データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国民のみなさまへ(鳩山内閣総理総理大臣)

[場所] 訪米終了後、日本の帰国途上の機中にて
[年月日] 2009年9月26日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 G20の会議が全て終了し、オバマ大統領に別れを告げに挨拶にうかがった折に、「今朝(大統領が大のお気に入りの)パメラのパンケーキを食べました」と話した途端、大統領は相好を崩して、「気に入った?一緒に食べたかったな」と本当に嬉しそうでした。このエピソードを大統領は自身の記者会見でも披露して下さったようです。どうやら、バラクvsユキオの滑り出しは順調です。

 政権交代して僅か6日目の訪米。心配は全くの杞憂で、お会いした全ての首脳の方々から心から祝福をいただきました。きっと選挙で大勝したことも手伝ってのことと思います。これで日本の政治が変わるのですね、という期待感に溢れていました。到着翌日の気候変動に関する国連演説は日本が現実に変わったことを印象付けることに大成功でした。温室効果ガス削減に関する中期目標の大胆な提示は、他の主要国の追随が前提ではありましたが、間近に迫ったCOP15の重い空気の流れを大きく変えたとの評価をいただきました。人類や生命の生存のため、誰かがやらなければならないのなら、日本が旗振り役をしようではありませんか。高い科学技術力を有する日本人なら確実に高い目標をクリアできるでしょう。

 核不拡散・核軍縮に関する国連安保理での演説は4日目にありました。唯一の被爆国として、オバマ大統領と共に核の無い世界に向けて先頭を走る決意を述べました。さらに続いて国連総会での一般演説を行いました。「友愛」を世界に発信しつつ、日本が世界のかけ橋になる決意を宣言しました。

 最後の2日は舞台をニューヨークからピッツバーグに移してG20の会合がワーキングディナーやランチも含めて実に精力的に4回行われました。金融や経済を中心に熱心な議論が交わされました。私は25人から50人にもなる円卓会議では意思決定など不可能ではないかと疑っていましたが、そこはオバマ大統領の巧みな手綱さばきと、シェルパの活躍で報告書が出来上がりましたのはさすがでした。

 私にとり、国連とG20の間の同時開催によって、多くの首脳の方々と打ち解けた雰囲気の中で会談が出来たことは何よりの財産になりました。オバマ大統領とは拉致問題を始め北朝鮮の核開発や、アフガニスタンの支援問題など率直な話し合いが出来ましたし、胡錦涛主席には、東シナ海を友愛の海にしようと提案し同意をいただきました。メドベージェフ・ロシア大統領には我々の世代で北方領土問題を解決して平和条約を結ぼうと提案しました。英国、豪州、韓国、インド、インドネシア、ベトナム、さらにはカナダのそれぞれ首脳と会談のときを持てたことも幸いでした。

 新しい日本が外交の一歩を踏み出せたことは、必ず国益となると確信します。政権交代を選択して下さった国民のみなさまの期待に応えて参りますので、どうか温かく見守っていただき度く存じます。

内閣総理大臣 鳩山由紀夫

(花押省略)