データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 宇宙空間の探査と利用における国家活動を律する法原則に関する宣言(宇宙法原則宣言)

[場所] 
[年月日] 1963年12月13日
[出典] JAXA(宇宙航空研究開発機構)
[備考] 採択 1963年12月13日(第18会期国際連合総会決議第1962号)
[全文]

 国際連合総会は、

 人間が宇宙空間へ進出することによって、人類の前に展開する広大な将来性に

鼓舞され、

 平和目的のための宇宙空間の探査及び利用の進歩が全人類の共同の利益であ

ることを認識し、

 宇宙空間の探査及び利用が、人類の向上と国家の利益のために、その経済的又は科学的発達の程度に関わりなく行われなければならないことを信じ、

 平和目的のための宇宙空間の探査及び利用の科学的及び法律的な面における広範な国際協力に貢献することを希望し、

 この国際協力が諸国家間及び諸人民間の相互理解の増進及び友好関係の強化に貢献することを信じ、

 平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為を誘発し若しくは助長することを意図し、又はこれらを誘発し若しくは助長する恐れのある宣伝を非難する1947年11月3日の国際連合総会決議110号(第2会期)を想起し、かつ、この決議が宇宙空間に適用されることを考慮し、

 国際連合加盟国が全会一致で採択した1961年12月20日の決議1721号(第16会期)及び1962年12月14日の決議1802号(第17会期)を考慮し、

 宇宙空間の探査及び利用において国家が次の原則に従うことを厳粛に宣言する。

1 宇宙空間の探査及び利用は全人類の利益のために行われる。

2 宇宙空間及び天体はすべての国が平等の基礎に立ち、国際法に従って、自由に探査し利用する。

3 宇宙空間及び天体は、主権の主張、利用若しくは占拠その他のいかなる手段によっても国家による専有の対象とはならない。

4 宇宙空間の探査及び利用における国家の活動は、国際の平和及び安全の維持並びに国際協力及び理解の促進のために国際連合憲章を含む国際法に従って行われる。

5 国家は、宇宙空間における自国の活動について、それが政府機関によって行われるか、非政府団体によって行われるかを問わず、国際的な責任を有し、自国の活動がこの宣言に定められた原則に従って行われることを確保する国際的な責任を有する。宇宙空間における非政府団体の活動は、関係国の許可及び継続的監督を必要とするものとする。国際機関が宇宙空間において活動を行う場合には、当該国際機関及びこれに参加する国の双方が、この宣言の原則に従うことについての責任を負う。

6 国家は、宇宙空間の探査及び利用において、協力及び相互援助の原則に従うものとし、かつ、他の国の対応する利益に妥当な考慮を払って宇宙空間での活動を行う。国家は自国又は自国民によって計画された宇宙活動又は実験が、宇宙空間の平和的な探査及び利用における他の国の活動に潜在的に有害な干渉を及ぼす恐れがあると信ずる理由があるときは、その活動又は実験が行われる前に適当な国際協議を行うものとする。国家は他の国が計画した宇宙活動又は実験が、宇宙空間の平和的な探査及び利用における活動に、潜在的に有害な干渉を及ぼす恐れがあると信ずる理由があるときは、その活動又は実験に関する協議を要請することができる。

7 宇宙空間に打ち上げられた物体が登録されている国は、それらが宇宙空間にある間、当該物体及びその乗員に対する管轄権及び管理権を保持する、宇宙空間に打ち上げられた物体及びその構成部分の所有権は、宇宙空間を通過することによって又は地球に帰還することによって影響されない。これらの物体又は構成部分は、登録国の領域外で発見されたときは登録国に返還される。登録国は、要請されたときは、返還に先立ち識別のための資料を提供するものとする。

8 国家は、宇宙空間に物体を打上げ又は打ち上げさせる場合、若しくは自国の領域又は施設から物体が打ち上げられる場合は、その物体又はその構成部分が、地球上、大気圏又は宇宙空間において、他の国又はその自然人若しくは法人に与える損害について国際責任を有する。

9 国家は、宇宙飛行士を宇宙空間への人類の使節とみなし、事故、遭難又は外国の領域又は公海における緊急着陸の場合には、宇宙飛行士にすべての可能な援助を与える。宇宙飛行士は、そのような着陸を行ったときは、その宇宙飛行機の登録国へ安全かつ迅速に送還されるものとする。