務局の細目を作成するために任命された特別委員会の会合を主催する用意のある旨のフィリピン政府の招待に謝意を表して留意した。

 10. 閣僚は,来たるべき多国間貿易交渉のため必要な準備を行ない,かつ,集団的にアプローチするための緊急の必要がある旨合意した。閣僚は,ASEANジュネーブ委員会がこの目的のため設立されたことに留意し,より密接な協力と調整のための方策を探究すべきことを示唆した。

 11. 閣僚は,ASEAN特別調整委員会(SCCAN)及びASEANブラッセル委員会(ABC)の作業を多とし,さらに,より建設的なASEANとEECの関係設立のため,EECがASEANに有意義な協力を提供することを希望した。

 12. 閣僚は,日本による合成ゴム産業の無定見な拡大及び合成ゴムの加速度的な輸出を検討し,これがASEAN諸国の経済にとつて重大な脅威となつていることを認めた。閣僚は,重大な関心を表明するとともに,日本に対し合成ゴムの無定見な拡大及び加速度的な輸出の政策を再検討するよう慫慂した。閣僚は,ASEAN当局者がこの脅威に対抗するため適当な措置を策定することにつき合意した。

 13. 閣僚は,国連研究チームの諸勧告の中で合意されうるものを実施するため,ASEANにより今や適当な措置が取られるべきことを指示した。閣僚は,また,ASEAN開発の10ケ年のため適当な戦略が作成されるべきであるとの必要を感じた。

 14. 会議は,第7回閣僚会議をインドネシアにおいて開催する旨,またその結果として来年度の常任委員会の開催地はジャカルタに置かれることとなる旨合意した。

 15. 会議は,タイ政府及びタイ国民が閣僚のために提供した暖かい心のこもつた接遇に対し,またタイのASEAN国内事務局による会議のための行きとどいた便宜及び効率的な諸準備に対し,それぞれ深甚なる感謝の念を表明した。

 16. 会議は,ASEANの伝統的な友情と相互理解の雰囲気の中で開催された。