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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 労働者災害補償ニ付テノ内外人労働者ノ均等待遇ニ関スル条約(第19号)(労働者災害補償に付ての内外人労働者の均等待遇に関する条約,1925年の均等待遇(災害補償)条約(第19号))

[場所] 
[年月日] 1925年6月5日
[出典] 国際労働機関
[備考] 昭和三年十月八日批准登録
[全文] 

 国際労働機関ノ総会ハ

 国際労働事務局ノ理事会ニ依リジュネーヴニ招集セラレ千九百二十五年五月十九日ヲ以テ其ノ第七回会議ヲ開催シ

 右会議ノ会議事項ノ第二項目タル労働者災害補償ニ付テノ内外人労働者ノ均等待遇ニ関スル提案ノ採択ヲ決議シ且

 該提案ハ国際条約ノ形式ニ依ルベキモノナルヲ決定シ

 国際労働機関ノ締盟国ニ依リ批准セラルルガ為国際労働機関憲章ノ規定ニ従ヒ千九百二十五年六月五日千九百二十五年ノ均等待遇(災害補償)条約ト称セラルベキ左ノ条約ヲ採択ス

第一条

1 本条約ヲ批准スル国際労働機関ノ各締盟国ハ本条約ヲ批准シタル他ノ締盟国ノ国民ニシテ其ノ領域内ニ於テ発生スル産業災害ニ因リ身体ノ傷害ヲ受ケタル者又ハ該労働者ノ被扶養者ニ自国民ニ許与スルト同様ノ労働者補償ニ関スル待遇ヲ許与スルコトヲ約ス 

2 右ノ均等待遇ハ居所ノ如何ニ拘ラズ外国人労働者又ハ其ノ被扶養者ニ保障セラルベシ締盟国又ハ其ノ国民ガ右原則ニ基キ該締盟国ノ領域外ニ於テ為スベキ支払ニ関シテ執ルベキ措置ハ必要アルトキハ関係アル締盟国間ノ特殊ノ協定ニ依リ之ヲ定ムベシ

第二条

 一締盟国ノ領域内ニ於テ他ノ締盟国ノ領域内ニ存在スル企業ノ為一時的又ハ間歇的ニ使用中ノ労働者ニ発生スル産業災害ノ補償ハ右他ノ締盟国ノ法令及規則ノ適用ヲ受クベキコトヲ定ムル為関係アル締盟国間ニ於テ特殊ノ取極ヲ為スコトヲ得

第三条

 本条約ヲ批准スル締盟国ニシテ保険其ノ他ノ方法ニ依ル労働者災害補償ニ関スル制度ヲ未ダ有セザルモノハ其ノ批准ノ日ヨリ三年以内ニ右ノ制度ヲ設クルコトニ同意ス

第四条

 本条約ヲ批准スル締盟国ハ本条約ノ実施並労働者補償ニ関スル各自国ノ法令及規則ノ施行ヲ容易ナラシムル為相互的助力ヲ互ニ与フルコト又労働者補償ニ関スル現行ノ法令及規則ノ変更ニ関シ国際労働事務局ニ通報スルコトヲ尚約ス右事務局ハ他ノ関係アル締盟国ニ之ヲ通報スベシ

第五条

 国際労働機関憲章ニ定ムル条件ニ依ル本条約ノ正式批准ハ登録ノ為国際労働事務局長ニ之ヲ通告スベシ

第六条

1 本条約ハ事務局長ガ国際労働機関ノ締盟国中ノ二国ノ批准ヲ登録シタル日ヨリ効力ヲ発生スベシ

2 本条約ハ該事務局ニ其ノ批准ヲ登録シタル締盟国ノミヲ拘束スベシ

3 爾後本条約ハ他ノ何レノ締盟国ニ付テモ右事務局ニ其ノ批准ヲ登録シタル日ヨリ効力ヲ発生スルモノトス

第七条

 国際労働機関ノ締盟国中ノ二国ガ国際労働事務局ニ本条約ノ批准ノ登録ヲ為シタルトキハ事務局長ハ国際労働機関ノ一切ノ締盟国ニ右ノ旨ヲ通告スベシ事務局長ハ爾後該機関ノ他ノ締盟国ノ通告シタル批准ノ登録ヲ一切ノ締盟国ニ同様ニ通告スベシ

第八条

 本条約ヲ批准スル各締盟国ハ千九百二十七年一月一日迄ニ第一条、第二条、第三条及第四条ノ規定ヲ実施シ且右規定ヲ実施スルニ必要ナルベキ措置ヲ執ルコトニ同意ス尤モ第六条ノ規定ニ従フモノトス

第九条

 本条約ヲ批准スル国際労働機関ノ各締盟国ハ国際労働機関憲章第三十五条ノ規定ニ依リ其ノ殖民地、属地及保護国ニ之ヲ適用スルコトヲ約ス

第十条

 本条約ヲ批准シタル締盟国ハ本条約ノ最初ノ効力発生ノ日ヨリ十年ノ期間満了後ニ於テ国際労働事務局長宛登録ノ為ニスル通告ニ依リ之ヲ廃棄スルコトヲ得右ノ廃棄ハ該事務局ニ登録アリタル日以後一年間ハ其ノ効力ヲ生ゼズ

第十一条

 国際労働事務局ノ理事会ハ少クトモ十年ニ一回本条約ノ施行ニ関スル報告ヲ総会ニ提出スベク且其ノ改正又ハ変更ニ関スル問題ヲ総会ノ会議事項ニ掲グベキヤ否ヤヲ審議スベシ

第十二条

 本条約ハ仏蘭西語及英吉利語ノ本文ヲ以テ共ニ正文トス