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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 支那ニ於ケル商標ノ相互保護ニ關スル亞米利加合衆國及白耳義國間ノ交換公文(支那に於ける商標の相互保護に関するアメリカ合衆国及ベルギー間の交換公文)

[場所] 
[年月日] 1905年11月27日
[出典] 英・米・佛・露ノ各國及支那國間ノ條約,外務省條約局編,1075-1076頁.
[備考] 
[全文] 

支那ニ於ケル商標ノ相互保護ニ關スル亞米利加合衆國及白耳義國間ノ交換公文

     千九百五年十一月二十七日

   (一)支那國駐箚合衆國公使ヨリ同白耳義國公使宛書翰

以書翰致啓󠄁上候陳者亞米利加合衆國政府ハ亞米利加合衆國及白耳義國ニ於テ正式ニ登錄ヲ受ケタル商標ヲ右兩國ノ國民カ支那國ニ於テ侵󠄁害󠄂セムコトニ對シ相互的ノ保護ヲ與フルニ付白耳義國政府ト協定ヲ遂󠄂クルノ意嚮ナルヲ以テ本使ハ亞米利加合衆國國務長官ヨリ合衆國ニ於テ正式ニ登錄ヲ受ケタル白耳義國ノ管轄󠄁ニ服スル者ノ商標ヲ如何ナル方法ヲ以テスルヲ問ハス侵󠄁害󠄂シタリトノ廉ヲ以テ吿訴セラレ且刑ノ宣吿ヲ受クヘキ合衆國ノ管轄󠄁ニ服スル一切ノ者ノ審問及處罰ニ付テハ支那國ニ於ケル合衆國領事裁判󠄁所󠄁ニ有效ナル規定ノ存スルノ旨通󠄁牒スヘシトノ訓令ニ接シ候

合衆國人民モ亦白耳義國ニ於テ正式ニ登錄ヲ受ケタル商標ノ侵󠄁害󠄂ノ保護ニ關シ支那國ニ於ケル白耳國領事裁判󠄁所󠄁ニ於テ同一ノ法律上ノ保護ヲ享有スルヤ否ヤ御通󠄁報被下度候本使ハ玆ニ重ネテ閣下ニ向ツテ敬意ヲ表シ候 敬具

  千九百五年十一月二十七日在北京合衆國公使館ニ於テ 

     ダブルュー、ダブルュー、ロックヒル

 ドウ、プレル、ドゥ、ラ、ニエップ閣下


(二)同白耳義國公使ヨリ同合衆國公使宛ノ書翰

以書翰致啓󠄁上候陳者支那國ニ於ケル白耳義國民及合衆國民ノ商標ノ相互保護ニ關スル本日附貴翰致領承候

貴翰ニ依レハ亞米利加合衆國政府ハ合衆國ニ於テ正式ニ登錄ヲ受ケタル白耳義國民ノ財產タル商標ノ正當ナル保護ヲ確保スルニ足ル訓令ヲ合衆國領事裁判󠄁所󠄁ニ與ヘラレタル趣ニ候貴翰ヲ領承スルト共ニ本使ハ白耳義國ニ於テ正式ニ登錄ヲ受ケタル合衆國民ノ商標カ白耳義國民ニ依リ僞造󠄁セラレタル場合之カ支那帝國內ニ於テ同樣方法ニ依リ確保スル旨通󠄁吿スルノ光榮ヲ有シ候

支那國ニ於ケル王國公使館及領事館、副領事館及代辨領事館ハ右ノ件ニ付提起󠄁セラルヘキ訴訟ヲ審理スルノ權限ヲ有シ候閣下ト本使トノ間ノ本交換公文ニ依リ白耳義國及亞米利加合衆國間ニ成立シタル協定ニ付支那國內ノ領事館ニ通󠄁報致置候本使ハ玆ニ重ネテ閣下ニ向ツテ敬意ヲ表シ候 敬具 

     エドゥモン、ドゥ、プレル

  ダブルュー、ダブルュー、ロックヒル閣下


(三)同合衆國公使ヨリ同白耳義國公使宛ノ書翰

以書翰致啓󠄁上候陳者貴我兩國國民ニ屬スル商標ノ支那國ニ於ケル右兩國民ニ依ル侵󠄁害󠄂ノ相互保護ニ付千九百五年十一月二十七日閣下トノ間ニ交換スルノ光榮ヲ有シタル公文ニ關シ本使ハ合衆國政府ニ右公文ノ謄󠄁本ヲ送付致候

右囘答トシテ國務長官ハ白耳義國ノ管轄󠄁下ノ者ノ財產タル商標ヲ支那國ニ於テ侵󠄁害󠄂シタルヘキ合衆國民ノ支那國ニ於ケル合衆國ノ領事裁判󠄁所󠄁ニ依ル「處罰」ノ語ヲ閣下宛小官公文中ニ使用シタルハ誤󠄁解ヲ招クノ虞アリトシテ本使ノ注意ヲ促シ候

合衆國ニ於テハ商標ノ侵󠄁害󠄂僞造󠄁等ヲ刑法上ノ罪ト爲スノ規定ナク且商標ノ所󠄁有者ノ蒙リタル損害󠄂ニ付テハ現行規定ハ民事訴訟ニ據ラシムルノ事實ニ鑑ミ合衆國政府ハ「處罰」ノ語ハ民事訴訟ニノミ關スルモノニシテ玆ニ附加シタル說明ナキ場合ニ於テ右ノ語ノ用法ヨリ推測シ得ラルル如キ刑事訴訟ニハ關セサルモノト之ヲ解釋スルノ意見ニ候

去十一月二十七日附本使公文中ニハ何等右ト牴觸スルモノナシト御解釋相成樣前揭我國法ノ規定ニ付閣下ノ御注意ヲ促スモノニ候本使ハ玆ニ重ネテ閣下ニ向ツテ敬意ヲ表シ候 敬具

  千九百六年一月二十二日北京ニ於テ

     ダブルュー、ダブルュー、ロックヒル

 エドゥモン、ドゥ、プレル、ドゥ、ラ、ニエップ閣下