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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 包括的な経済上の連携に関する日本国及び東南アジア諸国連合構成国の間の協定

[場所] 
[年月日] 2008年4月
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

包括的な経済上の連携に関する日本国及び東南アジア諸国連合構成国の間の協定

目次

   前文

   第一章 総則

    第一条 一般的定義

    第二条 原則

    第三条 目的

    第四条 透明性

    第五条 秘密性

    第六条 租税

    第七条 一般的例外

    第八条 安全保障のための例外

    第九条 非政府機関

    第十条 他の協定との関係

    第十一条 合同委員会

    第十二条 全締約国間の連絡

   第二章 物品の貿易

    第十三条 定義

    第十四条 物品の分類

    第十五条 内国の課税及び規則に関する内国民待遇

    第十六条 関税の撤廃又は引下げ

    第十七条 関税上の評価

    第十八条 非関税措置

    第十九条 譲許の修正

    第二十条 セーフガード措置

    第二十一条 国際収支の擁護のための措置

    第二十二条 税関手続

   第三章 原産地規則

    第二十三条 定義

    第二十四条 原産品

    第二十五条 完全に得られ、又は生産される産品

    第二十六条 完全には得られず、又は生産されない産品

    第二十七条 域内原産割合の算定

    第二十八条 僅{僅にキンとルビ}少の非原産材料

    第二十九条 累積

    第三十条 原産資格を与えることとならない作業

    第三十一条 直接積送

    第三十二条 こん包材料及びこん包容器

    第三十三条 附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料

    第三十四条 間接材料

    第三十五条 同一の又は交換可能な材料

    第三十六条 運用上の証明手続

    第三十七条 原産地規則に関する小委員会

   第四章 衛生植物検疫措置

    第三十八条 適用範囲

    第三十九条 権利及び義務の再確認

    第四十条 衛生植物検疫措置に関する小委員会

    第四十一条 照会所

    第四十二条 第九章の規定の不適用

   第五章 任意規格、強制規格及び適合性評価手続

    第四十三条 目的

    第四十四条 適用範囲

    第四十五条 権利及び義務の再確認

    第四十六条 協力

    第四十七条 照会所

    第四十八条 任意規格、強制規格及び適合性評価手続に関する小委員会

    第四十九条 第九章の規定の不適用

   第六章 サービスの貿易

    第五十条 サービスの貿易

   第七章 投資

    第五十一条 投資

   第八章 経済的協力

    第五十二条 基本原則

    第五十三条 経済的協力の分野

    第五十四条 経済的協力に関する小委員会

    第五十五条 経済的協力のための事業計画

    第五十六条 経済的協力のための資源

    第五十七条 経済的協力に関する活動の実施

    第五十八条 次章の規定の不適用

   第九章 紛争解決

    第五十九条 定義

    第六十条 適用範囲

    第六十一条 連絡部局

    第六十二条 協議

    第六十三条 あっせん、調停及び仲介

    第六十四条 仲裁裁判所の設置

    第六十五条 仲裁裁判所の構成

    第六十六条 第三国

    第六十七条 仲裁裁判所の任務

    第六十八条 仲裁裁判手続

    第六十九条 裁定案及び裁定

    第七十条 仲裁裁判手続の停止及び終了

    第七十一条 裁定の実施

    第七十二条 代償及び譲許の停止

    第七十三条 費用

   第十章 最終規定

    第七十四条 目次、見出し及び小見出し

    第七十五条 見直し

    第七十六条 附属書及び注釈

    第七十七条 改正

    第七十八条 寄託者

    第七十九条 効力発生

    第八十条 脱退及び終了

  附属書一 関税の撤廃又は引下げに関する表

  附属書二 品目別規則

  附属書三 情報技術製品

  附属書四 運用上の証明手続

  附属書五 経済的協力のための事業計画

 

   前文

 日本国並びに東南アジア諸国連合(以下「ASEAN」という。)構成国であるブルネイ・ダルサラーム国、カンボジア王国、インドネシア共和国、ラオス人民民主共和国、マレーシア、ミャンマー連邦、フィリピン共和国、シンガポール共和国、タイ王国及びベトナム社会主義共和国の政府は、

 二千二年十一月五日にカンボジアのプノンペンで署名された共同宣言及び二千三年十月八日にインドネシアのバリで署名された日本国と東南アジア諸国連合との間の包括的な経済上の連携の枠組みを想起し、

 政治的及び経済的な分野のみならず社会的及び文化的な分野をも含む広範な分野において、相互の信頼及び信用に基づく日本国とASEANとの間の関係を深化することを希望し、

日本国及び全ASEAN構成国の間の経済活動を通じたASEANの継続的発展並びに三十年間に広範な分野において経済的なきずなを拡大してきた日本国とASEANとの間の関係における著しい進展に動かされ、

 日本国とASEANとの間の包括的な経済上の連携(以下「AJCEP」という。)が、相互の利益のため、日本国とASEANとの間の経済的なきずなを強化し、より多くの機会及びより大きな規模の経済を実現するようなより大きく、かつ、より効率的な市場を創出し、並びに資本及び人材に対する日本国及びASEANの魅力を高めることを確信し、

日本国及び全ASEAN構成国の間の経済関係の強化に向けた多層的な、かつ、多面的な二国間の及び地域的な努力が、このような包括的な経済上の連携の実現を円滑にすることを認識し、

 このような包括的な経済上の連携が、ASEANの経済的な統合及び一体性から利益を得るべきであり、並びにそれらを補完するものであるべきであるとひとしく認め、

 さらに、全ASEAN構成国の間における経済開発の様々な段階を認識し、

物品及びサービスの貿易並びに投資等の分野を含むこの協定が、東アジアにおける経済的な統合に向けた重要な基礎となることを確信し、

 千九百九十四年四月十五日にマラケシュで作成された世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(以下「世界貿易機関設立協定」という。)の附属書一A千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第二十四条及び附属書一Bサービスの貿易に関する一般協定第五条を想起し、

 多角的貿易体制の枠組みにおいて地域的及び国際的な自由化を加速する触媒としての地域的な貿易協定の役割を認識し、

 世界貿易機関設立協定並びに多数国間の、地域的な及び二国間の協定及び取決めに基づく各締約国の権利及び義務を再確認し、

 全締約国間でこのような包括的な経済上の連携のための法的枠組みを設定することを決意して、

 次のとおり協定した。

   第一章 総則

    第一条 一般的定義

 この協定の適用上、

 (a) 「全ASEAN構成国」とは、ブルネイ・ダルサラーム国、カンボジア王国、インドネシア共和国、ラオス人民民主共和国、マレーシア、ミャンマー連邦、フィリピン共和国、シンガポール共和国、タイ王国及びベトナム社会主義共和国を総称していう。

 (b) 「税関当局」とは、関税に関する法令の運用及び執行について責任を負う権限のある当局をいう。

 (c) 「日」とは、暦日をいい、週末及び休日を含む。

 (d) 「サービス貿易一般協定」とは、世界貿易機関設立協定附属書一Bサービスの貿易に関する一般協定をいう。

 (e) 「千九百九十四年のガット」とは、世界貿易機関設立協定附属書一A千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定をいう。この協定の適用上、千九百九十四年のガットの条項を引用する場合には、その注釈及び補足規定を含む。

 (f) 「統一システム」とは、商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約附属書に定める商品の名称及び分類についての統一システムであって、全締約国によりそれぞれの国内法の下で採用され、及び実施されるものをいう。

 (g) 「新規ASEAN構成国」とは、カンボジア王国、ラオス人民民主共和国、ミャンマー連邦及びベトナム社会主義共和国をいう。

 (h) 「全締約国」とは、日本国及び全ASEAN構成国のうち自国についてこの協定の効力が生じたものを総称していう。

 (i) 「締約国」とは、日本国又は全ASEAN構成国のうち自国についてこの協定の効力が生じたもののいずれかをいう。

    第二条 原則

全締約国は、この協定その他の二国間の又は地域的な協定又は取決めを通じてAJCEPを実現することの重要性を再確認し、次の原則を指針とする。

 (a) AJCEPは、日本国及び全ASEAN構成国が関与するものでなければならず、自由化、円滑化及び経済的協力に焦点を合わせた広範な分野を含む。

 (b) AJCEPを実現させる上で、ASEANの一体性、連帯及び統合が維持されなければならない。

 (c) 全ASEAN構成国、特に新規ASEAN構成国に対し、その経済開発の異なる水準を認識し、特別のかつ異なる待遇が与えられる。新規ASEAN構成国に対しては、追加的な柔軟性が与えられる。

 (d) 後発開発途上国のための措置に関する世界貿易機関の閣僚宣言の規定が認識されなければならない。

 (e) 日本国及び各ASEAN構成国の機微に係る分野を取り扱うために柔軟性が与えられるべきである。

 (f) 技術協力及び能力開発は、この協定に基づいて提供される経済的協力の重要な要素である。

    第三条 目的

この協定の目的は、次のとおりとする。

 (a) 全締約国間の物品及びサービスの貿易を漸進的に自由化し、及び円滑化すること。

 (b) 全締約国における投資の機会を改善し、並びに投資財産及び投資活動の保護を確保すること。

 (c) ASEANの経済的な統合を支援し、全ASEAN構成国間における経済開発の格差を縮小し、並びに全締約国間の貿易及び投資を増進するため、全締約国間の経済的協力の増進のための枠組みを設定すること。

    第四条 透明性

1 各締約国は、法令、行政上の手続、一般に適用される行政上の決定及び司法上の決定並びに自国が締結している国際協定であって、この協定の実施及び運用に関連し、又は影響を及ぼすものを、自国の法令に従って、公に利用可能なものとする。

2 各締約国は、1に規定する法令、行政上の手続及び一般に適用される行政上の決定について責任を負う権限のある当局の名称及び所在地を公に利用可能なものとする。

3 各締約国は、他の締約国の要請があった場合には、1に規定する事項に関して、英語で、当該他の締約国の個別の質問に応じ、及び当該他の締約国に情報を提供する。

    第五条 秘密性

1 この協定のいかなる規定も、締約国に対し、秘密の情報であって、その開示が、自国の法令の実施を妨げ、その他公共の利益に反することとなり、又は公私の特定の企業の正当な商業上の利益を害することとなるものの提供を要求するものではない。

2 この協定のいかなる規定も、締約国に対し、金融機関の顧客に関する事項及び勘定に関連する情報の提供を要求するものと解してはならない。

3 各締約国は、自国の法令に従い、他の締約国がこの協定に従って秘密のものとして提供する情報の秘密性を保持する。

    第六条 租税

1 この協定に別段の定めがある場合を除くほか、この協定の規定は、租税に係る課税措置については、適用しない。

2 この協定のいかなる規定も、租税条約に基づく締約国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。この協定と当該租税条約とが抵触する場合には、その抵触の限度において、当該租税条約が優先する。

3 前二条の規定は、この協定の規定が租税に係る課税措置に適用される限度において、当該措置について適用する。

    第七条 一般的例外

 次章から第五章までの規定の適用上、千九百九十四年のガット第二十条の規定は、必要な変更を加えた上で、この協定に組み込まれ、この協定の一部を成す。

    第八条 安全保障のための例外

この協定のいかなる規定も、次のいずれかの事項を定めるものと解してはならない。

 (a) 締約国に対し、その開示が自国の安全保障上の重大な利益に反すると当該締約国が認める情報の提供を要求すること。

 (b) 締約国が自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認める次のいずれかの措置をとることを妨げること。

 (i) 核分裂性物質又はその生産原料である物質に関する措置

 (ii) 武器、弾薬及び軍需品の取引並びに軍事施設に供給するため直接又は間接に行われるその他の貨物及び原料の取引に関する措置

 (iii) 通信、電力及び水道の基盤を含む中枢的な公共基盤を使用不能にし、又は破壊することを意図した計画的な企てから、当該公共基盤を防護するためにとる措置

 (iv) 国内における緊急時又は戦時その他の国際関係の緊急時にとる措置

 (c)締約国が国際の平和及び安全の維持のため国際連合憲章に基づく義務に従って措置をとることを妨げること。

    第九条 非政府機関

 各締約国は、この協定に基づく自国の義務及び約束を履行するに当たり、自国において中央、地域又は地方の政府又は機関によって委任された権限を行使する非政府機関による当該義務及び約束の遵守を確保するよう努める。

    第十条 他の協定との関係

1 各締約国は、世界貿易機関設立協定に基づく自国の他の締約国に対する権利及び義務並びに他の締約国との間で締結しているその他の協定に基づく自国の当該他の締約国に対する権利及び義務を再確認する。

2 各締約国が他の締約国との間で締結している他の協定に基づいて当該他の締約国に対して義務を負う場合において、当該他の締約国に対しこの協定の下で与えられる待遇よりも有利な待遇が当該他の協定の下で与えられるときは、この協定のいかなる規定も、当該義務に影響を及ぼすものと解してはならない。

3 この協定と世界貿易機関設立協定とが抵触する場合には、その抵触の限度において、世界貿易機関設立協定が優先する。

4 この協定と二以上の締約国が締結している協定(世界貿易機関設立協定を除く。)とが抵触する場合には、それらの締約国は、国際法の一般原則を考慮しつつ、相互に満足すべき解決を得るために直ちに相互に協議する。

5 世界貿易機関設立協定を締結していない締約国は、世界貿易機関への加盟の際には、自国の約束に従って世界貿易機関設立協定の規定に拘束される。

    第十一条 合同委員会

1 この協定に基づき合同委員会を設置する。

2 合同委員会は、次の事項を任務とする。

 (a) この協定の実施及び運用について見直しを行うこと。

 (b) 全締約国に対し、この協定の実施及び運用についての報告を提出すること。

 (c) この協定の改正について検討し、及び全締約国に勧告すること。

 (d) この協定に基づいて設置されるすべての小委員会の作業を監督し、及び調整すること。

 (e) 次のものを採択すること。

 (i) 附属書四規則十一に規定する運用上の規則

 (ii) 必要な決定

 (f) 全締約国が合意するその他の任務を遂行すること。

3(a) 合同委員会は、日本国及び全ASEAN構成国の代表者から成る。

 (b) 合同委員会は、小委員会を設置し、自己の任務の遂行を委任することができる。

4 合同委員会は、全締約国が合意する場所及び時期において会合する。

    第十二条 全締約国間の連絡

 各締約国は、第六十一条に規定する場合を除くほか、この協定に関するすべての事項について全締約国間の連絡を円滑にするため、連絡部局を指定する。それらに係るすべての公式の連絡は、英語で行う。

   第二章 物品の貿易

    第十三条 定義

 この章の規定の適用上、

 (a) 「関税」とは、産品の輸入に関連して課される関税、輸入税その他あらゆる種類の課徴金をいう。ただし、次のものを含まない。

 (i) 輸入される当該産品と同様の国内産品に対し、又は輸入される当該産品の全部若しくは一部がそれから製造され、若しくは生産されている産品に対して、千九百九十四年のガット第三条2の規定に適合して課される内国税に相当する課徴金

 (ii) 千九百九十四年のガット第六条、世界貿易機関設立協定附属書一A千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定及び世界貿易機関設立協定附属書一A補助金及び相殺措置に関する協定の規定に適合して課されるダンピング防止税又は相殺関税

 (iii) 提供された役務の費用に応じた手数料その他の課徴金

 (b) 「関税法令」とは、物品の輸入、輸出及び通過に関して各締約国の税関当局が運用し、及び執行する法令であって、関税、手数料及び他の税に関するもの又は各締約国の関税領域の境界を越える規制物品の移動の禁止、制限その他これらに類する規制に関するものをいう。

 (c) 「物品の課税価額」とは、従価による関税の賦課のための輸入物品の価額をいう。

 (d) 「国内産業」とは、締約国内で活動する同種の若しくは直接に競合する産品の生産者の全体又はこれらの生産者のうち当該産品の生産高の合計が当該産品の国内総生産高の相当な部分を占めている生産者をいう。

 (e) 「原産品」とは、次章の規定に従って原産品とされる産品をいう。

 (f) 「重大な損害」とは、国内産業の状態の著しい全般的な悪化をいう。

 (g) 「重大な損害のおそれ」とは、事実に基づき、明らかに差し迫った重大な損害と認められるものをいい、申立て、推測又は希薄な可能性のみに基づくものは含まない。

    第十四条 物品の分類

 全締約国間で取引される物品の分類は、統一システムに適合したものとする。

    第十五条 内国の課税及び規則に関する内国民待遇

 各締約国は、千九百九十四年のガット第三条の規定の例により、他の締約国の産品に対して内国民待遇を与えるものとし、このため、同条の規定は、必要な変更を加えた上で、この協定に組み込まれ、この協定の一部を成すこととなる。

    第十六条 関税の撤廃又は引下げ

1 この協定に別段の定めがある場合を除くほか、各締約国は、他の締約国の原産品について、附属書一の自国の表に従って、関税を撤廃し、又は引き下げる。その撤廃又は引下げは、他のすべての締約国の原産品に対して無差別的に適用する。

2 全締約国は、物品の貿易の自由化へ向けて、千九百九十四年のガットに適合する単独の、二国間の又は地域的な努力を通じて追加的な手段をとるよう努める。

3 全締約国は、この章のいかなる規定も、第七条に規定するとおり、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約又は関連する他の国際協定を締結している締約国がこれらの国際約束に従って自国の法令に基づく有害廃棄物又は有害物質に関する措置を採用すること又は実施することを妨げるものと解してはならないことを再確認する。

    第十七条 関税上の評価

 世界貿易機関設立協定附属書一A千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第七条の実施に関する協定(以下「関税評価協定」という。)第一部の規定は、全締約国間で取引される物品の課税価額の決定について準用する。

 注釈 カンボジア王国については、関税評価協定は、世界貿易機関へのカンボジア王国の加入のための議定書の規定に従って実施されるものを準用する。

    第十八条 非関税措置

1 各締約国は、他の締約国の産品の輸入について又は他の締約国に仕向けられる産品の輸出若しくは輸出のための販売について、世界貿易機関設立協定において認められる措置と同一の措置を除くほか、いかなる非関税措置(数量制限を含む。)も新設し、又は維持してはならない。

2 各締約国は、1の規定において認められた自国の非関税措置(数量制限を含む。)の透明性を確保する。世界貿易機関の加盟国である締約国は、貿易にもたらされ得るゆがみを可能な限り最小にするため、世界貿易機関設立協定に基づく義務の完全な遵守を確保する。

    第十九条 譲許の修正

1 全締約国は、この協定に規定する場合を除くほか、この協定に基づく譲許を無効にし、又は侵害してはならない。

2 いずれの締約国も、利害関係を有する他の締約国との間で、この協定に基づき行われた譲許を修正し、又は撤回するために交渉することができる。その交渉(他の産品に関する補償的調整を含むことができる。)において、関係締約国は、その交渉前におけるこの協定に定められた水準より貿易にとって不利でない相互的かつ互恵的な譲許の一般的水準を維持する。当該交渉の結果をこの協定に反映するに当たり、第七十七条の規定を適用する。

    第二十条 セーフガード措置

1 世界貿易機関の加盟国である締約国は、千九百九十四年のガット第十九条及び世界貿易機関設立協定附属書一Aセーフガードに関する協定(以下「セーフガード協定」という。)又は世界貿易機関設立協定附属書一A農業に関する協定(以下「農業協定」という。)第五条の規定に従い、他の締約国の原産品に対してセーフガード措置をとることができる。この協定の第九章の規定は、千九百九十四年のガット第十九条及びセーフガード協定又は農業協定第五条の規定に従ってとったいかなる行為についても、適用しない。

2 各締約国は、自国がこの協定に基づいて負う義務(関税の譲許を含む。)の効果により、又は事情の予見されなかった発展の結果及び自国がこの協定に基づいて負う義務の効果により、他の締約国の原産品が自国において同種の又は直接に競合する産品を生産する自国の国内産業に重大な損害を与え、又は与えるおそれがあるような増加した数量(絶対量であるか国内生産量に比較しての相対量であるかを問わない。)で、及びそのような条件で、自国に輸入されているときは、当該重大な損害を防止し、又は救済し、かつ、調整を容易にするために必要な最小限度の範囲において、この条に規定するセーフガード措置(以下「AJCEPセーフガード措置」という。)をとることができるものとする。

3 AJCEPセーフガード措置は、輸入締約国によるある産品の輸入において、ASEAN構成国である一の締約国の原産品である当該産品の輸入が当該輸入締約国以外の締約国からの当該産品の総輸入量の三パーセントを超えない場合には、当該ASEAN構成国である一の締約国の原産品である当該産品についてとられてはならない。ただし、三パーセントを超えない輸入の割合を有する複数の締約国からの輸入の割合の合計が当該輸入締約国以外の締約国からの当該産品の総輸入量の九パーセント以下であることを条件とする。

4 締約国は、附属書一の自国の表に従って適用される関税割当てに基づいて与えられる割当数量を限度として輸入される原産品について、AJCEPセーフガード措置をとってはならない。

5 AJCEPセーフガード措置をとる締約国は、次のいずれかの措置をとることができる。

 (a) この章の規定に基づく関税の段階的な引下げの対象となる他の締約国の原産品であって、AJCEPセーフガード措置の対象となるものの関税の更なる引下げを停止すること。

 (b) 次の関税のうちいずれか低い方を超えない水準まで他の締約国の当該原産品の関税を引き上げること。

 (i) AJCEPセーフガード措置をとる日における当該原産品の実行最恵国税率

 (ii)第七十九条1の規定に従ってこの協定が効力を生ずる日の前日における当該原産品の実行最恵国税率

6(a) 締約国は、セーフガード協定第三条及び第四条2に定める手続と同様の手続に従い、自国の権限のある当局が調査を行った後においてのみAJCEPセーフガード措置をとることができる。

 (b) (a)に規定する調査については、その開始の日の後一年以内に完了させなければならない。

7 次の条件及び制限は、AJCEPセーフガード措置について適用する。

 (a) 締約国は、次の場合には、他の締約国に対し直ちに書面による通報を行う。

 (i) 重大な損害又は重大な損害のおそれ及びこれらの理由に関する6(a)に規定する調査を開始する場合

 (ii) 輸入の増加により引き起こされた重大な損害又は重大な損害のおそれの認定を行う場合

 (iii) AJCEPセーフガード措置をとり、又は延長する決定を行う場合

 (b) (a)に規定する書面による通報を行う締約国は、すべての関連する情報を他の締約国に提供する。この情報には、次の事項を含める。

 (i) (a)(i)の場合における書面による通報については、調査の開始の理由、調査の対象となる原産品の正確な説明及び当該原産品が分類される統一システムの項又は号(附属書一の表において用いられているもの)、調査の対象となる期間並びに調査の開始の日付

 (ii) (a)(ii)及び(iii)の場合における書面による通報については、原産品の輸入の増加により引き起こされた重大な損害又は重大な損害のおそれがあることについての証拠、とろうとするAJCEPセーフガード措置の対象となる原産品の正確な説明及び当該原産品が分類される統一システムの項又は号(附属書一の表において用いられているもの)、当該AJCEPセーフガード措置の正確な説明並びに当該AJCEPセーフガード措置を導入しようとする日付及び予定適用期間

 (c) AJCEPセーフガード措置をとろうとし、又は延長しようとする締約国は、(a)に規定する調査から得られる情報を検討し、当該AJCEPセーフガード措置に関し意見を交換し、及び8に規定する補償について合意に達するため、当該AJCEPセーフガード措置により影響を受ける締約国と事前の協議を行うための十分な機会を与える。

 (d) AJCEPセーフガード措置は、重大な損害を防止し、又は救済し、かつ、調整を容易にするために必要な限度及び期間を超えて維持されてはならず、また、その適用期間は、三年を超えてはならない。AJCEPセーフガード措置は、この条に定める条件が満たされる場合には、延長することができる。ただし、AJCEPセーフガード措置の適用期間の合計は、その延長の期間を含めて、四年を超えるものであってはならない。AJCEPセーフガード措置の予定適用期間が一年を超える場合において、調整を容易にするため、当該AJCEPセーフガード措置を維持している締約国は、その適用期間中一定の間隔で当該AJCEPセーフガード措置を漸進的に緩和する。

 (e) AJCEPセーフガード措置の対象とされた原産品の輸入については、当該AJCEPセーフガード措置がとられた期間と等しい期間又は一年のうちいずれか長い期間が経過するまで、AJCEPセーフガード措置を再度とってはならない。

 (f) ある産品に対するAJCEPセーフガード措置の適用期間の終了後における当該産品に対する関税率は、AJCEPセーフガード措置をとる締約国の附属書一の表に従い、当該AJCEPセーフガード措置がとられなかったとしたならば適用したであろう税率とする。

8(a) AJCEPセーフガード措置をとろうとし、又は延長しようとする締約国は、他の締約国に対し、自国と当該AJCEPセーフガード措置により影響を受ける輸出締約国との間にこの協定に基づいて存在する譲許その他の義務と実質的に等価値の対応を譲許その他の義務について講ずることを約束することにより、相互に合意される貿易上の補償の適切な方法を提供する。

 (b) 全締約国は、(a)に規定する補償を追求するに当たり、合同委員会において協議を行う。当該協議から生ずるいずれの手続も、AJCEPセーフガード措置がとられた日から三十日以内に完了するものとする。

 (c) (b)に規定する期間内に補償についての合意が得られない場合には、AJCEPセーフガード措置をとる締約国以外の締約国は、当該AJCEPセーフガード措置をとる締約国の原産品について、この協定に基づく関税の譲許であって、当該AJCEPセーフガード措置と実質的に等価値のものを停止することができる。当該AJCEPセーフガード措置をとる締約国以外の締約国は、実質的に同等の効果を達成するために必要最小限度の、かつ、当該AJCEPセーフガード措置が維持されている期間に限り、当該譲許の停止を行うことができる。この(c)に定める譲許を停止する権利は、当該AJCEPセーフガード措置が輸入の絶対量の増加の結果としてとられたものであり、かつ、当該AJCEPセーフガード措置がこの条の規定に適合する場合には、当該AJCEPセーフガード措置がとられている最初の二年間については、行使されてはならない。

9(a) 千九百九十四年のガット第十九条及びセーフガード協定又は農業協定第五条の規定に従って他の締約国の原産品の輸入に関してセーフガード措置をとる締約国は、当該輸入に対してAJCEPセーフガード措置をとってはならない。

 (b) 7(d)に規定するAJCEPセーフガード措置の適用期間は、締約国が(a)の規定に従ってAJCEPセーフガード措置をとらないことによって中断されない。

10(a) 全締約国は、第七十九条1の規定に従ってこの協定が効力を生じた後十年以内に、AJCEPセーフガード措置に関する制度を維持する必要があるか否かを決定するため、この条の規定について見直しを行う。

 (b) 全締約国は、(a)の規定に基づく見直しの間にAJCEPセーフガード措置に関する制度を撤廃することに合意しない場合には、その後は第七十五条の規定に基づく一般的な見直しとの関連において、AJCEPセーフガード措置に関する制度を維持する必要があるか否かを決定するための見直しを行う。

11(a) 遅延すれば回復し難い損害を引き起こすような危機的な事態が存在する場合には、締約国は、原産品の輸入の増加が国内産業に対する重大な損害を引き起こしていること又は引き起こすおそれがあることについての明白な証拠があるという仮の決定に基づき、5(a)又は(b)に規定する措置の形態をとる暫定的なAJCEPセーフガード措置をとることができる。

 (b) 締約国は、暫定的なAJCEPセーフガード措置をとる前に、他の締約国に対し書面による通報を行う。暫定的なAJCEPセーフガード措置の適用については、これがとられた後速やかに合同委員会において全締約国による協議を開始する。

 (c) 暫定的なAJCEPセーフガード措置の期間は、二百日を超えてはならない。その期間中、6に定める関連する要件が満たされるものとする。暫定的なAJCEPセーフガード措置の期間は、7(d)に規定する期間に算入される。

 (d) 3及び7(f)の規定は、暫定的なAJCEPセーフガード措置について準用する。

 (e) 暫定的なAJCEPセーフガード措置の結果として課された関税は、その後行われる6(a)に規定する調査により原産品の輸入の増加が国内産業に対する重大な損害を引き起こしているとの、又は引き起こすおそれがあるとの決定が行われない場合には、払い戻される。

12 全締約国間で交換されるすべての公式の連絡及び文書であって、AJCEPセーフガード措置に関するものは、書面によるものとし、英語で行うものとする。

    第二十一条 国際収支の擁護のための措置

この章のいかなる規定も、締約国が国際収支上の目的のために措置をとることを妨げるものと解してはならない。当該措置をとる締約国は、千九百九十四年のガット第十二条及び世界貿易機関設立協定附属書一A千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の国際収支に係る規定に関する了解に規定する条件に従うものとする。

    第二十二条 税関手続

1 各締約国は、予見可能であり、かつ、一貫性及び透明性のある方法で自国の税関手続を適用するよう努める。

2 各締約国は、税関手続の分野における透明性を向上させることの重要性を認識して、自国の国内法令及び利用可能な資源に従うことを条件として、自国の関税法令に関し全締約国の利害関係者が提起した個別的な事項についての情報を提供するよう努める。各締約国は、当該情報のみでなく、当該利害関係者が知るべきであると考えるその他の適切な情報も併せて提供するよう努める。

3 各締約国は、貿易の円滑化を促進するに当たっての税関当局の重要な役割及び税関手続の重要性を認識して、全締約国間で取引される物品の速やかな通関のため、次の事項を行うよう努める。

 (a) 自国の税関手続を簡素化すること。

 (b) 関税協力理事会の主催の下で作成される標準規定及び勧告規定その他の関連する国際的な基準及び勧告された慣行に自国の税関手続を可能な限り調和させること。

   第三章 原産地規則

    第二十三条 定義

この章の規定の適用上、

 (a) 「輸出者」とは、輸出締約国に所在する自然人又は法人であって、当該輸出締約国から産品を輸出するものをいう。

 (b) 「当該締約国の工船」又は「当該締約国の船舶」とは、それぞれ、次のすべての条件を満たす工船又は船舶をいう。

 (i) 当該締約国において登録されていること。

 (ii) 当該締約国の旗を掲げて航行すること。

 (iii) 一又は二以上の締約国の国民又は法人(いずれかの締約国に本店を有する法人であって、代表者、役員会の長及び当該役員会の構成員の過半数が一又は二以上の締約国の国民であり、かつ、一又は二以上の締約国の国民又は法人が五十パーセント以上の持分を所有しているものに限る。)が五十パーセント以上の持分を所有していること。

 (iv) 船長、上級乗組員及び乗組員の総数の七十五パーセント以上が一又は二以上の締約国の国民であること。

 (c) 「一般的に認められている会計原則」とは、収入、経費、費用、資産又は負債の記録、情報の開示及び財務書類の作成に関して、締約国において一般的に認められている、又は十分に権威のある支持を得ている会計原則をいう。これらの規準には、一般的に適用される概括的な指針並びに詳細な基準、慣行及び手続を含む。

 (d) 「産品」とは、商品、生産品、製品又は材料をいう。

 (e) 「同一の又は交換可能な材料」とは、同一の技術的及び物理的特性を有し、かつ、種類及び商業上の品質が同一である材料であって、産品に組み込まれた後は、いかなる表示に基づいても、原産品であるか否かを決定する上でそれぞれを区別することができないものをいう。

 (f) 「輸入者」とは、輸入締約国に産品を輸入する自然人又は法人をいう。

 (g) 「材料」とは、物又は物質であって、産品の生産において使用され、若しくは消費され、物理的に産品に組み込まれ、又は他の産品の生産に使用されるものをいう。

 (h) 「原産品」又は「原産材料」とは、この章の規定に従って原産品とされる産品又は材料をいう。

 (i) 「輸送用及び船積み用のこん包材料及びこん包容器」とは、産品を輸送中又は船積み中に保護するために使用される産品であって、その産品の小売用の容器及び材料以外のものをいう。

 (j) 「関税上の特恵待遇」とは、第十六条1の規定に従って輸出締約国の原産品について適用する関税率をいう。

 (k) 「生産」とは、産品を得る方法をいい、栽培、採掘、収穫、成育、繁殖、抽出、採集、収集、捕獲、漁ろう、わなかけ、狩猟、製造、加工及び組立てを含む。

    第二十四条 原産品

この協定の適用上、次のいずれかの産品であって、この章に規定する他のすべての関連する要件を満たすものは、締約国の原産品とする。

 (a) 当該締約国において完全に得られ、又は生産される産品であって、次条に定めるもの

 (b) 非原産材料を使用する場合には、第二十六条に定める要件を満たすもの

 (c) 一又は二以上の締約国の原産材料のみから当該締約国において完全に生産される産品

    第二十五条 完全に得られ、又は生産される産品

前条の(a)規定の適用上、次に掲げる産品は、締約国において完全に得られ、又は生産される産品とする。

 (a) 当該締約国において栽培され、かつ、収穫され、採取され、又は採集される植物及び植物性生産品

注釈 この(a)の規定の適用上、「植物」とは、すべての植物(果実、花、野菜、樹木、海草、菌類及び生きている植物を含む。)をいう。

 (b) 生きている動物であって、当該締約国において生まれ、かつ、成育されたもの

注釈 この(b)及び(c)の規定の適用上、「動物」とは、すべての動物(哺{哺にホとルビ}乳類、鳥類、魚、甲殻類、軟体動物、爬{爬にハとルビ}虫類、細菌及びウィルスを含む。)をいう。

 (c) 当該締約国において生きている動物から得られる産品

 (d) 当該締約国において行われる狩猟、わなかけ、漁ろう、採集又は捕獲により得られる産品

 (e) 当該締約国の土壌、水域、海底又はその下において抽出され、又は得られる鉱物その他の天然の物質((a)から(d)までに規定するものを除く。)

 (f) 当該締約国の領水外の水域、海底又はその下から得られる産品。ただし、当該締約国が、自国の国内法令及び国際法に基づき、当該水域、海底又はその下を開発する権利を有することを条件とする。

注釈 この協定のいかなる規定も、海洋法に関する国際連合条約を含む国際法に基づく全締約国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。

 (g) 当該締約国の船舶により、全締約国の領海外から得られる水産物その他の海洋からの生産品

 (h) 当該締約国の工船上において(g)に規定する産品のみから加工され、又は生産される産品

 (i) 当該締約国において収集される産品であって、当該締約国において本来の目的を果たすことができず、又は回復若しくは修理が不可能であり、かつ、処分、部品若しくは原材料の回収又は再利用のみに適するもの

 (j) 当該締約国における製造若しくは加工作業(採掘、農業、建設、精製、焼却及び下水処理作業を含む。)又は消費から生ずるくず及び廃品であって、処分又は原材料の回収のみに適するもの

 (k) 当該締約国において(a)から(j)までに規定する産品のみから得られ、又は生産される産品

    第二十六条 完全には得られず、又は生産されない産品

1 第二十四条(b)の規定の適用上、次に掲げる産品は、締約国の原産品とする。

 (a) 次条に定める計算式を用いて算定する当該産品の域内原産割合(以下「RVC」という。)が四十パーセント以上の産品であって、生産の最終工程が当該締約国において行われたもの

 (b) 当該産品の生産に使用されたすべての非原産材料について、当該締約国において統一システムの関税分類の変更(以下「CTC」という。)であって四桁番号の水準におけるもの(すなわち、項の変更)が行われた産品

注釈 この(b)の規定の適用上、「統一システム」とは、附属書二に定める品目別規則において用いられているものをいう。

産品が当該締約国の原産品であるか否かを決定するに当たり、各締約国は、当該産品の輸出者がこの(a)又は(b)の規定のいずれを用いるかについて決定することを認める。

2 1の規定にかかわらず、品目別規則の対象となる産品は、附属書二に定める適用可能な品目別規則を満たす場合には、原産品とする。品目別規則がRVCに基づく原産地規則、CTCに基づく原産地規則、特定の製造若しくは加工作業が行われること又はこれらのいずれかのものの組合せを選択することを規定する場合には、産品が締約国の原産品であるか否かを決定するに当たり、各締約国は、当該産品の輸出者がいずれの規則を用いるかについて決定することを認める。

3 1(a)の規定の適用上、及び附属書二に定める関連する品目別規則であって、特定のRVCを定めるものの適用上、次条に定める計算式を用いて算定する産品のRVCは、当該産品の規則に定める割合以上であることを要件とする。

4 1(b)の規定の適用上、及び附属書二に定める関連する品目別規則の適用上、使用された材料についてCTC又は特定の製造若しくは加工作業が行われたことを求める規則は、非原産材料についてのみ適用する。

5 この章の規定の適用上、附属書三を適用する。

    第二十七条 域内原産割合の算定

1 産品のRVCは、次の計算式を用いて算定する。

RVCF=
FOB−VNM
FOB
×100%

2 この条の規定の適用上、

 (a) 「FOB」とは、3に規定する場合を除くほか、産品の本船渡しの価額(生産者から外国に向けた最終的な積込みを行う港又は場所まで輸送するために要する運賃を含む。)をいう。

 (b) 「RVC」とは、百分率で表示される産品のRVCをいう。

 (c) 「VNM」とは、産品の生産において使用されるすべての非原産材料の価額をいう。

3(a) 産品の本船渡しの価額は存在するが、その価額が不明で確認することができない場合には、2(a)に規定するFOBは、当該産品の買手から当該産品の生産者への確認可能な最初の支払に係る価額に調整される価額とする。

 (b) 産品の本船渡しの価額が存在しない場合には、2(a)に規定するFOBは、関税評価協定第一条から第八条までの規定に従って決定される価額とする。

4 1の規定の適用上、締約国における産品の生産に使用される非原産材料の価額は、次のいずれかの価額とする。

 (a) 関税評価協定に従って決定される価額であって、当該産品の生産者の所在する締約国の輸入港に当該非原産材料を輸送するために要する運賃、保険料、適当な場合のこん包費その他のすべての費用を含むもの

 (b) 当該非原産材料の価額が不明で確認することができない場合には、当該非原産材料についての当該締約国における確認可能な最初の支払に係る価額。ただし、当該非原産材料の供給者の倉庫から当該産品の生産者の所在地まで当該非原産材料を輸送するために当該締約国において要する運賃、保険料、こん包費その他のすべての費用及び当該締約国において要する他の費用(一般的に認められており、かつ、確認可能なものに限る。)を除外することができる。

5 1の規定の適用上、産品のVNMには、当該産品の生産に当たって使用される当該締約国の原産材料の生産において使用される非原産材料の価額を含めない。

6 3(b)又は4(a)の規定の適用において産品又は非原産材料の価額を決定するために関税評価協定を適用するに当たり、関税評価協定は、必要な変更を加えて、国内取引の場合又は当該産品若しくは非原産材料の国内取引が存在しない場合について適用する。

    第二十八条 僅{僅にキンとルビ}少の非原産材料

1 第二十六条1(b)に定める要件又は附属書二に定めるCTCに基づく適用可能な原産地規則を満たさない産品については、次の場合には、締約国の原産品とみなす。ただし、当該産品が原産品とされるためのこの章に定める他のすべての関連する基準を満たしている場合に限る。

 (a) 統一システムの第一六類、第一九類、第二〇類、第二二類、第二三類、第二八類から第四九類までの各類及び第六四類から第九七類までの各類に分類される産品については、当該産品の生産に使用された非原産材料(必要なCTCが行われていないものに限る。)の総額が当該産品のFOBの十パーセント以下の場合

 (b) 統一システムの第一八類及び第二一類に分類される特定の産品については、当該産品の生産に使用された非原産材料(必要なCTCが行われていないものに限る。)の総額が、附属書二に定められているとおり、当該産品のFOBの十パーセント又は七パーセント以下の場合

 (c) 統一システムの第五〇類から第六三類までの各類に分類される産品については、当該産品の生産に使用された非原産材料(必要なCTCが行われていないものに限る。)の総重量が当該産品の総重量の十パーセント以下の場合

注釈この1の規定の適用上、前条2(a)の規定を適用する。

2 もっとも、1に規定する非原産材料の価額は、産品に適用可能なRVCに基づく原産地規則においては、非原産材料の価額に含める。

    第二十九条 累積

 締約国の原産材料であって、他の締約国において産品を生産するために使用されたものについては、当該産品を完成させるための作業又は加工が行われた当該他の締約国の原産材料とみなす。

    第三十条 原産資格を与えることとならない作業

 産品については、次の作業が行われることのみを理由として、CTC又は特定の製造若しくは加工作業の要件を満たすものとしてはならない。

 (a) 輸送又は保管の間に産品を良好な状態に保管することを確保する作業(乾燥、冷凍、塩水漬け等)その他これに類する作業

 (b) 改装及び仕分

 (c) 組み立てられたものを分解する作業

 (d) 瓶、ケース及び箱に詰めることその他の単純な包装作業

 (e) 統一システムの解釈に関する通則2(a)の規定に従って一の産品として分類される部品及び構成品の収集

 (f) 物品を単にセットにする作業

 (g) (a)から(f)までの作業の組合せ

    第三十一条 直接積送

1 関税上の特恵待遇は、この章に規定する要件を満たし、かつ、輸出締約国から輸入締約国へ直接積送される原産品に対して与える。

2 次のいずれかの産品は、輸出締約国から輸入締約国へ直接積送されるものとみなす。

 (a) 輸出締約国から輸入締約国へ直接輸送される産品

 (b) 一若しくは二以上の締約国(輸出締約国及び輸入締約国を除く。)又は第三国を経由して輸送される産品。ただし、当該産品について、積替え又は一時蔵置、積卸し及び当該産品を良好な状態に保存するために必要なその他の作業以外の作業が行われていない場合に限る。

    第三十二条 こん包材料及びこん包容器

1 産品の輸送又は船積み用のこん包材料及びこん包容器は、当該産品が原産品であるか否かを決定するに当たって考慮しない。

2 産品の生産に使用されたすべての非原産材料について、当該産品に適用可能なCTCに基づく原産地規則を満たしているか否かを決定するに当たり、当該産品の小売用の包装材料及び包装容器については、当該産品に含まれるものとして分類される場合には、考慮しない。

3 産品がRVCに基づく原産地規則の対象となる場合には、当該産品のRVCを算定するに当たり、当該産品の小売用の包装材料及び包装容器の価額を、場合に応じて原産材料又は非原産材料の価額として考慮する。

    第三十三条 附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料

1 産品がCTC又は特定の製造若しくは加工作業の要件の対象となる場合には、当該産品が原産品であるか否かを決定するに当たり、当該産品とともに提供される附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料が原産品であるか否かについては、次の(a)及び(b)に定める要件を満たす場合には、考慮しない。

 (a) 当該附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料に係る仕入書が当該産品の仕入書と別立てにされないこと。

 (b) 当該附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料の数量及び価額が当該産品について慣習的なものであること。

2 産品がRVCに基づく原産地規則の対象となる場合には、原産品のRVCを算定するに当たり、附属品、予備部品、工具及び解説資料その他の資料の価額を、場合に応じて原産材料又は非原産材料の価額として考慮する。

    第三十四条 間接材料

1 間接材料については、生産される場所のいかんを問わず、原産材料とみなす。

2 この条の規定の適用上、「間接材料」とは、他の産品の生産、試験若しくは検査に使用される産品(当該他の産品に物理的に組み込まれないものに限る。)又は他の産品の生産に関連する建物の維持若しくは設備の稼働のために使用される産品をいい、次のものを含む。

 (a) 燃料及びエネルギー

 (b) 工具、ダイス及び鋳型

 (c) 設備及び建物の維持のために使用される予備部品及び材料

 (d) 生産の過程で使用され、又は設備及び建物の稼働のために使用される潤滑剤、グリース、コンパウンド材その他の材料

 (e) 手袋、眼鏡、履物、衣類、安全のための設備及び備品

 (f) 産品の試験又は検査に使用される設備、装備及び備品

 (g) 触媒及び溶剤

 (h) 他の産品に組み込まれていないその他の産品であって、当該他の産品の生産における使用が当該生産の一部であると合理的に示すことのできるもの

    第三十五条 同一の又は交換可能な材料

 同一の又は交換可能な材料が原産材料であるか否かについての決定は、輸出締約国において適用可能な又は実施されている在庫管理方式についての一般的に認められている会計原則を用いて行う。

    第三十六条 運用上の証明手続

附属書四に規定する運用上の証明手続は、原産地証明書及び関連事項に関する手続について適用する。

    第三十七条 原産地規則に関する小委員会

1 この章の規定を効果的に実施し、及び運用するため、原産地規則に関する小委員会(以下この条において「小委員会」という。)を第十一条の規定に従って設置する。

2 小委員会は、次の事項を任務とする。

 (a) 次の事項に関し、見直しを行い、及び必要な場合には合同委員会に対し適当な勧告を行うこと。

 (i) この章の規定の実施及び運用

 (ii) いずれかの締約国が提案する附属書二及び附属書三並びに附属書四の付録の改正

 (iii) 附属書四第十一規則に規定する運用上の規則

 (b) この章の規定に関連する他の問題であって全締約国が合意するものについて検討すること。

 (c) 合同委員会に対し小委員会の所見を報告すること。

 (d) 合同委員会が第十一条の規定に基づいて委任するその他の任務を遂行すること。

3 小委員会は、全締約国政府の代表者から成るものとし、また、全締約国の合意に基づき、全締約国政府以外の関係団体の代表者であって討議される問題に関連する必要な専門知識を有するものを招請することができる。

4 小委員会は、全締約国が合意する場所及び時期において会合する。

   第四章 衛生植物検疫措置

    第三十八条 適用範囲

この章の規定は、全締約国間の貿易に直接又は間接に影響を及ぼす可能性がある全締約国のすべての衛生植物検疫措置であって、世界貿易機関設立協定附属書一A衛生植物検疫措置の適用に関する協定(以下「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」という。)附属書Aに定義するものについて適用する。

    第三十九条 権利及び義務の再確認

 全締約国は、衛生植物検疫措置の適用に関する協定の当事国である締約国間の同協定に基づく衛生植物検疫措置に関する権利及び義務を再確認する。

    第四十条 衛生植物検疫措置に関する小委員会

1 この章の規定を効果的に実施し、及び運用するため、衛生植物検疫措置に関する小委員会(以下この条において「小委員会」という。)を第十一条の規定に従って設置する。

2 小委員会は、次の事項を任務とする。

 (a) 全締約国及び非締約国における衛生植物検疫に係る事件の発生等の事項並びに全締約国による衛生植物検疫に関する規制及び基準の変更又は導入(日本国と二以上のASEAN構成国である締約国との間の貿易に直接又は間接に影響を及ぼす可能性があるものに限る。)について情報の交換を行うこと。

 (b) 各締約国の予算上の資金の利用可能性及び関係法令に従うことを条件として、衛生植物検疫措置の分野における協力(能力開発、技術援助及び専門家の交流を含む。)を円滑にすること。

 (c) 衛生植物検疫措置の適用から生ずる可能性がある特定の問題であって、日本国及び二以上のASEAN構成国である締約国に共通するものを明らかにし、並びにこれに取り組むため、科学に立脚した協議を行うこと。

 (d) この章の規定の実施及び運用について見直しを行うこと。

 (e) 適当な場合には、合同委員会に対し小委員会の所見を報告すること。

3 全締約国は、衛生植物検疫措置の分野における全締約国の努力の不必要な重複を避け、及び当該努力の効率を最大にすることを目的として、自らの取組と、二国間の、地域的な及び多国間の活動との間の調整を行う。

4 小委員会は、全締約国が合意する場所及び時期において会合する。

5(a) 小委員会は、衛生植物検疫措置について責任を負う全締約国政府の職員から成る。

 (b) 小委員会は、日本国政府の職員及び一のASEAN構成国である締約国の政府の職員をその共同議長とする。

    第四十一条 照会所

 各締約国は、衛生植物検疫措置に関する他の締約国からの妥当な照会に応じ、及び適当な場合には当該他の締約国に対して関連する情報を提供する照会所を指定する。

    第四十二条 第九章の規定の不適用

 第九章に定める紛争解決手続は、この章の規定については、適用しない。

   第五章 任意規格、強制規格及び適合性評価手続

    第四十三条 目的

 この章の規定は、次の事項によって全締約国間の貿易を促進することを目的とする。

 (a) 任意規格、強制規格及び適合性評価手続が貿易に不必要な障害をもたらすことのないようにすることを確保すること。

 (b) 各締約国内の任意規格、強制規格及び適合性評価手続についての相互理解を促進すること。

 (c) 任意規格、強制規格及び適合性評価手続の立案、制定及び適用について全締約国間の情報交換及び協力を強化すること。

 (d) 標準化及び適合性評価手続に関する国際的な団体の作業において全締約国間の協力を強化すること。

 (e) この条に規定する目的を実現するための枠組みを提供すること。

    第四十四条 適用範囲

1 この章の規定は、世界貿易機関設立協定附属書一A貿易の技術的障害に関する協定(以下「貿易の技術的障害に関する協定」という。)に定義する任意規格、強制規格及び適合性評価手続について適用する。

2 この章の規定は、政府機関が自らの生産又は消費の必要上作成する購入仕様及び衛生植物検疫措置の適用に関する協定附属書Aに定義する衛生植物検疫措置については、適用しない。

3 この章のいかなる規定も、正当な目的の達成のために必要な限度において、任意規格及び強制規格を立案し、制定し、及び適用する締約国の権利を制限するものではない。正当な目的とは、特に、国家の安全保障上の必要、詐欺的な行為の防止及び人の健康若しくは安全の保護、動物若しくは植物の生命若しくは健康の保護又は環境の保全をいう。このために各締約国は、自国の法令及び運用規則を解釈するすべての権限を保持する。

    第四十五条 権利及び義務の再確認

 全締約国は、貿易の技術的障害に関する協定の当事国である締約国間の同協定に基づく任意規格、強制規格及び適合性評価手続に関する権利及び義務を再確認する。

    第四十六条 協力

1 全締約国は、任意規格、強制規格及び適合性評価手続が全締約国間の物品の貿易に不必要な障害をもたらすことのないようにすることを確保するため、可能な場合には、任意規格、強制規格及び適合性評価手続の分野において協力する。

2 1の規定に基づく協力の形態には、次の事項を含めることができる。

 (a) 各締約国内の任意規格、強制規格及び適合性評価手続についての相互理解を増進させるため、共同研究を行い、及びセミナーを開催すること。

 (b) 任意規格、強制規格及び適合性評価手続について情報の交換を行うこと。

 (c) 貿易の技術的障害に関する協定の対象とされている活動の発展のために、全締約国における能力を開発し、及び向上させるための共同計画を作成し、及び実施すること。

 (d) 各締約国内の任意規格、強制規格及び適合性評価手続について責任を負う団体が相互に関心を有する事項について協力することを奨励すること。

 (e) 適当な場合には、国際的な場及び地域的な場において任意規格、強制規格及び適合性評価手続に関する活動に共同で貢献すること。

 (f) 適当な場合には、全締約国間の貿易に対する不必要な障害を避けるために任意規格、強制規格及び適合性評価手続の分野に関する作業を共同で明らかにすること。

3 この条の規定の実施は、各締約国の予算上の資金の利用可能性及び関係法令に従うことを条件とする。

    第四十七条 照会所

1 各締約国は、この章の規定の実施の調整について責任を負う照会所を指定する。

2 各締約国は、他の締約国に対し自国の指定された照会所の名称及び当該照会所の関係職員の連絡先についての詳細(電話、ファクシミリ、電子メールその他の関連する詳細についての情報を含む。)を通報する。

3 各締約国は、他の締約国に対し自国の照会所の変更及び関係職員の情報の修正を速やかに通報する。

    第四十八条 任意規格、強制規格及び適合性評価手続に関する小委員会

1 この章の規定を効果的に実施し、及び運用するため、任意規格、強制規格及び適合性評価手続に関する小委員会(以下この条において「小委員会」という。)を第十一条の規定に従って設置する。

2 小委員会は、次の事項を任務とする。

 (a) 第四十六条の規定に基づく協力を調整すること。

 (b) 協力の強化のために相互に合意する優先分野を明らかにすること(締約国から提起されるいかなる提案に対しても好意的な考慮を払うことを含む。)。

 (c) 適合性評価の結果及び強制規格の同等性の受入れを円滑にするため、相互に合意する優先分野における事業計画を作成すること。

 (d) 事業計画の進捗{捗にチョクとルビ}状況を監視すること。

 (e) この章の規定の実施及び運用について見直しを行うこと。

 (f) 技術的な協議を円滑にすること。

 (g) 適当な場合には、合同委員会に対し小委員会の所見を報告すること。

 (h) 合同委員会が第十一条の規定に基づいて委任するその他の任務を遂行すること。

3 小委員会は、全締約国が合意する場所及び時期において会合する。

4 全締約国は、任意規格、強制規格及び適合性評価手続の分野における全締約国の努力の不必要な重複を避け、及び当該努力の効率を最大にすることを目的として、自らの取組と、二国間の、地域的な及び多国間の活動との間の調整を行う。

5(a) 小委員会は、全締約国政府の代表者から成る。

 (b) 小委員会は、日本国政府の職員及び一のASEAN構成国である締約国の政府の職員をその共同議長とする。

    第四十九条 第九章の規定の不適用

 第九章に定める紛争解決手続は、この章の規定については、適用しない。

   第六章 サービスの貿易

    第五十条 サービスの貿易

1 各締約国は、自国の法令及び政策に従って、全締約国間のサービスの貿易の拡大に向けた更なる行動であって、サービス貿易一般協定に適合するものをとることに努める。

2 全締約国は、日本国及び全ASEAN構成国の間のサービスの貿易の一層の自由化及び円滑化のための措置を検討するため、並びに日本国及び全ASEAN構成国のサービス及びサービス提供者の効率性及び競争力を向上させるための協力を強化するため、日本国及び全ASEAN構成国の参加を得て、サービスの貿易に関する規定について引き続き討議し、及び交渉する。このため、第七十九条1の規定に従ってこの協定が効力を生ずる日から一年以内に、日本国政府及び全ASEAN構成国政府の代表者から成るサービスの貿易に関する小委員会を第十一条の規定に従って設置する。

3 2に規定する交渉により結果が出る場合には、その結果は、第七十七条の規定に従ってこの章に組み込まれる。

   第七章 投資

    第五十一条 投資

1 各締約国は、自国の法令及び政策に従って、他の締約国の投資家の投資財産のための良好な、かつ、透明性のある条件を自国内に醸成し、及び維持することに努める。

2 全締約国は、投資の漸進的な自由化、促進、円滑化及び保護を通じて日本国及び全ASEAN構成国の投資環境の効率性及び競争力を向上させるため、日本国及び全ASEAN構成国の参加を得て、投資に関する規定について引き続き討議し、及び交渉する。このため、第七十九条1の規定に従ってこの協定が効力を生ずる日から一年以内に、日本国政府及び全ASEAN構成国政府の代表者から成る投資に関する小委員会を第十一条の規定に従って設置する。

3 2に規定する交渉により結果が出る場合には、その結果は、第七十七条の規定に従ってこの章に組み込まれる。

   第八章 経済的協力

    第五十二条 基本原則

1 全締約国は、資源の利用可能性及び自国の関係法令に従うことを条件として、全ASEAN構成国間における経済開発の異なる水準を考慮しつつ、全締約国間の貿易及び投資を自由化し、及び円滑化し、並びに全締約国の国民の福祉を増進することを目的として、この協定に基づく協力であって相互の利益に資するものを促進する。

2 全締約国は、能力開発、技術援助及び全締約国が相互に合意するその他の活動を含む経済的協力に関する活動を通じて、地域の全部又は一部にわたる開発を促進する。

    第五十三条 経済的協力の分野

1 全締約国は、相互の利益に基づいて、次の分野の経済的協力に関する活動を検討し、及び実施する。

 (a) 貿易に関連する手続

 (b) ビジネス環境

 (c) 知的財産

 (d) エネルギー

 (e) 情報通信技術

 (f) 人材養成

 (g) 中小企業

 (h) 観光及び接客

 (i) 運輸及び物流管理

 (j) 農業、漁業及び林業

 (k) 環境

 (l) 競争政策

 (m) 全締約国が相互に合意するその他の分野

    第五十四条 経済的協力に関する小委員会

1 この章の規定を効果的に実施し、及び運営するため、第七十九条1の規定に従ってこの協定が効力を生ずる日に、経済的協力に関する小委員会(以下この条において「小委員会」という。)を第十一条の規定に従って設置する。

2 小委員会は、次の事項を任務とする。

 (a) 経済的協力の各分野の範囲及び形態を定める関連の事業計画を修正し、及び作成すること。

 (b) 全締約国の優先度に従い、この章の規定に基づく既存の及び新規の経済的協力に関する活動についての勧告を行うこと。

 (c) この章の規定の実施及び運用並びにこの章の基本原則の適用及び遂行について見直し及び監視を行うこと。

 (d) 合同委員会に対し、所見及び討議の結果を報告すること。

3(a) 小委員会は、日本国政府及び全ASEAN構成国政府の代表者から成る。

 (b) 小委員会は、日本国政府の職員及び一のASEAN構成国である締約国の政府の職員をその共同議長とする。

    第五十五条 経済的協力のための事業計画

1 協力に関する活動の各分野の範囲及び形態を定める事業計画は、附属書五で定めるものとする。

2 既存の事業計画の修正又は新規の事業計画の作成は、前条2の規定に従って行い、かつ、第七十七条に規定する手続に従って附属書五を改正することを通じて行う。

    第五十六条 経済的協力のための資源

この章の規定に基づく経済的協力のための資源は、全締約国間における経済開発及び能力の異なる水準を考慮しつつ、全締約国が相互に合意する方法で提供する。

    第五十七条 経済的協力に関する活動の実施

1 経済的協力に関する活動は、日本国及び少なくとも二のASEAN構成国によって行うものとする。

2 1の規定にかかわらず、本質的に地域的な性質を有する経済的協力に関する活動であって、他のASEAN構成国にとって利益となるものについては、日本国及び一のASEAN構成国によっても行うことができる。当該活動は、全ASEAN構成国間における経済開発の格差の縮小又はASEANの更なる統合に向けた全ASEAN構成国の国民の福祉の増進を目指すものとする。

3 全締約国は、相互に合意する時期に経済的協力に関する活動を実施する。

    第五十八条 次章の規定の不適用

 次章に定める紛争解決手続は、この章の規定については、適用しない。

   第九章 紛争解決

    第五十九条 定義

 この章の規定の適用上、

 (a) 「申立国」とは、第六十二条1の規定に基づいて協議を要請する一又は二以上の締約国をいう。

 (b) 「紛争当事国」とは、申立国又は被申立国である締約国をいう。

 (c) 「被申立国」とは、第六十二条1の規定に基づいて協議を要請される一又は二以上の締約国をいう。

 (d) 「第三国」とは、紛争当事国以外の締約国であって、自国の利害関係を第六十六条の規定に基づいて書面により通報するものをいう。

    第六十条 適用範囲

1 この協定に別段の定めがある場合を除くほか、この章の規定は、この協定の解釈又は適用に関する全締約国間のすべての紛争の解決について適用する。

2 この章の規定は、締約国内の地域又は地方の政府又は機関によりとられる措置であって、当該締約国によるこの協定の遵守に影響を及ぼすものについて、適用することができる。仲裁裁判所が第六十七条の規定に従ってこの協定の規定が遵守されていない旨の裁定を行う場合には、責任を有する締約国は、その遵守を確保するために利用することができる妥当な措置をとる。当該締約国がそのような遵守を確保することができなかった場合には、第七十一条3及び4の規定を適用する。

3 この章のいかなる規定も、すべての紛争当事国が締結している他の国際協定により利用可能な紛争解決手続を利用する全締約国の権利を害するものではない。

4 3の規定にかかわらず、特定の紛争に関し、この章の規定又はすべての紛争当事国が締結している他の国際協定に従って紛争解決手続が開始された場合には、当該特定の紛争に関し申立国により選定された手続以外の手続を利用することはできない。ただし、別個の国際協定に基づく権利又は義務で実質的に異なるものについて争われるときは、この限りでない。

5 3及び4の規定の適用上、申立国は、この章の規定又はすべての紛争当事国が締結している他の国際協定に従って仲裁裁判所又は紛争解決委員会の設置を要請し、又はこれらに紛争を付託したときに、当該手続を選定したものとみなす。

    第六十一条 連絡部局

1 この章の規定の適用上、締約国は、この章に規定するすべての事項に関する連絡について責任を負う連絡部局を指定することができる。この章の規定に基づく要請、通報その他の文書であって、指定された連絡部局に対して提出されたものは、当該締約国に対して提出されたものとみなす。

2 締約国が1の規定に基づき連絡部局を指定しない場合には、この章の規定に基づく要請、通報その他の文書は、第十二条の規定に従って当該締約国が指定した連絡部局に対して提出されなければならない。

3 この章の規定に基づく要請、通報その他の文書を受領した締約国は、書面により受領を確認する。

    第六十二条 協議

1 一又は二以上の締約国は、この協定の解釈又は適用に関するいかなる問題についても、他の一又は二以上の締約国に対し書面により協議を要請することができる。ただし、被申立国がこの協定に基づく義務の履行を怠った結果又はこの協定に基づく義務に反する措置をとった結果、申立国が、この協定に基づいて自国に与えられた利益が無効にされ、又は侵害されていると認める場合に限る。

2 協議の要請は、書面により提出されるものとし、並びに問題となっている特定の措置並びに申立ての根拠とされる事実及び法的根拠(違反があったとされるこの協定の規定その他関連するこの協定の規定を含む。)を示すものとする。申立国は、被申立国以外の全締約国に対して同時に同様の通報を行う。

3 被申立国は、1に規定する要請を受領した場合には、申立国及び申立国以外の全締約国に対し当該要請の受領を速やかに確認する。

4 協議の要請が行われる場合には、被申立国は、当該要請を受領した日の後十日以内に当該要請に対して回答し、かつ、相互に満足すべき解決を得るため、当該要請を受領した日の後三十日以内に誠実に協議を開始する。

5 紛争当事国は、この条の規定に基づく協議によりいかなる問題についても相互に満足すべき解決を得るため、あらゆる努力を払う。このため、紛争当事国は、紛争の十分な検討を可能とする十分な情報を相互に提供する。

6 協議は、紛争当事国間で秘密とされ、かつ、この章の規定に従って進められるその後の手続又は他の手続においていずれの締約国の権利も害するものではない。紛争当事国は、協議の結果を紛争当事国以外の全締約国に通報する。

7 緊急の場合(腐敗しやすい物品に関する場合等)には、紛争当事国は、被申立国が要請を受領した日の後十日以内に協議を開始する。

8 緊急の場合(腐敗しやすい物品に関する場合等)には、紛争当事国は、最大限可能な限り、協議が速やかに行われるようあらゆる努力を払う。

    第六十三条 あっせん、調停及び仲介

1 あっせん、調停及び仲介は、紛争当事国の合意がある場合において任意に行われる手続である。

2 いずれの紛争当事国も、あっせん、調停又は仲介を随時要請することができる。いずれの手続も、紛争当事国の合意により、いつでも開始することができるものとし、また、いずれかの紛争当事国の要請により、いつでも終了することができる。

3 紛争当事国が合意する場合には、この章に定める仲裁裁判手続の進行中においても、あっせん、調停又は仲介を継続することができる。

4 あっせん、調停又は仲介に係る手続の過程(特にこれらの手続の過程において紛争当事国がとる立場)は、秘密とされ、かつ、この章の規定に従って進められるその後の手続又は他の手続においていずれの締約国の権利も害するものではない。

    第六十四条 仲裁裁判所の設置

1 申立国は、次のいずれかの場合には、被申立国に対し書面により仲裁裁判所の設置を要請することができる。

 (a) 被申立国が協議の要請を受領した日の後十日以内に回答しない場合又は当該日の後三十日以内に協議を開始しない場合

 (b) 協議の要請が受領された日の後六十日以内に、又は緊急の場合(腐敗しやすい物品に関する場合等)には二十日以内に、紛争当事国が協議により紛争を解決することができない場合

2 1に規定する仲裁裁判所の設置の要請の写しは、被申立国以外の全締約国にも送付するものとする。

3 二以上の申立国が同一の問題について仲裁裁判所の設置を要請する場合には、各紛争当事国の権利を考慮した上、紛争当事国は、実行可能な場合には、その問題を検討するために単一の仲裁裁判所を設置する

ことができる。

4 3の規定に基づいて単一の仲裁裁判所が設置される場合には、仲裁裁判所は、別々の仲裁裁判所が当該同一の問題を検討したならば紛争当事国が有したであろう権利がいかなる意味においても侵害されることのないように、検討を行い、かつ、認定をすべての紛争当事国に提出する。いずれかの紛争当事国が要請する場合には、仲裁裁判所は、裁定を下す期間が許す限りにおいて、自己の取り扱う紛争について別々の裁定を下すことができる。いずれの紛争当事国も、他の紛争当事国の意見書を入手することができるものとし、かつ、他の紛争当事国が仲裁裁判所において意見を表明する場合には、当該仲裁裁判所に出席する権利を有する。

5 同一の問題に関する紛争を検討するために二以上の仲裁裁判所が設置される場合には、紛争当事国は、最大限可能な限り、同一の者をそれぞれの仲裁裁判所の仲裁人として選任する。

6 仲裁裁判所の設置の要請には、第六十二条の規定に基づく協議が行われたという事実の有無及び申立ての根拠とされる事実(問題となっている特定の措置を含む。)を明示するとともに、申立ての法的根拠(違反があったとされるこの協定の規定その他関連するこの協定の規定を含む。)を付する。

    第六十五条 仲裁裁判所の構成

1 仲裁裁判所は、三人の仲裁人で構成する。

2 申立国及び被申立国は、仲裁裁判所の設置の要請が受領された日の後三十日以内にそれぞれ一人の仲裁人を任命し(いずれかの紛争当事国の国民を任命することができる。)、及び裁判長となる第三の仲裁人の候補者を三人まで提案する。第三の仲裁人は、いずれかの紛争当事国の国民であってはならず、いずれかの紛争当事国に日常の住居を有してはならず、いずれかの紛争当事国により雇用されてはならず、及びいかなる資格においても対象となる紛争を取り扱ったことがあってはならない。

3 申立国及び被申立国は、仲裁裁判所の設置の要請が受領された日の後四十五日以内に、2の規定により提案された候補者を考慮して、第三の仲裁人を合意により任命する。申立国若しくは被申立国のいずれかが2の規定により仲裁人を任命しなかった場合又は紛争当事国がこの3の規定により第三の仲裁人を合意により任命することができない場合には、世界貿易機関の事務局長に対し、必要な任命をするよう直ちに要請するものとする。当該事務局長がいずれかの紛争当事国の国民である場合には、事務次長又は次の地位の職員のいずれかのうちいずれかの紛争当事国の国民でない者に対し、必要な任命をするよう要請するものとする。この3の規定により行われる任命であって、第三の仲裁人に係るもの以外のものは、仲裁人を任命しなかった申立国又は被申立国によって行われたものとみなす。

4 仲裁裁判所の設置の日は、3の規定により第三の仲裁人が任命された日とする。

5 この条の規定により任命された仲裁人が、辞任し、又は職務を行うことができなくなった場合には、後任の仲裁人を元の仲裁人の任命に係る規定と同様の方法で任命する。後任の仲裁人は、元の仲裁人のすべての権限及び任務を有するものとする。仲裁裁判所の検討は、後任の仲裁人が任命される時まで停止されるものとする。

6 仲裁人として任命される者は、法律、国際貿易その他この協定が対象とする問題又は国際的な貿易協定から生ずる紛争の解決についての専門知識又は経験を有するものとする。仲裁人は、厳に客観性、信頼性、判断の健全性及び独立性を基準として選任され、仲裁裁判手続を通じてこれらと同じ基準に従って行動するものとする。仲裁人がこれらの基準に従っていないといずれかの紛争当事国により認められる場合は、紛争当事国は、協議し、合意する場合には、当該仲裁人を解任し、新たな仲裁人をこの条の規定に従って任命する。

    第六十六条 第三国

1 仲裁裁判所に付託された紛争について実質的な利害関係を有し、かつ、その旨を書面により紛争当事国及び紛争当事国以外の全締約国に通報した締約国は、仲裁裁判所に対し意見書を提出する機会を有する。意見書は、紛争当事国にも送付されるものとし、及び仲裁裁判所の裁定に反映することができる。

2 第三国は、仲裁裁判所の第一回会合に対する紛争当事国の意見書の送付を受ける。

3 第三国は、既に仲裁裁判手続の対象となっている措置がこの協定に基づき自国に与えられた利益を無効にし、又は侵害すると認める場合には、この章の規定に基づく通常の紛争解決手続を利用することができる。

    第六十七条 仲裁裁判所の任務

1 第六十四条の規定により設置される仲裁裁判所は、

 (a) 自己に付託された問題の客観的な評価(問題の事実関係、この協定の適用の可能性及びこの協定との適合性に関する検討を含む。)を行うべきである。

 (b) 必要に応じて紛争当事国と協議すべきであり、また、紛争当事国が相互に満足すべき解決を図るための十分な機会を与えるべきである。

 (c) この協定及び適用可能な国際法の規則に従って裁定を下す。

 (d) 裁定においては、その理由を付し、並びに法及び事実に関する認定を行う。

 (e) (d)の認定とは別に、第七十一条の規定との関連において、その実施方法についての提案を裁定に含め、これを紛争当事国による考慮に付することができる。

 (f) 裁定において、この協定に定める締約国の権利及び義務に新たな権利及び義務を追加し、又はこの協定に定める権利及び義務を減ずることはできない。

2 仲裁裁判所は、必要かつ適当と認める関係情報の提供を全締約国に要請することができる。仲裁裁判所が情報の提供を要請する場合には、全締約国は、迅速かつ十分にこれに応ずるものとする。

3 仲裁裁判所は、いかなる関係者に対しても情報の提供を要請することができるものとし、また、問題の一定の側面についての意見を得るために専門家と協議することができる。仲裁裁判所は、いずれかの紛争当事国が提起した科学上又は技術上の事項に関する事実に係る問題については、専門家に対し意見書の提出を要請することができる。仲裁裁判所は、いずれかの紛争当事国の要請により、又は自己の発意により、仲裁裁判手続を通じて仲裁裁判所を補佐する二人以上の科学又は技術の分野における専門家を、紛争当事国と協議の上選定することができる。ただし、当該専門家は、裁定その他の仲裁裁判所によるいかなる決定に際しても投票権を有しない。入手された情報及び技術上の助言については、紛争当事国による利用を可能としなければならない。

    第六十八条 仲裁裁判手続

1 この条に規定する規則及び手続は、仲裁裁判手続について適用する。

2 紛争当事国は、仲裁裁判所と協議の上、この条の規定と反しない追加的な規則及び手続を採択することにつき合意することができる。

仲裁裁判所の付託事項

3 仲裁裁判所は、次の付託事項を有する。

「(紛争当事国が引用するこの協定の関連規定)に照らし、第六十四条の規定による仲裁裁判所の設置の要請に言及された問題を検討し、及び第六十七条の規定に従い裁定(認定、決定及び実施方法についての提案がある場合には当該提案を含む。)を下すこと。」

意見書その他の文書

4 各紛争当事国は、仲裁裁判所に提出した意見書の写しを他の紛争当事国に送付する。

5 仲裁裁判手続に係る要請、通報その他の文書であって、4に規定するもの以外のものについては、各紛争当事国は、その写しを他の紛争当事国に送付することができる。この場合には、ファクシミリ、電子メールその他の電子送信の手段によることができる。

6 紛争当事国は、仲裁裁判手続に係る要請、通報、意見書その他の文書の記載上の軽微な誤りを、変更を明示した新しい文書を送付することにより、いつでも訂正することができる。

日程

7 仲裁裁判所は、紛争当事国と協議の上、実行可能な限り速やかに、可能な場合には仲裁裁判所の設置の後七日以内に、仲裁裁判所の検討の日程を定める。仲裁裁判所のために定められる日程は、紛争当事国による意見書の提出について明確な期限を含むものとする。日程の修正は、仲裁裁判所と協議の上、紛争当事国間の合意により行うことができる。

仲裁裁判所の運用

8 仲裁裁判は、非公開とする。紛争当事国は、仲裁裁判所により出席するよう招請された場合に限り、その会合に出席する。

9 紛争について利害関係を有することを通報したすべての第三国は、仲裁裁判所の第一回会合中に特別に開催される会議において自国の立場を表明するよう、書面により招請される。すべての第三国は、当該特別に開催される会議の全期間出席することができる。

10 仲裁裁判所の評議及び仲裁裁判所に提出された文書は、秘密のものとして取り扱う。

11 10の規定にかかわらず、いずれの紛争当事国も、紛争に関する自己の立場及び見解について公に表明することができる。ただし、他の紛争当事国が秘密であると指定して仲裁裁判所に提出した情報又は意見書については、これを秘密のものとして取り扱う。紛争当事国は、秘密の意見書を仲裁裁判所に提出した場合には、他の紛争当事国の要請に基づき、その情報又は意見書について公開し得る秘密でない要約を提出する。

12 仲裁裁判手続の場所は、申立国と被申立国との間の合意により決定されるものとする。そのような合意がない場合には、仲裁裁判手続の第一回会合は被申立国の首都のいずれかにおいて行い、その後は紛争当事国の首都において交互に行うものとする。

13 紛争当事国は、仲裁裁判手続における表明、陳述又は反論の場に出席する機会を与えられる。紛争当事国が仲裁裁判所に提出した情報又は意見書(裁定案の説明部分に関する意見及び仲裁裁判所の質問に対する回答を含む。)については、他の紛争当事国による利用を可能としなければならない。

    第六十九条 裁定案及び裁定

1 仲裁裁判所の裁定の起草は、紛争当事国の参加なしに、かつ、仲裁裁判手続において提供された情報及び行われた陳述を踏まえて行うものとする。仲裁裁判所の裁定の中で各仲裁人が表明した意見は、匿名とする。

2 仲裁裁判所は、紛争当事国が裁定案(説明部分並びに仲裁裁判所の認定及び結論から成る。)の特定の部分を検討することができるようにするため、その設置の日の後九十日以内に、紛争当事国に対し裁定案を提示する。

3 仲裁裁判所は、2に規定する九十日の期間内に裁定案を提示することができないと認める場合には、裁定案を提示するまでに要する期間の見込みと共に遅延の理由を書面により紛争当事国に通報する。

4 紛争当事国は、裁定案が提示された日の後十五日以内に、仲裁裁判所に対し当該裁定案についての意見を書面により提出することができる。

5 仲裁裁判所は、4に規定する紛争当事国の書面による意見を受領した場合には、自己の発意により、又は紛争当事国の要請により、自己の裁定を見直し、及び適当と認める更なる検討を行うことができる。

6 仲裁裁判所は、裁定案が提示された日の後三十日以内に、紛争当事国に対し裁定を下す。

7 仲裁裁判所は、裁定その他の決定をコンセンサス方式によって行う。コンセンサスに達することができない場合には、過半数による議決でこれを行うことができる。

8 仲裁裁判所の裁定は、最終的なものであり、かつ、紛争当事国を拘束する。

9 仲裁裁判所の裁定は、裁定が紛争当事国に下された日の後十日以内に、全締約国に送付される。

    第七十条 仲裁裁判手続の停止及び終了

1 仲裁裁判所は、紛争当事国が合意する場合にはいつでも、紛争当事国がその合意を仲裁裁判所の裁判長に対し共同で通報する日から十二箇月を超えない期間その検討を停止することができる。仲裁裁判手続は、停止の後、いずれかの紛争当事国の要請により再開することができる。仲裁裁判所の検討が十二箇月を超えて停止された場合には、当該仲裁裁判所は、紛争当事国が別段の合意をする場合を除くほか、その設置の根拠を失う。

2 紛争当事国は、裁定が下される前であればいつでも、裁判長に対し共同で通報することにより、仲裁裁判手続の終了について合意することができる。

3 仲裁裁判所は、裁定案が提示される前の仲裁裁判手続のいかなる段階においても、紛争当事国に対し友好的に紛争を解決するよう提案することができる。

    第七十一条 裁定の実施

1 被申立国は、第六十九条の規定による仲裁裁判所の裁定を迅速に実施する。

2 被申立国は、裁定が下された日の後二十日以内に、当該裁定を実施するための期間を申立国に通報する。申立国は、通報された期間が受け入れられないと認める場合には、その問題を仲裁裁判所に付託することができ、仲裁裁判所は、当該裁定を実施するための妥当な期間を決定する。仲裁裁判所は、その問題が付託された日の後三十日以内に紛争当事国に対し自己の決定を通報する。

3 被申立国は、2の規定により決定された期間内に裁定を実施することができないと認める場合には、相互に満足すべき代償を与えるため、当該期間の満了までに申立国と協議を開始する。当該期間の満了の日の後二十日以内に満足すべき代償について合意がされなかった場合には、申立国は、被申立国に対するこの協定に基づく譲許その他の義務の適用の停止の妥当な程度を決定するよう仲裁裁判所に要請することができる。

4 申立国は、被申立国が2の規定により決定された期間内に裁定を実施していないと認める場合には、被申立国が裁定を実施していないことを確認し、及び被申立国に対するこの協定に基づく譲許その他の義務の適用の停止の妥当な程度を決定するため、問題を仲裁裁判所に付託することができる。

5 この条の規定により設置される仲裁裁判所は、できる限り、裁定の対象となった問題を取り扱った仲裁裁判所の仲裁人により構成する。これが可能でない場合には、この条の規定により設置される仲裁裁判所の仲裁人は、第六十五条2及び3の規定に従って任命する。

6 紛争当事国が異なる期間について合意しない限り、3及び4の規定により設置される仲裁裁判所は、問題が付託された日の後六十日以内に裁定を下す。

7 この条の規定により設置される仲裁裁判所の裁定は、すべての紛争当事国を拘束する。

    第七十二条 代償及び譲許の停止

1 代償及びこの協定に基づく譲許その他の義務の停止は、裁定が妥当な期間内に実施されない場合に利用することができる一時的な手段であるが、これらのいずれの手段よりも当該裁定の対象となった措置をこの協定に適合させるために当該裁定を完全に実施することが優先される。代償が与えられる場合には、この協定に適合するものでなければならない。

2 この協定に基づく譲許その他の義務の適用は、前条3及び4に規定する手続の開始の前又はその期間中は停止してはならない。

3 前条3及び4に規定する譲許その他の義務の適用の停止は、被申立国に対するこの協定に基づく譲許その他の義務の適用を停止する意図を有する旨を申立国が被申立国及び被申立国以外の全締約国に通報した後にのみ行うことができる。被申立国及び被申立国以外の全締約国は、停止の開始及びこの協定に基づくいかなる譲許その他の義務の適用が停止されるかについて通報を受けるものとする。

4 前条3及び4の規定によりこの協定に基づくいかなる譲許その他の義務を停止するかを検討するに当たり、その停止は、次のことを条件とする。

 (a) 一時的なものであり、かつ、相互に満足すべき解決が紛争当事国間で得られ、又は裁定が実施されたときに解除されること。

 (b) 裁定が実施されないことによる無効化又は侵害の程度と同等の程度に限定されること。

 (c) 仲裁裁判所が無効化又は侵害を認定した分野と同一の分野に限定されること。もっとも、当該分野における譲許又は義務の適用を停止することができず、又は効果的でない場合には、申立国は、その他の分野におけるこの協定に基づく譲許又は利益を停止することができる。

5 申立国によるこの協定に基づく譲許その他の義務の停止が4の規定に抵触すると被申立国が認める場合には、問題は、仲裁裁判所に付託されるものとする。この条の規定により設置される仲裁裁判所については、前条5の規定を準用するものとする。

6 紛争当事国が異なる期間について合意しない限り、この条の規定により設置される仲裁裁判所は、問題が付託された日の後六十日以内に裁定を下す。当該裁定は、すべての紛争当事国を拘束する。

    第七十三条 費用

1 申立国及び被申立国は、自己が任命した仲裁人に係る費用並びに自己の経費及び訴訟費用をそれぞれ負担する。

2 紛争当事国が別段の合意をする場合を除くほか、裁判長に係る費用その他仲裁裁判手続に関連する経費は、紛争当事国が均等に負担する。

3 仲裁裁判所は、仲裁裁判手続に関連して発生するすべての一般経費(補助要員、指定された記録作成者及び他の雇用人への支払を含む。)について記録を保管し、及び最終的な決算書を提出する。

   第十章 最終規定

    第七十四条 目次、見出し及び小見出し

目次、見出し及び小見出しは、引用上の便宜のためにのみ付されたものであって、この協定の解釈に影響を及ぼすものではない。

    第七十五条 見直し

 全締約国は、別段の合意をする場合を除くほか、この協定の実施及び運用についての一般的な見直しをこの協定が第七十九条1の規定に従って効力を生ずる暦年の後五年目の年に行うものとし、その後においては五年ごとに行う。

    第七十六条 附属書及び注釈

この協定の附属書(付録を含む。)及びこの協定中の注釈は、この協定の不可分の一部を成す。

    第七十七条 改正

1 この協定は、全締約国の合意により改正することができる。

2 各締約国政府は、改正の効力発生に必要なそれぞれの国内手続が完了した旨を書面により他の締約国政府に通告する。当該改正は、日本国政府及び少なくとも一のASEAN構成国である締約国の政府がその通告を行った日の属する月の後二番目の月の初日に、それらの通告のうち最後のものが行われた日までに自らの政府がそのような通告を行った締約国の間で、効力を生ずる。

3 2の規定に従って日本国政府及び少なくとも一のASEAN構成国である締約国の政府が通告を行った日の後に、ASEAN構成国である締約国が2に規定する通告を行う場合には、1に規定する改正は、当該ASEAN構成国については、当該通告が行われた日の属する月の後二番目の月の初日に効力を生ずる。

4 2及び3の規定にかかわらず、改正の効力発生に必要な2に規定するASEAN構成国の数は、全締約国の合意により増加することができる。

5 2の規定にかかわらず、次に掲げるもののみについての改正は、外交上の公文を全締約国政府が交換することにより行うことができる。当該改正は、当該外交上の公文において指定される日に全締約国について効力を生ずる。

 (a) 附属書一(ただし、統一システムの改正に伴う改正であって、附属書一に従って他の締約国の原産品に適用される関税率の変更を伴わないものに限る。)

 (b) 附属書二

 (c) 附属書四の付録

 (d) 附属書五

    第七十八条 寄託者

 全ASEAN構成国については、この協定(その改正を含む。)は、ASEAN事務局長に寄託するものとし、同事務局長は、各ASEAN構成国に対しこの協定(その改正を含む。)の認証謄本を速やかに送付する。

    第七十九条 効力発生

1 各署名国政府は、この協定の効力発生に必要なそれぞれの国内手続が完了した旨を書面により他の署名国政府に通告する。この協定は、日本国政府及び少なくとも一のASEAN構成国の政府が通告を行った日の属する月の後二番目の月の初日に、それらの通告のうち最後のものが行われた日までに自らの政府がそのような通告を行った署名国の間で、効力を生ずる。

2 1の規定に従って日本国政府及び少なくとも一のASEAN構成国の政府が通告を行った日の後に、1に規定する通告を行うASEAN構成国については、この協定は、当該ASEAN構成国が当該通告を行った日の属する月の後二番目の月の初日に効力を生ずる。当該ASEAN構成国は、この協定に従って存在する条件(当該通告の時までに第七十七条の規定に従って発効した改正を含む。)により拘束される。また、附属書一の適用上、当該ASEAN構成国の関税の段階的な撤廃又は引下げは、この協定が1の規定に従って効力を生ずる日に開始するものとする。

    第八十条 脱退及び終了

1 いずれの締約国も、一年前に他の締約国に対して書面による通告を行うことにより、この協定から脱退することができる。

2 この協定は、日本国又は締約国である全ASEAN構成国が1の規定に基づいて脱退した場合に終了する。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。

 英語により本書二通を作成し、二千八年月日に東京で、二千八年月日にバンダルスリブガワンで、二千八年月日にプノンペンで、二千八年月日にジャカルタで、二千八年月日にビエンチャンで、二千八年月日にクアラルンプールで、二千八年月日にネーピードーで、二千八年月日にマニラで、二千八年月日にシンガポールで、二千八年月日にバンコクで、及び二千八年月日にハノイで署名した。

 日本国政府のために

 ブルネイ・ダルサラーム国政府のために

 カンボジア王国政府のために

 インドネシア共和国政府のために

 ラオス人民民主共和国政府のために

 マレーシア政府のために

 ミャンマー連邦政府のために

 フィリピン共和国政府のために

 シンガポール共和国政府のために

 タイ王国政府のために

 ベトナム社会主義共和国政府のために