データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 食料安全保障協力に関するASEAN+3首脳声明

[場所] マニラ
[年月日] 2017年11月14日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

我々、ASEAN加盟国、中華人民共和国、日本、大韓民国の国家元首及び政府の長は、2017年11月14日にフィリピンのマニラで開催されたASEAN+3協力20周年記念サミットの機会に、

2030年までにあらゆる場所であらゆる形の貧困を解消するという「持続可能な開発のための国連2030アジェンダ」の下での我々のコミットメントを想起し、

食料安全保障、食品安全、栄養の改善、公平な分配を確保するとともに、地域における持続可能な開発を促進するために共に協力するという約束を再確認し、

ASEANの人々とASEAN諸国間の恒久的な連帯と結束を達成し、共通のアイデンティティを築き、包摂的で、人々の健康、生活、福祉がより満たされた、思いやりと分かちあいの社会を築くために、住民指向、住民中心で社会的に責任を果たすASEAN共同体を実現するためのASEANの取組に対する我々の支持を改めて表明し、

世界の穀物生産力の限定的な増加によって満たされていない世界人口の急激な増加による食料需要のかつてない伸びと、具体的かつ効果的な措置と協力により地域の食料安全保障を守ることの必要性に留意し、

地域の諸国が効果的な措置を講ずることを奨励することにより食料安全保障の協力を強化するという我々の強い決意を強調し、

食料安全保障に関する政策とイニシアティブの実施を強化するための、関連する国連機関及び地域機関との国際的なパートナーシップの重要性を認識し、

我々は、ここに以下を実施することを決定した。

1.飢餓の解消、食料安全保障の実現、栄養の改善、持続可能な農業の促進に向けた「持続可能な開発のための国連2030アジェンダ」の下でのコミットメントを効果的に実施する取組を強化する。

2.ASEAN加盟国及び+3諸国における農業及び食料安全保障分野の協力メカニズムとして、ASEAN+3農林大臣会合及びその高級実務者会合を通じた関与を強化する。

3.政策について意見交換し、経験やベストプラクティスを共有し、協力を強化し、地域の食料安全保障を確保するために、ASEAN加盟国と+3諸国の間で定期的な政策対話を行うことを奨励する。

4.「ASEAN包括食料安全保障(AIFS)」枠組みと「ASEAN地域における食料安全保障戦略行動計画(SPA-FS)2015-2

020」の効果的な実施を支持し、「ASEAN食料安全保障政策(A

FSP)」の実施において関連するASEAN機関と協力する。

5.気候変動の影響への対応を含め地域及び世界全体の食料安全保障への不確実な課題に対処し、国及び地域の食料安全保障状況を根本的に改善するため、地域の諸国が政策や活動を積極的かつ効果的に調整し、グリーンテクノロジー、研究開発、資源管理システムの活用を通じた

ものを含め、包括的な穀物生産能力を改善するための計画を実施することを支持する。

6.政策議論、プログラムやプロジェクトの策定、研究開発への民間部門の参加を拡大し、インセンティブを付与するとともに、生産性と品質の向上に向けた官民パートナーシップを可能とする環境づくりを促進する。

7.国内又は地域内における民間部門による農業分野への投資を奨励し、地域の食料安全保障を促進するために、地域の諸国が相互に学び合う

ことにより農業投資環境をさらに改善させ、農業投資とインフラ整備のための官民パートナーシップを強化することを奨励する。

8.地域の諸国に対し、広報活動を通じ、食品保存及び食品廃棄物削減を強化するとともに、食料安全保障への圧力を緩和すべく、穀物の収穫、乾燥、輸送、倉庫保管及び加工における管理と協力を強化することを奨励するように求める。

9.気候変動、国境を越えた検疫、陸生・水棲動物の疾病や植物病虫害の監視、並びにその共同予防及び制御に関するASEAN+3諸国間の立場の調整を強化する。

10.「ASEAN+3緊急米備蓄(APTERR)」のTier1、2、3プログラムの効果的な活用を含むAPTERR協定の実施を強化し、APTERRの有効性を高めるため、災害時のTier3プログラムへのアクセスを迅速化すべく規則と手続を簡素化する。

11.食料安全保障に関する情報交換を強化し、ASEAN+3諸国の間での食料安全保障に関する情報共有システムの構築の可能性を探求し、食料安全保障の分野における研究開発とイノベーションに関する協力を実施するようASEAN+3諸国に奨励するため、「ASEAN+3

食料安全保障協力戦略ラウンドテーブル会議」の開催を継続する。

12.地域内の主要食料品の供給と需要に関連したモニタリング及び予測を改善するため、国連食糧農業機関統計データベース(FAOSTAT)やASEAN食料安全保障情報システム(AFSIS)といつた利用可能な情報共有プラットフォームを通じた主要食料品に関する

情報交換を促進する。

13.農家、小規模生産者、零細中小企業(MSMEs)及び農業ビジネス従事者がより効率的な農業慣行と管理技術を学習し発展させるための競争力及び機会を拡大させ、小規模農家のための技術研修を提供し、持続性を向上させ得る金融へのアクセスや適切な技術の使用を促

進し、生産と生活条件を改善させ、農業分野に携わる人材不足の問題を緩和するために農業分野への若者の参加を奨励し、農業協同組合の設立を促進し、より高付加価値な市場と近代的なフードバリューチェーンにおける地位と役割を向上させる。

14.国の食料安全保障を守るための支援を提供するため、官民の農業サービスへの参加及び、生産前・生産中・生産後におけるニーズに応

える幅広いサービスやサービスネットワークの構築の促進を奨励する。

15.持続可能で、食料確保に支障を来さず、かつ、気候に優しいバイオエネルギーの確保においてASEAN諸国を支援するため、「ASEAN+3バイオエネルギー及び食料安全保障フレームワーク2015

-2025」の下で活動を行う。

(了)