[文書名] 日ASEAN友好協力に関する共同ビジョン・ステートメント2023 信頼のパートナー 実施計画
我々、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国及び日本は、日本ASEAN友好協力50周年を記念して、2023年12月17日に東京に集まり、日ASEAN友好協力に関する共同ビジョン・ステートメント及びその実施計画を採択した。
この実施計画は、インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)の4つの優先分野、すなわち、海洋協力、連結性、国連持続可能な開発目標(SDGs)及び経済等の分野における協力を主流化し一層強化するため、上記の共同ビジョン・ステートメントの実現に資するものである。
ASEANと日本は、国際法の下での各国の義務に適合するように、また、各国の国内法令及び政策に従い、さらに全ての関係者にとって平等な利益及び機会を提供することを基本として、以下の措置を実施する。
1.世代を超えた心と心のパートナー
相互の信頼及び理解を一層強化し、重層的な交流及びネットワークを育むため、我々は、緊密な人的交流、文化交流及び知的交流を一層推進する。特に、ASEAN及び日本は以下を行う。
1.1 ASEAN共同体ビジョン2025の実現に向けたASEANの社会的文化的統合及びASEAN共同体ビジョン2045に向けたASEANの志を支援する。
1.2 アスジャ・インターナショナル(ASJA)及びアセアン元日本留学生評議会(ASCOJA)を通じた学生交流事業、スポーツ・フォー・トゥモロー(SFT)を通じたスポーツ関連支援、21世紀アジア青少年大交流計画(JENESYS)、「東南アジア青年の船」事業(SSEAYP)、アジア高校生架け橋プロジェクト+といった青少年交流事業、国際交流基金を通じた文化・知的交流事業及び日本語教育を含め、ASEAN及び日本の双方おいて他の文化との共存を促進することに貢献する様々な分野における人的交流を一層促進する。
1.3 ASEANと日本の青少年間の信頼を深め、将来の友好協力の基礎を築くため、JENESYSを通じた政治、経済、社会及び多様な文化に関連する分野における青少年交流を強化する。
1.4 文化交流、知的交流及び日本語教育支援の分野において、文化のWAの後継となる国際交流基金の「次世代共創パートナーシップ-文化のWA2.0-」を通じて、人的交流の促進に一層協力する。
1.5 日ASEAN文化芸術協力に関する作業計画2022-2025を引き続き実施するとともに、ASEAN文化大臣会合(AMCA)、日本アセアンセンター及びアセアン文化センター等の各種センター、並びに、「次世代共創パートナーシップ-文化のWA2.0-」を含む国際交流基金のプログラム等の枠組みを通じて、特に、メディア芸術、映像芸術及び舞台芸術、映画製作及び映画祭、文化のためのデジタル技術、著作権の保護及び活用、文化遺産の保護及び管理、創造的な文化産業、及び人材育成の領域における文化芸術分野の協力及び交流を引き続き促進する。
1.6 日ASEANスポーツ大臣会合(AMMS+日本)及び主に以下の分野に焦点を当てた2030年に向けた日ASEANスポーツ協力の強化に関するチェンマイ宣言の枠組みにおけるものを含め、スポーツ分野における日ASEAN間の友好関係を強化し、より深い協力を促進する。
• 体育教師・指導者の育成
• スポーツにおける女性の参加促進
• 障害者スポーツの推進
• アンチ・ドーピング活動
• スポーツマネジメント
上記の協力は、スポーツ・フォー・トゥモロー(SFT)、JSPIN(Japan Sports Business Initiative:ジェイスピン)及び日ASEANスポーツ行動計画等、日本が主導するスポーツに関する様々なプラットフォーム及びプロジェクトを通じて実施される。
1.7 以下を含む取組を通じ、引き続きASEAN観光戦略計画2016-2025及びポストコロナ時代におけるASEANの持続可能な観光開発に関する枠組みの実施を支援するとともに、2023年10月の日ASEAN観光大臣特別対話共同声明に沿って、持続可能な観光等の分野における観光協力を強化し、ASEAN加盟国及び日本との交流を拡大する。
• 地方における観光に適した環境の整備
• ベストプラクティス及び観光統計情報の共有
• 能力構築プログラム及び観光分野における人材交流の実施
• 質の高い観光の開発、及び共同の観光マーケティング及びプロモーション・キャンペーン
• 自然、文化、ウェルネス、アドベンチャー、遺産及びコミュニティ・ベースド・ツーリズム等の分野における観光の新たな市場の推進
1.8 次世代共創パートナーシップ-文化のWA2.0-の下での日本語パートナーズを含む国際交流基金の事業を通じて、ASEAN諸国における日本語教育及び対日理解のための支援を拡大する。
1.9 教育に関するASEAN+3行動計画2018-2025の枠組みの下で、長期的かつ互恵的な教育協力を促進し、人的交流を促進する。
1.10 アジア高校生架け橋プロジェクト+を通じたものを含め、ASEANの学生の日本留学を促進し、トビタテ!留学JAPAN等を通じたASEAN加盟国における日本人学生の留学を促進することにより、長期的・中期的な高校レベルの相互の青少年交流を強化する。
1.11 外国人留学生のための奨学金、キャンパス・アジア・プラスを含む大学間交流プログラム及びASEAN+3高等教育の流動性・質保証に関するワーキング・グループ等の留学関連事業及び大学間交流に対する支援を通じて、高等教育分野における協力を強化する。また、語学学習支援、職業訓練機関の推進及び伝統的知識の交換を通じたものを含め、訓練及び研究協力を強化する。
1.12 EDU-Portニッポンを通じた教育カリキュラム及び教員研修等の分野におけるベストプラクティスの相互共有に関する協力を一層強化する。
1.13 国連教育科学文化機関(UNESCO)日本信託基金を通じたUNESCO及び東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)等の国際機関との協力を促進する。
1.14 i)特定技能外国人候補の教育を専門とする現地日本語教師の研修及び日本語試験の提供を含め、日本における日常生活及び就労に必要なコミュニケーション能力の習得を奨励するための様々なイニシアティブ、ii)日本政府が決定する対象分野の将来の労働者のための教育及び能力開発プログラム、iii)ASEAN及び日本との間の労働者の技能の相互承認の検討を通じて、専門的及び技術的分野の外国人労働者が日本で就労する際の入国に際する障壁を一層緩和する。
1.15 研究開発協力及びイノベーションを強化するとともに、日ASEAN間で人材を育成するために、戦略的国際共同研究プログラム及びさくらサイエンス交流プログラム等の経験に基づき、日ASEAN科学技術協力委員会(AJCCST)を通じて、科学技術協力を一層促進する。
1.16 独立行政法人国際協力機構(JICA)のASEAN知識共創・連結性イニシアティブ(JAKCCI)、人材育成奨学計画(JDS)、JICA海外協力隊の事業、JICA帰国研修員同窓会、アセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net)及び高等教育機関間のその他のプログラムを通じたものを含め、ASEAN加盟国と日本との間の協力、知識・技術交流及び人と人との連結性を促進する。
1.17 日ASEANの両地域における社会的課題への解決策を提案することを目的とし、日ASEANヤングビジネスリーダーズサミット及び日ASEANZ世代ビジネスリーダーズサミットの成果に基づき、ビジネスセクター間のネットワーキングを推進し、キャリア開発交流及びネットワーキングを拡大する。
1.18 姉妹都市関係の活性化及びASEAN加盟国の地域社会に対する能力構築支援によるものを含め、ASEAN加盟国と日本との間の地域社会の交流を拡大する。
1.19 ASEANと日本の多様な文化及び伝統に対する相互理解並びに次世代への継承を促進する。
1.20 ASEANのニーズに基づくASEAN事務局の能力強化のための技術支援の提供、東ティモールのASEAN加盟に向けた能力構築支援及びASEAN事務局職員及び他のASEAN関連機関職員のための新たな奨学金プログラムの立ち上げを含め、ASEAN事務局機能に対する支援を強化する。
1.21 AOIPに焦点を当てたASEANの若手政府職員の人材育成を強化する。
1.22 人材交流の促進を含め、2025年大阪・関西万博に向けた日ASEAN協力を強化する。
2.未来の経済・社会を共創するパートナー
繁栄し、多様で、包摂的で、強靭で、持続可能かつ公正な地域のための包括的な経済パートナーシップ及び協力を一層促進し、イノベーションの共創及び「オファー型協力」等の戦略的開発協力を通じて共通の経済・社会課題に共に対処するため、ASEANと日本は、
2.1 経済
2.1.1 ASEAN共同体ビジョン2025の実現に向けたASEANの経済統合及びASEAN共同体ビジョン2045に向けたASEANの志を支援する。
2.1.2 日アセアン経済産業協力委員会事務局(AMEICC)、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)及び他の関係機関と協力し、デジタル技術、日ASEANサーキュラーエコノミーイニシアティブ(AJCEI)等のイニシアティブ及び他の施策を通じて様々な課題に対処するため、民間セクターによる日ASEAN経済共創ビジョンも踏まえつつ、革新的で持続可能な日ASEAN経済パートナーシップ2023-2033の未来デザイン&アクションプランの実施を加速する。
2.1.3 特に、グローバル・サプライチェーンにおける中小零細企業及び産業間の連携を強化し、中小零細企業のデジタル化を支援するためのガイドラインを策定することを目的として、能力の向上及び市場・金融アクセスの強化による中小零細企業の高度化、サプライチェーンの強靱性の強化及びサプライチェーンの混乱に対する脆弱性への対処、並びに中小零細企業の事業の改善(例:気候変動/グリーンソリューションの導入)及び循環経済と持続可能な経済開発を促進する共創ビジネスへの参加を通じたものを含め、特に中小零細企業との強化された連携及び協力を通じて、産業振興を促進する。
2.1.4 デジタル及びグリーン技術を活用したサプライチェーン・インフラの改善、並びに国際協力銀行との連携を通じたものを含め、強靭で信頼性のあるサプライチェーン及び経済システムの強化を含む、経済安全保障及び経済的強靱性を強化する。
2.1.5 関税評価、関税分類、原産地規則、通関後の監査、リスク管理及び認定事業者(AEO)制度等の税関行政の様々な分野に関する能力構築活動及び関係当局間の協議並びに日・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定及びASEAN加盟国との二国間の経済連携協定(EPA)の原産地証明書(CO)の電子データ交換スキームの導入を通じて、貿易円滑化を促進する。また、可能な限り、国際的に認められた基準に従って貿易書類をデジタル化することを通じて、通関を迅速化し、貿易コストを削減する。
2.1.6 特にAJCEP協定、既存の二国間の経済連携協定及び地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の活用を促進し、及び引き続き強化することを通じて、WTO改革に向けて取り組むことの重要性を強調しつつ、日ASEAN間の貿易及び投資の双方向の流れを加速させる。
2.1.7 特に日本アセアンセンター及び日本貿易振興機構(JETRO)を活用し、双方向での直接投資を加速させるため、ビジネス慣習及び傾向を考慮しつつ、ASEAN及び日本のビジネス環境を改善する。
2.1.8 ASEAN及び東アジアサミット(EAS)の活動を支援するための経済政策のためのシンクタンクとしてERIAを十分に活用するとともに、カーボンニュートラル/ネット・ゼロ排出、産学官の人材ネットワークの構築、及び地域における社会経済的課題の解決に限らないがこれを含む経済協力の推進に貢献するためのプラットフォームとしての機能を強化するよう、ERIAに奨励する。
2.1.9 民間投資を拡大するための触媒として、「オファー型協力」を含む有償資金協力、無償資金協力及び技術協力等のODA並びに民間セクター・パートナーシッププログラムを活用し、ASEANにおける官民連携(PPP)及びその他の民間投資を促進する。
2.1.10 ASEAN加盟国の地域統合、経済成長、国内優先事項及び政策改革を円滑にするため、経済協力開発機構(OECD)及びOECDの東南アジア地域プログラム(SEARP)を含む関連する国際機関を通じてASEANのための支援を強化するとともに、JICA及びOECDと協力し、民間投資、連結性、持続可能性及びデジタルの分野に特に重点を置いたASEAN地域の投資環境改善のためのプロジェクトを実施する。
2.1.11 ASEAN諸国がより多くの、より良い、より安全な海外直接投資(FDI)を引きつけるためのOECDの支援を促進する。
2.1.12 人材育成及びその他のプロジェクトを通じて、i)規制の整合性の強化、ii)知的財産サービスの質の向上等、経済及びビジネス分野における規則及び規制の整備及び改善、iii)汚職撲滅によるものを含め、制度整備に関する協力を強化する。
2.1.13 コーデックス委員会、国際獣疫事務局(WOAH)、国際植物防疫条約(IPPC)及び他の関連する機関によって策定された国際基準に関連する国内規制の策定を促進すること、食品安全を含む規則及びその貿易と物品に対する適用の透明性及び予見可能性を向上すること、並びに人、動物及び植物の健康を保護しながら日ASEAN間の貿易を円滑化させること等により、基準と適合性に関する問題に関して、適当な場合には、協力と連携を強化する。
2.1.14 i)自動車市場の世界的な状況及びASEANの強みを考慮しつつ、ERIAによる次世代自動車産業戦略のためのマスタープランの策定、ii)バリューチェーン全体の脱炭素化、戦略物資の信頼及び信用できる供給源を促進する強靱で信頼できるサプライチェーンの構築、及びEV/HEVを含む多様なポートフォリオの生産及び輸出の実現のため、加盟国間で政策調整を行いつつ、AZEC構想との連携、iii)具体的な「共創」プロジェクトの形成促進、を場合によっては含め、日ASEAN次世代自動車産業共創イニシアティブの下で協力を模索する。
2.2 金融
2.2.1 i)チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)の下での緊急融資ファシリティの立ち上げを含めた地域金融協力の深化、並びに、ASEAN+3マクロ経済リサーチオフィス(AMRO)、アジア債券市場育成イニシアティブ(AMBI)及び災害リスクファイナンス(DRF)等のイニシアティブの推進、ii)金融のデジタル化の促進及び管理、iii)トランジション・ファイナンス及びISSB基準の適用、並びにインフラファイナンスを含めた持続可能な金融及び情報開示の促進、iv)サプライチェーンの強靱性の強化、v)クロスボーダー決済を強化するための決済の連結性の推進及び現地通貨取引の促進、等により、ASEAN加盟国及び日本との間の金融協力を一層強化する。
2.2.2 能力構築、ベストプラクティスの共有及び技術支援を通じたものを含め、国際的なルール・スタンダードを遵守した透明で公正な開発金融を促進する。
2.2.3 質の高いインフラプロジェクトを促進するためのアジア開発銀行(ADB)との協調出融資スキームである「アジアインフラパートナーシップ信託基金2(LEAP2)」を含め、他の開発金融機関及び民間金融機関と連携して、JICAの対ASEAN海外投融資を拡大及び活用することにより、ASEAN地域の安定的な発展を支援する。
2.3 連結性
2.3.1 開放性、透明性並びにライフサイクルコストから見た経済性及び債務持続可能性を含む国際スタンダードに沿った質の高いインフラ投資を促進すること、並びに、ASEAN連結性マスタープラン(MPAC)2025、その後継文書及び日ASEAN包括的連結性イニシアティブに沿った連結性に関連する様々な分野における技術協力プロジェクトを実施することにより、連結性強化のためのASEANの取組を支援する。
2.3.2 2023年11月に日ASEAN交通連携20周年の機会に採択された今後10年間の新たなアクションプラン並びにクアラルンプール交通戦略計画(ASEAN交通戦略計画)2016-2025とその後継文書を通じて、日ASEAN交通連携の枠組みの下でのイニシアティブを実施することにより、特に連結性、脱炭素化及び包摂性を考慮して、交通連結性を一層強化し、質の高い交通を促進する。
2.3.3 ASEAN加盟国及び日本の間の空の連結性を強化するため、より自由で互恵的な日ASEAN航空協定の成功裏の締結に向けた取組を継続する。
2.3.4 ハード及びソフト面のインフラを改善するための包括的な経済及び産業対策を包摂するメコン産業開発ビジョン(MIDV)のための日・メコン連結性イニシアティブ及び作業計画を含む日・メコン協力を通じ、メコン地域全体の経済成長実現に向けた活力ある効果的な連結性実現のための取組を加速する。
2.3.5 物理的・制度的・人的連結性の強化、産業の向上と裾野産業の発展に向けたビジネスセクターのイノベーション及び双方で同意した条件下での自主的技術移転、並びにASEANと日本の中小零細企業及び域内外の多国籍企業との間のより広範で強靭かつ信頼できるサプライチェーン・ネットワークを促進することにより、ビジネスの連結性を実現する。
2.4 気候変動
2.4.1 体制構築に向けた優良事例を共有し、自発的な相互学習及び研修を実施することにより、十全性(質)の高い炭素市場に向けて、パリ協定第6条の実施のための能力を強化する。
2.4.2 最新の科学的知見、安価な最新革新へのアクセス、支援ツール及び能力開発の提供により、適応計画、適応ファイナンス及びプロジェクト形成の支援を通じたものを含め、i)透明性(例:コ・イノベーションのための透明性パートナーシップ(PaSTI))、ii)緩和(例:ASEAN気候変動戦略行動計画2025-2030(ACCSAP)、パリ協定第6条実施パートナーシップ、CCS技術ガイドライン)、iii)適応及び損失と損害(例:官民連携を通じた早期警報システム、アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT))といった分野における気候変動に関する地域協力を強化する。
2.4.3 ASEAN気候変動状況報告書(ASCCR)において緩和及び適応のために優先順位付けされた行動を基に、気候変動がもたらす環境的・社会的課題に対処するための協力と対話、ASEAN気候変動戦略行動計画2023-2030(ACCSAP)の策定支援、及びASEAN気候変動センターとの連携を強化する。
2.4.4 カーボンニュートラル又はネット・ゼロ排出を達成するという共同の志をもつASEANを支援するため、適応資金及び安価な資金へのアクセス、並びに技術向上へのアクセスを促進する。
2.5 エネルギー・重要鉱物
2.5.1 再生可能エネルギー、エネルギーミックス、省エネ関する技術開発及び協力を促進するとともに、液化天然ガス(LNG)、地熱、水素及びアンモニア技術、原子力の安全性及びセキュリティ、エネルギーの持続可能な利用を含む、エネルギー安全保障、強靱性及び持続可能性に関する意識を高め、経験及び知識を共有する。
2.5.2 エネルギー安全保障の確保と経済成長の実現を同時に行いながら、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想の下でのイニシアティブ及び活動を通じたものを含め、各国の状況に応じて、ネット・ゼロ排出/カーボンニュートラルに向けた多様かつ現実的な道筋を通じ、エネルギー移行を促進するためのエネルギー協力を強化する。
2.5.3 エネルギー移行イニシアティブの実施のために、また、i)エネルギー効率、ii)エネルギー変換、iii)電化、iv)電力部門、電気自動車エコシステムの開発によるものを含む運輸部門、及び他の部門における炭素排出の削減、v)再生可能エネルギー、vi)エネルギー管理、vii)バイオエネルギー、viii)天然ガス、ix)液化天然ガス、x)二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)/カーボンリサイクル、xi)水素、xii)アンモニア、xiii)重要鉱物、xiv)トランジション・ファイナンス、等の分野における低炭素及び新たな新興のクリーンエネルギー技術の開発及び展開のためのものを含め、炭素市場及びクレジット制度等を通じて、情報を共有し、協議を促進し、行動をとる。これは、ERIA、ASEANエネルギーセンター(ACE)、及び国際エネルギー機関(IEA)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)及び要すれば他の機関等国際機関及び組織と協力して、追求される。
2.5.4 ロードマップの策定、資金調達及び人材育成等の分野における日本の経験を活用することにより、アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ(AETI)を通じた地域における現実的なエネルギー移行を支援する。
2.5.5 クリーンで低炭素な技術の普及及び関連政策・制度の策定を促進する、CEFIA(Cleaner Energy Future Initiative for ASEAN)を含む様々なプラットフォームを通じてASEANのエネルギー移行及び脱炭素化に貢献するとともに、国連工業開発機関(UNIDO)とのアクセラレーター・プログラムを通じてクリーンエネルギー技術のエコシステムとその連結性を強化する。
2.5.6 エネルギー高級実務者会合(SOME-METI)作業計画及びSOME+3政策理事会(EPGG)作業計画の取組を通じたものを含め、ASEANエネルギー協力行動計画(APAEC)2016-2025のフェーズII:2021-2025及びその将来のフェーズを一層推進する。
2.5.7 クリーンエネルギー移行及びネットゼロの達成に不可欠な重要鉱物のサプライチェーンの多角化について協力する。
2.5.8 新しいASEAN鉱物情報システムのためのWeb-GISの開発に関するものを含め、ASEAN+3鉱物協力協議会合(ASOMM+3)作業計画の実施を通じて、ASEAN鉱物協力行動計画(AMCAP)を一層推進する。
2.6 環境
2.6.1 気候変動、汚染及び生物多様性の損失という前例のない3つの世界的危機に地域において対処するため、i)既に実施中の気候変動イニシアティブ、すなわち、日ASEAN環境協力イニシアティブ及び日ASEAN気候変動アクション・アジェンダ2.0と並行して行う気候変動に関する新たな協力、ii)プラスチック汚染に関する日ASEAN協力アクション・アジェンダ、iii)電気・電子機器廃棄物(E-waste)及び重要鉱物に関する日ASEAN資源循環パートナーシップ、iv)昆明・モントリオール生物多様性枠組(KMGBF)の実施支援を含め、日ASEAN気候環境戦略プログラム(SPACE)の下で協力を強化する。
2.6.2 海洋プラスチックごみに関する地域ナレッジセンター、プラスチック汚染に関する日ASEAN協力アクション・アジェンダ、及びASEAN+3海洋プラスチックごみ協力アクション・イニシアティブ等における海洋ごみ対策及び国家行動計画策定に関する協力を強化する。
2.6.3 電気・電子機器廃棄物(E-waste)及び重要鉱物に関する日ASEAN資源循環パートナーシップを通じたものを含め、国内及び国際レベルでの資源循環を拡大するため、ASEAN諸国におけるe-wasteのリサイクルを含む環境上適正かつ統合的な廃棄物管理を促進し、ASEAN経済共同体・循環経済枠組み及びASEAN持続可能な消費と生産(SCP)枠組み等の関連イニシアティブと協力し、汚染と健康への悪影響を最小限に抑え、ネットゼロ移行を支援し、さらなる循環経済に向けて、民間部門との連携を強化する。
2.6.4 クリーン・シティ・パートナーシップ・プログラム(C2P2)及びJICAクリーン・シティ・イニシアティブ(JCCI)の下で、環境的に持続可能な都市に対する包括的かつ相乗的な支援を行う。
2.6.5 ヘイズ汚染等の大気汚染管理に関する技術的及び政策的な交流を支援し、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)を通じた協力を促進し、ASEAN越境ヘイズ汚染調整センター及びASEAN越境ヘイズ汚染協定の実施を支援する方法を模索する。
2.6.6 昆明・モントリオール生物多様性枠組に沿って生物多様性の損失に対処するため、ASEAN生物多様性センターとの協力を含め、能力構築活動、自然を活用した解決策及び生態系を活用したアプローチ、侵略的外来種対策、30by30目標に向けた取組の実施等における協力を促進する。
2.6.7 水資源管理及び廃水管理における連携を一層強化する。
2.7 防災
2.7.1 関係省庁と共に日ASEAN防災委員会(ACDM+日本)及び日ASEAN防災閣僚級会合(AMMDM+日本)のメカニズムを通じて、日ASEAN防災行動計画(AJWPDM)2021-2025、ASEAN防災緊急対応協定(AADMER)作業計画2021-2025及び仙台防災枠組2015-2030に基づき、予防、緩和、備え、応急対応及び復旧の分野における災害リスク削減及び災害管理に関する協力を強化する。
2.7.2 ASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)と、ASEAN緊急災害ロジスティックシステム(DELSA)、ASEAN緊急対応評価チーム(ASEAN-ERAT)及びAHAセンター・エグゼクティブ:緊急防災プログラムリーダーシップ(ACE-LEDMP)等のAHAセンターのプロジェクトを通じて、緊急事態への備え、緊急対応、救援及び緊急人道支援の分野における地域の能力を強化するとともに、アジア防災センター(ADRC)及びJICAを含む他の国及び機関との可能な協力を模索する。
2.7.3 ASEAN加盟国及び日本の企業による官民連携を通じたアジア太平洋地域における早期警報システム、気候科学及び気候情報サービスの開発を支援する。
2.7.4 災害を予防及び緩和し、災害に対応し、災害から復旧するための地域社会の能力を高めることにより、コミュニティベースの災害リスク管理(CBDRM)を通じたものを含め、地域社会の強靱性を高める。これには、災害リスク削減(DRR)及び気候変動適応(CCA)に関するより効果的なコミュニティベースのツールの開発が含まれる。
2.7.5 気候変動への対応における水関連の災害リスク削減の取組を強化し、水関連の社会問題の解決と熊本水イニシアティブに基づくASEAN加盟国の持続可能な経済成長の促進に貢献する。
2.8 保健
2.8.1 日本のアジア健康構想(AHWIN)に沿って、健康増進、健康リスクコミュニケーション、公衆衛生のベストプラクティス及び手順の共有、開発プロジェクトの健康影響評価、及びASEAN加盟国における気候変動への強靱性及び持続可能な医療施設を通じたものを含め、健康的なライフスタイルの促進と保健医療及び福祉システムの強化のための協力を継続する。
2.8.2 ポストコロナ時代に向けた日本の経験の共有によるものを含め、より強靭で、より公平かつより持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に貢献する。
2.8.3 健康安全保障及びマラリア、HIV/AIDS、結核、新興・再興感染症等の主要な感染症との戦いを強化して、将来のパンデミックの予防、備え及び対応(PPR)を強化するとともに、より強靭でより公平かつより持続可能なUHCを達成する手段としてその他の感染性・非感染性疾患、顧みられない熱帯病及び薬剤耐性(AMR)に関する協力を強化するために、一層協力する。
2.8.4 公衆衛生専門家の能力構築及び技術専門家の派遣によるものを含め、ASEAN感染症対策センター(ACPHEED)を通じて、公衆衛生上の緊急事態及び新興感染症に備え、予防し、検知し、対応するためのASEANの地域能力を一層強化する。
2.8.5 公衆衛生上の緊急事態に対応するためのASEAN戦略的枠組、戦略的一体的ASEAN緊急事態災害対応イニシアティブ(ASEANシールド)、及びASEAN地域医療物資備蓄(RRMS)を支援する。
2.8.6 アジア医薬品・医療機器トレーニングセンター(PMDA-ATC)等のプラットフォームを通じた医薬品・医療機器規制に関する研修を含め、質の高い保健医療サービス及び非感染性疾患のための医薬品・医療機器へのアクセス向上に関する協力を促進する。
2.8.7 医療技術の研究開発への投資やASEAN地域における医薬品原薬(API)へのアクセス拡大のための協力を含め、ワクチン治療・診断薬の製造及び研究開発に関するASEANの協力のため、ASEANワクチンの安全保障と自立(AVSSR)及びASEAN医薬品の安全保障と自立(ADSSR)の活動の強化を支援する。
2.7.8 ASEAN災害保健医療管理研究所(AIDHM)との協力を含む災害保健医療管理に関する協力を強化し、迅速かつ効果的な救急医療サービスの実現に向けたASEAN災害保健医療管理に係る地域能力強化プロジェクト(ARCHプロジェクト第2フェーズ)を着実に実施する。
2.8.9 ASEAN地域におけるデジタルヘルス変革の促進を支援し、協力する。
2.8.10 包括的で強靭な回復の推進、並びに、パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)を含む地域の保健能力の強化、特にユニバーサル・ヘルス・カバレッジ及びパンデミックPPRの分野における技術支援及び国際研修コースへの支援を通じた医療従事者と専門家の人材育成に関する協力を強化する。
2.8.11 ASEANワンヘルス・ネットワーク及びASEANワンヘルス共同行動計画の実施を支援する。
2.9 デジタル
2.9.1 ハイレベル会合の開催、日・ASEANスマートシティ・ネットワーク官民協議会(JASCA)との連携、日ASEAN相互協力によるスマートシティ支援策(SmartJAMP)プロジェクトの実施、及びASEANスマートシティ・プランニング・ガイドブックの活用を通じて、ASEANにおけるスマートシティの実現に向けて、ASEANスマートシティ・ネットワーク(ASCN)との協力を強化する。
2.9.2 サプライチェーンデータの連携と活用のユースケース及びベストプラクティスを創出し、そのようなユースケースを実現可能にする信頼性のあるデジタル基盤、プラットフォーム、ルール及び標準の確立を促進する。
2.9.3 相互運用可能なデータインフラ(IDI)の確立並びにウラノスエコシステムの強化によるASEAN地域におけるデジタルライフライン開発計画(DLDP)の現地化及び実施に関する協力及び連携を強化する。
2.9.4 G7日本議長国下での、「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」のコンセプトに関するあり得べき予備的協議を含め、自由で開かれた信頼性のあるデータ流通を推進するとともに、適当な場合には、ASEANモデル契約条項(MCCs)の採用を含め、日ASEAN間のデータ流通を促進するためのデータ移転の手段の開発を模索する。
2.9.5 サプライチェーンの強靭性を強化し、5G及びビヨンド5G通信網を含む重要・新興技術及び先端電気通信技術へのアクセスを通じて地域のデジタル連結性を向上させるとともに、ASEAN加盟国におけるOpenRAN(無線アクセスネットワーク)等のイノベーションへのアクセスを支援する。
2.9.6 ASEANにおけるブロードバンドの普及、手頃な価格及び普遍的アクセスを強化するためのイニシアティブを支援する。
2.9.7 日ASEANデジタル大臣会合(ADGMIN+日本)及び日ASEANデジタルワークプランの枠組みを通じたものを含め、ICT分野におけるさらなる協力を促進し、ASEANデジタルマスタープラン2025(ADM2025)の実施を支援するとともに、地域のデジタル変革を加速させ、ASEANを安全で変革的なデジタルサービス、テクノロジー及びエコシステムを備えた先進的なデジタルコミュニティ及び経済圏へと変換させるために、デジタル経済、AIガバナンス、サイバーセキュリティ及びICTを含む分野におけるASEAN加盟国と日本との協力覚書(MOC)の策定を模索する。
2.9.8 貿易プラットフォームの利用拡大及び国際基準に基づくデータ連携の促進等により、貿易のデジタル化を促進する。
2.9.9 ASEANにおける責任ある革新的なAI技術の信頼できる実装を支援するための実践的で実施可能な手段として資する、AIガバナンス及び倫理に関するASEANの取組を支援する。
2.9.10 人工知能グローバルパートナーシップ(GPAI)のメンバーシップをより包括的なものにするという共通の願いに沿って、ASEAN加盟国のGPAIへの加盟を促進する。
2.9.11 特に、デジタル技術及びツールの導入並びに中小零細企業の労働力の再教育及びスキルアップを通じて、中小零細企業のデジタル経済への参加を可能にするため、ASEANの中小零細企業のデジタル変革及び能力構築を支援する。
2.9.12 AI、ロボティクス、モノのインターネット(IoT)及びロジスティクス技術等の分野におけるのデジタルスタートアップを支援するとともに、地域におけるデジタルスタートアップに対する日本の投資及びビジネスマッチングを促進する。
2.9.13 ASEANにおける自動運転車を可能にするための国境を越えたデータフローを促進するための規制パイロットスペースにおけるASEANの取組を支援する。
2.10 宇宙
2.10.1 人材育成及び宇宙関連産業の振興を通じて、リモートセンシングデータや準天頂衛星システム(QZSS)の測位データ等の衛星データを利用することにより、2019年のアジア太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)名古屋ビジョン及び日ASEAN経済大臣会合(AEM-METI)における議論に基づき、地上における広範な社会・経済課題の解決及び持続可能な開発目標の達成に貢献することを目的として、宇宙の平和利用に関する協力を増進する。
2.10.2 宇宙関連活動の安全性、安定性及び持続可能性を増進するため、アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)及び他の関連能力構築プログラムを通じて、宇宙政策及び宇宙法に係る能力を強化する。
2.11 農業・食料システム
2.11.1 ASEAN+3緊急米備蓄(APTERR)、ASEAN食料安全保障情報システム(AFSIS)、ASEAN統合食料安全保障枠組み、食料安全保障に関する戦略的行動計画及び東南アジア漁業開発センター(SEAFDEC)を通じた農林水産業を含む食料安全保障分野における協力を強化する。
2.11.2 i)スマート/デジタル農業、循環型経済、バイオマスエネルギー、温室効果ガス(GHG)排出削減及び総合防除(IPM)等のイノベーションを通じた、強靭で持続可能な農業及び食料システムを構築するための技術の開発、実証及び普及ii)強靱で持続可能な農林業及び食料システム構築のための人材育成、iii)ASEANにおける持続可能な農業のためのASEAN地域ガイドラインの実施、食料安全保障及び栄養強化に関するASEAN首脳宣言の実施、並びに農林業分野における自然を基盤とした解決策の推進のためのその他の支援における分野を含め、日ASEANみどり協力プランの下で協力する。
2.11.3 ASEAN-JICAフードバリューチェーン開発支援プロジェクトを通じたものを含め、官民の協力による農家から消費者までのフードバリューチェーンに関する協力を促進する。
2.11.4 ASEANにおける農業生産工程管理(GAP)の促進に関する協力を模索する。
2.11.5 持続可能な漁業と水産養殖を推進するための協力を強化する。
2.12 社会課題
2.12.1 ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合、社会福祉・開発高級実務レベル会合(SOMSWD)における地域イニシアティブ、及びERIAの研究に基づく発達障害者のための多分野にわたる活動を通じたものを含め、社会的保護及び社会保険等の分野における協力を強化する。
2.12.2 高齢者の保健及び福祉サービスを向上させ、また、活力ある高齢化及びイノベーションのためのASEANセンター(ACAI)との協力の可能性を探りつつ、政策対話、モデル事業、並びに日本の地域包括ケアシステムやアジア健康長寿イノベーション賞(HAPI)等の高齢者関連制度に関する知識の共有の促進、人材育成の強化及び関連するビジネス分野の振興等の方策を通じて、ASEAN加盟国と日本において持続可能な経済成長を伴う健康長寿社会を実現させるための協力を強化する。
2.12.3 貧困、失業、社会的保護及び高齢化等の都市化に関連する問題への対処における協力を強化するとともに、環境にやさしいエネルギー、省エネルギー、都市公共交通、廃棄物管理及び都市の生物多様性と緑の推進を通じた都市の管理における協力を強化する。
2.12.4 ASEAN統合イニシアティブ作業計画IVの実施、経済回廊、経済特区、並びに日メコン協力のための東京戦略2018、2030年に向けたSDGsのための日メコンイニシアティブ、日メコン行動計画及びメコン産業開発ビジョン(MIDV)を含むサブ地域協力を通じた地域における開発格差是正のための協力を継続するとともに、日本と東ASEAN成長地域(BIMP-EAGA)の協力強化を継続する。
2.12.5 日本ASEAN女性起業支援基金の活用の模索を通じたものを含め、女性の経済的及び社会文化的発展を促進するため、セクターを超えた女性のエンパワーメント及びジェンダー平等における協力を強化する。
2.12.6 関連する問題に関する会議開催及び研修コースやセミナーの企画を通じたものを含め、労働安全衛生、社会保障、雇用及び人材育成の分野における対話及び協力を強化する。
2.12.7 ASEAN諸国及び日本の人々の人間の安全保障を一層強化するため、持続可能な開発目標達成のための協力を強化する。
2.12.8 人材管理、能力構築及びグッドガバナンスの分野におけるASEAN諸国の公務員の能力強化のための協力を促進する。
2.12.9 外国人漁師を含め、外国人労働者の権利を促進及び保護するための協力を強化する。
2.12.10 農村開発と貧困撲滅に関する枠組み行動計画2016-2025及び農村開発に関するASEANマスタープラン2022-2026に記載されているように、特に能力構築プログラム、技術交流活動及びインフラ・人材開発の形で、ASEAN村落ネットワークの持続可能性の支援を通じたものを含め、地域における農村開発に関する協力を強化する。
3.平和と安定のためのパートナー
強化されたコミットメントを再確認し、平和及び安定のための我々のパートナーシップを実現するため、ASEAN及び日本は、
3.1 ASEAN共同体ビジョン2025の実現に向けたASEAN政治・安全保障共同体及びASEAN共同体ビジョン2045に向けたASEANの志を支援する。
3.2 国連憲章及び1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)を含む国際法を遵守する。
3.3 日ASEAN特別法務大臣会合の共同声明及び日ASEAN法務・司法ワークプランの実施を通じて、法の支配等の共通の価値及び原則を堅持し促進するため、司法外交イニシアティブを通じたものを含め、法務・司法の分野における協力を引き続き強化するとともに、ユースフォーラムの開催によるものを含め、若者のエンパワーメントを推進する。
3.4 海洋安全保障及び海上の安全、航行及び上空飛行の自由及び安全を含む法の支配に基づく海洋秩序並びに阻害されない通商の維持のための対話及び協力を強化し、海洋状況把握(MDA)並びに海上保安機関及び関連する法執行機関との間の協力を強化し、海上保安能力向上に関する協力を強化し、1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)を含む国際法の普遍的に認められた原則に従って、武力による威嚇又は武力の行使に訴えることのない平和的な手段による紛争の解決を確保する。
3.5 JICA、法務省法務総合研究所国際協力部(ICD)及び国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)によるものを含め、法制度整備支援、能力構築及びネットワークイニシアティブを通じて、法務・司法の分野におけるASEAN加盟国と日本との間の協力を一層強化する。
3.6 ADMMプラス、その他のASEAN主導の枠組み及び日ASEANの取組を通じて防衛協力・交流を強化するとともに、日ASEAN防衛協力イニシアティブであるビエンチャン・ビジョン2.0の下での能力構築支援、防衛装備・技術協力、共同訓練・演習及び人材開発・学術交流等のASEAN全体への一層の協力を模索する。
3.7 平和及び安全保障、並びに災害リスク削減における女性のリーダーシップ強化に関する連携を含め、ASEAN加盟国及び日本の女性・平和・安全保障(WPS)に関する行動計画、並びにWPSに係るASEAN地域行動計画(RPA-WPS)に記載されているようなWPSアジェンダの実施に関する協力を強化する。
3.8 「核兵器のない世界」を実現するため、「ヒロシマ・アクション・プラン」を通じたものを含めて、核軍縮及び不拡散に関する協力を探求しつつ、東南アジア非核兵器地帯(SEANWFZ)条約、IAEA包括的保障措置協定及びIAEA追加議定書、及び他の関連する法的文書等の地域及び国際文書に従って、またそのような文書を通じて、核軍縮及び不拡散、並びに原子力の安全かつ平和的な利用を促進するための関連する方策を実施する。
3.9 ASEAN人権宣言(AHRD)、AHRD採択に関するプノンペン声明、ASEAN人権対話に関するASEAN首脳宣言、関連のASEANの宣言、及び全てのASEAN加盟国が当事国である国際人権文書を一層実施し普及させるためのASEANの取組への支援を含め、人権及び基本的自由の促進及び保護を強化するために連携する。
3.10 人権及び基本的自由の促進及び保護の強化を目的としたASEAN人権対話、研修、能力構築及び技術協力を含む対話を通じて、ASEAN政府間人権委員会(AICHR)及び適切な場合には人権を扱う他のASEANのセクトラル・ボディの取組を一層支援する。
3.11 テロ及び国境を越える犯罪と闘う協力のための日ASEAN共同宣言及び日SOMTC国境を越える犯罪対策協力作業計画(2023-2027)に従い、テロリズム並びにテロ資金供与、サイバー犯罪、マネー・ローンダリング、麻薬及び向精神薬の不正取引、海賊及び海上武装強盗行為、人身取引、オンライン及び電話を用いた詐欺等の国際犯罪との闘いに関する協力を一層強化する。
3.12 司法共助、法の執行、並びに、更生及び社会復帰等の支援を含む犯罪者処遇を含め、犯罪防止及び刑事司法における効果的な国際協力のための仕組みを強化する。
3.13 ASEANサイバーセキュリティ協力戦略2021-2025に沿って、コンピュータ緊急対応チーム(CERT)の連携促進やASEANにおけるサイバーセキュリティ基準の策定に関する協力の可能性を模索しつつ、特に、日ASEANサイバーセキュリティ能力構築センター(AJCCBC)、ASEAN・シンガポール・サイバーセキュリティ・センター・オブ・エクセレンス(ASCCE)、ADMMサイバーセキュリティ・インフォメーション・センター・オブ・エクセレンス(ACICE)、サイバーセキュリティ分野における開発途上国に対する能力構築支援に係る日本の基本方針、及び2023年10月に東京で開催された日ASEANサイバーセキュリティ官民共同フォーラムのフォローアップを含む日ASEANサイバーセキュリティ政策会議を通じて、サイバー準備態勢の強化、地域のサイバー政策連携の強化、及びサイバー空間における信頼及び地域の能力構築の強化のためのサイバーセキュリティ分野における協力を強化する方法を模索する。
3.14 日本及びASEANを含む全ての国に共通する課題である偽情報の拡散に対応するための協力を促進する。
3.15 ASEAN競争行動計画(ACAP)2025の実施におけるASEANの取組を支援する。
3.16 入国管理及び外国人労働者の受け入れ等、移民問題に係る協力を強化する。
3.17 ASEAN平和・和解機構(ASEAN-IPR)を含む関連するASEANのメカニズムを通じて、平和構築、紛争管理及び紛争解決におけるASEANの取組を支援し、地域における若者・平和・安全保障(YPS)及びWPSアジェンダに取り組むための協力を強化する。
3.18 日本の資金・技術援助及び能力構築を通じて、地域における地雷及び爆発性戦争残存物の人道的側面に対処するための努力を支援するとともに、この問題への対処においてASEAN地域地雷対策センター(ARMAC)の活動を支援する。
3.19 日ASEAN首脳会議、日ASEAN外相会議(PMC+1)、日・ASEANフォーラム及び日ASEAN合同協力委員会(AJJCC)の開催によるものを含め、日ASEAN間の協議及び協力のための既存のメカニズムを強化する。
3.20 東アジア首脳会議(EAS)、ASEAN地域フォーラム(ARF)、拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)、日ASEAN国境を越える犯罪に関する閣僚会議(AMMTC+日本)及びASEAN+3国境を越える犯罪に関する閣僚会議(AMMTC+3)を含むASEAN主導のメカニズムを通じた対話と協力を深める。
3.21 ジャカルタにおけるEAS大使グループを通じたものを含め、地域における平和、安定及び経済的繁栄を促進することを目的とした、共通の関心及び懸念についての広範な戦略的、政治的及び経済的問題に関する対話並びに協力のための首脳主導のフォーラムとしてのEASを強化するため、EASの推進力であるASEANと共に緊密に取り組む。
4.実施メカニズム
日本とASEANは、
4.1合同協力委員会(AJJCC)及び日・ASEANフォーラムを含め、日ASEAN間の既存のメカニズムを通じて、本実施計画の進捗を定期的にレビューする。
4.2本実施計画の進捗に関する報告書を共同で作成し、毎年開催される日ASEAN首脳会議に提出する。