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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 経済財政運営と改革の基本方針2025について

[場所] 
[年月日] 2025年6月13日
[出典] 内閣府
[備考] 閣議決定
[全文] 

経済財政運営と改革の基本方針2025について

経済財政運営と改革の基本方針2025を別紙のとおり定める。

(別紙)

経済財政運営と改革の基本方針2025

〜「今日より明日はよくなる」と実感できる社会へ〜

令和7年6月13日

{目次は省略}

第1章 マクロ経済運営の基本的考え方

1. 日本経済を取り巻く環境と目指す道

 世界に安定と繁栄をもたらしてきた国際秩序は、現在、自国第一主義や権威主義的国家の台頭によって変化しつつある。力や威圧による一方的な現状変更の試みも続いている。

 政府は、いかなる状況下にあっても、国益を守り抜く。そのため、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化すると同時に、パワーポリティクスの下で新たな国際秩序が形成されることにも備える。そして、世界の安定と繁栄に貢献しながら、我が国経済社会の持続性を確保していく。

 厳しさを増しているのは国際環境だけではない。国内では、例えば、頻発する自然災害や甚大な被害が想定される大規模地震への対処、老朽化したインフラの保全、エネルギー・食料・経済安全保障の確立など、強靱な経済構造をつくるための課題は山積している。

 本格的な人口減少を見据えた経済・財政・社会保障制度の持続可能性の確保など、これまで指摘されながら、必ずしも十分に進んでいない構造改革への取組。人口減少下にあっても、経済のパイを縮小させないためのイノベーションや生産性の向上、そして、その前提となる質の高い雇用の確保。我が国を取り巻く国際秩序が大きく変化する中にあっても、官民が連携し、こうした課題解決のための取組を推進し、我が国経済の持続的成長と国民生活の豊かさの向上を目指すことこそが、「新しい資本主義」の実現にほかならない。

 「新しい資本主義」の実現に向けた取組によって、30年続いたコストカット型経済は終焉を迎えつつあり、5%を上回る賃上げが2年連続して実現した*1*。石破内閣は、その取組を更に進め、「賃上げこそが成長戦略の要」との考え方に立って、最低賃金の引上げを含め、物価上昇を安定的に上回る賃上げを実現する。そして、国民が「今日より明日はよくなる」と実感でき、ふるさとへの思いを高めることができる「新しい日本・楽しい日本」を実現することを目指す。そのための経済財政運営と改革の基本方針が、本方針である。

2. 当面のリスクへの対応及び賃上げを起点とした成長型経済の実現

 米国による一連の関税措置及びその後の対抗措置の応酬は、これまで国際社会が培ってきた自由で開かれた貿易・投資体制をゆるがせにするものとして、我が国からの輸出を減少させるだけでなく、家計や企業のマインドの慎重化を通じて消費や投資を下押しするおそれがあり、我が国経済全体を下振れさせるリスクとなっている。また、足元では、食料品を中心とする物価高が継続し、家計や企業は、依然として厳しい状況に置かれている。

まずは、これらのリスクへの備え・対応に万全を期す。

 戦後国際社会が築き上げてきた自由貿易体制の恩恵を受ける我が国としては、米国に対して措置の見直しを強く求めつつ、日米が共に成長するための協力関係を力強く推し進めるため、粘り強く協議を続ける。同時に、関税措置による国内産業・経済への影響を想定し、資金繰り対策など、必要な支援を行うだけでなく、あらゆる事態を想定して万全の措置を講ずる。また、国内投資の拡大やサプライチェーンの強靱化、対日直接投資の促進、円滑な労働移動等に取り組むとともに、内需の拡大を含め外的環境の変化に強い経済構造を構築する。

 足元の物価高については、その動向が家計や事業活動に与える影響に細心の注意を払いつつ、令和6年度補正予算や令和7年度予算に盛り込んだ施策に加え、物価や国民生活の状況に応じて、政府備蓄米の売渡し、燃料油価格の定額引下げ、電気・ガス料金支援を追加しており、あらゆる政策を総動員して、国民生活・事業活動を守り抜く。

 我が国経済は、これらのリスクに直面する一方で、現在、名目GDPは600兆円を超え、賃金も2年連続で5%を上回る賃上げ率が実現するなど、成長と分配の好循環が動き始めている。コストカット型経済から脱却し、デフレに後戻りせず、成長型経済への移行を確実なものとするため、当面のリスクへの備え・対応に万全を期すとともに、日本経済全国津々浦々の成長力を強化する。

 「賃上げこそが成長戦略の要」である。持続的・安定的な物価上昇の下、日本経済全体で1%程度の実質賃金上昇を定着させ、国民の所得と経済全体の生産性を向上させる。この実現に向け、中小企業・小規模事業者の賃上げを促進するため、適切な価格転嫁や生産性向上、経営基盤を強化する事業承継・M&Aを後押しするなど、賃上げ支援の施策を総動員する。最低賃金を着実に引き上げ、2020年代に全国平均1,500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続ける。将来における賃金・所得の増加にも取り組む。企業の稼ぐ力を継続的に高めるため、GX・DX、スタートアップ、経済安全保障等の分野において、官と民が連携した投資が行われる「投資立国」の取組を進める。貯蓄から投資への流れを確実なものとし、中長期の視点から国民の資産形成を後押しする「資産運用立国」の取組を進める。

 「地方創生2.0」は、「新しい日本・楽しい日本」を実現するための政策の核心である。「令和の日本列島改造」としてこれを進め、「若者や女性にも選ばれる地方」を実現する取組等を通じて、日本全体の活力を取り戻す。

 国民の安心・安全を確保することは、成長型経済への移行の礎となる。東日本大震災や令和6年能登半島地震を始めとする自然災害からの復旧・復興、防災・減災・国土強靱化、外交・安全保障環境の変化への対応、犯罪対策の強化等に取り組む。

 減税政策よりも賃上げ政策こそが成長戦略の要という基本的考え方の下、既に講じた減税政策に加えて、これから実現する賃上げによって更に手取りが増えるようにする。そのために、経済全体のパイを拡大する中で、物価上昇を上回る賃上げを普及・定着させ、現在及び将来の賃金・所得が継続的に増加する「賃上げを起点とした成長型経済」を実現することを目指す。

 政府は、引き続き、日本銀行と密接に連携し、経済・物価動向に応じた機動的なマクロ経済政策運営を行う。政府は、競争力と成長力強化のための構造改革に取り組むとともに、持続可能な財政構造を確立するための取組を推進する。日本銀行には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。

 経済財政諮問会議においては、今後とも、経済・財政の状況、金融政策を含むマクロ経済政策運営、外的環境の変化に対する耐性が強い経済構造への変革に向けた取組等について、定期的に検証する。

3. 人口減少下における持続可能な経済社会の構築

 我が国の生産年齢人口は、これからの20年で1,500万人弱、2割以上が減少する*2*。こうした中、かつて人口増加期に作り上げられた経済社会システムを中長期的に持続可能なシステムへと転換することが求められる。

経済・財政・社会保障の持続可能性を確保するためには、生産年齢人口の減少が本格化する中にあっても、中長期的に実質1%を安定的に上回る成長を確保する必要がある。その上で、それよりも更に高い成長の実現を目指す。こうした経済においては、2%の物価安定目標を実現する下で、2040年頃に名目GDP1,000兆円程度の経済が視野に入る。

 人口減少が本格化する2030年代以降も、こうした成長を実現するとともに、医療・介護給付費対GDP比の上昇基調に対する改革に取り組み、PBの一定の黒字幅を確保していくことができれば、長期的な経済・財政・社会保障の持続可能性が確保される。

 こうしたビジョンの下、骨太方針2024*3*で定めた「経済・財政新生計画」に基づき、経済あっての財政との考え方の下、潜在成長率の引上げに重点を置いた政策運営を行うとともに、歳出・歳入両面の改革を継続する。人口減少下にある我が国においては、限られたリソースからより一層高い政策効果を生み出すことが必要となる。全世代型社会保障の構築、少子化対策及びこども・若者政策の推進、公教育の再生・研究活動の活性化、戦略的な社会資本整備の推進、地方行財政基盤の強化など、経済・財政一体改革の取組を進める。

 国際秩序が根幹から揺らぎかねない不確実な時代にあって、我が国が世界の中で重要な地位を担い続けるためには、財政が国民経済の中長期的な発展を支える役割を十分に果たすことで成長を実現し、賃金や所得が拡大する中で成長と分配の好循環が実現し生活が豊かになる、活力ある経済社会を築いていく。

4. 人中心の国づくり

 「人材希少社会」に入っている我が国においては、人中心の国づくりを進めることが重要である。国民の不安を取り除き、公教育の内容や質を充実させるとともに、自己実現を可能とする環境を整備し、国や地域の経済社会を発展させ、ふるさとへの思いを高めることができるよう、あらゆる施策を総動員する。これらを通じ、国民一人一人にとって、Well-being(幸福度)の高い、豊かさ、安心・安全、自由、自分らしさを実感できる活力ある経済社会を構築する。

 国民の不安を取り除き、安心・安全な暮らしを実現するため、確実な賃上げの定着とともに、地方における質の高い産業・雇用の場の創出、様々な家計の実態を踏まえた所得再分配機能の強化や格差の是正、就職氷河期世代及びその下の世代が感じている将来への不安の解消に取り組む。一人一人が持つ可能性を最大限引き出すため、官民が連携した人づくりや公教育の再生・改革を進める。さらに、多様な価値観を持つ者が互いに尊重し合い、自己実現を進めていくことができる環境整備を進めるため、女性・若者のスタートアップへの挑戦や正規雇用の大幅増、リ・スキリングを行う者への支援、多様な働き方の推進に取り組む。人中心の国づくりを進め、全ての人が幸せを実感でき、人を財産として尊重する「人財尊重社会」を築く。ふるさとへの思いを高めることができるよう、「地方創生2.0」の取組によって、強い経済基盤と豊かな生活基盤を地方に構築する。人や組織のつながりを強化することで新しい価値が生まれる。それがまた新たな人を呼び、地域は更に多様になり、より豊かで強い好循環が生まれ、新たな価値創造の場となる。都市と地方の二項対立を超えて、より融合的な日本を創る。このため、別途定める「地方創生2.0基本構想」*4*に基づき、今後10年間の枠組みを強力に推進する。これらの取組を通じて、「新しい日本・楽しい日本」を実現することを目指す。

5. 不確実性が高まる国際情勢への備え

 ロシアによるウクライナ侵略等の地政学リスクの高まり、保護主義や権威主義国の台頭、米中対立、デジタルテクノロジーをめぐる覇権争いなど、我が国を取り巻く国際秩序は変化しつつある。

 資本主義は、過去、自由放任主義や修正資本主義・福祉国家に続き、1980年代から新自由主義が台頭するなど、大きく変遷してきた。新自由主義は、グローバル化の進展とあいまって世界経済の成長の原動力となった一方で、経済的格差の拡大や気候変動問題の深刻化、サプライチェーンの脆弱化など、市場原理に基づく解決を期待することが困難な問題を顕在化させたとも言われている。また、一部の権威主義国が、自由貿易体制やデジタル化の恩恵を受けつつ急速な経済成長を成し遂げた結果、グローバル・インバランスの拡大をもたらしたとの指摘もある。こうした中、一部の国において、保護主義や自国中心主義の動きが強まり、国際協調の形骸化や国際的分断が進行することが懸念されている。

 中国は、GDPが世界第2位の経済大国となる中、貿易や先端技術の面において、米国との競合関係にある。他国の中国への依存を利用して、相手国に経済的な威圧を加える事例も発生している。一帯一路構想とも連動した人民元決済による取引の拡大は、将来的には、基軸通貨としてのドルの役割に少なからず影響を及ぼすことを危惧する見方もある。

 こうした国際情勢の不確実性の高まりは、我が国の経済財政運営にとってのパラダイム・シフトである。経済安全保障の観点から、官民の叡智を結集しつつ、重要物資のサプライチェーン強靱化や先端技術の保全・育成等を通じ、我が国の自律性の向上、技術等に関する我が国の優位性・不可欠性の確保に努めることが必要となる。また、価値や原則を共有する同盟国・同志国等と連携し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け、政策努力を重ねると同時に、新たな国際秩序・ルール作りにも対応・参画するという戦略・対応策を周到に備えておくことが求められる。

 本基本方針に示す政策運営の考え方や方向性については、国民の納得と共感を得ることが重要であり、本方針を含む内閣の重要政策について、内外への機動的・戦略的広報を強化する。


第2章 賃上げを起点とした成長型経済の実現

1. 物価上昇を上回る賃上げの普及・定着 〜賃上げ支援の政策総動員〜

(1)中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画の実行

 2029年度までの5年間で、日本経済全体で年1%程度の実質賃金上昇、すなわち、持続的・安定的な物価上昇の下、物価上昇を1%程度上回る賃金上昇をノルムとして定着させる。この実現に向け、中小企業・小規模事業者の賃上げを促進するため、価格転嫁・取引適正化、生産性向上、事業承継・M&Aによる経営基盤強化及び地域の人材育成と処遇改善に取り組む。

 価格転嫁・取引適正化については、「官公需における価格転嫁のための施策パッケージ」*5*に基づく取組として、低入札価格調査制度*6*及び最低制限価格制度*7*の導入拡大・活用、「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」*8*に基づく物価上昇に伴うスライド対応や期中改定、国・独立行政法人等及び地方公共団体において必要となる予算の確保*9*等*10*を進める。中小受託取引適正化法*11*の執行体制を強化するとともに、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」*12*の周知広報を徹底する。パートナーシップ構築宣言の拡大や実効性の向上を含め、サプライチェーン全体で取引適正化を進める。中小企業の知的財産への侵害に関する実態調査を行い、独占禁止法*13*上の指針を策定するほか、知財経営支援ネットワーク*14*を通じたリテラシーの向上等に取り組む。

生産 性向上については、飲食業、宿泊業、小売業等の12業種で策定した「省力化投資促進プラン」5に基づく官民での取組の目標を達成するため、2029年度までの集中的な取組として、デジタル支援ツールを活用したサポート、全国的な伴走型支援、複数年にわたる生産性向上支援を通じて、2029年度までの5年間でおおむね60兆円の生産性向上投資を官民で実現する。地域の経営人材を確保するため、「週一副社長」*15*の普及、マッチング支援の強化、副業・兼業の促進に取り組む。

 事業承継・M&Aについては、「事業承継・M&Aに関する新たな施策パッケージ」5に基づき、支援機関による売手側のニーズの掘り起こしの強化、事業承継・引継ぎ支援センターの体制強化等に取り組む。事業承継税制(特例措置)に関し、令和7年度与党税制改正大綱の記載*16*に鑑み、事業承継に係る政策の在り方の検討を進めるとともに、後継者の経営能力の育成に取り組む。

 地域の人材育成と処遇改善については、在職者を含め、大学、短期大学、高等専門学校及び専門学校においてアドバンスト・エッセンシャルワーカー*17*の育成に取り組むほか、医療・介護・保育・福祉等の人材確保に向けて、保険料負担の抑制努力を継続しつつ、公定価格の引上げを始めとする処遇改善を進める。

 この他、(2)に記載する取組を含め、「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」5に基づく取組を進める。

 最低賃金については、適切な価格転嫁と生産性向上支援により、影響を受ける中小企業・小規模事業者の賃上げを後押しし、2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続することとし、官民で、最大限の取組を5年間で集中的に実施する。

 政府として、「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」に定める、1地方の中小・小規模事業者にとって重要な官公需における対策等を含めた価格転嫁・取引適正化の徹底、2業種別の「省力化投資促進プラン」とそれに基づくきめ細かな支援策の充実と支援体制の整備を通じた中小企業・小規模事業者の生産性向上、3中小・小規模事業の経営者の方々の事業承継・M&Aに関する不安や障壁を取り払い、先々の経営判断を計画的に行うことができる環境の整備、4地域で活躍する人材の育成と処遇改善等の施策パッケージを実行する。また、EU指令においては、賃金の中央値の60%や平均値の50%が最低賃金設定に当たっての参照指標として、加盟国に示されている。最低賃金の引上げについては、我が国と欧州では制度・雇用慣行の一部に異なる点があることにも留意しつつ、これらに比べて、我が国の最低賃金が低い水準となっていること及び上記の施策パッケージも踏まえ、法定3要素のデータに基づき、中央最低賃金審議会において議論いただく。

 「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」には、中小企業・小規模事業者の生産性向上、官公需の価格転嫁等が定められている。国は、計画を踏まえ、都道府県・市町村が地域の状況に応じてきめ細かな賃上げ環境整備に取り組むことを、様々な政策手段を活用して後押しする。その中で、各都道府県の地方最低賃金審議会において中央最低賃金審議会の目安を超える最低賃金の引上げが行われた場合は、持続的な形で売上拡大や生産性向上を図るための特別な対応として、政府の補助金による重点的な支援を行うことや、交付金等を活用した都道府県の様々な取組を十分に後押しすることにより、生産性向上に取り組み、最低賃金の引上げに対応する中小企業・小規模事業者を大胆に後押しする。

 地方最低賃金審議会において、これらの政府全体の取組や各都道府県の賃上げ環境も踏まえ、法定3要素のデータに基づき、実態を踏まえた審議決定となるよう、議論いただく。

 地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図る。

(2)三位一体の労働市場改革及び中堅・中小企業による賃上げの後押し

 1990年代のバブル崩壊以降、経済全体が力強さを欠く中で、企業はコストカットを迫られ、既存の雇用を維持しつつ人件費を抑制し、また、非正規雇用労働を採用した結果、労働生産性の変化が的確に反映されず、賃金全体が伸び悩んだ。人手不足の深刻化が見込まれる中、成長型経済への移行を確実なものとするためには、労働者一人一人の雇用の質・労働生産性を向上させるとともに、労働市場の流動性を高め、我が国経済全体の生産性向上と持続的な賃上げにつなげていくことが求められる。

(三位一体の労働市場改革)

 生成AIが人間の業務を代替することによって、将来的に一部の事務職等の労働需要が減少する可能性があることも考慮して、技術トレンドを踏まえた幅広い労働者に対する効果的なリ・スキリング支援*18*に取り組む。具体的には、AIを含むデジタルスキルに関する教育訓練給付金対象講座を拡大するとともに、全国の非正規雇用労働者等がオンラインで職業訓練を受講することを可能とする。中高年齢層のセカンドキャリアに向けたリ・スキリングを含め、キャリアプランニングを支援する。産学協働によるリ・スキリングプログラムについて、毎年約3,000人が修得できるよう、提供拠点・プログラムを拡充する。2028年技能五輪国際大会の日本開催の決定を契機として、現場人材のスキル向上と処遇改善のための環境を整備するとともに、スキルアップを目指す国民運動を展開する。「ジョブ型人事指針」*19*を周知するとともに、「人的資本可視化指針」*20*の見直し、有価証券報告書の人的資本に関する情報開示の充実を進める。労働移動の円滑化について、官民の公開求人情報の収集・分析や検定のスキル評価を充実させ、職業情報提供サイト(jobtag)の機能を強化する。ハローワークの体制強化やAIの活用を進め、在職者を含めたキャリアサポートを強化する。

 生産性の高い成長産業・企業への労働移動の円滑化及び多様で柔軟な働き方の推進を通じた労働参加率の向上による就業構造改革を経済・産業構造改革と一体で進める。

(多様で柔軟な働き方の推進)

 短時間正社員を始めとする多様な正社員制度*21*、勤務間インターバル制度の導入促進、選択的週休3日制の普及、仕事と育児・介護の両立支援、全ての就労困難者*22*に届く就労支援に取り組む。

 いわゆる「年収130万円の壁」を意識せず働くことができるよう、2025年度中に、労働時間の延長や賃上げを通じて労働者の収入を増加させる事業主を支援する措置を実施する。働き方改革関連法*23*施行後5年の総点検を行い、働き方の実態及びニーズを踏まえた労働基準法制の見直しについて、検討を行う。

 国家公務員について、優秀な人材の獲得及び定着のため、民間の人材獲得に向けた取組を踏まえ、働く時間や場所の柔軟化、人材マネジメントの強化、採用プロセスの弾力化、処遇の改善を進める*24*。

(個別業種における賃上げに向けた取組)

 建設業や自動車運送業の賃上げに向け、労務費の基準の設定及び実効性確保、建設キャ

リアアップシステムの利用拡大、賃上げに対応した運賃設定や荷主への是正指導の強化等を通じ、処遇改善や取引適正化を推進する。警備業やビルメンテナンス業の賃上げに向け、官公需におけるリスクや重要度に応じた割増加算を含め、適切な単価設定や分離発注の徹底により、労務費の価格転嫁を進める。

 医療・介護・障害福祉の処遇改善について、過去の報酬改定等における取組の効果を把握・検証し、2025年末までに結論が得られるよう検討する。

(中堅・中小企業による賃上げの後押し)

 事業者の定期的な情報提供を促す仕組みを検討するとともに、地域金融機関・信用保証協会のIT化を進め、予兆管理を強化する。政府系金融機関、中小企業基盤整備機構又は中小企業活性化協議会の支援を通じ、再生支援が必要な企業*25*のロールアップ*26*を促進する。事業者選択型経営者保証非提供制度*27*の活用状況をフォローアップし、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を目指す。「再生・再チャレンジ支援円滑化パッケージ」*28*に基づく取組を進める。

 地域経済への波及効果が大きい重点支援企業を選定し、地域ごとの支援体制を整備する。中堅企業の研究開発や大規模設備投資を支援するとともに、ファンド等からの出資を通じ、資金調達環境を整備する。海外展開を担える高度人材の受入れ、家族経営形態のガバナンスの強化を促進する。100億円超えの売上げを目指すことを宣言する企業の設備投資支援等を行うとともに、中小・小規模事業者の新事業進出・事業構造転換、研究開発及び新製品・サービス開発を支援する。

 地域の社会課題解決の担い手となるローカル・ゼブラ企業の育成に向け、社会的インパクト評価を資金調達につなげる環境整備を進める。地域の生活を支えるサービスの供給を維持・発展させる「地域協同プラットフォーム」*29*を支援する。

 中小企業・小規模事業者の人材管理*30*を含めた経営に対する支援の体制・機能を強化する。企業の情報・支援ニーズを集約した、中小企業と支援機関とのマッチングに係る基盤(セカマチ)の機能を拡充する。「小規模企業振興基本計画」*31*を踏まえ、経営力向上のための商工会・商工会議所による支援を行う。独立行政法人工業所有権情報・研修館の機能の地方展開に取り組む。

2. 地方創生2.0の推進及び地域における社会課題への対応

(1)地方創生2.0の推進 〜令和の日本列島改造〜

(地方創生2.0基本構想)

 全ての人が安心と安全を感じ、自分の夢に挑戦し、「今日より明日はよくなる」と実感できる、多様な価値観を持つ一人一人が、互いに尊重し合い、自己実現を図っていくことができる活力ある地方・国家である「新しい日本・楽しい日本」を創り出していく。その実現には、持続可能な社会として、我が国の基盤である「強い」経済と、「豊かな」生活環境を更に発展させ、その基盤の上に、地域や人々の多様性、国民の多様な幸せを創り出していくことが重要である。「強く」、「豊か」で、「新しい・楽しい」地方の実現に向けて取り組む。これまでにも増して、人材や労働力が希少となる人材希少社会においては、「人財尊重社会」を築き、教育・人づくりにより一人一人の人生の可能性を最大限引き出すとともに、その選択肢を拡大していく。

 施策の推進に当たって持つべき基本姿勢・視点として、少子化対策等により、今後の人口減少のペースが緩まるとしても、当面は人口・生産年齢人口が減少するという事態を正面から受け止めた上で、人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる適応策を講じていくことが重要である。男女共に働き、共に子育てをする「共働き・共育て」が一般化した「若い世代の変化した意識」と、「男は仕事・女は家庭」等の固定的な性別観に関わるアンコンシャス・バイアスが残る「職場を含む地域社会」との間のギャップが、若者や女性の地方からの転出行動につながっている面があるため、若者や女性にも選ばれる地域づくりを行うことが必要である。

 AI・デジタル技術の徹底活用により、地域住民の安全・快適な生活環境を創出するとともに、担い手不足や高齢化といった構造的課題へ対応し、地域固有の自然資源や文化、伝統技術等と新技術を掛け合わせ、高付加価値の商品・サービスを創出することができる。

 都市と地方の間で、また地域の内外で、関係人口を中心とした人・モノ・技術の交流・結合、分野を越えた連携・協働の流れを創ることで、都市と地方は二項対立的な構造を越え、共生関係となり、その結び付きにより我が国全体の持続可能性を高めることができる。

 今般、10年後に目指す姿(社会像)として定量的なものを示した基本構想をとりまとめ、以下の政策の5本柱に沿って、政府全体で「地方創生2.0」を「令和の日本列島改造」として力強く進めていく。

 先進的な取組の成果を、そのまま他地域に模倣・移植するのではなく、各地域が主体的に考え、産官学金労言士*32*等の多様なステークホルダーを巻き込み、それぞれの地域の特性や資源、課題に応じて柔軟に取り入れ、広く普遍化させる。

①安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生

 若者や女性にも選ばれる地方の実現に向け、東京圏から地方への若者の流れを倍増させることを目指す。このため、地域の働き方・職場改革を起点とした社会変革や地域に愛着を持ち地域で活躍する人材の育成を行い、地方の魅力を高め、地方への転入希望を増やす環境整備を進める。安心して暮らせる地方の実現に向け、買物環境の維持・向上の取組が行われている市町村10割、医療・介護サービスの維持・確保の取組が行われている地方公共団体10割、「交通空白」地区において解消の取組が行われている市町村10割を目指す。このため、将来を見据えた持続可能な地域のサービス拠点づくり、地域医療提供体制の維持・確保、意欲と能力のある「民」の力を活かした官民共創のまちづくり、全世代・全員活躍型「生涯活躍のまち」(日本版CCRC)2.0、地域交通のリ・デザインの全面展開に取り組む。一人一人が活躍できる社会の実現に向け、希望する職員の副業・兼業が可能な職場環境を整備した事業者数10割を目指す。このため、地方公共団体や地域金融機関、JA等において、希望する職員の副業・兼業が可能となるよう、許可基準の弾力化や就業規則の改定を促進することを含め必要な環境整備を進める。地方を守る防災力の強化、地方公共団体における国家資格を持つ等専門分野に従事する者を含め会計年度任用職員の処遇改善や能力実証を経た常勤化など在り方の見直しを進める。

②稼ぐ力を高め、付加価値創出型の新しい地方経済の創生〜地方イノベーション創生構想〜

 地域資源を活用した高付加価値型の地方経済の実現に向け、東京圏以外の道府県の就業者1人当たり年間付加価値労働生産性を東京圏と同水準にするとともに、地方発の代表的な産品である農林水産物・食品(日本産酒類を含む)の輸出額とインバウンドによる食関連消費額の合計3倍、スタートアップ企業など地域の課題解決や新しい産業の創出を通じて価値創造をしていこうとする企業がある市町村10割を目指す。このため、様々な「新結合」*33*を全国各地で生み出すことにより、地方経済に活力を創出し、我が国の潜在的な成長力を引き出していく「地方イノベーション創生構想」として、地域の食や伝統産業に、文化芸術、スポーツ、コンテンツやスタートアップを組み合わせるなど、関係府省庁が連携した支援により、地域資源を最大限活用した高付加価値化を図る「施策の新結合」、若者や女性や産官学金労言士など、地域内外の様々な関係者が連携・協働、地域外の新たな人材を呼び込む「人材の新結合」、イノベーションの果実であるAI・デジタル技術等の新しい技術を組み合わせる「技術の新結合」に重点的に取り組む。輸出・海外展開の一体的な支援、観光地の高付加価値化、農林水産業のスマート化、日本産酒類の輸出拡大、地域金融力の強化、スタートアップを生み出すエコシステムやその拠点の形成も行う。

③人や企業の地方分散〜産官学の地方移転、都市と地方の交流等による創生〜

 政府関係機関の地方移転や企業・大学の地方分散に加え、都市と地方の新たな結び付き、人材の交流・循環・結び付きを促進し、地方への新たな人の流れの創出に向け、関係人口の量的拡大・質的向上(実人数1,000万人、延べ人数1億人)を目指し、ふるさと住民登録制度を創設し、関係人口を可視化する。地域との関わり方等に応じて関係人口の類型化を行い、それぞれの類型に応じて、二地域居住等の推進や若者や女性の地域交流の促進、ふるさと納税の活用といった施策を展開する。

④新時代のインフラ整備とAI・デジタルなどの新技術の徹底活用

 GX・DXが進展する新時代に、地域経済や地域社会を適応させていくことが重要であり、GX・DXを進展させ経済成長させる産業立地(GX産業立地)の推進に向けたインフラ整備として、ワット・ビット連携を推進する。自動運転・ドローン・AI技術といった新技術の社会実装を地方でこそ加速すべく、デジタルライフラインの全国整備を進め、AIやデジタルなども活用しながら生活環境の維持向上や地方経済の高付加価値化など地域の課題解決に向けた取組が行われている市町村10割を目指す。

⑤広域リージョン連携

 地域における経済活動や人々の生活は、都道府県域、市町村域に限定されるものではなく、地域経済の成長につながる施策が面的に展開されていく状態を創出できるよう、地方公共団体と企業や大学、研究機関などの多様な主体が広域的に連携しながら地方創生2.0に取り組む「広域リージョン連携」を推進する。

 以上の地方創生2.0の取組は、地域における担い手不足や、より広域的な政策展開の必要性等を踏まえると、産官学金労言士等「みんなで取り組む」ことが必要である。国は、地方創生伴走支援制度等により中小規模の地方公共団体を支援するとともに、地域社会が直面する構造的な問題に対応するため、制度的なアプローチも強化する。こども・子育てや教育に関する国の役割や、ナショナルスタンダードの観点も踏まえて、全国的な支援の在り方を財源も含め検討する。地方の課題を起点とする大胆な規制改革の実現に向け、モデル地域であるスーパーシティ、デジタル田園健康特区、連携“絆”特区等の特区制度について、成果の早急な普遍化、地域のチャレンジの徹底したサポートなど、その運用を抜本的に強化する。基本構想を実施段階に進めるため、PDCAサイクルの徹底を前提とした適切なKPIを含んだ総合戦略を2025年中に策定する。1年、3年、5年といった期間ごとの工程表を作成し、政策効果を着実に積み上げていく姿も示す。

(2)地域における社会課題への対応

(持続可能で活力ある国土の形成と交通のリ・デザイン)

 持続可能な国土形成に向け、地域生活圏*34*を基本として、各種サービス機能の集約拠点の形成と国土全体の連結強化を進め、コンパクト・プラス・ネットワークの取組を深化・発展させる。

 都市機能の更なる集積と稼ぐ力の創出に向け、官民が協働して公共的価値も生み出す都市再生・国際競争力の強化、地域資源を活かした個性あるまちづくり、持続的なエリアマネジメントを促進する*35*。まちづくりGXの取組、ネイチャーポジティブ(自然再興)の実現に向けた地域活動*36*、グリーンインフラの活用等*37*を推進する。「「交通空白」解消に向けた取組方針2025」*38*に基づき、2027年度までの集中対策期間で、公共・日本版ライドシェア等の普及、民間技術等の活用、国の伴走、共同化・協業化や自治体機能を補完・強化する新たな制度的枠組み構築等これまでを上回る国の総合的支援の下、「交通空白」の解消に取り組むとともに、省力化推進、担い手確保、自動運転の普及・拡大等、地域交通のリ・デザインを全面展開する。

 ローカル鉄道の再構築、鉄道ネットワークの在り方等の議論の深化、幹線鉄道の地域の実情に応じた高機能化に関し、更なる取組を進める。地域の実情に応じた買物環境の確保のため、市町村等を中心とした体制の構築、拠点施設の整備、移動販売車の導入、配送の共同分担や新技術の活用によるラストワンマイル物流の確保を推進する。

 我が国の国際競争力強化のため、高規格道路、整備新幹線*39*、リニア中央新幹線、都市鉄道、港湾、空港等の物流・人流ネットワークの早期整備・活用、モーダルコネクトの強化、航空ネットワークの維持・活性化*40*を推進するとともに、担い手の確保・育成に取り組む。日本の造船業を再生し、海運業や造船業を中核とする海事クラスターを強靱化するため、

 日米協力を含めた海事サプライチェーンの大幅な強靱化、GX経済移行債の活用等によるゼロエミッション船等の導入促進、日本籍船の保有コスト低減を含めた日本船主等の競争力強化、商用自動運航船の実現、内航海運・旅客船による安定輸送、新しい地方経済・生活環境創生交付金を活用した造船人材の確保など海事人材の育成・確保等に取り組む。

 基本計画路線を含む幹線鉄道ネットワークについて、各地域の実情を踏まえ、地方創生2.0の実現にも資する幹線鉄道の高機能化に関する調査や方向性も含めた検討など、更なる取組を進める。リニア中央新幹線については、財政投融資による支援を踏まえ、全線開業に係る現行の想定時期の下*41*、環境・水資源の状況等を厳格にモニタリングし、必要な指導や技術的支援を行うとともに、沿線自治体と連携して、全線開業に向けた環境整備を行う。

 2030年度までの「集中改革期間」における物流革新に向け、次期「総合物流施策大綱」に基づき、物流拠点・ネットワークの機能強化、陸・海・空の新モーダルシフト、自動運転、物流DX・標準化、多重取引構造の是正等の商慣行の見直し、荷主・消費者の行動変容、改正物流法*42*の執行体制の確保を推進する。また、物流・旅客運送業における担い手不足への対応を強化するため、外国人材の一層の活用を推進する。

(持続可能な観光の推進)

 2030年訪日外国人旅行者数6,000万人・消費額15兆円を目指し、地方誘客の促進に向けた、

我が国固有の温泉・旅館・食・歴史等の観光資源・文化資源の磨き上げ・連携を進めつつ、アドベンチャーツーリズム等の多様な観光コンテンツ造成と収益性改善、ローカルガイドを含む観光人材育成、高付加価値なインバウンド観光地づくり、国立公園・国定公園・国民公園や公的施設の魅力向上*43*、空港*44*・CIQ・二次交通等の受入環境整備、インバウンドによる地方路線を含む国内航空ネットワークの利用拡大、クルーズの持続的な成長と拠点形成、戦略的なプロモーション、MICE誘致・開催、厳格なカジノ規制を含むIR整備、デジタルノマドの誘客、アウトバウンドの推進による双方向の交流拡大など、インバウンド拡大に係る取組を進める。

 持続可能な観光地域づくりに向け、施設改修、廃屋撤去を含めた観光地の面的な受入環境整備、観光地域づくり法人(DMO)のマネジメント体制強化による広域的な取組等の促進とともに、業務効率化・省力化、人材不足対策、オーバーツーリズムの未然防止・抑制、ユニバーサルツーリズムの促進を含む国内交流市場拡大に係る取組を進める。

 これらの観光施策を充実・強化するために、2025年度末までに、新たな観光立国推進基本計画を策定するとともに、必要となる国の財源確保策について、具体的検討を行う。

(ワット・ビット連携)

 電力と通信の連携(ワット・ビット連携)により、オール光ネットワーク技術の実装*45*を進めつつ、電力インフラから見て望ましい地域(脱炭素電力が豊富な地域を含む)や大規模災害時のデジタルサービスの維持に資する地域へのデータセンターの誘導を含め、光ファイバや5Gの全国展開とともに、電力と通信基盤を整合的・計画的に整備し、データセンターの地方分散を推進する。

 脱炭素電力が豊富な地域やコンビナートを始めとする既存インフラが利用できる地域に対し、内外の投資を集中的に呼び込むため、特区制度等の活用・見直しを含め、事業環境を整備することを検討する。

 地方公共団体が行う産業インフラの整備を支援するほか、産業用地の計画的な整備を促進するため、関係法令の改正を含めた検討を行う。

(関係人口の拡大と個性を活かした地域づくり)

 人の流れを創出・拡大するため、若者を始め、地方移住を促す取組を強化するとともに、

税制の活用も含めた環境整備による企業の地方移転や拠点拡充、産官学金労言士の連携による地域密着型企業の立ち上げ、地域おこし協力隊*46*による人材確保の取組を促進する。関係人口の拡大や二地域居住の促進に向け、ふるさと住民登録制度の創設、第2のふるさとづくり・ワーケーション推進や交流・基盤施設整備、中間支援組織によるマッチング支援を進める。

 個性を活かした地域づくりに向け、沖縄振興・北海道開発、過疎地域や半島、離島、奄美、小笠原、豪雪地帯等の条件不利地域対策に取り組む。強い沖縄経済の実現に向けた観光の質向上、沖縄科学技術大学院大学による産学連携等の産業振興、基地跡地の先行取得や「GW2050 PROJECTS」*47*の早期実現に向けた取組、北部・離島地域の振興、こどもの貧困対策・Well-being実現に向けた取組等の沖縄振興策を国家戦略として総合的に推進する。「北海道総合開発計画」*48*の着実な推進に向け、食・観光・ゼロカーボン北海道を担う生産空間の維持・発展、デジタル産業の集積促進、北方領土隣接地域の振興を更に地域一体で進める取組、官民共創の取組を推進する。ウポポイの充実などアイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現する。

(3)農林水産業の構造転換による成長産業化及び食料安全保障の確保

 新たな基本法*49*に基づく初動5年間(令和7〜11年度)の農業構造転換集中対策期間において、食料安全保障の確保や農業・畜産業の生産基盤の強化等を推進する。このため、新たな基本計画*50*に基づき、コストの徹底的な低減に向けた農地の大区画化や共同利用施設の再編・集約化、スマート技術の開発と生産方式の転換・実装、輸出産地の育成を集中的・計画的に推進できるよう、機動的・弾力的な対応により別枠で必要・十分な予算を確保し、施策の充実強化・見直しを行うとともに、地方も含めた施策の推進に必要な体制等*51*を確保し、収益力向上を通じた所得向上を図る。

 現下の急激に上昇した米価格を落ち着かせ、消費者への米の安定的な供給を確保するための政府備蓄米を始めとする米の流通の円滑化や消費者、生産者、流通事業等関係者への丁寧な情報発信を含めた総合的対応を進める。

 生産性向上に取り組む農業者が意欲を持って営農でき、食料の安定供給が確保されるよう、水田政策の見直しの具体化を進め、新市場開拓用米や米粉用米等の需要拡大、麦・大豆・国産飼料の生産性向上、有機・減農薬減肥料の推進、地域計画に基づく農地の集約化の支援に関する既存制度の見直し・強化に取り組む。食料自給力の確保に向け、土地改良事業の推進、農林水産高校の支援を含む新規就農や法人参入の支援、経営安定対策の実施、多収品種等の導入、情報通信環境の整備、スタートアップやサービス事業体の育成、動植物検疫の強化等により、農業の成長産業化を進める。海外から稼ぐ力の強化のため、輸出5兆円目標達成や、輸出・海外進出・インバウンドの好循環を目指す。持続的で環境と調和の取れた食料システムの確立に向け、米、野菜等の食料の合理的な価格形成*52*、食品産業の持続的発展、食品アクセスの確保、みどりの食料システム戦略の加速化、GXを推進する民間活力の取り込みやGHG排出削減パッケージの海外展開を推進する。国民理解の醸成に向け、大人の食育、農林漁業体験機会の拡大を推進する。中山間地域等の振興のため、実情に合った基盤整備や機械導入の支援、鳥獣被害対策、地域社会の維持に取り組む。農泊を始めとした里業、森業、海業の取組へのインバウンド需要の取り込みを進める。

 森林の集約化、デジタル技術を活用した境界明確化、循環利用を担う多様な人材・経営体育成、林道等基盤整備や再造林、スマート林業、CLTやJAS構造材による国産材転換・木材利用拡大を進める。

 海洋環境の激変を踏まえ、資源調査・評価の抜本的改善、新たな操業形態への転換、経営体・人の確保、漁港漁場の整備等による漁業の強靱化、養殖業の成長産業化、海業の全国展開を進める。

(4)文化芸術・スポーツの振興

 国際的に遜色ない水準まで官民投資を拡大し、経済成長と文化芸術の振興の好循環を通じて、ソフトパワーによる文化芸術立国を実現する。コンテンツ分野の高度専門人材・中核的専門人材の育成や省庁連携による海外展開を加速し、人材確保のための環境整備を進めるとともに、国立美術館全体の機能を再編・強化しつつ、産業界と連携し、メディア芸術ナショナルセンター(仮称)の機能を有する拠点の整備を推進する。早期開場に向けた国立劇場再整備を国の責任で早急に行うほか、新国立劇場のグローバル展開を含む国立文化施設の機能強化、芸術家等の活動基盤や尊厳ある創造環境整備の強化、首都圏の劇場不足に対応した全国各地の劇場・音楽堂の活用・連携を含む舞台芸術や日本映画の振興、アート市場の活性化を進める。NEXT日本博(仮称)や持続可能性のある文化財の把握・保存・修理・高付加価値化、日本遺産の活性化を通じた文化観光の推進、伝統行事や伝統芸能、食文化等の生活文化の振興、博物館・美術館等の地域文化施設の機能強化など、文化資源を活用した地域経済活性化や次世代への継承を進める*53*。こどもや障害者の文化芸術鑑賞・体験機会の充実、方言の保存・継承の推進、文字・活字文化の振興や「書店活性化プラン」*54*の推進、デジタルアーカイブ化に取り組む。北の丸公園の機能強化を通じ、最先端の科学技術や文化芸術の発信拠点としての魅力を向上させる。「昭和100年」関連施策を推進するほか、国立公文書館の新館開館に向けた機能強化・体制整備を進める。

 スポーツが持つ力を地域・経済の活性化につなげ、「新しい日本・楽しい日本」を実現する。武道・スポーツツーリズムやスポーツコンプレックス・ホスピタリティの推進、「eスポーツ」の活用を含むDXの推進や海外展開、他産業との連携による事業創出、地域スポーツコミッションの多角的な事業展開を通じ、地域振興や成長産業化を進める。スポーツを通じたライフパフォーマンス向上、パラスポーツの振興*55*、2025年世界陸上・デフリンピック、2026年アジア・アジアパラ競技大会、ワールドマスターズゲームズ2027関西等の大規模国際大会の意義等を踏まえた各般の開催支援や国際競技力の向上*56*に取り組む。

3. 「投資立国」及び「資産運用立国」による将来の賃金・所得の増加

 現在及び将来の賃金・所得を増加させるため、2030年度135兆円、2040年度200兆円という目標の実現に向け、官民一体で国内投資を加速する*57*とともに、家計の現預金が投資に向かい、企業価値の向上が賃金や金融所得・資産の増加をもたらす資金の流れを創出する。

(1)GXの推進

 2050年カーボンニュートラルの目標を堅持し、その実現に向けて、「GX2040ビジョン」、「エネルギー基本計画」及び「地球温暖化対策計画」*58*を踏まえ、分野別投資戦略に基づき、官民協調による10年間で150兆円超のGX関連投資を推進する。

 省エネについては、工場や家庭における省エネ・非化石転換への支援、省エネ診断の推進、金融機関を始めとする支援体制の強化や専門人材の確保を進める。

 再エネについては、主力電源として、地域共生と国民負担の抑制や安全性の確保を前提に、最大限の導入を促す。国産再エネ拡大に向け、大学、国立研究開発法人、スタートアップ等と連携し、国内に強靱なサプライチェーンを構築する。タンデム型*59*を含むペロブスカイト太陽電池の導入の支援、浮体式洋上風力の技術開発・基盤整備及び案件形成並びに人材育成の戦略の策定、次世代型地熱の社会実装に向けた支援を行う。中小水力発電の案件創出や既存水力発電のリプレースを支援する。北海道・本州間海底直流送電を含む地域間連系線の整備に加え、地内系統の整備*60*を計画的に進めるための枠組みを検討する。出力制御の抑制や調整力の確保のため、安全性・持続可能性が確保された蓄電池の導入やDR*61*の活用を進める。蓄電池、部素材及び製造装置の国内生産能力の拡大や次世代電池の技術開発に取り組む。

 原子力については、安全性の確保を大前提に、原子力規制委員会による審査・検査を踏まえ、地元の理解を得た原子炉の再稼働を進める。次世代革新炉*62*の開発・設置に取り組み、地域の理解確保を大前提に、廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での建て替え等の具体化を進める。研究開発や人材育成、サプライチェーンの維持・強化、核燃料サイクルの推進、着実かつ効率的な廃炉の推進、最終処分の実現に向けた国主導での地方公共団体等への働き掛け、道路整備による避難経路の確保や複合災害時の対応等を含む原子力防災体制の充実に取り組む。

 脱炭素電力インフラの円滑な投資に向け、今後の大規模な投資拡大を見据え、投資回収の予見性を高めるための市場・事業環境の制度整備、公的な信用補完の活用に加え、政府の信用力を活用した融資を検討する。

 低炭素水素等*63*については、内外におけるサプライチェーンの構築に向けた研究開発、設備投資や拠点・関連インフラ*64*の整備を支援する。SAF(持続可能な航空燃料)については、国際競争力のある価格の実現に向け、研究開発や設備投資を促進する。バイオ燃料を含め、需要創出のための制度の検討を行うとともに、電動車の導入を促進する。電化が困難な分野においては、天然ガスへの燃料転換、水素等や人工光合成を含むCCUS*65*の活用、CCS*66*への支援制度の検討、森林吸収源対策*67*を行う。

 サーキュラーエコノミー(循環経済)については、再生材利用拡大と製品の効率的利用を促進する動静脈連携のための制度*68*や太陽光パネルの廃棄・リサイクル制度の検討、プラスチック・アルミ等の金属の再資源化を含め、研究開発や設備投資の支援を行うとともに、国際協力やルール形成を推進する。

 「成長志向型カーボンプライシング構想」*69*の実現に向け、個別銘柄の着実な発行を通じたGX経済移行債*70*の活用、制度の本格稼働とGXリーグの見直し、GX推進機構による情報発信の強化に取り組む。トランジション・ファイナンスを始めとするESG金融*71*を促進する。

 地域・くらしについては、脱炭素先行地域の先進的な取組の全国展開に向けて取り組むとともに、新技術の導入モデルの構築を検討する。インフラ*72*・建物・モビリティ*73*関連分野の脱炭素化、建築物におけるLCA制度*74*の構築、表示ルールの策定による脱炭素型製品・サービスの普及、「デコ活」*75*やリユースの促進に取り組む。燃料供給体制を確保するため、サービスステーション(SS)のネットワークの維持やLPガスの災害対応の強化に向けた支援を行う。

 アジア・ゼロエミッション共同体の推進に向け、GHG*76*排出量の可視化の推進、トランジション・ファイナンスの促進*77*やJCM*78*の拡大を始めとするルール形成に加え、アジア・ゼロエミッションセンター等の国際機関を通じた支援、我が国の技術や制度の活用による国際協力を進める。

 エネルギー安全保障については、強靱なエネルギー需給構造への転換を進める。需要面では、徹底した省エネと製造業の燃料転換や電化を進めるとともに、供給面では、エネルギー自給率向上に貢献し、脱炭素効果の大きい再エネ、原子力等の電源を最大限活用する。石油やレアメタル等の重要鉱物の安定供給を確保するため、十分な備蓄を確保するとともに、天然ガスと併せて、海外での上流開発を通じたサプライチェーンの強靱化を、国の主体的な取組を含め推進する。戦略的に余剰LNGを確保する。国産海洋資源の確保に向け、総合海洋政策本部及び総合海洋政策推進事務局が司令塔機能を抜本的に強化し、社会実装・産業化支援に向け、メタンハイドレート、マンガン団塊、レアアース泥等の技術開発・実証に取り組む。

(2)DXの推進

 社会全体のDXを推進するため、デジタル庁の司令塔機能を強化し、AI・web3*79*を含むデジタル技術の社会実装及びデータの活用を通じた新たな価値の創出を進め、国民一人一人がその恩恵を実感できる社会をつくる。「データ利活用制度の在り方に関する基本方針」*80*に基づく制度やデータ連携に係る共通基盤の整備を進める。DFFT*81*を推進するため、越境データの流通促進やデータセキュリティの取組を進める。事業者向けポータル(仮称)*82*の整備を進める。インターネット上の偽・誤情報を含む違法・有害情報への対応として、技術開発、官民連携による意識啓発、デジタル広告の適正配信に向けた取組を行う。「DX・イノベーション加速化プラン2030」*83*に基づき、デジタル基盤の整備及び構成技術・システムの開発を進める。

 「デジタルライフライン全国総合整備計画」*84*及び企業・業種横断のデータ基盤・システム連携のプラットフォーム構築(ウラノス・エコシステム)を推進し、DXを通じた社会課題の解決とイノベーションを後押しする。

幅広い分野の生産性向上や新たな経済成長を生み出すために、各分野の新技術を支える共通基盤である地理空間情報(G空間情報)の充実や利活用を進めるとともに、正確なG空間情報をもたらす礎となる電子基準点や電子国土基本図の3次元化などの国土情報基盤の整備・更新を強力に進める。これらの共通基盤の上でDXを面的に進める観点から、広域・横断的・総合的に、G空間情報や国土情報基盤を活用した新技術の社会実装を強力に推進する。

(AI・半導体)

 AI法*85*に基づき、イノベーション促進とリスク対応を両立しつつ、AIの研究開発・活

用等を進めるとともに、人材の育成・確保を行う。質の高いデータ整備、研究開発力の強化や利活用、計算資源・情報通信基盤のインフラの高度化を進める。社会全体へのAI実装の促進に向け、政府が率先してAIを活用する。そのため、内部開発により政府等のAI基盤を構築するとともに、生成AIの調達・利活用ガイドライン*86*に基づき、ガバナンスを確保する。AIの倫理的かつ公平な社会実装に向け、制度設計段階から倫理・多様性の視点を強化し、ジェンダーバイアス防止体制と人材育成を推進する。広島AIプロセスの「報告枠組み」に参加する開発者の拡大及びフレンズグループの発展並びにAISI*87*による安全性評価・ツール開発を通じて、国際的なルール作りを主導する。

 次世代半導体の量産に向け出資等を実施する。設備投資の支援やインフラ整備によるサプライチェーンの強靱化、設計開発の支援や高度人材の育成に取り組む。先端半導体の設計・製造から、サーバーの組立て・運用、ソブリンAIの開発・利用に至るエコシステムを国内に構築する。AIや先端半導体の実装先となるロボットについて、2025年度中に、実装拡大・競争力強化に関する戦略を策定する。

 関連企業、産業技術総合研究所、大学等が参画する地域コンソーシアムにおいて、将来の市場・技術動向も踏まえ、企業人材等による継続支援を通じて、民間主導で中小企業の半導体サプライチェーンへの参入を促進する。

 「知的財産推進計画2025」*88*に沿って、DXの推進やAIの普及を視野に入れた産業財産権制度を整備することを検討する。

(デジタル人材)

 独立行政法人情報処理推進機構において、2026年度に、デジタル人材育成のためのプラットフォームを構築する。情報処理技術者試験のAI活用等の視点も踏まえた今日的な試験体系への見直し、若手トップ人材の育成に取り組む。地域のデジタル人材の育成のため、新しい地方経済・生活環境創生交付金について、デジタル人材への教育を推奨すべき取組*89*とし、地方公共団体による同交付金の活用を後押しする。

(デジタル行財政改革)

 急激な人口減少に対応するため、利用者起点で我が国の行財政の在り方を見直し、デジタルを最大限に活用して公共サービスの維持・強化と地域経済活性化を進め、社会変革を実現するため「デジタル行財政改革取りまとめ2025」*90*に基づき取組を実行する。国民生活に密着し社会・経済的な重要性が高い分野(教育、子育て、医療、介護、モビリティ、インフラ、防災等)について、利用者起点で規制・制度の見直しやデジタル活用を進めるとともに、国・地方の共通基盤の整備を推進する。「データ利活用制度の在り方に関する基本方針」に基づき取組を加速し、データとAIの好循環を確立するとともに、横断的な法制度について官民データ活用推進基本法*91*の抜本的改正、新法など必要な検討を行い、次期通常国会への法案提出を目指す。これを下支えする個人情報保護法*92*の改正案についても、早期に結論を得て提出を目指す。

(デジタル・ガバメント)

 デジタル庁を中心に、政府全体で、重点計画*80*等に基づき、制度・業務・システムを整合的に、かつ、利用者視点に立ち、三位一体で、AIの利活用、web3の推進、デジタル人材の育成を含め行政のデジタル化を推進する。効果の定量的把握など、費用対効果の見える化を進め、需要側・供給側の双方がデジタル化のメリットを実感できるように取り組むとともに、新たにアナログ規制を生まないよう、デジタル法制審査を強化する。データに基づく政策立案を推進するため、我が国の経済・財政と暮らしを見える化する「ジャパンダッシュボード」を整備する。

 デジタル社会のパスポートであるマイナンバーカードについて、円滑な取得環境の整備やカード機能のスマートフォン搭載、マイナポータルの継続的改善に加え、住民に合わせた公共サービスをプッシュ型で届ける「オンライン市役所サービス」、より質の高い様々なサービスを一枚で受けられる「市民カード化」により、利便性の向上を推進する。国家資格のオンライン・デジタル化、マイナ保険証と医療費助成の受給者証等との一体化、マイナ救急の全国展開、マイナンバーカードと在留カードの一体化、マイナ免許証制度の円滑な運用など、様々な領域での利活用シーンの拡大に取り組む。なりすましのないサービス提供など、デジタル認証アプリを用いてマイナンバーカードの民間分野における利活用を加速させ、デジタル公共インフラとして更なる定着を目指す。

 地方公共団体の標準準拠システム移行に向けた取組とともに、移行後のシステム運用経費に係る総合的な対策に基づく取組を進める。「国・地方デジタル共通基盤の整備・運用に関する基本方針」*93*に基づき、国・地方デジタル共通基盤推進連絡協議会が選定する業務・システムについて、国と地方が協力して共通化推進方針に沿う取組を順次進める。

 準公共分野におけるデータ連携基盤の構築を含め、公共部門のシステムの共通化とモダン化やガバメントクラウド移行を推進し、デジタル・ガバメントの強化に取り組む。

(医療・介護・こどもDX)

 医療DX工程表*94*に基づき、医療・介護DXの技術革新の迅速な実装により、全国で質の高い効率的な医療・介護サービスが提供される体制を構築することについて、必要な支援を行いつつ、政府を挙げて強力に推進する。このため、医療DXの基盤であるマイナ保険証の利用を促進しつつ、2025年12月の経過措置期間後はマイナ保険証を基本とする仕組みに円滑に移行する。全国医療情報プラットフォームを構築し、電子カルテ情報共有サービスの普及や電子処方箋の利用拡大、PHR*95*情報の利活用を進めるほか、標準型電子カルテの本格運用の具体的内容を2025年度中に示すことも含め必要な支援策の具体化を検討し、その普及を促進するとともに、介護情報基盤の整備、診療報酬改定DX、薬局が有する情報の標準化とDXを進める。AI創薬、AIホスピタルの実用化を支援する。標準仕様を策定し、クラウド技術を活用した病院の情報システムの開発・導入に向け、規制的手法や財政的手法など必要なインセンティブ措置の在り方を含め、検討を進める。医薬品や検査の標準コードの在り方の検討を踏まえたマスタの一元管理、予防接種事務のデジタル化、ワクチン副反応疑いの電子報告、予防接種データベースの整備を進める。医療・介護データを最大限有効活用し、イノベーションを進めるため、医療・介護の公的データベースの仮名化情報等の利活用を可能とするためのシステム整備を進めるとともに、社会保険診療報酬支払基金の改組や公費負担医療制度等のオンライン資格確認を円滑に実施する。医療安全の向上に向け、医療機関のサイバーセキュリティ対策*96*、医薬品・医療機器等の物流DXの推進に資する製品データベース構築を進める。これらの取組に加えて、必要に応じて医療DX工程表の見直しを検討する。

 子育て世代の使いやすさに配慮し、保育や母子保健等のこども政策のDXを推進する。

(教育DX)

 こどもたちの個別最適な学びと協働的な学びの一体的な実現及び教職員の負担軽減に向け、国策として推進するGIGAスクール構想を中心に、生成AI活用も含めて教育DXを加速する*97*。共同調達スキームの下での端末更新や次世代校務DX環境の整備支援の加速、学校におけるネットワーク環境の改善、DXハイスクール事業の継続的な実施等による探究的・文理横断的・実践的な学びの推進、ICTの活用やこどもたちの情報活用能力の育成に向けた好事例の創出や伴走支援の強化、デジタル教科書の利活用促進など、ハード・ソフト両面から教育環境を充実する。「教育DXロードマップ」*98*に基づき、個人情報保護を徹底しつつ、システム間の連携により教育データの収集・分析・利活用を進めるため、標準化や地方公共団体への伴走支援を行うとともに、主体・データの真正性を確保する認証基盤に関する調査研究・技術実証を進める。

(地域交通DX・物流DX)

 地域交通の持続可能性、生産性、利便性の向上に向け、MaaS等による交通サービスの高度化やデータ活用等を進めるとともに、キャッシュレス、配車アプリの推進など地域交通DXを推進する。空飛ぶクルマの社会実装を推進する。自動運転移動サービスの社会実装の加速に向けて「モビリティ・ロードマップ2025」も踏まえ制度整備*99*及び全国における事業化推進や、自動運転技術の開発・実証を促進するとともに、道路インフラからの支援を行う。全国の移動の足不足の解消に向けて、自動運転やライドシェアについて、骨太方針2024等を踏まえ、必要な取組を進める。特に、地方の中小都市など*100*、公共交通手段の利便性が低い地域における移動の足不足の解消に向けた適切な制度の在り方も含め議論を進める。ドローンの普及促進に向けてドローン航路の実装地域の拡大、制度整備・技術開発に取り組む。

 物流危機の解決に資する自動物流道路について、2027年度までの新東名高速道路の建設中区間での実験実施、2030年代半ばまでの第1期区間での運用開始に向け、早期に技術的な検証のための実験を実施し、運用に係る必要な制度整備を行う。物流施設における自動化を促進する。AIターミナル*101*やサイバーポート*102*を通じて港湾のDXを推進する。自動運航船の2030年頃までの実現を目指す。

(防災DX)

 災害情報の全体把握や被災者支援の充実に向け、防災デジタルプラットフォームの早期実現を目指すとともに、その中核を担う新総合防災情報システム(SOBO-WEB)の更なる機能強化、データ連携基盤、Lアラート*103*、D24H*104*の構築・連携・活用、統合災害情報システムの改良、地域の防災関係機関間での情報流通促進、被災者支援システムの広域連携のための仕組みの構築を推進する。様々な経済社会活動や災害対応の基盤となる国土情報基盤の整備・高度化を進める。AI技術を活用し、気象観測・予測等を高度化する。

(観光DX)

 観光地・観光産業における予約・決済データや生成AI等の活用を進める。顔認証等の新技術を活用した空港での旅客手続の円滑化を含む空港業務DX、電子渡航認証制度(JESTA)の早期導入に向けた取組により、厳格で円滑な出入国管理を進める。JESTAのシステム利用時に外国人から徴収する手数料を、外国人政策のための財源としても活用すること等の検討を進める。

(司法DX)

 司法の利便性と手続の適正迅速化の向上に向け、民事・刑事手続等の司法分野のデジタル化を進めるとともに、司法試験や登記のデジタル化を含め、経済活動、国民の安全・安心の基盤となる法務行政のDXを推進する。

(中央銀行デジタル通貨)

 中央銀行デジタル通貨(CBDC)*105*について、政府及び日本銀行は、諸外国の動向等も踏まえ、中間整理*106*に基づき検討を深め、制度設計の大枠の整理として、主要論点の基本的な考え方や選択肢等を明らかにする。その後、法制面や発行の可能性の検討を進める。

(3)フロンティアの開拓

(宇宙)

 宇宙基本計画*107*及び宇宙技術戦略(令和6年度改訂)*108*に基づき、宇宙開発戦略本部を司令塔とし、宇宙政策を強化する。防災・減災・国土強靱化、安全保障にも資する地球観測や衛星通信の高付加価値化に向け、官民連携の下、衛星コンステレーションの構築、次世代技術の開発・実証、国内スタートアップ等の衛星データの積極調達を推進する。官民のロケット開発支援、打ち上げ高頻度化に取り組む。アルテミス計画*109*における日本人宇宙飛行士の月面着陸実現に向け、与圧ローバ開発を進める。地球低軌道活動の充実、月や火星以遠への探査の研究開発、準天頂衛星の7機体制の構築及び11機体制に向けた開発を進める。宇宙戦略基金について、速やかに、総額1兆円規模の支援を目指すとともに、中長期の政府調達を進め、スタートアップ等の事業展開を後押しする。民間企業の新たな宇宙輸送を可能とする宇宙活動法*110*改正案の次期通常国会への提出を目指す。宇宙利用の拡大に対応した円滑な審査や準天頂衛星の持続的運用を可能とする体制整備、JAXAの技術基盤や人的資源の強化を推進する。

(海洋)

 海洋開発等重点戦略*111*に基づき、技術開発の成果を社会実装・産業化に戦略的につなげるため、自律型無人探査機(AUV)と周辺技術の利用実証支援、衛星データ・AI分析技術による海洋状況把握システムの高度化・海外展開に向けた調査、南鳥島周辺海域でのレアアース生産に向けた研究開発、北極域研究船「みらいII」の建造及び就航等を推進する。深海・海溝域の探査・採取プラットフォーム機能を持つ母船の在り方の検討を行う。2026年度末に期限を迎える有人国境離島法*112*に基づく有人国境離島の保全及び地域社会の維持に係る取組を検証しつつ、関連施策を推進する。

(4)先端科学技術の推進

 我が国の国力に直結する科学技術・イノベーション力を強化し、国際競争を勝ち抜くため、官民が連携して大胆な投資を行い、多様で豊富な「知」を生み出すエコシステムを活性化する。このため、社会課題解決の原動力となるAI、量子、フュージョンエネルギー、マテリアル、バイオ、半導体、次世代情報通信基盤(Beyond5G)、健康・医療等について、分野をまたいだ技術融合による研究開発・社会実装を一気通貫で推進する。G7を始め同志国やASEAN・インドを含むグローバル・サウスとの先端共同研究、研究者・学生交流など戦略的な国際連携を推進する。我が国の研究者に海外の先端研究の経験機会を提供するとともに、昨今の国際情勢の変化も踏まえ、緊急的な措置を含めた取組により、海外研究機関からの優れた研究者を積極的に呼び込み、国際的な頭脳循環を確立する。

 イノベーションの持続的な創出に向け、国際卓越研究大学制度による世界最高水準の研究大学の創出を始め多様で厚みある研究大学群の形成に向けた取組を、効果検証しつつ進めるとともに、先端研究設備・機器の戦略的な整備・共用・高度化を推進する仕組みを構築する。研究データの活用を支える情報基盤の強化やAIforScienceを通じ、科学研究を革新する。産学官連携の大規模化・グローバル化を促進する。

 科学技術人材の育成を強化する。成長分野における大学学部・高専学科の再編及び高専の新設、先端技術に対応した人材育成*113*の高度化・国際化を始め、大学・高専・専門学校の機能を強化する。

(量子技術・フュージョンエネルギー・マテリアル)

 量子技術については、ユースケース創出・ビジネスモデル構築に取り組むとともに、初

期需要の喚起に向けた検討を行うほか、国際標準化活動や拠点連携を推進する。フュージョンエネルギー及びマテリアルについては、新たな国家戦略*114*を踏まえた取組を推進する。

(5)スタートアップへの支援

 「スタートアップ育成5か年計画」*115*に基づく取組を推進する。

 アントレプレナーシップ教育の充実、起業家の海外派遣・誘致・育成、海外への発信強化に取り組む。拠点都市の第2期選定の拡大*116*を通じ、拠点都市におけるスタートアップ・エコシステムを成長させる。高等専門学校における起業家教育やスタートアップの創出・成長を後押しする。政府及び地方公共団体による公共調達*117*を拡大し、スタートアップの新技術の社会実装を加速する。グローバル・スタートアップ・キャンパス構想を具体化するため、基本方針に基づく先行的な取組として、国際研究、事業化支援及びフェローシップ事業を実施する。

 ディープテック分野の起業から事業化・商用化までの支援を充実する。非上場株式の流通活性化、債務保証の拡大など、レイターステージや上場後を含む成長段階に応じて、資金が円滑に供給される環境を整備する。海外の標準的な取組の水準を目指し、ベンチャーキャピタル(VC)のガバナンスや投資契約実務の向上、公正価値評価の導入等*118*の取組を進める*119*。産業革新投資機構の出資機能の強化とともに、年金積立金管理運用独立行政法人のオルタナティブ投資*120*について、上限に向けて、資産配分の検証*121*や体制の整備等*122*の取組を進める。

 出口戦略の多様化に向け、M&Aを活性化させる。大学や大企業に加え、スタートアップも参画する新たなオープンイノベーションを実施する。のれんの会計処理の在り方に関する関係者の議論を後押しする。

 「インパクトコンソーシアム」*123*の議論を踏まえ、インパクトの測定・管理に必要なデータ・指標の整備や寄附の活用促進等の支援策を推進する。

(6)海外活力の取り込み

(経済的連結性の向上)

 米国による一連の関税措置及びその後の対抗措置の応酬は、戦後、国際社会が築き上げてきた自由貿易体制を揺るがしかねない。我が国は、米国に対して措置の見直しを強く求めるとともに、自由で公正なルールに基づく国際経済秩序の維持・強化に取り組む。CPTPP拡大・発展の議論の主導、EPAの拡大、RCEP協定の履行確保及びこれら経済連携の協定を活かす国内対策に加え、WTO体制の強化、サプライチェーン強靱化に向けた同志国との協調を進め、各国との経済的連結性を高める。

(貿易・投資の拡大)

 貿易プラットフォームの活用・データの標準化、商法*124*改正による船荷証券電子化を含

め、貿易DXを推進し、2028年度までに貿易PFを通じてデジタル化された貿易取引の割合を10%へ引き上げることを目指す*125*とともに、ERIA*126*の活動を強化する。

 AIを始めとするデジタル関連市場が世界的に拡大する中、いわゆるデジタル赤字の分野に加えて、資金決済等の金融サービスや知財等使用料を含め、我が国のデジタル関連サービス全般の海外展開を促進し、デジタル関連収支の改善を目指す。

 スタートアップを含む日本企業の海外展開を政府一体で支援するため、2030年に45兆円の受注額を目指す「インフラシステム海外展開戦略2030」*127*を推進する。在外公館を活用した官民連携、公的金融の支援機能及び貿易保険のリスク対応能力を強化する。グローバル・サウスとの連携を強化するため、総理・閣僚によるトップセールス、GX、DX、健康医療、防災、まちづくり、水循環等の分野におけるプロジェクトの実証支援に取り組む。

 ウクライナ復興に向け、日本企業の現地の活動を支援する。

(中小企業の輸出・海外展開)

 「新規輸出1万者支援プログラム」に基づく支援を充実する。輸出検討段階では、テストマーケティングを支援するとともに、輸出実施段階では、専門家による伴走支援、海外ECサイトを通じた販路開拓支援を行う。

(コンテンツ産業の海外展開)

 クリエイター支援基金の活用や更なる統合を含めて、クリエイター*128*育成とコンテンツ

海外展開の一貫的な支援や体制整備を進める。放送コンテンツについては、多様な知的財産の創出に向け、企画・開発段階における内外の配信・金融事業者とのマッチング、先端技術の活用促進等の支援を行う。レコード演奏・伝達権の導入について、早期に結論を得る。コンテンツ産業に関する統計データを整備する。

 クリエイターをめぐる取引環境の改善・収益還元を促進するため、公正取引委員会において、2025年秋の結果公表を目指し、映画・アニメ分野の実態調査を行い、その結果を踏まえ、指針を策定する。映画業界における働き方の自主規制ガイドライン遵守やコンテンツ業界における価格転嫁の実現に向けた政府の取組を周知する。

 「コンテンツと地方創生の好循環プラン」*129*に基づき、コンテンツ地方創生拠点を選定し、アニメツーリズムやロケ誘致など、地域が一体となった取組を加速する。長期にわたる作品の制作及び海外からのロケ誘致を支援するとともに、ロケ撮影に係る許可の手続を円滑化・迅速化する。

(対日直接投資の促進)

 2030年に対日直接投資残高を120兆円、2030年代前半のできるだけ早期に150兆円とする

ことを目指す。「対日直接投資促進プログラム2025」*130*に基づき、関係府省庁が一体となって、DX、GX、ライフサイエンス等の戦略分野における投資の促進、新しい地方経済・生活環境創生交付金における対日直接投資の誘致を支援する取組の推奨*131*、特区制度の活用・見直し、国・地方・民間の連携による新たな誘致体制の構築、JETROの誘致体制の強化等の取組を進める。

(大阪・関西万博)

 大阪・関西万博において、社会課題解決につながる技術の実証・発信を行うほか、日本全国の魅力発信、来場者の地方への誘客、国際交流及び対日直接投資にも資するビジネスマッチングの機会の提供に取り組み、それらの成果をレガシーとする。

 2027年国際園芸博覧会に向けて、会場建設、参加招請、機運醸成など、着実な準備を進める。

(7)資産運用立国の実現

 資産運用立国に向けた更なる改革を実行する。全世代の国民が自身のライフプランに沿った資産形成が行えるよう、NISA制度の一層の充実の検討、金融資産やキャッシュフローの状況を容易に把握できる環境の整備に取り組むほか、企業型DC(企業型確定拠出年金)及びiDeCo(個人型確定拠出年金)の運用改善を進めるとともに、令和7年度税制改正の大綱*132*に基づく拠出限度額の引上げの速やかな実現を目指す。企業年金加入者のための運用の見える化を行う。家計の安定的な資産形成の基盤となる金融経済教育を充実する。成長分野への資金供給を強化する観点から、東証グロース市場の機能向上、インパクト投資市場の拡大、データセンターのREIT(不動産投資信託)への組入促進、有価証券報告書の株主総会前の開示の後押しにつながる制度横断的な検討、コーポレートガバナンス改革、銀証ファイアウォール規制*133*の在り方についての検討を行うほか、資産運用の高度化を図る観点から、「金融・資産運用特区」4地域による広報・誘致活動の充実、アセットオーナー・プリンシプル*134*の受入促進に取り組む。

 これらの取組を含めて、2025年10月のJapan Weeksや資産運用フォーラムにおいて、内外に発信する。併せて、施策の推進に必要となる金融庁の体制を拡充する。

 指名委員会等設置会社の機関設計について、取締役会の指名機能強化の重要性が高まっていることを踏まえ、問題点を解消する改良案の策定及び立法化に向けた検討を早急に進める。

4. 国民の安心・安全の確保

(1)防災・減災・国土強靱化の推進

 国難級の大規模災害の発生が懸念される我が国において、国民の生命を守り抜き、国家・社会の機能を維持するため、複合的な災害の発生などにも備えた国家の危機管理体制の強化に取り組む。新技術の徹底活用など、官民の知恵を結集して災害対応力の向上に取り組むとともに、中長期的な視点を持ち、安全な区域での居住など、人口減少も見据え災害に強い国土・地域構造への転換を進める。世界の防災に貢献し、世界をリードする防災大国日本を実現する。

(防災体制の抜本的強化)

 人命・人権最優先の防災立国を実現するため、政府の防災施策を俯瞰し、縦割りを排した徹底的な事前防災の推進及び発災時・復旧復興期の対応の司令塔とし、内閣直下で平時から政府全体の防災施策の実施をリードして加速する勧告権等の権限を有する防災庁を2026年度中に設置する。防災庁は、内閣総理大臣を助ける専任の大臣を置き、大規模災害の発生時においても、初動時からの災害の対応と、避難生活環境の改善、福祉支援の強化、地域の防災力強化、官民連携、防災教育・啓発、人材育成・訓練、防災DX、AIやロボティクスの最先端技術を活用し災害現場で実働し得る救助ロボットなどの防災技術の研究開発・国際展開等の事前防災の推進を並行・継続して実施できる十分な予算、専門人材を含む人員・体制を確保する。地方の防災拠点についても、検討を進める。

(防災・減災・国土強靱化の推進)

 気候変動に伴い激甚化・頻発化する気象災害や、切迫する南海トラフ地震、首都直下地

震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震などの大規模地震から国民の生命・財産・暮らしを守り、国家・社会の重要な機能を維持するため、防災・減災・老朽化対策を含む国土強靱化の取組を切れ目なく推進する。「国土強靱化基本計画」に基づき必要・十分な予算を確保し、自助・共助・公助を適切に組み合わせ、ハード・ソフト一体となった取組を強力に推進する。

 「第1次国土強靱化実施中期計画」*135*に基づく取組を着実に推進し、災害に屈しない強靱な国土づくりを進める。その際は、近年の資材価格や人件費の高騰の影響等を適切に反映し、今後の災害の発生状況や事業の進捗状況、経済情勢・財政事情等を踏まえ、機動的・弾力的に対応する。

 「災害外力・耐力の変化」「社会状況の変化」「事業実施環境の変化」という3つの変化に対応し、国民の生命と財産を守る防災インフラの整備・管理のため、将来の気候変動の影響を踏まえた流域治水の加速化・深化*136*、盛土の安全対策、官民で取り組む港湾の協働防護、次期静止気象衛星等を活用した線状降水帯・台風・洪水・土砂災害・高潮等の予測精度向上等の防災気象情報の高度化、森林整備・治山対策等を推進する。経済発展の基盤となる交通・通信・エネルギーなどライフラインの強靱化のため、フェーズフリー*137*な仕組みの活用、上下水道などのインフラ老朽化対策・耐震化の加速化、高規格道路の未整備区間の解消、港湾・空港の防災拠点化等の災害に強い交通ネットワーク構築、無電柱化、大雪対策等を進める。道路啓開計画の実効性向上に取り組む。デジタル等新技術の活用による国土強靱化施策の高度化のため、TEC-FORCE等の国の災害支援体制・機能*138*の拡充・強化、消防・防災DX、防災科学技術の開発・導入等を進める。災害時における事業継続性確保を始めとした官民連携強化のため、サプライチェーンの強靱化、土地利用と一体となった減災対策、船舶活用医療提供体制の整備*139*、医療コンテナ活用、歯科巡回診療や被災地の災害医療システム活用等の推進による医療の継続性確保、制度的対応も含めた災害廃棄物処理体制の充実等に取り組む。地域の防災力強化のため、地域の実情を踏まえ、災害リスク情報の整理、分かりやすい防災気象情報の提供、学校を始め避難所等の耐災害性の強化や再エネ・蓄電池の導入、地域の貴重な文化財を守る防災対策等に取り組む。

 国土強靱化実施中期計画の実施に際しては、真に必要な財政需要に安定的に対応するため、地方の実情も踏まえ、受益者による負担の状況を念頭に置きつつ、事業の進捗管理と財源確保方策の具体的な検討を開始する。

(2)東日本大震災からの復興・再生及び能登半島地震からの復旧・復興等

(東日本大震災からの復興・再生)

 福島の復興なくして東北の復興なし、東北の復興なくして日本の再生なしとの決意の下、2025年夏に見直す基本方針*140*に基づき、復興・再生に全力を尽くす。第2期復興・創生期間*141*の次の5年間は復興に向けた課題を解決していく極めて重要な期間であり、今の5年間以上に力強く復興施策を推進していくための財源を確保する。

 地震・津波被災地域では、心のケア等の中長期的課題に政府全体の施策も活用して対応する。国が前面に立って、原子力災害被災地域の復興・再生に取り組む。福島第一原発の廃炉を安全かつ着実に進める。ALPS処理水処分に係る安全性確保と風評対策・なりわい継続支援に万全を期す。日本産食品の輸入規制の即時撤廃を強く求める。除去土壌の復興再生利用を進めるとともに、県外最終処分に向けて政府一体で取り組む。たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組むとの決意の下、まずは特定帰還居住区域の除染・インフラ整備等を進める。「区域から個人へ」という考え方の下、安全確保を大前提に、帰還困難区域における活動の自由化の検討を進める。避難指示解除地域の生活環境を整備する。手つかずの森林の再生に取り組む。地方創生との連携を強化しつつ、改定した「福島イノベーション・コースト構想を基軸とした産業発展の青写真」*142*を踏まえ、福島国際研究教育機構や新エネ社会構想の取組、農林水産業を含むなりわいの再建、エネルギー・ロボット・宇宙分野を含む新産業創出等を推進し、帰還・移住・定住を促進するとともに、「ふくしま浜通りサイクルルート」等を活用したホープツーリズム*143*や文化芸術も活用して交流・関係人口を拡大する。

(能登半島地震からの復旧・復興及び防災対策の推進等)

 令和6年能登半島地震により、石川県を始めとする北陸地方を中心に甚大な被害が発生し、さらに、復興の最中に奥能登豪雨によって二重の被災となったことを踏まえ、引き続き、一日も早い被災者の生活・生業の再建、インフラ等の復旧、公費解体、復興まちづくり計画に基づく事業、災害公営住宅の整備を推進するとともに、文化芸術も含めた能登の創造的復興を支援する。能登地域の観光復興に向け、復興状況に応じた手厚い旅行需要喚起策に取り組む。

 新たな被害想定等を踏まえた南海トラフ地震や首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、富士山噴火への対策、活火山法*144*に基づく火山災害対策や、物質科学分析の推進など火山調査研究推進本部における調査研究、専門人材の育成・継続確保を推進するとともに、中枢管理機能のバックアップの観点も踏まえた危機管理体制の強化に取り組む。防災産業の育成、海外展開を推進する。

 避難所環境の抜本的改善、衛生の確保に向け、発災時にトイレ、パーティション、簡易ベッド、温かい食事、入浴設備を速やかに提供できるような地方公共団体による資機材の備蓄への支援やプッシュ型支援の迅速化に向けた分散備蓄、トレーラーハウス等の活用、洋式の快適トイレの推進、避難所となる学校の空調整備など、事前防災の取組を推進する。保健医療福祉活動チームや学校支援チーム等の体制整備・人材育成に取り組む。

 地域における防災力の強化のため、改正災対法*145*も踏まえ、災害ケースマネジメント、ボランティアへの参加促進を含む民間団体・企業との連携による被災者支援の担い手確保、被災者援護協力団体制度等による被災者支援活動の環境整備、災害中間支援組織の設置・機能強化、要配慮者避難対策、広域的な避難の円滑化を推進するとともに、気象防災アドバイザーや地域防災マネージャーの活用促進によるタイムライン防災、地域の活性化や地方創生に資する防災拠点形成、省庁間や地方公共団体との連携による先進的・横断的な事前防災の取組への支援、防災教育、消防団を含む消防防災力の充実強化に取り組む。今般発生した大規模な林野火災を踏まえた予防・消火体制の対策強化を進める。複合災害の発生に備えるために、発災後の変状把握・安全度評価・リスクの周知等の応急対応を強化する。事前防災・事前復興まちづくりを進める。

 上下水道の分散型システムの早期実用化、災害用井戸の活用を含めた地下水など、代替水源の確保、路面下空洞調査の実施、液状化対策、道の駅の拠点機能強化、通信・放送ネットワークの強靱化、コンビナートの耐震・耐浪化に取り組む。半島や離島の防災対策・国土強靱化を推進する。

(3)外交・安全保障の強化

(外交)

 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けた外交を展開*146*することによって、国益を守るとともに、世界の安定と繁栄に向け国際社会をリードするため、外交力を強化する。「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日米同盟は地域の平和と繁栄の礎であるとの認識の下、日米協力を更に高みに引き上げつつ、G7、ASEAN、豪、印、韓、EU、NATOを含む同志国・機関との連携を強化する。グローバル・サウスへの関与の強化*147*を通じ、グローバル・ガバナンスの強化に取り組む。

 ウクライナ支援及び対露制裁を継続する。国際協力については、オファー型協力や改正JICA法*148*で導入された民間資金動員の促進を含む新しい仕組みの実装、海外協力隊の活用、国際機関等との連携強化、パレスチナ支援を始めとする人道危機対応、食料、保健、気候変動及びプラスチック汚染の分野における地球規模課題の解決を進めるため、様々な形でODAを拡充する。政府安全保障能力強化支援(OSA)を戦略的に強化する。

 「核兵器のない世界」に向け、NPT体制の下での取組を主導する。安全保障理事会改革を含む国連の機能強化、国際機関を通じた規範形成や邦人職員の増強、国際法に基づく紛争解決、女性・平和・安全保障(WPS)、人間の安全保障、日系人を含む親日・知日派の育成、歴史認識や領土・主権に係る内外発信、文化外交の充実に取り組む。日朝平壌宣言に基づき、拉致*149*、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を実現する。

 外交・領事実施体制の抜本的強化のため、合理化・効率化を図りつつ、人的体制の強化、多様な働き方支援を含む財政基盤の整備、在外公館の強靱化、領事業務の充実、情報セキュリティ基盤の強化に取り組む。

(安全保障)

 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中、「国家安全保障戦略」等*150*に基づき、防衛力の抜本的強化を推進する。その際、スタンド・オフ防衛能力や無人アセット防衛能力等の7つの分野*151*を重視し、現有装備品を最大限有効に活用するための可動数向上や弾薬・燃料の確保、防衛施設の強靱化を推進する。装備品等の取得に当たっては、一層の効率化・合理化を徹底する。

 「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針」*152*に基づき、人的基盤を強化するほか、衛生機能の強化にも取り組む。防衛大臣の危機管理に係る負担を軽減し、各種事態への対処に万全を期すため、副大臣2名体制とする。

 防衛生産基盤強化法*153*を執行し、力強く持続可能な防衛産業の構築、様々なリスクへの対処、防衛産業協力及び防衛装備移転を推進する。次期戦闘機の共同開発を含む研究開発、デュアルユースの担い手であるスタートアップを含めた民生の先端技術の活用を進め、革新的な技術を発掘し、育て、成果を社会に還元するエコシステムを構築する。日米同盟の抑止力と対処力を強化するとともに、同志国等との連携を強化する。在日米軍再編及び基地対策等を推進する。

 防衛力の抜本的強化等の財源については、「防衛力整備計画」等に沿って、引き続き、機動的・弾力的な対応を含め確保する。所得税に関する税制措置については、令和5年度税制改正の大綱*154*等の基本的方向性を踏まえつつ、引き続き検討する。

 総合的な防衛体制の強化に向け、研究開発や公共インフラ整備等の4分野における取組について、関係省庁の体制も整備しつつ更に推進する。エネルギー・食料等国家及び国民生活を支える基盤の戦略的強化の取組を推進する。

 南西地域を含む住民の広域的な避難及び受入れに係る検討を行い、特に、先島諸島からの住民避難に係る受入れ基本要領を2026年度中にとりまとめるほか、武力攻撃を想定したシェルターの確保について、地下施設の一層の確保や2025年度中の実施方針の策定に取り組み、国民保護の体制を強化する。

 海洋基本計画*155*に基づき、海洋状況把握による総合的な海洋の安全保障等の取組を推進するほか、「海上保安能力強化に関する方針」*156*に基づき、巡視船等の増強・更新、運航費の確保、無操縦者航空機等の新技術の活用推進、警察・自衛隊、外国海上保安機関との連携強化、人材確保・育成、勤務環境の改善や処遇の向上等を進める。

 宇宙基本計画に基づき、衛星コンステレーションを構築するなど、安全保障に関する総合的な取組を強化する。

 偽情報対策、人的情報を含む情報収集・分析や戦略的コミュニケーションの取組を強化するための体制・能力整備を進める。

(サイバーセキュリティ)

 サイバー対処能力強化法等*157*の運用に向け、新たな司令塔組織を中心とする体制を整備

する。「サイバー空間を巡る脅威に対応するため喫緊に取り組むべき事項」*158*に基づき、高度な情報収集・分析・共有に係る基盤の構築、政府横断的な監視機能の強化、2025年度中の政府調達におけるJC-STAR*159*の活用、経済安全保障重要技術育成プログラム等を活用した次世代サイバーセキュリティ技術(次世代暗号・量子耐性技術を含む)に係る研究開発プロジェクトの拡充及び国際標準化も視野に入れた社会実装の検討、中小企業を含むサプライチェーンにおける対策の強化、人材育成、国産技術を核とした対処能力の向上を推進し、国際競争力を強化する。2025年内を目途に、これらを含む新たな「サイバーセキュリティ戦略」を策定する。

(4)経済安全保障の強化

 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化、同盟国・同志国等との連携、地方を含む産官学民との協働・理解の醸成を進めながら、国家安全保障局を司令塔とする政府全体の推進体制を強化し、経済安全保障を確保する。

 産業が抱えるリスクについて点検し、経済インテリジェンス能力や総合的なシンクタンク機能*160*を含む対応の強化や重要インフラの強靱化に取り組む。

 経済安全保障推進法*161*附則に基づき、我が国の戦略的自律性・不可欠性を確保する観点から、同法の見直しについて、早急に検討する。国際的な通信、海底ケーブル、海運等のサービスに不可欠な物資やそれらに付随する不可欠な役務の確保に対応するほか、我が国の戦略的自律性を確実なものとするため、重要物資の安定供給確保の実効性を高める方策を検討する。併せて、人材不足を乗り越えるためのデジタル化、ロボット化、データ連携推進のための方策を検討する。重要技術領域リストを定め、先端重要技術の育成や国際協力を加速する。基幹インフラ制度への社会保険診療報酬支払基金及び医療機関の追加、重要なデータ保有者や保存・処理先に対する規律の確保、AI・デジタル基盤の強化、港湾・修繕ドックを始めとする同盟国・同志国及びグローバル・サウスとの経済的連結性の維持・強化に資する事業の海外展開の支援について、それぞれ検討を行う。次期航空機開発のための生産技術開発やサプライチェーンの強化に取り組むとともに、ドローンを始めとする無人機の生産基盤を構築する。

 「新たな国際標準戦略」*162*に基づき、イノベーションや市場創出に加え、我が国としての自律性確保、国際秩序の維持・強化の観点から、量子、デジタル・AI等の戦略領域におけるルールメイキングに対する支援、官民ネットワーク構築、国内試験認証基盤の強化、政府調達における国際標準の活用に取り組む。

 外為法*163*上の投資審査の実効性確保、先端技術の輸出管理、研究セキュリティ・インテグリティの確保、留学生・外国人研究者の受入審査強化、営業秘密管理を始めとする技術流出対策、経済的威圧への対応、各種制裁や貿易救済措置に取り組む。

(5)外国人との秩序ある共生社会の実現

 海外活力の取り込みを進めつつ、国民の安心・安全を確保するため、外国人との秩序ある共生社会の実現に向けて、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議など政府横断的な司令塔体制を更に強化し、実態把握や国・自治体の情報基盤整備を行うとともに、法令遵守の徹底、制度の適正利用、透明性の確保の観点から、国内社会のグローバル化を前提としていない制度・運用全般を見直すなど、総合的・施策横断的取組を進める。

(出入国在留管理の一層の適正化)

 入国から出国までの情報の一元的管理の実現のため、2028年度のJESTAの導入を目

指す。主要国の水準等を考慮して、査証や入国在留関係手数料の設定・見直しを検討する。デジタル技術を活用するとともに人的・物的体制を整備し、出入国在留関係審査・管理の強化・高度化、在留支援の充実など共生社会に向けた取組、特定在留カードの導入、難民等の迅速かつ確実な保護・支援、不法就労対策及び被仮放免者の動静監視の強化、不法滞在者ゼロを理念に摘発・送還を行う。

 育成就労制度及び特定技能制度について、分野・受入れ見込数の設定、監理支援機関の要件厳格化等を行うほか、外国人育成就労機構を含め必要な体制を整備する。認定日本語教育機関の体制整備・活用を進める。

(外免切替手続・社会保障制度等の適正化)

 外国の運転免許の日本の運転免許への切替手続(外免切替手続)について、運転免許の住所確認の厳格化や知識確認・技能確認の審査内容の厳格化を進める。外国人の税・社会保険料の未納付防止や社会保険制度の適正な利用に向けて、未納付情報や医療費不払情報の連携による在留審査への有効活用、外国人の保険適用の在り方等の検討を行う。児童手当・就学援助の実態に即した適正利用を図る。

(国土の適切な利用及び管理)

 外国人による土地等の取得を含む国土の適切な管理・利用について、政府横断的な司令塔体制の下、総合的な検討を行う。外国人を含めた全国の土地等の透明性を高めるため、土地に関連する台帳の所有者等の情報、データベースの充実について対応を検討する。

 安全保障に関しては、重要土地等調査法*164*等による対応を進めるとともに、内外の情勢等を見極めつつ、同法の見直しを含めて更なる検討を進める。

(観光・短期滞在者への対応の強化)

 外国人観光客等の受入れと住民の生活の質の確保を両立させるため、観光・短期滞在者の犯罪・迷惑行為への対応を強化する。

(6)「世界一安全な日本」の実現

 良好な治安を確保するため、CBRNE*165*、違法なドローン飛行への対処及びローン・オフェンダー*166*対応を含むテロの未然防止、国民保護施策、FATF*167*第5次対日相互審査を見据えたマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策、法執行機関によるドローンの利活用を推進する。

 「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」*168*に基づき、捜査手法の高度化を含め、詐欺、犯罪実行者募集情報、オンライン賭博や悪質ホストクラブ等への対策を強化し、匿名・流動型犯罪グループの壊滅を目指すとともに、防犯カメラの設置支援を含め、地域防犯力を強化する。

 「第二次再犯防止推進計画」*169*に基づき、拘禁刑下の処遇拡充、保護司への支援の充実等*170*を推進する。2025年度内に策定予定の次期犯罪被害者等基本計画*171*に基づき、施策を強化する。内外の予防司法支援機能や総合法律支援の充実、インターネット上の人権侵害への対策強化、法曹人材の確保等*172*の人的・物的基盤の整備を進める。外交一元化の下で法制度整備支援等の国際協力・司法外交*173*を推進するほか、再犯防止国連準則の活用、国際仲裁の活性化、国際法務人材の育成、法令外国語訳の加速に取り組む。

 運輸分野の安全対策、自動車メーカー等の不正防止、高齢運転者等の事故防止や自動車事故被害者の支援に取り組む。

 地方消費者行政を強化するため、地域見守り活動の活性化や消費生活相談員の人材確保・育成に資するよう地方消費者行政強化交付金を見直す。DXを活用した食品のロス削減や寄附を促進する。2026年度の改正公益通報者保護法*174*施行に向け、ガイドラインを見直す。

 改正労働施策総合推進法*175*等に基づき、2026年夏までに、カスタマーハラスメント防止のための指針を策定するなど、職場のハラスメント対策を推進する。

 新型コロナウイルス感染症のり患後症状やワクチン副反応の調査・研究を進める。「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」*176*に基づき、国立健康危機管理研究機構と連携しながら、次なる感染症危機への対応に万全を期す。人獣共通感染症対策*177*として、狂犬病予防法関連手続のオンライン化について、2025年度内に結論を得る。「花粉症対策の全体像」*178*に基づく発生源対策等、熱中症特別警戒情報の活用等の熱中症対策、改正鳥獣保護管理法*179*及び「クマ被害対策施策パッケージ」*180*に基づくクマの人身被害対策、外来生物対策を推進する。PFAS*181*対策として、科学的知見の充実や水道事業体への支援を進める。

(7)「誰一人取り残されない社会」の実現

(共生・共助)

 国民一人一人が生きがいや役割を持つ包摂的な地域共生社会を実現する。全国で必要な

介護・福祉サービスを確保するため、外国人を含む人材確保対策を進める。ヤングケアラー、ワーキングケアラーなど年代や就労の有無を問わず、ケアラーへの地方公共団体の取組*182*を支援するとともに、NPO等民間団体と連携した若者支援を推進する。多世代参画の下、多様な主体が連携し地域社会の課題解決に横断的に取り組むためのプラットフォーム*183*の構築や生活困窮者自立支援制度を軸とした包括的な支援体制の整備を推進する。

 貧困の連鎖を防ぐためのこどもの学習・生活支援や住まいと暮らしの安心を確保するための居住支援を始め、生活困窮者自立支援制度の機能を強化する。生活保護制度が役割を果たし続けるため、制度の理解促進と適切な運用確保、自立に向けた就労・就学支援、デジタル化を通じた適正受診・健康管理の推進や現場の業務負担軽減・体制確保など、必要な施策を推進する。生活扶助基準の次回見直しに向け、一般低所得世帯の消費データの充実・活用に取り組み、社会経済情勢等の動向を踏まえた必要な対応を検討する。

 旧優生保護法補償金等支給法*184*に基づく補償金等を支給するとともに、「障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた行動計画」*185*に沿って、障害の社会モデルの考え方に基づく施策を推進する。「障害者基本計画(第5次)」*186*に基づき、障害者差別の解消、ユニバーサルデザインのまちづくり*187*や心のバリアフリーの取組の推進、就労や地域生活の支援、アクセシビリティ向上を促進する。

 「自殺総合対策大綱」*188*に基づく対策を推進するほか、ひきこもり支援について、共同生活による支援を含む自立支援の実態や有効性の検証を踏まえ、取組を推進する。成年後見を含む総合的な権利擁護や無戸籍者の解消を促進する。性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性について、理解増進法*189*に基づく施策を推進する。動物愛護管理を推進する。

 過去最多のこどもの自殺や単身世帯の増加を踏まえ、孤独・孤立対策の重点計画*190*に沿って、予防が重要との認識の下、交付金も活用し、地方版官民連携プラットフォームを設置する地方公共団体への伴走支援、NPO等への継続的支援、緩やかなつながりや居場所づくり、支援の担い手やつながりサポーターの育成、つながりを生むための分野横断的な連携促進のほか、社会とのつながりを失い孤立死に至ることを予防するための関係府省と地方公共団体が連携した取組を進める。

 寄附の促進、NPOの活動を支援する中間支援組織を通じた支援を含め、社会課題解決に取り組む民間主体への支援を強化し、ソーシャルセクターの発展に取り組む。NPO法人の活動促進に向け、手続のオンライン化やテロ資金供与対策等の環境整備を進める。公益法人・公益信託による社会課題解決を促進するため、新制度施行に必要な体制や情報プラットフォームを整備する。休眠預金等活用制度では、民間の創意工夫に基づく事業への支援を通じ民間団体の育成や自立化を促進する。SIB*191*を含む成果連動型民間委託契約方式について、官民の理解促進・連携強化に資する環境整備や案件形成、成果評価支援を通じ、一層の拡大に向けて取り組む。

(就職氷河期世代等への支援)

 「就職氷河期世代等支援に関する関係閣僚会議」で決定した基本的な枠組み*192*に基づき、リ・スキリング支援の充実等の「就労・処遇改善に向けた支援」、居場所づくり等の「社会参加に向けた段階的支援」及び家計改善・資産形成の支援等の「高齢期を見据えた支援」の3本柱に沿って、従前からの取組を強化する。

 今後、詳細な実態や施策ニーズに関する調査を行うとともに、「就職氷河期世代支援の推進に向けた全国プラットフォーム」での検討を経て、2025年度内を目途に、KPIを含む新たな就職氷河期世代等支援プログラムをとりまとめ、その当事者、家族、支援関係者等への広報を強化する。

(女性・高齢者の活躍)

 全ての意思決定に女性が参画することを基本とし、男女共同参画の視点に立ち、男女別の影響やニーズの違いを踏まえた政策・事業の計画・実施や男女別のデータ収集・分析の強化を進め、あらゆる分野における意思決定の質を向上させる。

 女性版骨太の方針2025*193*に基づき、女性の所得向上・経済的自立に向け、L字カーブの解消に資するよう、女性の起業支援、改正女性活躍推進法*194*による男女間賃金差異及び女性管理職比率の開示、仕事と育児・介護・女性の健康課題との両立支援、女性デジタル人材の育成、男女間賃金格差の大きい5業界でのアクションプラン策定を推進する。AI、IT分野を始め理工系分野の大学・高専生、教員等に占める女性割合の向上に向け、最先端の科学技術を学ぶ機会や理工系の女性ロールモデルに触れる機会を早い段階から継続的に提供するなど、女子中高生の関心を醸成し、意欲・能力を伸長するための産学官・地域一体となった取組及び大学上位職への女性登用を促進する。地方在住の女性向けのリ・スキリング支援を強化するとともに、スキルを活かした就労を支援する取組を促進する*195*。

 国立女性教育会館を機能強化した、機構法*196*に基づく新機構の創設により、地域の男女共同参画を推進する。女性特有の健康課題*197*及び性差に由来した健康課題*198*への対応の普及に向け、女性の健康総合センターや大学、研究機関における調査研究や全国的なネットワーク体制の構築を進めつつ、中小企業の健康経営の取組への支援やフェムテックの利活用など女性の健康支援に取り組む。女性用トイレの利用環境の改善に向けて、国内外の動向等の把握を進め、対策を推進する。男女共同参画の視点に立った防災・復興、WPS、多様な被害者への相談支援の充実等*199*の性犯罪・性暴力対策やDV・ストーカー対策、官民協働の支援体制の構築等の若年女性を含む困難な問題を抱える女性の支援に取り組む。

 我が国が「超高齢社会」を迎える中、「高齢社会対策大綱」*200*に基づき、全ての世代の人にとって持続可能で、年齢に関わりなく希望に応じ活躍し続けられる社会を構築する。高齢期のニーズに応じたきめ細かなマッチングの推進等により、多様な就業等の機会の提供を官民連携して推進する。「認知症施策推進基本計画」*201*を踏まえ、新しい認知症観に基づく施策を推進*202*するとともに、地方公共団体における計画策定を進める。認知症の人の成年後見制度の利用を促進する。身寄りのない高齢者等への支援や総合的な権利擁護支援について検討するとともに、高齢者等終身サポート事業者ガイドラインの実効性確保など独居高齢者に対する政府横断的な対応を行う。遺言制度の見直しを検討する。


第3章 中長期的に持続可能な経済社会の実現

1. 「経済・財政新生計画」の推進

(経済再生と財政健全化の両立の重要性)

 第1章で述べた基本的考え方の下、それに基づく政策を推進するとともに、金利のある世界となる中、大災害や有事に備えた財政余力を確保する観点も踏まえ、中長期の経済財政の姿を展望しつつ、経済・財政・社会保障の持続可能性を確保していく必要がある。

 経済あっての財政という考え方は、経済政策の基本的な立場であり、今後もこの方向性を堅持する。経済の主役は企業・個人の活力であり、新たな行動を実行に移す企業・個人を、政府が様々な政策ツールにより積極的に後押しすることで経済成長を実現していくことが望ましい姿であり、それを力強く進める中で財政健全化を実現していく。その際、民間企業の予見可能性を高めるため、重要政策に複数年度で計画的に取り組んでいく観点も踏まえながら、EBPMによるワイズスペンディングを徹底し、成長と分配の好循環を拡大させる中で、歳出構造の平時化を図る。

 同時に、国債需給の悪化等による長期金利の急上昇を招くことのないよう、国内での国債保有を一層促進するための努力を引き続き行う必要がある。また、頻発する自然災害や安全保障環境の変化の中で、有事に備えた財政余力の確保の重要性は一層増しており、今後も市場で国債を安定的に発行できる環境を整えつつ、財政余力の確保のため、財政健全化に取り組んでいく必要がある。

 以上の基本認識を踏まえ、骨太方針2024で定めた「経済・財政新生計画」*203*の枠組みの下、財政健全化目標の堅持と歳出改革努力の継続を基本方針とし、具体的には以下の考え方に沿って、引き続き経済再生と財政健全化の両立に取り組む。

(「経済・財政新生計画」に基づく今後の取組方針)

 経済あっての財政との考え方の下、財政健全化目標によって、米国の関税措置への対応や物価高への的確な対応も含め、状況に応じたマクロ経済政策の選択肢が歪められてはならない。必要な政策対応を行うことと財政健全化目標に取り組むことを矛盾しないものにしていく。経済を成長させ、そして財政健全化に向けて取り組んでいく。こうした取組を通じて、金利が上昇する局面において、大災害や有事に十分に対応する財政余力を確保し、将来の経済・財政・社会保障の持続可能性を確保していく。

 そうした中、金利のある世界において、我が国の経済財政に対する市場からの信認を確実なものとするため、財政健全化の「旗」を下ろさず、長期を見据えた一貫性のある経済財政政策の方向性を明確に示すことが重要である。このため、2025年度から2026年度を通じて、可能な限り早期の国・地方を合わせたPB黒字化を目指す。ただし、米国の関税措置の影響は不透明であり、その経済財政への影響の検証を行い、的確に対応すべきであり、必要に応じ、目標年度の再確認を行う。その上で、「経済・財政新生計画」の期間を通じて、その取組の進捗・成果を後戻りさせることなく、PBの一定の黒字幅を確保しつつ、債務残高対GDP比を、まずはコロナ禍前の水準に向けて安定的に引き下げることを目指し、経済再生と財政健全化を両立させる歩みを更に前進させる。

 予算編成においては、2027年度までの間、骨太方針2024で示された歳出改革努力を継続しつつ、日本経済が新たなステージに移行しつつあることが明確になる中で、経済・物価動向等を踏まえ、各年度の予算編成において適切に反映する。とりわけ社会保障関係費*204*については、医療・介護等の現場の厳しい現状や税収等を含めた財政の状況を踏まえ、これまでの改革を通じた保険料負担の抑制努力も継続しつつ、2025年春季労使交渉における力強い賃上げの実現や昨今の物価上昇による影響等について、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、的確な対応を行う。具体的には、高齢化による増加分に相当する伸びにこうした経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する。非社会保障関係費*205*及び地方財政についても、第3章 第4節「物価上昇に合わせた公的制度の点検・見直し」も踏まえ、経済・物価動向等を適切に反映する。

 今後も、状況に応じて必要な政策対応を行っていくことに変わりはないが、PBの黒字化を達成した後、黒字幅が一定水準を超えた場合には、経済成長等に資するような政策の拡充を通じて経済社会に還元することをあらかじめルール化することについても検討に着手していく。

(税制改革)

 骨太方針2024等も踏まえ、コストカット型経済から脱却し、成長型経済への移行を実現するとの基本的考え方の下、経済成長と財政健全化の両立を図るとともに、少子高齢化、グローバル化等の経済社会の構造変化に対応したあるべき税制の具体化に向け、包括的な検討を進める。

 物価上昇局面の対応や格差の是正及び所得再分配機能の適切な発揮を始めとする観点から、各種所得の課税の在り方及び人的控除を始めとする各種控除の在り方の見直しを含む所得税の抜本的な改革の検討*206*を進める。EBPMの取組を着実に推進するとともに、デジタル社会にふさわしい税制の構築及び納税環境の整備と適正・公平な課税を実現する観点から、制度及び執行体制の両面からの取組を強化するほか、新たな国際課税ルールへの対応を進める。

2. 主要分野ごとの重要課題と取組方針

(1)全世代型社会保障の構築

 本格的な少子高齢化・人口減少が進む中、技術革新を促進し、中長期的な社会の構造変化に耐え得る強靱で持続可能な社会保障制度を確立する。このため、「経済・財政新生計画」に基づき、持続可能な社会保障制度を構築するための改革を継続し、国民皆保険・皆年金を将来にわたって維持し、次世代に継承することが必要である。

 医療・介護・障害福祉等の公定価格の分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保がしっかり図られるよう、コストカット型からの転換を明確に図る必要がある。このため、これまでの歳出改革を通じた保険料負担の抑制努力も継続しつつ、次期報酬改定を始めとした必要な対応策において、2025年春季労使交渉における力強い賃上げ*207*の実現や昨今の物価上昇による影響等について、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、的確な対応を行う。

 このため、2024年度診療報酬改定による処遇改善・経営状況等の実態を把握・検証し、2025年末までに結論が得られるよう検討する。また、介護・障害福祉分野の職員の他職種と遜色のない処遇改善や業務負担軽減等の実現に取り組むとともに、これまでの処遇改善等の実態を把握・検証し、2025年末までに結論が得られるよう検討する。また、事業者の経営形態やサービス内容に応じた効果的な対応を検討する。

 持続可能な社会保障制度のための改革を実行し、現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減を実現するため、OTC類似薬の保険給付の在り方の見直し*208*や、地域フォーミュラリの全国展開*209*、新たな地域医療構想に向けた病床削減*210*、医療DXを通じた効率的で質の高い医療の実現、現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底*211*、がんを含む生活習慣病の重症化予防とデータヘルスの推進などの改革について*212*、引き続き行われる社会保障改革に関する議論の状況も踏まえ、2025年末までの予算編成過程で十分な検討を行い、早期に実現が可能なものについて、2026年度から実行する。

(中長期的な時間軸を見据えた全世代型社会保障の構築)

 現役世代が急速に減少し、高齢者数がピークを迎える2040年頃を見据えた中長期的な時間軸も視野に入れ、現役世代の負担を軽減しつつ、年齢に関わりなく、能力に応じて負担し、個性を活かして支え合う「全世代型社会保障」の構築が不可欠である。改革工程*213*を踏まえ、医療・介護DXやICT、介護テクノロジー、ロボット・デジタルの実装やデータの二次利用の促進、特定行為研修を修了した看護師の活用、タスクシフト/シェアなど、医療・介護・障害福祉分野の生産性向上・省力化を実現し、職員の負担軽減や資質向上につなげるとともに、地域医療連携推進法人、社会福祉連携推進法人の活用や小規模事業者のネットワーク構築による経営の協働化・大規模化や障害福祉サービスの地域差の是正を進める。医療機関、介護施設、障害福祉サービス等事業者の経営情報の更なる見える化*214*を進める。医療・介護・障害福祉分野の不適切な人材紹介の問題について実効性ある対策を講ずる。

 現役世代の消費活性化による成長と分配の好循環を実現するため、各種データ分析・研究を始めEBPMによるワイズスペンディングを徹底し、保険料負担の上昇を抑制するとともに、全世代型社会保障の将来的な姿を若者も含め国民に分かりやすく情報提供する。

(中長期的な介護提供体制の確保等)

 医療・介護ニーズを抱える高齢者や独居高齢者が増加する中、要介護状態や認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、中長期的な介護サービス提供体制の確保のための方向性を2025年中にまとめる。具体的には、2040年以降を見据え、人口減少や高齢化の進展によるサービス需要の地域差に応じ、中山間地域での柔軟な対応など各地域で地域包括ケアシステムを深化させるための方策を整理しつつ、地域医療構想を踏まえた医療・介護連携や介護予防の強力な推進、質の高いケアマネジメントの実現*215*を含めた多職種間の連携や相談体制の充実、介護テクノロジーの社会実装に向けた実証・導入・伴走支援による生産性向上、事業者間の連携・協働化や大規模化の経営改善の取組や、ワーキングケアラーへの対応など官民連携による介護保険外サービスの普及、外国人を含む介護人材の確保・定着を支援する。有料老人ホームの運営やサービスの透明性と質を確保する。

 介護保険制度について、利用者負担の判断基準の見直し等の給付と負担の見直しに関する課題について、2025年末までに結論が得られるよう検討する。

(中長期的な医療提供体制の確保等)

 2040年頃を見据え、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大や現役世代の減少に対応できるよう、コロナ後の受診行動の変化も踏まえ、質が高く効率的な医療提供体制を全国で確保する。このため、医療需要の変化を踏まえた病床数の適正化を進めつつ、かかりつけ医機能の発揮される制度整備、医療の機能分化・連携や医療・介護連携、救急医療体制の確保、必要な資機材の更新を含むドクターヘリの安全かつ持続可能な運航体制の確保、大学病院・中核病院に対する支援を通じた医師派遣の充実、臨床実習に専念できる環境の整備、適切なオンライン診療の推進、減少傾向にある外科医師の支援、都道府県のガバナンス強化等を進める。

 地域医療構想については、地域での協議を円滑に進めるため、医療機関機能・病床機能の明確化、国・都道府県・市町村の役割分担など、2025年度中に国がガイドラインを策定し、各都道府県での2026年度以降の新たな地域医療構想の策定を支援する。

 医師の地域間・診療科間の偏在への対応については、経済的インセンティブや規制的な手法といった地域の医療機関の支え合いの仕組みを含めた総合的な対策のパッケージを順次実施し、その効果を検証する。

 こうした医師の適正配置のための支援の在り方について、全国的なマッチング機能やリカレント教育、医学教育を含めた総合的な診療能力を有する医師の育成、医師養成過程の取組と併せて、2025年末までに検討を行う。地域の医師確保への影響にも配慮し、医師偏在是正の取組を進め、医師需給や人口減少等の中長期的な視点に立ち、2027年度以降の医学部定員の適正化を進める。また、偏在対策を含む看護職員の確保・養成や訪問看護におけるICT活用を含む看護現場におけるDXの推進、在宅サービスの多機能化といった在宅医療介護の推進に取り組む。

 医療保険制度について、給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制*216*を図りつつ、給付と負担の見直し等の総合的な検討を進める。高額療養費制度について、長期療養患者等の関係者の意見を丁寧に聴いた上で、2025年秋までに方針を検討し、決定する。

 妊娠・出産・産後の経済的負担の軽減のため、2026年度を目途に標準的な出産費用の自己負担の無償化に向けた対応を進める。妊婦健診における公費負担を促進する。「出産なび」の機能を拡充するほか、小児周産期医療について、地域でこどもを安心して生み育てることができるよう、最先端の医療を含めた小児周産期医療体制の確保を図るため、産科・小児科医療機関を取り巻く厳しい経営環境を踏まえ、医療機関の連携・集約化・重点化を含めた必要な支援を行う。安全で質の高い無痛分娩を選択できる環境を整備する。

 リフィル処方箋の普及・定着や多剤重複投薬や重複検査の適正化を進めるとともに、保険外併用療養費制度の対象範囲の拡大や保険外診療部分を広くカバーし、公的保険を補完する民間保険の開発を促す。国民健康保険の都道府県保険料水準の統一に加え、保険者機能や都道府県のガバナンスの強化を進めるための財政支援の在り方について検討*217*を行う。

(働き方に中立的な年金制度の構築)

 公的年金については、働き方に中立的な制度を構築する観点から、改正年金法*218*を踏まえ、更なる被用者保険の適用拡大や在職老齢年金制度の見直しを進めるとともに、いわゆる「年収の壁」への対応として、「年収の壁・支援強化パッケージ」*219*の活用を促進する。

(がん、循環器病等の疾患に応じた対策等)

 がん対策*220*、循環器病対策*221*、慢性腎臓病対策*222*、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性疼痛等の疾患に応じた対策、難病対策、移植医療対策*223*、アレルギー対策*224*、依存症対策、難聴対策、栄養対策、受動喫煙対策、科学的根拠等に基づく予防接種の促進を始めとした肺炎等の感染症対策*225*、更年期障害や骨粗しょう症など総合的な女性の健康支援*226*を推進する。運送業での睡眠時無呼吸対策、睡眠障害の医療アクセス向上と睡眠研究の推進、睡眠ガイド等の普及啓発、健康経営の普及、睡眠関連の市場拡大や企業支援に一層取り組む。

 糖尿病と歯周病との関係など全身の健康と口腔の健康に関するエビデンスの活用、生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた具体的な取組、オーラルフレイル対策・疾病の重症化予防につながる歯科専門職による口腔健康管理の充実、歯科医療機関・医歯薬連携などの多職種連携、歯科衛生士・歯科技工士の離職対策を含む人材確保、歯科技工所の質の担保、歯科領域のICT活用、歯科医師の不足する地域の分析等を含めた適切な配置の検討を含む歯科保健医療提供体制構築の推進・強化に取り組むとともに、有効性・安全性が認められたデジタル化等の新技術・新材料の保険導入を推進する。また、自立支援・在宅復帰・社会復帰に向けたリハビリテーションの推進に取り組む。

(予防・健康づくり、重症化予防)

 世界最高水準の健康寿命を誇る我が国の高齢者は、労働参加率や医療費でみても若返っており、こうした前向きな変化を踏まえ、更に健康寿命を延伸し、Well-beingの向上を図り、性別や年齢に関わらず生涯活躍できる社会を実現する。データヘルス計画に基づく保険者と事業主の連携した取組(コラボヘルス)や保険者の保健事業でのICTを活用したエビデンスに基づくPHRや健康経営と共働した効果的な取組を支援するほか、働き盛り世代の職域でのがん検診を広く普及するため、受診率や精度管理の向上の取組を更に推進する。AMEDのプライマリヘルスケア・プラットフォーム等を通じた支援により、エビデンスに基づくヘルスケアサービスを普及する。糖尿病性腎症の重症化予防等の大規模実証事業を踏まえたプログラムの活用を進める。高齢者の社会参加促進や要介護認定率の低下に向け、データを活用したエビデンスに基づく取組として、地域の多様な主体の連携協力や、成果指向型の取組等による効果的な介護予防やリハビリテーションを充実する。

(創薬力の強化とイノベーションの推進)

 政府全体の司令塔機能の強化を図りつつ、医薬品業界の構造改革を進めるとともに、「健康・医療戦略」*227*に基づき、創薬エコシステムの発展やヘルスケア市場の拡大、創薬力の基盤強化に向け、一体的に政策を実現する。新規ファースト・イン・ヒューマン試験実施施設など、国際水準の治験・臨床試験実施体制を整備する。MEDISO*228*・CARISO*229*の体制を強化し、ヘルスケアスタートアップを強力に支援するほか、革新的医薬品等実用化支援基金の対象を拡充することを検討し、創薬シーズの実用化を支援する。国民負担の軽減と創薬イノベーションを両立する薬価上の適切な評価*230*の実施、承認審査・相談体制の強化、バイオ医薬品を含む医薬品の製造体制の整備や人材育成・確保により、国際水準の研究開発環境を実現し、ドラッグラグ/ロスの解消やプログラム医療機器への対応を進めるほか、PMDAの海外拠点を活用し、薬事相談・規制調和を推進する。大学、ナショナルセンターと医療機関が連携して担う実証基盤を整備するなど産業振興拠点機能及び開発後期や海外展開に向けた研究開発支援を強化し、治療機器やプログラム医療機器を始めとした日本発の医療機器の創出を促進する。

 医薬品の安定供給に向け、抗菌薬等のサプライチェーンの強靱化や取り巻く環境の変化を踏まえた持続可能な流通の仕組みの検討を図るとともに、感染症の流行による需要の急激な増加といったリスクへの対策を講じ、基礎的な医薬品等*231*の足元の供給不安に対応する。さらに、少量多品目構造解消に向けた後発医薬品業界の再編を推進するほか、バイオシミラーについて、国内生産体制の整備及び製造人材の育成・確保を着実に進め、使用を促進する。当初の医師の診断や処方に基づき症状の安定している患者が定期的に服用する医薬品や、低侵襲性検体である穿刺血を用いる検査薬を含む医薬品・検査薬の更なるスイッチOTC化など、具体的な工程表を策定した上でセルフケア・セルフメディケーションを推進しつつ、薬剤自己負担の見直しを検討する。全ゲノム解析を推進し、2025年度の事業実施組織の設立、ゲノム情報基盤の整備や解析結果の利活用を進める。iPS細胞を活用した創薬や再生・細胞医療・遺伝子治療の研究開発を推進するほか、新規抗菌薬開発に関する市場インセンティブなどにより薬剤耐性菌の治療薬を確実に確保するとともに、ワクチン・診断薬・治療薬など感染症危機対応医薬品等の開発戦略の策定・研究開発を推進する。イノベーションの推進や現役世代の保険料負担への配慮の観点から、費用対効果評価制度について、客観的な検証を踏まえつつ、更なる活用に向け、適切な評価手法、対象範囲や実施体制の検討と併せ、薬価制度上の活用や診療上の活用等の方策を検討する。標準的な薬物治療の確立に向け、休薬・減薬を含む効果的・効率的な治療に関する調査研究を進め、診療ガイドラインに反映していく。医薬品の適正使用や後発医薬品の使用促進のみならず、医療費適正化の観点から、地域フォーミュラリを普及する。小中学生から献血に対する理解を深めるとともに、輸血用血液製剤及びグロブリン製剤、フィブリノゲン製剤等血しょう分画製剤の国内自給、安定確保、適正使用を推進する。アクションプラン*232*に基づく医療用等ラジオアイソトープの国産化及び利用促進に必要な体制整備等の取組を進める。

(国際保健の推進)

 WHOや世界銀行と連携し、低・中所得国の保健財政の強化に向け、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関する世界的拠点として日本にUHCナレッジハブを設置し、UHCの実現に向けた取組を加速するなど、インド太平洋地域等での国際保健に戦略的に取り組む。「グローバルヘルスのためのインパクト投資イニシアティブ(トリプル・アイ)」を通じ日本企業の国際展開後押しと国際貢献を実現する。ERIAと連携した外国医療人材育成、医療インバウンドを含む健康・医療・介護関連の国際展開、低所得国を中心にした感染症対策*233*や保健システム強化等の国際保健課題対策に係る貢献を促進する。

(2)少子化対策及びこども・若者政策の推進

 2024年の出生数*234*は、過去最少の約68. 6万人まで減少するなど少子化の進行は危機的な状況である。また、いじめ、不登校、児童虐待や貧困、こどもの自殺増加など、今を生きるこどもを取り巻く状況も極めて深刻である。今を生きるそして将来生まれる全てのこども・若者の最善の利益を第一に考え、「こども未来戦略」*235*、「こども大綱」*236*及び「こどもまんなか実行計画2025」*237*に基づき、「こどもまんなか社会」を実現し、少子化の流れを変えるとともに、こども・若者のWell-beingを高めていく。施策の実施に当たっては、こどもを取り巻く環境や地域の子育て支援に係る状況、女性の継続就業率や男性の育休取得率等の数値目標を含めた指標を活用し、EBPMを確実に実行し、ワイズスペンディングにつなげるとともに、こども・若者や子育て世帯を始めとして国民の共感が得られるよう、丁寧な広報を行う。

(加速化プランの本格実施と効果検証の徹底)

 こどもを生み、育てたいという希望が叶う社会、こどもたちが健やかに育まれる社会の実現と少子化トレンドの反転を目指し、政策を総動員することが不可欠である。集中取組期間において、「経済・財政新生計画」や加速化プラン*238*に沿って、経済的支援、全てのこども・子育て世帯を対象とする支援、共働き・共育ての推進のための施策を本格実施する。具体的には、保育士・幼稚園教諭等の処遇改善、保育士配置の改善、こども誰でも通園制度の全国展開や、放課後児童クラブ等への支援*239*、子育て世帯への住宅支援に取り組むとともに、施策全般について出生率やこどものWell-beingに関する指標等関連指標に与える効果の検証を徹底し、より効果的な施策への重点化など施策の見直しを検討する。このため、改革工程に基づく徹底した歳出改革を進めるなど財源確保を図るとともに、2026年度からの子ども・子育て支援金制度の円滑な導入に向け、国民の共感を得られるよう制度の意義やその使途などの周知の準備を進めるほか、少子化の危機的かつ深刻な状況を踏まえ、官民が連携し、社会全体でこども・子育て世帯を支える意識を醸成する。

(若者支援及び困難に直面するこどもの支援を始めとするこども大綱の推進)

 全てのこども・若者の健やかな成長を社会全体で支えていく。このため、「経済・財政新生計画」やこども大綱に沿って関連施策を進める。こども・若者シェルターなど、虐待等により困難に直面するこどもや青年期の若者等の支援を強化する。若者が主体となって活動する団体等が抱える資金不足や構成員の維持困難等の課題*240*を踏まえた活動継続を支える施策や、各種審議会等の委員登用を含む、こども・若者の意見反映・社会参画を推進するほか、官民が連携した若者のライフデザイン(将来設計)支援や結婚支援を行う。

 「はじめの100か月の育ちビジョン」*241*に基づく幼児期までの育ちの質の向上、「こどもの居場所づくりに関する指針」*242*に基づく支援、保育現場の負担軽減や改正児童福祉法*243*に基づく保育人材の確保等を進める。産後ケア事業、新生児マススクリーニング、新生児聴覚検査や乳幼児健診など母子保健対策や不妊症、不育症の相談支援、流産・死産経験者への相談支援を行う。「プレコンセプションケア推進5か年計画」*244*に基づく取組を進める。卵子凍結の知見収集や知識の普及の環境整備を行う。こども性暴力防止法*245*の施行準備や「生命(いのち)の安全教育」の推進、青少年のインターネットに関する課題への対応、こども視点での防災対策などこどもの安心・安全対策やこどもまんなかまちづくりを進める。こども食堂・こども宅食や、学習支援、体験機会の提供など、こどもの貧困解消や見守り強化を行う。こどもの状況も踏まえたひとり親家庭への養育費確保を含めた多面的で伴走型の支援を強化するとともに、経済社会の動向等も踏まえ、就業支援や経済的支援の在り方を検討する。職員配置などこども家庭センター等の体制強化や訪問による支援、認定資格の取得促進など、児童虐待の予防に取り組む。性被害を受けたこどもに配慮した支援体制を整備する。パーマネンシー保障*246*の理念と家庭養育優先原則に基づく*247*里親やファミリーホームによる支援、若年妊婦や社会的養護経験者等への支援を行う。改正民法*248*の円滑な施行に向けた周知や、児童養護施設等の養育機能の向上や児童相談所の体制強化を進める。発達障害児や医療的ケア児など障害のあるこどもと家族への支援やインクルージョンの推進、こどもホスピスの全国普及に向けた取組、ヤングケアラーの支援を行う。こどもを取り巻く深刻な状況を踏まえ、教育と福祉の連携により、いじめ・不登校や悩みに直面するこどもやその保護者への支援、こども・若者の自殺対策を強力に推進する。学校や家庭以外の多様な居場所づくりを進めるとともに、こどものメンタルヘルスを充実する。予防のためのこどもの死亡検証(CDR)を推進する。質の高い公教育の再生の強力な推進を図る。

(3)公教育の再生・研究活動の活性化

(質の高い公教育の再生)

 多様なこどもたちの特性や少子化の急速な進展など地域の実情を踏まえ、より質の高い、深い学びを実現すると同時に、一人一人の可能性が輝く柔軟な教育課程を編成できるよう、学習指導要領の改訂を進めるとともに、高校教育改革等への国の支援の抜本強化を図るなど、質の高い公教育の再生を通じて我が国の学校教育の更なる高みを目指す。いわゆる高校無償化、給食無償化及び0〜2歳を含む幼児教育・保育の支援については、これまで積み重ねてきた各般の議論*249*に基づき具体化を行い、令和8年度予算の編成過程において成案を得て、実現する。

 教師に優れた人材を確保するため、働き方改革の更なる加速化、処遇改善、指導・運営体制の充実、育成支援を一体的に進める。2029年度までを緊急改革期間と位置付け時間外在校等時間の月30時間程度への縮減を目標とし、学校・教師の担う業務の適正化やDXによる業務効率化、教育委員会ごとの取組状況の見える化、PDCAサイクルの強化、指導・運営体制の充実に取り組む。教職調整額の水準を2030年度までに10%に引き上げるとともに、職責や業務負担に応じたメリハリある給与体系への改善など、教師の処遇改善を推進する。2026年通常国会へ義務標準法*250*改正案を提出し、財源確保と併せて、2026年度からの中学校35人学級実現に向けた定数改善や働き方改革に資する外部人材の拡充を含め、学校の望ましい教育環境や指導体制を構築する。地域枠の活用を含む教員養成大学等の機能強化、養成段階からの教師人材の育成・確保の仕組みの改革、研修の充実、奨学金返還支援の学部段階を含む更なる検討に取り組む。

 学校の働き方改革を通じたこどもたちの豊かな学びを実現するため、コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的な取組や部活動の地域展開・連携の全国実施を加速するとともに、多様な児童生徒の教育機会を保障するため、特別支援教育の体制や環境の充実*251*、養護教諭の支援体制の推進、学びの多様化学校や夜間中学の全国的な設置促進・機能強化、地域の日本語教育の体制整備、外国人児童生徒への支援体制の強化、在外教育施設の特色を活かした機能強化、学用品の学校備品化の取組周知を推進する。SC・SSW*252*等に相談できる環境の整備、校内外教育支援センターの機能強化、医療・福祉との連携強化による不登校・重大ないじめ・自殺予防対策、セーフティプロモーションスクールの考え方を取り入れた学校安全の推進*253*等*254*により誰もが安心して学べる魅力ある学校づくりを推進する。幼児期及び幼保小接続期の教育・保育の質的向上や、豊かな感性や創造性を育むための体験活動・読書活動を推進するとともに、体力向上や視力低下予防、歯科保健教育や学校給食での地場産物等の活用を含む食育を推進する。AIの活用や地域の魅力発信等を通じ、英語教育を推進する。我が国の発展を支える専門人材育成のため、産業界等からの人材派遣*255*等の伴走支援による実践的な専門高校運営モデルの構築を推進する。

 急激な少子化の進行や地域の人口・産業構造の変化を見据え、高等教育へのアクセスを確保しつつ国公私を通じた大学の連携、再編・統合による機能強化や縮小・撤退による規模の適正化を進めるとともに、教育の質の高度化を進める。高等教育費の負担軽減に向け、拡充された修学支援新制度や授業料後払い制度を着実に実施するとともに、民間資金を活用した支援の拡充など、必要な検討を進める。日本人海外留学者年間50万人・外国人留学生受入れ年間40万人目標*256*の実現に向け、官民一体での支援策の戦略的活用に取り組む。

(研究の質を高める仕組みの構築)

 研究時間の確保や生産性向上による基礎研究力の抜本的な強化に向け、科学技術政策全

般のEBPMを強化しつつ、教育・研究・ガバナンスの一体改革を推進する。物価上昇等も踏まえつつ運営費交付金や私学助成等の基盤的経費を確保する。科研費等の競争的研究費の充実を通じた研究力の一層の強化に取り組むべく、支援の在り方を検討する。官民連携による、先端大型研究施設*257*の戦略的な整備・共用・高度化の推進*258*や、高度専門人材の育成・確保、博士課程学生や若手研究者の安定ポスト確保による処遇向上、産学官の共創の場の形成*259*、大学病院における教育・研究・診療機能の質の担保に向けた医師の働き方改革の推進などによる研究環境の確保により、我が国の研究力を維持・強化する。長期的ビジョンを持った国家戦略として次期「科学技術・イノベーション基本計画」を2025年度内に策定した上で、指標を用いた進捗状況の把握・評価を実施し、その成果を活かしつつ科学技術・イノベーション政策を推進する。

 日本学術会議が、新法*260*に基づき、学術の向上発達と社会課題の解決への寄与に向けて機能強化を進めることを支援する。

(4)戦略的な社会資本整備の推進

(持続可能なインフラマネジメントとまちづくりの高度化)

 埼玉県八潮市の道路陥没事故を踏まえ、進行するインフラ老朽化に対して、緊急性や経済的・社会的影響等を勘案し、優先順位を明らかにして対策を進める。広域的・戦略的なインフラマネジメントの実施、新技術・データの活用、事業者間や官民の連携促進により、予防保全型への本格転換や維持管理の高度化・効率化、地域の将来像を踏まえた集約・再編や公的ストックの適正化を推進するとともに、老朽化対策の効果の見える化を進める。受益者負担や適切な維持管理の観点から、財源対策について検討を行う。

 立地適正化計画による取組を充実させるとともに、災害に強い国土・地域づくりの観点も踏まえて広域的な都市圏のコンパクト化を進める。エリア価値向上に向けた地域に根ざす国公有財産の戦略的マネジメントを進める。不動産IDへの位置情報の付与や3Dモデル(建築BIM*261*、PLATEAU)の連携の取組を進め、建築・都市のDXを進展させ、まちづくり・防災の高度化や新ビジネス創出を進める。

(公共投資の効率化・重点化)

 引き続きi-Construction 2.0を推進し、建設現場の自動化・省人化を進めるとともに、女性・外国人を始め多様な人材の活躍を推進し、建設業の担い手の確保・育成に取り組む。インフラデータの分野横断的な整備・オープン化*262*を進め、インフラDXを加速する。

 災害の激甚化・頻発化、インフラ老朽化の更なる進行の中で、社会資本が将来にわたって機能を発揮するとともに、民間事業者が安心して設備投資*263*や人材育成を行うことができるよう、中長期的な見通しの下、安定的・持続的な公共投資を推進しつつ、戦略的・計画的な取組を進める。その際、労務費確保の必要性や近年の資材価格の高騰の影響等を考慮しながら適切な価格転嫁が進むよう促した上で、今後も必要な事業量を確保しつつ、実効性のあるPDCAサイクルを回しながら社会資本整備を着実に進める。

(PPP/PFIの推進)

 公共サービスを効率的・効果的に提供するPPP/PFIについて、改定アクションプラン*264*に掲げる目標を着実に達成することを目指し、ウォーターPPP等の重点分野における伴走支援体制の構築や、検討手続の効率化・検討期間の短縮化を推進する。民間企業の努力や創意工夫により適正な利益を得られる環境の構築、分野横断型・広域型の案件形成の促進、空き家等の既存ストックを活用するスモールコンセッション、地域プラットフォームを活用した官民の連携強化に取り組む。

(持続可能な土地及び水資源の利用・管理)

 持続可能な土地の利用・管理の実現に向け、非宅地化を含む土地利用の円滑な転換に取り組む。地方公共団体への後押しを含め、防災性向上や地方創生に資する空き家対策について、改修・流通促進などの総合的な取組と、相続・住所氏名変更登記義務化の周知・体制強化や地籍調査・法務局地図作成を含む所有者不明土地等対策*265*とを一体的・総合的に推進する。公的土地評価を支える不動産鑑定業の担い手確保に取り組む。マンションの管理適正化と再生円滑化を推進する。住宅ローンに関し、固定金利型の利用円滑化に取り組むなど、金融環境の変化に対して総合的に対応する。

 健全な水循環の維持・回復や流域の水資源の有効利用を進めるとともに、流域治水に加え、発電等の水利用や流域環境の保全・創出に関係者が協働して取り組む流域総合水管理を推進する。生物多様性や景観など多面的な観点で良好な水環境の創出を推進する*266*。

(5)持続可能な地方行財政基盤の強化

 急速な人口減少や東京一極集中により深刻化する地方公共団体における地域の担い手を始めとする資源の不足や偏在に対応し、将来にわたり持続可能な形で行政サービスを提供していく観点から、市町村に対する垂直補完、市町村間の水平連携、多様な主体との連携、デジタル技術の活用といった取組を推進し、地方公共団体における事務執行上の課題に対応するため、国・都道府県・市町村の役割の見直しを含めた課題解決に向けた議論を促進する。また、地方公共団体が連携して地域に必要な人材を確保・育成する取組や複数団体による広域的な公共施設の集約化・複合化や共同利用を進めるための取組を推進する。

 東京一極集中が続き行政サービスの地域間格差が顕在化する中、拡大しつつある地方公共団体間の税収の偏在や財政力格差の状況について原因・課題の分析を進め、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に向けて取り組む。

 地方公共団体が行う公共事業や施設管理、サービス等における価格転嫁の推進等や、地域を支える老朽インフラの適切な管理、地域医療提供体制の確保等のための取組を進めるとともに、地方の一般財源の総額を確保して*267*、地域における賃上げを起点とした成長型経済の実現を支える地方行財政基盤の持続性を確保・強化する。

 持続可能な地方行財政に向け、地方における生産性向上を推進するとともに、計画策定の効率化、経由事務の廃止、経由調査の見直し、デジタル技術の活用といった事務の簡素化・効率化を進め、地方分権改革に取り組む。

 自治体DXについて、定量的効果を把握しつつ、オンライン申請や「書かないワンストップ窓口」を始めとするフロントヤード改革、基幹業務システムの統一・標準化や地方税以外の公金納付へのeL-QRの活用を始めとするバックヤード改革に一体的に取り組む。システムやツールの共同調達・利用の取組を後押しする。都道府県と市町村が連携した推進体制を構築し、その中で人材プール機能の確保を推進する。地方公共団体のサイバーセキュリティ確保のための方針策定の推進、セキュリティ基盤の強化など更なる安全性確保の取組強化とともに、国・地方共通相談チャットボットの利用者目線での改善を進める。

3. 計画推進のための取組の強化

(経済・財政一体改革の点検・評価)

 「経済・財政新生計画」の推進においては、経済、社会、環境や技術の変化に適切に対応した予算編成や制度改正に資するよう、人口減少下の持続可能な国・地方の行財政、人々のやりがいやWell-being(幸福度)、デジタル・新技術の導入による生産性向上に着目しつつ、プロセス管理を行う。経済財政諮問会議において、「EBPMアクションプラン」、「改革実行プログラム」及び「進捗管理・点検・評価表」に基づき、毎年改革の進捗管理・点検・評価を行い、進捗や政策効果を確認し、更なる政策の企画・立案に結び付ける。

(政府全体のEBPMの強化)

 「経済・財政新生計画」の推進においては、限られたリソースから高い政策効果を生み出すことが重要である。このため、関係府省庁において「EBPMアクションプラン」に基づき、政府全体のEBPMの取組を本格化する。年末に同プランの見直し・強化を行うとともに、その成果を翌年度以降の骨太方針へ反映するなどEBPMを強化する。

 EBPM強化や分野横断的な施策の深化のため、行政記録情報を含めたデータの整備や「見える化」について関係府省庁間の連携を強化する。行政事業レビューとの連携を通じて、データ収集や分析・評価を一体的かつ効率的に進める。その際、行政事業レビューシステムの機能強化とAI技術を活用したデータの利活用を推進する。ビッグデータを用いた分析や指標の実用化を進める。

 基金について、資金の有効活用の観点から、EBPMの手法を用いた効果検証やPDCAの取組を推進し、基金の点検・見直しの横断的な方針*268*も踏まえ、必要性や成果の達成状況、管理費を含む執行見込み、設置法人の適格性について、不断に点検・検証を行う。

 公的部門が保有する資産について、その保有目的等も踏まえつつ、運用改善や有効活用の有用性を検討する。

(Well-being(幸福度)の視点からの施策の深化)

 Well-beingの高い社会の実現に向け、働く、学ぶ、健康、子育て、地域の生活に関連す

る基本計画や大綱において、生活のWell-being改善につながる実効的なKPIの設定を進めるとともに、Well-beingの把握を継続・強化する。次世代の社会生活や価値観の変化を反映する経済指標を検討し、将来的なSNA国際基準への反映も見据えた取組を推進する。

4. 物価上昇に合わせた公的制度の点検・見直し

 賃上げや投資が増加し、コストカット型経済からの脱却が見えてきた今、政府自身が、物価上昇を上回る賃金上昇の実現に向けて率先すべく、以下の3つの取組を総合的に実行する。その際には、労働の価値、平素からの備えの価値を正しく評価し、価格に表すことの重要性を軸に据えて取組を進める。

 物価上昇が継続していることを踏まえ、予算、税制における長年据え置かれたままの様々な公的制度に係る基準額や閾値について、国民生活へ深刻な影響が及ばないよう、省庁横断的・網羅的に点検し、見直しを進める*269*。その際、各項目の点検と併せ、政策効果を担保するため、制度の特性に応じた定期的な改定ルールを設け、足元の物価上昇に的確に対応できるような仕組みづくりを行う。

 同時に、本基本方針第2章及び第3章に記載している、

・公定価格(医療・介護・保育・福祉等)の引上げ

・働き手の賃上げ原資を確保できる官公需における価格転嫁の徹底を省庁横断的に推進する。


第4章 当面の経済財政運営と令和8年度予算編成に向けた考え方

1. 当面の経済財政運営について

 我が国経済は、緩やかに回復している一方で、米国の関税措置等の影響、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響に伴う下振れリスクには、注意する必要がある。

 米国の関税措置への対応や当面の物価高への対応を始め、経済財政運営に万全を期す。引き続き、経済・物価動向に応じた機動的な政策対応を行っていく。

 「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を確実なものとするよう、物価上昇を上回る賃上げを起点として、国民の所得と経済全体の生産性を向上させる。地域の中堅・中小企業の最低賃金を含む賃上げの環境整備として、適切な価格転嫁や生産性向上、経営基盤を強化する事業承継・M&Aを後押しするなど、施策を総動員する。

 このため、「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」*270*及び令和6年度補正予算並びに令和7年度予算及び関連する施策を迅速かつ着実に執行する。

 日本銀行には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。

2. 令和8年度予算編成に向けた考え方

① 当面のリスクへの備え・対応に万全を期すほか、賃上げ支援の施策を総動員するとともに、日本経済全国津々浦々の成長力を強化することによって、成長型経済への移行を確実にすることを目指す。

② 令和8年度予算は、本方針及び骨太方針2024に基づき、中期的な経済財政の枠組みに沿った編成を行う。ただし、重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない。

③ 地方創生2.0の推進、物価上昇を上回る賃金上昇の普及・定着、官民連携による投資の拡大、防災・減災・国土強靱化、防衛力の抜本的強化を始めとする我が国を取り巻く外交・安全保障環境の変化への対応、外的環境の変化に強い経済構造の構築、少子化対策・こども政策の着実な実施など、重要政策課題に必要な予算措置を講ずることによって、メリハリの効いた予算編成とする。

④ EBPM・PDCAを推進し、ワイズスペンディングを徹底する。「経済・財政新生計画」における重要課題への対応など、中長期視点に立った経済・財政・社会保障の持続可能性の確保に向けた取組を進める。



{*1* 「2024春季生活闘争第7回(最終)回答集計結果」(2024年7月3日日本労働組合総連合会公表)及び「2025春季生活闘争 第6回回答集計結果」(2025年6月5日日本労働組合総連合会公表)。}
{*2* 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(出生中位(死亡中位)推計)によれば、令和7 年から令和27年の20年間において、生産年齢人口(15~64歳)は約1,478万人減少する見込み。}
{*3* 「経済財政運営と改革の基本方針2024」(令和6年6月21日閣議決定)。}
{*4* 令和7年6月13日閣議決定。}
{*5* 「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」(令和7年6月13日閣議決定)。}
{*6* 工事・製造その他の請負契約において、最低の価格で申込みをした者が、その価格では契約に適合した履行がされないおそれがある場合に、その者が契約の相手方として適当か否かを調査し、不適当であると認める場合には、その者を落札者としないこととすることができる制度。}
{*7* 工事・製造その他の請負契約において、あらかじめ最低制限価格を設けた上で、当該価格以上の価格で申込みをした者のうち、最低の価格で申し込んだ者を落札者とする制度。}
{*8* 令和7年4月22日閣議決定。}
{*9* 義務的経費への対応、地方財政計画への計上及び地方財政措置の実施を含む。}
{*10* 関連する資格を有する者に見合った適切な公共工事設計労務単価の設定を行うことを含む。}
{*11* 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和31年法律第120号)。}
{*12* 令和5年11月29日に、内閣官房及び公正取引委員会が策定・公表。}
{*13* 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)。}
{*14*特許庁、独立行政法人工業所有権情報・研修館、日本弁理士会及び中小企業庁が、日本商工会議所と連携して中小企業・小規模事業者を知的財産の観点から支援する枠組み。}
{*15* 都市部の経営人材が、副業・兼業の形式で週に1回程度、地方の中小企業等の経営に関与すること。}
{*16* 事業承継による世代交代の停滞や地域経済の成長への影響に係る懸念も踏まえ、事業承継の在り方については今後も検討する。}
{*17* デジタル技術等も活用して、現在よりも高い賃金を得るエッセンシャルワーカー。}
{*18* リ・スキリングに関するプラットフォームの活用を含む。}
{*19*令和6年8月28日に、内閣官房、経済産業省及び厚生労働省が策定・公表。}
{*20* 令和4年8月30日に、非財務情報可視化研究会が策定・公表。}
{*21* 短時間正社員制度、勤務地限定正社員制度など、勤務時間、勤務地、職種・職務等を限定した制度。}
{*22* 生活困窮、障害、ひきこもり、疾病、刑務所出所者であること等により就労が困難な状況にある者。}
{*23* 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)。}
{*24* この点に関し、人事院において、官民給与の比較対象となる企業規模の見直しについて、検討がなされている。}
{*25* 資金繰りが悪化している又は今後悪化するおそれがあり、将来の事業継続に問題を抱えているなど、金融支援(条件変更、 債務減免等)を必要とする事業者層。}
{*26* 連続的なM&Aによる集約化・統合。}
{*27* 信用保証付融資において、一定の要件を備えた中小企業者が保証料率の上乗せを条件として、経営者保証を提供しないこ とを選択できる制度。}
{*28* 令和7年3月17日に、経済産業省、金融庁及び財務省が策定・公表。}
{*29* 人口減少地域では、地域社会に不可欠なサービスの供給が困難になりつつあることを踏まえ、省力化・デジタル化、協同 化等の生産性向上を図り、サービス供給を維持・発展させることに取り組む協同組合や住民出資会社等を主体とした新たな 共助型事業体。}
{*30* 「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」(令和5年6月22日に、中小企業庁が公表)を踏まえた、経営者が行 う人材確保・定着・活用に対する支援。}
{*31* 令和7年3月25日閣議決定。}
{*32* 産は産業界、官は地方公共団体や国の関係機関、学は大学等の教育機関、金は金融機関、労は労働団体等、言は報道機関、 士は士業等をそれぞれ指す。}
{*33* 異なる分野や領域に属する要素同士を従来にはなかった形で組み合わせること。}
{*34* 暮らしに必要なサービスが持続的に提供される、日常の生活や経済の実態に即した圏域。}
{*35* 人中心の居心地が良く歩きたくなるまちなかづくりの推進を含む。また、公園の利活用、渋滞対策、通学路等の交通安全 対策、自転車の活用推進、各種サービス集約拠点としての郵便局の活用等に取り組む。}
{*36* 地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律(令和6年法律第18号)に基づく。}
{*37* 自然資本等に関するデータの整備やその情報発信、国際ルール形成の主導を含む。}
{*38* 令和7年5月30日国土交通省「交通空白」解消本部決定。}
{*39* 現在、必要な調査等を進めており、未着工区間の早期整備に向けて取組を進める。北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)については、現時点の開業見通しには相当程度の不確実性が残るため、トンネルの貫通に一定の目途が立った段階で、改めて全体工程を精査するとともに、工程等にも工夫を凝らし、一日も早い完成・開業を目指す。また、開業の遅れによる影響への対応について、沿線自治体等からの聴取により丁寧に取り組む。}
{*40* 国内航空のあり方に関する有識者会議」において、国内線事業の構造改革のための方策について検討する。}
{*41* 2016年、建設主体の当時の2045年の東京・大阪間の開業想定時期について最大8年間前倒し(最速2037年)を図るため、 財政投融資を活用して2016~2017年の2年間で3兆円の長期・固定・低利の貸付けを行った。}
{*42* 流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(令和6年法律第23号)。}
{*43* 山小屋・登山道の維持保全やロングトレイルの活用を含む。}
{*44* 地方空港を含むグランドハンドリング・保安検査等の空港業務における人材確保・育成、処遇改善等の取組の推進を含む。}
{*45* 通信の低遅延性、大容量、低消費電力のサービスが実現し、デジタルインフラ立地制約の緩和が期待される。}
{*46* 地域活性化起業人や特定地域づくり事業協同組合の活用を含む。}
{*47* 沖縄の経済界や地元自治体による将来の基地返還跡地と那覇空港との一体的な利用を目指す構想。}
{*48* 令和6年3月12日閣議決定。}
{*49* 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律(令和6年法律第44号)。}
{*50* 「食料・農業・農村基本計画」(令和7年4月11日閣議決定)。}
{*51* カントリーエレベーター等の再編・集約化等に関する産地負担の引下げ、手厚い地方財政措置を含む。}
{*52* サプライチェーン関係者の協議により、原材料費や労務費等の費用を考慮した価格形成に資するコスト指標を作成・公表し、取引に活用する取組を進める。}
{*53* 「文化財の匠プロジェクト」(令和3年12月24日文部科学大臣決定、令和4年12月16日改正)を踏まえた修理技術者等の賃上げを含む人材確保の推進及び国立文化財修理センターの整備、高松塚古墳壁画保存管理公開活用施設(仮称)の整備の推進、皇居三の丸尚蔵館の全面開館、収蔵品の地方展開等の文化財の公開・活用等を含む。}
{*54* 令和7年6月10日策定(経済産業省、中小企業庁、内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局、公正取引委員会、文部科学省、文化庁、国土交通省)。}
{*55* 日本パラスポーツ協会や全日本ろうあ連盟、スペシャルオリンピックス日本等との連携を含む。}
{*56* インテグリティ確保等の競技者の環境整備を含む。}
{*57* 2025年1月27日に開催された「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」において、経団連会長から当該目標が表明され、総理からこの目標実現に向けて官民一体で取り組んでいく旨の発言がなされた。}
{*58* いずれも令和7年2月18日閣議決定。}
{*59* 太陽光の吸収波長帯の異なる材料を積層させ、高効率な光電変換を行う太陽電池。}
{*60* 再生可能エネルギーの導入拡大やデータセンターを始めとする局地的な電力需要の増大を見据えた整備。}
{*61* ディマンド・リスポンスの略称。電力需要を制御することによって、電力需給バランスを調整する仕組み。}
{*62* 革新軽水炉、小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、フュージョンエネルギー。}
{*63* 水素、アンモニア、合成燃料、合成メタン。}
{*64* 水素ステーションを含む。}
{*65* Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(二酸化炭素の回収・有効利用・貯留)の略。}
{*66* Carbon dioxide Capture and Storage(二酸化炭素の回収・貯留)の略。}
{*67* J-クレジットの活用、ブルーインフラ(藻場・干潟等及び生物共生型港湾構造物)の保全・再生・創出を通じたブルー カーボン(海洋生態系によって吸収・固定される二酸化炭素由来の炭素)の活用を含む。}
{*68* 廃棄物等を海外からも回収・集中処理し、製造業者に高品質な再生材を安定供給する資源循環ネットワークや国内拠点の 構築を含む。}
{*69* GX経済移行債等とカーボンプライシングによる投資先行インセンティブにより、GX投資を加速させる考え方。}
{*70* 通常の国債(建設国債等)と同様に統合発行することに限らず、個別銘柄としても発行。}
{*71* グリーン・ファイナンス、サステナブル・ファイナンスを含む。}
{*72* 安定的に水素等の受入れや供給を可能にするカーボンニュートラルポートを含む。}
{*73* 燃料電池鉄道車両、ゼロエミッション船、次世代航空機を含む。}
{*74* 建設から解体までのライフサイクル全体でのCO2排出量の評価(Life Cycle Assessment)。}
{*75* 2050年カーボンニュートラルの実現に向け、国民の行動変容・ライフスタイル転換を後押しするための新しい国民運動。}
{*76* 温室効果ガス(GreenHouse Gas)。}
{*77*アジアや欧米の民間金融機関により2021年9月に立ち上げられたアジア・トランジション・ファイナンス・スタディ・グ ループ、アジアの金融当局や金融機関の参画を得て2024年10月に設立されたアジアGXコンソーシアムにおける取組を含む。}
{*78* 二国間クレジット制度(JCM:Joint Crediting Mechanism)。}
{*78* ブロックチェーン技術を基盤とするNFT(Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略称)を含む。}
{*80* 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和7年6月13日閣議決定)。}
{*81* Data Free Flow with Trust(信頼性のある自由なデータ流通)の略称。}
{*82* 事業者が行政手続を行う際に手続情報の取得や申請準備を円滑に行えるよう支援するポータルサイト。}
{*83* 令和7年5月23日に、総務省が策定・公表。}
{*84* 令和6年6月18日デジタル行財政改革会議決定。}
{*85* 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和7年法律第53号)。}
{*86* 「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」(令和7年5月27日デジタル社会推進会議幹 事会決定)。}
{*87* AI Safety Institute(AIセーフティ・インスティテュート)の略称。}
{*88* 令和7年6月3日知的財産戦略本部決定。}
{*89* 当該取組が同交付金の重点配分事業の一つであることを明確化する。}
{*90* 令和7年6月13日デジタル行財政改革会議決定。}
{*91* 官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)。}
{*92* 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)。}
{*93* 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和6年6月21日閣議決定)。}
{*94* 「医療DXの推進に関する工程表」(令和5年6月2日医療DX推進本部決定)。}
{*95* Personal Health Record。}
{*96* 医療機器のサイバーセキュリティ対策を含む。}
{*97* 義務教育段階からの体系的なデジタル教育の推進を含む。}
{*98* 令和7年6月13日に、デジタル庁、総務省、文部科学省及び経済産業省が改定・公表。}
{*99* 本ロードマップに基づく運輸安全委員会における事故原因究明体制の構築に向けた検討を含む。}
{*100* 通院・介護、通勤・通学、買物等の移動の足確保が困難な住民が存在する地域など。}
{*101* AI、IoT、自動化技術を組み合わせた荷役機械等による生産性と労働環境を両立するコンテナターミナル化を目指す 取組。}
{*102* 港湾全体の生産性向上及び災害時支援の高度化のための関連手続を電子化するデータプラットフォーム。}
{*103* 全国の自治体から収集した災害情報等を報道機関等に一斉に配信し、迅速かつ効率的に住民に伝達するためのシステム。}
{*104* 災害時保健医療福祉活動支援システム。災害時の医療施設や避難所、支援者等の情報を集約し関係者に情報提供する。}
{*105* Central Bank Digital Currencyの略。}
{*106* CBDCに関する関係府省庁・日本銀行連絡会議「中間整理」(令和6年4月17日)及び「第2次中間整理」(令和7年 5月22日)。}
{*107* 令和5年6月13日閣議決定。}
{*108* 令和7年3月25日宇宙政策委員会。}
{*109* 火星を視野に月での持続的な活動を目指す、米国提案の国際宇宙探査。我が国は2019年10月に参画を決定。}
{*110* 人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(平成28年法律第76号)。}
{*111* 令和6年4月26日総合海洋政策本部決定。}
{*112* 有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法(平成28年法律第33号)。}
{*113* 統計人材の育成を含む。}
{*114* 「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」(令和5年4月14日統合イノベーション戦略推進会議決定、令和7年 6月4日改定)、「マテリアル革新力強化戦略 ― 知のバリューチェーンの構築を通じて ―」(令和7年6月4日統合イノ ベーション戦略推進会議決定)。}
{*115* 令和4年11月28日新しい資本主義実現会議決定。}
{*116* 拠点都市のグローバル化を加速させるため、2025年1月に公募の上、第2期拠点都市として新たに選定を行うもの。}
{*117* 広域で複数の地方公共団体が公共調達を行うことを含む。}
{*118* 海外投資の呼び込みに向けた体制構築を含む。}
{*119* 外国組合員特例税制(PE課税特例)についての政策ニーズや課題を踏まえた措置の検討を含む。}
{*120* インフラ、VCを含むプライベートエクイティ(PE)又は不動産への投資。資産全体の5%が上限。}
{*121* 結果としての日本のPEファンドやVCへの投資のコミットメントの状況を含む。}
{*122* 他の投資家との連携を通じた投資手法の高度化、オルタナティブ投資資産の上限に向けた取組状況に対する毎年度の適切 な評価を含む。}
{*123* インパクト投資に関わる対話・発信の場として、2023年11月に発足。投資家、金融機関、企業、NPO、地方公共団体等 が参画。}
{*124* 明治32年法律第48号。}
{*125* 「貿易手続デジタル化に向けたアクションプラン 工程表」(令和6年6月25日貿易プラットフォームの利活用推進に向け た検討会とりまとめ)。}
{*126* 東アジア・アセアン経済研究センター(Economic Research Institute for ASEAN and East Asia)。}
{*127* 令和6年12月24日経協インフラ戦略会議決定。}
{*128* 高度専門人材及び中核的専門人材を中心とする。}
{*129* 「知的財産推進計画2025」(令和7年6月3日知的財産戦略本部決定)。}
{*130* 令和7年6月2日対日直接投資推進会議決定。}
{*131* 当該取組が同交付金の重点配分事業の一つであることを明確化する。}
{*132* 令和6年12月27日閣議決定。}
{*133* 金融グループの銀行・証券間で、顧客の非公開情報を顧客の同意を得ることなく共有することや利益相反となる行為を禁 止する規制。}
{*134* アセットオーナーの運用・ガバナンス・リスク管理に係る共通の原則。}
{*135* 令和7年6月6日閣議決定。}
{*136* 海岸の侵食対策、ため池の防災・減災対策及びグリーンインフラの活用推進を含む。}
{*137* 平時と災害時の境界をなくし、平時の生活を充実させることで災害時の生活も充実させるという考え方。}
{*138* 地方整備局等、地方運輸局、国土地理院、気象庁、研究機関等の災害対応を行う体制・機能及び職員の活動環境・処遇を 含む。}
{*139* 「災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する計画」(令和7年3月18日閣議決定)に基づく。}
{*140* 「「第2期復興・創生期間」以降における東日本大震災からの復興の基本方針」(令和6年3月19日閣議決定)。}
{*141* 令和3年度から令和7年度。}
{*142* 令和7年6月6日に、復興庁、経済産業省及び福島県が改定・公表。}
{*143* 震災・原子力発電所事故の被災地域をフィールドとした福島県が推進する学びの旅のこと。}
{*144* 活動火山対策特別措置法(昭和48年法律第61号)。}
{*145* 災害対策基本法等の一部を改正する法律(令和7年法律第51号)。}
{*146* 令和7年2月7日の日米首脳会談において、両首脳は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて緊密に協力し、 日米同盟を新たな高みに引き上げていくことを確認。中国を巡る諸課題について意見交換を行い、東シナ海や南シナ海等に おけるあらゆる力又は威圧による一方的な現状変更の試みに反対することを確認し、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調。}
{*147* ASEAN及び印との連携強化のほか、アフリカ開発会議(TICAD)、太平洋・島サミット(PALM)及び「中央 アジア+日本」対話の枠組みを主導することを含む。}
{*148* 独立行政法人国際協力機構法の一部を改正する法律(令和7年法律第21号)。}
{*149* 令和7年1月24日の内閣総理大臣施政方針演説では、「拉致被害者や御家族が御高齢となる中で、時間的制約のある、ひ とときもゆるがせにできない人道問題であり、政権の最重要課題」とされた。}
{*150* 「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」及び「防衛力整備計画」(令和4年12月16日国家安全保障会議決定及び閣議決定)。}
{*151* スタンド・オフ防衛能力、統合防空ミサイル防衛能力、無人アセット防衛能力、領域横断作戦能力、指揮統制・情報関連 機能、機動展開能力・国民保護、持続性・強靱性。}
{*152* 令和6年12月20日自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議決定。}
{*153* 防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律(令和5年法律第54号)。}
{*154* 令和4年12月23日閣議決定。}
{*155* 令和5年4月28日閣議決定。}
{*156* 令和4年12月16日海上保安能力強化に関する関係閣僚会議決定。}
{*157* 重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律(令和7年法律第42号)及び重要電子計算機に対する}
不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(令和7年法律第43号)。}
{*158* 令和7年5月29日サイバーセキュリティ戦略本部決定。}
{*159* 一定のセキュリティ基準によって、IoT製品の安全性を認証する制度(2025年3月運用開始)。}
{*160* 外交・情報・防衛・経済・技術の観点から総合的に政府に対して経済安全保障分野全般の政策提言を行うシンクタンク機能。}
{*161* 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和4年法律第43号)。}
{*162* 令和7年6月3日知的財産戦略本部決定。}
{*163* 外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)。}
{*164* 重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律(令和3年法律第84号)。}
{*165* C(Chemical:化学)B(Biological:生物)R(Radiological:放射性)N(Nuclear:核)E(Explosive:爆発性) 物質を使用したテロの総称。}
{*166* 特定のテロ組織等と関わりのないまま過激化した個人。}
{*167* 金融活動作業部会。Financial Action Task Forceの略称。}
{*168* 令和7年4月22日犯罪対策閣僚会議決定。}
{*169* 令和5年3月17日閣議決定。}
{*170* 更生保護施設への支援の充実、地方公共団体との連携強化等の施策を含む。}
{*171* 「犯罪被害者等施策の一層の推進について」(令和5年6月6日犯罪被害者等施策推進会議決定)を含む。}
{*172* 法教育の推進、公益的活動を担う若手・中堅法曹の活動領域の拡大に向けた必要な支援の検討を含む。}
{*173* 中央アジア等との連携強化を含む。}
{*174* 公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和7年法律第62号)。}
{*175* 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7 年法律第63号)。}
{*176* 令和6年7月2日閣議決定。}
{*177* 人間及び動物の健康並びに環境に関する分野横断的な課題に対し、関係者が連携してその解決に向けて取り組む、ワンヘ ルス・アプローチに基づき推進するもの。}
{*178* 令和5年5月30日花粉症に関する関係閣僚会議決定。}
{*179* 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律(令和7年法律第28号)。}
{*180* 令和6年4月15日に、環境省、農林水産省、林野庁、国土交通省及び警察庁が公表。}
{*181* PFASは、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物の総称。}
{*182* 障害や疾病等で援助が必要な家族等に援助を行うケアラーへの地方公共団体による支援等の取組。}
{*183* 地域運営組織(RMO:Region Management Organization)を含む。}
{*184* 旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律(令和6年法律第70号)。}
{*185* 令和6年12月27日障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部決定。}
{*186* 令和5年3月14日閣議決定。}
{*187* 駅におけるホームドアの整備等の交通分野、建築・施設分野のバリアフリー化。}
{*188* 令和4年10月14日閣議決定。}
{*189* 性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(令和5年法律第68号)。}
{*190* 「孤独・孤立対策に関する施策の推進を図るための重点計画」(令和6年6月11日孤独・孤立対策推進本部決定、令和7 年5月27日一部改定)。}
{*191* Social Impact Bondの略称。成果連動型民間委託契約方式による事業を受託した民間事業者が、当該事業に係る資金調達 を金融機関等の資金提供者から行い、その返済等を成果に連動した地方公共団体からの支払額等に応じて行うもの。}
{*192* 「新たな就職氷河期世代等支援プログラムの基本的な枠組み」(令和7年6月3日就職氷河期世代等支援に関する関係閣 僚会議決定)。}
{*193* 「女性活躍・男女共同参画の重点方針2025」(令和7年6月10日すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進 本部決定)。}
{*194* 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7 年法律第63号)。}
{*195* 時間や働く場の制約などリ・スキリング後も就労できない要因の調査と柔軟に働ける場の創出支援を検討する。}
{*196* 独立行政法人男女共同参画機構法案(令和7年3月14日閣議決定)。}
{*197* 女性特有のがんや骨粗しょう症、妊娠・出産・産後の不調、月経に由来する貧血等。}
{*198* 男性の更年期障害を含む。}
{*199* 性犯罪に対処するための「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(令和5年法律第66号)及び「性的な姿態を撮影 する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(令和5年法律第67 号)の周知徹底、被害申告の困難さその他性的な被害の実態に係る調査の着実な実施を含む。}
{*200* 令和6年9月13日閣議決定。}
{*201* 令和6年12月3日閣議決定。}
{*202* 「共生に向けた認知症早期発見・早期介入実証プロジェクト研究」の成果のとりまとめや、認知症や軽度認知障害の早期 発見・早期介入の実現に向けた取組を含む。}
{*203* 計画の対象期間は、2025年度から2030年度までの6年間。}
{*204* 社会保障関係費の伸びの要因として高齢化と高度化等が存在する。}
{*205* 令和7年度予算の非社会保障関係費は、近年の物価上昇率の変化を反映した令和6年度予算の増(+1,600億円程度)と同 水準を維持しつつ、公務員人件費の増により実質的に目減りしないよう、相当額(+1,400億円程度)を上乗せし、+3,000億 円程度とした。}
{*206* 所得税法等の一部を改正する法律(令和7年法律第13号)に基づく。}
{*207* 日本労働組合総連合会の集計によれば、現時点(第6回集計)で定期昇給を含む平均賃上げ率は5.26%(うちベースアッ プ 分 の み で 3 . 7 1 % )、 組 合 員 数 3 0 0 人 未 満 の 組 合 の 平 均 賃 上 げ 率 は 4 . 7 0 % ( う ち ベ ー ス ア ッ プ 分 の み で 3 . 5 1 % ) と な っ て い る 。}
{*208* 医療機関における必要な受診を確保し、こどもや慢性疾患を抱えている方、低所得の方の患者負担などに配慮しつつ、個 別品目に関する対応について適正使用の取組の検討や、セルフメディケーション推進の観点からの更なる医薬品・検査薬の スイッチOTC化に向けた実効的な方策の検討を含む。}
{*209* 普及推進策を検討し、各地域において地域フォーミュラリが策定されるよう取組を推進する。}
{*210* 人口減少等により不要となると推定される一般病床・療養病床・精神病床といった病床について、地域の実情を踏まえた 調査を行った上で、2年後の新たな地域医療構想に向けて、不可逆的な措置を講じつつ、調査を踏まえて次の地域医療構想 までに削減を図る。}
{*211* 医療・介護保険における負担への金融所得の反映に向けて、税制における金融所得に係る法定調書の現状も踏まえつつ、 マイナンバーの記載や情報提出のオンライン化等の課題、負担の公平性、関係者の事務負担等に留意しながら、具体的な制 度設計を進める。}
{*212* 詳細については、「自由民主党、公明党、日本維新の会 合意」(令和7年6月11日自由民主党・公明党・日本維新の会) を参照。}
{*213* 「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」(令和5年12月22日閣議決定)。}
{*214* 経営情報の提出、分析及び公表の電子化を含む。}
{*215* 介護支援専門員の更新研修の見直しを含む。}
{*216* 後期高齢者支援金を含む。}
{*217* 調整交付金や保険者努力支援制度その他の財政支援の在り方、現在広域連合による事務処理が行われている後期高齢者医 療制度の在り方、生活保護受給者の医療扶助の在り方の検討。}
{*218* 社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律(令和7年6月13日成 立)。また、今回の法律で決定した改正内容により、将来の所得代替率は、制度改正を行わない場合と比べて、令和6年財政 検証における成長型経済移行・継続ケースで1.3%、過去30年投影ケースで1.4%それぞれ上昇すると見込まれる。}
{*219* 令和5年9月27日全世代型社会保障構築本部決定。}
{*220* 「がん対策推進基本計画」(令和5年3月28日閣議決定)に基づく取組。}
{*221* 「循環器病対策推進基本計画」(令和5年3月28日閣議決定)に基づく取組。基盤整備及び研究推進や、後遺症支援を含む。}
{*222* 腎不全患者の緩和ケアを含む。}
{*223* イスタンブール宣言を踏まえた国内の臓器提供、臓器あっせんや移植実施の抜本的な体制整備を含む。}
{*224* アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎等を含む。)医療の均てん化促進等を含む。}
{*225* 小児の感染症を含む。}
{*226* 科学的知見に基づき女性の負担にも配慮した乳がん検診の推進などがん検診の受診率の向上に向けた取組を含む。}
{*227* 令和7年2月18日閣議決定。}
{*228* 医療系ベンチャー・トータルサポート事業(MEDical Innovation Support Office)。}
{*229* 介護分野におけるMEDISOと同様の相談窓口(CARe Innovation Support Office)。}
{*230* 2024・2025年度薬価改定において新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象となる革新的新薬について薬価を基本的に維 持したことを念頭に置いた革新的新薬の特許期間中の対応に関する創薬イノベーション推進の観点からの検討等。}
{*231* 日本薬局方収載医薬品の一部を含む。}
{*232* 「医療用等ラジオアイソトープ製造・利用推進アクションプラン」(令和4年5月31日原子力委員会決定)。}
{*233* ワクチン接種率向上及び薬剤耐性菌感染症対策に係る国際連携を含む。}
{*234* 「令和6年人口動態統計月報年計(概数)」(令和7年6月4日公表)。}
{*235* 令和5年12月22日閣議決定。}
{*236* 令和5年12月22日閣議決定。}
{*237* 令和7年6月6日こども政策推進会議決定。}
{*238* こども未来戦略」(令和5年12月22日閣議決定)に基づくこども・子育て支援加速化プラン。}
{*239* 実施に当たっては、多様な体験活動を推進すること。}
{*240* こども家庭庁「若者が主体となって活動する団体に関する調査研究」報告書。}
{*241* 幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン」(令和5年12月22日閣議決定)。}
{*242* 令和5年12月22日閣議決定。}
{*243* 児童福祉法等の一部を改正する法律(令和7年法律第29号)。}
{*244* 令和7年5月22日プレコンセプションケアの提供のあり方に関する検討会決定。性別を問わず、適切な時期に、性や健康 に関する正しい知識を持ち、妊娠・出産を含めたライフデザイン(将来設計)や将来の健康を考えて健康管理を行う概念で あるプレコンセプションケアについて、5か年計画を決定。}
{*245* 学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(令和6年法律第69号)。}
{*246* 永続的な家族関係をベースにした家庭という育ちの場を保障すること。}
{*247* 遅くとも2029年度までに乳幼児の里親等委託率75%以上を目標としている。}
{*248* 民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)。}
{*249* 「自由民主党、公明党、日本維新の会 合意」(令和7年2月25日)、「三党合意に基づくいわゆる高校無償化に関する 論 点 の 大 枠 整 理 」( 令 和 7 年 6 月 1 1 日 自 由 民 主 党 ・ 公 明 党 ・ 日 本 維 新 の 会 無 償 化 を 含 む 、 多 様 で 質 の 高 い 教 育 の 在 り 方 に 関 す る 検 討 チ ー ム )、「 「 給 食 無 償 化 」 に 関 す る 課 題 の 整 理 に つ い て 」( 令 和 6 年 1 2 月 2 7 日 文 部 科 学 省 ) 等 。}
{*250* 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和33年法律第116号)。}
{*251* 福祉との連携のための個別の支援計画の情報共有を含む。}
{*252* SC:スクールカウンセラー、SSW:スクールソーシャルワーカー。}
{*253* スクールガード・リーダーの推進やスクールバスの活用などによる通学時の安全対策を含む。}
{*254* 学校施設の防災機能強化と一体的な老朽化対策の実施を含む。}
{*255* 教師等の人材が不足している分野における人材派遣の仕組みの構築を含む。}
{*256* 目標の実現に当たっては、外国人留学生の出身国・地域の多様性に留意する。}
{*257* 大型放射光施設SPring-8、NanoTerasu、スーパーコンピュータ「富岳」等。}
{*258* 生物・医学、素粒子物理学、天文学、情報学といった、世界の学術フロンティアなどを先導する国際的なものを含む。 259 寄付等の多様な財源の活用も含めたキャンパスの共創拠点の更なる整備も含む。}
{*260* 日本学術会議法(令和7年6月11日成立)。}
{*261* Building Information Modelingの略称。関係者のデータ共有等により建設生産・管理システム全体を効率化。}
{*262* 国土交通データプラットフォームや、データ整備・利活用によりEBPM・ビジネス創出に取り組むProject LINKS等。}
{*263* 資機材としての作業船の確保を含む。}
{*264* 「PPP/PFI推進アクションプラン(令和7年改定版)」(令和7年6月4日民間資金等活用事業推進会議決定)。}
{*265* 「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」(令和7年6月6日所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会 議決定)に基づく。}
{*266* 併せて、人口減少等の地域の状況を踏まえつつ、浄化槽を含む汚水処理施設の利活用に取り組む。}
{*267* 骨太方針2024においては、2025年度から2027年度までの3年間について、交付団体を始め地方の安定的な財政運営に必要 となる一般財源の総額について、2024年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保することとされてい る(第3章第1節(「経済・財政新生計画」に基づく今後の取組方針)も参照)。}
{*268* 「基金の点検・見直しの横断的な方針について」(令和5年12月20日行政改革推進会議決定)。}
{*269* 長年据え置かれてきた公的制度の基準額や閾値の例として、交通遺児育成給付金、子どもの学習・生活支援事業(生活困 窮者自立支援制度)、食事支給に係る所得税非課税限度額、マイカー通勤に係る通勤手当の所得税非課税限度額が存在し、 これらについては速やかに見直しを行う。}
{*270* 令和6年11月22日閣議決定。}