データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉に係る共同首脳声明

[場所] シンガポール
[年月日] 2018年11月14日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

1.我々,東アジア地域包括的経済連携(RCEP)参加国(ASEAN加盟国及びASEANの自由貿易協定(FTA)パートナー(オーストラリア,中国,インド,日本,韓国及びニュージーランド))の国家元首/行政府の長は,2018年11月14日,第2回RCEP首脳会議の機会にシンガポールに集まった。

2.我々は,地域の貿易・投資の拡大を促進し,世界経済の成長及び発展に寄与するため,この地域において開かれた貿易・投資環境を構築する,現代的な,包括的な,質の高い,かつ互恵的な経済連携協定を達成するという交渉開始時のコミットメントを再確認した。

3.我々は,今日の世界経済が直面する逆風に鑑み,RCEP交渉を妥結するという課題は,より緊急かつ重要になってきていることに留意した。この点に関して,我々は,開かれた,包摂的な,かつ,ルールに基づいた貿易体制を促進し,貿易を全ての人のために機能させることができるということを世界に示すため,RCEP交渉の迅速な妥結を実現するという共同のコミットメントを行った。

4.我々は,2017年の第1回RCEP首脳会議において,閣僚及び交渉官に対してRCEP交渉を妥結させるための努力を2018年に強化するよう指示したこと,また,彼らがその成果を達成するための必要な支援を確保するという我々の決意を想起した。

5.我々は,2018年におけるRCEP交渉の実質的な進展を歓迎した。我々は,交渉の最終段階に進んだ。我々は,現代的で,包括的な,質の高い,かつ互恵的なRCEPを2019年に妥結する決意である。

6.我々は,今日までに7つの章,すなわち経済技術協力章,中小企業章,税関手続・貿易円滑化章,政府調達章,制度的規定章,衛生植物検疫措置章及び任意規格・強制規格・適合性評価手続章が妥結し,そのうち5章は今年妥結したことを歓迎した。交渉の現状は,この共同声明の別添文書に記述されている。我々は,残っている全ての章と附属書を妥結に導くため,このモメンタムを高めることの必要性を強調した。

7.我々は,RCEPが包摂的であり続けることを確実にするという点において,ビジネス界,非政府組織及びその他のステークホルダーの代表者を含む,RCEPの様々なステークホルダーとの継続的な関与の価値を再確認した。


別添文書

RCEP交渉の現状(2018年11月時点)

現在行われている交渉に影響を及ぼすことなく,2018年11月時点のRCEP交渉の現状を以下のとおり説明する。

市場アクセス交渉:商業的に意味のある成果に向けた最後の一押し

一年を通じて,全てのRCEP交渉参加国が一連の二国間及び複数国間の交渉に集中的に取り組み,物品とサービスの市場アクセス及び投資の留保表に関する交渉はかなり進展した。交渉参加国は,互いに異なるセンシティビティを有することを認識しつつ,市場アクセス交渉を進展させるための真摯な努力を行ってきた。

「RCEP交渉の基本指針及び目的」に示された目標を達成するための市場アクセス交渉の妥結は手の届くところまできているが,残された懸隔を解消するための作業は必要である。16か国の交渉参加国間における地域のサプライチェーンの潜在的な拡大及び深化を阻害しないようにしつつ,全ての交渉参加国が他の交渉参加国と必ずしも二国間の自由貿易協定を有しているわけではないことについて特別な配慮を行う必要がある可能性がある。

ルール分野の交渉:成長のためのプラットフォームの確保

ルール分野の交渉もまた実質的に進展した。今年だけでも,税関手続・貿易円滑化(CPTF)章,政府調達章,制度的規定章,衛生植物検疫措置(SPS)章及び任意規格・強制規格・適合性評価手続(STRACAP)章を妥結させることができ,既に妥結していた経済技術協力(ECHOTECH)章と中小企業章に加えると,RCEPにおいて妥結した章の総数は7となる。

その他の章及び関連する附属書においても相当の進展がなされ,いくつかの章はほぼ妥結する一方,その他の章については,更なる技術的な作業が必要であったり,分野横断的な性質を有することによる横並びの考慮,すなわち,他の章における関連する論点の解決が妥結のために必要であったりする。

ルール分野の交渉は,現代的で,現実に対処しつつ,一方で,交渉参加国の多様な状況から生じる課題に対応できる柔軟性を付与しながら,将来の発展にも適応可能なRCEP協定を目指して行われている。

モメンタムを活用する:交渉の妥結

今年達成された相当の進展を受け,交渉参加国が,現在のモメンタムを活用し,来年までにRCEP交渉を妥結に導くという強い決意が存在している。この目的のため,全ての交渉参加国は,2019年に交渉を妥結するために,必要な資源を付与し,コミットするであろう。また,全ての交渉参加国は,包括的な,バランスのとれた,商業的に意味のある成果を達成するという目的を阻害しないようにしつつ,残りの論点について,創造的で,実際的で,現実的で,かつ,相互に受入れ可能な解決策を追求するであろう。