[文書名] 佛國郵政廳及淸國郵政廳間ニ設定セル關係ヲ規定スル協定（仏（フランス）国郵政庁及清国郵政庁間に設定せる関係を規定する協定）
千九百年二月三日
第一條 郵便物ノ交換
一 佛國郵政廳ト淸國郵政廳トノ間ニハ現ニ施設セラレ又ハ將來施設セラルヘキ通常又ハ特別ノ遞送方法ニシテ各郵政廳ノ使用シ得ルモノニ依ル各種郵便物（普通、書留、國際及繼越、開嚢又ハ閉嚢）ノ定時交換アルヘシ
二 兩國郵政廳間ニ於ケル郵便物ノ交換ハ淸國二設置スル佛國郵便局及該郵便局ト同一地方ニ設置スル淸國郵便局ヲ經由シテ之ヲ爲スヘシ但郵便ノ必要ニ依リ協議ヲ以テ定ムル他ノ郵便局ニ於テ郵便物ノ交換ヲ爲スコトヲ妨ケス
第二條 郵便物ノ遞送
一 淸國郵便局ハ淸國內又ハ淸國外ニ設置スル淸國、佛國又ハ外國ノ郵便局ニ宛ツル閉嚢又ハ開嚢郵便物ヲ佛國郵便局ヨリ受取リ淸國郵政廳ノ施設シ得ヘキ一切ノ遞送方法ニ依リ名宛地ニ之ヲ遞送スルノ處置ヲ爲スヘシ
二 佛國郵便局ハ淸國內又ハ淸國外ニ設置スル淸國、佛國又ハ外國ノ郵便局ニ宛ツル閉嚢又ハ開嚢郵便物ヲ淸國郵便局ヨリ受取リ佛國郵政廳ノ施設シ得ヘキ一切ノ遞送方法ニ依リ名宛地ニ之ヲ遞送スルノ處置ヲ爲スヘシ
三 各郵政廳ハ郵便物遞送ノ爲ニ設ケラルヘキ普通若ハ特別ノ遞送制度實施ノ費用ヲ負擔スヘシ但各郵政廳ニ於テ本約定第五條ニ定ムル繼越料ノ徵收ヲ請求スルノ權利ヲ有ス
第三條 郵便物ノ引渡
一、一郵政廳ヨリ他郵政廳ヘノ閉嚢又ハ開嚢郵便物ノ引渡ハ關係局內又ハ特ニ指定スル他ノ交換所ニ於テ此ノ任務ノ爲適法ニ任命セラルル吏員ノ間ニ手渡ヲ以テ之ヲ爲スヘシ
二 引渡吏員ハ引渡スヘキ行嚢又ハ包装ノ番號ヲ記載セル送記ト名クル二通ノ輸送狀ヲ持參シ受取吏員ハ直ニ之ニ署名シ受領證トシテ之ヲ引渡吏員ニ返附スヘシ各郵嚢內ニハ羅馬萬國郵便條約施行規則第二十一條（華盛頓萬國郵便條約附屬規則第二十條）定ムル所ノ詳細事項ヲ記載セルFeuille d’avisヲ具備スヘシ
三 差立局ハ受取吏員カ郵便物ノ引渡ヲ受ケ郵嚢ノ番號若ハ狀況ヲ査證スルコトナク受領書ヲ發シタルトキヨリ其ノ責任ヲ免レ受取局爾後ノ責任ヲ負フヘキモノトス
第四條 郵便料及配達
一、各郵政廳ハ名宛、差立ノ如何ニ係ラス各自局內ノ郵便物ノ料金納付ニ各自ノ郵便切手ヲ使用シ且其ノ差立ノ如何ニ係ラス他郵政廳ノ郵便切手ニ依リ正當ニ到著シ且充分ニ郵便料ヲ豫納シタル一切ノ郵便物ヲ郵便局所在ノ凡テノ地方ニ於テ附加稅ナク名宛人ニ配達スヘシ
二、各郵政廳ハ各自ノ料金率ヲ定ムルモノトス佛國郵政廳ハ淸國內ニ在ル自國ノ郵便局相互間ニ交換スル郵便物ニ對シ淸國郵政廳ノ採用スル郵便料金率ヨリ低下ナル料金率ヲ適用セサルモノトス又淸國郵政廳ハ佛國郵便局ヲ通シテ郵便聯合各國ト交換スル一切ノ郵便物ニ關シ羅馬萬國郵便條約（華盛頓條約）第五條ノ規定ヲ遵守スヘキモノトス兩郵政廳ハ互ニ其ノ料金率ヲ通知スヘシ
三 淸國若ハ佛國ノ郵便局ナキ內國地方ニ宛ツル郵便物ハ名宛人ノ危險計算ニ於テ民局ヲ經由シテ名宛人ニ之ヲ送達スヘキモノトス
四、淸國版圖內及同一都市內ニ佛國及淸國ノ郵便局竝存スルトキハ各自郵便局ニ於テ局宛ニ到達シタル一切ノ郵便物ノ引渡ヲ爲スヘシ
第五條 繼越料
一、閉嚢郵便物（及開嚢書狀）ニシテ締約郵政廳ノ一方又ハ地方カ遵？據スル輸送制度ニ依リテ淸國又ハ佛國ノ郵便局ノ爲ニ差立テラレタルモノハ該郵便物遞送ニ干與スル郵政廳ノ利益ノ爲ニ左ニ定ムル繼越料ヲ負擔スヘキモノトス
（イ）、淸帝國版圖內及淸國沿岸ニ於テ沿岸外國ヲ含ミ千五百海里ヲ超過セス且淸國及外國ノ港津カ同一汽船航路ヲ以テ結合セラルルトキ
第一 鐵道ニ依ル陸路繼越及三百海里ヲ超過セサル海路繼越ニ於テハ書狀若ハ葉書一瓧ニ就キ一法（二法）五十參、爾他ノ郵便物一瓧ニ就キ二十參（二十五參）
第二 使便ニ依ル陸路繼越及三百海里ヲ超過スル海路繼越ニ於テハ書狀及葉書一瓧ニ就キ四法（五法）、爾他ノ郵便物一瓧ニ就キ五十參
（ロ）、淸帝國以外ニ於テ前項（イ）ニ定ムル以外ノ種類ニ屬スル郵便物ニ關スル一切ノ繼越料
第一 陸路又ハ海路繼越ニ於テハ書狀若ハ爾他ノ郵便物一瓧ニ就キ羅馬萬國郵便條約第四條第三項（通過距離及通過國ニ隨ヒ締約郵政廳ニ於テ定ムル戌號表ニ依リ計算スル華盛頓萬國郵便條約第四條）ニ定ムル金額
第二 開嚢通過書狀ニ就キテハ其ノ種類ニ依リ其ノ重量若ハ名宛地ニ隨ヒ左ニ定ムル繼越料ヲ徵收ス
書狀 各六參
葉書 各二參二分ノ一
爾他ノ郵便物 各二參二分ノ一
第三、佛國及其ノ屬領若ハ外國ニ宛ツル書狀（閉嚢ト開嚢トヲ問ハス）ニシテ淸國郵便切手ヲ以テ料金ヲ納付シ佛國郵便局ヲ經由シテ繼越セラルルモノハ他ノ萬國郵便聯合郵政廳ヨリ佛國郵便局ニ引渡スヘキ書狀ト同一ノ方法及同一ノ繼越料ヲ以テ其ノ名宛地ニ送達セラルヘキモノトス此ノ場合ノ繼越料ハ佛國郵政廳之ヲ保障シ且淸國郵政廳之ヲ補償スヘシ
二、尚協定スルコト左ノ如シ
第一、鐵道ニ依ル一切ノ陸路繼越ハ關係郵政廳カ該鐵路遞送ノ郵便物ニ就キ海路繼越ニ關シ旣ニ補償ヲ請求スル權利アルトキ其ノ料金ヲ免除セラルヘキモノトス
第二、揚子江ニ於ケル一切ノ繼越ハ之ヲ海路繼越ト看做ス
第三、外國差立ノ一切ノ郵便物ニシテ陸揚所ニ於テ佛國郵便局ヨリ開嚢ヲ以テ淸國郵便局ニ又ハ其ノ反對ニ引渡サレ內國各地ニ遞送セラルヘキモノハ繼越料ヲ免除セラルヘキモノトス
第四、羅馬萬國郵便條約（華盛頓條約）第四條ニ定ムル低減若ハ免除ハ之ヲ本約定ニ適用ス
三、佛國又ハ淸國ノ郵政廳ト關係ナキ諸制度又ハ船舶ニ依ル郵便物遞送料金ハ關係各國間ニ協定スル條件ヲ以テ定メラルヘキモノトス
第六條 軍艦郵便物
佛國官廳ヨリ國籍ヲ問ハス軍艦指揮官ニ引渡スカ爲又ハ國籍ヲ問ハス軍艦指揮官ヨリ佛國官廳ニ引渡スカ爲淸國郵便局ニ手交スル閉嚢郵便物ニ就キテハ送達又ハ受取ヲ爲ス佛國官廳トノ關係ニ於テ前條定ムル所ノ繼越料ヲ徵收スヘシ
第七條 繼越統計
繼越料金淸算書ハ兩郵政廳間ニ於テ毎年之ヲ作成スヘシ該計算ハ現行萬國聯合諸條約ニ定メタル規則ニ遵ヒ毎年作成スル統計ヲ基礎トシテ之ヲ爲スヘシ該統計ハ毎年更互ニ五月及十一月ノ最初ノ二十八日間ニ就キ之ヲ作成スヘシ
第八條 小包
一、小包交換、郵便爲替、價格表記書狀ノ交換ニ就キテハ本約定ノ實施後直ニ特別約定ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
二、淸國郵政廳ハ小包交換ヲ速ニ容易ナラシムルカ爲左ノ各項ヲ遵守スヘシ
イ、聯合諸國ヨリ差立テ佛國郵便局ヨリ引渡サルル普通、保險附若ハ取引稅ヲ課セラレタル小包ハ名宛人カ內國稅ヲ支拂フヘキコトヲ條件トシテ之ヲ引渡又ハ配達スヘキコト
ロ、聯合諸國ニ宛ツル普通、保險附若ハ取引稅ヲ課セラレタル小包ニシテ公衆ヨリ引渡サルルモノハ荷送人カ內國稅ヲ支拂ヒタル後之ヲ佛國郵便局ニ引渡スヘキコト
三、廣州灣ヨリ差立テ又ハ廣州灣ニ宛ツル內國小包及淸國又ハ佛國ノ郵便局ニヨリ一方ヨリ他方へ引渡サルル閉嚢小包ニ就キテハ兩郵政廳ニ於テ後日條件ヲ約定スルマテ暫定的ニ引渡ヲ爲スヘシ
第九條 義務及責任
一、書留書狀若ハ書留閉嚢郵便物ヲ紛失シタルトキ該郵便物ノ遞送ニ當リ且他ノ郵政廳ニ該郵便物ノ引渡又ハ移轉ヲ爲シ能ハサル郵政廳ハ紛失シタル郵便物又ハ閉嚢郵便物中ノ書留物品ニ關シ羅馬萬國郵便條約（華盛頓條約及同附屬業務及詳細規則第二十三條）第八條及同條約施行規則第二十五條ノ範圍內ニ於テ其ノ責ニ任スヘキモノトス
二、小包ノ紛失若ハ毀損ニ對シテハ損害賠償ノ權利ヲ發生ス該賠償請求額ハ因リテ生シタル紛失若ハ損害ト同額ナルコトヲ得但シ保險ヲ附セサル小包ニ對シテハ二十五法保險ヲ附シタル小包ニ對シテハ百法ヲ超過スルコトヲ得ス
三、前項ニ定ムル書留物品及書留小包ニ關スル保護ハ締約郵政廳郵便制度ノ施行區域外ニ及ハス且暴風雨、難船戰争、劫掠等ノ不可抗力ヨリ生スル紛失又ハ毀損ニ及ハサルモノトス
第十條 組織內ニ於ケル交換ニ關スル注意
淸國及佛國ノ郵政廳ハ兩郵政廳又ハ郵便物繼越ニ關係スル外國郵政廳ニ利益アリト認ムルトキハ郵便組織內ニ於テ行フ交換及郵便物遞送ニ關スル相互ノ制度ニ於ケル著發ヲ相互ノ間ニ通吿スヘシ
第十一條 本約定ノ適用範圍
淸國郵政廳ハ未タ萬國郵便聯合條約ニ加盟セサルモ本約定ニ關スル限リ千九百六年五月二十六日羅馬ニ於テ署名シタル萬國郵便條約及同施行規則（千八百九十七年六月十五日華盛頓ニ於テ締結シタル業務及詳細規則）ヲ遵守スヘキモノトス
本約定ハ上記ノ郵便聯合ニ關スル規定ト共ニ出來得ル限リ淸國郵便局及佛國郵便局間ニ於ケル郵便關係ニ就キ遵守スヘキ一體ノ規定ヲ成スモノトス
第十二條 本約定有效期間
本約定ハ出來得ル限リ速ニ漸次實施シ有效期限ニ就キテハ之ヲ定メス但シ兩郵政廳ハ何時ニ於テモ必要アルトキハ其ノ協議ニ基キ本約定ニ變更ヲ加ヘ又ハ六月ノ豫吿ヲ以テ之ヲ終止スルコトヲ得
附錄 佛國及淸國ノ郵政廳間ニ協定ヲ遂ケ千九百年二月三日北京ニ於テ署名シタル約定ノ內容及適用範圍ニ關シ兩郵政廳間ニ意見ノ相異ヲ生シタルトキハ爾後本約定ハ淸國ヨリ發シ且淸國ニ於ケル制度ニ依リ送達セラルヘキ開嚢書狀ニ之ヲ適用セス小包郵便物ニ關スル約定ハ之ヲ變更セサルモノトス
備考 本協定ニ關シテハ其ノ目的及範圍ニ付佛淸兩國郵政廳間ニ意見ノ相違ヲ生シ淸國差立及淸國郵便制度ニ依リ配達セラルヘキ開嚢郵便物ニ關スル限リ適用セラレサリシカ千九百八年一月二十一日竝同月三十日附佛國公使發及千九百八年一月二十八日淸國郵便及關稅總監察司發ノ公文交換（交換公文ハ之ヲ省略ス）ニ依リ本協定中ノ括弧內ヲ省略シタル上開嚢郵便物ニモ適用スルコトトナレリ