[文書名] 船中ニ於ケル移民監督ノ単純化ニ関スル条約(第21号)(船中における移民監督の単純化に関する条約,1926年の移民監督条約(第21号))
国際労働機関ノ総会ハ
国際労働事務局ノ理事会ニ依リジュネーヴニ招集セラレ千九百二十六年五月二十六日ヲ以テ其ノ第八回会議ヲ開催シ
右会議ノ会議事項ノ問題タル船中ニ於ケル移民監督ノ単純化ニ関スル提案ノ採択ヲ決議シ且
該提案ハ国際条約ノ形式ニ依ルベキモノナルコトヲ決定シ
国際労働機関ノ締盟国ニ依リ批准セラルルガ為国際労働機関憲章ノ規定ニ従ヒ千九百二十六年六月五日、千九百二十六年ノ移民監督条約ト称セラルベキ左ノ条約ヲ採択ス
第一条
本条約ノ適用ニ付テハ「移民船」及「移民」ノ定義ハ各国ニ付当該国ノ権限アル機関ニ依リ定メラルベシ
第二条
1 本条約ヲ批准スル各締盟国ハ移民船中ニ於テ移民保護ノ為行ハルル公ノ監督ガ以下定ムル所ヲ除クノ外二国以上ノ政府ニ依リ行ハレザルノ原則ヲ承認スルコトヲ約ス
2 本条ハ他国政府ガ移民トシテ輸送セラルル其ノ国民ニ同伴セシムル為随時且該政府ノ費用ヲ以テ代表者ヲ視察者ノ資格ニ於テ及監督官ノ職務ヲ侵害セザルベキコトヲ条件トシテ船中ニ乗込マシムルコトヲ妨ゲザルベシ
第三条
移民監督官ガ移民船中ニ乗込マシメラルルトキハ右監督官ハ原則トシテ国旗国政府ニ依リ任命セラルベシ但シ右監督官ハ国旗国政府ト当該国民ガ船中ニ移民トシテ輸送セラルル他ノ一国又ハ二国以上ノ政府トノ間ノ協定ニ基キ他ノ一国政府ニ依リ任命セラルルコトヲ得
第四条
1 監督官タルニ要スル実地経験並ニ必要ナル専門的及道徳的ノ資格ハ其ノ任命ニ付責任アル政府ニ依リ定メラルベシ
2 監督官ハ如何ナル方法ニ於テモ船舶所有者若ハ海運会社ト直接若ハ間接ニ関係ヲ有シ又ハ之ニ従属スルコトヲ得ズ
3 本条ハ政府ガ例外トシテ且絶対必要ノ場合ニ於テ船医ヲ監督官ニ任命スルコトヲ妨ゲザルベシ
第五条
1 監督官ハ移民ガ国旗国ノ法令若ハ適用アル其ノ他ノ法令ニ依リ又ハ国際協定若ハ其ノ輸送契約ノ条項ニ依リ有スル権利ノ尊重ヲ確保スベシ
2 国旗国政府ハ移民ノ状態ニ関スル現行ノ法令又ハ規則ノ本文及右政府ニ通告セラレタル右ノ事項ニ関係アル国際協定又ハ契約ノ本文ヲ監督官(其ノ国籍ノ如何ニ拘ラズ)宛通告スベシ
第六条
船中ニ於ケル船長ノ権限ハ本条約ニ依リ制限セラレザルモノトス監督官ハ如何ナル方法ニ於テモ船中ニ於ケル船長ノ権限ヲ侵害スルコトヲ得ザルベク船中ニ於ケル移民ノ保護及福利ニ直接関係アル法令、規則、協定又ハ契約ノ実施ヲ確保スルコトニノミ専ラ関与スベシ
第七条
1 船舶ノ目的港ニ到着シタル後八日以内ニ監督官ハ国旗国政府ニ報告ヲ為スベク右政府ハ関係アル他国政府ヨリ予メ其ノ要求アリタル場合ニ於テハ右他国政府ニ右報告ノ写ヲ交付スベシ
2 右報告ノ写ハ監督官ニ依リ当該船長ニ交付セラルベシ
第八条
国際労働機関憲章ニ定ムル条件ニ依ル本条約ノ正式批准ハ登録ノ為国際労働事務局長ニ之ヲ通告スベシ
第九条
1 本条約ハ事務局長ガ国際労働機関ノ締盟国中ノ二国ノ批准ヲ登録シタル日ヨリ効力ヲ発生スベシ
2 本条約ハ該事務局ニ其ノ批准ヲ登録シタル締盟国ノミヲ拘束スベシ
3 爾後本条約ハ他ノ何レノ締盟国ニ付テモ右事務局ニ其ノ批准ヲ登録シタル日ヨリ効力ヲ発生スルモノトス
第十条
国際労働機関ノ締盟国中ノ二国ガ国際労働事務局ニ本条約ノ批准ノ登録ヲ為シタルトキハ事務局長ハ国際労働機関ノ一切ノ締盟国ニ右ノ旨ヲ通告スベシ事務局長ハ爾後該機関ノ他ノ締盟国ノ通告シタル批准ノ登録ヲ一切ノ締盟国ニ同様ニ通告スベシ
第十一条
本条約ヲ批准スル各締盟国ハ千九百二十八年一月一日迄ニ第一条、第二条、第三条、第四条、第五条、第六条及第七条ノ規定ヲ実施シ且右規定ヲ実施スルニ必要ナルベキ措置ヲ執ルコトヲ約ス尤モ第九条ノ規定ニ従フモノトス
第十二条
本条約ヲ批准スル国際労働機関ノ各締盟国ハ国際労働機関憲章第三十五条ノ規定ニ依リ其ノ殖民地、属地及保護国ニ之ヲ適用スルコトヲ約ス
第十三条
本条約ヲ批准シタル締盟国ハ本条約ノ最初ノ効力発生ノ日ヨリ十年ノ期間満了後ニ於テ国際労働事務局長宛登録ノ為ニスル通告ニ依リ之ヲ廃棄スルコトヲ得右ノ廃棄ハ該事務局ニ登録アリタル日以後一年間ハ其ノ効力ヲ生ゼズ
第十四条
国際労働事務局ノ理事会ハ少クトモ十年ニ一回本条約ノ施行ニ関スル報告ヲ総会ニ提出スベク且其ノ改正又ハ変更ニ関スル問題ヲ総会ノ会議事項ニ掲グベキヤ否ヤヲ審議スベシ
第十五条
本条約ハ仏蘭西語及英吉利語ノ本文ヲ以テ共ニ正文トス