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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第15回ASEAN+3(日中韓)財務大臣・中央銀行総裁会議共同ステートメント

[場所] フィリピン・マニラ
[年月日] 2012年5月3日
[出典] 財務省
[備考] 
[全文]

 I.序

 1.第15回ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議を、キアット経済・財政大臣(カンボジア)及びパク・ジェワン企画財政部長官(韓国)の共同議長の下、フィリピン・マニラにて開催。中央銀行総裁が本会議へ初めて参加し、地域金融協力の強化に係る知見・経験を共有。本会議には、アジア開発銀行(ADB)総裁、ASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO)事務局長、ASEAN事務局次長も参加。

 2.我々は、最近の世界・地域経済の情勢及び政策運営につき意見交換。チェンマイ・イニシアティブのマルチ化(CMIM)、AMRO、アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)、ASEAN+3リサーチ・グループ(RG)、将来の地域金融協力の優先課題等の地域金融協力について、前回会議以降の進捗状況をレビュー。また、今後の地域金融協力の更なる強化策について議論。

 3.我々は、規模の倍増、IMFデリンク割合の引上げ、危機予防機能の導入等のCMIMの強化、新ロードマップ・プラスの導入によるABMIの強化という本日の合意が、地域の金融セーフティネットの強化や地域の持続的な成長に向けた重要な一歩となると強く信じる。

 II.最近の地域経済・金融情勢

 1.我々は、世界の金融市場の不確実性が増す中、域内経済が、堅調な内需及び域内金融機関による効果的な仲介機能により、安定した成長を遂げていることを歓迎。

 2.我々は、欧州債務危機の長期化による貿易及び金融チャネルを通じた域内経済への影響や原油価格上昇によるインフレ圧力等、2012年の域内経済の下振れリスクの可能性を十分に認識。また、短期の資本移動のボラティリティの増加や、域内の貿易や金融市場の連結性に留意。

 3.こうした状況の下、我々は、域内貿易・投資の促進とともに、AMRO、ADB、IMFとの効果的な連携により、域内経済の潜在的リスクに対する努力の強化、適切なマクロ経済政策の継続、地域の金融セーフティネットの強化を強く決意。

 III.地域金融協力の強化

 【チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)】

 1.このような背景の下、我々は、地域の金融セーフティネットであるCMIMの強化にコミットし、全会一致により以下の点に合意。詳細は付属文書1を参照。

 (i)CMIMの資金規模について、現行の1,200億ドルから2,400億ドルへ倍増

 (ii)IMFデリンク割合について、2012年に30%へ引き上げ、一定の条件のレビューを前提として、2014年に40%へ引き上げ

 (iii)満期及び最大支援期間について、IMFリンク部分は、各々現行の90日から1年、現行の2年から3年へ延長。IMFデリンク部分は、各々現行の90日から6か月、現行の1年から2年へ延長

 (iv)危機予防機能(CMIM予防ライン (CMIM-Precautionary Line (PL))を導入

 2.我々は、サーベイランス、金融セーフティネット及び能力強化の分野において、IMFの関与を継続。

 3.我々は、財務大臣・中央銀行総裁代理に対し、今回の合意を反映するため、現行のCMIM契約及び実務ガイドラインの必要な改正の作成作業を、次回11月の代理会議までに行うことを要請。

 【ASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO)】

 1.我々は、独立した地域経済のサーベイランス・ユニットとして、地域経済の効果的な監視・分析を行い、リスクを早期に発見し、改善措置の実施を速やかにし、CMIMの意思決定を効果的に行うことに貢献するため、AMROの役割強化の重要性を再度強調。過去1年における、基本的な規則の制定、出向スキームの検討開始、国際金融機関との良好な関係構築等の組織立上げに係るAMROの作業を評価。また、地域及び個別国に係る経済サーベイランスレポートの定期的な提出、8カ国との政策対話の実施、関係当局との緊密な関係の構築等のAMROのサーベイランス活動の順調な開始を歓迎。2013年に向けたAMROの組織能力の継続した強化を期待。

 2.我々は、財務大臣・中央銀行総裁代理に対し、強化されたCMIMの下で、AMROが重要な役割を果たすことができるよう、次回11月の代理会議までにAMROの組織能力強化策の検討を要請。AMROに対し、ADB、IMF、世界銀行、その他の関係国際金融機関との更なる連携強化を慫慂。また、財務大臣・中央銀行総裁代理に対し、AMROの国際機関化に向けた準備を加速することを指示。この関連で、AMROに対し、具体的な日程を含めたワーク・プランの準備を求めるとともに、シンガポールに対し、AMROと協力して、条約の第一次ドラフトの作成を求める、財務大臣・中央銀行総裁代理の決定を承認。また、AMROとシンガポールとの間で、ホスト国の責任を明確化するホスト国の覚書(MOU)を締結することの重要性を確認。財政及び流動性支援の提供、メンバー国の情報の保護、就労パス支給プロセスの促進等、AMROが独立したサーベイランス・ユニットとして、その使命を果たすために重要となるホスト国支援を行うとのシンガポールのコミットを歓迎。

 【アジア債券市場育成イニシアティブ (ABMI)】

 1.我々は、ABMIが、2003年以降、現地通貨建て債券市場の規模拡大、発行体や発行債券の種類の多様化に果たしてきた役割を十分に認識。こうしたABMIの進捗が、域内の貯蓄を域内の投資へ活用することにより、効率的で流動性のある債券市場の育成に大きく貢献。一方、我々は、世界の金融市場の不確実性が残る中、危機の発生を防止し、地域金融市場のボラティリティを和らげるため、ABMIが不可欠との認識を共有。

 2.我々は、ABMIが、ADBの支援を得て、具体的な成果を上げ、立ち上げから10年となるABMIの議論を活性化させるため、新ロードマップ・プラス(New Roadmap+)を採用することに合意。新ロードマップ・プラスの3つの方向性に基づいた9つの優先分野は以下のとおり。詳細は、付属文書2を参照。

 1.信用保証・投資ファシリティ(CGIF)の保証業務の開始

 2.インフラ・ファイナンス・スキームの育成(ラオス・タイのパイロット・プロジェクトを含む)

 3.機関投資家向けの投資環境の整備及びABMI情報の共有

 4.ASEAN+3債券市場フォーラム(ABMF)の活動の強化(債券共通発行プログラムを含む)

 5.域内決済機関(RSI)の設立に向けた取組みの促進

 6.国債市場の更なる発展

 7.消費者や中小企業(SMEs)の金融アクセスの強化

 8.地域格付けシステムの基盤の強化

 9.金融知識の向上

 3.CGIFに関して、我々は、保証業務開始のための準備作業の完了を歓迎し、第1号の保証案件が速やかに組成されることを期待。ABMFにおける進捗、特にクロスボーダーの債券発行及び域内の現地通貨建て債券市場への投資促進を目的とした、域内で初めての包括的な「ASEAN+3債券市場ガイド」の発行を歓迎。また、パイロット・プロジェクトとしての東京プロボンド市場へのADB債券の上場(上記(iv)関連)、マレーシア及びタイにおける証券化(上記(vii)関連)、アジア格付機関連合(ACRAA)との連携(上記(viii)関連)における進捗を留意。さらに、RSI設立に係る法的及び規制面からの実現可能性の再評価についての研究の進捗を認識。RSI設立に係る更なる議論を慫慂し、ビジネス面での実現可能性の再評価を本年中に完了することを期待。

 4.我々は、ABMIタスクフォースに対し、ワーク・プランの下で具体的な成果を上げることにより、新ロードマップ・プラスを実施していくことを提言。

 5.我々は、5月4日にマニラにおいて開催されるABMIの10周年を記念するセミナーを歓迎。このセミナーが、ABMIの下でのこれまでの成果をレビューするとともに、世界の金融市場の変化に対して、ABMIの果たすべき役割について民間セクターと意見交換を行う機会となることを期待。

 【ASEAN+3リサーチ・グループ(RG)】

 1.我々は、ASEAN+3 リサーチ・グループ(RG)の2011/2012年の研究トピックとして、(i) 東アジアにおけるコモディティ価格変動への対応、(ii) ASEAN+3地域の金融システムにおける銀行セクターの役割と機能、及び(iii) グローバル・アーキテクチャーにおける地域金融セーフティネットの役割に関する研究への取組みを歓迎。2012/2013年の研究トピックとして、格付け機関に関する国際的な議論及びASEAN+3域内における地域の格付け能力の強化のためのインフラの向上、を承認。また、幅広い参加及び研究者との交流の強化を図るためのRGのプロセスの簡素化を歓迎。

 【将来の地域金融協力の分野】

 1.我々は、今後の地域金融協力の可能性のある分野である、ⅰ)インフラ金融、ⅱ)災害リスク保険、ⅲ)域内貿易決済における現地通貨の使用、の3分野についての当初の研究成果に留意し、域内経済の持続的な成長のため、これら3分野が重要であることを認識。このため、財務大臣・中央銀行総裁代理に対し、ADBや世界銀行の支援を適切に得て、更に研究を深め、次段階での具体的な政策提言を行うことを要請。

 IV.結語

 1.2012年のASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁プロセスの共同議長であるカンボジア及び韓国に謝意を表明。また、フィリピン政府の歓待に感謝。

 2.2013年にインド・ニューデリーにおいて会合を開催することに合意。ブルネイ及び中国が2013年の共同議長国となる。