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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ASEAN+3協力20周年に係るマニラ宣言

[場所] マニラ
[年月日] 2018年11月14日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

我々,東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国,中華人民共和国,日本,大韓民国の国家元首及び政府の長は,2017年11月14日に,ASEAN+3協力20周年を祝うためフィリピンのマニラに集まった。

我々は,特に1999年の「東アジア協力に関する共同声明」と2007年の「東アジア協力に関する第二共同声明」に沿って,ASEAN+3プロセスを深化させ,拡大するという我々のコミットメントを再確認した。

我々は,東アジアにおける平和,安全保障,繁栄のためのASEAN+3の重要な役割を再確認した。

我々は,発展する地域アーキテクチャーにおけるASEANの中心的な役割に対する,我々の継続的な支持を再確認し,東アジアにおけるより深い地域統合に向けた道筋を

つけるためのASEAN共同体ビジョン2025の実施をASEAN+3が支持し続けるという我々の共有された認識を強調した。

我々は,全ての分野,特に政治・安全保障,経済,金融,食料安全保障,農業,エネルギー,環境及び生物多様性の保存,保健及び伝染病,文化,観光,科学,技術及びイノベーション,情報通信技術,貧困撲滅,災害管理,青年及び教育並びに連結性分野における協力の深化を含む,ASEAN+3の過去20年間にわたる著しい進捗と達成に満足の意を表明した。

我々は,2020年までに東アジア経済共同体(EAEC)を実現するという構想を含む,ASEAN+3協力を促進するための東アジア・ビジョン・グループ(EAVG)IIの最終報告書のフォローアップにおける進捗に留意した。

我々は,今後5年間のASEAN+3の協力を強化するための基本指針としてのASEAN+3協力作業計画(2018-2022)の採択を歓迎した。

ASEAN+3協力20周年に関し,ここに以下のとおり宣言する。

1.東アジア共同体の構築という長期的目標の達成に向けた主要な手段として,ASEAN+3の協力プロセスをさらに強化し,深化させる。

2.地域の平和,安全保障及び安定を確保するために,ハイレベルの訪問,対話及び協議,既存のASEAN+3メカニズムの強化,並びにASEAN主導のメカニズムへの積極的参加を含め,政治・安全保障対話と協力を深化させ,強化する。

3.テロ及び暴力的過激主義,国境を越える犯罪と脅威,サイバーセキュリティといった共通の安全保障上の課題に対応するために,ASEAN+3国境を超える犯罪に関する閣僚会議(AMMTC+3)を含むASEAN主導メカニズムを利用して対話と協力を強化し,また,海洋協力を強化する。

4.地域の金融セーフティネットの不可欠な一部としてのチェンマイ・イニシアティブのマルチ化(CMIM)をさらに強化し,アジア債券市場イニシアティブ(ABMI)を発展させ,ASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO)のサーベイランス及び組織的能力の向上を支援することにより,ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会合(AFMGM+3)の下での地域的金融協力を強化する。

5.中国・ASEAN自由貿易協定(ACFTA)及びACFTA更新議定書,日・ASEAN包括的経済連携(AJCEP),韓国・ASEAN自由貿易地域(AKFTA)の実施と,現代的な,包括的な,質の高い,かつ互恵的な東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定の早期妥結を通じたものを含め,地域の経済統合を促進する。

6.貿易関連の能力構築,労働力及び移民労働者,公共サービス,青年のエンパワーメント,農業,漁業,食料安全保障及び林業,零細中小企業(MSMEs),起業に資する環境の創出,エネルギー安全保障,気候変動への適応と緩和,災害管理,持続可能な水資源管理,生物多様性の保存,野生生物の不法な取引への対策,感染症及びアクティブ・エイジングのための包括的かつ統合的な取組を通じたものを含むユニバーサル・ヘルス・カバレッジ,関連のヘルスケア産業の発展における協力を強化する。

7.ASEAN+3緊急米備蓄(APTERR)協定の効果的実施及びASEAN食料安全保障情報システム(AFSIS)の強化を引き続き支持する。

8.ASEAN統合作業計画Ⅲイニシアティブの実施を通じたASEAN加盟国間の開発格差を縮小し,地域統合を促進するためのASEANの取組を支持する。

9.以下の五つの戦略的分野におけるASEAN連結性アジェンダにおける協力を継続する:(i)持続可能なインフラ,(ii)デジタル・イノベーション,(iii)継ぎ目のないロジスティックス,(iv)制度改革,(v)ASEAN連結性マスタープランの実施を支援するための+3諸国の人の流動性。

10.誰一人として取り残すことなく,人々の生活水準を向上させるため,ASEAN共同体ビジョン2025と持続可能な開発のための2030アジェンダの実施の間の相互補完性を強調する。

11.首脳による決定の実施について議論し,地域的及び国際的な課題に関する意見と情報を交換するために,ASEAN常駐代表部委員会(CPR)と中国,日本,韓国のジャカルタ駐在ASEAN担当大使との間の関与をさらに強化する。

12.EAVGIIの最終報告書の実施におけるCPR+3,セクトラル・ボディー及び関係するステークホルダーによる取組と作業を継続する。

13.ASEAN+3文化協力ネットワーク(APTCCN)による取組と作業を継続し,経済成長と貧困削減のための有形及び無形文化資産の適切な利用を最適化しつつ,関連する技術を共有する活動と交流を通じ,文化遺産と功績の保護及び促進のために協力し,適切な場合には東アジア文化都市とASEAN文化都市間の都市レベルの対話と連携を強化する。(文科省)

14.さらなる注意を要する協力分野における提言を示し,調整を強化したりするためのASEAN事務局の能力を強化する。

15.ASEANと+3各国との間の貿易,投資,観光,教育,人的・文化交流を促進するため日本アセアンセンター,韓国ASEANセンター,中国ASEANセンターの潜在力を最大化する。

16.ASEAN+3協力の更なる促進のため,ASEAN事務局と3カ国協力事務局が協働するよう奨励する。

17.より深い地域統合を促進するための相互に有益な分野を探求し,ASEAN+3協力の作業とイニシアティブを更に強化するために,ASEAN+1ビジネス・カウンシルと東アジア・ビジネス・カウンシルの間の協力を奨励する。

18.関係部門と協議しつつ,研究と分野間協議に基づく政策形成に対するインプットの補完的手段としての東アジア・フォーラム(EAF)及び東アジア・シンクタンク・ネットワーク(NEAT)といったトラック1.5及びトラック2メカニズムの役割を強化し,それらの提言,特にEAVGIIが提案したEAECの実現に向けたあり得るアプローチについて検討する。

19.ASEAN+3協力ワークプランの下でのプロジェクトと活動の実施を支持すべくASEAN+3協力基金(APTCF)を引き続き強化する。