[文書名] ASEAN関連首脳会議内外記者会見
【菅総理冒頭発言】
テレビをご覧頂いている皆さんもおられるかと思います。今、私は、ASEANの国々を中心とした国際会議出席のために、ベトナムに来ております。
このASEANは、ベトナム、タイ、カンボジア、ミャンマー、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール、ブルネイの10か国からなる組織でありまして、約6億人の人が住み、この10年ではGDPが約3倍という、大変高い成長を示しているアジアの成長センターであります。
これまで日本は、これらASEAN諸国にODAなどを通して経済成長を応援して参りまして、多くの皆さんから感謝の言葉を頂きました。これからは、こうしたASEANの成長を日本につなげていく新成長戦略、私の作ったこの成長戦略を実現することが重要であり、今回のこの会議の出席はそのための有意義な会議となりました。
また、ASEAN10か国に加えて、韓国、中国、インド、オーストラリア、ニュージーランド、さらにはアメリカとロシアも参加をするいくつかの会議があり、最終的にはこれらの国全てが参加する東アジア首脳会議も行われたところであります。それに加えて日本と中国と韓国の首脳会議も行われました。
なお、日中の二国間の会談は、今回は実現致しませんでしたが、温家宝総理とは、この東アジア首脳会議の前の段階で10分程度話を致しました。ブリュッセルにおいて話をして、民間交流を復活しようということがありましたけども、この間、たとえば上海の万博に日本から青年が700人出かける、あるいは、江田五月参議院議員を中心とした訪中団が出かける、そういったことでそのブリュッセルでの約束が実行されたことをお互いに確認を致しました。今後とも戦略的互恵関係を推進するということでは変わらないということと、またゆっくりとした会談を近く持ちたいですねということを言って、その後の会議に臨んだところであります。
個々に色々興味深い会談なり会議もありましたけれども、まず冒頭の私の話はこの程度にさせて頂いて、皆さんからのご質問を頂きたい、このように思います。
【質疑応答】
(NHK 山口記者)
日中関係についてお伺いします。昨日は突然首脳会談が中止されて、今日は一転して懇談という形になりました。国民からみても、国際社会からみても、極めて分かりにくいと思います。これから日本が中国とどう向き合うのか、分かりやすくお伺いできればと思います。
(菅総理)
わが国と中国とは一衣帯水の関係で、もう数千年にわたる交流の歴史があるわけであります。そういう中で、私が総理に就任してからも、胡錦濤主席との会談、あるいは温家宝総理との会談などを積み重ねて参っております。確かに、色々な出来事は起きておりますけれども、しかし、そうした基本的な戦略的互恵関係、つまりは、それぞれの国が努力をして、それぞれの国にプラスになるようにしていこうという、その基本は全く変わっておりません。
わが国として、そうした基本をしっかりともって対応していけば、私は、この二国間、これは単に二国間というだけではなくて、アジアの安定や世界の安定にも大変重要な関係でありますので、そうした安定、さらにはこの地域の平和にとって、有意義な、有効な形で協力し合える関係は継続できるものと、このように確信を致しております。
(ティエン・フォン紙(越) ダイ・フォン記者)
日本・ベトナムの二国間関係について伺いたいと思います。なぜ日本は、原子力発電所、南北高速鉄道、ホア・ラック・ハイテクパークといったベトナムの大型インフラ事業に関心を示されるのでしようか。ベトナムが2020年までに工業国になるという目標を達成するために、日本はどのような支援を行うことができるのでしょうか。
(菅総理)
まず、今日のこの段階で、ASEANを中心としたいくつかの会合が終わりまして、この後、今日から明日の午後にかけて、私が正式にベトナムを訪問する、公式訪問の日程がスタート致します。日本から首脳がベトナムに公式で訪問するのは4年ぶりになると、このようにお聞きを致しております。
日本とベトナムのこれからの、今ご質問のあったインフラ整備などにおける協力関係は、今日、明日の会談を終えた後、どういう形で成果があったか、改めて正式な決定のもとにご報告を致したいと、このように思っております。
ではありますが、せっかくのご質問でありましたので、先ほどASEAN一般についても申し上げましたが、このベトナムもASEANの中で大変成長が進んでいる国であります。そういう意味で、今このベトナムにとって大変必要とされている電力、あるいは鉄道、そういったもの、あるいは、わが国が必要としている色々な資源、こういったものについて、わが国が協力をすることがベトナムにとってプラスになると同時に、わが国にとっても、わが国の経済成長にプラスになる、そういう相互補完関係がありますので、積極的にそういった関係を発展させたい、今回の公式訪問、そういった目的をもってやってきたところであります。
(時事通信 後藤記者)
TPPの問題についてお伺いします。総理は、所信表明で参加を検討するというふうに表明されました。それ以降、与党政府内では意見が二分した状態が続いていると思います。その後、総理の姿勢がもうひとつはっきりしないことも、もう一つの要因になっていると思われますが、APECまでに総理ご自身、明確な政府の方針を打ち出すおつもりがあるのか、それともそのAPECという期限にこだわっておられないのか、その辺についてお伺いします。今日はシンガポールとニュージーランドという、協定加盟国の首脳とお会いになったということで、そこでも話題になったんだと思います。その会談の結果も踏まえてお答え頂きたいと思います。
(菅総理)
TPPを含む経済のいわゆる自由化問題についてはですね、やはりわが国の農業をどのようにして再生させるかという、この問題を抜きには議論をすることができないと考えております。今現在、我が国の農業に従事する従事者の平均年齢は65歳を超えておりまして、このままでは、こうした自由貿易がどうなるということを抜きにしても、日本の農業がこのままでは立ちゆかなくなってしまいかねません。そういった意味で、若い、農業に従事する意欲のある人が農業の分野に参画できて、安全で品質の高い農産物、食料を生み出していく、そういう日本にしていかなければならないと、このように考えております。そのことと、いくつかのこの貿易の自由化問題とは、両立する形で進めなければならないと思っております。
なお、今、TPPについてのご質問がありました。これは、今回この会議にも来られているシンガポールやニュージーランドなど、当初は小さな国4か国が、ある意味の言い出しっぺで始められて、現在それに加えてアメリカなどいくつかの国が協議に参加するという形になっております。私は、所信表明の中で、FTA、EPAなどの貿易自由化についても積極的に取り組んでいくということに加えて、このTPPは比較的最近になって注目をされてきている枠組みでありますけれども、これについても、参加が可能なのか、あるいは、参加をしたときにどういうことが生じて、日本の農業との関係でどうなるのか、そういうことを含めた検討を行うこととして、現在、民主党内でも政府内でも活発な議論が行われていると、このように承知を致しています。
今回シンガポールやニュージーランドなどの話を聞きますと、当初こうした比較的マーケットの小さい国が大きな国との貿易自由化交渉をする上では、なかなか一対一では相手に対していわゆるバーゲニングパワーが十分もてないということで、まずはマーケットが小さいけれども高い水準の方向性を出して、それをいわば核にして順次他の国をその下に集めたいという、ある意味大変戦略的な発想をもってこういったことを提起したんだというお話も頂きました。また、それに対して多くの国が関心を持ち、議論に加わりつつあるという状況も改めてお聞きを致しました。
そういったことで、繰り返しになりますけれども、わが国にとっては、わが国の農業の再生ということと、そして、国を開いて、このASEAN、アジア、世界の成長センターの成長を我が国の成長につなげていくという、その国を開くということとの、両立を図る道をなんとしても見いださなければならない、これができなければ、逆に言えば、農業も復活しないし、場合によっては、そういった貿易自由化の面でも立ち遅れると、この両方を成り立たせるそのための努力を全力をあげてやっていくことが、私の内閣の大きな役割だと、このように考えております。
(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙(香港) グレッグ・トロード記者)
中国との関係について伺いたいと思います。最近の中国の日本に対する自己主張、強硬な姿勢、ご心配になっておられますか。というのは、中国国内の政治的な考慮だとか、内部事情を反映している姿勢だろうと思われますが、もしそうお考えであれば、長期的に考えた場合に、日中関係というのは今後とも繰り返しこういった中国の国内的な問題に左右されるという懸念をお持ちでしょうか。
(菅総理)
今の中国の姿勢について色々な議論があることは私も承知をしております。それはどちらかといえば、そうしたことを解説をする専門家やジャーナリストの皆さんが色々議論されるということに、そのこと自体はお任せをしたいと、こう思っております。
日中関係ということで申し上げれば、先ほど申し上げましたように、わが国と中国とは、長い歴史の中で色々な時代を共に生きて参りました。そういった意味で、今日生じているような多少のトラブルというのは、従来起きたことの中でいえば、そんなに決定的なトラブルだというふうには思っていません。両方の国が冷静になって、相互にプラスになり、更にはアジア地域、太平洋地域、世界にとっても平和と安全という意味でプラスになるように、そういう方向性を目指して戦略的互恵関係を深めるという努力を、しっかりと双方が冷静に取り組めば、私は、日中関係は経済的な面でも、文化的な面でも、更に発展することは十分可能だと、このように考えております。