データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国政府と中華民国国民政府との間の正常関係設定に関する協定案(要領)(日中正常化関係の設定に関する協定案要領)

[場所] 
[年月日] 1951年12月13日
[出典] 日本外交文書 サンフランシスコ平和条約 調印・発行,外務省編纂,外務省発行,外務省,平成21年1月30日発行,352-353頁.
[備考] 昭和26年12月13日,極秘,和文原案
[全文] 

昭和26年12月13日 *1*

極秘

日本国政府と中華民国国民政府との間の正常関係設定に関する協定案(要領)

二六、一二、一三

 日本国政府と中華民国国民政府は、

 極東の平和と安定が一九五一年九月八日サン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約に規定された原則に従つてもたらされることを希望するので、

 他方、中国における事態のため、現在のところ、前記の平和条約第二十六条によつて日本国と中国との関係を全面的に調整することが不可能であることを認め、

 前記の平和条約の原則に従つて、且つ、中華民国国民政府が事実上統治の権能を行使している範囲内において、両政府間の関係を正常化し、及び若干の未決の問題を解決することに決定し、

 よつて、次の規定を協定した。

一(a)この協定の発効と同時に、日本国の領域と台湾及び澎湖島との間には正常の交通が開始されること。

 (b)同時に、両国政府間に特派使節を交換すること。

二 両政府は、対日平和条約第四条(a)の取極を締結するために、交渉を開始すること。

三 中華民国国民政府は、中国戦争犯罪法廷の裁判を受け日本国で拘禁されている日本国民がこの協定の発効と同時に釈放されることに同意すること。

四 日本国と台湾及び澎湖島との通商及び航海は、最恵国待遇の基礎の上におくこと。

五 民間航空運送に関する協定が締結されるまで、日本国政府は、この協定の発効の時から四年間、現在民航空運公司に与えている航空交通の権利を引続き与えること。

六 以上の規定は、対日平和条約第二十一条の規定により中国が享有する利益を害するものではないこと。

七 この協定は、署名と同時に効力を生ずること。

(注)この署名は、対日平和条約の最初の効力発生後に行うものとする。

{*1* 吉田・ダレス会議(第1回)(1951年12月13日)にて、吉田総理よりダレス大使へ交付。}