データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 米比相互防衛条約(アメリカ合衆国とフィリピン共和国との間の相互防衛条約)

[場所] ワシントンDC
[年月日] 1951年8月30日作成,1952年8月27日発効
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),411‐413頁.主要条約集,1671‐1675頁.
[備考] 
[全文]

 この条約の締約国は、

 国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再認識し、かつ、太平洋地域における平和機構を強化することを希望し、

 両国の国民が前戦争の間同情及び相互の理想の共通のきずなによつてともに帝国主義者の侵略に対抗して戦うため結束するに至つた歴史的関係を相互に誇りをもつて想起し、

 いかなる潜在的侵略者も、いずれか一方の締約国が太平洋地域において孤立しているという錯覚を起こすことがないようにするため、両国の団結の意識及び外部からの武力攻撃に対して自らを防衛しようとする共同の決意を公然とかつ正式に宣言することを希望し、

 さらに、太平洋地域における地域的安全保障の一層包括的な制度が発達するまでの間、平和及び安全を維持するための集団的防衛についての両国の現在の努力を強化することを希望し、

 この文章のいかなる事項も、アメリカ合衆国とフィリピン共和国との間の現行の協定又は了解をいかなる方法又は意味でも変更し又は限定するものと認められ、又は解釈されてはならないことに合意し、

 次のとおり協定した。

第一条

 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を、平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びに、それぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を国際連合の目的と両立しないいかなる方法によるものも慎むことを約束する。

第二条

 締約国は、この条約の目的を一層効果的に達成するため、単独に及び共同して自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するための個別的及び集団的能力を維持し発展させる。

第三条

 締約国はこの条約の実施に関し、自国の外務大臣又はその代理者を通じて随時協議し、また、いずれか一方の締約国が、太平洋においていずれか一方の締約国の領土保全、政治的独立又は安全が外部からの武力攻撃によって脅かされたと認めたときはいつでも協議する。

第四条

 各締約国は、太平洋地域におけるいずれか一方の締約国に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

 前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。

第五条

 第四条の規定の適用上、いずれか一方の締約国に対する武力攻撃は、いずれか一方の締約国の本国領域又は太平洋地域にある同国の管轄下にある島又は太平洋地域における同国の軍隊、公船若しくは航空機に対する武力攻撃を含むものとみなされる。

第六条

 この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。

第七条

 この条約は、アメリカ合衆国及びフィリピン共和国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国がマニラで批准書を交換した時に効力を生ずる。

第八条

 この条約は、無期限に効力を有する。いずれか一方の締約国は、他方の締約国に通告を行つてから一年後にこの条約を終了させることができる。

 以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。

 千九百五十一年八月三十日にワシントンで、本書二通を作成した。