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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第9回日ASEAN首脳会議共同声明「日ASEAN戦略的パートナーシップの深化と拡大」

[場所] クアラルンプール
[年月日] 2005年12月13日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.我々、日本国と東南アジア諸国連合の加盟国の国家元首及び行政府の長は、日ASEANの対話における着実な進展に満足の意をもって留意した。我々は、地域の平和、安定、発展及び繁栄に貢献するとともに我々及び地域が直面する共通の課題に協調して取り組むことを可能とする緊密で協力的なパートナーシップを過去32年間にわたり築いてきたことを歓迎した。

日ASEAN対話関係の強化

2.過去30年間以上にわたる実績に基づき、日本とASEANは、対等の立場に立って、共通の課題と機会に緊密に取り組んでいる。日本は、ASEANが東アジアにおける地域協力において、特にその推進力としての役割及びASEAN統合をさらに推進するための躍動的なイニシアティブを通じて、ますます積極的な貢献を行っていることを完全に支持する。この認識に基づき、我々は、日本とASEANの間の戦略的パートナーシップを深化しかつ拡大することを再確認した。我々は、また、日ASEAN関係は東南アジア友好協力条約、及び他の主要な国際法の諸原則、世界的な規範、及び普遍的に認められている価値に基づくものであるべきことを再確認した。

日ASEAN行動計画の実施

3.2003年12月12日に東京にて開催された日ASEAN特別首脳会議において「新千年期における躍動的で永続的な日本とASEANのパートナーシップのための東京宣言」が署名され、日ASEAN行動計画が採択されて以来、日ASEAN対話関係が着実に進展したことに留意した。この点に関し、我々は、21世紀において日本とASEANのパートナーシップの基礎を強化するにあたり、東京宣言の目標及び目的を達成するために、日ASEAN行動計画の重要性を再確認するとともに、日ASEAN行動計画を効果的に実施するという我々の約束を再確認した。

地域における最近の進展

4.我々は、2003年の日ASEAN特別首脳会議以来、地域において急速な進展が生じていることを認識した。この急速な進展には、2004年のビエンチャン行動計画(VAP)の署名、2004年のASEAN安全保障共同体(ASC)やASEAN社会文化共同体(ASCC)行動計画の採択、2004年のASEAN経済共同体(AEC)に基づくASEAN経済統合のための主要11分野に関するロードマップの採択、2004年の日本による東南アジアにおける友好協力条約への加盟、2004年の国際テロリズムとの闘いにおける協力に関する日ASEAN共同宣言の採択、2005年のASEAN開発基金(ADF)の設立、2005年のアジア・アフリカ首脳会議の開催、2005年の第2回ACMECS首脳会議の開催、及び2005年12月14日の第1回東アジア首脳会議の開催の決定が含まれる。我々は、対話関係、及びASEAN統合を強化し、かつ、地域の平和、安定及び繁栄のために活力ある発展を促進するための努力において、共に取り組みを互いに支援していくことで合意した。

ASEAN共同体構築努力への支持

5.我々は、1997年12月のASEANビジョン2020及び2003年10月の第二ASEAN共和宣言に基づいて、2020年までにASEAN共同体を実現することを完全に支持することを確認した。これに関連して、ASEANは、ASEAN統合イニシアティブ(IAI)を通じたASEAN加盟国間の開発格差是正、ビエンチャン行動計画、各種ASEANの計画やイニシアティブ、並びに大メコン地域(GMS)経済協力プログラム、イラワジ・チャオプラヤ・メコン経済協力戦略(ACMECS)、ブルネイ・インドネシア・マレーシア・フィリピン東ASEAN成長地域(BIMP−EAGA)といった準地域開発努力を通じたASEAN共同体構築への努力及びASEAN加盟国間の開発格差是正への支援を強化するとの日本の約束に対して感謝を表明した。ASEANは、日本が、ASEAN統合のため、ASEAN開発基金及び日ASEAN間の協力に関する基金を通じて総額75億円(約7000万ドル)規模の新たな財政支援を約束したことを歓迎する。また、ASEANは、日本のASEANの統合努力に対する継続した支援を歓迎した。

経済連携の強化

6.我々は、日本とASEANの間の経済関係を強化するための「包括的経済連携に関する日本とASEAN諸国の首脳の共同宣言」及び「日本とASEANとの間の包括的経済連携の枠組み」(それぞれ2002年と2003年に作成)を想起した。我々は、2005年4月の開始日から2年以内の可能な限り早期に日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定交渉を終えるよう最善の努力を行うことを約束する。これに関連して、我々は、日ASEAN包括的経済連携を実現するため、交渉を加速する方策を検討するよう閣僚に指示した。

日本アセアンセンターの改革

7.我々は、日本アセアンセンターの改革に関する日ASEAN賢人会議(EPC)の活動を讃えた。我々は、日ASEAN賢人会議の中間報告を各国の関係当局が精査することを奨励する。

域内及び地球規模の課題への取り組み

8.我々は、域内のみならず地球規模で安全に対する懸念となっているテロの脅威、国境を越える犯罪、鳥インフルエンザの大流行、石油価格の高騰、及び自然災害など、地域は多くの課題に直面していることを認識した。我々は、これら課題に取り組み、地域内の平和、安定及び繁栄に貢献するために、共に取り組み、共に進むことにより、我々のパートナーシップを強化し、かつ、深化させることを希求する。

国境を越える犯罪とテロとの闘い

9.我々は、国際連合憲章、国際法、及び国際テロリズムに関する全ての関連する国際連合決議若しくは宣言に従って、全ての形態の国際テロリズムを予防、抑制、根絶するとの決意を再確認した。我々はまた、国境を越える犯罪に関するASEAN+3閣僚会議及びその他の既存のメカニズムを通じて、国境を越える犯罪、海賊、人身取引、不正薬物によって生じる脅威を根絶するため、日本とASEANの二国間及び多国間における協力を強化することに合意した。ASEANと日本は、「国際テロリズムとの闘いにおける協力に関する日ASEAN共同宣言」やその他の関連する国際連合決議及び国際テロリズムに関する条約の実施を通じ、包括的な方法で、テロを防止し、かつ、テロと闘うために、二国間、地域的及び国際的なレベルにおける協力を強化する。この関係で、ASEANは、日本による二国間及び多国間のチャンネルを通じたテロ対策分野におけるASEANへの支援の拡大の約束を歓迎した。ASEANは2006年の早い段階にテロ対策に関する対話を立ち上げるという日本の提案を歓迎した。

防災の強化

10.我々は、津波、地震、洪水、その他の自然災害による挑戦に対処するために日ASEAN間、さらには地域及び世界のその他の国々と協調した努力を行うとの決意を再確認した。これに関連して、日本は、早期警戒体制、防災及び緊急事態対応のための即応体制の構築、及び災害後の復旧・復興努力を確立するための地域の努力に対して支援する。

感染症対策

11.我々は、HIV/エイズ、マラリア、結核、鳥インフルエンザといった感染症及び再興感染症の問題とその発生に対処する上での協力の重要性を再確認した。日本は、ASEAN加盟国が鳥インフルエンザの広がり及びその他の感染症の大発生の問題に対処できるようキャパシティ・ビルディングにおいてASEANに必要な支援を行う。この点において、日本は、アジアにおける鳥インフルエンザ対策への大型支援として、ASEAN域内50万人分のタミフルの供与を含む、1億3500万ドルの支援を表明した。

エネルギー協力

12.我々は、石油価格の高騰に関する意見交換を行い、かつ、エネルギー安全保障とその持続的利用を確保するために、エネルギー効率化及び省エネルギーのための方策、エネルギー供給源の多様化及びバイオ燃料や水力等の代替・再生可能エネルギーの利用、資源の効果的かつクリーンな利用、石油備蓄システムの整備、並びにエネルギー関連統計の整備等の分野における協力を通じ、エネルギー協力を進展させる意思を再確認した。我々は、閣僚及び実務者に対し、日本とASEANの間で、短期的に、また、中長期的に協力することが可能な分野を検討するよう指示した。

人的交流の促進

13.人と人との交流レベルでの日ASEANパートナーシップに実質及び形式の双方を与える観点から、我々は、文化、人材開発及び中小産業を含む様々な分野において、共同で旗艦プロジュクトを共に進めていくという点で意見が一致した。日本とASEANは、ハイレベル交流を含む定期的な対話や交流を強化し、青少年や学生間の交流をはじめとする人と人との交流の助長による市民の意識向上及び理解の深化を促進する。これに関連して、ASEANは、職業教育及び高等教育を含む交流プログラムに資金提供するとの日本の約束に感謝した。

東アジア協力の深化

14.我々は、東アジア共同体は、この地域さらにはそれを越えた地域における平和、安全、繁栄及び発展の維持に貢献する、長期的な目標であることを確認した。これに関連して、我々は、引き続き、ASEANを推進力として、ASEAN+3プロセスにおける協力を積極的に促進するとともに、東アジア首脳会議を通じ、関心と懸念を共有する広範な戦略的、政治的、経済的諸問題についての対話を強化する。我々は、引き続き、東アジア・スタディー・グループの最終報告書に記載された短期、中期、及び長期的な措置並びにASEAN+3の枠組みの下でのその他の活動の実施を加速化させる。我々は、過去10年間における協力の実績を検討するためにASEAN+3協力を再検討するとともに、2007年のASEAN+3首脳会議において発出されることとなる東アジア協力に関する第2共同声明を準備するために、緊密に取り組む。

国際問題への対応

15.我々は、国際問題に関して意見交換を行い、環境、不拡散及び国連改革などの地域的・地球的規模なレベルでより効果的な協力を行っていくべき点で合意した。先般の国連首脳会議の成果文書に基づき、我々は、国連を21世紀の現実をよりよく反映した組織とするため、国連総会の今会期中に、安全保障理事会を含む国連システムの包括的な改革を促進するために、我々の力を結集する。

16.我々は、全ての人々、特に途上国の人々のニーズや願望に対応する上で国連が効果的な指導力を発揮することを重視した。我々は、2006年末に国連事務総長のポストを占めるのはアジア地域の番であるとの原則に対する支持が明確になりつつあることを歓迎した。この点について、タイからの候補者をASEANが強く支持していることは、アジアがこの重要な地位に強力かつ十分に資格のある候補者がいることを確かなものとするうえで、ひとつの前向きな貢献であることに留意した。

17.我々は、この共同声明に含まれる措置を実施するよう閣僚と高級実務者に指示した。