[文書名]　小包郵便物遞送ニ關スル佛國（佛國印度支那及雲南鐵道會社）及淸國間ノ條約（小包郵便物遞送に関する仏国（仏国インドシナ及雲南鉄道会社）及清国間の条約）

　　　　　千九百十二年四月十五日

　　　第一條　總則

一、佛國印度支那及雲南鐵道會社ハ左ニ定ムル賃率ニ依リ雲南線各停車場ニ於テ雲南沿線ノ爾他ノ停車場ヲ名宛地トシテ支那共和國郵政廳ヨリ引渡サルル小包郵便物ノ遞送ニ從事ス

　（イ）東京及雲南ノ兩會社線ヲ使用スル小包郵便物ハ每「キログラム」ニ付六「サンチーム」

　（ロ）雲南線ノミヲ使用スル小包郵便物ハ每「キログラム」ニ付八「サンチーム」

二、該會社ハ表記價格ナキ通常小包ニ限リ遞送ノ爲ニ受理スルモノトス

三、該會社ハ一切ノ場合及一切ノ時期ニ於テ支那國郵政廳ヨリ引渡サルル小包郵便物ヲ遞送ノ爲ニ受理スヘキ義務ヲ有ス但シ一時的交通杜絕ニ際會シタルトキハ會社ハ一部又ハ全部ノ修復ニ至ル迄小包郵便物ノ受理及遞送ヲ延期スルコトヲ得

四、一部ノ交通杜絕シタル結果支那國郵政廳ニ於テ該固有ノ方法ニ依リ杜絕區間ニ於ケル小包郵便物ノ遞送ヲ實施スルトキハ會社カ支那國郵政廳ニ對シ鞄又ハ籠ノ小包郵便物郵嚢ヲ引渡スニ際シ同時ニ該郵嚢ノ員數及重量ヲ明記セル書類ヲ引渡スヘシ

小包郵便物ノ鞄又ハ籠ノ郵嚢ハ列車運轉區間ニ於テ該書類ノ提示ニ依リ會社之ヲ受理スヘシ是等ノ小包郵便物ハ差立ニ際シ雲南ニ於ケル繼越料全額ニ當ル料金ヲ支拂フノ外爾後如何ナル料金ヲモ課セラレサルモノトス

五、爆發物、燃燒物、危險若ハ感染ノ虞アルモノ若ハ關稅法又ハ其他ノ法律規則ニ依リ禁止セラレタル物品就中貨幣、證券及阿片ハ之ヲ小包郵便物トシテ遞送スルコトヲ禁ス

　　　第二條

一、多量ニ遞送セラルル小包郵便物ハ鉛又ハ蠟ヲ以テ封緘シタル籠中ニ容レラルヘク少量ニ遞送セラルル小包郵便物ハ鉛又ハ蠟ヲ以テ封緘シタル鞄中ニ容レラルヘシ

小包郵便物カ形態及容積（何レモ「一メートル」半ヲ超ユルコトヲ得ス）ノ如何ニ依リ鞄若ハ籠中ニ容ルルコトヲ得サルトキハ適當ニ鉛ヲ以テ封印ヲ施シタル紐縄ヲ掛ケ名宛局ヲ指示スル票紙ヲ付シ開嚢ニテ遞送セラルルモノトス

雲南ニ於ケル如何ナル繼越遞送ニ於テモ空郵嚢ノ返送料金ハ每「キログラム」ニ付一「サンチーム」ト定ム該賃率ハ容積一立方「メートル」五十「キログラム」ヲ超エサル重量ノ空籠ニ付テハ二「サンチーム」迄增加スルコトヲ得但シ如何ナル場合ニ於テモ該賃率ハ一立方「メートル」五十「キログラム」ノ割合ニ依リテ計算セル推定重量ニ一「キログラム」一「サンチーム」ノ賃率ヲ適用シタル結果ノ金額ヲ超ユルコトヲ得サルモノトス

二、雲南ヲ名宛地トシ印度支那國郵便電信政廳管理ノ下ニ東京ヲ繼越遞送セラルル小包郵便物ノ鞄若ハ籠ハ老開停車場ニ於テ淸國郵政廳ヨリ會社ニ返還セラヘキモノトス是等ノ鞄若ハ籠ハ鉛又ハ蠟ヲ以テ封緘ヲ施シ小包郵便物ノ細目ヲ記載シタル送記ヲ具フルコトヲ要ス遞送通知書及小包ニ關スル稅關吿知書ハ該鞄若ハ籠ノ中ニ包含セラルヘク若ハ會社ノ仲介ナク淸國郵政廳ヲ通シテ其ノ名宛地ニ送達セラルヘキモノトス

會社ニ返還セラルヘキ鞄若ハ籠ノ重量及鉛若ハ蠟ノ封印ノ狀態ハ會社ノ吏員及淸國郵政廳ノ吏員協同シテ照會スヘク該吏員ハ名宛停車場ニ至ル迄ノ遞送ニ關スル請求書ヲ作成スヘシ該請求書ハ佛文ヲ以テ之ヲ作成スルコトヲ要ス

小包郵便物用ノ籠ハ名宛停車場ニ於テ同樣ニ會社ヨリ淸國郵政廳吏員ニ引渡サルヘキモノトス該吏員ハ單ニ引渡ヲ受ケタル鞄及籠ノ狀態及鉛若ハ蠟ノ封印カ完全ナリヤ否ヤノ事實ヲ檢證シ該小包ニ關シ會社ニ受領證ヲ付與スヘシ

鉛若ハ蠟ノ封印破損セルトキハ鞄及籠ノ內容ニ付紛議ナク紛失物品ヲ決定スルカ爲協同ニテ之ヲ送記ト照合スルコトヲ要ス鞄若ハ籠カ遞送ノ途次破損セルトキハ鉛若ハ籠ノ封印カ完全ナルトキト雖同樣ノ方法ニ依リテ照合セラルヘキモノトス

三、小包郵便物用ノ鞄及籠竝空籠ニシテ東京ヲ繼越遞送セラルルモノハ老開停車場ニ於テ淸國郵政廳吏員ニ引渡サルヘキカ爲雲南ニ於ケル會社沿線ノ停車場ニ於テ會社ニ引渡サルヘシ

差立ニ際シテ行ハルル鞄若ハ籠ノ引渡竝到着ニ際シテ行ハルル照合ハ雲南ヲ名宛地トシテ東京ヲ繼越遞送セラルル小包郵便物ニ關シ本條約第二條第二項ニ定ムルトコロト全ク同一ノ方法ニ依リテ施行セラルヘキモノトス

四、小包郵便物用ノ鞄及籠ニシテ雲南省ニ於テノミ遞送セラルルモノハ差立停車場ニ於テ淸國郵政廳ヨリ會社ニ引渡サルヘク且名宛停車場ニ於テ該郵政廳吏員ニ引渡サルヘキモノトス凡テ鉛及蠟ヲ以テスル鞄若ハ籠ノ封印及其ノ發着ノ際ニ於ケル照合等ニ關シ本條約第二條第二項ニ定ムルトコロハ同樣ニ地方的遞送ニ關シテモ適用セラルヘキモノトス

　　　第三條　會社ノ責任

一、會社ハ其ノ過失明證セラレタル場合ヲ除キ遞送ノ途次發生スルコトアルヘキ破損破壞若ハ其ノ他ノ損害ニ付責ヲ負フコトナシ

二、小包郵便物用ノ鞄若ハ籠ハ遞送ノ途次ニ於ケル取扱ヨリ生スル損害ヲ防止スルカ爲永續的物質ヲ以テ全ク其ノ目的ニ適合スル如ク作成スルコトヲ要ス

三、紛失、盗難若ハ破損ノ場合會社ノ責任立證セラレタルトキト雖其ノ賠償責任ハ全ク郵政廳ノ負擔ニ歸スヘキ程度ヲ以テ其ノ限度ト爲ス然レトモ會社ノ賠償責任ハ現在表記價格ナキ通常小包ニ關スル郵便規則ニ依リテ定メラルル左ノ最多額ヲ超エテ支拂フコトヲ要セス

　（イ）國際小包ニ付テハ二十五「フラン」

　（ロ）支那國差立ノ小包ニ付テハ五弗

小包郵便料ハ郵政廳ニ於テ發送人ニ對シ拂戾ヲ爲ササルへカラサリシ場合ニ於テモ會社ニ依リ更ニ拂戾サルヘキモノトス之ニ關連シテ會社カ單ニ表記價格ナキ通常小包郵便物ノミヲ受理スルコトヲ得隨テ價格表記小包郵便物ヲ受理シタル場合ニ利害關係人ニ對スル賠償差金額ノ補成ハ支那國郵政廳ノ責任トスヘキモノナルコトヲ再記ス

　　　第四條　差立方法

一、小包郵便物ハ會社ニ對スル引渡後二十四時間內ニ出發スル定期旅客運輸列車ニ依リテ遞送セラルヘキモノトス

二、轉送ノ場合ニハ會社獨リ其ノ單獨ノ責任ヲ以テ小包郵便物用ノ鞄若ハ籠カ各四十「キログラム」ヲ超過セサルコトヲ條件トシテ小包郵便物ノ取扱ヲ實施スヘシ凡テ小包郵便物ハ出來得ル限リ速ニ其ノ名宛地ニ送達セラルヘキモノトス

三、空籠ハ其ノ名宛地ニ向テ出來得ル限リ速ニ返送セラルヘキモノトス

　　　第五條　稅關手續

一、會社ハ支那國郵政廳ニ向テ遞送セラルル小包郵便物ニ關シ國境ニ於テモ又各支那國若ハ印度支那國郵便局ニ於テモ關稅規則ヲ履行スルノ要ナク是等ノ手續ハ其ノ國境ニ於ケル發着ニ際シ支那國郵政廳ニ於テ履行スヘキモノトス

　　　第六條　遞送料金ノ淸算

一、小包郵便物及空籠ノ遞送料金ハ差引勘定ヲ以テ支拂ハルヘキモノトス

二、會社ハ每月支那國郵政廳吏員ヨリ交付スル請求書ニ依リ前月ニ於ケル小包郵便物遞送ニ付會社ノ負擔スヘキ金額計算表ヲ作成スヘキモノトス

負擔金額計算表ハ之ヲ三通作成シ雲南府雲南省郵政局長ニ送達スヘシ郵政局長ハ之ヲ檢證シ正當ニ認證若ハ修正シタル寫本一通ヲ一週間內ニ會社ニ返送シ直ニ該負擔金額ノ支拂ヲ命令スヘシ

三、該計算表ハ支那國郵便局長ノ接受後二週日內ニ之ヲ作成スヘク未拂金額ニ付テハ會社ノ利益ノ爲ニ一月若ハ一月未滿每ニ付五分ノ割合ヲ以テ利息ヲ支拂フヘキモノトス

四、該計算表ノ作成ハ雲南府ニ於テ雲南弗ニ依ルコトヲ要シ之ヲ「フランス」ニ換算スルトキハ負擔金額ヲ生シタル月ノ末日ニ於ケル香港弗ノ比價ヲ以テ其ノ交換率トスヘキモノトス

　　　第七條　雜則

一、支那國郵便局長若ハ其ノ代理ニ對シテハ職務上ノ旅行若ハ所屬郵便局巡察ノ爲一等無賃乗車證ヲ下附スヘシ代理カ支那人ナルトキハ之ニ二等無賃乗車證ヲ下附スヘシ

　　　第八條　條約ノ有效期限

本條約ハ會社及支那國郵政廳ニ依リ同意セラレタル日附以後實施セラレ無期限ニ有效ナルモノトス但シ兩締約當事者ハ本條約ニ對シ相互ノ協定ニ依リ必要ナリト思料スル變更ヲ加ヘ若ハ六月ノ豫吿ヲ以テ本條約ノ效力ヲ終了セシムルノ權利ヲ留保ス

本條約ハ下名之ヲ作成シ相互ノ協定ニ依リ双方郵政廳ノ承認ヲ經ヘキモノトス

佛國雲南印度支那
鐵道會社代表者
社長取締役
ゲッテン署名

支那國郵政廳代表者
臨時雲南郵便局長
カウフマン署名

本條約ヲ承認ス

シー、ケー、エン署名　ティー、バイリイ署名