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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ASEAN+3協力15周年記念首脳共同声明

[場所] プノンペン
[年月日] 2012年11月19日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 1.我々、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国、中華人民共和国、日本国、大韓民国の国家元首及び行政府の長は、2012年11月19日に、ASEAN+3協力15周年を祝うためカンボジアのプノンペンに集まった。

 2.ASEAN+3記念首脳会議は、フン・セン・カンボジア王国首相が議長を務め、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国、中華人民共和国、日本国、大韓民国の国家元首及び行政府の長が出席した。ASEAN事務総長も会議に出席した。

 3.我々は、過去15年にわたるASEAN+3協力の成果をレビューし、将来の方向性について議論した。我々は、全ての分野の協力、特に政治安全保障、経済、金融、連結性、食料安全保障、エネルギー、環境、保健、流行病、文化、観光、科学、技術革新、ICT、貧困撲滅、災害管理及び青年、教育の分野において急速に発展し深化していることを、満足をもって留意した。

 4.我々は、ASEAN+3協力が、地域経済の統合を深め、共通の発展に向けた展望を拡大しながら東アジアの一体性と連携の促進において不可欠な役割を果たしたことを認識した。我々は、成功裏に世界金融危機に対処し、経済・金融の安定を保ち、そして世界経済において最も活気のある地域となっている。世界の大きく複雑な変化と地域の持続可能な発展への多くの圧力を踏まえ、我々は、課題に立ち向かい、確立されたASEAN+3協力メカニズムを活用し、強みを十分に発揮するために一体となって取り組むことで一致した。

 5.我々は、ASEAN+3の将来の方向性の戦略的なガイダンスとなった「東アジア協力に関する第二共同声明」及び「ASEAN+3協力作業計画」の実施における実質的な進展を、感謝をもって留意した。我々は、2012年7月のASEAN+3外相会議において、ASEAN+3協力作業計画の中期レビューを実施するとの決定を歓迎した。我々は、ワークプランの効果的な実施のために、ASEAN+3協力基金(APTCF)の強化を支持した。

 6.我々は、東アジア共同体構築という長期目標に向けて主要な手段としての役割を果たすため、とりわけ、1999年の「東アジア協力に関する共同声明」と2007年の「東アジア協力に関する第二共同声明」に導かれるとおり、ASEAN+3プロセスの深化、拡大に向けた我々の強いコミットメントを再確認し、発展する地域アーキテクチャーにおけるASEANの中心的な役割への我々の支持の継続を表明した。我々は、ASEAN+3協力がASEAN共同体の実現と地域統合の道筋をつけることを引き続き支持することをあらためて表明した。

 7.我々は、発展と前進のための必須条件として、地域の平和と安定の維持・強化の重要性を認識した。我々は各国が、独立してその発展の途を選ぶ権利を尊重する重要性と、グッドガバナンス、法の支配、人権の保護と促進といった共通の価値観と規範の促進に向けた努力の増強・強化の必要性を強調した。我々は、安全保障協力、とりわけ新たに発生する伝統的・非伝統的安全保障の双方における平和と安定にとっての課題に対処するための協力を一層強化することで一致した。

 8.我々は、地域の平和と安定と繁栄の維持のみならず、新たに発生する地域及びグローバルな問題に対処するためにも、「ASEAN+3協力作業計画」に従って、政治安全保障分野における協力と対話を一層強化することに尽力する。我々は、i) 当局者の交流を通じた相互信頼と相互理解の促進、ii) 伝統的、非伝統的安全保障問題に対処するための取組を支援する、実質的な技術支援とキャパシティ・ビルディングの強化を継続する。

 9.我々が直面する域外の需要の縮小に照らし、我々は、域内の需要を促進し、域内の経済発展を促進することによって、東アジアの成長に向けて内部の推進力を強化することで一致した。我々は、ASEAN+3協力の開始以来、金融経済危機への対処において地域の能力と回復力を強化した、ASEANとプラス3の国々の間の強力な貿易関係を維持する重要性を認識した。この目的を達成するため、我々は関係閣僚がプラス3の国々との間の既存のASEAN+1FTAを一層強化、深化させるよう求めた。我々はまた、地域の実業界に、これらFTAの機会を最大限活用するよう呼び掛けた。

 10.急速な地域、グローバルな発展に照らし、我々は、2012年8月にASEAN経済大臣とFTAパートナー国のカウンターパートによって承認されたRCEP交渉に向けた基本原則と目的に従って、この地域において包括的、質の高い相互に有益な経済連携協定を達成する重要性を強調した。我々は、したがって、2012年11月のカンボジアのプノンペンにおいて、地域経済統合を強化するため参加国の間の具体的な協力を反映するRCEP交渉の正式立ち上げに向けた準備作業の進展を歓迎した。

 11.我々は、地域金融協力、とりわけ地域の金融セーフティネットの一部としてのチェンマイ・イニシアティブ・マルチ化(CMIM)の進展を高く評価した。この関連で、我々は、CMIMの規模の1200億ドルから2400億ドルへの倍増、2012年にIMFデリンク割合を30%まで増加すること及び危機予防機能「CMIM予防ライン(CMIM-PL)」の導入を含むCMIMを強化するための2012年5月3日にマニラで開催されたASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議における進展を歓迎した。我々は、ASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO)の設立を歓迎し、独立した地域のサーベイランス・ユニットとしてのその組織強化の重要性を強調した。

 12.我々はまた、現地通貨建て債券市場の発展を促進し、マクロ経済と金融の安定を促進するための、信用保証・投資ファシリティ(CGIF)を含むアジア債券市場イニシアティブ(ABMI)を通じて地域の貯蓄を地域の投資に活用する努力を高く評価した。我々は、9の優先分野、特に、信用保証・投資ファシリティ(CGIF)の保証プログラムと共通債券発行プログラムを含むASEAN+3債権市場フォーラム(ABMF)の活動において目に見える具体的な成果を生み出す新ABMIロードマップ+の採択を歓迎した。我々はまた、将来の地域協力の優先分野にかかる最初の研究結果を歓迎した。我々は、関係閣僚に対し、地域金融協力に関するイニシアティブの迅速な実施を継続するよう指示した。

 13.我々は、ASEANが世界経済・金融協力に関係し、責任ある地域組織であることを反映させる目的で、ASEAN議長国がG20サミットに定期的に参加することの重要性を再確認した。我々はまた、2012年6月18-19日にメキシコ、ロスカボスにおけるG20サミットの実質的な成果を歓迎した。

 14.我々はさらに、インドネシアの大統領が地域の代表として共同議長を務める、国連事務総長ポスト2015年開発アジェンダに関するハイレベルパネルの設立をさらに歓迎した。

 15.我々は、食料安全保障における協力を更に強化することで一致した。我々は、地域における持続可能で統合された食料安全保障を確保する恒久的なメカニズムの役割を果たすべく2012年7月12日に発効した、ASEAN+3緊急米備蓄(APTERR)協定の重要な役割を支持し、提案されたASEAN+3食料安全保障情報システム(AFSIS)の設立を歓迎した。我々は関係閣僚に対し、他の食料についてもメカニズムの構築の可能性を検討するよう指示した。我々はASEAN+3諸国が年一回ASEAN+3食料安全保障協力ラウンド・テーブルの継続開催を指示した。我々はまた、環境条件の多様性、農業の正の外部性を考慮しつつ、農業生産、生産性を高めるために、農業分野の協力に強化のための地域の努力を強化することを決定した。この関連で、我々は、ASEAN食料安全保障情報システム(AFSIS)の着実な実施を歓迎し、AFSISポスト2012の提案に基づいてさらに発展することを期待した。

 16.我々は、ASEANとプラス3との間の観光産業における良好な関係と協力の強化のための主要な手段の一つとなる、ASEAN+3観光協力に関する覚書の署名を期待した。

 17.我々は、教育における協力を構築することで一致し、2012年7月4日にインドネシアのジョグジャカルタにおいて開催された第1回ASEAN+3教育大臣会合教育に関するASEAN+3行動計画(2010-2017)の採択を歓迎した。我々は、キャパシティ・ビルディング、教育の質の改善、地域の競争力の強化、教育交流の促進、地域における更なる教育機会の提供と改革を通じたASEAN共同体及び東アジア共同体構築プロセスを支援する同計画に含まれる具体的な計画、提案及び将来の方向性を評価した。

 18.我々は、文化協力分野において達成された着実な進展を認識した。我々はさらに、ASEAN+3文化芸術担当大臣の協力メカニズムが果たした、芸術文化政策の実施における対話とベストプラクティスの共有の促進のみならず、文化遺産保護、文化関係人材開発、文化産業の分野における緊密な協力関係の促進等の建設的な役割に留意した。我々は、2012年5月24日にシンガポールにおいて行われた第5回ASEAN+3文化芸術担当大臣会議において、文化分野におけるASEAN+3協力強化に関するワークプランが大臣によって承認されたことを歓迎した。

 19.我々は、東アジアの人々の間で、ASEAN意識を向上させ、相互理解を促進させるよう、複数のプラットフォームで情報が流通する環境を整備するよう、情報分野の協力強化の必要性を更に強調した。我々は、情報とメディアを通じたASEAN+3協力の強化に関するワークプラン(2012-2017)が承認されたことに留意し、同ワークプランに掲載された戦略的な活動リストが成功裏に実施されることに期待した。

 20.我々は、2012年7月6日にタイのプーケットで開催された第5回ASEAN+3保健大臣会議の共同声明において詳述されているように、また、伝染性の新興感染症、流行への備えと対処、伝統医療、国民皆保険、非伝染性疾病、母子保健に特に重点を置いた「保健開発に関するASEAN戦略フレームワーク(2010-2015)」と足並みを揃えたものとして、保健分野における連携分野を歓迎した。

 21.我々は、ASEAN+3公共サービス協力に関するルアンプラバン宣言の公共サービスの効率性、能力、説明責任の改善に向けたパイロット・プロジェクトを通じた実施に向けた計画を、満足をもって留意した。我々はまた、ASEAN+3公共サービス責任者会議、公共サービス+3共同技術作業部会会議が、2012年10月2日にマレーシアのプトラジャワにおいて初めて開催されたことを歓迎した。

 22.我々は、地域の社会的弱者の福祉及び生活の向上におけるASEAN+3協力の重要性を再確認した。この関連で、我々はASEAN+3社会福祉と開発に関する大臣会議及びASEAN+3労働大臣会議、ASEAN+3地方開発・貧困撲滅高級実務者会議、ASEAN+3女性委員会の下での協力を深化、拡大することで一致した。

 23.我々は、ASEANとプラス3諸国との間の貿易、投資、観光、教育、文化交流の促進における、日ASEANセンター、韓ASEANセンター、中ASEANセンターの重要な役割を認識した。

 24.我々は、ASEAN+3地域の将来の科学者のために、共同研究、交流プログラム、教育コンテンツの開発と共有を可能とする環境を促進する重要性を認識した。この関連で、地域の科学教員とともに科学分野で才能のある学生を育成するための、韓国のソウルにおける「ASEAN+3科学技術英才教育センター」によって与えられた継続中のプログラムと機会に感謝をもって留意した。

 25.我々は、ASEAN域内の繋がりを強化し、競争力を高め、開発格差を縮小するため、ASEAN+3連結性マスタープランの効果的でタイムリーな実施の重要性を再確認した。この関連で、ASEANは、同マスタープランの実現のためのプラス3諸国の継続的支援を高く評価した。我々は、ASEAN+3の枠組みの下での連結性の強化への支持を表明し、ASEAN+3協力の全ての分野において連結性を優先させ、ASEANとプラス3諸国の間の連結性強化を一層促進するため、「ASEAN+3連結性パートナーシップに関する首脳声明」を採択した。

 26.我々は、東アジア地域における連結性強化と関連するテロ及び国境を越える犯罪との闘いのための努力を強化するとのコミットメントを再確認した。この関連で、我々は、ASEAN+3国境を越える犯罪(国際犯罪)大臣会議の下の協力の促進で一致した。

 27.我々は、地域のエネルギー安全保障と持続可能性を確保するため、新・代替・再生可能エネルギー開発、エネルギー効率と省エネルギー及びクリーンで環境に優しい技術の使用に関する情報交換、調査及び経験の共有を通じたエネルギー多様化の重要性を強調した。我々はまた、2012年9月12日のカンボジア王国において開催された第9回ASEAN+3エネルギー大臣会議の結果を歓迎した。

 28.我々は、災害管理分野における地域協力の更なる強化で一致した。我々は、ASEAN防災人道支援調整(AHA)センターの早期かつ完全な運営とASEAN防災・緊急対応協定作業計画2010-2015の実施を支持した。

 29.我々は、緊密な環境協力の促進におけるASEAN+3環境大臣会議の建設的な役割に留意した。我々は気候変動への緩和策と適応策、生物の多様性、自然遺産保護、国境を越える環境汚染の削減、グリーン成長、持続可能な水資源管理、持続可能な森林管理及び環境教育における協力を強化することで一致した。

 30.我々は、東アジア協力の強化と長期的な東アジア共同体構築に向けた東アジア・シンクタンク・ネットワーク(NEAT)の重要な貢献を評価した。この関連で、我々は、2012年8月28日に中国、北京において開催された信頼構築を通じた東アジア統合の深化というテーマでの第10回NEAT年次会議及び、それぞれ北京、東京、シンガポール及びソウルにおいて開催された4つのNEAT作業部会「NEAT:次の10年間」、「災害管理」、「包括的成長」、「東アジア文化アーカイブ」の結果を歓迎した。我々は、NEATの第9メモランダムに留意するとともに、関係するASEAN+3の分野別機関がNEATの政策提言を検討することを慫慂した。

 31.我々は、ASEAN+3協力と東アジア共同体構築を支援する東アジア・フォーラム(EAF)の重要な貢献を評価した。この関連で、我々は、2012年8月15-17日にミャンマーのネピ-ドーにおいて、「都市と地方の開発格差の是正:教訓と経験の共有」とのテーマで行われた第10回EAFの成果を歓迎した。

 32.我々は、東アジア・ビジョン・グループII(EAVGII)の最終報告書に盛り込まれた提言を、感謝をもって留意した。我々は、EAVGIIの提言の、ASEAN+3プロセスの将来の方向性、地域協力及び共同体構築に向けた重要な貢献に期待し、更なる行動に向けてEAVGIIの提言を検討するよう関係閣僚に指示した。

 33.我々は「ASEAN+3の枠組みでの2012年東アジア文化都市」としてカンボジアのシアムリアップが選ばれたことを歓迎した。我々はまた、2012年を「ASEAN+3訪問年」に指定したことを歓迎した。

 34.我々は、i) 2012年6月15日にタイのバンコクにおいて開催された「ASEAN+3連結性パートナーシップに関するワークショップ」、ii) 2012年10月18-19日にプノンペンにて行われた「ASEAN+3青年リーダーズ・シンポジウム」、iii) 2012年11月2-3日にカンボジアのシアムリアップにおいて行われた「ASEAN+3共同文化公演『多様性の中の統一』」、及びiv) 2012年9月18-19日に北京で行われたASEAN+3協力15周年記念に関するトラックIIシンポジウム等のASEAN+3協力15周年を記念した有意義な活動を歓迎した。

 35.我々は、長期的に東アジア共同体を構築する目的で、地域における更なる協力の強化と拡大のため、ASEAN+3パートナーシップの強化に向けて協調努力することを決定した。

 (了)