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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 東アジア協力に関する第二共同声明‐ASEAN+3協力の基盤に立脚して‐(第11回ASEAN+3首脳会議)

[場所] シンガポール
[年月日] 2007年11月20日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

I.序文{前4文字下線あり}

1.われわれ、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国並びに中華人民共和国、日本及び大韓民国の国家元首ないし行政府の長は、2007年11月20日に、シンガポールにおいて、ASEAN+3協力10周年の機会に集まった。

2.われわれは、急速に変化する国際環境及びグローバル化が機会と課題の双方をもたらしたことに留意した。われわれは、活力があり、開かれた、イノベーションに富み、競争力のある東アジアに向けた展望は、利益の一致並びに平和・安定・協力及び繁栄への願望及びコミットメントに後押しされ、明るいとの認識で一致した。

3.これに関連し、われわれは、国連憲章の原則及び目的、東南アジア友好協力条約(TAC)並びに国際法の普遍的に認められた原則に則って、相互の関係を扱うとのコミットメントを強調した。

4.われわれは、過去10年間の成果を振り返り、既存の協力を強化し、ASEAN+3協力の将来の方向性を提示した。ASEAN+3協力は、ASEAN共同体を実現するため引き続きASEAN統合を支持すると同時に、長期目標としての東アジア共同体の形成に貢献するものである。

II.成長と拡大の10年を振り返って(1997年〜2007年){前31文字下線あり}

1.われわれは、1999年の東アジア協力に関する共同声明、2001年の東アジアビジョン・グループ報告書、2002年の東アジアスタディー・グループ報告書、2005年のASEAN+3首脳会議に関するクアラルンプール宣言及びASEAN+3協力の下で署名され、採択され、留意され、発出されたその他すべての関連文書を想起した。

2.われわれは、過去10年間で20の協力分野に拡大・深化したASEAN+3協力の目覚ましい進展に満足をもって留意した。また、われわれは、分野別の組織、東アジアスタディー・グループ及びASEAN事務局のASEAN+3ユニットがこうした進展に重要な貢献を行ってきていることを認識した。

3.われわれは、ASEAN+3プロセスが1997年〜1998年のアジア金融危機を受けて開始されたことを想起した。われわれは、ASEAN+3プロセスがASEAN+3諸国間で相互利益とより密接な連関をもたらしたことに満足した。

III.強化とより密接な統合の10年に向けて(2007年〜2017年){前35文字下線あり}

A.生起しつつある地域枠組みにおけるASEAN+3協力の目的及び役割の定義づけ{前39文字囲み線あり}

1.われわれは、ASEAN+3プロセスが、ASEANを推進力として、東アジア共同体形成との長期目標に向けた主要な手段であり続けることを再確認した。

2.われわれは、ASEAN+中国、ASEAN+日本及びASEAN+韓国のプロセスが、ASEAN+3の枠組みの中での全体的な協力に対して行ってきた重要な貢献を評価した。われわれは、日中韓三国がASEAN共同体を形成するとのASEANの目標を支持するとの継続したコミットメント及び貢献を認識し、歓迎した。

3.われわれは、東アジア共同体形成を推進する上で、ASEAN+3プロセスとEAS、ARF、APEC及びASEMをはじめとする地域的なフォーラムが相互に強化し合い、補完する役割を果たすことを認識し、支持した。

4.われわれは、東アジア統合は、相互利益のための開かれた、透明で、包含的な、前向きなプロセスであることを改めて強調し、域内の平和、安定、民主主義及び繁栄を達成するために国際的に共有された価値を支持する。東アジア域内及び域外の永続的な平和と繁栄の共有に向けたビジョンに導かれ、われわれは、新たな経済の流れ、進化しつつある戦略的な相互作用、並びに、変化と新たな力学に対応可能な開かれた地域アーキテクチャーの実現に向けてすべての関心国及び機関を引き続き関与させるとの信念に今後も導かれていく。

5.われわれは、2015年までに、安全保障、経済及び社会文化の分野で、開かれた、強力で、活力のあるASEAN共同体を形成し、ASEAN加盟国間の開発格差を是正するとのASEANの目標への支持を再確認した。われわれは、ASEAN憲章の署名を歓迎し、統一された活力あるASEANは、地域の安定と繁栄を確保する上で不可欠であるとの見方を共有した。

B.ASEAN+3協力の合理化と拡大{前18文字囲み線あり}

 われわれは、将来のASEAN+3協力の範囲は、以下の分野を含み得るものであるが、以下に限定されるものではないことで一致した。

1.政治及び安全保障に関する協力については、各国が平和裡に域内の他国及び世界全体と正しく、民主的で、調和のとれた環境の中で共存することを確保するため、人材資源の開発、定期的な安全保障対話及び交流の実施、並びに、他の能力向上のための手段を通じて、対話と協力を拡大し、強化する。

2.経済及び金融に関する協力については、経済自由化、経済統合、透明性及びWTO関連合意と整合性のとれた自由貿易の推進、構造改革の追求、投資の奨励、技術の移転及び改良の促進、知的財産権の保護、研究及び政策立案能力の向上、チェンマイ・イニシアテイブのマルチ化並びにアジア債券市場イニシアテイブの強化を通じた、物品及びサービスの自由な流れ並びに資本及び労働のより容易な移動を伴う東アジアのより一層の繁栄に向けて、経済成長及び持続可能な開発を推進していくことで一致した。

3.エネルギー、環境、気候変動及び持続可能な開発に関する協力については、気候変動、エネルギー安全保障及び環境という相互に関連する諸課題に対し実効的なアプローチをとる必要を再確認した。エネルギー安全保障に関しては、エネルギー効率の向上、エネルギー供給の多様化及び新・代替エネルギーの開発に重点を置く。持続可能な開発に関する協力については、気候変動の緩和、適応並びに環境保護と持続的な経済成長及び社会開発との両立に重点を置く。長期的に、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させるとの共通の目標へのコミットメントを再確認し、衡平、柔軟性、実効性並びに共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力によるとの原則に則り、実効的、包括的及び衡平な2013年以降の国際的な気候変動取り決めの策定プロセスに積極的に参加することで一致した。

4.社会文化・開発に関する協力については、貧困撲滅、東アジアにおけるミレニアム開発目標の達成、ビエンチャン行動計画及びASEAN統合イニシアティブを通じた開発格差の是正、文化協力の拡大、教育協力、相互理解の深化及び東アジアのアイデンティティと意識の形成、人的交流、ジェンダー・児童・感染症の予防・自然災害リスクの軽減といった社会的な課題への取り組み、並びに、社会問題への取り組みにおける市民参加及び国家・市民社会間のパートナーシップの推進に向けたNGOとの政策協議及び調整の促進に一眉努めていくことで一致した。

5.制度的支援及びより幅広い協力枠組みとの関係については、ASEAN+3協力の利点を最大限に活用するため、協力を一層拡大し、各協力分野への資源配分を再調整することで一致した。この目的のため、ASEAN+3協力基金を創設するほか、ASEAN事務局内のASEAN+3ユニットを強化するとともに、合理化と相乗効果の追求を通じて協力事業を拡大していくことで一致した。また、地域及び地球規模の枠組の下で行われている協力と連携して、東アジア地域協力を一層推進していくことで一致した。

IV.結語{前5文字下線あり}

 この共同声明の目的は、付属の作業計画に示されている具体的な優先的活動と主要事業の実施を通じて実現される。各分野での関係組織は、作業計画を実施し、各自の事業と行動計画にこれを取り入れる。作業計画の実施状況は、ASEAN+3各国の局長級で随時確認され、年次のASEAN+3閣僚級会合及びASEAN+3首脳会議に報告される。作業計画については、中間見直しを行い、この共同声明の目的をより効率的かつ実効的に達成していくためには、改訂を行うこともあり得る。

シンガポールにおいて、2007年11月20日に採択した。