データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ASEAN首脳会議共同プレス・コミュニケ

[場所] バリ
[年月日] 1976年2月24日
[出典] 外交青書20号,169−170頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1.インドネシア共和国大統領スハルト将軍閣下,マレイシア首相ダタク・フセイン・オン閣下,フィリピン共和国大統領フェルディナンド・E.マルコス閣下,シンガポール共和国首相リー・クァン・ユー閣下,タイ王国首相ククリット・プラモート閣下は,1976年2月23,24日バリ・デンパサールで会合した。

2.会議は,ASEANの伝統的な友情と誠意の精神に包まれて開催された。

3.首脳は,1967年の創設以来のASEANの活動を再検討し,その進展,特に加盟国間の協力及び連帯の精神の進展に満足の意を表明した。

4.首脳は,ASEAN地域に影響ある情勢の発展を討議した。首脳は,東南アジアにおける平和,安定及び進歩の促進のための活動を継続し,もつて世界平和及び国際調和に寄与するとの各国政府の決意を再確認した。このため首脳は,この地域の他の諸国との間に実りある関係及び互恵的協力を発展させる用意があると表明した。首脳は,他の諸国が東南アジアにおける平和,安定及び進歩の寄与する政策を遂行することを希望すると表明した。

5.会議は,加盟国間の協力を強化する方法及び手段について討議した。首脳は,加盟国にとつて,特に政治,経済,社会,文化,科学及び技術の分野において,よりハイレベルの協力へ移行することが重要であると確信した。

6.平和,自由及び中立地帯については,首脳は,同地帯の承認及び尊重を確保するために先ず必要な措置を策定する努力の進捗に満足の意を表明した。首脳は,同地帯の早期設立の実現のため引続き努力するよう指示した。

7.首脳は,東南アジア友好協力条約に署名した。

8.首脳は,またASEAN協和宣言に署名した。

9.加盟国間のより緊密な経済協力を策定するとの首脳の決意の遂行にあたり,首脳は,経済協力問題についてのASEAN首脳会議の諸決定の実施にあたつてとられるべき措置を検討するために,経済閣僚会議を1976年3月8,9日クアラルンプールで開催することに合意した。

10.首脳は,また,経済閣僚会議が特に次の諸問題を討議することに合意した。

 I 加盟国が,例えば自然災害,重大な災難及び人為的又は自然的原因に基づく供給不足のような危機的事態において,個々の国の食糧及びエネルギー需要に対し優先的な供給を行い,また,加盟国からの輸出を優先的に受ける制度。

 II 基礎的産品,特に食糧及びエネルギーの生産における協力を強化するためにとられるべき措置。

 III ASEAN大規模産業プロジェクト設立を目指す協力を開始するための適当な施策の策定。ASEAN経済閣僚会議において検討されるASEAN産業プロジェクトの例としては,尿素肥料,過燐酸肥料,カリ肥料,石油化学,鉄鋼,ソーダ灰,新聞用紙及びゴム製品があげられる。

   経済閣僚会議は,その他のプロジェクトをも検討する。

 IV 基礎的産品,特に食糧及びエネルギー並びにASEAN産業プロジェクト製品のASEAN加盟国間貿易拡大を促進するための特恵的貿易制度において採られる施策。これらの施策は次のものを含むが,これには限定されない。

  A 長期数量契約

  B 特別金利による買入れ融資支援

  C 政府関係機関による調達に際しての優先的取扱い

  D 特恵関税の拡大,及び

  E その他合意される措置

 V バッファーストック・スキームびその他の手段を含む商品協定を通じて,ASEAN商品の輸出所得の安定及び増加を主たる目的とした,国際商品問題及びその他の経済問題に対する共同アプローチの策定。

11.外務大臣は,ASEAN事務局設立協定に署名した。首脳は,ハルトノ・レクソ・ダルソノ氏のASEAN事務局事務総長任命をテーク・ノートした。

12.マレイシア,フィリピン,シンガポール,タイの首脳は,インドネシア共和国大統領による首脳会議の模範的な議長職務遂行に対し暖かい感謝の意を表し,かつ,首脳に対するインドネシアの伝統的な厚遇及び卓越した会議運営に対し,感謝の意を表明した。