データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日ASEAN外相会議議長声明

[場所] シンガポール
[年月日] 2018年8月3日
[出典] 外務省
[備考] 骨子, 注:日ASEAN外相会議は,ASEANが「対話国」と実施するASEAN拡大外相会議の一つとして行われ,議長声明は全対話国分を一括して作成される。総論(パラ1‐7)及び日本関連部分(パラ52‐65)の主要点は以下のとおり。
[全文]

総論(含む地域・国際情勢)

●朝鮮半島情勢,南シナ海における最近の動向,貿易,第四次産業革命,テロ及びサイバーの脅威等の国境を越える課題を含む,共通の関心及び懸念事項である地域・国際情勢に関する意見交換を実施。

南北首脳会談及び米朝首脳会談がもたらした前向きな進展を再確認。朝鮮半島の完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な非核化,関連する国連における義務の履行及び朝鮮半島における恒久的な平和と安定の確立を実現するための国際社会の取組の重要性に同意。国連安保理決議第2396号の履行を含むテロ対策に係る協力及びサイバーセキュリティに係る協力の継続に同意。

国連海洋法条約(UNCLOS)等の国際法を遵守すること等を通じて,地域におけるルールに基づく秩序を推進することの重要性を議論。

南シナ海における平和,安全保障,安定,安全並びに航行及び上空飛行の自由を維持・促進することの重要性を再確認。相互の信用及び信頼を高め,活動の実施に当たっては自制し,状況を更に複雑化させ得る行動を回避し,UNCLOSを含む国際法に従って紛争の平和的解決を追求することの必要性を再確認。また,非軍事化及びクレイマント国やその他の国々による全ての活動の自制の重要性を強調。(パラ3)

●地域の平和,安全保障及び安定を維持・促進するとともに,対話及び協力の慣習を促進し,国際法を遵守し国家間の関係を規定する規則や基準に従う共有されたコミットメントを確認。進化する地域枠組みにおけるASEANの中心性,一体性及び指導力の重要性を強調。最近のイニシアティブに鑑み,開放的で,透明で,包摂的で,ルールに基づくASEAN中心の地域枠組みを強化する必要性を再確認。いかなるイニシアティブも,ASEAN+1,ASEAN+3(APT),東アジア首脳会議(EAS),及び拡大ASEAN国防相会議(ADMM+)を含むASEAN主導のメカニズムに立脚すべきことに同意。(パラ4)

●対話国の閣僚は,シンガポールの議長国としてのテーマである,強じん性及び革新への支持を表明し,2018年4月28日のシンガポールにおける第32回ASEAN首脳会議の前向きな成果を歓迎。「強じんでイノベーティブなASEANのためのASEAN首脳ビジョン」の採択に留意。ASEANスマート・シティ・ネットワーク(ASCN)の設立を歓迎。2018年11月の第33回ASEAN関連首脳会議までに(ASCNのパイロット都市の)第一次リストを発表することも視野に,同都市との一層の議論を期待。(パラ5)

●ASEANによる現在進行中の社会構築の取組並びに「ASEAN2025:共に前進する」,ASEAN連結性マスタープラン(MPAC2025)及びASEAN統合イニシアティブ(IAI)行動計画IIIに掲げられた目標の実現を再確認。(パラ6)

●ルールに基づく多国間貿易体制へのコミットメントを強調。RCEP参加国の閣僚は,これまでの交渉の進捗に留意し,全ての当事者に対して,諸懸案を解決し,RCEP交渉を速やかに妥結させるべく努力を強化するよう奨励。(パラ7)

日本

●日本がASEANの中心性に対するコミットメントを再確認したことを歓迎し,日本の「自由で開かれたインド太平洋戦略」に留意。戦略的パートナーとして,日本とASEANは,EAS,APT,ARF,ADMM+といった様々なASEAN主導のメカニズムを通じて,引き続き協力を更に深化させることを決意。(パラ54)

●テロ,海洋安全保障及びサイバーセキュリティを含む非伝統的安全保障問題及び国境を越える犯罪への対処に向けた協力を引き続き強化することに同意。テロ及び国境を越える犯罪との闘いへの協力のための新たな作業計画の完成に期待し,能力構築及び情報共有を通じた全てのレベルにおける継続的な関与を奨励。また,能力構築支援,共同訓練及び情報共有を含む海上法執行機関間の協力強化の重要性に留意。ブルネイで開催予定の第11回日ASEANテロ対策対話及び第3回日ASEANサイバー犯罪対話に期待。さらに,タイにおける日ASEANサイバー・セキュリティ・センターの設立を歓迎。(パラ55)

●朝鮮半島情勢に係る議論の文脈で,複数の閣僚は,拉致問題の解決を含む,国際社会の人道上の懸念に対処することの重要性を強調。(パラ56)

●日ASEAN10か年戦略的経済協力ロードマップ(2016-2025),日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定及び既存の経済連携協定の履行を通じて,貿易・投資関係を一層深化・拡大させることに同意。AJCEP協定改正議定書の署名に期待。また,日本とASEANとの間の経済のデジタル化を推進するための協力を歓迎。日本アセアンセンター及び東アジアASEAN経済研究センター(ERIA)が経済統合の取組に貢献していることを確認。(パラ57)

●地域の連結性強化のために日本とASEAN各国とが二国間で締結している協定の内容を越える,より自由で,互恵的な日ASEAN航空協定が成功裡に妥結されることに期待。(パラ58)

●保健,環境,気候変動及び防災分野における協力強化を継続することに同意。ASEAN防災人道支援調整(AHA)センターに対する日本の継続的な支援,特にAHAセンターのICT運営能力及び強じん性に対する貢献に謝意を表明。アジア健康構想(AHWIN)の対象分野を,介護中心のものから,医療,介護,予防,健康な生活を可能とする社会づくりといったあらゆる事項に拡大するとの日本の提案と取組を歓迎し,これらの分野を充実させ,バランスを取ることの重要性を再確認。日ASEAN環境協力対話(AJDEC)を通じて,環境的に持続可能なASEANを構想する日本の継続的な支援に謝意を表明。ASEAN+3環境大臣会合及び同高級実務者会合を通じて,環境問題に関する協力について模索する機会を歓迎。(パラ59)

●日ASEAN間で引き続き相互の信頼と理解を促進し,より深化した友好と協力の基礎を築くJENESYS,文化のWAプロジェクト,SportforTomorrow,及び東南アジア青年の船を含む様々なプログラムを通じて,特にASEAN及び東アジアの青年及び知識人との間での人的交流及びスポーツ・文化交流に対する日本の継続的な支援に謝意を表明。更なる相互理解を促進する日本のイニシアティブである「ASEAN-JapanDay」の立上げに留意。(パラ60)

●日ASEAN統合基金(JAIF)を通じたものを含む日本の長年にわたるASEANの開発に対する寛大な支援を評価。この関連で,日本とASEANとの協力強化のための追加的なプラットフォームを提供する日ASEAN技術協力協定の実質合意を歓迎。(パラ61)

●IAI作業計画III,MPAC2025,ASEAN内の開発格差の是正のために人材開発を促進するあらゆるプログラムの実施の更なる推進の重要性を強調。この関連で,当初目標の2倍に当たる約80,000名の人材育成を支援した日本の「産業人材育成イニシアティブ」の完了を評価。日本の「質の高いインフラパートナーシップ」及び「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」の下のプログラムを歓迎。(パラ62)

●日ASEAN間の貿易,投資,観光及び文化交流の促進のための日本アセアンセンターによる継続的な貢献に謝意を表明し,日本とASEANが直面する新たな課題に対処するための同センターの一層の改革の必要性に関する日本の立場に留意。(パラ63)

●本年の日ASEAN友好協力45周年を歓迎し,かかるマイルストーンを祝すべく,第21回日ASEAN首脳会議の開催及び共同声明の発出に期待。(パラ64)

●これまでの対日調整国ブルネイに謝意を表明し,次期対日調整国であるベトナムを歓迎。(パラ65)