[文書名] 東京電信線ト淸國電信線トノ接續ヲ目的トスル條約（東京電信線と清国電信線との接続を目的とする条約）
千八百八十八年十二月一日芝罘ニ於テ署名
（佛、支文 但シ佛文ヨリ之ヲ譯ス）
佛蘭西共和國政府及淸帝國政府ハ國際電信ノ送達ヲ容易ナラシメムコトヲ冀望シ東京電信線ト淸國電信線トノ接續ヲ目的トスル條約ヲ締結セムコトヲ決シ依テ右條約ヲ商議シ且署名セムカ爲左ノ如ク特命全權委員ヲ任命セリ
佛蘭西共和國政府
天津駐在一等領事「シュヴァリエ、ドゥ、ロルドゥル、ナショナル、ドゥ、ラ、レジオン、ドヌール」「コンマンドゥール、ドゥ、ロルドゥル、ドュ、ドゥブル、ドゥラゴン、ドゥ、シーヌ」 ポール、リステルウェーベル氏
淸帝國政府
地方財務官登州、雷州及錦州巡察竝軍事法政監督官芝罘海稅關監督官淸國電信政廳長官蒸氣航行淸國會社總支配人 盛宣懐
右各委員ハ其ノ全權委任狀ヲ示シ之カ良好妥當ナルヲ認メタル後左ノ諸規定ヲ協定セリ
第一條
佛國電信線及淸國電信線ハ左記ノ方法ニ依リ國際的通信ヲ送達スルノ目的ヲ以テ東京ト淸國トノ境界ニ於テ連接セラルヘシ
第二條
右接續ハ左記電信局間ニ設定セラルヘシ
（イ）東京ニ於ケル「ドンダン」ノ佛國電信局ト廣西省ニ於ケル鎭南關ノ淸國電信局トノ間
（ロ）東京ニ於ケル孟高ノ佛國電信局ト廣東省ニ於ケル湯杭ノ淸國電信局トノ間
（ハ）東京ニ於ケル勞開ノ佛國電信局ト雲南省ニ於ケル蒙自ノ淸國電信局トノ間
本條約カ淸國政府ノ承認ヲ受ケタルトキハ直チニ「ドンダン」ト鎭南關トノ間ノ接續ニ取掛ルヘシ
一方孟高湯杭間ノ接續及地方勞開蒙自間ノ接續ハ右承認カ附與セラレタル後十八月ノ期間內ニ設定セラルヘシ
第三條 佛國電信政廳及淸國電信政廳ハ接續線ヲ設定シ之ヲ良好ナル狀態ニ於テ維持連絡セシムヘシ各締結國ハ其ノ自國版圖內ニ於ケル各種ノ物件ニ對シテ爲サルヘキ出費ノ負擔ニ任スヘク且各版圖ノ限界カ嚴密ニ尊重セラルルコトヲ監視スヘシ
前條ニ列擧セラレタル電信局ハ接續線ノ直通線條ヲ使用シテ電信ノ送達ヲ確保スルコトヲ要ス
第四條
國際電信條約執務規則中歐羅巴以外ノ制度ニ關シ制定セラレタル規定ハ地上接續線ニ依リ送達セラルル電信技術上ノ取扱ニ關シ遵守セラルヘシ尤モ一方淸國及他方東京、安南、交趾支那及柬蒲塞間ノ地上接續線ニ依リ交換セラルル電信ノ用語ニ關シテハ國際電信條約執務規則中ニ制定セラレタル歐羅巴制度ノ法則ヲ適用スヘシ
第五條
各締約國ハ其ノ版圖ノ境界ニ到ル迄其ノ各自ノ電信線ニ依ル通信ノ送達ノ爲ニ徵收スヘキ料金ヲ定ム尤モ本條約ノ期間內ハ第六條ニ定ムル料金ハ之ヲ増加スルコトヲ得サルヘク又同期間內ハ各締約國ハ適當ト認ムルトキ其ノ各自ノ料金ヲ削減スルノ權能ヲ有スヘキモノトス
第六條
第二條ニ揭クル接續線ニ依リ交換セラルル通信ヨリ一語毎ニ徵收スル料金ハ左ノ通リ之ヲ定ム
佛國電信政廳ニ依リ徵收セラルル料金
（イ）、最終料金
淸國境界ノ陸上通路ニ依リ左ノ各所ト交換セラルル一切ノ通信ニ付テハ
一、東京 〇、一五法
二、安南 〇、三〇法
三、交趾支那及柬蒲塞 〇、四五法
（ロ）、通過料金
淸國境界ト左ノ各所トノ間ニ交換セラルル一切ノ通信ニ付テハ
一、陸上通路ニ依ル他ノ境界〇、五〇法
二、左記各所ニ著陸スル海底電信線
（イ）海防 〇、二〇法
（ロ）順化 〇、三〇法
（ハ）西貢 〇、五〇法
淸國電信政廳ニ依リ徵收セラルル料金
（イ）、最終料金
一、一方東京、安南、交趾支那、柬蒲塞及暹羅ト他方左ノ各所トノ間ニ東京ノ境界ニ於テ交換セラルル通信ニ付テハ
（イ）廣東、廣西及雲南ノ諸地方ノ一切ノ電信局 〇、七五法
（ロ）羊雜又ハ羊雜ノ南方ニ在ル其ノ他一切ノ電信局 一、二五法
（ハ）朝鮮ニ存在スルモノヲ除キ羊雜ノ北方ニ在ル一切ノ電信局 二、二五法
（ニ）朝鮮ニ於ケル淸國ノ電信局 二、五〇法
二、淸國ト歐羅巴又ハ歐羅巴以外ニ在ル諸国トノ間ニ東京ノ境界ニ於テ交換セラルル通信ニ付テハ 五、五〇法
三、他ノ諸國ト左ノ各所トノ間ニ東京ノ境界ニ於テ交換セラルル通信ニ付テハ
（イ）廣東、廣西及雲南ノ各地方ノ一切ノ電信局 一、〇〇法
（ロ）羊雜又ハ羊雜ノ南方ニ在ル其ノ他一切ノ電信局 一、五〇法
（ハ）朝鮮ニ存在スルモノヲ除キ羊雜ノ北方ニ於ケル一切ノ電信局 二、二五法
（ニ）朝鮮ニ於ケル淸國ノ電信局 二、五〇法
（ロ）、通過料金
一、歐羅巴ト歐羅巴以外ノ諸國トノ間ニ一方東京ノ境界ニ於テ他方其ノ他一切ノ境界ニ於テ交換セラルル通信ニ付テハ 五、五〇法
二、左ノ各所ト東京ノ境界ニ於テ交換セラル一切ノ通信ニ付テハ
（イ）香港 〇、七五法
（ロ）澳門、福州及上海 一、二五法
（ハ）其ノ他一切ノ境界 二、五〇法
第七條
前條所説ノ佛國及淸國ノ電信局ノ名稱ヲ揭クル一覽表ハ之ヲ本條約ノ附屬書トス
第八條
電信ノ發信人カ其ノ電信ノ送達セラルルコトヲ希望スル通路ヲ特ニ指定セサルトキハ低率ニ於テ一切ノ通信ハ又同率ニ於テ通信ノ尠トモ半數ハ本條約第二條ニ記載スル接續線ニ依リ發送セラルルコトヲ要ス
第九條
送達セラレタル通信ノ計算ハ毎日之ヲ締切リ且電信ヲ以テ局ヨリ局ニ吿知スヘシ
決算ハ毎月末ニ行ハルヘシ計算ヨリ生スル殘高ハ之ト關係アル月ヨリ十日以內ニ西貢ニ於ケル佛國電信政廳及上海ニ於ケル淸國電信政廳ニ支拂ハルヘシ
決算ニ關シ交換セラレタル電信ハ執務用電信ト看做サルヘシ月ハ歐羅巴曆ニ從ヒ計算セラルヘシ
第十條
支拂ハ一法ニ付二千六百（二六〇〇）「ピアストゥル」」ノ割合ヲ以テ墨西哥「ピアストゥル」ヲ以テ實行セラルヘシ
第十一條
署名ノ交換後直チニ本條約ハ之ヲ淸國政府ノ承認ニ付スヘク右ノ承認カ與ヘラレタルトキヨリ本條約ハ實施セラルヘク且十五年間依然效力ヲ有スヘシ右ノ時期以後ハ締約國中ノ一國カ六月前ニ本條約ニ修正ヲ加ヘ又ハ其ノ效力ヲ終止セシムルノ意向ヲ豫吿セサル限リ本條約ハ引續キ拘束力ヲ有スヘキモノトス
尤モ本條約期間滿了前ニ歐羅巴及歐羅巴以外ノ諸國ニ向ヒ又ハ之ヨリ來ル交信ノ爲ノ最終料金及通過料金ニ關スル限リ現ニ淸國政廳ト「グレート・ノーザン」及「イースターン・エキステンシオン」兩會社トカ關係ヲ有スルモノトシタル協定ニ修正カ加ヘラルヘキ場合佛國電信政廳ハ右ノ料金ニ付當然該修正ニ基ク一切ノ削減ヲ爲スコトヲ得ヘキモノトス
第十二條
東京ニ於ケル勞開ノ佛國電信局ト雲南省內ノ蒙自ノ淸國電信局トノ間ノ接續線ハ十八月ノ期間內ニ限リ架設セラルヘキモノナルニ依リ雲南ニ向ヒ又ハ之ヨリ來ル電信ハ接續ノ時ニ至ル迄ニ本條約六條ノ（イ）ノ一ノ（ロ）及（イ）ノ三ノ（ロ）ノ諸項中ニ逐字ニ規定セラレタル一、二五法および一、五〇法ノ最終料金ヲ完濟スルコトヲ要ス
千八百八十八年十二月一日卽チ光緖十四年十月二十八日芝罘ニ於テ本書八通ヲ作リ中四通ハ佛蘭西語ヲ以テ四通ハ支那語ヲ以テ之ヲ作ル
ベー、リステルウェーベル 印
盛宣懐 印