データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日ASEAN特別首脳会議共同声明 ‐手を携え、地域と世界の課題に挑む‐

[場所] 
[年月日] 2013年12月14日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

1. 我々、日本及び東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の首脳は、2013年12月14日に東京にて、日・ASEAN関係40周年を記念する日・ASEAN特別首脳会議を行った。この首脳会議には、安倍晋三日本国総理大臣及びASEAN加盟国の首脳が出席した。

2. 我々は、日本とASEANが、地域及び地球規模の課題への対応において果たし得る重要な役割を認識し、共通の関心事項について意見を交換した。

地域の課題

3. 地域のアーキテクチャ:我々は、アジア太平洋地域の平和、安定及び繁栄のための地域の協力枠組みを更に強化する必要性を認識し、日本も重要な一員である、ASEAN+

3(APT)、東アジア首脳会議(EAS)、ASEAN地域フォーラム(ARF)、拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)を含む様々なASEAN主導のプロセスを通じて進化する地域のアーキテクチャにおいて、ASEANの中心性が重要であることを強調した。我々は、EASが、東アジアの平和、安定、経済的繁栄及び一体性を更に促進するため、政治、安全保障、経済及び開発問題を含む、地域にとって戦略的に重要な問題に関する対話と協力を行うための首脳主導のフォーラムとして果たす役割を強調した。

4. 海洋安全保障及び協力:我々は、この地域の平和、安定及び繁栄を維持し、海洋安全保障及び海上の安全、航行の自由、妨げられない通商活動、自制と1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)を含む国際法の普遍的な原則に従った紛争の平和的手段による解決を推進することの重要性を強調した。我々は、ARFやASEAN海洋フォーラム拡大会合等を通じた情報共有や能力構築を含む、海洋安全保障及び海上の安全に関する協力を強化することを決意した。ASEANの首脳はまた、海洋問題に関するASEAN加盟国との対話を促進するための取組に対する日本のイニシアティブ及び積極的な参加を評価した。日本は、南シナ海における行動規範に関するASEANと中国の公式な協議を歓迎した。

5. 自由で安全な海洋航行及び飛行:我々は、日本とASEANの連結性の強化がもたらす利益を認識し、空と海での繋がりに関する協力を強化することに合意した。我々はまた、

1982年のUNCLOSを含む国際法の普遍的な原則並びに国際民間航空機関(ICAO)による関連の基準及び推奨される慣行に従って、上空飛行の自由及び民間航空の安全を確保するための協力を強化することに合意した。

6. 朝鮮半島:我々は、朝鮮半島の平和、安全及び安定を維持する必要性を強調し、六者会合を再開できる状況を作り出すことを含め、平和的対話を通じた朝鮮半島の非核化を求めた。我々は、この目的のために、関連の国連安保理決議を完全に履行するとのコミットメントを再確認した。我々は、北朝鮮に対し、関連する全ての国連安保理決議の下での義務及び2005年9月19日の六者会合共同声明の下でのコミットメントを完全に履行するよう促した。また、我々は、拉致問題を含む、国際社会が有する人道上の懸念に取り組むことの重要性を強調した。

地球規模課題

7. 世界経済:我々は、強靱、持続可能、包括的で、バランスの取れた世界経済の成長に貢献し続けるとの決意を新たにした。我々は、日本経済の再興が、地域及び世界経済に大きな利益をもたらすことへの強い期待を示した。安倍総理は、ASEANの経済統合への努力を賞賛した。我々は、経済成長を達成し、財政問題に取り組み、保護主義を排するための努力の重要性を特に強調した。この観点から、我々は、日・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)の投資章及びサービス章の交渉が実質合意に至ったことを歓迎するとともに、日本とASEANの人々の福利と暮らしを向上させるべく、東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)等の地域経済連携を引き続き強化する。経済開発、雇用創出及び持続可能な開発の源となる、国際的な貿易拡大を守るにあたり、強靱な多角的貿易体制(MTS)の重要性を認識し、バリにおける第9回WTO閣僚会議の成果を歓迎するとともに、WTO加盟国がMTSを強化するために努力を継続することを求める。

8. 女性が輝く社会:我々は、開発の原動力としての女性の役割を助長し、開発から得られる利益における女性のシェアを向上させる男女平等及び女性のエンパワーメント(能力強化)を促進することの重要性を認識した。最終的には、男女不平等撤廃の努力は多大な社会的改善をもたらし、皆にとっての公平かつ包摂的な成長につながる。それゆえ、我々は、2013年9月の国連総会で安倍総理が表明した、「女性が輝く社会」を作るとの日本のイニシアティブを歓迎した。

9. 社会的課題:我々は、人口動態に関する課題及びこれに伴う社会福祉及び雇用への影響、都市化が引き起こす諸問題等、共通の課題として出現しつつある社会的課題に関し、経験と教訓を共有し、協力を強化していくことを決意した。

10. MDGs、ポスト2015年開発アジェンダ:我々は、ミレニアム開発目標(MDGs)の進捗の加速及びポスト2015年開発アジェンダの策定の重要性を強調した。これに関し、我々は、新たなグローバル・パートナーシップの枠組において、持続可能な開発の文脈において極度の貧困を撲滅し、防災やユニバーサル・ヘルス・カバレッジといった課題を促進するとのビジョンを歓迎した。この観点から、我々は、ポスト2015年のASEAN共同体ビジョンを策定するとのASEANの決定を支持した。

11. 気候変動:我々は、気候変動が地域及び国際社会の共通の課題であることを強調した。我々は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下、公平かつ実効的な枠組みに合意するとの目標を改めて確認した。我々は、人的交流、知識の共有、地域の低炭素成長を達成するための重要なツールとしての環境に優しい技術の移転を含む気候変動分野における協力を強化する重要性を認識し、この観点から、日本が進めるジョイント・クレディティング・メカニズム(JCM)に留意した。

12. 人道支援及び災害救援:我々は、この地域がより強靱で災害による影響の軽減においてより自立するために、この地域の能力を向上させる必要があることを認識し、災害管理に係る協力を促進する重要性と緊急性を再確認した。また、我々は、本年6月17日から20日にブルネイで行われた拡大ASEAN国防相会議人道支援災害救援軍事医療合同演習(ADMMプラスHADR/MMEx)が、ADMMプラスを構成する国の防衛部隊間の協力として画期的な出来事であったとして、こうした活動を歓迎した。これに関し、ASEANは、この協力分野における日本の関心を歓迎し、この問題その他の非伝統的安全保障課題について議論するために防衛担当大臣を含む日本とASEANの非公式な会合を主催するとの日本の提案に留意した。

13. 持続可能な水資源及び天然資源の利用・管理と環境保護:我々は、持続可能な開発、すなわち、希少な水資源及び天然資源の持続可能な利用・管理と環境保護の間の極めて重要な関係性の重要性を強調した。これに関し、我々は、日本とASEANの双方の利益に奉仕し国際社会への共通の責任を示すためにこれらの問題に対処すること、及び、MDGsの実現及び地域における地球温暖化との戦いを含むASEAN社会・文化共同体ブループリントの目的を達成するためにASEAN地域の持続可能な開発を確保することについて、緊密に協力する必要性を強調した。

14. 国境を越える脅威:我々は、テロ並びに人身売買及び麻薬取引を含む国際組織犯罪といった、国境を越える脅威への対応につき、連携の重要性を強調した。我々は、これら国境を越える脅威に対抗するための能力向上について地域協力を強化することを決意した。

15. 中東情勢:我々は、日本とASEANが中東の平和と安定に向けた前向きな貢献を継続することを再確認した。我々は、シリアの紛争の継続への懸念を表明し、暴力の即時停止、包摂的な政治対話の開始、人道支援の迅速な提供を求めた。また、中東和平に関し、我々は、両者間での現在継続中の交渉を支持するとともに、パレスチナ支援に関する東アジア協力促進会合(CEAPAD)における、パレスチナの国家建設の取組に対する関係国の支援努力を評価した。

16. 国連改革:我々は、国連安保理改革を含む国連改革が急務であることを改めて確認した。我々は、この改革を実現するために他の国連加盟国及び関連の国連機関と緊密に連携していく決意を改めて確認した。

17. 日本の積極的平和主義:我々は、この地域の平和、安定及び繁栄を維持するとの誓約を再確認した。この関連で、安倍晋三総理は、日本の長きに亘る原則である国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から、地域と国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献していくための安全保障政策について詳しく説明した。ASEAN諸国の首脳は、地域の平和、安定及び発展に建設的に貢献していくとの日本の取組への期待を表明した。