[文書名] ポツダム宣言受諾に關し希望の件(ポツダム宣言受諾に関し希望の件)
昭和二十年八月十五日東鄕外務大臣ヨリ在瑞西加瀨公使宛
昭和二十年八月十五日發電午前四時
十一時?
在瑞西加瀨公使 東鄕外務大臣
◇暗第(X)三五六號(緊急、館長符號)
「ポツダム」宣言ノ條項受諾ノ件(本電)
貴官ハ往電第[X]三五二號通吿後數時間ノ餘裕ヲ置キ別電第Y三五七號(邦譯文ハ別電第Z三五八號)ヲ貴國政府ヨリ四國政府ニ傳達方依賴アリ度
右申入ハ飽ク迄ワカ方ノ希望ノ開陳ニ過キスシテ宣言受諾ノ條件トシテ提出スルモノニハアラス然レトモ今後ノ機微困難ナル共同宣言ノ規定ノ實施條項ノ實行ヲ圓滑ナラシムル爲極メテ肝要ナルニ付(ナホワカ方ノ內政上ヨリシテモ特ニ必要ナリ右貴官オ含ミマテ)責任國ニ對シテモ帝國政府苦心ノ程ヲ篤ト御說明ノ上ワカ方希望實施ノ爲斡旋方依賴セラレ度
◇略第Z三五八號(緊急)
「ポツダム」宣言ノ條項受諾ノ件(別電)
(別紙ノ通リ)
(別紙)
帝國政府ハ「ポツダム」宣言ノ若干條項ノ實施ノ圓滑ヲ期スル爲切實ナル希望ヲ存シ之ヲ右宣言實施條項署名ノ際又ハソノ他適當ナル機會ニ開陳セシメタキ處或ヒハ斯カル機會ナキコトヲ虞レ茲ニ之ヲ瑞西國政府ノ斡旋ニヨリ米英支ソ四國政府ニ傳達セントス
一、「ポツダム」宣言中ノ占領ノ目的カ專ラ「ポツダム」宣言ニ揭ケラレタル基本的目的ノ達成ヲ保障スルニ在ルニ鑑ミ四國側ニオイテハ帝國政府カ該條項ヲ誠意ヲモツテ實行セントスルモノナルニ信賴シ帝國政府ノ責務遂行ヲ容易圓滑ナラシメ且ツ無用ノ紛糾ヲ避クルカ如ク配慮アリ度之カ爲
(1)連合國側ノ艦隊又ハ軍隊ノ日本本土進入ニツイテハ日本側準備ノ關係モアリ豫メソノ豫定ヲ通報アリタキコト
(2)連合國ノ指定スヘキ日本國領域內ノ占領ノ地點ハソノ數ヲ最少限度ニ止メ且ツソノ選擇ニ當リ例ヘハ東京ヲ除外スルコト並ヒニ右「當該」地點ニ派駐セラルル兵力モ象徵的程度ニ止ムルコト
ヲ切實ニ考慮アリ度
二、武裝解除ハ海外ニ在ル三百萬餘ノ軍隊ニ關連アルト共ニ日本將兵ノ名譽ニ直接觸レタル最モ困難機微ナル問題ナルコト言ヲ俟タサル所ニシテ之カ實施ニツイテハ帝國政府ニオイテ最モ苦慮シ居ル次第ナルカ之カ實效ヲ期スル最善ノ方法トシテハ天皇陛下ノ御命令ニ基キ帝國軍自ラ實施シ連合國ハソノ圓滑ナル實施ノ結果武器ノ引渡シヲ受クルモノト致シ度
大陸ニ在ル帝國軍ノ武裝解除ニ當リテハ第一線ヨリ逐次後方ニ向ケ段階的ニ實施スルコトトシ度
武裝解除ニ關連シ海牙陸戰法規第三十五條ヲ準用シ軍人ノ名譽ヲ重ンシ帶劍ハ之ヲ認メラレ度又連合國側カ武裝解除セラレタル日本軍人ヲ强制勞役ニ使用スル如キ意圖ヲ有セサルモノト了解ス海外ニオイテ武裝ヲ解除セラレタル日本軍人ヲソノ儘永ク海外ニ駐留セシムルコトハ彼我双方ニトリ面白カラサル種々ノ複雜困難ナル問題ヲ生スルノ虞アルニツキ連合國側ニオイテ速カニ之ヲ日本內地ニ撤收セシムル爲ニ必要ナル船舶及ヒソノ輸送上ノ便宜ヲ供給セラレンコトヲ切望ス
三、停戰ニ關シテハ遠隔ノ地ニ在ル部隊ニ天皇陛下ノ御命令ヲ充分ニ徹底ヲ期スル要アルヲモツテ停戰ノ實施期日ニツイテハ幾分ノ餘裕ヲ置カレ度
四、太平洋ノ離島ニ在ル帝國軍隊ニ對シ必要缺クヘカラサル程度ノ食糧醫藥品ヲ送付シ及ヒ之等離島ヨリ本土ニ傷病兵ヲ輸送スルタメ至急連合國側ニオイテ所要ノ措置ヲ構スルカ又ハワカ方ニ對シ便宜ヲ供與セラレ度
{文中の[X]はXの四角囲み文字}