データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 拉致問題の解決に向けて

[場所] 
[年月日] 2010年11月29日
[出典] 首相官邸
[備考] 拉致問題対策本部第4回会合本部長指示
[全文]

 北朝鮮による日本人拉致問題は、我が国に対する主権侵害かつ重大な人権侵害であり、許し難い行為である。政府が認定した拉致被害者は12件17名であるが、8年前に帰国された5名を除き、12名の拉致被害者が北朝鮮に囚われの身になったまま愛する家族と引き裂かれ、一日も早い救出を待ち望んでいる。また、政府が認定した拉致被害者以外にも、拉致の疑いを否定できない方々もいる。このような状況にあることは政府として慚愧に堪えず、拉致問題が長期にわたり膠着状態にあるという厳しい現状認識の下、一日でも早く全ての拉致被害者の安全な帰国を実現すべく、更なる取組を政府一丸となって猛進することが必要である。

 北朝鮮に対する我が国の基本的なスタンスは、第65回国連総会(平成22年9月24日)において示したとおり、日朝平壌宣言にのっとり、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を図る考えに変わりはなく、かつ、その前提としては、特に、拉致問題の解決が不可欠であることは言うまでもない。また、北朝鮮が日朝間の合意を実施するなどの前向きなかつ誠意ある対応をとれば、日本としても同様に対応する用意があり、我が国としては引き続き、北朝鮮が累次の安保理決議や六者会合共同声明に従って具体的な行動をとることを求めていくことに変わりはないとしてきた。しかしながら、現在、北朝鮮は核開発を継続する姿勢を改めて誇示し、韓国延坪島に対して砲撃を行うなどの動きを見せている。このような挑発行為は、我が国を含む北東アジア全体の平和と安定を損なうものである。当対策本部においても、このような事態を踏まえて十分な対策をとる必要がある。

 今般、このような認識の下、「生存者の即時帰国に向けた施策」及び「安否不明の拉致被害者に関する真相究明」に重点的に取り組むとした第2回拉致問題対策本部会合の確認事項(別添)を踏まえ、当面、拉致問題対策本部を中心に関係各府省庁の叡智を結集し、以下の8点について取り組むこととする。

(1)拉致被害者家族等へのきめ細やかな対応

(2)北朝鮮側の対応等を考慮しつつ更なる措置についての検討及び現行法制度の下での厳格な法執行の推進

(3)平成20年8月の日朝合意の履行を含む北朝鮮側による具体的な行動への継続した強い要求

(4)拉致被害者及び北朝鮮情勢に係る情報収集・分析・管理の強化

(5)拉致の可能性を排除できない事案に係る捜査・調査の徹底、及び拉致実行犯に係る国際捜査を含む捜査等の継続

(6)拉致問題の解決に資する内外広報活動の充実

(7)米国、韓国を始めとする関係国等との国際的連携の強化

(8)その他拉致問題の解決に資するあらゆる方策の検討

 なお、拉致問題解決への戦略的取組等総合的な対策を機動的に推進するため、引き続き、本部長、副本部長を中心に連携を密にすることとする。