データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 國際衞生條約(国際衛生条約)

[場所] 
[年月日] 1926年6月21日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

(定訳) 國際衞生條約(※)

   大正一五年六月二一日パリで署名

   昭和 三年三月二八日効力發生

   昭和一〇年一〇月三日批准

   昭和一〇年一二月一七日批准書寄託

   昭和一〇年一二月一七日効力發生

   昭和一〇年一二月二一日公布(条約第九号)



   目次

凡例規定

第一編 一般規定

 第一章 本條約ノ參加國政府ガ其ノ領域內ニ「ペスト」、「コレラ」、黄熱又ハ他ノ一定ノ傳染病ノ發生シタルトキ遵守スベキ規定

  第一節 他ノ諸國ニ對スル通吿及爾後ノ通報(第一條乃至第九條)

  第二節 一ノ區域ヨリ來ルモノニ對シ本條約ニ規定セラルル措置ヲ施行スベキモノ又ハ施行ヲ止ムベキモノト認メ得シムル條件(第十條乃至第十二條)

  第三節 港ニ於ケル及船舶出航ノ際ニ於ケル措置(第十三條及第十四條)

 第二章 第一章ニ揭ゲラルル疾病ニ對スル防禦措置(第十五條)

  第一節 規定セラレタル措置ノ通報(第十六條)

  第二節 貨物及手荷物 輸入及通過(第十七條乃至第二十條)

  第三節 移民ニ關スル規定(第二十一條乃至第二十三條)

  第四節 港及海ニ於ケル措置

   甲 「ペスト」(第二十四條乃至第二十八條)

   乙 「コレラ」(第二十九條乃至第三十四條)

   丙 黄熱(第三十五條乃至第四十條)

   丁 發疹「チフス」(第四十一條)

   戊 痘瘡(第四十二條及至第四十三條)

   己 通則(第四十四條乃至第四十八條)

  第五節 總則(第四十九條乃至第五十七條)

  第六節 陸境ニ於ケル措置 旅行者 鐵道 國境地帶 河川路(第五十八條乃至第六十六條)

第二編 「スエズ」運河及其ノ隣接國ニ關スル特別規定

  第一節 北方ノ汚染港ヨリ「スエズ」運河ノ入口又ハ「エジプト」國ノ港ニ來ル普通船舶ニ對スル措置(第六十七條乃至第七十條)

  第二節 紅海ニ於ケル措置

   甲 南方ヨリ紅海ノ諸港ニ來リ又ハ地中海ニ向フ普通船舶ニ對スル措置(第七十一條乃至第七十四條)

   乙 巡禮季節ニ於テ「へヂャーズ」國ノ汚染港ヨリ來ル普通船舶ニ對スル措置(第七十五條)

  第三節 監視機關(第七十六條)

  第四節 檢疫狀態ニ於ケル「スエズ」運河ノ通過(第七十七條乃至第八十九條)

  第五節 「ペルシァ」灣ニ施行セラルル衞生措置(第九十條)

第三編 巡禮ニ關スル特別規定

 第一章 總則(第九十一條乃至第九十九條)

 第二章 巡禮船 衞生設備

  第一節 船舶ノ一般條件(第百條乃至第百九條)

  第二節 出航前執ルベキ措置(第百十條乃至第百十三條)

  第三節 航海中執ルベキ措置(第百十四條乃至第百二十六條)

  第四節 紅海ニ於テ巡禮者ノ到著ニ際シ執ルベキ措置

   甲 南方ヨリ「へヂァーズ」國ニ向フ巡禮船ニ適用セラルル衞生措置(第百二十七條乃至第百三十二條)

   乙 「ポート・サイド」ノ北方ヨリ「へヂァーズ」國ニ向フ巡禮船ニ適用セラルル衞生措置(第百三十三條及第百三十四條)

  第五節 巡禮者ノ歸還ニ際シ執ルベキ措置

   甲 北方ニ歸航スル巡禮船(第百三十五條乃至第百四十七條)

   乙 北方ニ歸還スル隊ヲ組ム巡禮者(第百四十八條)

   丙 南方ニ歸還スル巡禮者(第百四十九條)

  第六節 「へヂァーズ」鐵道ニ依リ施行スル巡禮者ニ施行セラルル措置(第百五十條)

  第七節 巡禮ニ關スル衞生報吿(第百五十一條)

 第三章 制裁(第百五十二條乃至第百六十二條)

第四編 監視及實行

  一 「エジプト」衞生海事檢疫委員會(第百六十三條乃至第百六十五條)

  二 雜則(第百六十六條及第百六十七條)

第五編 最終規定(第百六十八條乃至第百七十二條)

附屬書

 千八百九十三年六月十九日ノ「エジプト」國太守命令(第一條乃至第二十八條)

 千八百九十四年十二月二十五日ノ「エジプト」國太守命令(第一條乃至第九條)

 衞生海事檢疫部ノ作用ニ關スル千八百九十三年六月十九日ノ省令

  第一編

   衞生海事檢疫委員會(第一條乃至第五條)

   書記局(第六條及第七條)

   會計部(第八條)

   衞生監察長官(第九條)

  第二編

   港檢疫所及防疫所ノ事務(第十條乃至第二十三條)



「アフガニスタン」國皇帝陛下、「アルバニア」共和國大統領、獨逸國大統領、「アルゼンティン」國大統領、墺地利共和國聯邦大統領、白耳義國皇帝陛下、「ブラジル」合衆共和國大統領、「ブルガリア」國皇帝陛下、「チリ」共和國大統領、中華民國大總統、「コロンビア」共和國大統領、「キュバ」共和國大統領、丁抹國皇帝陛下、「ドミニカ」共和國大統領、「エジプト」國皇帝陛下、「エクアドル」共和國大統領、西班牙國皇帝陛下、「アメリカ」合衆國大統領、「エティオピア」國皇帝陛下及同帝國ノ帝位繼承者タル攝政殿下、「フィンランド」共和國大統領、佛蘭西共和國大統領、「グレート、ブリテン」「アイルランド」聯合王國及「グレート、ブリテン」海外領土皇帝印度皇帝陛下、希臘共和國大統領、「グァテマラ」共和國大統領、「ハイティ」共和國大統領、「へヂャーズ」國皇帝陛下、「ホンデュラス」共和國大統領、「ハンガリー」王國攝政殿下、伊太利國皇帝陛下、大日本帝國皇帝陛下、「リベリア」共和國大統領、「リスアニア」共和國大統領、「ルクセンベルグ」國大公殿下、「モロッコ」國皇帝陛下、「メキシコ」共和國大統領、「モナコ」國公殿下、諾威國皇帝陛下、「パラグァイ」共和國大統領、和蘭國皇帝陛下、「ペルー」共和國大統領、「ペルシァ」國皇帝陛下、「ポーランド」共和國大統領、「ポルトガル」共和國大統領、「ルーマニア」國皇帝陛下、「サン・マリノ」國攝政官、「セルブ、クロアート、スロヴェーヌ」國皇帝陛下、「サルヴァドル」共和國大統領、「スーダン」ノ主權ヲ代表スル總督、瑞西連邦政府、「チェッコスロヴァキア」共和國大統領、「テュニス」國公殿下、「トルコ」共和國大統領、「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦中央執行委員會、「ウルグァイ」共和國大統領竝ニ「ヴェネズエラ」共和國大統領ハ

千九百十二年一月十七日「パリ」ニ於テ署名セラレタル衞生條約ノ規定ニ防疫上ノ科學及經驗ニ基ク新論據ニ依リ必要トスル修正ヲ加へ、發疹「チフス」及痘瘡ニ關スル國際法規ヲ制定シ竝ニ國際衞生法規ノ制定ヲ促シタル主義ノ適用範圍ヲ能フ限リ擴張スルコトニ決シ之ガ爲條約ヲ締結スルコトニ決シ左ノ如ク其ノ全權委員ヲ任命セリ

「アフガニスタン」國皇帝陛下

  在「パリ」「アフガニスタン」國公使館書記官「イスラムベック、クードイアル、カーン」

「アルバニア」共和國大統領

  「ティラナ」病院長「ドクトル、オスマン」

獨逸國大統領

  在「パリ」獨逸國大使館勤務公使館參事官「フラヌー」

  獨逸國內務省參事官「ドクトル、ハメル」

「アルゼンティン」國大統領

  佛蘭西國駐箚「アルゼンティン」國公使「フェデリコ、アルヴァレス、デ、トレド」

  衞生局長「ドクトル、アラオス、アルファロ」

  「ブエノス・アイレス」醫科大學衞生學敎授「マヌエル、カルボンネル」

澳地利共和國聯邦大統領

  佛蘭西國駐箚澳地利國公使「アルフレド、グリュンベルゲル」

白耳義國皇帝陛下

  內務及衞生省總務長官「ヴェルグ」

「ブラジル」合衆國共和國大統領

  「オスワルド、クルス」研究所長、公衆保健局長官、敎授「ドクトル、カルロス、シァガス」

  「ドクトル、ジルベルト、モウラ、コスタ」

「ブルガリア」國皇帝陛下

  佛蘭西國駐箚「ブルガリア」國公使「モルフォフ」「ソフィア」醫科大學敎授「ドクトル、トシュコ、ペトロフ」

「チリ」共和國大統領

  佛蘭西國駐箚「チリ」國公使「アルマンド、ケサーダ」

  「チリ」國醫科大學敎授「ドクトル、エミリオ、アルドゥナーテ」

  「チリ」國醫科大學敎授「ドクトル、ホタ、ロドリゲス、バロス」

中華民國大總統

  在「パリ」公使館付武官陸軍將官姚錫九

  在「パリ」中華民國公使館特別書記官「ドクトル」謝東發

「コロンビア」共和國大統領

  獨逸國駐箚「コロンビア」國全權公使、「ボゴタ」醫科大學敎授「ドクトル、ミゲル、ヒメネス、ローペス」

「キュバ」共和國大統領

  在「パリ」「キュバ」國公使館參事官「ラミロ、エルナンデス、ポルテーラ」

  「ラス、アニマス」病院長「ドクトル、マリオ、レブレド」

丁抹國皇帝陛下

  國立血淸研究所長「ドクトル、テー、マドセン」

  船主組合理事「イー、アー、コルビング」

「ダンチッヒ」自由市ノ爲ニ「ポーランド」共和國大統領

  前保健大臣「ドクトル、ヴィトルド、ホヂコ」

  「ダンチッヒ」自由市上院參事會會員「ドクトル、カール、スタデ」

「ドミニカ」共和國大統領

  「サン・ドミンゴ」醫科大學敎授「ドクトル、ベタンセス」

「エジプト」國皇帝陛下

  佛蘭西國駐箚「エジプト」國公使「ファクーリー、パシァ」

  「エジプト」衞生海事檢疫委員會會長、陸軍少佐「チァールズ、ピー、トムソン」

  公衆衞生國際事務局委員會ニ派遣ノ「エジプト」

   國政府代表委員、在「ブラッセル」「エジプト」

   國公使館二等書記官「ドクトル、モハメド、アブド、エル、サラム、エル、グィンディ、ペイ」

「エクアドル」共和國大統領

  「ドクトル、ホタ、イリンゴウルト、イカサ」

西班牙國皇帝陛下

  在「パリ」西班牙國大使館參事官、公使、侯爵、「デ、ファウラ」

  西班牙國保健局長官「ドクトル、フランシスコ、ムリーリォ、イ、パラシオス」

「アメリカ」合衆國大統領

  公衆保健部軍醫總監「ドクトル、エイチ、エス、カンミング」

  公衆保健部髙級軍醫「ドクトル、タリアファーロ、クラーク」

  公衆保健部軍醫「ドクトル、ダブリュー、ダブリュー、キング」

「エティオピア」國皇帝陛下及同帝國ノ帝位繼承者タル攝政殿下

  全權公使「エントット」公、伯爵「ラガルド」

「フィンランド」共和國大統領

  佛蘭西國駐箚「フィンランド」國公使「シァルル、エンケル」

  「ヘルシングフォールス」大學敎授「ドクトル、オスワルド、ストレング」

佛蘭西國共和國大統領

  佛蘭西國大使「カミーユ、バレール」

  外務省副局長、全權公使「アリスマンディ」

  外務省副局長「ド、ナヴァイユ」

  「パストゥール」研究所副所長「ドクトル、カルメット」  

  「パリ」醫科大學敎授「ドクトル、レオン、ベルナール」

 「アルジェリー」

  「アルジェリー」衞生部監察長官「ドクトル、リュシアン、レイノー」

 佛領西「アフリカ」

  殖民地軍醫師監察長官「ドクトル、ポール、グージアン」

 佛領東「アフリカ」

  殖民地軍醫師監察長官「ドクトル、ティルー」

 佛領印度支那

  國際聯盟東洋局諮問委員會ニ派遣ノ印度支那代表委員「ドクトル、レルミニエ」

  印度支那「パストゥール」研究所長「ドクトル、ノエル、ベルナール」

 「シリア」、「グリン、リバン」、「アラウィット」及「ヂェベル・ドルュズ」

  外務省副局長、全權公使「アリスマンディ」

  「ドクトル、デルマ」

 佛蘭西國ノ他ノ殖民地、保護領、屬地及委任統治地域全部

  殖民省保健部監察長官「ドクトル、オーディベール」

「グレート、ブリテン」「アイルランド」聯合王國及「グレート、ブリテン」海外領土皇帝印度皇帝陛下

  衞生省醫長「サー、ジォージ、シートン、ブカナン」

  外務省參事官「ジォン、マレー」

 「カナダ」

  「カナダ」衞生省總務長官「ドクトル、ジォン、アンドリュー、アミオット」

 「オーストラリア」聯邦

  衞生省醫官「ドクトル、ウィリアム、カンベル、ソーワーズ」

 「ニュー・ジーランド」

  陸軍中佐「シドニー、プライス、ジェームズ」

 印度

  商務省勤務印度總督府書記官「デーヴィッド、トマス、チァドウィック」

 南「アフリカ」聯邦

  公衆衞生國際事務局委員會ニ派遣ノ代表委員「ドクトル、フィリップ、ストック」

希臘共和國大統領

  佛蘭西國駐箚希臘國公使「アー、セー、カラパノス」

  「ドクトル、マタランガス、ジェラシモス」

「グァテマラ」共和國大統領

  在「パリ」代理公使「ドクトル、フランシスコ、アー、フィゲロア」

「ハイティ」共和國大統領

  「ドクトル、ジォルジュ、オーデン」

「へヂァーズ」國皇帝陛下

  公衆保健局長官「ドクトル、マームード、ハムーデ」

「ホンデュラス」共和國大統領

  在「パリ」代理公使「ドクトル、ルベン、アウディノ・アギラール」

「ハンガリー」王國攝政殿下

  社會省參事官「ドクトル、シァルル、グロッシュ」

伊太利國皇帝陛下

  一等知事「ドクトル、アルベール、ルトラリオ」

  移民總務局衞生部長、伊太利王國海軍軍醫總監

   「ドクトル、ジォヴァンニ、ヴィットリオ、レペッティ」

  「ヴェニス」港司令官、港務大佐「オドアルド、フエッテル」

  在「パリ」伊太利國大使館一等書記官「グイド、ロッコ」

  一等副知事「ドクトル、カンチェッリエレ」

  外國派遣衞生代表委員「ドクトル、ドゥルエッティ」

大日本帝國皇帝陛下

  大使館參事官松島肇

  公衆衞生國際事務局委員會ニ派遣ノ大日本帝國代表委員醫學博士鶴見三三

「リベリア」共和國大統領

  佛蘭西國駐箚「リベリア」國公使、男爵「アール、エー、エル、レーマン」

  公使館一等書記官「エヌ、オームス」

「リスアニア」共和國大統領 

  「カウナス」市醫長、「カウナス」大學講師、豫備陸軍軍醫中將「ドクトル、プラナス、ヴァイチューシュカ」

「ルクセンブルグ」國大公殿下

  「ルクセンブルグ」國細菌學研究所長「ドクトル、プラウム」

「モロッコ」國皇帝陛下

  外務省副局長、全權公使「アリスマンディ」

  「アルジェリー」衞生部監察長官「ドクトル、リュシアン、レイノー」

「メキシコ」共和國大統領

  白耳義國駐箚「メキシコ」國公使「ドクトル、ラファエル、カブレラ」

「モナコ」國公殿下

  國務大臣「ルッセル・デピエール」

  公國衞生部長「ドクトル、マルサン」

諾威國皇帝陛下

  在「パリ」諾威國公使館參事官「シグール、ベンツォン」

  衞生局長官「ドクトル、ホー、マティアス、グラム」

「パラグァイ」共和國大統領

  佛蘭西國駐在「パラグァイ」國代理公使「ドクトル、エレ、ヴェー、カバリェーロ」

和蘭國皇帝陛下

  瑞西國駐箚和蘭公使「ドウデ、ファン、トローストワイク」

  衞生委員會會長「ドクトル、エヌ、エム、ヨセフス、ジッタ」

  前蘭領印度衞生部監察長官「ドクトル、デ、フォーヘル」

  在「ヂェダー」和蘭國領事「ファン、デル、プラス」

「ペルー」共和國大統領

  瑞西國駐箚「ペルー」國全權公使「ドクトル、パブロ、エセ、ミンベラ」

「ペルシァ」國皇帝陛下

  衞生委員會副會長及帝國病院長、前文部次官「ドクトル、アリ・カーン、パルトー・アーザム」

  前侍醫「ドクトル、マンスール・シァリフ」

「ポーランド」共和國大統領

  前保健大臣「ドクトル、ヴィトルド、ホヂコ」

  條約局次長「テイラー」

「ポルトガル」共和國大統領

  公衆保健局長、敎授「リカルド、ジォルジュ」

「ルーマニア」國皇帝陛下

  「ブカレスト」醫科大學敎授「ドクトル、ジァン、カンタクゼーヌ」

「サン・マリノ」國攝政官

  「ドクトル、グエルパ」

「サルヴァドル」共和國大統領

  敎授「ラルデ・アルテス」

「セルブ、クロアート、スロヴェーヌ」國皇帝陛下

  佛蘭西國駐箚全權公使「ミロスラヴ、スパライコヴィッチ」

「スーダン」ノ主權ヲ代表スル總督

  「スーダン」醫務部長「ドクトル、オリヴァー、フランシス、ヘイネス、アトキー」

瑞西聯邦政府

  佛蘭西國駐箚瑞西國公使「アルフォンス、デュナン」

  聯邦公衆衞生部長「ドクトル、カリエール」

「チェコスロヴァキア」共和國大統領

  「プラーグ」市衞生部長「ドクトル、ラディスラフ、プロハースカ」

「テュニス」國公殿下

  外務省副局長「ド、ナヴァイユ」

「トルコ」共和國大統領

  佛蘭西國駐箚「トルコ」國大使「アリー、フェティー、ベイ」

「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦中央執行委員會

  露西亞社會主義聯合「ソヴィエト」共和國公衆保健人民委員、「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦中央執行委員會委員、敎授「ニコラス、セマシュコ」

  在「パリ」「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦大使館參事官「ジァック、ダフティアン」

  外務人民委員部副局長「ウラディミル、エゴリエフ」

  「ジェオルジア」「ソヴィエト」社會主義共和國中央執行委員會委員「ドクトル、イリア、マンムリア」

  「ウクライナ」「ソヴィエト」社會主義共和國公衆保健人民委員部附「ドクトル、レオン、ブロンスティン」

  「ウズベキスタン」「ソヴィエト」社會主義共和國公衆保健人民委員部參與會員「ドクトル、オーガヌ、メブルヌトフ」

  露西亞社會主義聯合「ソヴィエト」共和國公衆保健人民委員部顧問「ドクトル、ニコラス、フレイベルグ」

  大學敎授、露西亞社會主義聯合「ソヴィエト」共和國公衆保健人民委員部衞生及流行病局長「ドクトル、アレキシス、シシン」

「ウルグァイ」共和國大統領

  前在「パリ」「ウルグァイ」國代理公使「アー、エローサ」

「ヴェネズエラ」共和國大統領

  西班牙國及和蘭國駐箚「ヴェネズエラ」國公使「ホセ、イグナシオ、カルデナス」

右各全權委員ハ其ノ全權委任狀ヲ示シ、之ガ良好妥當ナルヲ認メタル後左ノ諸規定ヲ協定セリ



   凡例規定

本條約ニ於テハ締約國ハ左ノ定義ヲ採用ス

一 「區域」ナル語ハ地域ノ一定ノ部分例ヘバ州、縣、郡、島、市町村、都市、都市ノ區、村落、港、部落等ヲ謂ヒ右地域ノ部分ノ廣袤及人口ノ如何ニ拘ラザルモノトス

二 「停留」ナル語ハ各人ガ交通許可ヲ得ルニ先チ船舶又ハ檢疫所ニ隔離セラルルコトヲ謂フ

 「監視」ナル語ハ各人ガ隔離セラルルコトナク直ニ交通許可ヲ得ルモ其ノ各行先地ノ衞生機關ニ豫吿セラレ且其ノ健康狀態ヲ確ムル醫學的檢査ヲ受クルコトヲ謂フ

三 「船員」ナル語ハ一國ヨリ他國ニ到ル目的ノミヲ以テ乘船シ居ル者ニ非ズシテ船舶、乘船者又ハ荷積ノ用ニ何等カノ方法ニテ使用セラルル一切ノ者ヲ含ム

四 「日」ナル語ハ二十四時間ヲ謂フ



   第一編 

    一般規定

   第一章

    本條約ノ參加國政府ガ其ノ領域內ニ「ペスト」、「コレラ」、黄熱又ハ他ノ一定ノ傳染病ノ發生シタルトキ遵守スベキ規定

    第一節 他ノ諸國ニ對スル通吿及爾後ノ通報

   第一條

各政府ハ左ノ事項ヲ直ニ他ノ諸政府ニ通吿シ且同時ニ公衆衞生國際事務局ニ通吿スルコトヲ要ス

一 其ノ領域內ニ於テ確認セラレタル「ペスト」、「コレラ」又ハ黄熱ノ初發眞症患者

二 旣ニ汚染セル區域外ニ於テ生ジタル「ペスト」、「コレラ」又ハ黄熱ノ初發眞症患者

三 發疹「チフス」又ハ痘瘡ノ流行ノ存在

   第二條

第一條ニ規定セラルル通吿ニハ左ノ事項ニ關スル詳細ナル情報ヲ添附シ又ハ右通吿後速ニ之ヲ追報スルモノトス

一 疾病ノ發生シタル場所

二 疾病ノ發生日、系統及病型

三 確認患者ノ數及死亡數

四 汚染區域ノ範圍

五 「ペスト」ニ付テハ齧齒獸間ニ於ケル該病ノ存在又ハ該獸ノ異常ナル斃死數ノ存在

六 「コレラ」ニ付テハ病原體保有者ガ發見セラレタル場合ニハ其ノ數

七 黄熱ニ付テハ「ステゴミア、カロプス」(「エーデス、エジプティ」)ノ存在及相對的ノ量(指數)

八 執ラレタル措置

   第三條

第一條及第二條ニ規定セラルル通吿ハ汚染國ノ首府ニ在ル外交使節ニ又ハ外交使節ナキトキハ領事館ニ之ヲ爲シ且該國ノ領域內ニ駐在スル領事官ヲシテ任意之ヲ得シムベシ

右通吿ハ公衆衞生國際事務局ニモ爲サルベク該事務局ハ「パリ」ニ在ル一切ノ外交使節ニ又ハ外交使節ナキトキハ領事館ニ及參加國ノ髙級衞生機關ニ直ニ之ヲ通報スベシ第一條ニ規定セラルル通吿ハ電信ニ依リ爲サルルモノトス

公衆衞生國際事務局ニ依リ本條約ノ參加國政府又ハ其ノ髙級衞生機關ニ發セラルル電報竝ニ本條約ノ實施ノ爲右政府及機關ニ依リ發送セラルル電報ハ官報ト看做サレ千八百七十五年七月二十二日(十日)ノ萬國電信條約第五條ニ依リ官報ニ付與セラレタル優先權ヲ享有ス

   第四條

第一條及第二條ニ規定セラルル通吿及情報ニ引續キ各政府ヲシテ傳染病流行ノ經過ヲ詳知セシムル爲公衆衞生國際事務局ニ對シ規則的ニ爾後ノ通報ヲ爲スモノトス

右通報ハ成ルベク頻繁且完全ナルコトヲ要シ(且右通報ハ患者及死亡ノ數ニ關シテハ少クトモ每週一囘爲サルベシ)殊ニ疾病ノ傳播ヲ防遏スル爲執ラレタル豫防方法ヲ示スベシ右通報ハ疾病ノ輸出ヲ防止スル爲船舶出航ノ際實行セラレタル措置及殊ニ齧齒獸又ハ昆蟲ニ關シテ執ラレタル措置ヲ詳ニスルヲ要ス

   第五條

各政府ハ其ノ領域內ニ生ジタル本條約ニ揭ゲラルル流行病及右流行病ノ一國ヨリ他國ヘノ傳播ニ影響ヲ及ボスコトアルベキ事情ニ關シ公衆衞生國際事務局ニ依リ右政府ニ爲サルルコトアルベキ情報ノ要求ニ對シ囘答スルコトヲ約ス

   第六條

鼠族(註)ハ腺「ペスト」ノ傳播ノ主タル媒介體ナルヲ以テ各政府ハ其ノ危險ヲ減少スル爲及頻繁且規則的ナル檢査ニ依リ鼠族ノ「ペスト」汚染ノ狀態ニ關シ港ニ於ケル鼠族ノ狀況ヲ常ニ知ル爲其ノ權限內ノ一切ノ手段ヲ執ルコトヲ約ス「ペスト」汚染區域ニ於テ鼠族ノ秩序的捕獲及細菌學的檢査ヲ最後ノ「ペスト」有菌鼠ノ發見後少クトモ六月間行フ爲殊ニ然リトス

 (註)鼠族ニ關スル本條約ノ規定ハ場合ニ依リ他ノ齧齒獸ニ及一般ニ「ペスト」ノ傳播ノ媒介體トシテ知ラルル動物ニ適用セラル

各政府ガ公衆衞生國際事務局ヨリ鼠族ノ「ペスト」ニ關スル港ノ狀態ニ付間斷ナク報吿ヲ受クル爲右檢査ノ方法及結果ハ普通ノ場合ニハ定期ニ又「ペスト」アル場合ニハ每月右事務局ニ通報セラルベシ

最近六月間汚染ナキ港ノ陸上ニ於テ鼠族ニ「ペスト」ノ存在スルコトヲ初テ確認シタルトキハ通報ハ最迅速ナル方法ニ依リ爲サルベシ

   第七條

本條約ニ依リ公衆衞生國際事務局ニ委託セラレタル任務ノ遂行ヲ容易ナラシムル爲該事務局ハ國際聯盟流行病情報機關(「シンガポール」ニ在ル其ノ東洋局及他ノ同種ノ局ヲ含ム)竝ニ汎米衞生事務局ノ供給スル情報ノ有益ナルニ依リ國際聯盟保健委員會竝ニ汎米衞生事務局及他ノ同樣ノ機關ト必要ナル取極ヲ爲スノ權限ヲ有ス

前記取極ニ依リ設定セラルル關係ハ千九百七年十二月九日ノ「ローマ」條約ノ規定ニ何等ノ變更ヲ齎スコトナカルベク且他ノ衞生機關ヲ以テ公衆衞生國際事務局ニ代フルノ結果ヲ生ズルコトヲ得ザルベキモノトス

   第八條

前諸規定ヲ迅速且誠實ニ遂行スルコト最重要ナルニ依リ各政府ハ右諸規定ノ適用ノ爲訓令ヲ權限アル機關ニ與フルノ必要ヲ承認ス

通吿ハ各政府ガ其ノ領域內ニ「ペスト」、「コレラ」、黄熱、發疹「チフス」又ハ痘瘡ノ患者及右疾病ノ擬似症患者ノ發生シタルコトヲ適時ニ知ルニ非ザレバ其ノ價値ナキヲ以テ各政府ハ右疾病ノ届出ヲ義務的ナラシムルコトヲ約ス

   第九條

隣國間ニ於テハ接壤地域又ハ密接ナル商業關係ヲ有スル地域ニ關シ權限アル行政下右朝廰長間ニ直接情報ノ施設ヲ設クル爲特別取極ヲ爲スコトヲ勸吿ス右取極ハ公衆衞生國際事務局ニ通報セラルベシ

  第二節 一ノ區域ヨリ來ルモノニ對シ本條約ニ規定セラルル措置ヲ施行スベキモノ又ハ施行ヲ止ムベキモノト認メ得シムル條件

   第十條

輸入セラレタル「ペスト」、「コレラ」又ハ黄熱ノ患者ノ通吿ハ右患者ノ生ジタル區域ヨリ來ルモノニ對シ左記第二章ニ規定セラルル措置ノ施行ヲ必要ナラシムルコトナシ

尤モ輸入セラレタルモノニ非ズト認メラルル「ペスト」若ハ黄熱ノ初發患者ガ發生シタルトキ、「コレラ」患者ガ流行中心地(註)ヲ形成スルトキ又ハ發疹「チフス」若ハ痘瘡ガ流行ノ狀態ニ於テ存在スルトキハ右措置ヲ施行スルコトヲ得

 (註)「流行中心地」ハ初發患者ノ周圍ニ新患者發生シ疾病ノ傳播ヲ其ノ初發ノ場所ニ限ルコト能ハザルコト判明シタル場合ニ存在スルモノトス

   第十一條

第二章ニ規定セラルル措置ヲ實際ニ汚染シタル地域ニノミ局限スル爲各政府ハ本條約ニ揭ゲラルル疾病ガ第十條第二項ニ規定セラルル狀態ニ於テ發生シタル特定ノ區域ヨリ來ルモノニ右措置ノ施行ヲ限定スルコトヲ要ス

尤モ汚染區域ニ限ラルル右局限ハ該區域ノ屬スル國ノ政府ガ(一)流行病ノ傳播ヲ防遏スル爲及(二)左記第十三條ニ規定セラルル措置ヲ施行スル爲必要ナル措置ヲ執ルノ明確ナル條件ノ下ニ於テノミ受諾セラルベキモノトス

   第十二條

國內ニ汚染地域ノ存スル國ノ政府ハ右地域ヨリノ傳染ノ危險ナキニ至リ且一切ノ防疫措置ノ執ラレタルトキハ第三條ニ揭ゲラルル條件ニ於テ他ノ政府及公衆衞生國際事務局ニ其ノ旨ヲ通知スベシ右通知後ニ於テハ第二章ニ規定セラルル措置ハ當該地域ヨリ來ルモノニ對シ更ニ施行セラルルコトヲ得ザルベシ但シ正當ノ理由ノ證明セラルベキ例外ノ事情アルトキハ此ノ限ニ在ラズ

  第三節 港ニ於ケル及船舶出航ノ際ニ於ケル措置

   第十三條

權限アル機關ハ左ノ各號ノ爲有效ナル措置ヲ執ルコトヲ要ス

一 「ペスト」、「コレラ」、黄熱、發疹「チフス」又ハ痘瘡ノ症狀ヲ呈スル者及患者ノ周圍ノ者ニシテ疾病ヲ傳播シ得ルノ狀態ニ在ルモノノ乘船ヲ防止スルコト

二 「ペスト」ノ場合ニハ鼠族ガ船內ニ入ルコトヲ防止スルコト

三 「コレラ」ノ場合ニハ積載セラルル飮料水及⻝糧ノ衞生上安全ナル樣竝ニ脚荷トシテ積載セラルル水ハ必要ニ應ジ消毒セラルル樣留意スルコト

四 黄熱ノ場合ニハ蚊ガ船內に入ルコトヲ防止スルコト

五 發疹「チフス」ノ場合ニハ一切ノ疑ハシキ者ニ對シ其ノ乘船前に虱ノ驅除ヲ行フコト

六 痘瘡ノ場合ニハ古著及襤褸類ヲ其ノ壓搾前ニ消毒スルコト

   第十四條

各政府ハ其ノ大ナル港及其ノ附近ニ於テ竝ニ成ルベク他ノ港及其ノ附近ニ於テ本條約ニ揭ゲラルル疾病ニ關スル防疫措置殊ニ第六條、第八條及第十三條ニ規定セラルル措置ノ施行ヲ確保シ得ル機關及設備ヲ有スル衞生機關ヲ維持スルコトヲ約ス

右政府ハ少クトモ年一囘公衆衞生國際事務局ニ對シ其ノ港ノ各ニ付前項ノ規定ニ關スル衞生組織ノ狀態ヲ知ラシムル通報ヲ爲スベシ事務局ハ第七條ニ依リ締結セラルル取極ニ從ヒ直接ニ又ハ他ノ國際衞生機關ノ仲介ニ依リ右情報ヲ參加國ノ髙級衞生機關ニ對シ適當ナル方法ニ依リ送付スベシ

  第二章

   第一章ニ揭ゲラルル疾病ニ對スル防禦措置

   第十五條

衞生機關ハ船舶ニ對シ其ノ何レヨリ來ルヲ問ハズ醫學的檢分ヲ行ヒ且必要アル場合ニハ精細ナル撿査ヲ行フコトヲ得

船舶ガ到著ノ際ニ受クベキ衞生上ノ措置又ハ處分ハ船內ノ實條及航海中ニ於ケル衞生上ノ事項ノ檢證ニ從ヒ決定セラル

各政府ハ本條約第一章第一節及第十四條ノ規定ニ從ヒ供給セラレタル情報竝ニ第一章第二節ニ依リ其ノ負擔シタル義務ヲ考慮シテ、外國ノ港ヨリ來ルモノガ自國ノ港ニ於テ受クベキ措置ヲ決定シ及殊ニ右措置ノ見地ヨリ外國ノ一港ガ汚染セリト認メラルベキヤ否ヤヲ決定スルモノトス

本章ニ規定セラルル措置ハ各政府ガ船舶到著ノ際ニ於ケル其ノ取扱ニ關シ規定シ得ル最大限度ヲ成スモノト解セラルベシ

  第一節 規定セラレタル措置ノ通報

   第十六條

各政府ハ汚染國ヨリ來ルモノニ對シ命ズルノ必要アリト認ムル措置ヲ直ニ自國ノ首府ニ駐在スル該汚染國ノ外交使節ニ又ハ外交使節ナキトキハ領事ニ及公衆衞生國際事務局ニ通報スルコトヲ要シ該事務局ハ直ニ之ヲ他ノ政府ニ通知スベシ右通報ハ又自國ノ領域內ニ駐在スル他ノ外交官又ハ領事館ヲシテ任意之ヲ得シムベシ

各政府ハ又右措置ノ解除又ハ變更ヲ同樣ノ方法ニ依リ通報スルコトヲ要ス

外交使節モ領事館モ首府ニナキトキハ通報ハ直接ニ關係國政府ニ爲サルルモノトス

   第二節 貨物及手荷物 輸入及通過

    第十七條

第五十條末項ノ規定ヲ留保シ陸路又ハ海路ニ依リ到著スル貨物及手荷物ハ之ガ入國若ハ通過ヲ禁ジ又ハ國境若ハ港ニ於テ之ヲ留置スルコトヲ得ズ右貨物及手荷物ニ對シ命ジ得ベキ措置ハ左ノ各號ニ揭ゲラルルモノニ限ル

イ 「ペスト」ノ場合ニハ最近著用セラレタル肌衣、衣類(手廻リ品)及最近使用セラレタル寢具ニ對シ昆蟲驅除ヲ行ヒ且必要アルトキハ消毒ヲ行フコトヲ得

 汚染驅域ヨリ來ル貨物ニシテ「ペスト」有菌鼠ヲ藏スルノ虞アルモノハ鼠族ノ逸走ヲ防止シ且之ヲ驅除スルニ必要ナル手段ヲ能フ限リ執ルニ非ザレバ荷卸ヲ爲スコトヲ得ズ

ロ 「コレラ」ノ場合ニハ最近著用セラレタル肌衣、衣類(手廻り品)及最近使用セラレタル寢具ニ對シ消毒ヲ行フコトヲ得

本條ノ規定ニ拘ラズ生魚、生貝、生野菜ハ「コレラ、ヴィブリオ」ノ殺菌措置ニ付セラレザル限リ之ガ輸入ヲ禁止スルコトヲ得

ハ 發疹「チフス」ノ場合ニハ著用セラレタル肌衣、衣類(手廻リ品)及使用セラレタル寢具竝ニ大貨物トシテ運送セラルルニ非ザル襤褸類ニ對シ昆蟲驅除ヲ行フコトヲ得

ニ 痘瘡ノ場合ニハ最近著用セラレタル肌衣、衣類(手廻リ品)及最近使用セラレタル寢具竝ニ大貨物トシテ運送セラルルニ非ザル襤褸類ニ對シ消毒ヲ行フコトヲ得

   第十八條

消毒ノ方法及場所竝ニ鼠族ハ昆蟲(蚤、虱、蚊等)ノ驅除ヲ確保スル爲執ルベキ手段ハ到達國ノ機關ニ依リ定メラル右處分ハ成ルベク物件ノ損害少キ樣爲サルコトヲ要ス價値少キ衣類及他ノ物件竝ニ大貨物トシテ運送セラルルニ非ザル襤褸類ハ之ヲ焼却スルコトヲ得

消毒、鼠族驅除又ハ昆蟲驅除及前記物件ノ破毀ニ依リ生ズル損害ニ對シ爲スコトアルベキ賠償ニ關スル問題ハ各國ニ於テモ之ヲ解決スルモノトス

右處分ニ際シ衞生機關ガ料金ヲ直接ニ又ハ會社若ハ個人ノ仲介ニ依リ徵收スル場合ニハ右料金ハ豫メ公示セラレタル料金率ニシテ其ノ全體トシテノ適用ノ結果國又ハ衞生機關ノ利得ノ源泉タラザル樣作成セラレタルモノニ依リ定メラルルコトヲ要ス

   第十九條

書信、印刷物、書籍、新聞紙、業務用書類等ハ衞生措置ニ付セラルルコトナシ小包郵便物ハ本條約第十七條ニ規定セラルル措置ヲ課シ得ル物件ヲ包有スル場合ニ非ザレバ制限ヲ受クルコトナカルベシ

   第二十條

貨物又ハ手荷物ガ第十七條ニ規定セラルル處分ヲ受ケタルトキハ利害關係人ハ執ラレタル措置ヲ記載スル證明書ノ無料交付ヲ衞生機關ニ對シ請求スルノ權利ヲ有ス

  第三節 移民ニ關スル規定

   第二十一條

出移民國ニ於テハ衞生機關ハ移民ノ出發前ニ其ノ衞生上ノ檢査ヲ行フコトヲ要ス

移民通過國及移民到達國ノ國境ニ於テ衞生上ノ理由ニ依リ拒絶セラルル可能性ヲ最小限度ニ減少スル爲右檢査ガ充スコトヲ要スル條件ヲ定ムル目的ヲ以テ出移民國、入移民通過國ノ間ニ特別取極ヲ締結スルコトヲ勸吿ス

又右取極ニハ移民ガ出發國ニ於テ受クルヲ要スル傳染病豫防措置ヲ定ムルコトヲ勸吿ス

   第二十二條

移民ノ乘船スル都市又ハ港ニハ適當ナル保健衞生機關殊ニ(一)監視及醫學的救療ノ機關竝ニ必要ナル衞生上及防疫上ノ材料(二)移民ガ衞生上ノ手續ヲ受ケ、一時宿泊シ竝ニ必要ナル一切ノ醫學的檢分及其ノ飮料品⻝料品ノ檢査ヲ受ケ得ル設備ニシテ國ノ監督スルモノ(三)實際乘船スルニ際シ醫學的檢分ヲ爲スベキ港內ニ於ケル場所ヲ有スルコトヲ勸吿ス

   第二十三條

移民船ニハ航海中必要ニ應ジ豫防接種ヲ施行シ得ルニ充分ナル「ワクチン」(痘苗、「コレラ」豫防液等)ヲ備フルコトヲ勸吿ス

  第四節 港及海境ニ於ケル措置

   甲 「ペスト」

   第二十四條

左ノ船舶ハ汚染船舶ト認メラル

一 船內ニ人ノ「ペスト」アルモノ

二 又ハ乘船後六日ヲ經過シテ船內ニ人ノ「ペスト」發生シタルモノ

三 又ハ船內ニ「ペスト」有菌鼠ノ存在ノ確認セラレタルモノ

左ノ船舶ハ嫌疑船舶ト認メラル

一 乘船後六日以內ニ船內ニ人ノ「ペスト」發生シタルモノ

二 又ハ船舶ニ付鼠族ニ關スル調査ノ結果原因不明ノ以上ナル斃死數ノ存在ガ明ニセラレタルモノ

嫌疑船舶ハ適當ナル設備ヲ有スル港ニ於テ本條約ニ規定セラルル措置ノ施行ヲ受クル迄引續キ嫌疑船舶ト認メラル

汚染港ヨリ來リタル船舶ト雖モ出航ノ際、航海中又ハ到著ノ際船內ニ人又ハ鼠族ノ「ペスト」ナク且鼠族ニ關スル調査ノ結果船內ニ異常ナル斃死數ノ存在ガ確認セラレザリシトキハ汚染ナキ船舶ト認メラル

   第二十五條

「ペスト」ノ汚染船舶ハ左ノ措置ヲ受ク

一 醫學的檢分

二 患者ハ直ニ下船セシメラレ且隔離セラル

三 患者ニ接シタル一切ノ者及港ノ衞生機關ニ於テ疑アリト認ムベキ理由アル一切ノ者ハ成ルベク下船セシメラル右ノ者ハ之ヲ停留、監視又ハ停留後引續キ監視ニ付スルコトヲ得(註)但シ右措置ノ全期間ハ船舶到著ノ時ヨリ六日ヲ超ユルコトヲ得ズ

 (註)本條約ニ於テ監視ヲ規定スル一切ノ場合ニ於テ衞生機關ハ充分ナル衞生上ノ保障ヲ提供セザル者ヲ例外トシテ停留ニ付スルコトヲ得

  停留又ハ監視ニ付セラレタル者ハ衞生機關ニ於テ必要ト認ムル一切ノ臨床的又ハ細菌學的檢査ニ應ズルコトヲ要ス

港ノ衞生機關ハ最近ノ患者發生ノ日、船舶ノ狀態及其ノ他ノ狀況ニ依リ右措置ノ中適當ト認ムルモノヲ施行スルモノトス右期間內船員ノ下船ハ衞生機關ニ届出デラレタル職務上ノ理由ニ依ル場合ヲ除キ之ヲ禁ズルコトヲ得

四 使用セラレタル寢具、汚レタル肌衣、手廻リ品及他ノ物件ニシテ衞生機關ノ意見ニ依リ汚染セリト認メラルルモノハ昆蟲驅除及必要アルトキハ消毒ヲ受ク

五 船舶ノ部分ニシテ「ペスト」患者ノ居住シタルモノ又ハ衞生機關ノ意見ニ依リ汚染セリト認メラルルモノハ昆蟲驅除及必要アルトキハ消毒ヲ受ク

六 衞生機關ハ載貨ノ性質及荷積ノ狀態ニ依リ荷卸セズシテ鼠族ノ全部ノ驅除ヲ爲シ得ト認ムルトキハ荷卸前ニ鼠族驅除ヲ命ズルコトヲ得右ノ場合ニ於テハ船舶ハ荷卸後新ナル族驅除ヲ受クルコトナカルベシ他ノ場合ニ於テハ齧齒獸ノ完全ナル驅除ハ船艙ノ空虚ナル狀態ニテ船內ニ於テ行ハルベシ空船ニ付テハ右處分ハ荷積前ニ能フ限リ速ニ爲サルベシ

鼠族驅除ハ船舶ニ及載貨アルトキハ載貨ニ能フ限リ損害ヲ及ボサザル樣行ハルルコトヲ要ス右處分ハ二十四時間ヲ超エ繼續スルコトヲ得ザルベシ鼠族驅除ノ處分ニ要シタル費用及爲スコトアルベキ賠償ハ第十八條ニ規定セラルル原則ニ從ヒ解決セラルベシ

船舶ガ其ノ載貨ノ一部ノミヲ荷卸スルコトヲ要シ且港ノ機關ニ於テ完全ナル鼠族驅除ヲ行フコト能ハズト認ムルトキハ鼠族ガ貨物ノ荷卸ヲ利用シ又ハ他ノ方法ニテ船舶ヨリ陸地ニ到ルコトヲ防止スル爲衞生機關ノ充分ト認ムル一切ノ豫防措置(隔離ヲ含ム)ヲ執ルコトヲ條件トシテ該船舶ハ其ノ載貨ノ右部分ヲ荷卸スルニ必要ナル期間港內ニ碇泊スルコトヲ得ベシ

荷卸ハ衞生機關ノ監督ノ下ニ行ハルベク右機關ハ荷卸ニ使用セラルル者ニ感染スルコトヲ豫防スル爲必要ナル一切ノ措置ヲ執ルベシ右ノ者ハ荷卸ニ從事スルコトヲ止メタル時ヨリ六日ヲ超ユルコトヲ得ザルベキ停留又ハ監視ニ付セラルベシ

   第二十六條

「ペスト」ノ嫌疑船舶ハ第二十五條一、四、五及六ニ規定セラルル措置ヲ受ク

尚船員及船客ハ之ヲ船舶到著ノ時ヨリ六日ヲ超エザルベキ監視ニ付スルコトヲ得右期間內船員ノ下船ハ衞生機關ニ届出デラレタル職務上ノ理由ニ依ル場合ヲ除キ之ヲ禁ズルコトヲ得

   第二十七條

「ペスト」ノ汚染ナキ船舶ハ到著港ノ衞生機關ガ之ニ對シ左ノ措置ヲ命ジ得ルコトノ留保ノ下ニ卽時交通許可ヲ與ヘラル

一 船舶ガ汚染ナキ船舶ノ定義ニ揭ゲラルル條件ニ合致スルヤ否ヤヲ確認スル爲ノ醫學的檢分

二 特別ノ場合ニ且充分ナル理由(右ハ書面ヲ以テ船長ニ通吿セラルベシ)ニ基キテ爲ス第二十五條六ニ規定セラルル條件ノ下ニ於ケル船內ノ鼠族ノ驅除

三 船員及船客ハ之ヲ船舶ガ汚染港出航ノ時ヨリ六日ヲ超エザルベキ監視ニ付スルコトヲ得右期間內船員ノ下船ハ衞生機關ニ届出デラレタル職務上ノ理由ニ依ル場合ヲ除キ之ヲ禁ズルコトヲ得

   第二十八條

一切ノ船舶ハ內國沿岸航行ニ從事スルモノヲ除キ定期ニ鼠族驅除ヲ受ケ又ハ常ニ船內ノ鼠族ノ數ガ最小限度ナル如キ狀態ニ爲シ置カルルコトヲ要ス右船舶ハ第一ノ場合ニ於テハ鼠族驅除施行證明書ヲ又第二ノ場合ニ於テハ鼠族驅除免除證明書ヲ受ク

各政府ハ其ノ港中船舶ノ鼠族驅除ヲ行フニ必要ナル設備及職員ヲ有スル港ヲ公衆衞生國際事務局ノ仲介ニ依リ通知スルコトヲ要ス

鼠族驅除施行證明書又ハ鼠族驅除免除證明書ハ前記港ノ衞生機關ニ依リテノミ發給セラルベシ右證明書ノ有效期間ハ六月トス但シ母港ニ歸航スル船舶ニ對シテハ更ニ一月ノ猶豫ヲ許與ス

本條約第二項ニ揭ゲラルル港ノ衞生機關ハ有效ナル證明書ガ之ニ揭示セラレザルトキハ審問及檢分ノ後左ノ措置ヲ執ルコトヲ得ベシ

イ 衞生機關自ラ船舶ノ鼠族驅除處分ヲ行ヒ又ハ自己ノ指揮及監督ノ下ニ右處分ヲ行ハシムルコト

 右處分ガ滿足ニ行ハレタルトキハ衞生機關ハ日附ヲ記シタル鼠族驅除施行證明書ヲ發給スルコトヲ要ス衞生機關ハ船內ノ鼠族驅除ヲ事實上確保スル爲執ルベキ技術的方法ヲ各場合ニ付決定スベシ執ラレタル鼠族驅除方法及驅除セラレタル鼠族ノ數ニ關スル詳報ハ右證明書ニ記載セラルベシ鼠族驅除ハ船舶ニ及載貨アルトキハ載貨ニ能フ限リ損害ヲ及ボサザル樣行ハルルコトヲ要ス右處分ハ二十四時間ヲ超エ繼續スルコトヲ得ザルベシ空船ニ付テハ右處分ハ荷積前ニ行ハルルコトヲ要ス鼠族驅除ノ處分ニ要シタル費用及爲スコトアルベキ賠償ハ第十八條ニ規定セラルル原則ニ從ヒ解決セラルベシ

ロ 船舶ガ其ノ船內ノ鼠族ノ數最小限度ナル如キ狀態ニ在リト衞生機關ニ於テ認メタルトキハ日附及理由ヲ記シタル鼠族驅除免除證明書ヲ發給スルコト

鼠族驅除施行證明書及鼠族驅除免除證明書ハ能フ限リ同一ノ様式ニ依リ作成セラルベシ右證明書ノ雛形ハ公衆衞生國際事務局ニ依リ作成セラルベシ

各國ノ權限アル機關ハ本條ニ基キ執ラレタル措置ノ記載書及本條第二項ニ揭ゲラルル港ニ於テ鼠族驅除ヲ受ケ又ハ鼠族驅除免除證明書ノ發給ヲ受ケタル船舶ノ數ヲ每年公衆衞生國際事務局ニ提供スルコトヲ約ス

公衆衞生國際事務局ハ本條ニ基キ執ラレタル措置及其ノ成績ニ關スル情報ノ交換ヲ確保スル爲第十四條ニ從ヒ一切ノ處置ヲ執ルコトヲ依囑セラル

本條ノ規定ハ本條約第二十四條乃至第二十七條ニ依リ衞生機關ニ認メラレタル權利ヲ害スルコトナシ

各政府ハ港、其乃附屬地及附近竝ニ艀船及沿岸航行船內ニ於ケル鼠族驅除ヲ確保スル爲權利アル機關ヲシテ望マシキ且實行可能ナル一切ノ措置ヲ執ラシムルコトニ留意スベシ

   乙「コレラ」

   第二十九條

船舶ハ船內ニ「コレラ」患者アルカ又ハ港ニ船舶ノ到著前五日間ニ「コレラ」患者アリタルトキハ汚染船舶ト認メラル

船舶ハ出航ノ際又ハ航海中「コレラ」患者アリシモ到著前五日以內ニ新患者ナカリシトキハ嫌疑船舶ト認メラル右船舶ハ本條約ニ規定セラルル措置ノ施行ヲ受クル迄ハ引續キ嫌疑船舶ト認メラル

船舶ハ汚染港ヨリ來ルカ又ハ汚染區域ヨリ來ル者ガ乘船スルトキト雖モ出航ノ際、航海中又ハ到著ノ際「コレラ」患者ナカリシトキハ汚染ナキ船舶ト認メラル

「コレラ」ノ臨床的症狀ヲ呈スル患者ハ之ニ「ヴィブリオ」ヲ發見セザル場合又ハ之ニ「コレラ、ヴィブリオ」ノ特徵ヲ呈セザル「ヴィブリオ」ヲ發見シタル場合ニ於テモ「コレラ」ニ付規定セラルル一切ノ措置ヲ受ク

船舶到著ノ際發見セラレタル病原體保有者ハ其ノ下船シタル後到著國ノ國民ガ其ノ國內法令ニ依リ課セラルルコトアルベキ一切ノ義務ニ服スルモノトス

   第三十條

「コレラ」ノ汚染船舶ハ左ノ措置ヲ受ク

一 醫學的檢分

二 患者ハ直ニ下船セシメラレ且隔離セラル

三 船員及船客ハ之ヲ下船セシメ且船舶到著ノ時ヨリ五日ヲ超エザル期間內停留又ハ監視ニ付スルコトヲ得

 尤モ六月ニ滿タズ且六日ヲ經過シタル豫防接種ニ依リ「コレラ」ニ對シ免疫セラレタルコトヲ證明スル者ハ之ヲ監視ニ付スルコトヲ得ルモ停留ニ付スルコトヲ得ザルベシ

四 使用セラレタル寢具、汚レタル肌衣、手廻リ品及他ノ物件(⻝料品ヲ含ム)ニシテ港ノ衞生機關ノ意見ニ依リ最近汚染セリト認メラルルモノハ消毒セラル

五 船舶ノ部分ニシテ「コレラ」患者ノ居住シタルモノ又ハ衞生機關ノ意見ニ依リ汚染セリト認メラルルモノハ消毒セラル

六 荷卸ハ衞生機關ノ監督ノ下ニ行ハル右機關ハ荷卸ニ使用セラルル者ニ感染スルコトヲ豫防スル爲必要ナル一切ノ措置ヲ執ルモノトス右ノ者ハ荷卸ニ從事スルコトヲ止メタル時ヨリ五日ヲ超ユルコトヲ得ザルベキ停留又ハ監視ニ付セラルベシ

七 船內ニ貯藏セラルル飮料水ガ疑ハシト認メラルルトキハ右飮料水ハ消毒後排除セラレ且其ノ貯槽ノ消毒後良質ノ飮料水ヲ以テ換ヘラルベシ

八 衞生機關ハ水脚荷ガ汚染港ニ於テ汲込マレタルモノナルトキハ豫メ消毒セズシテ之ヲ排除スルコトヲ禁ズルコトヲ得

九 人體ノ排泄物及船舶ノ汚水ハ豫メ消毒セズシテ之ヲ港ノ水中ニ放流シ又ハ投棄スルコトヲ禁ズルコトヲ得

   第三十一條

「コレラ」ノ嫌疑船舶ハ第三十條一、四、五、七、八及九ニ規定セラルル措置ヲ受ク

船員及船客ハ之ヲ船舶到著ノ時ヨリ五日ヲ超エザルベキ監視ニ付スルコトヲ得右期間內船員ノ下船ハ港ノ衞生機關ニ届出デラレタル職務上ノ理由ニ依ル場合ヲ除キ之ヲ禁ズルコトヲ勸吿ス

   第三十二條

船內ニ「コレラ」ノ臨床的症狀ヲ呈スル患者アルノミノ理由ニ依リ汚染船舶又ハ嫌疑船舶ナリト宣吿セラレタル船舶ハ少クトモ二十四時間ノ間隔ヲ置キテ二囘ノ細菌學的檢査ヲ行ヒ「コレラ、ヴィブリオ」又ハ他ノ疑ハシキ「ヴィブリオ」ヲ發見セザルトキハ之ヲ汚染ナキ船舶トス

   第三十三條

「コレラ」ノ汚染ナキ船舶ハ卽時交通許可ヲ與ヘラル

到著港ノ衞生機關ハ右船舶ニ關シ第三十條一、七、八及九ニ規定セラルル措置ヲ命ズルコトヲ得

船員及船客ハ之ヲ船舶到著ノ時ヨリ五日ヲ超エザルベキ監視ニ付スルコトヲ得右期間內船員ノ下船ハ港ノ衞生機關ニ届出デラレタル職務上ノ理由ニ依ル場合ヲ除キ之ヲ禁ズルコトヲ得

   第三十四條

「コレラ」ノ豫防接種ハ「コレラ」ノ流行ヲ阻止シ從テ該病ノ傳播ノ機會ヲ減少セシムル爲有效ナルコト立證セラレタル方法ナルニ依リ事情ノ許ス度ニ成ルベク廣ク右豫防接種ヲ「コレラ」流行中心地ニ於テ行フコト及右豫防接種ヲ受ケタル者ニ對シテハ拘束的措置ニ關シ特典ヲ與フルコトヲ衞生機關ニ對シ勸吿ス

   丙 黄熱

   第三十五條

船舶ハ船內ニ黄熱患者アルカ又ハ出航ノ際若ハ航海中黄熱患者アリタルトキハ汚染船舶ト認メラル

船舶ハ黄熱患者ナカリシト雖モ汚染港若ハ黄熱ノ地方的中心地ト密接ノ關係アル汚染ナキ港ヨリ六日未滿ノ航海ヲ經テ來ルカ又ハ六日ヲ超ユル航海ヲ經テ來ルトモ該港ヨリノ有翅ノ「ステゴミア」(「エーデス、エジプティ」)ヲ運ビ得ベシト信ズベキ理由アルトキハ嫌疑船舶ト認メラル

船舶ハ黄熱ノ汚染港ヨリ來ルト雖モ船內ニ黄熱患者アリタルコトナク且六日ヲ超ユル航海ヲ經テ來リ有翅ノ「ステゴミア」ヲ運ブモノト信ズベキ理由ナキカ又ハ該船舶ガ左ノ事項ニ付到著港ノ機關ガ充分ト認ムル證明ヲ爲ストキハ汚染ナキ船舶ト認メラル

イ 該船舶ガ出航港ニ碇泊中住民アル陸地ヨリ最小限度二百メートルノ距離ニ且浮棧橋ヨリ「ステゴミア」ノ來ル虞ナキ距離ニ在リタルコト

ロ 又ハ該船舶ガ出航ノ際蚊ヲ驅除スル爲有效ナル燻蒸ヲ受ケタルコト

   第三十六條

黄熱ノ汚染船舶ハ左ノ措置ヲ受ク

一 醫學的檢分

二 患者ハ下船セシメラレ且發病後五日以內ノ患者ハ蚊ヘノ感染ヲ避クル樣隔離セラル

三 其ノ他ノ下船者ハ下船ノ時ヨリ六日ヲ超エザルベキ停留又ハ監視ニ付セラル

四 船舶ハ住民アル陸地ヨリ最小限度二百メートルノ距離ニ且浮棧橋ヨリ「ステゴミア」ノ來ル虞ナキ距離ニ繋留セラルベシ

五 發育ノ態樣何レニ在ルヲ問ハズ蚊ノ驅除ハ能フ限リ貨物ノ荷卸前ニ船內ニ於テ行ハルルモノトス荷卸ガ蚊ノ驅除前ニ行ハルルトキハニ從事スル者ハ荷卸ニ從事スルコトヲ止メタル時ヨリ六日ヲ超エザルベキ停留又ハ監視ニ付セラルベシ

   第三十七條

黄熱ノ嫌疑船舶ハ之ニ第三十六條一、三、四及五ニ規定モラルル措置ヲ受ケシムルコトヲ得

尤モ船舶ガ航海六日ニ滿タズシテ汚染ナキ船舶ニ關スル第三十五條イ又ハロニ規定セラルル條件ヲ具備スルトキハ該船舶ハ第三十六條一及三ニ規定セラルル措置竝ニ燻蒸ノミヲ受ク

船舶ノ汚染港出航後三十日ヲ經過シ且航海中船內ニ患者ノ發生ナカリシトキハ該船舶ハ衞生機關ガ必要ト認ムルトキ豫メ燻蒸ヲ行ヒタル上交通許可ヲ與ヘラルルコトヲ得

   第三十八條

黄熱ノ汚染ナキ船舶ハ醫學的檢分ノ後交通許可ヲ與ヘラル

   第三十九條

第三十六條及第三十七條ニ規定セラルル措置ハ「ステゴミア」ノ棲息スル地方ノミニ關スルモノニシテ右措置ハ該地方ニ於ケル氣候ノ現狀及「ステゴミア」指數ヲ考慮シテ施行セラルルコトヲ要ス

其ノ他ノ地方ニ於テハ右措置ハ衞生機關ニ依リ必要ト認メラルル範圍內ニ於テ施行セラルルモノトス

   第四十條

黄熱ノ汚染港ニ寄航シタル船舶ノ船長ニ對シ蚊及其ノ幼蟲ノ來リ得ル船內ノ部分特ニ⻝糧庫、炊事場、汽鑵室、貯水槽及「ステゴミア」ノ殊ニ棲ミ易キ場所ニ於能フ限リ蚊及其ノ幼蟲ノ捜査及秩序的驅除ヲ航海中行フコトヲ特ニ勸吿ス

   丁 發疹「チフス」

   第四十一條

航海中船內ニ發疹「チフス」患者アリタルカ又ハ到著ノ際右患者アル船舶ハ之ニ左ノ措置ヲ受ケシムルコトヲ得

一 醫學的檢分

二 患者ハ直ニ下船セシメラレ、隔離セラレ且虱ノ驅除ヲ受ク

三 其ノ他ノ者ニシテ虱ヲ保持スト又ハ感染ノ危險ニ曝サレタリト信ズベキ理由アルモノモ亦之ニ虱ノ驅除ヲ行ヒ且特定ノ期間內之ヲ監視ニ付スルコトヲ得ベク右監視ハ如何ナル場合ニ於テモ虱ノ驅除ノ時ヨリ十二日ヲ超ユルコトヲ得ズ

四 使用セラレタル寢具、肌衣、手廻リ品及他ノ物件ニシテ衞生機關ノ意見ニ依リ汚染セリト認メラルルモノハ昆蟲驅除ヲ受ク

五 船舶ノ部分ニシテ發疹「チフス」患者ノ居住シ且衞生機關ノ意見ニ依リ汚染セリト認メラルルモノハ昆蟲驅除ヲ受ク

右船舶ハ直ニ交通許可ヲ與ヘラル

各政府ハ船內ニ發疹「チフス」ナカリシ船舶ニテ來ルモ發疹「チフス」ノ流行スル區域ヲ去リテヨリ十二日未滿ノ者ニ對シ其ノ下船後ニ於テ之ガ監視ヲ確保スルニ適當ナリト認ムル措置ヲ執ルモノトス

   戊 痘瘡

   第四十二條

航海中又ハ到著ノ際船內ニ痘瘡患者アリタル船舶ハ之ニ左ノ措置ヲ受ケシムルコトヲ得

一 醫學的檢分

二 患者ハ直ニ下船セシメラレ且隔離セラル

三 其ノ他ノ者ニシテ船內ニ於テ感染ノ危險ニ曝サレタリト信ズベキ理由アリ且衞生機關ニ於テ最近ノ種痘ニ依リ又ハ旣往ノ痘瘡ニ依リ充分ニ保護セラレズト認ムルモノハ之ニ種痘ヲ行ヒ若ハ之ヲ監視ニ付シ又ハ種痘後引續キ之ヲ監視ニ付スルコトヲ得右監視ノ期間ハ事情ニ應ジテ定メラルベキモ如何ナル場合ニ於テモ到著ノ時ヨリ十四日ヲ超ユルコトヲ得ズ

四 最近使用セラレタル寢具、汚レタル肌衣、手廻リ品及他ノ物件ニシテ衞生機關ノ意見ニ依リ最近汚染セリト認メラルルモノハ消毒セラル

五 船舶ノ部分ニシテ痘瘡患者ノ居住シ且衞生機關ノ意見ニ依リ汚染セリト認メラルルモノニ限リ消毒セラル

右船舶ハ直ニ交通許可ヲ與ヘラル

各政府ハ種痘ニ依リ保護セラレザル者ニシテ船內ニ痘瘡ナカリシ船舶ニテ來ルモ痘瘡ノ流行スル區域ヲ去リテヨリ十四日未滿ノモノニ對シ其ノ下船後ニ於テ之ガ監視ヲ確保スルニ適當ナリト認ムル措置ヲ執ルモノトス

   第四十三條

痘瘡ノ流行狀態ニ在ル國ニ寄航スル船舶ハ船員ノ種痘又ハ再種痘ヲ確保スル爲能フ限ノ一切ノ注意ヲ爲スコトヲ勸吿ス

又政府ガ種痘及再種痘ヲ成ルベク廣ク殊ニ港及國境附近ニ於テ行フコトヲ勸吿ス

   己 通則

   第四十四條

船長及船醫ハ航海中ニ於ケル船舶ノ衞生狀態ニ關シ衞生機關ニ依リ爲サルル一切ノ質問ニ應答スルコトヲ要ス

船長及船醫ガ出航以來船內ニ「ペスト」、「コレラ」、黄熱、發疹「チフス」又ハ痘瘡ノ患者ナク且鼠族ノ異常ナル斃死數ナカリシコトヲ言明スルトキハ衞生機關ハ之ニ對シ正式ノ申吿又ハ宣誓ニ依ル申吿ヲ要求スルコトヲ得

   第四十五條

衞生機關ハ前期甲、乙、丙、丁及戊ニ揭ゲラルル措置ノ施行ニ付テハ船醫ノ存在及航海中ニ實施セラレタル措置殊ニ鼠族駆除ノ爲ニ實施セラレタルモノヲ參酌スベシ

國ノ衞生機關ハ船舶所屬國ニ依リ特ニ任命セラレタル船醫ヲ有スル汚染ナキ船舶ニ對シ醫學的檢分及他ノ措置ヲ免除スルコトヲ得右ノ點ニ付テハ關係國間ニ協定ヲ爲スモノトス

   第四十六條

一國ヨリ來ルモノニ對シ施行スベキ措置ニ關シテハ該國ガ傳染病ヲ防遏スル爲及他國ヘノ其ノ傳播ヲ阻止スル爲執リタル措置ヲ各政府ニ於テ參酌スルコトヲ勸吿ス

第十四條及第五十一條ニ揭ゲラルル條件ヲ具備スル諸港ヨリ來ル船舶ハ右事實ノミニテハ到著港ニ於テ特典ヲ享有スルノ權利ヲ有セズ但シ各政府ハ右諸港ヨリ來ル船舶ニ對シテハ到著港ニ於テ執ラルル一切ノ措置ガ最小限度ニ輕減セラルル樣右諸港ニ於テ旣ニ執ラレタル措置ヲ充分參酌スルコトヲ約ス右目的ノ爲竝ニ航海、通商及取引上ノ不便ヲ成ルベク少カラシムル爲特別取極ヲ締結スルコトガ有益ナリト認メラルベキ一切ノ場合ニ於テ本條約第五十七條ニ規定セラルル範圍內ノ特別取極ヲ締結スルコトヲ勸吿ス

   第四十七條

汚染地域ヨリ來ルル船舶ニ對シテ衞生機關ノ充分ト認ムル衞生措置ヲ受ケタルモノハ同一國ノ港タルト否トヲ問ハズ他ノ港ニ到著ノ際再ビ右措置ヲ受クルコトナカルベシ但シ爾後前記衞生措置ノ施行ヲ必要ナラシムル事故發生シタルコトナク又燃料積込以外ノ目的ヲ以テ汚染港ニ寄航シタルコトナキコトヲ條件トス

港ニ於テ陸地ト交通ヲ爲サズシテ單ニ船客ヲ下船セシメ竝ニ其ノ手荷物及郵便物ヲ陸揚シ又ハ單ニ郵便物若ハ右港若ハ汚染區域ト交通セザリシ船客(其ノ手荷物ノ有無ニ拘ラズ)ヲ搭載シタル船舶ハ右港ニ寄航シタルモノト看做サルルコトナシルコトナシ黄熱ニ關シテハ船舶ハ右ノ外成ルベク住民アル陸地ヨリ最小限度二百メートルノ距離ニ且浮棧橋ヨリ「ステゴミア」ノ來ル虞ナキ距離ニ在リタルコトヲ要ス

   第四十八條

衞生措置ヲ施行スル港ノ機關ハ船長又ハ他ノ一切ノ利害關係人ニ對シ其ノ要求アリタル都度措置ノ性質、施行セラレタル方法、措置ヲ受ケタル船舶ノ部分及措置施行ノ理由ヲ明記シタル證明書ヲ無料ニテ發給ス

右機關ハ又汚染船舶ニテ到著シタル船客ニ對シ其ノ要求ニ依リ到著ノ時竝ニ該船客及其ノ手荷物ガ受ケタル措置ヲ示シタル證明書ヲ無料ニテ發給スベシ

  第五節 總則

   第四十九條

左ノ事項ヲ勸吿ス

一 健康證明書ハ一切ノ港ニ於テ無料ニテ發給セラルコト

二 領事官ノ査證料ハ實費ヲ超エザル樣相互的ニ低減セラルルコト

三 健康證明書ハ其ノ發給國ノ國語ノ外ニ少クトモ海運界ニ於ケル通用語ノ一ヲ以テ作成セラルルコト

四 領事官ノ査證及健康證明書ノ漸次的廢止ニ到達スル目的ヲ以テ本條約第五十七條ノ精神ニ基キ特別協定ノ締結セラルルコト

   第五十條

船舶ノ衞生狀態如何ニ拘ラズ之ヲ容ルルニ充分ナル機關及設備ヲ有スル港ノ數ハ各國ニ付其ノ取引及航海ノ重要ノ程度ニ比例スルコト望マシトス尤モ各政府ガ共通ノ檢疫所ヲ設クル爲協定スルノ權利ヲ害スルコトナク各國ハ其ノ各海ノ沿岸ノ港中少クトモ一港ニハ右ノ機關及設備ヲ設クルコトヲ要ス

尚一切ノ大ナル海港ハ少クトモ汚染ナキ船舶ガ其ノ到著ノ際直ニ所定ノ衞生措置ヲ受ケ得ル樣且之ガ爲他港ニ囘航セシメラルルコトナキ樣設備セラルルコトヲ勸吿ス

汚染船舶又ハ嫌疑船舶ニシテ之ヲ容ルル設備ナキ港ニ到著スルモノハ此ノ種ノ船舶ヲ容ルル港ノ一ニ該船舶ノ危險負擔ニ於テ囘航スルコトヲ要ス

各政府ハ「ペスト」、「コレラ」又ハ黄熱ノ汚染港ヨリ來ルモノヲ容ルル其ノ國ノ港殊ニ汚染船舶又ハ嫌疑船舶ヲ容ルル港ヲ公衆衞生國際事務局ニ通知スベシ

   第五十一條

大ナル海港ニ於テハ左ノモノヲ設クルコトヲ勸吿ス

イ 港ノ正規ノ醫務機關竝ニ船員及港ノ住民ノ衞生狀態ニ關スル當時ノ醫學的監視

ロ 患者ノ輸送用具竝ニ患者ノ隔離及疑ハシキ者ノ停留ニ適當ナル場所

ハ 有效ナル消毒及昆蟲駆除ニ必要ナル施設、細菌學的實驗所及痘瘡又ハ他ノ疾病ニ對シ直ニ豫防接種ヲ爲シ得ル機關

ニ 港ニ於テ用フル安全ナル飮料水ノ供給機關竝ニ塵芥汚物ノ掃除及汚水ノ排除ノ爲ノ能フ限リ安全ナル方法ノ施行

ホ 船舶、造船所、船渠及倉庫ノ鼠族駆除ノ爲ノ適當且充分ナル職員及必要ナル設備

へ 鼠族ノ捜索及檢査ノ爲ノ常設機關

尚倉庫及船渠ハ能フ限リ防鼠的ナルベク又港ノ下水網ハ市街ノ下水網ヨリ分離セラルルコトヲ勸吿ス

   第五十二條

各政府ハ其ノ港又ハ沿岸ニ寄航スルコトナクシテ其ノ領水(註)ヲ通過スル船舶ニ對シテハ何等ノ檢疫ヲモ爲サザルベシ

 (註)「領水」ナル語ハ嚴格ナル法律上ノ意義ニ解セラルコトヲ要シ「スエズ」、「パナマ」及「キール」ノ諸運河ヲ含マズ

船舶ガ何等カノ理由ニ依リ港又ハ沿岸ニ寄航スルコトアルベキ場合ニハ右船舶ハ國際諸條約ノ範圍內ニ於テ右ノ港又ハ沿岸ノ所屬國ノ衞生法規ニ從フベシ

   第五十三條

本條約ニ揭ゲラルル疾病ノ傳播ヲ容易ナラシムルガ如キ特ニ不良ナル衞生狀態ヲ呈スル船舶殊ニ混雜セル船舶ニ對シテハ特別ノ措置ヲ規定スルコトヲ得

   第五十四條

本條約ノ規定ニ基キ港ノ機關ニ依リ課セラルル義務ニ服從スルコトヲ欲セザル船舶ハ出航スルコト自由タリ

尤モ右船舶ハ其ノ隔離セラルルコト及其ノ貨物ガ本條約第二章第二節ニ規定セラルル措置ニ付セラルルコトヲ條件トシテ該貨物ヲ陸揚スルコトヲ許可セラルルコトヲ得

右船舶ハ又船客ガ下船ノ要求ヲ爲ストキハ該船客ガ衞生機關ニ依リ命ゼラルル措置ニ服從スルコトヲ條件トシテ之ヲ下船セシムルコトヲ許可セラルルコトヲ得

右船舶ハ又隔離セラレタル儘燃料、⻝糧及水ヲ積込ムコトヲ得

   第五十五條

各政府ハ單一ナル衞生料金表ヲ定ムルコトヲ約ス右料金表ハ之ヲ公示スルコトヲ要シ且其ノ料金ハ低廉ナルコトヲ要ス右料金表ハ自國旗ヲ揭グルモノト外國旗ヲ揭グルモノトノ差別ナク一切ノ船舶ニ對シ又外國人ニ對シテハ內國人ト同一ノ條件ニ依リ港ニ於テ適用セラルベシ

   第五十六條

國際沿岸航行ニ從事スル船舶ハ關係國間ノ合意ニ依リ設ケラルル特別措置ノ目的タルベシ但シ本條約第二十八條ノ規定ハ一切ノ場合ニ於テ右船舶ニ適用セラルベシ

   第五十七條

各政府ハ其ノ特殊ノ地位ヲ考慮シ及本條約ニ規定セラルル衞生措置ノ施行ヲ一層有效ナラシメ且其ノ煩瑣ヲ一層少カラシムル爲右政府間ニ特別協定ヲ締結スルコトヲ得右協定ノ本文ハ公衆衞生國際事務局ニ通報セラルベシ

  第六節 陸境ニ於ケル措置

   旅行者 鐵道 國境地帶 河川路

   第五十八條

陸境ニ於テハ停留ヲ行フコトヲ得ズ

本條約ニ揭ゲラルル疾病ニ關シテハ該疾病ノ症狀ヲ呈スル者ニ限リ之ヲ國境ニ留置スルコトヲ得

右原則ハ各國ガ國境ノ一部ヲ必要ニ依リ閉鎖スルノ權利ヲ排除スルモノニ非ズ國境交通ガ專ラ許可セラルベキ場所ハ之ヲ指示スベシ此ノ場合ニ於テハ右ノ指示セラレタル場所ニハ適當ノ設備アル防疫所ヲ設クベシ右ノ措置ハ直ニ之ヲ關係隣國ニ通吿スルコトヲ要ス

本條ノ規定ニ拘ラズ肺「ペスト」患者ト接觸シタル者ハ其ノ到著ヨリ七日ヲ超エザルベキ期間之ヲ陸境ニ於テ停留ニ付スルコトヲ得ベシ

發疹「チフス」患者ト接觸シタル者ハ之ニ虱ノ驅除ヲ行フコトヲ得ベシ

   第五十九條

汚染區域ヨリ來ル列車內ニ於テハ旅行者ハ其ノ健康狀態ニ付旅行中鐵道職員ノ監視ニ付セラルルコト肝要ナリトス

醫學的干渉ハ旅行者ニ對スル檢診竝ニ患者及必要アルトキハ其ノ周圍ノ者ニ對スル手當ニ限ラル右檢診ノ爲サルル場合ニ於テハ旅行者ノ留置ヲ能フ限リ短カラシムル様能フ限リ稅關檢査ト聯絡シテ之ヲ行フベシ

   第六十條

黄熱ノ存スル諸國ニ於テ運轉セラルル鐵道車輛ハ能フ限リ「ステゴミア」ヲ運搬セザル樣設備セラルルコトヲ要ス

   第六十一條

本條約第十條第二項ニ規定セラルル狀態ニ在ル區域ヨリ來ル旅行者ハ目的地ニ到著シタルトキ直ニ到著ノ時ヨリ「ペスト」ニ付テハ六日、「コレラ」ニ付テハ五日、黄熱ニ付テハ六日、發疹「チフス」ニ付テハ十二日又痘瘡ニ付テハ十四日ヲ超エザルベキ監視ニ之ヲ付スルコトヲ得ベシ

   第六十二條

前諸規定ニ拘ラズ各政府ハ例外ノ場合ニ於テハ充分ナル衞生上ノ保障ヲ與ヘザル特殊ノ者殊ニ集團ヲ成シテ旅行シ又ハ國境ヲ通過スル者ニ對シ本條約ニ揭ゲラルル疾病ニ關シ特殊ノ措置ヲ執ルノ權利ヲ留保ス本項ノ規定ハ第二十一條ノ規定ノ留保ノ下ニ移民ニ對シテ適用セラレザルモノトス

右措置ハ前記ノ者ノ監視及必要アル場合ニ於ケル停留竝ニ醫學的檢査、消毒、昆蟲驅除及豫防接種ヲ確保シ得ル樣設備セラレタル防疫所ヲ國境ニ設クルコトヲ包含スルコトヲ得

右例外的措置ハ能フ限リ隣接國間ニ於ケル特別取極ノ目的タルコトヲ要ス

   第六十三條

客車、郵便車、手荷物車及貨車ハ國境ニ於テ之ヲ留置スルコトヲ得ズ

尤モ右車輛ノ一ガ病毒ニ汚染シ又ハ之ニ「ペスト」、「コレラ」、發疹「チフス」又ハ痘瘡ノ患者ガ居住シタルトキハ該車輛ハ各場合ニ付示サレタル防疫措置ヲ受クルニ必要ナル期間留置セラルベシ

   第六十四條

鐵道職員及郵便職員ノ國境通過ニ關スル措置ハ關係機關ノ權限ニ屬ス右措置ハ業務ヲ妨害セザル樣定メラルルモノトス

   第六十五條

國境交通及右交通ニ附随スル問題ノ處理ハ本條約ノ規定ニ基キ隣接國間ノ特別取極ニ委セラル

   第六十六條

湖水及河川路ノ衞生措置ハ特別取極ニ依リ沿岸國政府之ヲ定ムルモノトス

  第二編

   「スエズ」運河及其ノ隣接國ニ關スル特別規定

   第一節 北方ノ汚染港ヨリ「スエズ」運河ノ入口又ハ「エジプト」國ノ港ニ來ル普通船舶ニ對スル措置

   第六十七條

「ヨーロッパ」、地中海沿岸又ハ黑海沿岸ニ在ル「ペスト」又ハ「コレラ」ノ汚染港ヨリ「スエズ」運河ヲ通過スル爲來ル汚染ナキ普通船舶ハ檢疫狀態ニ於ケル通過ヲ許サル

   第六十八條

「エジプト」國ニ寄ラントスル汚染ナキ普通船舶ハ「アレキサンドリア」又ハ「ポート・サイド」ニ碇泊スルコトヲ得

出航港ガ「ペスト」ニ汚染セルトキハ第二十七條ヲ適用ス

出航港ガ「コレラ」ニ汚染セルトキハ第三十三條ヲ適用ス

港ノ衞生機關ハ監視ニ代フルニ船內又ハ檢疫所ニ於ケル停留ヲ以テスルコトヲ得ベシ

   第六十九條

「ヨーロッパ」、地中海沿岸又ハ黑海沿岸ニ在ル「ペスト」又ハ「コレラ」ノ汚染港ヨリ「エジプト」國ノ一港ニ寄リ又ハ「スエズ」運河ヲ通過セントスル汚染船舶又ハ嫌疑船舶ノ受クベキ措置ハ本條約ノ規定ニ從ヒ「エジプト」衞生海事檢疫委員會ニ依リ定メラルベシ

   第七十條

「エジプト」衞生海事檢疫委員會ニ依リ制定セラレタル規則ハ之ヲ本條約ノ規定ニ適合セシムル樣成ルベク速ニ修正セラルルコトヲ要ス右規則ハ實施セラルル爲ニハ右委員會ニ代表者ヲ出セル諸國ニ依リ受諾セラルルコトヲ要ス右規則ハ船舶、船客及貨物ニ課セラルル措置ヲ定ムベシ右規則ハ各檢疫所ニ配屬セラルベキ醫師ノ最小數ヲ定メ且右醫師竝ニ「エジプト」衞生海事檢疫委員會ノ管轄ノ下ニ防疫措置ノ監視及實行ノ確保ニ任ズル職員ノ採用方法、報酬及職務ヲ定ムベシ

右醫師及職員ハ「エジプト」衞生海事檢疫委員會ニ依リ其ノ會長ヲ經テ「エジプト」國政府ニ推薦セラル

  第二節 紅海ニ於ケル措置

   甲 南方ヨリ紅海ノ諸港ニ來リ又ハ地中海ニ向フ普通船舶ニ對スル措置

   第七十一條

汚染船舶、嫌疑船舶又ハ汚染ナキ船舶ノ分類及措置ニ關スル第一編ノ一般規定ニ拘ラズ以下諸條ニ揭ゲラルル特別規定ハ南方ヨリ來リ紅海ニ入ル普通船舶ニ適用セラル

   第七十二條

汚染ナキ船舶 汚染ナキ船舶ハ檢疫狀態ニ於テ「スエズ」運河ヲ通過スルコトヲ得

船舶ガ「エジプト」國ニ寄ルベキ場合ニハ

イ 出航港ガ「ペスト」ニ汚染セルトキハ船舶ハ滿六日ノ航海ヲ爲シタルコトヲ要シ然ラザレバ下船スル船客及船員ハ右六日ノ滿了ニ至ル迄監視ニ付セラル

 荷積及荷卸ノ作業ハ鼠族ノ船舶ヨリ脱出スルヲ防止スルニ必要ナル措置ヲ考慮シテ許可セラルベシ

ロ 出航港ガ「コレラ」ニ汚染セルトキハ船舶ハ交通許可ヲ受ケ得ルモ下船スル一切ノ船客又ハ船員ハ汚染港出航ノ時ヨリ滿五日ヲ經過セザルトキハ右期間ノ滿了ニ至ル迄監視ニ付セラルベシ

 港ノ衞生機關ハ何時ニテモ其ノ必要ナリト認ムルトキハ監視ニ代フルニ船內又ハ檢疫所ニ於ケル停留ヲ以テスルコトヲ得ベシ右機關ハ一切ノ場合ニ於テ其ノ必要ナリト認ムベキ細菌學的檢査ヲ行フコトヲ得ベシ

   第七十三條

嫌疑船舶 船醫ヲ有スル船舶ハ衞生機關ニ於テ該船舶ガ充分ナル保障ヲ與フルモノト認ムルトキハ第七十條ニ揭ゲラルル規則ノ諸條件ノ下ニ檢疫狀態ニ於テ「スエズ」運河ヲ通過スルコトヲ許可セラルルコトヲ得

船舶ガ「エジプト」國ニ寄ルベキ場合ニハ

イ 「ペスト」ニ關シテハ第二十六條ノ措置ヲ施行スルモ監視ニ代フルニ停留ヲ以テスルコトヲ得

ロ 「コレラ」ニ關シテハ第三十一條ノ措置ヲ施行シ停留ヲ以テ監視ニ代ヘ得ルコト右ニ同ジ

   第七十四條

汚染船舶

イ 「ペスト」第二十五條ニ定メラルル措置ヲ施行ス感染ノ危險アル場合ニ於テハ船舶ハ「スールス、ド、モイーズ」又ハ港ノ衞生機關ニ依リ指定セラルル他ノ場所ニ投錨スルコトヲ要求セラルルコトアルベシ

 檢疫狀態ニ於ケル通過ハ六日ノ正規期間ノ滿了前ニ於テモ港ノ衞生機關ガ可能ト認ムルトキハ之ヲ許可スルコトヲ得

ロ 「コレラ」第三十條ニ定メラルル措置ヲ施行ス船舶ハ「スールス、ド、モイーズ」又ハ他ノ場所ニ投錨スルコトヲ要求セラルルコトアルベク又船內ニ於テ流行甚シキトキハ豫防接種又ハ必要ニ應ジ患者ノ手當ヲ行ヒ得ル爲「エル・トール」ニ囘航セシメラルルコトアルベシ

 船舶ハ衞生機關ニ於テ船舶、船客及船員ガ更ニ危險ヲ及ボサザルコトヲ確認シタルトキニ限リ「スエズ」運河ヲ通過スルコトヲ許可セラルルコトヲ得ベシ

   乙 巡禮季節ニ於テ「ヘヂァーズ」國ノ汚染港ヨリ來ル普通船舶ニ對スル措置

   第七十五條

「メッカ」ノ巡禮季節ニ於テ「ヘヂァーズ」國ニ「ペスト」又ハ「コレラ」ガ流行スルトキハ「ヘヂァーズ」國又ハ紅海ノ「アラビア」沿岸ノ他ノ部分ヨリ來ル船舶ニシテ該地方ニ於テ巡禮者又ハ類似ノ團軆ヲ乘船セシメズ且航海中船內ニ疑ハシキ事故ノ發生セザリシモノハ嫌疑普通船舶ノ部類ニ屬ス右船舶ハ嫌疑船舶ニ課セラルル豫防措置及取扱ヲ受ク

右船舶ハ「エジプト」國ニ向フモノナルトキハ「エジプト」衞生海事檢疫委員會ニ依リ指定セラルル防疫所ニ於テ「コレラ」ニ付テハ乘船ヨリ五日又「ペスト」ニ付テハ乘船ヨリ六日ノ停留ニ付セラルルコトアルベシ右船舶ハ尚嫌疑船舶ニ付規定セラルル一切ノ措置(消毒等)ヲ受ケ且醫學的檢分ノ結果良好ナルニ非ザレバ交通許可ヲ與ヘラルルコトナシ

右船舶ハ航海中疑ハシキ事故ノ發生シタルトキハ「スールス、ド、モイーズ」ニ於テ停留ニ付セラルルコトアルベクコトアルベク右停留ハ「コレラ」ニ付テハ五日又「ペスト」ニ付テハ六日トス

  第三節 監視機關

   第七十六條

「スエズ」ニ到著スル船舶ニ關スル規則ニ依リ定メラルル醫學的檢分ハ運河ヲ通過スル爲ニ來ル船舶ガ電燈ニテ照明セラレ且港ノ衞生機關ガ照明ノ條件充分ナリト確認スルトキハ夜間ト雖モ該船舶上ニ於テ之ヲ行フコトヲ得

衞生監視部ハ「スエズ」運河及檢疫所ニ於テ施行セラルル防疫措置ノ監視及實行ヲ確保スベキモノトス監視員ハ警察官ノ資格ヲ有シ衞生規則違反ノ場合ニハ吿發スルノ權能ヲ有ス

  第四節 檢疫狀態ニ於ケル「スエズ」運河ノ通過

   第七十七條

「スエズ」港ノ衞生機關ハ檢疫狀態ニ於ケル通過ヲ許可ス「エジプト」衞生海事檢疫委員會ハ其ノ旨直ニ通知セラル疑アル場合ニハ右委員會之ヲ決定ス

   第七十八條

前條ニ規定セラルル許可ガ與ヘラレタルトキハ船長ガ次ノ寄航地ト指示スル港ノ機關及最終到達港ニ直ニ電報發送セラル有電報ノ發送ハ船舶ノ費用ニ於テ爲サル

   第七十九條

各國ハ船長ニ依リ指示セラルル航路ヲ離レ自國ノ領域ノ一港ニ不當ニ寄ルコトアルベキ船舶ニ對スル罰則ヲ定ムベシ不可抗力及巳ムヲ得ザル寄航ノ場合ハ此ノ限ニ在ラズ

   第八十條

船舶ノ審問ノ際ニハ船長ハ船員名簿又ハ之ニ代ル名簿ニ記入セラレザル土著民タル火夫又ハ各種ノ有給傭人ガ船內ニ在ルヤ否ヤヲ申吿スルコトヲ要ス

左ノ質問ハ南方ヨリ「スエズ」ニ來ル一切ノ船舶ノ船長ニ對シ特ニ發ゼラル船長ハ宣誓ニ依リ又ハ正式ノ申吿ニ依リ之ニ答フルモノトス

「補助人卽チ船員名簿又ハ特殊名簿ニ記入セラレザル火夫又ハ他ノ傭人アリヤ其ノ國籍如何及其ノ乘船ノ場所如何」

衞生醫ハ右補助人ノ存在ヲ確ムルコトヲ要シ又補助人中不在者アルコトヲ認ムルトキハ不在ノ原因ヲ愼重ニ調査スルコトヲ要ス

   第八十一條

一名ノ衞生官及少クトモ二名ノ衞生監視員ハ乘船シ船舶ト共ニ「ポート・サイド」ニ到ルコトヲ要ス右衞生官及監視員ハ運河通過中交通ヲ遮斷シ且規定セラレタル措置ノ實行ニ留意スルノ職務ヲ有ス

   第八十二條

船客ノ乘船、下船及乘換又ハ貨物ノ荷積、荷卸及積換ハ「スエズ」運河通過中禁止セラル

尤モ旅行者ハ「スエズ」又ハ「ポート・サイド」ヨリ檢疫狀態ニ於テ乘船スルコトヲ得

   第八十三條

檢疫狀態ニ於テ通過スル船舶ハ滯留スルコトナクシテ「スエズ」ヨリ「ポート・サイド」ヘ又ハ「ポート・サイド」ヨリ「スエズ」ヘ航行スルコトヲ要ス

坐洲又ハ巳ムヲ得ザル滯留ノ場合ニハ必要ナル作業ハ「スエズ」運河會社ノ職員トノ一切ノ交通ヲ避ケテ乘組員ニ依リ行ハル

   第八十四條

軍隊輸送ノ嫌疑船舶又ハ汚染船舶ニシテ檢疫狀態ニ於テ通過スルモノハ晝間ノミ運河ヲ通行スルコトヲ要ス該船舶ガ夜間運河內ニ碇泊スルヲ要スルトキハ「ティムサ」湖又ハ「グラン、ラック」內ニ投錨ス

   第八十五條

檢疫狀態ニ於テ通過スル船舶ノ停泊ハ第八十二條及第八十六條ニ規定セラルル場合ヲ除キ「ポート・サイド」港內ニ於テ禁止セラル

需品補給ノ作業ハ船舶ニ於ケル諸手段ヲ以テ之ヲ行フコトヲ要ス

荷積ニ使用セラレタル者又ハ船內ニ入リタルコトアルベキ他ノ一切ノ者ハ檢疫用浮棧橋ニ隔離セラレ且正規ノ措置ヲ受ク

   第八十六條

檢疫狀態ニ於テ通過スル船舶ガ「スエズ」又ハ「ポート・サイド」ニ於テ石_又ハ石油ヲ積込ムコト巳ムヲ得ザルトキハ右船舶ハ「エジプト」衞生海事檢疫委員會ニ依リ指示セラルベキ必要ナル隔離及衞生監視ノ保障ヲ以テ右作業ヲ實行スルコトヲ要ス船內ニ於テ石炭積込ノ監視ヲ有效ニ行ヒ且船內ノ者トノ接觸ヲ避ケ得ル船舶ニ對シテハ港ノ勞働者ニ依ル石炭積込許可セラル作業場ハ夜間ニ於テハ電燈ヲ以テ有效ニ照明セラルルコトヲ要ス

   第八十七條

水先人、電氣技術者、運河會社員及衞生監視員ハ「ポート・サイド」港外ノ突堤間ニ於テ下船スルコトヲ要シ且該地點ヨリ直接ニ檢疫用浮棧橋ニ到リ同所ニ於テ必要ナリト認メラルル措置ヲ受ク

   第八十八條

左ニ定メラルル軍艦ハ「スエズ」運河ノ通過ニ付左ノ規定ノ利益ヲ享有ス

軍艦ハ宣誓ニ依リ又ハ正式ノ申吿ニ依リ左ノ事項ヲ明示スル證明書ニシテ乘組軍醫ノ作成シ艦長ニ依リ奥書セラレタルモノノ提出アルトキハ檢疫機關ニ依リ汚染ナキ軍艦ト認メラルベシ

(イ)出航ノ際又ハ航行中ニ艦內ニ「ペスト」又ハ「コレラ」ノ患者ノ存在セザリシコト

(ロ)「エジプト」國ノ港ニ到著前十二時間以內ニ於テ艦內ニ在ル一切ノ者ノ詳細ナル檢査ガ例外ナク行ハレタルコト及其ノ結果前記疾病ノ患者ヲ發見セザリシコト

右軍艦ハ醫學的檢分ヲ免除セラレ且直ニ交通許可ヲ受ク

尤モ檢疫機關ハ其ノ必要ト認ムル一切ノ場合ニ於テ其ノ職員ヲシテ軍艦ニ於テ醫學的檢分ヲ行ハシムルノ權利ヲ有ス

嫌疑軍艦又ハ汚染軍艦ハ現行ノ規則ニ從フベシ

戰闘用艦船ノ外軍艦ト看做サルルコトナシルコトナシ運送船及病院船ハ普通船舶ノ部類ニ屬ス

   第八十九條

「エジプト」衞生海事檢疫委員會ハ汚染國ヨリ來ル郵便物及普通旅客ヲ檢疫列車ヲ以テ鐵道ニ依リ「エジプト」國領域ヲ通過セシムルノ措置ヲ執ルコトヲ得

  第五節 「ペルシァ」灣ニ施行セラルル衞生措置

   第九十條

「ペルシァ」灣ニ於ケル航海ニ關シテハ本條約第一編ニ基ク衞生措置ハ出航ノ際及到著ノ際ニ於テ港ノ衞生機關ニ依リ施行セラルベシ

  第三編

   巡禮ニ關スル特別規定

  第一章

   總則

   第九十一條

第十三條ノ規定ハ「ヘヂァーズ」國又ハ「イラーク」王國ニ向フ人及物ニシテ巡禮船ニ搭載セラルベキモノニ對シ搭載港ガ汚染セザルトキト雖モ之ヲ適用ス

   第九十二條

港ニ於テ「ペスト」、「コレラ」又ハ他ノ流行病ノ患者アルトキハ巡禮者ハ組ヲ成シテ停留ニ付セラレ右疫病ニ罹レル者ナキコト明ニ爲リタル後ニ非ザレバ巡禮船ニ乘船スルコトヲ得ズ

右措置ヲ實行スルニ付各政府ハ地方ノ事情及可能性ヲ斟酌スルコトヲ得ルモノトス

「コレラ」ノ場合ニ於テハ衞生機關ノ醫師ニ依リ現場ニ於テ施サルル豫防接種ヲ承諾スル者ハ豫防接種ノ際醫學的檢分ノミヲ受クベク本條ニ規定セラルル停留ヲ免除セラルベシ

   第九十三條

巡禮者ハ往復切符ヲ所持スルカ又ハ歸還ノ爲ニ充分ナル金額ヲ供託シタルコトヲ要シ且事情ノ許ストキハ巡禮ヲ終ルニ必要ナル資力アルヲ證明スルコトヲ要ス

   第九十四條

機械力ヲ以テ推進スル船舶ノミ長途ノ巡禮者ノ運送ヲ爲スコトヲ許可セラル

   第九十五條

紅海ニ於テ沿岸航行ヲ爲ス巡禮船ニシテ短期間ノ運送所謂「沿岸航行」ニ充テラルルモノハ「エジプト」衞生海事檢疫委員會ニ依リ公表セラルル特別規則ノ規定ニ從フモノトス

   第九十六條

普通ノ船客(上級船客タル巡禮者ヲ含マシムルコトヲ得)以外ニ總噸數百噸ニ付一名未滿ノ割合ニテ巡禮者ヲ乘船セシムル船舶ハ巡禮船ト看做サルルコトナシ

右除外ハ船舶ニノミ關スルモノニシテ該船舶ニ乘船スル巡禮者ハ其ノ等級ノ如何ニ拘ハラズ巡禮者ニ關シ本條約ニ定メラルル一切ノ措置ニ服ス

   第九十七條

衞生機關ノ選擇ニ依リ船長又ハ海運會社ノ代理店ハ巡禮者ニ課セラルル衞生手數料ノ全額ヲ支拂フコトヲ要ス右手數料ハ運賃中ニ包含セラルルコトヲ要ス

   第九十八條

防疫所ニ於テ下船シ又ハ乘船スル巡禮者ハ下船場ニ於テ能フ限リ相互ニ接觸セザルコトヲ要ス

下船シタル巡禮者ハ之ヲ成ルベク少人數ノ組ト爲シ分宿セシムルコトヲ要ス

右巡禮者ニ對シテハ天然水タルト蒸溜水タルトヲ問ハズ良質ノ飮料水ヲ供給スルコト必要ナリトス

   第九十九條

巡禮者ノ携帶スル⻝糧ハ衞生機關ノ必要ト認ムルトキハ棄却セラル

 第二章

  巡禮船 衞生設備

  第一節 船舶ノ一般條件

   第百條

船舶ハ中甲板ニ巡禮者ヲ收容シ得ルコトヲ要ス船員用ノ場所ノ外船舶ハ各人ニ付其ノ年齢ノ如何ニ拘ラズ面積一・五平方メートル卽チ十六平方フート、中甲板ノ髙サ少クトモ一・八メートル卽チ約六フートノ場所ヲ備フルコトヲ要ス

吃水線下ニ在ル第一中甲板下ニ巡禮者ヲ收容スルコトヲ禁ズ

有效ナル換氣法ガ確保セラルルコトヲ要ス右換氣法ハ第一中甲板下ニ於テハ機械力ニ依リ補足セラルルコトヲ要ス

巡禮者用ノ右場所ノ外船舶ハ上甲板ニ於テ假病室、船員、灌水浴、便所及船舶用務ノ爲ノ場所ヲ除キ各人ニ付其ノ年齢ノ如何ニ拘ラズ少クトモ〇・五六平方メートル卽チ約六平方フートノ場所ヲ備フルコトヲ要ス

   第百一條

甲板上ニ隱蔽シタル諸場所ヲ設ケ其ノ中ノ充分ナル數ハ婦人專用ニ充テラルルコトヲ要ス

右場所ニハ船舶停泊中ト雖モ巡禮者用ノ爲絶エズ海水ヲ供給スル樣活栓又ハ灌水栓ヲ附シタル壓力作用ニ依ル水導管ヲ備フベシ

活栓又ハ灌水栓ハ巡禮者百名又ハ其ノ端數ニ付一箇ノ割合タルベシ

   第百二條

船舶ハ船員用便所ノ外洗滌式又ハ活栓附便所ヲ備フルコトヲ要ス

若干ノ便所ハ婦人專用ニ充テラルルコトヲ要ス

便所ハ巡禮者百名又ハ其ノ端數ニ付二箇ノ割合タルコトヲ要ス

便所ハ之ヲ船艙中ニ設クルコトヲ得ズ

   第百三條

船舶ハ巡禮者ノ個人用調理所ニ充テラルル二箇ノ場所ヲ設クルコトヲ要ス

   第百四條

安全及衞生上良好ナル條件ヲ具備スル病室ガ患者收容ノ爲設ケラルルコトヲ要ス右病室ハ上甲板ニ設ケラルルコトヲ要ス但シ衞生機關ガ他ノ場所ニ於テ同樣ニ衞生的ナル設備ヲ爲シ得ト認ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ

右病室ハ傳染病ノ性質ニ依リ該傳染病ニ罹レル患者及之ト接觸シタル者ヲ隔離シ得ル樣設備セラルルコトヲ要ス

病室(假病室ヲ含ム)ハ患者一名ニ付三平方メートル卽チ約三十二平方フートノ割合ニテ乘船巡禮者百名又ハ其ノ端數ニ付四名ヲ收容シ得ルコトヲ要ス

病室ハ特別ノ便所ヲ備フルコトヲ要ス

   第百五條

各船舶ハ藥劑、消毒劑及患者ノ手當ニ必要ナル物件ヲ船內ニ備フルコトヲ要ス此ノ種ノ船舶ニ對シ各政府ノ設クル規則ハ右藥劑ノ性質及分量ヲ定ムルコトヲ要ス各船舶ハ尚必要ナル免疫劑殊ニ「コレラ」豫防液及痘苗ヲ備フルコトヲ要ス手當及藥品ハ巡禮者ニ對シテハ無料ニテ供與セラル

   第百六條

巡禮者ヲ乘船セシムル各船舶ハ正規ノ免許證ヲ有スル醫師(右ノ者ハ巡禮者ガ往航ノ爲乘船スル最初ノ港ノ屬スル國ノ政府ニ依リ承認セラルルコトヲ要ス)一名ヲ有スルコトヲ要ス乘船巡禮者ノ數ガ千名ヲ超ユルトキハ同樣ノ條件ヲ具備スル醫師ヲ尚一名乘船セシムルコトヲ要ス

   第百七條

船長ハ船內ニ於テ見易ク且關係者ノ接近シ得ル場所ニ乘船巡禮者ノ居住地ノ主タル語ニテ認メラレ且左ノ事項ヲ示ス揭示ヲ爲サシムルコトヲ要ス

一 船舶ノ目的地

二 運賃

三 出發地ノ規則ニ從ヒ各巡禮者ニ對スル水及⻝糧一日分ノ配給量

四 一日分ノ配給量以外ノ自辨⻝糧ノ定價嚢

   第百八條

巡禮者ノ大ナル手荷物ハ託送セラレ且番號ヲ附セラル巡禮者ハ嚴ニ必要ナル物件ノ外自ラ携帶スルコトヲ得ズ各政府ガ其ノ船舶ニ對シ設クル規則ハ右物件ノ種類、分量及容積ヲ定ム

   第百九條

本編第一章、第二章(第一節、第二節及第三節)竝ニ第三章ノ規定ノ要領ハ規則ノ形式ヲ以テ船籍國ノ國語及乘船巡禮者ノ居住地ノ主タル語ニテ巡禮者ヲ輸送スル船舶ノ各甲板及中甲板ノ見易ク且接近シ得ル場所ニ揭示セラルベシ

  第二節 出航前執ルベキ措置

   第百十條

巡禮船ノ船長又ハ船長在ラザルトキハ所有者若ハ代理者ハ出航ノ少クトモ三日前ニ出航港ノ權限アル機關ニ巡禮者ヲ乘船セシメントスル旨ヲ届出イヅルコトヲ要ス寄航港ニ於テハ巡禮船ノ船長又ハ船長在ラザルトキハ所有者若ハ代理者ハ船舶出航ノ十二時間前ニ右ト同樣ノ届出ヲ爲スコトヲ要ス右届出ニハ船舶ノ出航豫定日及目的地ヲ示スコトヲ要ス

   第百十一條

前條ニ規定セラルル届出ニ基キ權限アル機關ハ船長ノ費用ニ於テ船舶ノ臨檢及測定ヲ行ハシム

船長ガ自國ノ權限アル機關ニ依リ發給セラレタル測定證書ヲ既ニ有スルトキハ右證書ガ船舶ノ現狀ト相違スルノ疑ナキ場合ニ限リ臨檢ノミヲ行フ

   第百十二條

權限アル機關ハ左ノ事項ヲ確認シタル後ニ非ザレバ巡禮船ノ出航ヲ許可スルコトナシ

(イ)船舶ガ完全ニ清潔ニセラレ又必要ニ應ジ消毒セラレタルコト

(ロ)船舶ガ危險無ク航海シ得ルノ狀態ニ在ルコト、難破、事故又ハ火災ノ禍難ニ應ズル爲必要ナル設備及器具特ニ主機關ニ關係ナク運用シ得ル發信用及受信用無線電信機ヲ有スルコト、充分ナル數ノ救命具ヲ備フルコト、尚艤装、設備及換氣ノ適當ニ行ハレ甲板ヲ掩蔽スル爲充分ナル厚サ及大サヲ有スル天幕ヲ備フルコト竝ニ船客ノ健康又ハ安全ニ有害ナル又ハ有害ト爲リ得ルモノガ船內ニ存セザルコト

(ハ)船舶及船員用貯藏品ノ外適當ナル貯藏ニ適スル場所ニ一切ノ巡禮者ノ爲及航海ノ全期間ノ爲充分ナル量ノ良質ノ⻝糧及燃料ガ船內ニ存スルコト

(ニ)搭載セル飮料水ガ良質ナルコト、其ノ量ガ充分ナルコト、船內ニ於テ飮料水ノ貯槽ガ完全ニ其ノ汚染ヲ防ギ且水ノ分配が活栓又ハ「ポンプ」ニ依リテノミ爲サレ得ル樣閉鎖セラルルコト 配給器具ニシテ所謂「吸水器」ナルモノハ絶対ニ禁ゼラル

(ホ)船舶ハ乘船者(船員ヲ含ム)ニ對シ一人ニ付一日少クトモ五リットルノ量ノ水ヲ作リ得ル蒸溜器ヲ備フルコト

(へ)船舶ガ巡禮者ノ乘船スル港ノ衞生機關ニ依リ安全及能力ヲ證明セラレタル消毒器ヲ有スルコト

(ト)船員中ニハ免許證ヲ有シ且成ルベク海事衞生及外來病ノ病理ニ關スル事項ニ通暁スル醫師(右ノ者ハ巡禮者ガ往航ノ爲乘船スル最初ノ港ノ政府ニ依リ承認セラルルコトヲ要ス)一名ヲ含ムコト竝ニ船舶ガ第百五條ニ從ヒ藥劑ヲ備フルコト

(チ)船舶ノ甲板ニハ貨物及障碍ト爲ル物件ノ存在セザルコト

(リ)船舶ノ設備ガ後ニ揭グル第三節ニ規定セラルル措置ヲ實行シ得ルモノナルコト

   第百十三條

船長ハ左ノモノヲ所持セザル限リ出航スルコトヲ得ズ

一 乘船巡禮者ノ名及性竝ニ船長ガ乘船セシムルコトヲ許可セラレタル巡禮者ノ總數ヲ示ス表ニシテ權限アル機關ニ依リ査證セラレタルモノ

二 船舶ノ名稱、國籍及噸數、船長ノ名、船醫ノ名、乘船者(船員、巡禮者他ノ船客)ノ正確ナル數、積荷ノ種類、出航ノ場所ヲ示ス書類

權限アル機關ハ右書類ニ於テ巡禮者ガ正規數ニ達シタリヤ否ヤヲ示シ且正規數ニ達セザル場合ニハ船舶ガ爾後ノ寄航地ニ於テ乘船セシムルコトヲ許可セラレタル船客ノ補充數ヲ示スベシ

  第三節 航海中執ルベキ措置

   第百十四條

巡海禮者ニ充テラルル甲板ニハ航海中障碍ト爲ル物件ノ存在セザルコトヲ要ス右甲板ハ畫夜乘船者ニ留保セラレ且無償ニテ其ノ使用ニ供セラルルコトヲ要ス

   第百十五條

中甲板ハ巡禮者ガ甲板ニ在ル間每日周到ニ掃除セラレ且砂洗セラルルコトヲ要ス

   第百十六條

船客用便所及船員用便所ハ清潔ニ保持セラレ每日三囘又必要アルトキハ一層頻繁ニ掃除セラレ且消毒セラルルコトヲ要ス

   第百十七條

「ペスト」、「コレラ」、赤痢又ハ病室便所ノ使用ヲ許サザル他ノ疾病ノ徵候ヲ呈スル者ノ分泌物及排泄物ハ消毒液ヲ容レタル器ニ收納セラルルコトヲ要ス右容器ハ病室便所ニ於テ空ケラレ且該便所ハ分泌物及排泄物ノ投棄每ニ嚴重ニ消毒セラルルコトヲ要ス

   第百十八條

前條ニ揭ゲラルル患者ニ接觸シタル寢具、敷物、衣類ハ直ニ消毒セラルルコトヲ要ス右患者ニ接近スル者ノ衣類ニシテ汚染セル虞アルモノニ關シテハ本規則ヲ遵守スルコトヲ特ニ勸吿ス

前記物件ノ中價値ナキモノハ船舶ノ港內若ハ運河內ニ在ラザルトキハ海中ニ投棄セラルルカ又ハ焼却セラルルコトヲ要ス其ノ他ノモノハ船醫ニ依リ消毒セラルルコトヲ要ス

   第百十九條

患者ノ居住シタル場所ニシテ第百四條ニ揭ゲラルルモノハ嚴重ニ規則正シク掃除セラレ且消毒セラルルコトヲ要ス

   第百二十條

每日無償ニテ各巡禮者ノ用ニ供セラルル飮料水ノ量ハ右巡禮者ノ年齢ノ如何ニ拘ラズ少クトモ五リットルトス

   第百二十一條

飮料水ノ水質ニ付疑アルカ又ハ其ノ給水地若ハ航海中ニ於テ汚染ノ疑アルトキハ該飮料水ハ煮沸セラルルカ又ハ他ノ方法ヲ以テ滅菌セラルルコトヲ要シ且船長ハ一層良質ノ水ヲ供給シ得ル最初ノ寄航港ニ於テ該飮料水ヲ海中ニ投棄スルコトヲ要ス船長ハ貯水槽ノ消毒後ニ非ザレバ右良質ノ水ヲ積込ムコトヲ得ズ

   第百二十二條

醫師ハ巡禮者ヲ檢診シ、患者ニ手當ヲ爲シ且船內ニ於テ保健規則ノ遵守セラルルコトニ留意シ殊ニ左ノ義務ヲ有ス

一 巡禮者ニ配給セラルル⻝糧ハ良質ニシテ其ノ量ハ契約ニ合致シ且適當ニ調理セラルルコトヲ確認スルコト

二 水ノ配給ニ關スル第百二十條ノ規定ノ遵守セラルルコトヲ確認スルコト

三 飮料水ノ水質ニ付疑アルトキハ船長ニ書面ヲ以テ第百二十一條ノ規定ニ付注意ヲ喚起スルコト

四 船舶ハ常ニ清潔ニ保持セラレ且特ニ便所ハ第百十六條ノ規定ニ從ヒ掃除セラルルコトヲ確認スルコト

五 巡禮者ノ居室ハ衞生的ニ保持セラレ且傳染病ノ場合ニ於テハ第百十九條ニ從ヒ消毒ノ行ハルルコトヲ確認スルコト

六 航海中發生シタル一切ノ衞生上ノ事故ノ日誌ヲ作成シ寄航港又ハ到著港ノ權限アル機關ニ對シ其ノ請求ニ基キ之ヲ提示スルコト

   第百二十三條

「ペスト」、「コレラ」又ハ他ノ傳染病ニ感染シタル患者ノ手當ヲ擔當スル者ニ限リ右患者ニ接近スルコトヲ得ベク他ノ乘船者トハ接觸スルコトヲ得ズ

   第百二十四條

航海中死者アリタル場合ニハ船長ハ出航港ノ機關ニ依リ査證セラレタル表中當該名ノ欄ニ死亡ノ旨ヲ記載シ且右ノ外死者ノ名、年齢、居住地、醫師ノ證明書ニ依ル死亡ノ推定原因及死亡ノ日ヲ航海日誌ニ記入スルコトヲ要ス

傳染病ニ因ル死亡ノ場合ニハ遺骸ハ消毒液ニ浸シタル屍衣ヲ以テ豫メ之ヲ包ミ海中ニ投棄スルコトヲ要ス

   第百二十五條

船長ハ航海中實行セラレタル一切ノ防疫措置ガ航海日誌ニ記入セラルル樣留意スルコトヲ要ス右航海日誌ハ寄航地又ハ到著地ノ權限アル機關ニ對シ請求ニ基キ船長ニ依リ提示セラル

各寄航港ニ於テ船長ハ第百十三條ニ基キ作成セラレタル表ニ權限アル機關ノ査證ヲ受クルコトヲ要ス

巡禮者ガ航海ノ途中下船スル場合ニハ船長ハ右表中該巡禮者ノ名ノ欄ニ下船ノ旨ヲ記載スルコトヲ要ス

乘船ノ場合ニ於テハ乘船者ハ前記第百十三條ニ從ヒ且權限アル機關ノ爲スベキ新ナル査證前ニ右表ニ記載セラルルコトヲ要ス

   第百二十六條

出航港ニ於テ發給セラレタル衞生書類ハ航海中之ヲ變更スルコトヲ得ズ本規定ニ違反スルトキハ船舶ハ汚染シタルモノトシテ之ヲ取扱フコトヲ得

前記書類ハ各寄航港ノ衞生機關ニ依リ査證セラル該機關ハ右書類ニ左ノ事項ヲ記入ス

一 右港ニ於テ下船シ又ハ乘船シタル船客ノ數

二 海上ニ於テ發生シタル事故ニシテ乘船者ノ健康又ハ生命ニ關スルモノ

三 寄航港ノ衞生狀態

  第四節 紅海ニ於テ巡禮者ノ到著ニ際シ執ルベキ措置

   甲 南方ヨリ「ヘヂァーズ」國ニ向フ巡禮船ニ適用セラルル衞生措置

   第百二十七條

南方ヨリ「ヘヂァーズ」國ニ向フ巡禮船ハ先ヅ「カマラン」ノ防疫所ニ寄航スルコトヲ要シ且左ノ諸條ニ規定セラルル措置ニ從フ

   第百二十八條

醫學的檢分ニ依リ汚染ナキモノト認メラレタル船舶ハ左ノ措置ヲ完了シタルトキ交通許可ヲ受ク

巡禮者ハ下船セシメラレ且灌水浴ヲ爲ス其ノ汚レタル肌衣竝ニ衞生機關ニ於テ疑アルベシト認ムル其ノ手廻リ品及手荷物ノ部分ハ消毒セラル 右措置(下船及乘船ヲ含ム)ノ繼續期間ハ四十八時間ヲ超ユルコトヲ得ズ右期間ヲ超エザルコトヲ條件トシテ衞生機關ハ其ノ必要ト認ムル細菌學的檢査ヲ行フコトヲ得

右措置ノ施行中「ペスト」又ハ「コレラ」ノ眞症患者又ハ擬似症患者ノアルコト確認セラレザル場合ニハ巡禮者ハ直ニ再乘船セシメラレ且船舶ハ「ヂェダー」ニ向フ

醫學的檢分ニ依リ汚染ナキモノト認メラレタル船舶ハ左ノ條件ガ充サレタルトキハ前記ノ措置ヲ免除セラル

一 船內ニ在ル一切ノ巡禮者ハ「コレラ」及痘瘡ニ對シ免疫セラレタルコト

二 本條約ノ規定ガ嚴格ニ遵守セラレタルコト

三 出航ノ際ニ於テモ航海中ニ於テモ船內ニ「ペスト」、「コレラ」又ハ痘瘡ノ患者アラザリシ旨ノ船長及船醫ノ申吿ニ付疑フベキ理由ナキコト

「ペスト」ニ付テハ第二十七條ノ規定ガ船內ニ於テ發見セラルルコトアルベキ鼠族ニ關シ適用セラル

   第百二十九條

乘船後最初ノ六日以內ニ船內ニ「ペスト」患者アリタルカ、船內ニ鼠族ノ異常ナル斃死數ガ確認セラレタルカ又ハ出航ノ際船內ニ「コレラ」患者アリシモ到著前五日以內ニ新患者ナカリシ嫌疑船舶ハ左ノ措置ヲ受ク

巡禮者ハ下船セシメラレ且灌水浴ヲ爲ス其ノ汚レタル肌衣竝ニ衞生機關ニ於テ疑アルベシト認ムル其ノ手廻リ品及手荷物ノ部分ハ消毒セラル 右措置(下船及乘船ヲ含ム)ノ繼續期間ハ四十八時間ヲ超ユルコトヲ得ズ右期間ヲ超エザルコトヲ條件トシテ衞生機關ハ其ノ必要ト認ムル細菌學的檢査ヲ行フコトヲ得

右措置ノ施行中「ペスト」又ハ「コレラ」ノ眞症患者又ハ擬似症患者ノアルコト確認セラレザル場合ニハ巡禮者ハ直ニ再乘船セシメラレ且船舶ハ「ヂェダー」ニ向フ

「ペスト」ニ付テハ第二十六條ノ規定ガ船內ニ於テ發見セラルルコトアルベキ鼠族ニ關シ適用セラル

   第百三十條

汚染船舶卽チ船內ニ「ペスト」苦ハ「コレラ」ノ患者アルカ、乘船後六日ヲ經過シテ「ペスト」患者發生シタルカ、到著前五日以內ニ「コレラ」患者發生シタルカ又ハ船內ニ「ペスト」有菌鼠發見セラレタル船舶ハ左ノ措置ニ從フ

「ペスト」又ハ「コレラ」ニ感染シタル者ハ下船セシメラレ且病院ニ隔離セラル他ノ船客ハ下船セシメラレ且成ルベク少人數ノ組ニテ隔離セラレ以テ「ペスト」又ハ「コレラ」ガ一ノ組內ニ蔓延スルモ全體ガ其ノ影響ヲ受ケザル樣ニ爲スベシ

船員及船客ノ汚レタル肌衣、手廻リ品、衣類竝ニ船舶ハ消毒セラル

尤モ當該地方ノ衞生機關ハ大ナル手荷物及貨物ノ荷卸ヲ必要トセザルヤ又船舶ノ一部分ノミヲ消毒スベキヤヲ決定スルコトヲ得

船客ハ「コレラ」ナルカ又ハ「ペスト」ナルカニ依リ五日又ハ六日間「カマラン」ノ防疫所ニ收容セラル下船後新患者ノ發生シタルトキハ停留ノ期間ハ最後ノ患者ノ隔離後「コレラ」ニ付テハ五日及「ペスト」ニ付テハ六日延期セラルベシ

「ペスト」ニ付テハ第二十五條ノ規定ガ船內ニ於テ發見セラルルコトアルベキ鼠族ニ關シ適用セラル

右措置ヲ完了シタル後船舶ハ巡禮者ヲ再乘船セシメ「ヂェダー」ニ向フ

   第百三十一條

第百二十八條、第百二十九條及第百三十條ニ揭ゲラルル船舶ハ「ヂェダー」ニ到著シタルトキ船內ニ於テ醫學的檢分ヲ受クベシ其ノ結果良好ナルトキ交通許可ヲ受クベシ

右ニ反シ航海中又ハ「ヂェダー」ニ到著ノ際「ペスト」又ハ「コレラ」ノ眞症患者ガ船內ニ發生シタルトキハ「ヘヂァーズ」國ノ衞生機關ハ第五十四條ノ規定ノ留保ノ下ニ一切ノ必要ナル措置ヲ執ルコトヲ得ベシ

   第百三十二條

巡禮者ノ收容ニ充テラルル防疫所ハ智識經驗アリ且充分ナル數ノ人員竝ニ巡禮者ノ服スル措置ノ全部ノ施行ヲ確保スルニ必要ナル一切ノ建造物及物質的設備ヲ有スルコトヲ要ス

   乙 「ポート・サイド」ノ北方ヨリ「ヘヂァーズ」國ニ向フ巡禮船ニ適用セラルル衞生措置

   第百三十三條

「ペスト」又ハ「コレラ」ノ存在ガ出航港ニ於テモ其ノ附近ニ於テモ確認セラレズ且「ペスト」又ハ「コレラ」ノ患者ガ航海中發生セザリシトキハ船舶ハ直ニ交通許可ヲ與ヘラル

   第百三十四條

「ペスト」若ハ「コレラ」ノ存在ガ出航港若ハ其ノ附近ニ於テ確認セラレタルカ又ハ「ペスト」若ハ「コレラ」ノ患者ガ航海中發生シタルトキハ船舶ハ「エル・トール」ニ於テ南方ヨリ來リ「カマラン」ニ碇泊スル船舶ニ對シ設ケラレタル規定ニ從フ爾後右船舶ハ交通許可ヲ受ク

  第五節 巡禮者ノ歸還ニ際シ執ルベキ措置

   甲 北方ニ歸航スル巡禮船

   第百三十五條

「スエズ」又ハ地中海ノ一港ニ向フ船舶ニシテ巡禮者又ハ之に類似ノ團體ヲ乘船セシメ且「ヘヂァーズ」國ノ一港又ハ紅海ノ「アラビヤ」沿岸ニ於ケル他ノ港ヨリ來ルモノハ「エル・トール」ニ到リ第百四十條乃至第百四十二條ニ揭ゲラルル停留及衞生的措置ヲ受クルコトヲ要ス

   第百三十六條

所要ノ檢疫所ガ「アカバ」港ニ設立セラルル迄ハ「ヘヂァーズ」國ヨリ海路「アカバ」ニ到ラントスル巡禮者ハ「アカバ」ニ上陸スル前「エル・トール」ニ於テ必要ナル檢疫措置ヲ受クベシ

   第百三十七條

地中海ニ向ヒ巡禮者ヲ送還スル船舶ハ檢疫狀態ニ於テノミ運河ヲ通過ス

   第百三十八條

海運會社ノ代理人及船長ハ「エジプト」國人タル巡禮者ノミ「エル・トール」ノ防疫所ニ於ケル停留ヲ終了シタル後歸郷ノ爲決定的ニ離船シ得ベキモノナルコトヲ豫吿セラル

「エジプト」國ノ機關ノ發行シ且正規ノ樣式ニ合致スル住所證明書ヲ所持スル巡禮者ニ非ザレバ「エジプト」國人又ハ「エジプト」國ニ居住スル者ト認メラレザルベシ

「エジプト」國人ニ非ザル巡禮者ハ「エル・トール」出發後「エジプト」國ノ港ニ於テ下船スルコトヲ得ズ但シ「エジプト」國ノ衞生機關ガ「エジプト」衞生海事檢疫委員會トノ合意ノ上與フル特別許可ニ依リ且其ノ課スル特別條件ニ從フ場合ハ此ノ限ニ在ラズ從テ海運會社代理人及船長ハ「エル・トール」、「スエズ」、「ポート・サイド」又ハ「アレキサンドリア」ノ何レノ港ニ於テモ「エジプト」國ニ於ケル外國人巡禮者ノ乘換ハ各場合ニ付テノ特別ノ許可アルニ非ザレバ禁止セラルルコトヲ豫吿セラル

「エジプト」國國籍ニ非ザル國籍ヲ有スル巡禮者ヲ乘船セシムル船舶ハ右巡禮者ノ條件ニ從フベク且地中海ニ於ケル「エジプト」國ノ如何ナル港ニモ入港スルコトヲ得ザルベシ

   第百三十九條

「エジプト」國人タル巡禮者ハ「エル・トール」ニ於テ又ハ「エジプト」衞生海事檢疫委員會ニ依リ指定セラルル他ノ檢疫所ニ於テ三日ノ停留及醫學的檢分竝ニ必要ニ應ジ消毒及昆蟲驅除ヲ受ク

   第百四十條

「ペスト」又ハ「コレラ」ノ存在ガ「ヘヂァーズ」國若ハ船舶ノ出航港ニ於テ確認セラルルカ又ハ巡禮中「ヘヂァーズ」國ニ於テ確認セラレタル場合ニハ當該船舶ハ汚染船舶ニ對シ「カマラン」ニ付設ケラレタル規定ニ「エル・トール」ニ於テ從フ

「ペスト」又ハ「コレラ」ニ感染シタル者ハ下船セシメラレ且病院ニ隔離セラル他ノ船客ハ下船セシメラレ且成ルベク少人數ノ組ニテ隔離セラレ以テ「ペスト」又ハ「コレラ」ガ一ノ組內ニ蔓延スルモ全體ガ其ノ影響ヲ受ケザル樣ニ爲スベシ

船員及船客ノ汚レタル肌衣、手廻リ品、衣類、汚染シタル疑アル手荷物及貨物ハ消毒ノ爲荷卸セラル右物件及船舶ノ消毒ハ完全ニ實施セラル

尤モ港ノ衞生機關ハ大ナル手荷物及貨物ノ荷卸ヲ必要トセザルヤ又船舶ノ一部分ノミヲ消毒スベキヤヲ決定スルコトヲ得

第二十五條ニ規定セラルル措置ハ船內ニ於テ發見セラルルコトアルベキ鼠族ニ關シ施行セラル

一切ノ巡禮者ハ消毒ノ措置ヲ完了シタル日ヨリ「ペスト」ニ付テハ滿六日及「コレラ」ニ付テハ五日ノ停留ニ付セラル「ペスト」又ハ「コレラ」ノ患者ガ一區劃內ニ發生シタルトキハ六日又ハ五日ノ期間ハ右區劃ニ關シテハ最後ノ患者ノ確認セラレタル日ヨリ始マル

   第百四十一條

前條ニ揭ゲラルル場合ニ於テ「エジプト」國人タル巡禮者ニハ尚三日ノ追加停留ヲ課スルコトヲ得

   第百四十二條

「ペスト」又ハ「コレラ」ノ存在ガ「ヘヂァーズ」國ニ於テモ船舶ノ出航港ニ於テモ確認セラレズ且巡禮中「ヘヂァーズ」國ニ於テ確認セラレザリシ場合ニハ當該船舶ハ汚染ナキ船舶ニ對シ「カマラン」ニ付設ケラレタル規定ニ「エル・トール」ニ於テ從フ

巡禮者ハ下船セシメラレ且灌水浴又ハ海水浴ヲ爲ス其ノ汚レタル肌衣又ハ衞生機關ニ於テ疑アルベシト認ムル其ノ手廻リ品及手荷物ノ部分ハ消毒セラル右措置ノ繼續期間ハ七十二時間ヲ超ユルコトヲ得ズ

尤モ巡禮船ガ「ヂェダー」ヨリ「ヤンボ」及「エル・トール」ニ到ル途中船內ニ「ペスト」又ハ「コレラ」ニ感染シタル患者ナク且下船後「エル・トール」ニ於テ行ハルル各個人ニ付テノ醫學的檢分ニ依リ右ノ患者ナキコトヲ確認スルコトヲ得ル場合ニハ該船舶ハ左ノ四條件ヲ具備スルトキハ夜間ト雖モ檢疫狀態ニ於テ「スエズ」運河ヲ通過スルコトヲ「エジプト」衞生海事檢疫委員會ニ依リ許可セラルルコトアルベシ

一 船內ノ醫務ハ免許證ヲ有シ且承認セラレタル醫師一名又ハ數名ニ依リ確保セラルルコト

二 船舶ハ有效ナル消毒器ヲ備フルコト

三 巡禮者ノ數ハ巡禮ニ關スル規則ニ依リ許可セラルル數ヲ超過セザルコトガ確認セラルルコト

四 船長ハ次ノ寄航地トシテ指定スル港ニ直航スルコトヲ約スルコト

檢疫機關ニ支拂フベキ衞生手數料ハ巡禮者ガ三日間檢疫狀態ニ在ルトキ支拂フベキモノニ同ジ

   第百四十三條

「エル・トール」ヨリ「スエズ」ニ航海中船內ニ疑ハシキ患者アリタル船舶ハ之ヲ「エル・トール」ニ送還スルコトヲ得

   第百四十四條

巡禮者ノ乘換ハ「エジプト」國ノ港ニ於テハ嚴ニ禁止セラル但シ「エジプト」國ノ衞生機關ガ「エジプト」衞生海事檢疫委員會トノ合意ノ上與フル特別許可ニ依リ且其ノ課スル特別條件ニ從フ場合ハ此ノ限ニ在ラズ

   第百四十五條

「ヘヂァーズ」國ヲ出發スル船舶ニシテ紅海ノ「アフリカ」沿岸ノ一港ニ到ル巡禮者ヲ乘船セシムルモノハ該港ヲ管轄スル地方機關ニ依リ指定セラルル檢疫所ニ直航シ同所ニ於テ「エル・トール」ニ於ケルト同樣ノ檢疫措置ヲ受クベシ

   第百四十六條

「ペスト」モ「コレラ」モ流行セザル「ヘヂァーズ」國又ハ紅海ノ「アラビア」沿岸ノ一港ヨリ來ル船舶ニシテ巡禮者又ハ之ニ類似ノ團體ヲ乘船セシメズ且航海中疑ハシキ事故ノナカリシモノハ醫學的檢分ノ結果良好ナルトキハ「スエズ」ニ於テ交通許可ヲ與ヘラル

   第百四十七條

「ヘヂァーズ」國ヨリ來リ且巡禮者ト同行シタル旅行者ハ巡禮者ト同樣ノ措置ヲ受ク右旅行者ハ巡禮者ニ施行セラルベキ措置ヲ商人又ハ他ノ者タルノ故ヲ以テ免除セラルルコトナカルベシ

   乙 北方ニ歸還スル隊ヲ組ム巡禮者

   第百四十八條

隊ヲ組ミ旅行スル巡禮者ハ「ヘヂァーズ」國ノ衞生狀態ノ如何ヲ問ハズ途中ニ存在スル檢疫所ノ一ニ到リ事情ニ應ジ下船巡禮者ニ對シ第百四十條又ハ第百四十二條ニ規定セラルル措置ヲ同所ニ於テ受ク

   丙 南方ニ歸還スル巡禮者

   第百四十九條

巡禮者ガ病毒ニ汚染ノ場合ニ於テ「バブ・エル・マンデブ」海峡ノ南方地方ニ歸航スル巡禮船ハ巡禮者ノ向フ國ノ領事官憲ノ命令ニ依リ「カマラン」ニ於テ醫學的檢診ヲ受クル爲同地ニ寄航スルコトヲ要スルコトアルベシ

  第六節 「ヘヂァーズ」鐵道ニ依リ旅行スル巡禮者ニ施行セラルル措置

   第百五十條

本條約ノ主義ヲ體シ「ヘヂァーズ」鐵道ノ通ズル國ノ諸政府ハ巡禮者ノ聖地へノ旅行中其ノ衞生監視ヲ行フ爲且流行性傳染病ノ蔓延ヲ防止スル爲ノ豫防措置ヲ施行スル爲一切ノ措置ヲ執ルベシ

  第七節 巡禮ニ關スル衞生報吿

   第百五十一條

「エジプト」衞生海事檢疫委員會ハ「ヘヂァーズ」國及巡禮者ノ旅行地方ニ於ケル衞生狀態ニ關シ其ノ知リ得タル巡禮中ノ一切ノ衞生上ノ情報及報吿ヲ本條約ニ規定セラルル條件ニ從ヒ一切ノ關係國ノ衞生機關ニ及之ト同時ニ公衆衞生國際事務局ニ定期ニ及必要ノ場合ニハ最迅速ナル方法ニ依リ通吿スベシ同委員會ハ右ノ外年報ヲ作成シ右年報ハ右機關及公衆衞生國際事務局ニ送付セラルベシ

 第三章

  制裁

   第百五十二條

船長ニシテ水、⻝糧又ハ燃料ノ配給ニ關シ自ラ爲シ又ハ自己ノ爲爲サレタル約束ヲ履行セザリシコトヲ確認セラルルモノハ不履行毎ニ五十金「フラン」以下ノ罰金ニ處セラル右罰金ハ違約ノ被害者タル巡禮者ニシテ且約束ノ履行ヲ要求シタルモ效果ナカリシコトヲ證明シタルモノノ爲徵收セラル

   第百五十三條

第百七條ノ違反ハ七百五十金「フラン」以下ノ罰金ニ處セラル

   第百五十四條

第百十三條ニ規定セラルル巡禮者ノ表又ハ衞生書類ニ關シ虚偽ヲ爲シ又ハ爲サシメタル船長ハ千二百五十金「フラン」以下ノ罰金ニ處セラル

   第百五十五條

出航港ノ衞生書類ナク若ハ寄航港ノ査證ナク又ハ第百十三條、第百二十五條及第百二十六條ニ從ヒ正當ニ作成セラレタル正規ノ表ヲ有セズシテ到著シタル船舶ノ船長ハ各場合ニ付三百金「フラン」以下ノ罰金ニ處セラル

   第百五十六條

第百六條ノ規定ニ從ヒ免許證ヲ有スル醫師ノ乘船ナクシテ百名ヲ超ユル巡禮者ヲ乘船セシメ又ハ乘船セシメタリト確認セラルル一切ノ船長ハ七千五百金「フラン」以下ノ罰金ニ處セラル

   第百五十七條

第百十三條ノ規定ニ從ヒ乘船セシムルコトヲ許可セラレタル數ヲ超ユル巡禮者ヲ乘船セシメ又ハ乘船セシメタリト確認セラルル一切ノ船長ハ右超過巡禮者各一人ニ付百二十五金「フラン」以下ノ罰金ニ處セラル

規定ノ數ヲ超過スル巡禮者ノ下船ハ權限アル機關ノ駐在スル最初ノ碇泊所ニ於テ行ハルベク且船長ハ下船セシメラレタル巡禮者ニ其ノ目的地ニ到ル迄旅行ヲ繼續スルニ必要ナル金錢ヲ供給スルコトヲ要ス

   第百五十八條

巡禮者ヲ其ノ目的地以外ノ場所ニ於テ下船セシメタリト確認セラルル船長ハ巡禮者ノ承諾アル場合又ハ不可抗力ノ場合ヲ除キ不當ニ下船セシメラレタル巡禮者各一人ニ付五百金「フラン」以下ノ罰金ニ處セラル

   第百五十九條

巡禮船ニ關スル規定ノ他ノ一切ノ違反ハ二百五十金「フラン」以上二千五百金「フラン」以下ノ罰金ニ處セラル

   第百六十條

航海中ニ於テ確認セラルル一切ノ違反ハ船舶書類及巡禮者表ニ記載セラル權限アル機關ハ右ノ調書ヲ作リ之ヲ當事者ニ交付ス

   第百六十一條

第百五十二條乃至第百五十九條ニ揭ゲラルル違反ハ船舶ノ寄航シタル港ノ衞生機關ニ依リ確認セラルベシ

處罰ハ權限アル機關ニ依リ言渡サルベシ

   第百六十二條

巡禮船ニ關シ本條約ノ規定ノ實行ニ付協力ヲ要求セラルル一切ノ職員ハ右規定ノ適用ニ當リ過失ワ犯シタル場合ニ於テハ夫々其ノ所屬國ノ法令ニ從ヒ處罰セラル

 第四編

  監視及實行

  一 「エジプト」衞生海事檢疫委員會

   第百六十三條

「エジプト」衞生海事檢疫委員會ノ組織、職務及作用ニ關スル千八百九十二年一月三十一日ノ「ヴェニス」衞生條約第三附屬書ノ規定ニシテ千八百九十三年六月十九日及千八百九十四年十二月二十五日ノ「エジプト」國太守命令竝ニ千八百九十三年六月十九日ノ省令ニ揭ゲラルルモノハ玆ニ確認セラレタルモノトス

右命令及省令ハ本條約ノ附屬書トシテ存續ス

右命令及省令ノ規定ニ拘ラズ締約國ハ左ノ如ク協定ス

一 衞生海事檢疫委員會ニ於ケル「エジプト」國代表委員ノ數ハ左ノ五名ニ増員セラルベシ

 (一)委員會會長「エジプト」國政府ニ依リ任命セラレ且可否同數ノ場合ニ於テノミ表決ス

 (二)「ヨーロッパ」人タル醫師一名 衞生海事檢疫部監察長官トス

 (三)「エジプト」國政府ニ依リ任命セラルル代表委員三名

二 衞生海事檢疫委員會ノ獸醫部ハ「エジプト」國政府ニ移管セラルベシ

 左ノ條件遵守セラルベシ

 (一)「エジプト」國政府ハ輸入家畜ニ對シ衞生海事檢疫委員會ニ依リ現ニ徵收セラルル額ヲ最大限度トシテ檢疫手數料ヲ徵收スベシ

 (二)依テ「エジプト」國政府ハ本條約實施期日前三豫算年度間ニ於ケル獸醫部ノ支出ニ對スル收入ノ超過ノ平均額ヲ每年衞生海事檢疫委員會ニ支拂フコトヲ約ス

 (三)家畜船竝ニ動物ノ皮及残滓ヲ消毒スル爲執ルベキ措置ハ從來ノ如ク衞生海事檢疫委員會ニ由リ行ハルベシ

 (四)現ニ「エジプト」衞生海事檢疫委員會ノ獸醫部ニ勤務スル外國人タル職員ハ外國國籍ヲ有スル役員、被用者又ハ事務員ノ勤務及退職又ハ解雇ノ條件ニ關スル千九百二十三年法律第二十八號ニ依リ許與セラルル補償ヲ受クルコトヲ得ベシ

 右補償ノ等級ハ前記ノ法律ニ依リ定メラルルモノタルベシ他ノ細則ハ「エジプト」國政府及衞生海事檢疫委員會間ノ合意ニ依リ定メラルベシ

三 「スアキム」港ガ「アレキサンドリア」ニ在ル「エジプト」衞生海事檢疫委員會ノ所在地ト遠隔セルコト竝ニ「スアキム」港ニ下船スル巡禮者及船客ハ衞生上ノ見地ニ於テハ「スーダン」地域ニノミ關係ヲ有スルノ事實ニ鑑ミ「スアキム」港ノ衞生機關ハ右委員會ヨリ分離セラルベシ

   第百六十四條

本條約ノ規定ニ基ク經常費殊ニ「エジプト」衞生海事檢疫委員會職員ノ増員ニ關スルモノハ「エジプト」國政府ノ處分ニ委セラルル燈臺業務ノ收入剩餘金中ヨリ控除セラルルコトアルベキ四千「エジプト、ポンド」ノ額ノ「エジプト」國政府ニ依ル補助年賦ヲ以テ充當セラル

尤モ「エル・トール」ニ於ケル巡禮者一人ニ付十「ピアストル」ノ率ノ附加檢疫手數料ノ收入ハ前記ノ額ヨリ差引カルベシ

「エジプト」國政府ガ前記分擔金ヲ負擔スルコトノ困難ナルベキ場合ニ於テハ衞生海事檢疫委員會ニ代表者ヲ出セル諸國ハ右経費ニ對スル「エジプト」國政府ノ負擔ヲ確保スル爲同政府ト協定スベシ

   第百六十五條

「エジプト」衞生海事檢疫委員會ハ「ペスト」、「コレラ」及黄熱ニ關シ同委員會ニ依リ現ニ適用セラルル規則竝ニ巡禮季節ニ於テ紅海ニ於ケル「アラビヤ」ノ港ヨリ來ルモノニ關スル規則ヲ本條約ノ規定ト合致セシムルコトヲ要ス

右委員會ハ現行ノ衞生海事檢疫警察ノ一般規則ヲ右ト同樣ノ目的ヲ以テ必要ノ場合修正スベシ

前記ノ規則ハ實施セラルル爲ニハ委員會ニ代表者ヲ出セル諸國ニ依リ受諾セラルルコトヲ要ス

  二 雜則

   第百六十六條

衞生海事檢疫委員會ニ依リ徵收セラルル衞生手數料及罰金ノ收入ハ如何ナル場合ニ於テモ右委員會ノ目的以外ニ之ヲ使用スルコトヲ得ズ

   第百六十七條

締約國ハ船長ガ特ニ船內ニ船醫アラザル場合ニ於テ「ペスト」、「コレラ」及黄熱ニ關シ本條約ノ規定ヲ適用シ得ル爲ノ心得書ヲ自國ノ衞生機關ヲシテ作成セシムルコトヲ約ス

  第五編

  最終規定

   第百六十八條

本條約ハ締約國間ニ於テハ千九百十二年一月十七日「パリ」ニ於テ署名セラレタル條約ノ規定及必要ノ場合ニハ千九百三十二月三日「パリ」ニ於テ署名セラレタル條約ノ規定ニ代ルモノトス右二條約ハ締約國ト右二條約ノ當事國ニシテ本條約ノ當事國タラザルベキ一切ノ國トノ間ニ引續キ效力ヲ有スベシ

   第百六十九條

本條約ハ本日ノ日附ヲ有スベク且本年十月一日迄ニ署名セラルルコトヲ得ベシ

   第百七十條

本條約ハ批准セラルベク批准書ハ成ルベク速ニ「パリ」ニ於テ寄託セラルベシ本條約ハ締約國中ノ十國ニ依リ批准セラレタル後ニ於テノミ實施セラルベシ爾後本條約ハ各締約國ニ關スル限リ其ノ批准書ノ寄託ノ時ヨリ效力ヲ生ズベシ

   第百七十一條

本條約ニ署名セザリシ國ハ其ノ請求ニ依リ之ニ加入スルコトヲ許サルベシ右加入ハ外交上ノ手續ニ依リ拂蘭西共和國政府ニ通吿セラレ同政府ニ依リ他ノ締約國ニ通吿セラルベシ

   第百七十二條

各締約國ハ其ノ本條約ノ受諾ガ其ノ保護領、植民地、屬地又ハ委任統治地域ノ全部又ハ何レカヲ含マザル旨其ノ署名ノ際又ハ其ノ批准書若ハ加入書ノ寄託ノ際宣言スルコトノ得ベク且右宣言ニ依リ除外セラレタル右保護領、植民地、屬地又ハ委任統治地域ノ何レカノ爲ニ爾後ニ於テ前條ニ從ヒ加入スルコトヲ得ベシ

右證據トシテ各全權委員ハ本條約ニ署名セリ

千九百二十六年六月二十一日「パリ」ニ於テ本書一通ヲ作成シ之ヲ佛蘭西共和國政府ノ記錄ニ寄託保存スベク其ノ認證謄本ハ外交上ノ手續ニ依リ他ノ締約國ニ交付セラルベシ


「アフガニスタン」國

  イスラムベック、クードイアル、カーン

「アルバニア」國

  ドクトル、オスマン

獨逸國

  フラヌー

  ハメル

「アルゼンティン」國

  エフ、アー、デ、トレド

澳地利國

  ドクトル、アルフレド、グリュンベルゲル

白耳義國

  ヴェルグ

「ブラジル」國

  カルロス、シァガス

  ジルベルト、モウラ、コスタ

「ブルガリア」國

  ベー、モルフォフ

  トシュコ、ペトロフ

「チリ」國

  アルマンド、ケサーダ

中華民國

  姚錫九

  謝東發

「コロンビア」國

  ミゲル、ヒメネス、ローペス

「キュバ」國

  エル、エルナンデス、ポルテーラ

丁抹國

  テー、マドセン

「ダンチッヒ」

  ホヂロ

  スタデ

「ドミニカ」共和國

  ベタンセス

「エジプト」國

  ファクーリー

  ドクトル、エム、エル、グィンディ

「エクアドル」國

  ホタ、イリンゴウルト

西班牙國

  侯爵デ、ファウラ

  ドクトル、エフ、ムリーリォ

「アメリカ」合衆國

  エイチ、エス、カンミング

  ダブリュー、ダブリュー、キング

「エティオピア」國

  エントット公、ラガルド

「フィンランド」國

  エンケル

佛蘭西國

  カミーユ、バレール

  アリスマンディ

  ナヴァイユ

  ドクトル、アー、カルメット

  レオン、ベルナール

「アルジェリー」

  ドクトル、レイノー

西「アフリカ」

  ドクトル、ポール、グージアン

東「アフリカ」

  ティルー

印度支那

  ドクトル、レルミニエ

  ドクトル、エヌ、ベルナール

「シリア」、「グリン、リバン」、「アラウィット」及「ヂェベル・ドルュズ」

  アリスマンディ

佛蘭西國ノ他ノ殖民地、保護領、屬地及委任統治地域全部

  オーディベール

英帝國

  ジー、エス、ブカナン

  ジォン、マレー

 「カナダ」

  ジェー、エー、アミオット

 「オーストラリヤ」聯邦

  ダブリュー、シー、ソーワーズ

 「ニュー・ジーランド」

  シドニー、プライス、ジェームズ

 印度

  ディー、ティー、チァドウィック

 南「アフリカ」聯邦

  フィリップ、ストック

希臘國

  アー、セー、カラパノス

  ドクトル、マタランガス

「グァテマラ」國

  フランシスコ、アー、フィゲロア

「ハイティ」國

  ジォルジュ、オーデン

「へヂァーズ」國

  ドクトル、マームード、ハムーデ

「ホンデュラス」國

  ルベン、アウディノ・アギラール

「ハンガリー」國

  ドクトル、セー、グロッシュ

伊太利國

  アルベール、ルトラリオ

  ジォヴァンニ、ヴィットリオ、レペッティ

  オドアルド、フエッテル

  ジ、ロッコ

  ジュゼッペ、ドゥルエッティ

大日本帝國

  松島肇

  鶴見三三

「リベリア」共和國

  アール、レーマン

  エヌ、オームス

「リスアニア」共和國

  ドクトル、ペー、ヴァイチューシュカ

「ルクセンブルグ」國

  ドクトル、ブラウム

「モロッコ」國

  アリスマンディ

  ドクトル、レイノー

「メキシコ」國

  エレ、カブレラ

「モナコ」國

  エフ、ルッセル

  ドクトル、マルサン

諾威國

  シグール、ベンツォン

「パラグァイ」國

  エレ、ヴェー、カバリェーロ

和蘭國

  ドゥデ、ファン、トローストワイク

  エヌ、エム、ヨセフス、ジッタ

  デ、フォーヘル

  ファン、デル、プラス

「ペルー」國

  ペー、ミンベラ

「ペルシァ」國

  ドクトル、アリ、カーン、パルトー、アーザム

  マンスール、シァリフ

   政府ノ承認ヲ條件トス

「ポーランド」國

  ホヂコ

「ポルトガル」國

  リカルド、ジォルジェ

「ルーマニア」國

  ドクトル、ジー、カンタクゼーヌ

「サン・マリノ」國

  ドクトル、グエルパ

「セルブ、クロアート、スロヴェーヌ」王國

  エム、スパライコヴィッチ

「サルヴァドル」國

  カルロス、エレ、ラルデ・アルテス

「スーダン」

  オリヴァー、フランシス、ヘイネス、アトキー

瑞西國

  デュナン

  カリエール

「チェッコスロヴァキア」國

  ドクトル、ラディスラフ、プロハースカ

「テュニス」國

  ナヴァイユ

「トルコ」國

  アー、フェティー

「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦

  ジー、ダフティアン

  ジー、マンムリア

  エル、ブロンステイン

  オー、メブルヌトフ

  エヌ、フレイベルグ

  アー、シシン

  ヴェー、エゴリエフ

「ウルグァイ」國

  アー、エローサ

「ヴェネズエラ」國

  ホセ、イー、カルデナス

   政府ノ承認ヲ條件トス



  附屬書

   千八百九十三年六月十九日ノ「エジプト」國太守命令

「エジプト」國太守ハ

內務大臣の奏請及內閣の一致セル意見ニ基キ

千八百八十一年一月三日(千二百九十八年二月二日)ノ命令ニ諸種ノ修正ヲ加フルノ必要ナリシコトヲ思ヒ

左ノ通命令ス

   第一條

衞生海事檢疫委員會ハ流行病及家畜流行病ノ「エジプト」國ヘノ輸入又ハ他國ヘノ傳播ヲ豫防スル爲執ルベキ措置ヲ定ムルコトヲ要ス

   第二條

「エジプト」國代表委員ノ數ハ左ノ四名ニ減ゼラルベシ

一 委員會會長「エジプト」國政府ニ依リ任命セラレ且可否同數ノ場合ニ於テノミ表決ス

二「ヨーロッパ」人タル醫師一名 衞生海事檢疫部監察長官トス

三「アレキサンドリア」市ノ衞生監察官又ハ其ノ代理者

四 保健及公衆衞生部ノ獸醫監察官

一切ノ代表委員ハ「ヨーロッパ」醫科大學若ハ國ニ依リ正規ノ免許證ヲ付與セラレタル醫師又ハ本職ノ現職官吏ニシテ少クトモ副領事若ハ之ニ相當スル階級ノモノタルコトヲ要ス本規定ハ現ニ在職中ノ者ニハ適用セラルルコトナシ

   第三條

衞生海事檢疫委員會ハ「エジプト」國ノ衞生狀態及他國ヨリ來ルモノニ對シ常時監視ヲ行フ

   第四條

衞生海事檢疫委員會ハ「エジプト」國ニ關シ保健及公衆衞生局ヨリ「カイロ」及「アレキサンドリア」兩市ノ衞生公報ヲ每週及地方ノ衞生公報ヲ每月受領スベシ該公報ハ衞生海事檢疫委員會ガ特別ノ事由ニ依リ請求スベキ場合ニハ一層短期間每ニ送付セラルルヲ要ス

衞生海事檢疫委員會ニ於テモ其ノ爲シタル決定及外國ヨリ接受シタル情報ヲ保健及公衆衞生局ニ通知スベシ

各政府ハ適當ト認ムルトキハ其ノ國ノ衞生公報ヲ衞生海事檢疫委員會ニ送付シ且流行病及家畜流行病ノ發生シタルトキハ直ニ其ノ旨ヲ右委員會ニ通報ス

   第五條

衞生海事檢疫委員會ハ國內ノ衞生狀態ヲ確メ且其ノ必要ト認ムル一切ノ場所ニ監察委員ヲ派遣ス

保健及公衆衞生局ハ右監察委員派遣ノ通吿ヲ受クベク且該監察委員ノ委任事務遂行ニ便益ヲ與フルコトニ務ムルコトヲ要ス

   第六條

衞生海事檢疫委員會ハ流行病又ハ家畜流行病ガ海境又ハ砂漠境ヲ經テ「エジプト」國ニ輸入セラルルヲ防止スル爲ノ豫防措置ヲ定メ且假檢疫廠舎及常設檢疫所ヲ設置スルコトヲ要スル場所ヲ決定ス

   第七條

衞生海事檢疫委員會ハ出航船舶ニ對シ衞生機關ニ依リ發給セラルル健康證明書ニ記入スベキ注意書ヲ作成ス

   第八條

「エジプト」國ニ流行病又ハ家畜流行病ノ發生シタル場合ニハ右委員會ハ右疾病ノ外國ヘノ傳播ヲ防止スル爲ノ豫防措置ヲ定ム

   第九條

衞生海事檢疫委員會ハ其ノ定メタル衞生檢疫措置ノ實行ヲ監視シ且監督ス

右委員會ハ檢疫事務ニ關スル一切ノ規則ヲ制定シ國ノ保護及諸國際衞生條約ニ依リ定メラルル保障ノ維持ニ關シ右規則ノ嚴正ナル實行ニ留意ス

   第十條

右委員會ハ「ヘヂァーズ」國ニ往復スル巡禮者ヲ輸送スル爲遵守スルコトヲ要スル條件ヲ衞生上ノ見地ヨリ規定シ且巡禮中右巡禮者ノ健康狀態ヲ監視スベシ

   第十一條

衞生海事檢疫委員會ノ決議ハ內務省ニ通知セラレ又外務省ニモ通報セラルベシ外務省ハ必要ノ場合ニハ外交代表及總領事館ニ之ヲ通吿スベシ

尤モ委員會會長ハ日常ノ事務ニ付沿岸都市ノ領事館憲ト直接ニ通信スルコトヲ得

   第十二條

會長及其ノ不在又ハ事故ノ場合ニ於テ衞生海事檢疫部監査長官ハ委員會ノ決議ノ實行ヲ確保スルコトヲ要ス

之ガ爲會長ハ衞生海事檢疫所ノ一切ノ職員及國ノ各機關ト直接ニ通信シ委員會ノ意見ニ基キ港ノ衞生警察機關、海事檢疫所及砂漠検疫所ヲ指揮ス

尚會長ハ日常ノ事務ヲ處理ス

   第十三條

衞生監察長官、衞生署長竝ニ防疫所及檢疫廠舎ノ醫師ハ「ヨーロッパ」醫科大學又ハ國ニ依リ正規ノ免許證ヲ付與セラレタル醫師中ヨリ選任セラルルコトヲ要ス

「ヂェダー」ニ於ケル委員會代表者ハ免許證ヲ有スル「カイロ」ノ醫師ヲ以テ充テラルルコトヲ得ベシ

   第十四條

衞生海事檢疫部ニ屬スル一切ノ職ニ關シテハ委員會ハ會長ヲ經テ其ノ候補者ヲ內務大臣ニ指名シ內務大臣ハ右候補者ヲ任命スルノ權利ヲ專有スベシ

解任、異動及昇進ニ關シテモ亦同樣ノ手續ニ依ルベシ

尤モ會長ハ一切ノ下級事務員、傭人、使丁等ヲ直接任命スベシ

衞生監視員ノ任命ハ委員會ニ委セラル

   第十五條

衞生署長ハ七名トシ各「アレキサンドリア」、「ダミエット」、「ポート・サイド」、「スエズ」、「トール」、「スアキム」及「コッセイル」ニ駐在ス

「トール」ノ衞生署ハ巡禮期間又ハ流行病アル場合ニ於テノミ事務ヲ取扱フコトヲ得ベシ

   第十六條

衞生署長ハ其ノ管轄區域內ノ一切ノ衞生職員ヲ指揮ス署長ハ事務ノ適当ナル遂行ニ付責ニ任ズ

   第十七條

「エル、アリシュ」ノ衞生支署長ハ前條ニ依リ署長ニ付與セラレタルト同一ノ權限ヲ有ス

   第十八條

防疫所長及檢疫廠舎長ハ其ノ統轄スル營造物ノ醫務及管理事務ニ任ズル一切ノ職員ヲ指揮ス

   第十九條

衞生監察長官ハ衞生海事檢疫委員會ニ屬スル一切ノ事務部ヲ監視スルコトヲ要ス

   第二十條

「ヂェダー」ニ於ケル衞生海事檢疫委員會ノ代表者ハ「ヘヂァーズ」國ノ衞生狀態特ニ巡禮中ノ衞生狀態ニ付情報ヲ委員會ニ提供スルノ任務ヲ有ス

   第二十一條

衞生海事檢疫委員會會長、衞生海事檢疫部監察長官及右委員會ニ依リ選任セラルル代表委員三名ヨリ成ル懲戒委員會ハ衞生海事檢疫部ノ職員ニ關シ提出セラルル不服ヲ審査スルコトヲ要ス

懲戒委員會ハ各事件ニ付報吿書ヲ作リ之ヲ衞生海事檢疫委員會總會ノ裁量ニ付ス代表委員ハ每年改選セラルベク再選ヲ妨ゲズ

衞生海事檢疫委員會ノ決議ハ會長ヲ經テ內務大臣ノ承認ヲ受クルモノトス

懲戒委員會ハ衞生海事檢疫委員會ニ諮ルコトナクシテ左記ヲ科シ得

一 諮責

二 一月以下ノ給與ノ停止

   第二十二條

懲戒處分ハ左記トス

一 譴責

二 八日以上三月以下ノ給與ノ停止

三 轉職(手當ヲ支給セズ)

四 免職

右ノ場合ニ於テハ普通法ノ重罪又ハ輕罪ニ關スル訴追ヲ妨ゲズ

   第二十三條

衞生檢疫手數料ハ衞生海事檢疫部ノ職員ニ依リ徵收セラル

右職員ハ會計及簿記ニ關シテハ大藏省ニ依リ定メラルル一般規則ニ從フ

會計職員ハ其の會計及其の徵收額ヲ衞生海事檢疫委員會會長ニ報吿ス

中央會計部長タル會計職員ハ右委員會會長の査閲ヲ經タル後前項會計職員の責任ヲ解除ス

   第二十四條

衞生海事檢疫委員會ハ其ノ財務ヲ處理ス

收入及支出ノ管理ハ衞生海事檢疫委員會會長、衞生海事檢疫部監査長官及衞生海事檢疫委員會ニ依リ選任セラルル諸國ノ代表委員三名ヨリ成ル委員會ニ委任セラル右委員會ハ「財務委員會」ト稱ス諸國ノ代表委員三名ハ每年改選セラルベク再選ヲ妨ゲズ

財務委員會ハ衞生海事檢疫委員會ノ承認ヲ條件トシテ一切ノ階級ノ職員ノ給與ヲ定メ經常費及臨時費ヲ決定ス三月每ニ特別會議ニ於テ財務委員會ハ其ノ管理スル事務ニ付衞生海事檢疫委員會ニ明細ナル報吿ヲ爲ス會計年度終了後三月以內ニ衞生海事檢疫委員會ハ財務委員會ノ提議ニ基キ決算書ヲ作成シ衞生海事檢疫委員會會長ヲ經テ之ヲ內務省ニ送付ス

衞生海事檢疫委員會ハ其ノ歳入ノ豫算及其ノ歳出ノ豫算ヲ編成ス右豫算ハ國ノ總豫算ト同時ニ附屬豫算ノ名義ヲ以テ內閣ニ於テ決定セラルベシ歳出額ガ歳入額ヲ超過スルコトアルベキ場合ニハ其ノ不足額ハ國ノ一般財源ニ依リ補塡セラルベシ尤右委員會ハ歳入及歳出ノ均衡ヲ得シムル方法ヲ遅滞ナク考究スルコトヲ要ス右委員會ノ提議ハ會長ニ依リ內務省ニ傳達セラルベシ歳入超過ノ場合ニハ右超過額ハ衞生海事檢疫委員會ノ會計ニ於テ保管セラルベク且內閣ニ依リ承認セラルル同委員會ノ決議ヲ經タル後臨時ノ所要ニ應ズベキ豫備金ノ創設ニ專ラ充テラルベシ

   第二十五條

衞生海事檢疫委員會會長ハ同委員會ノ委員三名ノ請求アルトキハ表決ガ秘密投票ニ依リ行ハルベキコトヲ命ズルコトヲ要ス秘密投票ニ依ル表決ハ懲戒委員會又ハ財務委員會ノ會員ト爲ルベキ諸國ノ代表委員ノ選任ニ關スル場合及職員ノ任免、異動又ハ昇進ニ關スル場合ニハ義務的トス

   第二十六條

州長官、警察長官及縣知事ハ其ノ關スル限リ衞生規則ノ實行ニ付責ニ任ズ前記諸官及一切ノ文武官憲ハ公衆衞生ノ利益ノ爲執ルベキ措置ノ迅速ナル實行ヲ確保スル爲衞生海事檢疫部職員ニ依リ適法ニ協力ヲ求メラルルトキハ之ニ協力スルコトヲ要ス

   第二十七條

從來ノ命令及規則ハ前記ノ諸規定ニ牴蠋スル限リ廢止セラル

   第二十八條

內務大臣ハ本令ヲ施行スルコトヲ要シ本令ハ千八百九十三年十一月一日ヨリ實施セラルベシ

千八百九十三年六月十九日「ラムレー」宮殿ニ於テ本令ヲ作成ス

     アッバス、ヒルミ

      太守ニ依リ

      內閣議長、內務大臣リアズ



   千八百九十四年十二月二十五日ノ「エジプト」太守命令

「エジプト」國太守ハ

大藏大臣ノ奏請及內閣ノ一致セル意見ニ基キ

第七條ニ關シ公債管理局委員ノ一致セル意見ニ鑑ミ

諸國ノ同意ヲ經テ

左ノ通命令ス

   第一條

千八百九十四年ノ會計年度以後ニ於テハ燈臺税ノ現歳入中ヨリ每年四萬「エジプト、ポンド」ノ額ヲ控除スベク右額ハ以下諸條ニ説明セラルル如ク使用セラルベシ

   第二條

千八百九十四年ニ控除セラルル額の用途左ノ如シ

一 衞生海事檢疫委員會ノ千八百九十四年ノ會計年度ニ於テ生ズルコトアルベキ不足額ガ次條ニ揭ゲラルル如ク右委員會ノ準備金ヨリ生ズル財源ヲ以テ完全ニ支辨セラルルコト能ハザリシ場合ニ右不足額ヲ補塡スルコト

二 「エル・トール」、「スエズ」及「スールス、ド、モイーズ」ノ防疫用營造物ノ設備ニ要スル臨時費ニ充ツルコト

   第三條

衞生海事檢疫委員會ノ現在ノ準備金ハ千八百九十四年ノ會計年度ノ不足額ノ補塡ニ使用セラルベク右準備金ハ一萬「エジプト、ポンド」未滿ノ額ニ減少セラルルコトヲ得ズ

右不足額ガ完全ニ支辨セラレザルトキハ其ノ殘額ハ第一條ニ依リ創設セラレタル財源ヲ以テ補塡セラルベシ

   第四條

千八百九十五年及千八百九十六年ノ兩會計年度ヨリ生ズル八滿「エジプト、ポンド」ノ額ヨリ左ノ額控除セラルベシ

一 「エル・トール」、「スエズ」及「スールス、ド、モイーズ」ニ關スル第一條ニ揭ゲラルル臨時事業ニ充テラルル總額ヲ四萬「エジプト、ポンド」ニ達セシムル爲千八百九十四年度ノ不足額ノ補塡トシテ同年度ノ歳入額中ヨリ同年度ニ拂込マレタル額ニ等シキ額

二 千八百九十五年及千八百九十六年ノ兩會計年度ニ於ケル衞生海事檢疫委員會ノ豫算ノ不足額ヲ補塡スル爲必要ナル額

右控除後ニ於ケル剩餘金ハ紅海ノ新燈臺建設費ニ充テラルベシ

   第五條

千八百九十七年ノ會計年度以後ニ於テハ右四萬「エジプト、ポンド」ノ年額ハ衞生海事檢疫委員會ニ於テ生ズルコトアルベキ不足額ノ補塡ニ充テラルベシ之ガ爲必要ナル額ハ同委員會ノ千八百九十四年及千八百九十五年ノ兩會計年度ニ於ケル財政上ノ成績を基礎トシテ確定セラルベシ

剩餘金ハ燈臺税ノ輕減ニ充テラルベシ但シ右税金ハ紅海及地中海ニ於テ輕減セラルベキモノトス

   第六條

前記ノ控除及充當ニ依リ政府ハ千八百九十四年度以後ニ於テハ衞生海事檢疫委員會ノ經當費又ハ臨時費ニ關スル一切ノ義務ヲ免除セラル

尤モ「エジプト」國政府ニ依リ本日迄負擔セラレタル經當ハ引續キ同國政府ノ負擔タルベキモノトス

   第七條

千八百九十四年ノ會計年度以後ニ於テハ公債管理局ト超過額ノ決濟ヲ爲スニ當リテハ政府ニ歸屬スル超過額ハ二萬「エジプト、ポンド」ノ年額ヲ増加セラルベシ

   第八條

本令第五條ニ依リ燈臺税ノ輕減ニ充テラルル額ハ「エジプト」國ト獨逸國、白耳義國、「グレート、ブリテン」國及伊太利國ノ諸政府トノ間ニ締結セラレタル通商條約ニ附屬スル書翰ニ揭ゲラルル四萬「エジプト、ポンド」ノ額ヨリ控除セラレルベキコト「エジプト」國政府ト右諸國政府トノ間ニ協定セラレタリ

   第九條

大藏大臣ハ本令ヲ施行スルコトヲ要ス

千八百九十四年十二月二十五日「クーベー」宮殿ニ於テ本令ヲ作成ス

       アッバス、ヒルミ

        太守ニ依リ

        內閣議長 エヌ、ニュバル

        大藏大臣 アーメル、マズルム

        外務大臣 ブトロ、ガーリ



衞生海事檢疫部ノ作用ニ關スル千八百九十三年六月十九日ノ省令

內務大臣ハ

千八百九十三年六月十九日ノ命令ニ鑑ミ

左ノ通規定ス

  第一編

   衞生海事檢疫委員會

   第一條

會長ハ每月第一火曜日ニ通常會議トシテ衞生海事檢疫委員會ヲ召集スルコトヲ要ス

會長ハ委員三名ノ請求アルトキ又委員會ヲ召集スルコトヲ要ス

會長ハ重要措置ヲ直ニ執ルコトヲ要スルノ事情アル場合ニ於テハ臨時會議トシテ又委員會ヲ召集スルコトヲ要ス

   第二條

召集狀ニハ議事日程ニ上程セラルル問題ヲ指示ス緊急ノ場合ヲ除キ召集狀ニ指示セラルル問題ニ付テノ外確定的決議ヲ爲スコトヲ得ズ

   第三條

委員會ノ書記ハ會議ノ議事錄ヲ作成ス

右議事錄ハ會議ニ列席シタル一切ノ委員ニ之ヲ提示シ其ノ署名ヲ受クルコトヲ要ス

議事錄ハ全部帳簿ニ謄寫セラルベク帳簿ハ該議事錄ノ原本ト共ニ記錄ニ保存セラル

議事錄ノ假謄本ハ委員ノ請求アルトキハ該委員ニ交付セラルベシ

   第四條

會長、衞生海事檢疫部監察長官及委員會ニ依リ選任セラルル諸國ノ代表委員二名ヨリ成ル常設委員會ハ緊急ノ措置ヲ執ルモノトス

關係國ノ代表委員ハ常ニ召集ヲ受ク該委員ハ表決權ヲ有ス

會長ハ可否同數ノ場合ニ於テノミ表決ス

決議ハ委員會ノ一切ノ委員ニ書面ヲ以テ直ニ通知セラルルモノトス

常設委員會ハ三月每ニ改選セラルベシ

   第五條

會長又ハ其ノ不在ノ場合ニ衞生海事檢疫部監察長官ハ委員會ノ議事ヲ指揮シ可否同數ノ場合ニ於テノミ表決ス

會長ハ事務一般ヲ指揮シ委員會ノ決議ヲ實行セシムルコトヲ要ス

  書記局

   第六條

書記局ハ會長ノ指揮ノ下ニ置カレ內務省及衞生海事檢疫部職員トノ通信ヲ蒐集ス

書記局ハ統計及記錄ヲ擔當ス書記局ニハ事務ノ處理ヲ確保スルニ充分ナル數ノ使用人及通譯配屬セラルベシ

   第七條

書記長タル委員會書記ハ委員會ノ會議ニ出席シ議事錄ヲ作成ス

書記長ハ書記局ノ雇員及使丁ヲ指揮ス

書記長ハ會長ノ管理ノ下ニ右雇員及使丁ノ事務ヲ指揮及監視ス

書記長ハ記錄ヲ保管シ且其ノ責ニ任ズ

  會計部

   第八條

中央會計部長ハ「會計職員」トス

部長ハ保證金ヲ納付シタル後ニ非ザレバ其ノ職ニ就クコトヲ得ズ右保證金ノ額ハ衞生海事檢疫委員會ニ依リ決定セラルベシ

部長ハ財務委員會ノ指揮ノ下ニ衞生檢疫手數料ノ收入取扱人ノ事務ヲ監督ス

部長ハ財産目錄及收支決算書ヲ作成ス該財産目錄及收支決算書ハ財務委員會ニ依リ決定セラレ且衞生海事檢疫委員會ノ承認ヲ經タル後內務省ニ送付セラルルコトヲ要ス

  衞生監察長官

   第九條

衞生監察長官ハ委員會ニ屬スル一切ノ事務部ヲ監視ス監察長官ハ千八百九十三年六月十九日ノ命令第十九條ニ規定セラルル條件ニ從ヒ右監視權ヲ行使ス

監察長官ハ閣衞生署、衞生支署又ハ衞生派出所ヲ每年少クトモ一囘檢閲ヲス

右ノ外會長ハ委員會ノ提議ニ基キ且事務ノ必要ニ從ヒ監察長官ノ行フベキ檢閲ヲ決定ス

監察長官ノ事故ノ場合ニハ會長ハ委員會トノ合意ノ上右監察長官ヲ代理スベキ官吏ヲ指定スベシ

監察長官ハ衞生署、衞生支署、衞生派出所、防疫所又ハ檢疫廠舎ヲ檢閲シタルトキハ其ノ都度檢査ノ成績ヲ特別報吿書ヲ以テ委員會會長ニ報吿スルコトヲ要ス

監察長官ハ其ノ各巡閲ノ間ニ於テ會長ノ管理ノ下ニ一般事務ノ指揮ニ參與シ會長ノ不在又ハ事故ノ場合之ニ代ルモノトス

  第二編

   港、檢疫所及防疫所ノ事務

   第十條

地中海及紅海ノ「エジプト」國沿岸竝ニ砂漠方面ノ陸境ニ於ケル衞生海事檢疫警察ハ衞生署長、防疫所長、檢疫廠舎長、衞生支署長又ハ衞生派出所長及此等ノ指揮ノ下ニ在ル職員ニ委任セラル

   第十一條

衞生署長ハ其ノ長タル衞生署及之ニ屬スル衞生派出所ノ事務ヲ指揮シ且其ノ責ニ任ズ

署長ハ衞生海事檢疫警察規則ノ嚴正ナル實行ニ留意スルコトヲ要ス署長ハ委員會會長ヨリ接受スル訓令ニ從ヒ且衞生署ノ一切ノ職員及衞生署ニ屬スル派出所ノ職員ニ對シ必要ナル命令及訓令ヲ爲ス

署長ハ船舶ノ檢査及審問竝ニ檢疫措置ノ施行ヲ爲スコトヲ要シ且規則ニ依リ定メラルル場合ニハ醫學的檢分及檢疫上ノ違反ニ關スル訊問ヲ行フ

署長ハ其ノ監理事務ニ關シテハ委員會會長トノミ通信シ其ノ職務執行中蒐集シタル一切ノ衞生情報ヲ右會長ニ送付ス

   第十二條

衞生署長ハ給與ニ關シ左ノ二級ニ分タル

 第一級署ハ左ノ四トス

  「アレキサンドリア」

  「ポート・サイド」

  「バッサン、ド、スエズ」及「スールス、ド、モイーズ」廠舎

  「トール」

 第二級署ハ左ノ三トス

  「ダミエット」

  「スアキム」

  「コッセイル」

   第十三條

衞生支署長ハ衞生支署ニ關シ衞生署長ノ衞生署ニ關スル權限ヲ有ス

   第十四條

衞生支署ハ「エル、アリシュ」ニノミ之ヲ置ク

   第十五條

衞生派出所長ハ其ノ派出所ノ職員ヲ指揮ス有所長ハ衞生署長ノ指揮ヲ受ク

派出所長ハ規則ニ依リ定メラルル衞生檢疫措置ノ實行ヲ爲スコトヲ要ス

派出所長ハ健康證明書ヲ發給スルコトヲ得ズ又ハ交通許可ヲ得テ出航スル船舶ノ健康證明書ノ外査證スルコトヲ得ズ

派出所長ハ不完全ナル健康證明書ヲ有シ又ハ反則ノ狀態ニテ寄航スル船舶ヲ衞生署ノ在ル港ニ囘航セシム

派出所長ハ自ラ衞生訊問ヲ爲スコトヲ得ズ右訊問ハ之ヲ其ノ所屬衞生署長ニ請求スルコトヲ要ス

派出所長ハ緊急巳ムヲ除クノ外一切ノ監理事務ニ關シ衞生署長トノミ通信ス到著船舶ニ對シ執ルベキ措置又ハ出航船舶ノ健康證明書ニ記入スベキ注意書ノ如キ緊急ノ衞生檢疫事項ニ關シテハ派出所長ハ委員會會長ト直接ニ通信ス但シ派出所長ハ右通信ヲ遅滯ナク所屬衞生署長ニ報吿スルコトヲ要ス

派出所長ハ其ノ知リタル難破ヲ最迅速ナル方法ヲ以テ委員會會長ニ通知スルコトヲ要ス

   第十六條

衞生派出所長ハ左ニ列舉セラルル六トス

 「アレキサンドリア」衞生署管內「ポール・ヌーフ」、「アブキール」、「ブリュロス」及「ロゼット」ノ各派出所

 「ポート・サイド」衞生署管內「カンタラ」及「イスマイリア」內港ノ各派出所

委員會ハ事務ノ必要及其ノ財源ニ應ジ新衞生派出所ヲ設置スルコトヲ得ベシ

   第十七條

防疫所及檢疫廠舎ノ經常的又ハ臨時的事務ハ檢疫職員、監守、人夫及使丁ヲ指揮スル防疫所長及檢疫廠舎長ニ委任セラル

   第十八條

防疫所長又ハ檢疫廠舎長ハ防疫所又ハ檢疫廠舎ニ送ラレタル者ヲシテ檢疫ヲ受ケシムルコトヲ要ス右所長又ハ廠舎長ハ醫師ト協力シテ各種受檢者ノ隔離ニ留意シ且危險行爲ヲ防止ス一定ノ期間滿了シタルトキハ右所長又ハ廠舎長ハ規則ニ從ヒ受險疫者ニ交通許可ヲ與ヘ又ハ之ヲ停止シ、貨物及手廻リ品ノ消毒ヲ行ハシメ及右消毒ニ從事シタル者ヲ檢疫ニ付ス

   第十九條

防疫所長又ハ檢疫廠舎長ハ規定セラレタル措置ノ實行竝ニ受檢疫者及防疫所又ハ檢疫廠舎ノ職員ノ健康狀態ニ付常時監視ヲ行フ

   第二十條

防疫所長又ハ檢疫廠舎長ハ事務進行ノ責ニ任ジ且其ノ狀況ヲ日報ヲ以テ衞生海事檢疫委員會會長ニ報吿スベシ

   第二十一條

防疫所附及檢疫廠舎附醫師ハ所長及廠舎長ニ所屬ス右醫師ハ調劑師及看護人ヲ指揮ス

右醫師ハ受檢疫者及職員ノ健康狀態ヲ監視シ防疫所又ハ檢疫廠舎ノ病室ヲ指揮ス

交通許可ハ檢疫狀態ニ在ル者ニ對シテハ醫師ノ檢診ノ結果良好ナル報吿アリタル後ニ非ザレバ與ヘラルルコトヲ得ズ

   第二十二條

各衞生署、防疫所又ハ檢疫廠舎ニ於テハ署長、所長又ハ廠舎長ハ又「會計職員」トス

右署長、所長又ハ廠舎長ハ自己ノ現實ノ責任ノ下ニ衞生檢疫手數料ノ收入取扱人ヲ任命ス

衞生支署長又ハ衞生派出所長モ亦會計職員トス右支署長又ハ派出所長ハ自ラ手數料ノ徵收ヲ爲スコトヲ要ス

手數料ノ徵收職員ハ提供スベキ保證、簿記、拂込ノ時期及一般ニ其ノ會計事務ノ一切ニ關シ大藏省ノ規則ニ從フコトヲ要ス

   第二十三條

衞生海事檢疫部ノ經費ハ委員會固有ノ資金又ハ大藏省トノ合意ノ上同省ノ指定スベキ財源ヲ以テ支拂ハルベシ

千八百九十三年六月十九日「カイロ」ニ於テ

              リアズ



(定訳)

署名議定書

      大正一五年 六月二一日パリで署名

      昭和一〇年一二月二一日公布(条約第九号)

下名全權委員ハ國際衞生條約ニ署名スル爲本日會合セリ

独逸國全權委員ハ第二十五條ニ關シ腺「ペスト」ノ場合ニ於テ條約ニ依リ諸政府ニ對シ付與セラルル停留ヲ課スルノ權能ニ付明白ナル留保ヲ爲ス

「ブラジル」國全權委員ハ最終本會議ノ議事錄ニ揭ゲラルル留保ノ下ニ政府ノ承認ヲ條件トシテ條約ニ署名スルノ委任ヲ受ケタルコトヲ宣言ス

「チリ」國全權委員ハ「ブラジル」國及「ポルトガル」國ノ全權委員ニ依リ爲サレタル留保ニ同意スルコトヲ宣言ス

中華民國全權委員ハ條約ニ揭ゲラルル疾病ノ届出ヲ義務的ナラシムル第八條第二項ノ約定ニ付其ノ政府ノ名ニ於テ明白ナル留保ヲ爲ス

「エジプト」國全權委員ハ「スーダン」ヲ代表スル委員ノ會議ヘノ出席ニ付爲シタル明白ナル留保ヲ其ノ政府ノ名ニ於テ重テ玆ニ表明ス尚「エジプト」國全權委員ハ右「スーダン」代表委員ノ出席ハ何等「エジプト」國ノ主權ヲ害シ得ルモノニ非ザルコトヲ宣言ス

西班牙國全權委員ハ第十二條ニ關スル「アメリカ」合衆國全權委員ノ留保ト同樣ノ留保ヲ其ノ政府ノ名ニ於テ爲スコトヲ宣言ス

「アメリカ」合衆國全權委員ハ合衆國全權委員ニ依ル

本日ノ國際衞生條約ノ署名ハ署名國又ハ加入國ノ政府ノ職能ヲ行フ組織又ハ實體ガ「アメリカ」合衆國ニ依リ未ダ該國ノ政府トシテ承認セラレザルニ於テハ合衆國ガ右組織又ハ實體ヲ右ノ國ノ政府トシテ承認スルモノナリトノ意義ニ解セラレルベキニ非ザルコトヲ正式ニ宣言ス尚「アメリカ」合衆國全權委員ハ本日ノ國際衞生條約ヘノ「アメリカ」合衆國ノ參加ハ署名國又ハ加入國ニシテ其ノ政府ニ該當スルモノト合衆國ノ認メザル組織又ハ實體ニ依リ代表セラルルモノニ對シ該國ガ合衆國ノ承認シタル政府ニ依リ代表セラルルニ至ル迄合衆國ノ條約上ノ何等ノ義務ヲモ包含スルモノニ非ザルコトヲ宣言ス

他方「アメリカ」合衆國全權委員ハ其ノ政府ガ施行スベキ措置ノ見地ヨリ外國ノ一區域ガ病毒ニ汚染セリト認メラルベキヤ否ヤ及自國港ニ來ルモノニ對シ特殊ノ事情アル場合ニ施行セラルベキ措置ヲ決定スルノ權利ヲ留保スルコトヲ宣言ス

「エティオピア」帝國代表委員ハ國際衞生會議ニ依リ成就セラレタル偉業及其ノ包含スル幾多ノ新規定ヲ皇帝陛下及帝國定位繼承者ニシテ攝政タル「タファリ、マコンネン」殿下ニ電報スルコト能ハザリシヲ以テ所要ノ訓令ヲ接受スル以前ニ於テ條約ニ署名スルヲ差控フベキコトヲ宣言ス

英國全權委員ハ其ノ署名ガ國際聯盟ノ個個ノ聯盟國タル英帝國ノ部分ニシテ條約ニ別ニ署名又ハ加入セザルモノノ何レモヲ拘束スルモノニ非ザルコトヲ宣言ス

尚英國全權委員ハ第八條第二項ノ規定ハ條約ノ當時國ニシテ實際上ノ理由ニ依リ該條ニ揭ゲラルル疾病ノ義務的届出ニ關スル右規定ヲ完全ニ實行スルコト能ハザルベキ一切ノ保護領、殖民地、屬地又ハ英國ノ委任統治ノ下ニ在ル國ニ付テハ之ヲ適用セザルノ權利ヲ留保スルコトヲ宣言ス

「カナダ」代表委員ハ施行スベキ措置ノ見地ヨリ外國ノ一區域ガ病毒ニ汚染セリト認メラルベキヤ否ヤ及「カナダ」ノ港ニ來ルモノニ對シ特殊ノ事情アル場合ニ施行セラルベキ措置ヲ決定スルノ權利ヲ其ノ政府ノ爲ニ留保ス右保留ノ下ニ「カナダ」代表委員ハ其ノ政府ガ條約第十二條ノ義務及外國ニ於ケル疾病ノ存在ニ付其ノ受クベキ公報ヲ考慮スルノ用意アルコトヲ宣言ス

印度代表委員ハ大都市ニ於ケル場合又ハ傳染病流行ノ場合ヲ除キ現在印度ハ實際上ノ理由ニ依リ第八條ニ揭ゲラルル疾病ノ義務的届出ニ關スル該條ノ義務ヲ受諾スルコト能ハザルノ留保ノ下ニ國際衞生條約ニ署名スルノ委任ヲ受ケタルコトヲ宣言ス

英國全權委員ハ第九十條ニ關スル「ペルシァ」國全權委員ノ留保ハ「ペルシァ」國及英國ノ政府間ニ協定ノ成立スルニ至ル迄何等現狀ヲ變更スルヲ得ザルコトヲ宣言シ且確認セラルベキコトヲ主張ス

「フィンランド」共和國全權委員ハ「コレラ」ニ對スル免疫ハ充分ナル保障ト爲ラザルヲ以テ其ノ政府ガ第三十條ノ規定ニ拘ラズ必要ニ應ジ免疫セラレタル者ヲ停留ニ付スルノ留保ヲ爲スコトヲ宣言ス

尚「フィンランド」國境ニ依ル交通ハ東部ニ於テハ極メテ隣接セル鐵道二線ニ依リ又西部ニ於テハ單ニ鐵道一線ニ依リ爲サレ得ルノミニテ國境ノ部分的閉鎖ヲ許サザルヲ以テ「フィンランド」國ハ傳染病流行ノ場合ニ全部的閉鎖ヲ避クル爲第五十八條ノ規定ニ拘ラズ必要ニ應ジ停留ヲ行フノ權利ヲ留保ス

日本國全權委員ハ其ノ政府ガ(一)條約ニ依リ定メラルル公衆衞生國際事務局ニ爲スベキ通吿及情報ヲ「シンガポール」東洋局ノ仲介ニ依リ送付スルノ權能及(二)「コレラ」病原體保有者ニ關シテハ衞生機關ニ於テ必要ナリト認ムル措置ヲ執ルノ權能ヲ留保スルコトヲ宣言ス

「リスアニア」國全權委員ハ條約ニ參加スト雖モ「リスアニア」國及「ポーランド」國間ノ正當ナル關係ガ囘復セラレザル限リ兩國間ニ於ケル條約ノ實施ニ付明白ナル留保ヲ爲スコトヲ宣言ス

右留保ハ第九條、第十六條、第五十七條及第六十六條ノ規定ニ關シ特ニ重要ナリ

和蘭國全權委員ハ其ノ政府ガ蘭領印度ニ關シ、第十條第二項ニ規定セラルル措置ヲ鼠族ノ「ペスト」ニ汚染セル區域ヨリ來ルモノニモ施行セシムルノ留保ヲ爲スコトヲ其ノ政府ノ名ニ於テ宣言ス

尚和蘭國全權委員ハ其ノ政府ガ蘭領印度ニ關シ、衞生機關ニ於テ鼠族ノ「ペスト」ニ汚染セル區域ヨリ來ル貨物ガ鼠族ヲ包藏スルノ虞アリ且第二十四條末項ニ規定セラルル調査ヲ妨グル樣積込マレタリト認ムルトキハ第二十七條ニ定メラルル鼠族驅除ハ該貨物ヲ搭載スル船舶ニ對シ行ハルルコトヲ得ベシトノ意ニ第二十七條二ヲ解釋スルノ留保ヲ爲スコトヲ宣言ス

「ペルシァ」國全權委員ハ「ペルシァ」灣ニ關スル特別規定ヲ條約中ニ存置スベキ何等ノ理由ナキコトヲ宣言ス條約ガ第二編第五節ヲ成ス第九十條ヲ包含スルノ事實ハ「ペルシァ」國全權委員ヲシテ最明白ナル留保ヲ爲スコトナクシテ條約ニ署名スルコト能ハザラシム尚「ペルシァ」國全權委員ハ現狀ハ何等其ノ政府ヲ拘束スルヲ得ザルベキコトヲ宣言ス他方「ペルシァ」國全權委員ハ第八條ニ揭ゲラルル疾病ノ義務的届出ニ關スル該條ノ規定ヲ適用セザルノ權利ヲ其ノ政府ノ爲ニ留保ス

「ポルトガル」國全權委員ハ最終本會議ノ議事錄ニ揭ゲラルル留保ノ下ニ政府ノ承認ヲ條件トシテ條約ニ署名スルコトヲ其ノ政府ニ依リ委任セラレタルコトヲ宣言ス

「トルコ」國全權委員ハ「トルコ」國ハ如何ナル條約ニ依ルモ「エジプト」衞生海事檢疫委員會ニ其ノ代表者ヲ出スコトヲ抛棄シタルコトナキコトヲ宣言ス他方「トルコ」國全權委員ハ「ローザンヌ」ニ於テ署名セラレタル海峡條約ノ規定竝ニ「ボスボロス」海峡及「ダルダネル」海峡ノ特殊ナル狀態ヲ考慮シ船醫無ク且汚染港ヨリ來リ海峡ヲ通過スル商船ヲシテ「トルコ」國ノ港ニ寄ルヲ避ケシムル爲衞生監視ヲ船內ニテ行フノ權利ヲ「トルコ」國衞生機關ノ爲ニ留保ス但シ右衞生監視ノ爲ニ生ズルコトアルベキ遅延及費用ハ最小限度トセラルベキモノトス

「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦全權委員ハ五月二十六日條約案ノ第七條ニ關シ第一委員會ノ會議中其ノ爲シタル宣言ニ付注意ヲ喚起シ公衆衞生國際事務局ガ他ノ衞生機關ト取極ヲ爲スノ權利ニ關スル規定ニ付何等ノ異議ナキコトヲ宣言ス但シ同全權委員ハ右權利ハ同事務局ノ職務ヲ規定セル千九百七年ノ「ローマ」協定ニ基クモノナリト認ム故ニ右權利ノ確認ニ止マル前記規定ハ議事錄ニノミ揭載スベカリシモノニシテ條約ノ一條ヲ構成スベキモノニ非ズト思考ス

「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦全權委員ハ條約第十二條ノ討議ノ際關係國ノ疾病ノ危險既ニナキニ至リシ旨ノ宣言アルニ拘ラズ例外ノ場合ニ於テハ各政府ノ爲ニ衞生措置ノ流行期間ヲ延長スルノ權利ヲ認ムル規定ニ對シ反對ノ投票ヲ爲セルコトニ付注意ヲ喚起ス

同全權委員ハ右規定ハ從前ノ條約ノ根本主義ノ一ニ牴觸シ且其ノ適用ヨリ生ズルコトアルベキ誤解ノ原因ト爲ルベシト思考ス

故ニ同全權委員ハ條約ノ精神ニ依レバ右規定ハ汚染區域ノ屬スル政府ガ右ニ付條約ニ依リ定メラルル義務ヲ怠リシ例外的場合ニ於テノミ適用セラレ得ベキモノナルコトヲ宣言ス

「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦全權委員ハ「エジプト」衞生海事檢疫委員會ノ職務權限ニ關シ第二委員會ニ於テ其ノ既ニ爲シタル留保ニ付注意ヲ喚起ス同全權委員ハ第七十條及第百六十四條ガ特ニ右委員會ニ衞生海事檢疫警察ノ諸種ノ規則ヲ設定スルノ權利ヲ付與スルモ右規則ガ實施セラルル爲ニハ右委員會ニ代表者ヲ出セル諸國ニ依リ受諾セラルルコトヲ要スルコトニ付特ニ注意ヲ喚起ス「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦ハ「エジプト」衞生海事檢疫委員會ニ未ダ代表者ヲ出サザルヲ以テ聯邦代表ハ政府ノ右委員會ニ依リ定メラルル措置ヲ受諾シ又ハ受諾セザルノ權利ヲ留保ス

下名ハ前記留保ヲ了承シ且各下名ノ國ハ留保ヲ爲シタル國ニ對シ右留保ノ利益ヲ主張スルノ權利ヲ留保スルコトヲ宣言ス

右證據トシテ各全權委員ハ本議定書ニ署名セリ

千九百二十六年六月二十一日「パリ」ニ於テ作成ス

「アフガニスタン」國

  イスラムベック、クードイアル、カーン

「アルバニア」國

  ドクトル、オスマン

獨逸國

  フラヌー

  ハメル

「アルゼンティン」共和國

  エフ、アー、デ、トレド

澳地利國

  ドクトル、アルフレド、グリュンベルゲル

白耳義國

  ヴェルグ

「ブラジル」國

  カルロス、シァガス

  ジルベルト、モウラ、コスタ

「ブルガリア」國

  ベー、モルフォフ

  トシュコ、ペトロフ

「チリ」國

  アルマンド、ケサーダ

中華民國

  姚錫九

  謝東發

「コロンビア」國

  ミゲル、ヒメネス、ローペス

「キュバ」國

  エル、エルナンデス、ポルテーラ

丁抹國

  テー、マドセン

「ダンチッヒ」

  ホヂコ

  スタデ

「ドミニカ」共和國

  ベタンセス

「エジプト」國

  ファクーリー

  ドクトル、エム、エル、グィンディ

「エクアドル」國

  ホタ、イリンゴウルト

西班牙國

  侯爵デ、ファウラ

  ドクトル、エフ、ムリーリォ

「アメリカ」合衆國

  エイチ、エス、カンミング

  ダブリュー、ダブリュー、キング

「エティオピア」國

  エントット公、ラガルド

「フィンランド」國

  エンケル

佛蘭西國

  カミーユ、バレール

  アリスマンディ

  ナヴァイユ

  ドクトル、アー、カルメット

  レオン、ベルナール

 「アルジェリー」

  ドクトル、レイノー

 西「アフリカ」

  ドクトル、ポール、グージアン

 東「アフリカ」

  ティルー

 印度支那

  ドクトル、レルミニエ

  、エヌ、ベルナール

 「シリア」、「グリン、リバン」、「アラウィット」及「ヂェベル・ドルュズ」

  アリスマンディ

 佛蘭西國ノ他ノ殖民地、保護領、屬地及委任統治地域全部

  オーディベール

英帝國

  ジー、エス、ブカナン

  ジォン、マレー

 「カナダ」

  ジェー、エー、アミオット

 「オーストラリヤ」聯邦

  ダブリュー、シー、ソーワーズ

 「ニュー・ジーランド」

  シドニー、プライス、ジェームズ

 印度

  ディー、ティー、チァドウィック

 南「アフリカ」聯邦

  フィリップ、ストック

希臘國

  アー、セー、カラパノス

  ドクトル、マタランガス

「グァテマラ」國

  フランシスコ、アー、フィゲロア

「ハイティ」國

  ジォルジュ、オーデン

「へヂァーズ」國

  ドクトル、マームード、ハムーデ

「ホンデュラス」國

  ルベン、アウディノ・アギラール

「ハンガリー」國

  ドクトル、セー、グロッシュ

伊太利國

  アルベール、ルトラリオ

  ジォヴァンニ、ヴィットリオ、レペッティ

  オドアルド、フエッテル

  ジ、ロッコ

  ジュゼッペ、ドゥルエッティ

大日本帝國

  松島肇

  鶴見三三

「リベリア」共和國

  アール、レーマン

  アール、オームス

「リスアニア」共和國

  ドクトル、ペー、ヴァイチューシュカ

「ルクセンブルグ」國

  ドクトル、ブラウム

「モロッコ」國

  アリスマンディ

  ドクトル、レイノー

「メキシコ」國

  エレ、カブレラ

「モナコ」國

  エフ、ルッセル

  ドクトル、マルサン

諾威國

  シグール、ベンツォン

「パラグァイ」國

  エレ、ヴェー、カバリェーロ

和蘭國

  ドゥデ、ファン、トローストワイク

  エヌ、エム、ヨセフス、ジッタ

  デ、フォーヘル

  ファン、デル、プラス

「ペルー」國

  ペー、ミンベラ

「ペルシャ」國

  ドクトル、アリ、カーン、パルトー、アーザム

  マンスール、シャリフ

   政府ノ承認ヲ條件トス

「ポーランド」國

  ホヂコ

「ポルトガル」國

 リカルド、ジォルジュ

「ルーマニア」國

  ドクトル、ジー、カンタクゼーヌ

「サン・マリノ」國

  ドクトル、グエルパ

「セルブ、クロアート、スロヴェーヌ」王國

  エム、スパライコヴィッチ

「サルヴァドル」國

  カルロス、エレ、ラルデ・アルテス

「スーダン」

  オリヴァー、フランシス、ヘイネス、アトキー

瑞西國

  デュナン

  カリエール

「チェッコスロヴァキア」國

  ドクトル、ラディスラフ、プロハースカ

「テュニス」國

  ナヴァイユ

「トルコ」國

  アー、フェティー

「ソヴィエト」社會主義共和國聯邦

  ジー、ダフティアン

  ジー、マンムリア

  エル、ブロンステイン

  オー、メブルヌトフ

  エヌ、フレイベルグ

  アー、シシン

  ヴェー、エゴリエフ

「ウルグァイ」國

  アー、エローサ

「ヴェネズエラ」國

  ホセ、イー、カルデナス

   政府ノ承認ヲ條件トス