[文書名] 佛國及淸國間ノ追加通󠄁商條約(フランス国及清国間の追加通商条約)
千八百八十七年六月二十六日北京ニ於テ署名(佛文)
佛蘭西共和國大統領及淸國皇帝陛下ハ兩國ノ通󠄁商關係ノ發達ヲ助ケ且千八百八十六年四月二十五日天津ニ於テ署名セラレタル條約ノ良好ナル實施ヲ確保セムト欲シ該條約ニ含マルル若干ノ條項ヲ變更スル附加條約ヲ締結スルコトニ決シタリ
之カ爲兩締約國ハ左ノ如ク其ノ全權委員ヲ任命シタリ
佛蘭西共和國大統領
代議員議員前內務大臣前宗敎大臣政府委員在
淸國佛蘭西共和國特派使節
エルネスト・コンスタン
淸國皇帝陛下
二等親王管理總理衙門 慶親王
副使 總理衙門大臣工部左侍郎
孫
右各全權ハ相互ニ其ノ全權委任狀ヲ示シ之カ良好妥當ナルヲ認メタル後左ノ諸條ヲ協定セリ
第一條 千八百八十六年四月二十五日天津ニ於テ署名シタル條約ハ批准交換後直ニ其ノ凡テノ條款ヲ忠實ニ實施スヘシ
但シ本條約ニ依リ變更セラルヘキモノハ固ヨリ此ノ限ニアラス
第二條 千八百八十六年四月二十五日ノ條約第一條ノ實施ニ當リ兩締約國ハ廣西省龍州及雲南省蒙自ノ兩都府カ佛安通󠄁商ニ對シ開放セラルヘキコトヲ約定ス又老開水路上蒙自附近ニ在ル蠻?耗モ亦龍州及蒙自ト等シク開市場タルヘク且佛蘭西共和國政府カ蒙自ニ領事官憲ヲ駐在セシムルノ權利ヲ有スヘキコトヲ約定ス
第三條 淸國及東京間ノ通󠄁商ヲ最モ迅速ニ發達セシムルカ爲千八百八十六年四月二十五日ノ條約第六條及第七條ニ定ムル輸入輸出税ヲ一時左ノ如ク變更ス
開市場ニ依リ淸國ニ輸入セラルル外國商品ハ海關一般税率ヨリ其ノ十分ノ三ヲ低減シタル輸入税ヲ課セラルヘキモノトス
東京ニ於テ輸出セラルル淸國商品ハ海關一般税率ヨリ其ノ十分ノ四ヲ低減シタル輸出税ヲ課セラルヘキモノトス
第四條 淸國原產ノ生產品ニシテ千八百八十六年四月二十五日ノ條約第十一條第一項ニ依リ輸入税ヲ納󠄁入シ且東京ヲ通󠄁シテ安南國港津ニ向テ輸送セラルルモノカ淸國以外ノ國ニ仕向ケラルルトキハ該港津ヲ出ツルニ際シ佛安税關税率ノ定ムル輸出税ヲ課セラルヘキモノトス
第五條 淸國政府ハ一「ピルク」若ハ百淸國斤ニ付二十兩ノ輸出税ヲ徵收シテ東京原產阿片ノ陸境ニ依ル輸出ヲ許可ス佛國人若ハ佛國保護民ハ龍州、蒙自蠻耗ニ於ケル外阿片ヲ購買スルコトヲ得ス內國商人ノ支拂フヘキ釐金税及入市税ハ一「ピクル」ニ付二十兩ヲ超ユルヲ得サルモノトス
淸國商人ニシテ國內ヨリ阿片ヲ持來ルモノハ商品ト同時ニ購買者ニ對シテ釐金税全額ノ納󠄁入ヲ證明スヘキ受領證ヲ手交スヘシ購買者ハ輸出税ノ納󠄁入ヲ爲スヘシ
該阿片カ陸境若ハ開港場ニ依リ再ヒ淸國ニ入ルトキハ之ヲ淸國原產再輸入生產品ト同視スルコトヲ得ス
第六條 佛國及安南國船舶ハ軍艦及軍隊、武器若ハ火藥ノ輸送ニ用ヒラルルモノヲ除キ諒山ヨリ「カオ・バング」ニ且諒山及龍州間竝龍州及「カオ・バング」間ヲ囘航スルコトヲ得ヘキモノトス
此等船舶ハ各航行毎ニ一噸ニ付百分ノ五兩ノ噸税ヲ課セラル但シ其ノ載貨ハ如何ナル税ヲモ課セラルルコトナキモノトス
淸國仕向ノ商品ハ本條第一項ニ定ムル河川竝陸路及就中諒山ヨリ龍州ニ至ル官道ニ依リ之ヲ輸送スルコトヲ得但シ淸國政府カ國境ニ税關ヲ設置スルニ至ルマテ陸路ニ依リテ輸送セラルル商品ハ龍州ニ於テ納󠄁税シタル後ニアラサレハ之ヲ販賣スルコトヲ得ス
第七條 佛國カ將來淸國及淸帝國南部竝南西部ニ在ル諸國間ノ政治通󠄁商關係ヲ定ムルコトヲ目的トスル條約及協約ニ依リ最惠國ニ許與セラルヘキ一切ノ特權免除(其ノ性質ノ如何ヲ問ハス)竝通󠄁商上ノ利益ヲ當然ニ且事前協商ノ要ナク享受スヘキコトヲ約定ス
第八條 兩國全權委員ハ共同ノ協定ニ依リ前記ノ諸條項ヲ定メタル後本條約佛文二通󠄁竝各通󠄁附屬ノ支那文譯文ニ記名調印セリ
第九條 本追加條約ノ規定ハ千八百八十六年四月二十五日ノ條約中ニ挿入セラレタルト等シク該條約及協約ノ批准交換ノ日以後實施セラルヘキモノトス
第十條 本條約ハ淸國皇帝陛下ニ依リ直ニ批准セラルヘク而シテ佛蘭西共和國大統領ニ依リ批准セラレタル後北京ニ於テ批准交換ヲ行フヘシ
千八百八十七年六月二十六日北京ニ於テ之ヲ作ル
コンスタン(署名
慶親王(署名)