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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 亞米利加合衆國及支那國間ノ仲裁裁判󠄁條約(アメリカ合衆国及支那国間の仲裁裁判条約)

[場所] 華盛頓(ワシントンD.C.)
[年月日] 1908年7月11日
[出典] 英・米・佛・露ノ各國及支那國間ノ條約,外務省條約局編,1047-1048頁.
[備考] 
[全文] 

亞米利加合衆國及支那國間ノ仲裁裁判󠄁條約


   千九百八年十月八日華盛頓ニ於テ調󠄁印

   千九百九年四月六日華盛頓ニ於テ批准交換

亞米利加合衆國大統領及淸國皇帝陛下ハ千八百九十九年七月二十九日海牙ニ於テ締結セラレタル國際紛爭平和的處理ニ關スル條約ノ締約國カ同條約第十九條ニ依リ仲裁裁判󠄁ニ付スルコトヲ得ヘシト思惟スル一切ノ問題ヲ該裁判󠄁ニ付セムカ爲協定ヲ締結スルノ權利ヲ保留シタルノ事實ニ鑑ミ兩國間ニ仲裁裁判󠄁條約ヲ締結スルコトニ決定シ之カ爲左ノ如ク其ノ全權委員ヲ任命セリ即チ

亞米利加合衆國大統領

 國務卿 エリヒュー、ルート

支那國皇帝陛下

 亞米利加合衆國、墨西哥國、秘露國及玖瑪國駐箚特命全權公使 伍廷芳

各全權委員ハ互ニ其ノ全權委任狀ヲ示シ其ノ良好妥󠄁當ナルヲ認󠄁メタル後左ノ諸條ヲ協定セリ

   第一條

兩締約國間ニ發生スルコトアルヘキ法律的性質ヲ有スル問題又ハ兩締約國間ニ現存スル條約ノ解釋ニ關スル紛議ニシテ外交上ノ手段ニ依リ處理スルコト能ハサルモノハ千八百九十九年七月二十九日ノ條約ニ依リ海牙ニ設置セラレタル常設仲裁裁判󠄁ニ付スヘキモノトス但シ右紛議ニシテ兩締約國ノ緊切ナル利益、獨立若ハ名譽ニ關シ又ハ第三國ノ利益ニ關係アル場合ハ此限ニ在ラス

   第二條

兩締約國ハ各個ノ事件ニ付之ヲ常設仲裁裁判󠄁所󠄁ニ訴フルニ先チ其ノ係爭事件、仲裁裁判󠄁官ノ權限ノ範圍竝仲裁裁判󠄁所󠄁ノ組織及手續ニ關シ定ムヘキ期限ヲ明確ニ定メタル特別協定ヲ締結スヘシ右特別協定ハ亞米利加合衆國ニ於テハ大統領カ同國上院ノ勸吿及協贊ヲ經テ之ヲ締結スルモノトス

   第三條

本條約ハ批准書交換ノ日ヨリ五箇年間效力ヲ有ス

   第四條

本條約ハ兩締約國ニ依リ批准セラルヘク且批准書ハ成ルヘク速󠄁ニ華盛頓ニ於テ之ヲ交換スヘシ

右證據トシテ各全權委員ハ本條約ニ署名調󠄁印ス

千九百八年十月八日卽光緖三十四年九月十四日華盛頓市ニ於テ本書二通󠄁ヲ作成ス

     エリヒュー、ルート 印

     伍廷芳 印