[文書名] 第2回ASEAN首脳会議コミュニケ要旨
1.1977年8月4日,5日ASEAN首脳はクアラ・ルンプールにて会談。
2.会談は,伝統的な友好精神の中で行われた。
3.過去10年のASEANの発展,特にASEAN協和宣言等に盛られた事項の実施状況を検討。各種分野の協力強化を通じて国家としての強靱性を強めたことに満足。
4.ASEAN設立宣言,ASEAN協和宣言がASEAN協調の基本であることを再確認。今後一層連帯を高めることを表明。
<地域発展>
5.現下の情勢は,ASEAN諸国にとり域外勢力に左右されることなく,自らの運命を形成できる好機であることに合意。
6.カンボディア,ラオス及びヴィエトナムを含む東南アジアのすべての国との間の平和的,互恵的関係の発展に対するASEANの願望を強調。インドシナ諸国との外交,通商面での交流に満足,今後とも相互理解・協力に努力する旨合意。→全訳は末尾参照。
7.ヴィエトナムの国連加盟に関する国連安保理の決議を歓迎。今後ヴィエトナムが国連憲章に沿い東南アジアの平和・安定に貢献することを確信。→全訳は末尾参照。
<平和・自由及び中立地帯>
8.9.}{8.9.は縦に並び、まとめて「}」あり}「東南アジアの平和・自由・中立地帯」構想を再確認し,同構想実現へ向けて,努力することに同意。
10.経済・社会発展及び社会的公正の強化のための努力が重要であることに留意。
<経済協力>
11.ASEAN協和宣言の「行動計画」を確認し,さらに努力を傾注するよう指示。特に,ASEAN地域の政治的安定のための経済・社会開発のための協力を強調。
12.ASEAN協和宣言に沿つた種々の経済協力の進展に満足を表明。
13.基礎産品分野における緊急時の相互優先供給・購入合意に留意。
14.ASEAN5大産業プロジェクトのフィージビリティ・スタディ及び追加ASEAN産業プロジェクト候補の予備フィージビリティ・スタディの早期実施に留意。
15.ASEAN諸国の民間部門が域内産業補完計画の実施のため果した役割に対し満足の意を表明。
16.ASEAN地域の産業開発のため,技術移転,投資の増大措置を指示。
17.エネルギーの重要性に鑑み,エネルギー開発のための協力強化に合意。
18.本年2月署名されたASEAN特恵貿易協定に基づき合意された71品目の適用実施は,78年1月1日までに完全に行われるよう勧告。
19.UNCTAD一次産品プログラム,特に共通基金に対する支持を再確認。
20.先進諸国に対し,ASEANの一次産品輸出所得安定のため,輸出所得補償制度等の措置を緊急に設けるよう要望。
21.先進諸国に対し保護貿易主義的措置を除去するよう要望。
22.ASEAN域外市場に対する貿易アクセス改善につき共同アプローチをとること及びASEAN諸国における投資機会を増大させることを再確認。
23.ASEAN中央銀行及び金融当局に対し,スワップ協定の制定を推奨。
24.先進諸国に対し,ASEAN産業プロジェクトのため,最も好条件な融資の増大を要望。
25.ASEAN諸国内の貿易,投資,企業活動を促進するため,投資保証,二重課税防止に関し二国間で条約を締結する必要性に合意。
26.輸送及び通信に関する地域協力の進展に留意。(海底ケーブル,郵便・送金サービス,鉄道・道路等々について)
27.食料,農業,林業面の地域協力についての調査の進展に留意。(食料等の需給,地域穀物保護センター,漁業資源管理,林業資源保護,飼料の需給,農業教育・訓練)
28.食料,農業,林業面の協力拡大のため,先進国及び,国際機関との対話の重要性に留意。
29.食料備蓄等食料危機に対する緊急措置が望ましい旨認識。
<対外関係>
30.豪,カナダ,日本,NZ,ECさらには米国,南西アジアとの経済面における協力拡大強化に合意。
31.ECとの経済面における協力について。
32.日本との経済面における協力の開始について。(合成ゴムフォーラムの成果)→全訳は末尾参照。
33.日本との経済面における協力の進展について。(日本・ASEANフォーラム,今次首脳会談を通じて,日本との経済面における協力が一層進展することを期待。)→全訳は末尾参照。
34.35.36.対豪州,NZ及びカナダとの経済面における協力について。
37.EEC,その他先進国との共同協議グループの設置との第10回ASEAN閣僚会議の決定を確認。その他諸国,国際機関と対話開始の用意がある旨を再確認。
38.豪州,日本,NZとの首脳会談を歓迎し,この一連の会談により双方間の経済面における協力が進展するよう希望。
39.ASEAN協和宣言の社会・文化面の実施状況に満足の意を表明。社会・文化面での協力を促進するため,担当大臣間のより密接な協力の呼びかけ。
40.1977年7月のジャカルタ社会福祉大臣会議で採択されたガイドラインの確認。
41.域内の社会環境改善のための協力拡大に合意。
42.貧困,病気,文盲の除去のための協力及び人間の尊厳向上への貢献を指示。
43.域内人口問題解決のため国連及び同機関との密接な協力を推奨。
44.大衆の教育,訓練,自助活動を通ずるASEANの地域開発計画の速やかな実施を確認。
45.麻薬等非合法薬剤撲滅に一層努力するよう指示。
46.自然災害に対するASEAN加盟国間の相互援助の実施勧告。
47.経済,社会,文化発展が地域及び国家の安定に欠くべからざる要素であり,また成長と発展の基礎であることを再確認。
48.ヴィエトナム難民問題解決のためUNHCR等に善後措置を呼びかけ。
49.労働問題に関する1976年5月のASEAN労働大臣会議での「行動プログラム」を支持。
50.雇用拡大のための各種合同プロジェクトの可能性を探究。
51.低所得グループの福祉を増大するため労働と雇用の分野での協力を強化するよう勧告。
52.ASEAN情報政策実施のため1977年7月のASEAN情報大臣会議においてガイドラインが策定されたことに留意。
53.ASEAN機構をより効率的にすべく,同機構を見直す努力を続けていくことを指示。
54.今次首脳会議の議長国であるマレイシア政府に対し,謝意表明。
日本関係部分及びインドシナとの関係部分全訳
<日本関係部分>
(第32項)首脳は,ASEANと日本との間の経済面における協力は1973年11月のASEAN・日本合成ゴムフォーラムの設立によつて開始されたことに留意した。同フォーラムは,ASEANタイヤ試験開発研究所の設立に対する日本からの資金援助を含む,ASEAN・日本間のゴムに関するより一層の協力をもたらした。
(第33項)首脳は,本年3月の拡大されたASEAN・日本フォーラムの設立及び来たるべきASEAN首脳と日本国総理大臣との会談により,特に,ASEAN産品の日本市場に対するアクセス改善,ASEAN輸出産品の価格及び所得安定,ASEAN産業プロジェクトに対する資金援助,及びASEAN農業及び工業開発の進展を目的とするASEANと日本との間の経済面における協力が拡大することを期待した。
<インドシナとの関係部分>
(第6項)首脳は,カンボディア,ラオス及びヴィエトナムを含むこの地域のすべての国との間に平和的かつ互恵的な関係を発展させたいとのASEAN諸国の願望を強調した。
この点に関し,首脳は,ハイ・レベルでの外交及び通商使節団の交換がASEAN諸国とインドシナ諸国との関係改善への見通しを高めたことに満足の意をもつて留意した。
首脳は,これら諸国との間で互恵的なベースで理解と協力の分野を拡大するため,一層の努力を払うことに合意した。
(第7項)首脳は,国連安全保障理事会が,ヴィエトナム社会主義共和国の国連加盟を認める勧告を決議したことを歓迎した。首脳は,ヴィエトナムが,国連憲章の目的と原則に沿つて,東南アジアの発展と繁栄に必要な平和と安定に貢献するであろうとの確信を表明した。