[文書名] 第21回日ASEAN首脳会議議長声明
●45年にわたる日ASEANの友好協力の深化を歓迎し,日ASEAN友好協力45周年記念第21回日ASEAN首脳会議共同声明を採択。「日ASEAN友好協力ビジョンステートメント」及び「改訂版ビジョンステートメント実施計画」の実質的な進展を満足をもって留意。日ASEAN統合基金(JAIF)を含む日本のこれまでの寛大な支援に謝意を表明。この関係で,日ASEAN技術協力協定の早期署名を期待。(パラ2)
●日ASEAN間での対話及び協力を強化し,相互信頼及び相互理解を促進し,法の支配を遵守するための緊密な連携を再確認。地域における平和,安全保障及び安定の維持・促進並びに1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)を含む普遍的に認められた国際法の諸原則に従った,武力による威嚇又は武力の行使に訴えることのない,法的・外交的プロセスの完全な尊重を含む紛争の平和的解決への共通のコミットメントを再確認。開放的で,透明で,包摂的で,ルールに基づく,発展しつつある地域枠組みの形成に際するASEANの一体性及び中心性に対する日本の継続的な支持に謝意を表明。ルールに基づき,ASEANの一体性と中心性,包摂性,透明性といった主要な原則を包含し,ASEAN共同体の創設プロセスを補完する,自由で開かれたインド太平洋地域を促進するとの見解を共有。戦略的パートナーとして,東アジア首脳会議(EAS),ASEANプラス3(APT),ASEAN地域フォーラム(ARF),ASEAN国防相会議(ADMMプラス)を通じた様々な協力を一層深化していく。(パラ3)
●日ASEAN防衛協力イニシアティブである「ビエンチャン・ビジョン」の発表以降,日ASEAN間の実務的な防衛協力が強化されていることを認識。「日ASEAN乗艦協力プログラム」及び「HA/DR(人道支援/災害救援)に関する日ASEAN招へいプログラム」の実施,「プロフェッショナル・エアマンシップ・プログラム」の発表等を含む二国間並びに日ASEAN防衛協力プログラムの進展を歓迎。(パラ4)
●テロ,海洋安全保障,不正薬物取引,サイバーセキュリティを含む非伝統的安全保障上の課題及び伝統的犯罪に対処すべく,引き続き協力強化を決意。新たな「テロ及び国境を越える犯罪と闘う協力のためのSOMTC+日本作業計画(2018-2022)の完成を歓迎し,同計画の実施に期待。第11回日ASEANテロ対策対話,ブルネイで開催予定の第3回日ASEANテロ対策対話に期待。ASEAN各国及びその他のパートナー向けに,産業制御システムに係る日米共同サイバーセキュリティ演習を2018年9月10日から14日まで東京で実施したことに関し,日本の産業サイバーセキュリティセンター(ICSCoE)を称賛。2018年4月の情報通信技術の活用にかかるARF会期間会合並びに2018年9月の日ASEANサイバーセキュリティ能力構築センターの開設といった進捗を歓迎。合同訓練や情報共有を含む海洋法執行機関間の協力強化の重要性に一層留意。(パラ5)
●2017年のASEANの第4の貿易相手,かつ,ASEANの第2の直接投資先である日本とASEAN間の重要な経済協力を歓迎。商取引の総額は,日本からASEANへの直接投資が132億ドルに上る一方,2190億ドルに達した。我々は,日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定等を通じた,貿易投資関係の強化に一致。サービスの貿易,人の移動及び投資に係る章を組み込むAJCEP協定改正議定書の可能な限り早期の署名に期待。全ての締約国によるAJCEP協定の完全な履行を歓迎。(パラ6)
●人材育成開発,貿易促進,零細中小企業(SMEs)開発,インフラ,イノベーション,技術移転を含む日ASEAN10か年戦略的経済協力ロードマップの実施における進捗を評価。デジタル革命や第四次産業革命から利益を得る能力を向上するための「日ASEAN第4次産業革命イニシアティブ」を歓迎。我々は経済大臣に対し、ASEAN電子商取引協定の実施を支援するために、日ASEAN間の協力メカニズムの設立に向け、迅速に努力するよう奨励した。日ASEANイノベーションネットワーク(AJIN)が零細中小企業や新規産業のためのデジタルプラットフォームを含む,部門や産業分野を超えてのイノベーションを促進するイニシアティブを主導することを評価。日アセアン経済産業協力委員会(AMEICC)への支援を確認。貿易,投資,観光及び人的交流並びにASEANに対する関心の促進における日本アセアンセンターの重要な役割を評価。この観点から,日本とASEANの直面する新たな課題に対処するために,同センターが行った最近の組織改革を歓迎し,同センターが必要な改革を検討するよう促した。東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)の当地域における緊密な経済連携促進への支援,及びERIAに対する日本の貢献に謝意を表明。(パラ7)
●2018年における東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉の実質的な進展を歓迎。RCEP交渉が最終段階まで進んだことに満足をもって留意し,2019年に現代的で,包括的な,質の高い,かつ互恵的なRCEPを妥結する決意を表明。RCEPを通して,開かれた,互恵的で,ルールに基づいた,包摂的な世界貿易環境を維持するとのコミットメントを表明。ルール形成や監視,紛争解決の機能改善を含み得るWTO改革の重要性に留意。既存の国際ルールの執行確保の重要性にも留意(パラ8)
●ASEAN加盟国内の開発格差を是正するために,日本がASEAN連結性マスタープラン(MPAC2025),ASEAN統合イニシアティブ(IAI)作業計画III並びに人材開発を促すイニシアティブの実施を継続的に支援していることを評価。かかる観点から,当初予定の2倍にあたる約8万人を育成した日本の「産業人材育成協力イニシアティブ」の完了を評価。地域において,国際スタンダードに沿って質の高いインフラを促進し,連結性を強化するため,日本の「質の高いインフラパートナーシップ」及び「質の高いインフラ輸出拡大パートナーシップ」を歓迎。日本とASEAN加盟国間の航空輸送関係を強化する観点から、より自由で互恵的な日ASEAN航空協定が成功裡に締結されることを期待。地域の連結性向上を目指す「日ASEAN交通連携」の下での様々な協力事業及び活動の順調な進捗を歓迎。(パラ9)
●持続可能な開発目標(SDGs)の達成における協力強化に同意。環境保護並びに新たな日ASEAN気候変動アクション・アジェンダを通じたものを含む気候変動,廃棄物管理,生物多様性保全,化学物質汚染の管理,廃水管理,及び持続可能な都市のための質の高い環境インフラ整備の分野における協力を促進させるための日ASEAN環境協力イニシアティブの実施の進捗を歓迎。ASEANの首脳は,日ASEAN環境協力対話(AJDEC)を通じた環境上の持続可能なASEANへの日本の継続的支援,及び海洋プラスチックごみ対策におけるASEANへの支援を強化するとの日本のコミットメントを評価。エネルギー管理システムの強化並びにASEAN加盟国における省エネルギーの開発及び実施能力育成を目的とした、日ASEAN省エネルギーパートナーシッププログラムの実施にあたっての日本の支援と関与に感謝。(パラ10)
●科学技術分野における協力及び共同研究成果の実用化の強化のコミットを再確認。「日ASEANSTIforSDGsブリッジングイニシアティブ」を歓迎。第4次産業革命におけるイノベーションを促進する手段として,知財の重要性を再確認し,日ASEAN特許庁長官会合を通じて,特に新興技術分野におけるASEAN知財庁の特許審査基準の整備を含む更なる協力を行うことを促した。シンガポール等と共同したASEANスマートシティネットワーク(ASCN)ハイレベル東京会合の2019年開催の提案をはじめ,日本による”Society5.0”コンセプトの共有を通じたASCNへの支援を歓迎。(パラ11)
●ASEAN災害医療連携強化プロジェクトを通じたものを含むヘルスケア,災害保健管理,社会福祉,女性及び高齢者のエンパワーメントにおける連携強化へのコミットメントを再確認。日・ASEAN健康イニシアティブの実施のために進行中の事業に満足の意をもって留意し,アジア健康構想(AHWIN)の対象分野を,介護中心のものから,医療,介護,予防及び社会づくりのあらゆる事項に拡大する日本の取組を歓迎。災害管理及び合同緊急対応分野における地域協力強化の重要性を再確認。かかる観点から,DELSA及びACEプログラムを含む日本のAHAセンターに対する継続的な支援に謝意を表明。(パラ12)
●JENESYS,ASIAKAKEHASHIProject,文化のWAプロジェクト,SportforTomorrow,東南アジア青年の船,大学の世界展開力強化事業,さくらサイエンスプラン,国費留学生事業,ASCOJAを通じた交流等,スポーツ,文化交流,青少年及び研究者交流を含む日本の人的交流促進のためのイニシアティブに謝意を表明。日ASEAN文化芸術協力に関する作業計画2019-2021の採択を歓迎。日ASEAN女性スポーツ特別会合を開催。メディア及び情報リテラシー日ASEANフォーラム等,情報分野における事業の進捗及び一層の理解を促進するための「ASEAN-JapanDay」の開催に向けた日本のイニシアティブに留意。(パラ13)
●全ての国連加盟国による全ての関連する国連安保理決議の完全な履行へのコミットメンを改めて表明。この文脈で,完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な非核化を実現するための国際的な取組にコミットする。北朝鮮に対し,北朝鮮が表明した完全な非核化へのコミットメント並びに更なる核及びミサイルの実験を自制するとの約束を履行することを求めた。拉致問題の解決を含む国際社会の人道上の懸念に対処することの重要性を強調。(パラ14)
●2018年4月27日,5月26日及び9月18日から20日まで開催された南北首脳会談並びに2018年6月12日のシンガポールにおける米朝首脳会談を歓迎。また,文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮民主主義人民共和国国務委員長との間で署名された板門店宣言及び平壌共同宣言並びにドナルド・J・トランプ米国大統領と金正恩委員長との間で署名された共同声明を歓迎。全ての当事者に対し,板門店宣言文及び平壌共同宣言並びに米朝首脳による共同声明の完全かつ迅速な履行を通じたものを含め,非核化された朝鮮半島の恒久的な平和と安定の実現に向けた取組を続けることを強く求めた。(パラ15)
●1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)等の国際法の遵守を通じたものを含め,地域におけるルールに基づいた秩序を促進することの重要性について議論。南シナ海における平和,安全保障,安定,安全並びに航行及び上空飛行の自由を維持・促進することの重要性を再確認。南シナ海に関する事項について議論し,信用及び信頼を損ない,緊張を高め,この地域における平和,安全保障及び安定を損ない得るこの地域における埋立てや行動に対する懸念に留意。2002年の南シナ海行動宣言(DOC)全体の完全かつ実効的な履行の重要性を強調。UNCLOSを含む国際法に整合する実効的な南シナ海における行動規範(COC)の早期妥結に向けた交渉に留意。相互の信用及び信頼を高め,活動の実施に当たっては行動を自制し,状況を更に複雑化させ得る行動を回避し,UNCLOSを含む国際法に従って紛争の平和的解決を追求することの必要性を再確認。非軍事化及び全てのクレイマント国やその他の国による活動の自制の重要性を強調。(パラ16)