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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アジア・ビジョン研究所(AVI)「プレ日ASEAN友好協力50周年セミナー」林大臣開会挨拶

[場所] 
[年月日] 2022年8月6日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

御参加の皆様、

 アジア・ビジョン研究所(AVI)「プレ日ASEAN友好協力50周年セミナー」林大臣開会挨拶(2022年8月6日(土曜日))

 本日は、カンボジアの若き精鋭の集まるシンクタンクである、アジア・ビジョン研究所(AVI)による本セミナーに御招待いただき感謝いたします。ASEAN55周年という記念すべき年に、外務大臣就任後、こうしてカンボジアを初めて訪問し、プラック・ソコン・カンボジア副首相兼外務国際協力大臣と共に本セミナーに参加できることを光栄に思います。また、3月の日カンボジア首脳共同声明で確認されたAVIとの知的交流が、このように進んでいることを非常に嬉しく思います。

 コロナによる困難に負けず、3年ぶりに対面で行った日ASEAN外相会議は、日ASEAN協力の成果を確認し、今後の展望を描く、強固な日ASEAN関係の象徴となりました。改めて、会議開催に向けたASEAN議長国カンボジアの尽力に深謝いたします。外務大臣就任前から長年に亘り、議員外交を通じた機会に、東南アジア諸国に赴き、現地の関係者と直接交流してまいりました。私としても、日ASEAN関係の重要性を実体験をもって理解しており、その関係の着実な発展を心から歓迎いたします。

 また、ASEAN関連外相会議の直後というタイミングで実施される本セミナーにおいて、日ASEAN協力の軌跡と成果、その更なる発展について闊達な議論が行われることは大変有意義だと考えます。現在、ASEANと日本を含むインド太平洋地域の環境は、ミャンマー情勢、東シナ海・南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試み、北朝鮮による核・ミサイル活動といった課題に加え、ロシアによるウクライナ侵略による法の支配に基づく国際秩序への挑戦や、これに伴うエネルギー・食料価格の高騰といった世界経済の不安定化など、厳しさを増しております。

 そうした中にあるからこそ、太平洋とインド洋という「2つの海の交わり」に位置するASEANの重要性は益々増しています。日本とASEANは、主権や領土の一体性、法の支配といった主要な原則、そして、インド太平洋地域において、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序を推進するとの見解を共有する戦略的パートナーです。日本は、ASEANの中心性を強く支持しつつ、日ASEAN関係を更に大きく飛躍させていく決意です。また、現下の複雑な国際情勢において、ASEAN議長国として、ミャンマー問題への対応を含め、リーダーシップを発揮して尽力するカンボジアに敬意を表し、今後もカンボジアの取組を支援していく所存です。

 先日、卑劣な蛮行により凶弾に倒れた安倍元総理は、日ASEANの友好・発展に多大なる貢献をしました。2013年の日ASEAN友好協力40周年の特別首脳会議では、フン・セン首相をはじめとするASEAN首脳と共に、「ビジョン・ステートメント」を採択し、それ以降、日ASEAN関係は、1平和と安定、2繁栄、3より良い暮らし、4心と心、というパートナーとしての4つの包括的な協力を通じ、大きく発展してまいりました。そのパートナーシップが単なるレトリックでないことは、ビジョン・ステートメントの実施計画が、現時点で既に100%達成されていることからも明らかです。

 また、日本が提唱し、今やフン・セン首相をはじめ多くの国々の首脳からも支持いただいている「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」と、ASEANが提唱する「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」とは、本質的な原則を共有しています。日本は、AOIPの優先協力4分野に沿って、具体的な協力を着実に実施しています。6月のシャングリラ・ダイアローグで岸田総理は、「平和のための岸田ビジョン」を表明し、国際社会が直面する挑戦・危機の中、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に積極的に取り組む決意を示しました。岸田ビジョンの下、日本はFOIPの新たな展開を進め、海上法執行能力強化、サイバー、デジタル、グリーンなどの分野にも重点を置いた「平和のためのFOIPプラン」を示すべく取り組んでいます。

 来年は、日ASEAN友好協力50周年という歴史的な節目です。他の域外国に先駆けてASEANとの協力と対話の枠組みを1973年に設けた日本としては、来年ASEAN各国の首脳をお迎えして特別首脳会議を開催し、日ASEAN関係の将来のビジョンを打ち出したいと思っております。その重要な年に向けた機運を高める布石として、今回の日ASEAN外相会議において、50周年のオフィシャル・ロゴマークとキャッチフレーズ「輝ける友情、輝ける機会」を日ASEAN共同で発表できたことは、大変喜ばしいことです。

 日本は、日ASEAN関係の更なる発展に向け、今後もASEANと緊密に連携してまいります。御静聴ありがとうございました。

(了)