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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 世界経済・金融危機への対応におけるASEAN+3協力に関する共同プレス声明

[場所] タイ・バンコク
[年月日] 2009年6月3日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 アピシット・ウェチャチワ・タイ王国首相は、ASEAN議長国及びASEAN+3調整国として、ASEAN+3各国首脳を代表し、世界経済・金融危機への対応におけるASEAN+3協力に関する共同プレス声明を発出するよう、ASEAN+3各国首脳から委任を受けた。

 ASEAN+3各国首脳は、2008年10月24日の北京におけるASEAN+3首脳特別会議を想起し、この関連で、現在の世界経済・金融危機の影響と動向について、議論を継続した。

 各国首脳は、2009年3月1日にタイのチャアム・フアヒンでASEAN首脳から発出された世界経済・金融危機に関するプレス声明を歓迎した。各国首脳は、アジア経済のファンダメンタルズは、1997/1998年のアジア金融危機以来進められた重要な構造改革の結果として大きく改善されたとの見解を有した。しかしながら、金融市場におけるリスク回避の高まりを伴った世界経済の減速は、地域の貿易と投資に負の影響を与えたため、信認の強化、金融安定の維持、また、経済成長の落ち込みの回避のために、連携した努力を強化することが必要となっている。

 各国首脳は、地域の金融協力イニシアティブに大きな進展がみられた、2009年5月3日のインドネシアのバリにおける第12回ASEAN+3財務大臣会議の結果を歓迎した。

 各国首脳は、金融市場の安定を維持し経済成長を促進するための共同の努力の中で、各参加国により実施されている金融・財政刺激策を含む積極的な政策措置を歓迎した。

世界経済・金融危機に効果的に対応する観点から地域協力を強化するため、ASEAN+3各国首脳は:

●2009年2月22日のタイのプーケットでのASEAN+3財務大臣特別会議における、チェンマイ・イニシアティブのマルチ化(CMIM)の規模を800億米ドルから1,200億米ドルに増額するとの決定、及びCMIMの全ての主要事項が合意された、2009年5月3日のインドネシアのバリでの第12回ASEAN+3財務大臣会議の成果を承認した。

●CMIMの早期実施の重要性を強調し、この目的のため、第12回ASEAN+3財務大臣会議において、CMIMを2009年末までに実施するとの合意に達したことを歓迎した。

●ASEAN+3各国が流動性不足及び短期的な国際収支上の困難に直面した場合に、暫定的な措置として、現行の二国間スワップ取極のネットワークが、必要に応じて、相互支援を可能とする地域の自助メカニズムとしての役割を十分に果たすべきであるとの、各国財務大臣による提言を支持した。

●CMIMの実施を効果的に支援し、地域及び世界の経済情勢を監視するため、できるだけ早期に独立した地域サーベイランスユニットを設立し、地域のサーベイランスメカニズムを強化することを支持した。

●現地通貨建て債券市場の発展を促進し、地域の債券市場へのアクセスの拡大を促すための、アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)の下で行われている努力を賞賛するとともに、地域における現地通貨建て社債の発行を支援するため、当初の資金規模を5億米ドルとする信用保証・投資メカニズム(CGIM)を設立することについて承認されたことを歓迎した。

●国際開発金融機関(MDB)が、開発アジェンダへの対応や、インフラ及び貿易金融の支援において果たす重要な役割を認識し、この観点から、特に今般の世界的な景気減速の中、アジア開発銀行(ADB)が、アジアにおいて、その役割を果たすべく十分な資本基盤を有することを確保するため、第5次一般増資が迅速に実施されることを改めて呼びかけた。

●各国財務大臣に対し、地域及び世界の経済・金融の安定に対するリスクを注意深く監視し、現在の危機の影響を評価するとともに、危機に十分且つ迅速に対処するため予防的な措置を提案するよう指示した。

●世界的な景気減速に対抗するため、断固たる、協調した、包括的なマクロ経済政策が必要であるとの考えを共有し、各国財務大臣及び関係閣僚に対し、経済成長を支え金融の安定を維持するための政策の実施を通じて、緊密に取り組んでいくよう指示した。

●各国関係閣僚に対し、貿易の円滑化、貿易金融等の措置を通じて、地域の貿易を増大させ、また、社会的セーフティ・ネット・プログラム及び中小企業支援を含む、危機の影響を緩和するための具体的措置を策定するための方法及び手段を探求するよう指示した。

●東アジア自由貿易圏(EAFTA)構想は域内貿易を拡大しうることに留意し、この観点から、各国首脳は各国経済大臣に対し、2009年10月の第13回ASEAN+3首脳会議にEAFTAの第2段階のフィージビリティー・スタディに関する最終報告書を提出するよう指示した。

●保護主義的な措置に対し毅然と対抗し、新しい貿易障壁の導入を控え、ドーハ開発アジェンダの早期妥結を確保するために他のパートナーと協働することによって、自由かつ公正な貿易を維持することに対する強い意思を再確認した。

●アジア及びアジア太平洋における他の機関及びフォーラムの中で、ASEAN主導の協議が、将来の地域的及び世界的経済・金融危機から地域を防護することに貢献し得るとの点に同意した。

●ASEAN+3各国が、地域の成長と投資を刺激するため最大限の努力を行い、それによって、EAS、APEC、G20等の他の協力枠組と協調して、世界経済の回復に貢献することを決意した。

●信認、成長及び雇用を回復し、保護主義を拒絶し、世界の貿易及び投資を促進し、信頼を取り戻すために金融規制を強化し、国際金融機関を改革し、世界の資金流動性を高めるために追加的に1.1兆米ドルを投入するという、2009年4月2日のロンドン・サミットの合意を支持するとともに、G20が想定する目標を達成するために必要な措置を個別に及び共同で講じることを決意した。

 2009年6月3日にタイ・バンコクにて発出した。