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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 千九百六十五年の国際海上交通の簡易化に関する条約(1965年の国際海上交通の簡易化に関する条約,国際海上交通簡易化条約)

[場所] 
[年月日] 1965年4月9日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

千九百六十五年の国際海上交通の簡易化に関する条約(国際海上交通簡易化条約)

{目次は省略}

 締約国政府は、

 国際航海に従事する船舶の到着、滞在及び出発に際し、手続及び書類に係る要件を簡易化し、及び最小限のものとすることにより海上交通を簡易化することを希望して、

 次のとおり協定した。

第一条

 締約国政府は、この条約及びその附属書の規定に従い、国際海上交通を簡易化し、かつ、迅速化するため、並びに船舶並びに船舶内の人及び財産に対して不必要な遅滞が生ずることを防止するため、すべての適当な措置をとることを約束する。

第二条

(1) 締約国政府は、この条約の規定に従い、船舶の到着、滞在及び出発を簡易化するための措置を定め、及び適用することについて協力することを約束する。これらの措置は、実行可能な限り、他の国際輸送手段について適用される措置よりも不利でないものとする。ただし、これらの措置は、特別な必要により異なるものとすることができる。

(2) この条約及びその附属書に規定する国際海上交通の簡易化のための措置は、その政府がこの条約の締約国政府である沿岸国及び非沿岸国の船舶についてひとしく適用する。

(3) この条約は、軍艦又は遊覧ヨットについては、適用しない。

第三条

 締約国政府は、手続及び書類に係る要件について実行可能な最高度の画一性を確保するものとし、その画一性が国際海上交通を簡易化し、かつ、促進するすべての事項について機能するよう協力すること並びに手続及び書類に係る要件の変更を国内上の特別な必要に応ずるための最小限のものにとどめることを約束する。

第四条

 締約国政府は、前三条に定める目的を達成するため、手続及び書類に係る要件に関する事項並びに手続及び書類に係る要件の国際海上交通への適用に関する事項について相互に又は政府間海事協議機関(以下「機関」という。)を通じて協力することを約束する。

第五条

(1) この条約又はその附属書のいかなる規定も、締約国政府が自国の国内法若しくは他の国際協定に基づき現在与え、又は将来与えることがある国際海上交通に関する一層広範な便益の供与を妨げるものと解してはならない。

(2) この条約又はその附属書のいかなる規定も、締約国政府が、公衆道徳、公の秩序及び公安を維持するため、又は公衆衛生、動物若しくは植物に影響を及ぼす疾病若しくは有害動植物の侵入若しくはまん延を防止するために必要と認める一時的な措置を適用することを妨げるものと解してはならない。

(3) この条約に明文の規定がない事項については、締約国政府の法令に従う。

第六条

 この条約及びその附属書の適用上、

 (a) 「標準規定」とは、締約国政府がこの条約に従って画一的に適用することが国際海上交通を簡易化するために必要かつ実行可能である措置について定めるものをいう。

 (b) 「勧告規定」とは、締約国政府が適用することが国際海上交通を簡易化するために望ましい措置について定めるものをいう。

第七条

(1) この条約の附属書は、いずれかの締約国政府の提案又は附属書の改正のために招集される会議により締約国政府が改正することができる。

(2) 締約国政府は、機関の事務局長(以下「事務局長」という。)に改正案を送付することにより附属書の改正を提案することができる。

 (a) この(2)の規定に従い提案された改正案は、機関の簡易化委員会が審議する。ただし、当該改正案が同委員会の会合の少なくとも三箇月前までに配布されていることを条件とする。事務局長は、同委員会において出席し、かつ、投票する締約国政府の三分の二により当該改正案が採択された場合には、これをすべての締約国政府に送付する。

 (b) この(2)の規定に基づく附属書の改正は、事務局長がこれをすべての締約国政府に送付した後十二箇月以内に締約国政府の三分の一以上が当該改正を受諾しない旨の書面による通告を事務局長に対して行った場合を除くほか、送付の後十五箇月で効力を生ずる。

 (c) 事務局長は、(b)の規定により受領する通告及び改正の効力発生の日をすべての締約国政府に通報する。

 (d) 改正を受諾しない締約国政府は、当該改正によって拘束されないが、次条に定める手続に従う。

(3) 附属書の改正を審議するための締約国政府の会議は、締約国政府の三分の一以上の要請により事務局長が招集する。その会議において出席し、かつ、投票する締約国政府の三分の二以上の多数による議決で採択された改正は、事務局長がその採択された改正を締約国政府に通報する日の後六箇月で効力を生ずる。

(4) 事務局長は、この条の規定に基づく改正の採択及び効力発生をすべての署名国政府に速やかに通報する。

第八条

(1) 締約国政府は、自国の手続若しくは書類に係る要件を標準規定に完全に一致させることを不可能と認める場合又は特別な理由のために標準規定と異なる手続若しくは書類に係る要件を採用することを必要と認める場合には、事務局長に対し、その旨を通報し、及び自国の方式と当該標準規定との相違を通告する。

 この通告は、この条約が当該締約国政府について効力を生じた後又は当該標準規定と異なる手続若しくは書類に係る要件の採用の後できる限り速やかに行う。

(2) 標準規定の改正又は新たな標準規定の採択の場合における締約国政府による前記の相違の通告は、改正され、若しくは新たに採択された標準規定の効力発生の後又は当該標準規定と異なる手続若しくは書類に係る要件の採用の後できる限り速やかに事務局長に対して行う。その通告には、改正され、又は新たに採択された標準規定と異なる手続又は書類に係る要件を当該標準規定に完全に一致させるためにとろうとする措置についての記述を含めることができる。

(3) 締約国政府は、実行可能な限り、自国の手続及び書類に係る要件を勧告規定に一致させるよう要請される。締約国政府は、自国の手続又は書類に係る要件をいずれかの勧告規定に一致させた場合には、事務局長に対して速やかにその旨を通告する。

(4) 事務局長は、(1)から(2)までの規定に従って自己に対して行われたすべての通告を締約国政府に通報する。

第九条

 事務局長は、締約国政府の三分の一以上の要請がある場合には、この条約の改正のための締約国政府の会議を招集する。改正は、会議の三分の二以上の多数による議決で採択され、その後、事務局長は、これを認証し、かつ、すべての締約国政府に対し受諾のために送付する。改正は、締約国政府の三分の二が受諾した後一年で、改正を受諾しない旨の宣言をその改正の効力発生前に行った締約国政府以外のすべての締約国政府について効力を生ずる。会議は、改正の採択の時に、その改正が、前記の宣言を行い、かつ、その改正の効力発生の後一年以内にその改正を受諾しない締約国政府がその期間の満了の時にこの条約の締約国政府でなくなる性格のものであることを、三分の二以上の多数による議決で決定することができる。

第十条

(1) この条約は、本日から六箇月間署名のため開放され、その後は、加入のため開放されるものとする。

(2) 国際連合、その専門機関若しくは国際原子力機関の加盟国の政府又は国際司法裁判所規程の当事国の政府は、次のいずれかの方法により、この条約の締約国政府となることができる。

 (a) 受諾を条件とすることなく署名すること。

 (b) 受諾を条件として署名した後、受諾すること。

 (c) 加入すること。

 受諾又は加入は、事務局長に受諾書又は加入書を寄託することによって行う。

(3) (2)の規定に基づいて締約国政府となる資格を有しない国の政府は、締約国政府となることを事務局長を通じて申請することができるものとし、(2)の規定に従って締約国政府として認められる。ただし、その申請が、機関の加盟国(準加盟国を除く。)の三分の二により承認されることを条件とする。

第十一条

 この条約は、少なくとも十の国の政府が、受諾を条件とすることなく署名し、又は受諾書若しくは加入書を寄託した日の後六十日で効力を生ずる。この条約は、その後にこれを受諾し、又はこれに加入する政府については、受諾書又は加入書の寄託の日の後六十日で効力を生ずる。

第十二条

 締約国政府は、自国についてこの条約が効力を生じた後三年を経過したときは、事務局長にあてた書面による通告により、この条約を廃棄することができる。事務局長は、その通告の内容及び受領の日をすべての締約国政府に通報する。廃棄は、事務局長による廃棄の通告の受領の後一年で、又は当該通告に明記するこれよりも長い期間の後に、効力を生ずる。

第十三条

(1)(a) いずれかの地域の施政権者としての国際連合又はいずれかの地域の国際関係について責任を有する締約国政府は、この条約を当該地域について適用するため、できる限り速やかに当該地域と協議するものとし、また、事務局長に対する書面による通告により、いつでも、この条約を当該地域について適用する旨を宣言することができる。

 (b) この条約は、(a)の通告の受領の日又は当該通告に明記する他の日から、当該通告において特定する地域について適用する。

 (c) 第八条の規定は、この条の規定に従ってこの条約が適用されるいずれの地域についても適用する。このため、「自国の手続又は書類に係る要件」には、その地域において適用されている手続又は書類に係る要件を含む。

 (d) この条約は、いずれかの地域についてこの条約の適用を終止する旨の通告を事務局長が受領した後一年で、又は当該通告に明記するこれよりも遅い日に、当該地域について適用を終止する。

(2) 事務局長は、(1)の規定に基づくこの条約のいずれかの地域への適用を、この条約が適用される日をそれぞれの場合に明示して、すべての締約国政府に通報する。

第十四条

 事務局長は、すべての署名国政府及び締約国政府並びに機関のすべての加盟国に次の事項を通報する。

 (a) この条約への署名及びその署名の日

 (b) 受諾書又は加入書の寄託及びその寄託の日

 (c) 第十一条の規定に従いこの条約が効力を生ずる日

 (d) 前二条の規定に従い受領した通告並びにそれらの通告の受領の日

 (e) 第七条又は第九条の規定に基づく会議の招集

第十五条

 この条約及びその附属書は、事務局長に寄託する。事務局長は、この条約及びその附属書の認証謄本を署名国政府及び加入国政府に送付する。事務局長は、この条約が効力を生じたときは、国際連合憲章第百二条の規定に従い、速やかにこの条約を登録する。

第十六条

 この条約及びその附属書は、ひとしく正文である英語及びフランス語により作成する。公定訳文は、ロシア語及びスペイン語により作成の上、署名済みの原本と共に寄託する。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。

  千九百六十五年四月九日にロンドンで作成した。



   附属書

   第一節 定義及び一般規定

    A 定義

 この附属書の適用上、次の用語は、それぞれ次に定める意味を有する。

 「密航未遂者」とは、船舶所有者又は船長若しくは他の責任を有する者の同意を得ることなく、船舶内に隠れ、又は船舶に積み込まれる予定の貨物の中に隠れていた者であって、当該船舶の出港前に当該船舶内で発見されたものをいう。

 「貨物」とは、船舶によって輸送されるすべての種類の物品(郵便物、船用品、船舶の予備部品、船舶の装備品、乗組員の携帯品及び旅客の携帯品を除く。)をいう。

 「乗組員の携帯品」とは、衣類、日用品その他の物品(通貨を含めることができる。)であって、乗組員が所有し、かつ、船舶によって輸送されるものをいう。

 「乗組員」とは、船舶の運航又は役務のため航海中の船舶内における任務に現に従事しており、かつ、乗組員名簿に記載されている者をいう。

 「周遊船」とは、予定された観光のため一又は二以上の異なる港を一時的に訪問する目的で、集団のための計画に参加し、及び乗船している旅客を輸送する国際航海に従事する船舶であって、原則として、航海中に次のことを行わないものをいう。

 (a) 他の旅客の乗船又は下船

 (b) 貨物の積込み又は積卸し

 「書類」とは、情報が記載された情報記録媒体をいう。

 「情報記録媒体」とは、記載された情報を記録するための媒体をいう。

 「郵便物」とは、郵政当局から引き渡され、かつ、他の郵政当局への引渡しが予定される通信文その他の物として送付される物をいう。

 「通過中の旅客」とは、船舶その他の輸送手段によって外国への旅行を継続する目的で外国から船舶で到着する旅客をいう。

 「旅客の携帯品」とは、旅客が個人的に所有するものであるか否かを問わず、旅客の乗船する船舶と同一の船舶で当該旅客のために輸送される財産(通貨を含めることができる。)をいう。ただし、運送契約その他類似の合意に基づいて輸送されるものでないことを条件とする。

 「港」とは、積込み、積卸し並びに船舶の修繕及び投びょうのために通常使用されている港、係留施設、沖合の係留施設、造船所、修繕のための場所若しくは停泊地又は船舶が立ち寄ることができるその他の場所をいう。

 「公的機関」とは、国内の機関又は公務員であって、この附属書に定める標準規定及び勧告規定のいずれかに関連を有するその国の法令の適用及び実施について責任を有するものをいう。

 「安全上の措置」とは、船舶内の旅客及び乗組員に対する不法な行為を防止することを目的として、船舶内及び港の区域の安全を向上させるために国際的に合意された措置をいう。(注)

 注 千九百八十八年の海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約及び千九百八十六年九月二十六日の海上安全委員会回章第四百四十三号の船舶内の旅客及び乗組員に対する不法な行為を防止するための措置を参照すること。

 「船舶所有者」とは、船舶を所有し、又は運航する者(人、会社その他の法律上の主体のいずれであるかを問わない。)及び船舶の所有者又は運航者のために行動する者をいう。

 「船舶の装備品」とは、船舶内で使用するために当該船舶内にある物品(船舶の予備部品を除く。)であって、取り外し可能であるが消耗品としての性質を有しないもの(救命艇、救命装置、家具、船舶の装備用具、これらに類する物その他船舶に附属する物品を含む。)をいう。

 「船舶の予備部品」とは、修繕又は交換のために船舶に取り付ける物品であって、当該船舶に積載されているものをいう。

 「船用品」とは、船舶内で使用するための物品(消耗品、旅客及び乗組員に販売するために積載される物品並びに燃料及び潤滑油を含み、船舶の装備品及び船舶の予備部品を除く。)をいう。

 「上陸許可」とは、港における船舶の停泊中に乗組員が上陸するための許可(公的機関が地理的又は時間的な制限を決定する場合には、その制限の範囲内のもの)をいう。

 「密航者」とは、船舶所有者又は船長若しくは他の責任を有する者の同意を得ることなく、船舶内に隠れ、又は船舶に積み込まれる予定の貨物の中に隠れていた者であって、当該船舶の出港後に当該船舶内で発見され、又は到着港における貨物の積卸しの際に当該貨物の中から発見され、船長により密航者として適当な当局に通報されたものをいう。

 「到着時刻」とは、びょう泊する場合であるか着岸する場合であるかを問わず、船舶が港において最初に停止する時をいう。

 「運送書類」とは、船舶所有者と荷送人との間の運送契約を証明する書類(海上運送状、船荷証券又は複合運送書類等)をいう。


    B 一般規定

 この附属書の規定は、第五条の規定に関連して、公的機関が、詐欺の疑いがある場合に必要な適当な措置(追加の情報を要求することを含む。)又は公の秩序、公安若しくは公衆衛生に対して重大な危険となる特別な問題(例えば、海上交通の安全に対する不法な行為並びに麻薬及び向精神薬の不正取引)に対処するため若しくは動物若しくは植物に影響を及ぼす疾病若しくは有害動植物の侵入若しくはまん延を防止するための適当な措置(追加の情報を要求することを含む。)をとることを妨げるものではない。

1.1 標準規定

 公的機関は、いかなる場合にも、不可欠な情報のみの提出を要求し、及び情報の項目の数を最少限にとどめる。

 公的機関は、この附属書に記載事項が具体的に掲げられている場合には、それらの記載事項のうち不可欠であると認められないものの提出を要求してはならない。

 1.1.1 勧告規定

  公的機関は、自動データ処理技術及び自動データ伝送技術の導入から生ずる簡易化の意味を考慮し、これらの技術を船舶所有者その他の利害関係を有するすべての者と協力して検討すべきである。

  既存の要求される情報及び管理のための手続については、簡易化されるべきであり、また、他の関連する情報の体系との互換性を得ることが望ましいことに考慮が払われるべきである。

1.2 勧告規定

 公的機関は、この附属書において一定の目的のための書類がそれぞれ別個に規定され、かつ、要求されている場合においても、その書類に記入することを要求される者の利益及びその書類を使用する目的に留意して、実行可能であり、かつ、相当の簡易化がもたらされるときは、二以上の書類の一の書類への統合について定めるべきである。

1.3 勧告規定

 安全及び麻薬統制の目的のために締約国政府がとる措置及び手続は、効果的なものとすべきであり、可能な場合には、自動データ処理(ADP)を含む進歩した技術を利用すべきである。そのような措置及び手続については、船舶及び船舶内の人又は財産に対する妨げを最小限のものとし、かつ、それらに対して不必要な遅滞が生ずることを防止するような方法で実施すべきである。


    C 電子データ処理技術

1.4 標準規定

 締約国政府は、船舶の入出港手続を簡易化するために電子データ交換(EDI)技術を導入する場合には、公的機関その他関係当事者(船舶所有者、貨物取扱会社、海港、貨物代理店等)が、関連する国際連合の標準(行政、商業及び運輸のための国際連合電子データ交換(UN/EDIFACT)標準を含む。)に従ってデータの交換を行うことを奨励する。

1.5 標準規定

 公的機関は、船舶の入出港手続のために要求する書類が無地の紙にデータ処理技術によって作成されたものである場合には、その書類を受理する。ただし、当該書類は、判読が可能であり、この条約の書類の様式に適合し、かつ、要求される情報を含むことを条件とする。

1.6 標準規定

 公的機関は、船舶の入出港手続のために電子データ交換(EDI)技術を導入する場合には、船舶所有者その他の関係当事者に要求する情報をこの条約が要求するものに限る。

1.7 勧告規定

 公的機関は、船舶の入出港手続のために電子データ交換(EDI)技術の計画作成、導入又は変更を行う場合には、次のことを行うべきである。

 (a) 利害関係を有するすべての者に対して最初から協議のための機会を与えること。

 (b) 既存の手続を評価し、不必要なものを廃止すること。

 (c) コンピュータで処理する手続を決定すること。

 (d) 実行可能な限り、国際連合(UN)勧告及び関連する国際標準化機構(ISO)規格を利用すること。

 (e) これらの技術を複数の申請に適合させること。

 (f) 船舶の運航者その他の民間の関係者がこれらの技術を実施するための費用を最小にするための適当な措置をとること。

1.8 標準規定

 公的機関は、船舶の入出港手続を支援するために電子データ交換(EDI)技術を導入する場合には、船舶の運航者その他の関係当事者による当該技術の利用を奨励する。ただし、公的機関は、当該技術を利用しない船舶の運航者に対して利用可能な役務の水準を低下させてはならない。


    D 薬物の不正取引

1.9 勧告規定

 公的機関は、一層広範な簡易化のための措置を提供しつつ、薬物の密輸と戦う能力を向上させるため、船舶所有者その他の関係当事者との協力のための措置を定めるべきである。当該措置は、関税協力理事会

 (注)の了解覚書及び関連する指針に基づくことができる。

  注 千九百九十四年以降、世界税関機構と称する。

1.10 標準規定

 公的機関、船舶所有者その他の関係当事者が、協力のための措置の一部として機微に係る商業上その他の情報を取得する機会を与えられる場合には、その情報は、秘密のものとして取り扱われる。

1.11 勧告規定

 公的機関は、薬物の不正な移動に対処する能力を向上させるため、危険度の分析を行い、これにより、適法な人及び物品の流れを簡易化すべきである。


   第二節 船舶の到着、滞在及び出発

 この節の規定は、船舶の到着、滞在及び出発の際に公的機関が船舶所有者に要求する手続について定める。ただし、この節の規定は、船舶が有する証書その他の文書であって、当該船舶の登録、測度、安全、乗組員の配乗その他関連する事項に関するものを適当な当局が検査のために提出するよう要求することを妨げるものと解してはならない。


    A 総則

2.1 標準規定

 公的機関は、この条約が適用される船舶の到着又は出発の際に、この節の規定の対象となる書類以外のいかなる書類も自己の保有のために要求してはならない。

 この節の規定の対象となる書類とは、次のものをいう。

   一般申告書

   貨物申告書

   船用品申告書

   乗組員携帯品申告書

   乗組員名簿

   旅客名簿

   万国郵便条約に基づき郵便物について要求される書類

   検疫明告書

 注釈 付録一に示す次のFAL様式が作成された。

    一般申告書(FAL様式一)

    貨物申告書(FAL様式二)

    船用品申告書(FAL様式三)

    乗組員携帯品申告書(FAL様式四)

    乗組員名簿(FAL様式五)

    旅客名簿(FAL様式六)

    危険物積荷目録(FAL様式七)

 2.1.1 標準規定

  締約国政府は、船舶の入出港のための書類に関して領事館における手続、課徴金又は手数料を要求してはならない。


    B 書類の内容及び目的

2.2 標準規定

 一般申告書は、船舶の到着及び出発の際に公的機関が船舶に関して要求する情報を提供する基本的な書類とする。

 2.2.1 勧告規定

  船舶の到着及び出発のため、同一の様式の一般申告書が受理されるべきである。

 2.2.2 勧告規定

  公的機関は、一般申告書について次の情報以外の情報を要求すべきでない。

   船舶の名称及び船舶に関する記述

   船舶の国籍

   登録に関する細目

   トン数に関する細目

   船長の氏名

   船舶の代理人の氏名又は名称及び住所

   貨物に関する簡潔な記述

   乗組員の数

   旅客の数

   航海に関する簡潔な細目

   到着の日時又は出発の日

   到着港又は出発港

   港における船舶の位置

 2.2.3 標準規定

  公的機関は、船長、船舶の代理人若しくは船長から正当に委任を受けた他の者が日付を付し、かつ、署名した一般申告書又は関係する公的機関が認める方法により認証された一般申告書を受理する。

2.3 標準規定

 貨物申告書は、船舶の到着及び出発の際に公的機関が貨物に関して要求する情報を提供する基本的な書類とする。ただし、危険な貨物の細目については、別途提出するよう要求することができる。

 2.3.1 勧告規定

  公的機関は、貨物申告書について次の情報以外の情報を要求すべきでない。

 (a) 到着時

    船舶の名称及び国籍

    船長の氏名

    直前の港

    申告を行う港

    コンテナーの識別(適当な場合には、記号及び番号、こん包の数及び種類又は物品の量及び品名)

    申告を行う港で積み卸される貨物の運送書類の番号

    船舶に引き続き積載されている貨物が積み卸される予定の港

    複合運送書類又は通し船荷証券に基づいて輸送される物品についての最初の船積港

 (b) 出発時

    船舶の名称及び国籍

    船長の氏名

    次の目的港

    申告を行う港で積み込まれる物品についてのコンテナーの識別(適当な場合には、記号及び番号、こん包の数及び種類又は物品の量及び品名)

    申告を行う港で積み込まれる貨物の運送書類の番号

注釈 船舶所有者その他の関係当事者は、貨物申告書にこん包の数及び種類を適切に記述するため、物品の外面こん包単位を用いることを確保すべきである。物品がパレット上にある場合には、パレット上のこん包の数及び種類を記載すべきである。パレット上の物品がこん包されていない場合には、パレット上の物品の量及び品名を用いるべきである。

 2.3.2 標準規定

  公的機関は、船舶に引き続き積載されている貨物について、提出すべき情報の最低限不可欠な項目の簡潔な細目のみを要求する。

 2.3.3 標準規定

  公的機関は、船長、船舶の代理人若しくは船長から正当に委任を受けた他の者が日付を付し、かつ、署名した貨物申告書又は関係する公的機関が認める方法により認証された貨物申告書を受理する。

 2.3.4 標準規定

  公的機関は、貨物申告書に代えて、船舶の積荷目録の写しを受理する。ただし、当該船舶の積荷目録の写しは、少なくとも勧告規定2.3.1及び標準規定2.3.2に従って要求される情報を含み、並びに標準規定2.3.3に従って署名され、又は認証され、かつ、日付が付されているものでなければならない。

  2.3.4.1 勧告規定

   公的機関は、標準規定2.3.4を適用する代わりに、標準規定2.3.3に従って署名され、若しくは認証された運送書類の写し又は真正な写しとして認証された運送書類の写しを受理することができる。ただし、貨物の性質及び量に照らしてこのような代替が実行可能であり、並びに勧告規定2.3.1及び標準規定2.3.2に基づく情報であって運送書類に記載されていないものが別途提出され、かつ、正当な認証を受けていることを条件とする。

 2.3.5 標準規定

  公的機関は、船長が所持する荷物であって積荷目録に記載されていないものを貨物申告書に記載しな

いことを認める。ただし、その荷物の細目が別途提出されることを条件とする。

  注釈 積荷目録に記載されていない荷物の細目は、別の様式で提出され、原則として、貨物申告書に記載される情報の関連部分を含むべきである。国際海事機関(IMO)の貨物申告書の様式は、例えば、「積荷目録に記載されていない荷物の目録」と表題を改めて用いることができる。

2.4 標準規定

 船用品申告書は、船舶の到着及び出発の際に公的機関が船用品に関して要求する情報を提供する基本的な書類とする。

 2.4.1 標準規定

  公的機関は、船長若しくは船舶の他の職員であって船長から正当に委任を受け、かつ、船用品に関して知識を有するものが日付を付し、かつ、署名した船用品申告書又は関係する公的機関が認める方法により認証された船用品申告書を受理する。

2.5 標準規定

 乗組員携帯品申告書は、公的機関が乗組員の携帯品に関して要求する情報を提供する基本的な書類とする。この申告書については、船舶の出発の際には、要求してはならない。

 2.5.1 標準規定

  公的機関は、船長若しくは船舶の他の職員であって船長から正当に委任を受けたものが日付を付し、かつ、署名した乗組員携帯品申告書又は関係する公的機関が認める方法により認証された乗組員携帯品申告書を受理する。また、公的機関は、各乗組員に対し、自己の携帯品に関して乗組員携帯品申告書に署名すること又は署名することができないときは乗組員の記号を記載することを要求することができる。

 2.5.2 勧告規定

  公的機関は、原則として、乗組員の携帯品であって、関税及び租税の免除が認められないもの又は禁止若しくは制限の対象となるもののみの細目を要求すべきである。

2.6 標準規定

 乗組員名簿は、船舶の到着及び出発の際に乗組員の数及び構成に関する情報を公的機関に提供する基本

的な書類とする。

 2.6.1 標準規定

  公的機関は、乗組員名簿について次の情報以外の情報を要求してはならない。

   船舶の名称及び国籍

   姓

   名

   国籍

   地位又は等級

   生年月日及び出生地

   身分証明書の種類及び番号

   到着港及び到着の日付

   直前の港

 2.6.2 標準規定

  公的機関は、船長若しくは船舶の他の職員であって船長から正当に委任を受けたものが日付を付し、かつ、署名した乗組員名簿又は関係する公的機関が認める方法により認証された乗組員名簿を受理する。

 2.6.3 標準規定

  公的機関は、予定された計画に従って航行している船舶が十四日以内に少なくとも一回同一の港に再び寄港する場合であって、乗組員に変更がないときは、原則として、各寄港ごとに乗組員名簿の提出を要求してはならない。この場合において、当該船舶は、関係する公的機関が認める方法により変更がない旨の報告を提出する。

 2.6.4 勧告規定

  標準規定 2.6.3に規定する状況の下で乗組員に軽微な変更があった場合には、公的機関は、原則として、新たに完全な乗組員名簿の提出を要求すべきでなく、変更を明記した既存の乗組員名簿を受理すべきである。

2.7 標準規定

 旅客名簿は、船舶の到着及び出発の際に旅客に関する情報を公的機関に提供する基本的な書類とする。

 2.7.1 勧告規定

  公的機関は、隣国との間の短距離の航路又は船舶及び鉄道による複合的な業務について旅客名簿を要求すべきでない。

 2.7.2 勧告規定

  公的機関は、旅客名簿に氏名が記載されている旅客に対して、当該名簿のほかに、乗船票又は下船票を要求すべきでない。もっとも、公的機関が公衆衛生にとって重大な危険となる特別な問題を有している場合には、国際航海に従事する船舶内の者に対して、到着の際に目的地の住所を書面により示すことを要求することができる。

 2.7.3 勧告規定

  公的機関は、旅客名簿について次の情報以外の情報を要求すべきでない。

   船舶の名称及び国籍

   姓

   名

   国籍

   生年月日

   出生地

   乗船港

   下船港

   船舶の到着港及び到着の日付

 2.7.4 勧告規定

  船舶所有者が自己の使用のために作成した名簿は、少なくとも勧告規定 2.7.3に従って要求される情報を含み、及び標準規定 2.7.5に従って日付が付され、かつ、署名され、又は認証されていることを条件として、旅客名簿に代えて受理されるべきである。

 2.7.5 標準規定

  公的機関は、船長、船舶の代理人若しくは船長から正当に委任を受けた他の者が日付を付し、かつ、署名した旅客名簿又は関係する公的機関が認める方法により認証された旅客名簿を受理する。

2.8 標準規定

 危険物積荷目録は、危険物に関する情報を公的機関に提供する基本的な書類とする。

 2.8.1 標準規定

  公的機関は、危険物積荷目録について次の情報以外の情報を要求してはならない。

   船舶の名称

   国際海事機関船舶識別番号

   船舶の国籍

   船長の氏名

   航海番号

   船積港

   積卸港

   船舶会社代理人

   予約番号又は参照番号

   記号及び番号

    コンテナー識別番号

    車両登録番号

   こん包の数及び種類

   正規の品名

   等級

   国際連合番号

   容器等級

   副次的な危険

   引火点(密閉容器試験により測定される摂氏)

   海洋汚染物質

   質量(キログラム)

   総重量又は正味重量

   危険物を輸送する船舶のための緊急時における対応のための手続(EmS)

   船舶内の積付け位置

2.9 標準規定

 公的機関は、船舶の到着又は出発の際に万国郵便条約に規定する申告以外の郵便物に関する書面による申告を要求してはならない。

2.10 標準規定

 検疫明告書は、船舶の航海中及び港への到着の際の船舶内の衛生状態に関して港の衛生当局が要求する情報を提供する基本的な書類とする。


    C 到着の際の書類

2.11 標準規定

 公的機関は、船舶の港への到着に関し、各書類について次の部数を超える部数を要求してはならない。

   一般申告書 五部

   貨物申告書 四部

   船用品申告書 四部

   乗組員携帯品申告書 二部

   乗組員名簿 四部

   旅客名簿 四部

   危険物積荷目録 一部

   検疫明告書 一部


    D 出発の際の書類

2.12 標準規定

 公的機関は、船舶の出港に関し、各書類について次の部数を超える部数を要求してはならない。

   一般申告書 五部

   貨物申告書 四部

   船用品申告書 三部

   乗組員名簿 二部

   旅客名簿 二部

   危険物積荷目録 一部

 2.12.1 標準規定

  船舶の港への到着の際に申告の対象となった貨物であって、当該船舶に引き続き積載されているものについては、当該船舶の出港の際に新たな貨物申告書を要求してはならない。

 2.12.2 勧告規定

  船舶の港への到着の際に申告の対象となった船用品及びその港において積み込まれた船用品であって、その港で提出された他の税関書類の対象となったものについては、当該船舶の出港の際に新たに船用品申告書を要求すべきでない。

 2.12.3 標準規定

  公的機関は、船舶の出港の際に乗組員に関する情報を要求する場合には、当該船舶がその港へ到着する際に提出された乗組員名簿の写しを受理する。ただし、当該名簿が、再び署名されていること及び乗組員の数若しくは構成の変更を示すため又はこのような変更が生じなかったことを示すために裏書されていることを条件とする。

(注)

 注 2.13で始まる一連の番号は、将来の使用のために保留する。


    E 同じ国の二以上の港への連続する寄港

2.14 勧告規定

 船舶が一の国の領域内の寄港地に到着した後、途中で他の国の港に寄港することなく、当該2.一の国の別の港に寄港する場合には、当該一の国の別の港の公的機関が要求する手続及び書類は、当該一の国の最初の寄港地に到着した際に行われた手続を考慮して、最小限にとどめるべきである。


    F 書類への記入

2.15 勧告規定

 公的機関は、要求する情報が提供される言語のいかんを問わず、この附属書に規定する書類(標準規定に関するものを除く。)を可能な限り受理すべきである。ただし、公的機関は、必要と認めるときは、自国又は機関のいずれかの公用語への書面による翻訳又は口頭による通訳を要求することができる。 

2.16 標準規定

 公的機関は、判読が可能であり、かつ、理解し易い媒体によって提出される情報(インキ又は消えない鉛筆で手書きした書類又は自動データ処理技術で作成した書類を含む。)を受理する。

 2.16.1 標準規定

  公的機関は、署名を要求する場合には、国内法令に抵触しない限り、手書き、ファクシミリ、せん孔、スタンプ、記号又は他の機械的若しくは電子的手段による署名を認める。書面以外の媒体で提出される情報の認証は、関係する公的機関が認める方法により行う。

2.17 標準規定

  船舶の到着、荷揚げ又は通過が予定される港が属する国の公的機関は、船舶又はその貨物、船用品、客若しくは乗組員に関するいずれかの書類であってこの節に規定するものが当該国の在外における代表によって認証され、確認され、証明され、又は事前に取り扱われることを要求してはならない。このことは、査証又は同様の目的のために旅客又は乗組員の旅券その他の身分証明書の提示を要求することを妨げるものとみなしてはならない。


    G 書類上の誤り及びそれに対する制裁

2.18 標準規定

 公的機関は、この附属書に規定する書類上の誤りが不注意によるものであり、かつ、重大なものではなく、繰り返しの不注意によるものではなく、及び法令に違反する意図をもって行われたものではないことを確認した場合には、船舶を遅滞させることなく、当該書類上の誤りを訂正することを認める。ただし、書類の審査が終了する前に当該書類上の誤りが発見され、及び訂正が遅滞なく行われることを条件とする。

2.19 標準規定

 公的機関は、この附属書に規定する書類であって、船舶所有者若しくは船長により、又はそれらの名において署名され、又は認証されたものに誤りが発見された場合には、当該書類上の誤りが不注意によるものであり、かつ、重大なものではなく、繰り返しの不注意によるものではなく、及び法令に違反する意図をもって行われたものではないことを確認するための機会を与えるまでは、制裁を課してはならない。


    H 傷病を負った乗組員、旅客その他の者を緊急の治療のために上陸させる目的で寄港する船舶のための特別な簡易化措置

2.20 標準規定

 公的機関は、船舶が傷病を負った乗組員、旅客その他の者を緊急の治療のために上陸させることのみを目的として寄港しようとする場合には、船長が当該公的機関に対し、その傷病について並びに傷病者の身元関係事項及び地位について可能な最大限度の詳細を付して、寄港の意図を可能な限り通報することを確保するため、船舶所有者の協力を求める。

2.21  標準規定

 公的機関は、傷病者を迅速に上陸させ、かつ、船舶を遅滞なく出発させるために必要な書類及び手続について、船舶の到着の前に、可能な限り無線通信により、いかなる場合にも利用可能な最も速い手段により、船長に通報する。

2.22 標準規定

 公的機関は、傷病者を緊急の治療のために上陸させる目的で寄港し、直ちに出発する意図を有する船舶について、病者の状態又は海面の状態により停泊地又は港への進入路において安全な下船が確保されないときは、当該船舶の着岸を優先する。

2.23 標準規定

 公的機関は、傷病者を緊急の治療のために上陸させる目的で寄港し、直ちに出発する意図を有する船舶に対し、検疫明告書及び不可欠である場合には一般申告書を除くほか、原則として、標準規定に規定する書類を要求してはならない。

2.24 標準規定

 公的機関が一般申告書を要求する場合には、当該一般申告書には、勧告規定 2.2.2に規定する情報以外の情報を含めないものとし、可能な限り、当該一般申告書に含める情報を少なくする。

2.25 標準規定

 公的機関が傷病者の上陸の前に船舶の到着に関する管理のための措置を適用する場合には、緊急の治療及び公衆の健康を保護するための措置は、船舶の到着に関する管理のための措置に優先する。

2.26 標準規定

 傷病者の治療又は将来の移送若しくは帰還の費用について保証又は約束を要求する場合には、これらの保証又は約束が得られるまでの間、緊急の治療を保留し、又は遅滞させてはならない。

2.27 標準規定

 緊急の治療及び公衆の健康を保護するための措置は、傷病者の上陸に関して公的機関が適用する管理のための措置に優先する。


   第三節 人の到着及び出発

 この節の規定は、船舶の到着又は出発の際に公的機関が乗組員及び旅客に要求する手続について定める。


    A 到着及び出発に関する要件及び手続

3.1 標準規定

 有効な旅券は、船舶の到着又は出発の際に個々の旅客に関する情報を公的機関に提供する基本的な書類とする。

 3.1.1 勧告規定

  締約国政府は、旅券に代えて公的な身分証明書を受け入れることを二国間又は多数国間の協定により可能な限り合意すべきである。

3.2 標準規定

 公的機関は、船舶の旅客から受理する旅券又は旅券の代わりに受理する公的な身分証明書について、出入国管理当局が到着の時及び出発の時のそれぞれについて一回のみ検査すれば足りる措置をとる。また、公的機関は、到着及び出発の際に、税関及びその他の手続に関連する鑑査又は識別のため、これらの旅券又は公的な身分証明書の提示を要求することができる。

3.3 標準規定

 公的機関は、旅券又は旅券の代わりに受理する公的な身分証明書が個々に提示され、その書類を審査した後、その書類を追加的に管理するために保留することなく直ちに返却する。ただし、自国の領域への旅客の入国許可について何らかの障害がある場合は、この限りでない。

 3.3.1 標準規定

  締約政府は、入国が認められない者の不正な又は偽造された旅行証明書を公的機関が差し押さえることを確保する。当該旅行証明書については、流通しないよう差し押さえ、実行可能な場合には、適当な当局に返還する。当該旅行証明書を差し押さえた国は、その旅行証明書の代わりに説明書(注)を発行し、すべての重要な情報と共に、可能な場合には、偽造された旅行証明書の写しを添付する。説明書及び添付された書類は、入国が認められない者の移動について責任を有する船舶の運航者に引き渡される。説明書及び添付された書類は、通過地点及び最初の乗船地点の当局に情報を提供するために役立つものである。

  注 説明書として受け入れられる様式は、付録2に定める。

 注釈 この標準規定は、不正な書類の所持自体がその国への入国の拒否及びその国の領域からの速やかな退去の根拠となるか否かを個々の事例に応じて決定する締約国政府の公的機関の権利に優先するものと解してはならない。この標準規定は、難民の追放又は送還の禁止に関する千九百五十一年七月二十八日の難民の地位に関する国際連合条約及び千九百六十七年一月三十一日の難民の地位に関する国際連合議定書の規定と矛盾するものと解してはならない。

 3.3.2 標準規定

  締約国政府は、自国の領域内で乗船し、かつ、下船地点において入国が認められなかった者が当該下船地点から送還された場合には、その者を審査のために受け入れる。締約国政府は、その者を以前に入国が認められなかった国に送還してはならない。

  注釈1 この規定は、入国が認められずに送還された者について、公的機関が自国に最終的に受入可能であるか否かを決定するため又はその者の国籍国若しくはその者の受入れが可能な国への移送、送還又は退去強制の措置をとるため、更に審査を行うことを妨げることを意図するものではない。締約国政府は、他の締約国において入国が認められなかった者が旅行証明書を亡失し、又は著しく損傷した場合には、当該旅行証明書に代えて、その者の入国を認めなかった締約国政府の公的機関が発行した乗船及び到着の状況を証明する書類を受け入れる。

  注釈2 この標準規定及び注釈1は、難民の追放又は送還の禁止に関する千九百五十一年七月二十八日の難民の地位に関する国際連合条約及び千九百六十七年一月三十一日の難民の地位に関する国際連合議定書の規定と矛盾するものと解してはならない。

 3.3.3 標準規定

  船舶所有者は、旅客及び乗組員の入国審査が開始されるまでの間、これらの者の管理及び保護について責任を負う。

 3.3.4 勧告規定

  公的機関は、旅客及び乗組員の入国審査を開始した後においては、条件の有無を問わず、これらの者が公的機関の物理的な管理の下にある場合には、これらの者の入国を認めるか否かを決定するまでの間、これらの者の管理及び保護について責任を負うべきである。

 3.3.5 標準規定

  一の国の領域外へ人を輸送する船舶所有者の義務は、輸送される者が当該一の国への入国を明確に認められた時に終了する。

 3.3.6 標準規定

  公的機関は、いずれかの者の入国を認めない場合には、不当に遅滞することなく、船舶所有者に通報し、及びその者の移送のための措置について船舶所有者と協議する。船舶所有者は、入国が認められなかった者の移送のための費用について責任を負うものとし、また、その者が船舶所有者の管理下に戻された場合には、その者を次の場所に迅速に移送することについて責任を負う。

    乗船国

    その者が入国を認められる他の場所

 3.3.7 標準規定

  締約国政府及び船舶所有者は、実行可能な場合には、旅券及び査証が有効かつ真正なものであることを確認するために協力する。

3.4 勧告規定

 公的機関は、乗船し、若しくは下船する旅客に対し、又は旅客の代わりに船舶所有者に対し、旅券若しくは公的な身分証明書によって既に提供された情報を補足する情報又は当該既に提供された情報と重複する情報であって、書面によるもの(この附属書に規定するいずれかの書類に記入するために必要なものを除く。)の提出を要求すべきでない。

3.5 勧告規定

 公的機関は、乗船し、又は下船する旅客に対して補足的な情報(この附属書に規定する書類に記入するために必要なものを除く。)を書面により提出することを要求する場合には、旅客の更なる識別のための要件を勧告規定3.6(乗船票又は下船票)に掲げる項目に限定すべきである。公的機関は、乗船票又は下船票が旅客によって記入された場合には、これを受理すべきであり、乗船票又は下船票が船舶所有者によって記入され、又は検査されることを要求すべきでない。乗船票又は下船票については、その様式が活字体による記入を定めている場合を除くほか、判読が可能な手書きの文字による記入を認めるべきである。旅客に対しては、乗船票又は下船票の写し(一部又は二部以上の同時に作成される写しであって、カーボン紙によるものを含むことができる。)一部のみを要求すべきである。

3.6 勧告規定

 公的機関は、乗船票又は下船票について次の情報以外の情報を要求すべきでない。

  姓

  名

  国籍

  旅券その他の公的な身分証明書の番号

  生年月日

  出生地

  職業

  乗船港又は下船港

  性別

  目的地の住所

  署名

3.7 標準規定

 公的機関は、船舶内の者に対して黄熱から保護されていることについての証拠を要求する場合には、国際保健規則に規定された様式による国際予防接種証明書又は国際再予防接種証明書を受け入れる。

3.8 勧告規定

 船舶内の者又は下船する者の健康検査については、原則として、検疫の対象となる疾病がまん延している地域からその疾病の潜伏期間(国際保健規則において規定するもの)内に到着する者に限定して行うべきである。ただし、国際保健規則に従い追加的な健康検査を要求することができる。

3.9 勧告規定

 公的機関は、入国する旅客の携帯品の税関検査を、原則として、無作為に抽出する方法又は選択的な方法で行うべきである。旅客の携帯品に関する書面による申告については、可能な限り省略すべきである。

 3.9.1 勧告規定

  公的機関は、適当な安全上の措置を講ずる必要があり得ることに十分な考慮を払いつつ、可能な限り、出発する旅客の携帯品の検査を免除すべきである。

 3.9.2 勧告規定

  出発する旅客の携帯品の検査を完全に免除することができない場合には、その検査は、原則として、無作為に抽出する方法又は選択的な方法で行われるべきである。

3.10 標準規定

 有効な船員身分証明書又は旅券は、船舶の到着又は出発の際に個々の乗組員に関する情報を公的機関に提供する基本的な書類とする。

 3.10.1 標準規定

  公的機関は、船員身分証明書について次の情報以外の情報を要求してはならない。

   姓

   名

   生年月日及び出生地

   国籍

   身体的特徴

   写真(認証されたもの)

   署名

   有効期間の満了の日(有効期間がある場合)

   発給した公的機関

 3.10.2 標準規定

  公的機関は、次の目的のために何らかの輸送手段により旅客として自国に入国し、又は自国から出国することが船員にとって必要である場合において、当該船員の有効な船員身分証明書が当該船員身分証明書を発給した国への再入国を保証するときは、当該船員から旅券に代えて当該船員身分証明書を受け入れる。

 (a) 当該船員が、自己が乗組員である船舶に乗り組むこと又は他の船舶に移乗すること。

 (b) 当該船員が、他国において自己が乗組員である船舶に乗り組むため、帰国するため、又は自国の当局が承認したその他の目的のために自国を通過すること。

 3.10.3 勧告規定

  公的機関は、原則として、個人の身分証明書の提示又は船員身分証明書を乗組員について補足する情報であって、乗組員名簿により提供されるもの以外の情報の提出を要求すべきでない。


    B 貨物及び手荷物の通関手続並びに旅客及び乗組員の出入国手続を簡易化するための措置

3.11 勧告規定

 公的機関は、船舶所有者及び港湾当局の協力を得て、特に、手荷物の積込み、積卸し及び輸送の手配(機械化された方法の利用を含む。)について並びに旅客の遅滞が頻繁に生ずる地点について特別の考慮を払いつつ、旅客及び乗組員の出入国手続並びに手荷物の通関手続が迅速に行われるように港湾交通の良好な流れを提供するための適当な措置をとり、十分な要員を提供し、並びに適切な設備が提供されることを確保すべきである。必要な場合には、船舶と旅客及び乗組員の審査が行われる地点との間の通路を悪天候から保護するための措置をとるべきである。これらの措置及び設備は、脅威がより増大した状況において拡充された安全上の措置をとることができるよう柔軟な、かつ、拡大が可能なものとすべきである。

 3.11.1 勧告規定

  公的機関は、次のことを行うべきである。

 (a) 船舶所有者及び港湾当局の協力を得て、次のような適当な措置を導入すること。

  (i) 旅客及び手荷物の取扱いに関する個別的かつ連続的な方法

  (ii) 旅客が、託送手荷物が受取場所に置かれた後、速やかにその託送手荷物を容易に識別し、及び受け取ることができる方法

  (iii) 高年齢の旅客及び身体的な障害を有する旅客の必要を満たすための施設及び役務の提供の確保

 (b) 港湾当局が次のことを行うためにすべての必要な措置をとることを確保すること。

  (i) 旅客及びその手荷物に対し、現地の輸送機関との間の容易かつ迅速なアクセスを提供すること。

  (ii) 乗組員に対して行政上の目的のため政府の施設に報告することを要求する場合には、それらの施設は、容易に利用することができ、かつ、実行可能な限り相互に近接していること。

 3.11.2 勧告規定

 公的機関は、迅速な出入国手続及び通関手続を確保するための手段として、旅客の出入国手続並びに旅客の手荷物及び自家用自動車の通関手続のために経路選択システム(注)の導入を検討すべきである。

  注 京都規約の個別附属書F第三章の勧告規定11及び付表IIを参照すること。

3.12 標準規定

 公的機関は、船舶所有者に対し、船舶の職員が旅客及び乗組員の迅速な到着手続を支援するためのすべての適当な措置をとることを確保することを要求する。これらの措置には、次のことを含めることができる。

 (a) 関係する公的機関に対し、最善の予測に基づいた到着予定時刻(その後に時刻の変更がある場合には当該変更に関する情報)及び航海の経路が検査の要件に影響を及ぼす可能性がある場合には当該経路を事前に提供すること。

 (b) 船舶の書類を迅速に審査することができるようにしておくこと。

 (c) 船舶が着岸又は投びょうする場所に向かっている間、はしごその他乗船するための設備を取り付けるために準備すること。

 (d) 船舶内の者を、検査のため、必要な書類を携帯させた上で迅速に、かつ、整然と集合させること(この目的のため、乗組員の機関室その他の場所における重要な任務を免除するための措置を考慮する。)。

3.13 勧告規定

 旅客及び乗組員の書類に氏名を記入する方法については、最初に姓を記入すべきである。父の姓及び母の姓の双方が使用されている場合には、最初に父の姓を記入すべきである。既婚の女性について夫の父の姓及び自己の父の姓の双方が使用されている場合には、最初に夫の父の姓を記入すべきである。

3.14 標準規定

 公的機関は、不当に遅滞することなく、船舶内の者の入国を認めるか否かを審査するために、その者を受け入れる。

3.15 標準規定

 公的機関は、旅客が所持する審査の対象となる書類が不適当であると認める場合又はこの理由により旅客の入国を認めない場合であっても、船舶所有者に対していかなる制裁も課してはならない。

 3.15.1 標準規定

  公的機関は、船舶所有者に対して、審査の対象となる書類であって受入国又は通過国が定めるものを

  旅客が所持することを確保するため、乗船地点において予防措置をとることを奨励する。

 3.15.2 標準規定

  船舶所有者は、いずれかの者が入国を認められず、その国の領域から移送される場合には、その者の入国が認められなかったことに起因する費用をその者から回収することを妨げられない。

 3.15.3 勧告規定

  公的機関は、国際海上交通を簡易化し、かつ、迅速化するため、機関が他の適当な国際機関と協力して作成し、若しくは採用している標準化された国際的な標識及び記号であって、できる限りすべての輸送手段に共通のものを海上の係留施設及び船舶内で使用し、又はその使用について当該公的機関が権限を有しない場合には責任を有する国内の当事者に対してその使用を勧告すべきである。


    C 高年齢の旅客及び身体的障害を有する旅客の海上輸送のための特別な便益

3.16 勧告規定

 聴覚又は視覚に障害を有する旅客が輸送及び安全に関するすべての必要な情報を容易に利用することができるような措置をとるべきである。

3.17 勧告規定

 高年齢の旅客及び身体的障害を有する旅客の乗船又は下船のために係留施設の建物に確保される地点は、その建物の主入口のできる限り近くに設置すべきである。これらの地点は、適当な標識により明確に表示されるべきである。これらの地点へのアクセスのための経路には、障害物がないようにすべきである。

3.18 勧告規定

 公的業務が行われている場所へのアクセスが容易でない場合には、現行の業務及び導入が計画されている業務を移動に関して障害を有する旅客に適合させ、又はそれらの者のために特別な措置を講ずることにより、利用しやすく、かつ、合理的な価格の公共の輸送サービスを提供するためのあらゆる努力を払うべきである。

3.19 勧告規定

 高年齢の旅客及び身体的障害を有する旅客の安全な乗船又は下船を可能にするため、適当な場合には、係留施設及び船舶において適当な便益を提供すべきである。


    D 周遊船及びその旅客のための簡易化措置

3.20 標準規定

 公的機関は、周遊船の到着が予定される港の衛生当局が、当該周遊船からその到着の前に受領した情報に基づき、当該周遊船の到着が検疫の対象となる疾病の侵入又はまん延を引き起こさないと認める場合には、港の衛生当局が当該周遊船に対して無線通信により検疫入港許可を与えることを認める。

3.21 標準規定

 周遊船の一般申告書、旅客名簿及び乗組員名簿については、航海の状況に変更がないことを条件として、一の国の最初の到着港及び最後の出発港においてのみ要求する。

3.22 標準規定

 周遊船の船用品申告書及び乗組員携帯品申告書については、一の国の最初の到着港においてのみ要求する。

3.23 標準規定

 旅券その他の公的な身分証明書については、周遊船の旅客が常に所持する。

3.24 勧告規定

 周遊船が一の港に七十二時間未満停泊する場合には、その旅客は、関係する公的機関が定める特別な状況を除くほか、査証を所持していることを要しない。

 注釈 この勧告規定は、各締約国政府が、自国の領域への入国許可を示す何らかの書面を、周遊船の旅客に発給し、又は周遊船の旅客の到着の際にその旅客から受け入れることができることを意図するものである。

3.25 標準規定

 周遊船の旅客については、公的機関がとる管理のための措置によって不当に遅滞させてはならない。

3.26 標準規定

 周遊船の旅客については、安全上の目的があり、かつ、身元関係事項を特定し、及び入国を認めるか否かを確認する目的がある場合を除くほか、原則として、入国管理について責任を有する公的機関による個別の審査の対象としてはならない。

3.27 標準規定

 周遊船が同じ国の二以上の港に連続して寄港する場合には、旅客は、原則として、最初の到着港及び後の出発港においてのみ公的機関による審査を受ける。

3.28 勧告規定

 周遊船の旅客の入国管理については、旅客の迅速な下船を促進するため、実行可能な場合には、下船地への到着の前に船舶内で行うべきである。

3.29 勧告規定

 一の港で周遊船から下船し、同じ国の他の港で再び同じ周遊船に乗船する旅客は、一の港で周遊船から下船し、同一の港で再び同じ周遊船に乗船する旅客と同一の便益を享受すべきである。

3.30 勧告規定

 検疫明告書は、周遊船の旅客の衛生管理に必要な唯一の書類とすべきである。

3.31 標準規定

 船用品の免税は、周遊船が港に停泊している間、船舶内でその旅客に対して認められる。

3.32 標準規定

 周遊船の旅客に対しては、原則として、自己の携帯品について書面による申告を行うことを要求してはならない。ただし、高額の関税並びに他の租税及び課徴金の対象となる物品の場合には、書面による申告及び担保を要求されることがある。

3.33 勧告規定

 周遊船の旅客については、為替管理の対象とすべきでない。

3.34 標準規定

 周遊船の旅客に対しては、乗船票又は下船票を要求してはならない。

3.35 勧告規定

 公的機関は、旅客の管理を旅客名簿のみに基づいて行う場合を除くほか、旅客名簿への次の細目の記入を要求すべきでない。

  国籍(欄6)

  生年月日及び出生地(欄7)

  乗船港(欄8)

  下船港(欄9)


    E 通過中の旅客のための特別な簡易化措置

3.36 標準規定

 船舶の到着から出発までの間その船舶内にとどまる通過中の旅客は、安全上の目的を除くほか、原則として、公的機関による通常の管理を受けない。

3.37 勧告規定

 通過中の旅客に対しては、自己の旅券その他の身分証明書の保持を認めるべきである。

3.38 勧告規定

 通過中の旅客に対しては、乗船票又は下船票への記入を要求すべきでない。

3.39 勧告規定

 同一の港から同一の船舶で旅行を継続する通過中の旅客に対しては、原則として、その旅客が希望する場合には、港における当該船舶の停泊中に上陸するための一時的な許可を与えるべきである。

3.40 勧告規定

 同一の港から同一の船舶で旅行を継続する通過中の旅客に対しては、関係する公的機関が定める特別な状況を除くほか、査証を所持することを要求すべきでない。

3.41 勧告規定

 同一の港から同一の船舶で旅行を継続する通過中の旅客に対しては、原則として、税関申告書の提出を要求すべきでない。

3.42 勧告規定

 一の港で下船し、同じ国の異なる港で同じ船舶に乗船する通過中の旅客は、一の港に到着し、同一の港から同じ船舶で出発する旅客と同一の便益を享受すべきである。


    F 科学的業務に従事する船舶のための簡易化措置

3.43 勧告規定

 科学的業務に従事する船舶は、航海の科学的な目的のためにその船舶内で業務に従事する必要がある要員を輸送する。当該要員に対しては、その船舶の乗組員に与える便益と少なくとも同等に有利な便益を与えるべきである。


    G 国際航海に従事する船舶の乗組員である外国人のための追加的な簡易化措置(上陸許可)

3.44 標準規定

 公的機関は、船舶の到着の際の手続が完了していること及び公衆衛生、公共の安全又は公の秩序のために上陸を拒否する理由がないことを条件として、外国人の乗組員が到着した際に乗船していた船舶が港にある間、当該乗組員の上陸を許可する。

3.45 標準規定

 乗組員に対しては、上陸許可のために査証を所持することを要求してはならない。

3.46 勧告規定

 乗組員については、原則として、上陸する前又は再び船舶に乗船する前に個別の審査を行うべきでない。

3.47 標準規定

 乗組員に対しては、上陸のために特別な許可(例えば、上陸許可証)を得ていることを要求してはならない。

3.48 勧告規定

  乗組員に対して上陸中に身分証明書の携帯を要求する場合には、その身分証明書については、標準規定に規定するもの3.10に限定すべきである。

3.49 勧告規定

 公的機関は、定期的に自国の港に寄港する船舶の乗組員が一時的な上陸許可のための事前の承認を得ることができるよう、その到着の前に出入国手続を行う制度を定めるべきである。公的機関は、船舶がその乗組員について出入国管理上の望ましくない記録を有しておらず、かつ、現地において船舶所有者又は船舶所有者の信頼できる代理人がその船舶を代表している場合には、原則として、その船舶の到着の前に要求する細目を十分に検討した後、その船舶が着岸位置まで直接航行することを許可し、及び、公的機関が要求する場合を除くほか、船舶がその乗組員について新たに通常の出入国管理手続の対象とならないことを認めるべきである。



   第四節 密航者

    A 一般原則


4.1 標準規定

 この節の規定は、千九百五十一年七月二十八日の難民の地位に関する国際連合条約、千九百六十七年一月三十一日の難民の地位に関する国際連合議定書等の国際文書及び関連する国内法令に規定する国際的保護の原則に従って適用する。(注)

 注 公的機関は、更に、国際連合難民高等弁務官事務所の密航者である庇護希望者に関する執行委員会による拘束力を有しない結論(千九百八十八年、第五十三号(三十九))を考慮することができる。

4.2 標準規定

 公的機関、港湾当局、船舶所有者及びその代表者並びに船長は、密航事件を防止し、及び迅速に解決するために可能な限り協力し、並びに密航者の早期の帰還又は送還が行われることを確保する。密航者が無期限に船舶内にとどまらなければならない状況を避けるため、すべての適当な措置をとる。


    B 防止措置

4.3 船舶及び港における防止措置

 4.3.1港湾当局及び係留施設の当局

  4.3.1.1 標準規定

   締約国政府は、船舶での密航を企図する者による港の施設及び船舶へのアクセスを防止するため、港の規模及びその港から輸送される貨物の種類を考慮に入れた上で、自国のすべての港について必要な基盤が整備され、並びに運用上及び安全上の措置がとられることを確保する。締約国政府は、これらのことを確保するに当たり、個々の港における密航事件の発生を防止するため、関連する公的機関、船舶所有者及び陸上の主体と密接に協力すべきである。

  4.3.1.2 勧告規定

   運用上の措置又は安全上の計画は、適当な場合には、次の事項を取り扱うべきである。

  (a) 港の区域の定期的な巡視

  (b) 密航者がアクセスする危険性が高い貨物のための特別な保管施設の設置並びに当該保管施設が置されている区域に入る人及び貨物の継続的な監視

  (c) 倉庫及び貨物保管区域の検査

  (d) 密航者の存在が明らかな貨物がある場合には、その貨物の検査

  (e) 運用上の措置を策定するに当たっての公的機関、船舶所有者、船長及び関連する陸上の主体の間の協力

  (f) 港湾当局と他の関連する当局(例えば、警察当局、税関当局、出入国管理当局)との間の協力であって、人を密入国させることを防止するためのもの

  (g) 港湾労働者その他の陸上の主体との取決めであって、国内の港で業務を行う陸上の主体が認めた者のみが船舶への積込み及び船舶からの積卸し又は船舶の港における停泊に関するその他の業務に参加することを確保するためのものの策定及び実施

  (h) 港湾労働者その他の陸上の主体との取決めであって、船舶にアクセスする陸上の主体の要員が容易に特定され、及び陸上の主体が業務を行う間に乗船する必要があると思われる者の名簿が提供されることを確保するためのものの策定及び実施

  (i) 港湾労働者その他港の区域で労働する者が、明らかに当該区域に立ち入ることが認められていない者の当該区域における存在を港湾当局に報告することの奨励

 4.3.2 船舶所有者及び船長

  4.3.2.1 標準規定

   締約国政府は、船舶所有者及び港におけるその代理人、船長並びに他の責任を有する者に対し、密航しようとする者の乗船を実行可能な限り防止するため、又はこれを防止することができなかった場合には船舶が出港する前にそのような者を実行可能な限り発見するための安全上の措置をとることを要求する。

  4.3.2.2 勧告規定

   寄港する時及び港における停泊中に密航者が乗船するおそれがある場合には、安全上の措置には、少なくとも次の防止措置を含めるべきである。

    船舶の港における停泊中に使用しないすべての戸、ハッチ及び船倉又は貯蔵品室への出入設備を施錠すること。

    船舶への出入りのための場所を最少限にとどめ、かつ、適切に保護すること。

    船舶の海側の区域を適切に保護すること。

    甲板部における適切な当直を維持すること。

    可能な場合には、船舶の乗組員が、又は船長との合意により他の者が乗船及び下船について照合すること。

    適切な通信手段を維持すること。

    夜間には、船舶内に及び船体に沿って適切な照明を維持すること。

  4.3.2.3 標準規定

   締約国政府は、旅客船以外の自国を旗国とする船舶に対し、その船舶の出港に際して、密航者が乗船しているおそれがある場合には、特定の計画又は予定に従い、及び密航者が隠れている可能性がある場所を優先しつつ、十分な捜索が行われたことを要求する。隠れている密航者を害するおそれのある捜索方法は、用いてはならない。

  4.3.2.4 標準規定

   締約国政府は、くん蒸又は密閉が行われる区域に密航者がいないことを確認するためのできる限十分な捜索が行われるまでは、自国を旗国とする船舶のくん蒸又は密閉が行われないことを要求する

 4.3.3 国内における制裁

  4.3.3.1 標準規定

   締約国政府は、適当な場合には、自国の法令に従い、密航者、密航未遂者及び密航者の船舶へのアクセスをほう助する者を訴追する。


    C 船舶内の密航者の取扱い

4.4 一般原則 人道的取扱い

 4.4.1 標準規定

  密航事件については、人道上の原則(標準規定に規定するものを含む。)に従って取り扱う。船舶の運航上の安全並びに密航者の安全及び福祉に対しては、常に妥当な考慮が払われなければならない。

 4.4.2 標準規定

  締約国政府は、自国を旗国とする船舶を運航する船長に対し、密航者が船舶内にいる間、当該密航者の安全、一般的な健康及び福祉を確保するために適当な措置(十分な食料、居住設備、適切な医療及び衛生設備の提供を含む。)をとることを要求する。


4.5 船舶内における労働

 4.5.1 標準規定

 密航者に対しては、船舶内で労働に従事することを要求してはならない。ただし、緊急の場合又は船舶内の密航者の居住設備との関連がある場合は、この限りでない。

4.6 船長による質問及び通報

 4.6.1 標準規定

  締約国政府は、船長に対し、密航者の身元関係事項(国籍又は市民権及び乗船港を含む。)を特定するためにあらゆる努力を払うこと及び密航者の存在を関連事項と共に最初に寄港が予定されている港の公的機関に通報することを要求する。この情報は、船舶所有者、密航者が乗船した港の公的機関、船舶の旗国及び適当な場合にはその後の寄港地にも提供される。

 4.6.2 勧告規定

  船長は、通報のために関連事項を収集する場合には、付録三に定める様式を利用すべきである。

 4.6.3 標準規定

  締約国政府は、自国を旗国とする船舶を運航する船長に対し、密航者が自己を難民であると宣言する

場合には、この情報を密航者の安全のために必要な範囲内で秘密のものとして取り扱うよう指導する。

4.7 国際海事機関への通報

 4.7.1 勧告規定

   公的機関は、すべての密航事件を国際海事機関の事務局長に通報すべきである。


    D 航海計画の変更

4.8 標準規定

 公的機関は、自国を旗国とする船舶を運航するすべての船舶所有者に対し、密航者が乗船した国の領水から船舶が離れた後にその船舶内で発見された当該密航者を下船させるために、航海計画を変更しないよう船長を指導することを要請する。ただし、次の場合は、この限りでない。

  船舶が航海計画を変更して向かう港の属する国の公的機関が密航者の下船を許可している場合

  他の場所への密航者の送還が下船のための十分な書類及び許可と共に手配されている場合 斟酌すべき安全上若しくは健康上の事情又は同情し得る事情がある場合


    E 密航者の下船及び送還

4.9 航海計画による最初の寄港地の属する国

 4.9.1 標準規定

 密航者の発見後に船舶が最初に寄港を予定している国の公的機関は、自国の法令に従って当該密航者の入国を認めるか否かを決定する。

 4.9.2 標準規定

 密航者の発見後に船舶が最初に寄港を予定している国の公的機関は、当該密航者が帰還のための有効な旅行証明書を所持している場合であって、当該密航者の送還のための時宜を得た措置がとられ、又はとられること及び通過のためのすべての条件が満たされていることを確認したときは、当該密航者の下船を認める。

 4.9.3 標準規定

 密航者の発見後に船舶が最初に寄港を予定している国の公的機関は、適当な場合には、自国の法令に従い、自己又は船舶所有者が有効な旅行証明書を入手し、当該密航者の送還のための時宜を得た措置をとり、及び通過のためのすべての条件を満たしていることを確認したときは、当該密航者の下船を認める。また、公的機関は、到着する船舶内の密航者を下船させることができない場合又は船舶内に密航者の下船を妨げる他の要因が存在する場合にも、密航者の下船を認めることを好意的に検討する。そのような場合として次の場合を含めることができるが、これらに限定されない。

  船舶の出航の時に事案が解決されていない場合

  船舶内における密航者の存在が船舶の安全な運航及び乗組員又は当該密航者の健康を損なうおそれがある場合

4.10 その後の寄港地

 4.10.1 標準規定

  密航者の発見後に最初に寄港を予定していた港において当該密航者を下船させることができなかった場合には、その後の寄港地の公的機関は、当該密航者を標準規定からまでに従って下船させるために審査する。

4.11 国籍国又は居住の権利を有する国

 4.11.1 標準規定

  公的機関は、国際法に従って、自国の国籍若しくは市民権について完全な地位を有している密航者又は自国の法令に従い自国に居住する権利を有している密航者の帰還を受け入れる。

 4.11.2 標準規定

  公的機関は、可能な場合には、自国の国民であること又は自国に居住する権利を有していることを主張する密航者の身元関係事項及び国籍又は市民権の特定を支援する。

4.12乗船国

 4.12.1 標準規定

  公的機関は、自国の港において密航者が乗船したことが十分に立証された場合には、入国が認められなかった下船地点から送還された当該密航者を審査のために受け入れる。密航者が乗船した国の公的機関は、当該密航者を以前に入国が認められなかった国に送還してはならない。

 4.12.2 標準規定

  公的機関は、自国の港において密航未遂者が乗船したことが十分に立証された場合には、当該密航未遂者の下船を認め、及び自国の領水内にある船舶又は適当な場合には自国の国内法令に従って自国の出入国管理上の管轄の下にある区域内の船舶において発見された密航者の下船を認める。密航者の留置又は移送のための費用に関して、船舶所有者に対して制裁又は課徴金を課してはならない。

 4.12.3 標準規定

  密航未遂者を乗船した港で下船させることができなかった場合には、当該密航未遂者は、この節の規則に従って密航者として取り扱われる。

4.13 旗国

 4.13.1 標準規定

  船舶の旗国の公的機関は、次のことについて、船長若しくは船舶所有者又は寄港地の適当な公的機関を支援し、及びこれらの者と協力する。

  密航者及びその国籍を特定すること。

  関係する公的機関に対して密航者を船舶から下船させることが可能な最初の機会に下船させるための支援を申し入れること。

  密航者の移送又は送還のための措置をとること。

4.14 密航者の送還

 4.14.1 勧告規定

  公的機関は、密航者が有する書類が不適当な場合には、実行可能なときはいつでも、かつ、自国の法令及び安全上の要件と両立する限り、当該密航者の写真その他の重要な情報を付した説明書を発行すべきである。説明書は、当該密航者の出身国又は適当な場合には当該密航者が旅行を開始した地点への送還(輸送手段のいかんを問わない。)を認め、かつ、当該公的機関が課する他の条件を明示するものであり、また、当該密航者の移送に関係のある船舶の運航者に手交されるべきである。説明書には、通過地点又は下船地点の公的機関が要求する情報を含める。

 4.14.2 勧告規定

  密航者が下船した国の公的機関は、当該密航者の送還中の通過地点の関係する公的機関に対して、当該密航者の地位を通報すべきである。密航者の送還中の通過地点の公的機関は、通常の査証の要件に従うこと及び国家安全保障上の懸念が存在しないことを条件として、当該密航者が下船した港の属する国の公的機関による退去命令に従って移動している当該密航者が、自国の港及び空港を通過することを認めるべきである。

 4.14.3 勧告規定

  寄港国が密航者の下船を拒否した場合には、当該寄港国は、不当に遅滞することなく、当該密航者を輸送する船舶の旗国に対して下船を拒否した理由を通報すべきである。

  密航者の送還及び処遇に要する費用

4.15

 4.15.1 勧告規定

  密航者が下船した国の公的機関は、当該密航者が発見された船舶の船舶所有者が当該密航者の留置及び送還に係る費用を負担すべき場合には、原則として、実行可能な限り当該船舶所有者又はその代理人に対し、当該費用を通報すべきであり、また、当該費用については、実行可能な限り、かつ、自国の法令に従って、最小限にとどめるべきである。

 4.15.2 勧告規定

  密航者が下船した国の公的機関による当該密航者の処遇に要する費用を船舶所有者が負担する期間については、最小限にとどめるべきである。

 4.15.3 標準規定

  公的機関は、船舶の船長が到着港の適当な当局に対して密航者の存在を適切に通報し、及び密航者が当該船舶にアクセスすることを防ぐための妥当なすべての防止措置をとっていたことを示す場合には、自国の法令に従い、当該船舶に対する制裁を軽減することを検討する。

 4.15.4 勧告規定

  公的機関は、船舶所有者が密航者の輸送を防止するための措置について管理当局と十分協力した場には、自国の法令に従い、適用され得る他の課徴金を軽減することを検討すべきである。


   第五節 貨物その他の物品の搬入、蔵置及び搬出

    A 総則

5.1 勧告規定

 公的機関は、船舶所有者及び港湾当局の協力を得て、港における停泊時間を最小限にとどめるための適当な措置をとり、港湾交通の良好な流れを提供し、並びに船舶の到着及び出発に関するすべての手続(乗船及び下船、積込み及び積卸し、整備その他これらに類するものに関する措置並びにこれらに伴う安全上の措置を含む。)について頻繁に見直しを行うべきである。また、公的機関は、貨物船の入出港手続及びその積荷の通関手続を実行可能な限り船舶についての作業区域で行うための措置をとるべきである。

5.2 勧告規定

 公的機関は、船舶所有者及び港湾当局の協力を得て、貨物の取扱い及び通関手続が円滑に行われ、かつ、複雑なものとならないように港湾交通の良好な流れを提供するための適当な措置をとるべきである。

これらの措置は、積卸し及び公的機関による通関手続のため、並びに必要な場合には貨物の倉入れ及び転送のために船舶が着岸する時からすべての段階を対象とすべきである。貨物倉庫と公的機関による通関手続が行われる区域との間は、容易に、かつ、直接に通じているべきであり、また、貨物倉庫及び公的機関による通関手続が行われる区域は、着岸区域に近接して設置され、可能な場合には、機械による輸送手段が利用可能であるべきである。

5.3 勧告規定

 公的機関は、海上運送貨物受入施設の所有者又は運営者に対し、適当な場合には、特別な貨物(例えば、貴重品、腐敗しやすい貨物、人間の遺体、放射性の物品その他危険な物品、生きている動物)のための保管施設を備えることを奨励すべきである。一般的な及び特別の貨物並びに郵便物を海上輸送前に蔵置する海上運送貨物受入施設の区域は、権限のない者によるアクセスから常に保護されるべきである。

5.4 標準規定

 特定の種類の物品について輸出、輸入及び積替えのための承認又は許可を引き続き要求する締約国政府は、当該承認又は許可の速やかな取得及び更新を可能にする簡易な手続を定める。

5.5 勧告規定

 締約国政府は、貨物の性質が通関に係る異なる機関(例えば、税関当局及び動物防疫上又は衛生上の規制を行う機関)の注意を喚起する場合には、通関に関する権限を税関当局若しくは他のいずれか一の機関に委任し、又は委任することができない場合には通関が一の場所において同時に、かつ、できる限り遅滞なく行われることを確保するためにすべての必要な措置をとるべきである。

5.6 勧告規定

 公的機関は、個人的な贈与のためのこん包及び貿易のための見本であって、一定の価額又は数量(当該価額又は数量については、可能な限り高い水準を定めるべきである。)を超えないものについて、迅速な通関を行うための簡易化された手続を定めるべきである。


    B 貨物の通関

5.7 標準規定

 公的機関は、国内の禁止又は制限に従うこと及び港の安全のため又は麻薬統制のために要求される措置に従うことを条件として、生きている動物、腐敗しやすい物品その他緊急性を有する貨物の優先的な通関を認める。

5.8 勧告規定

 締約国政府は、貨物の積込み、積卸し及び取扱いのために寄港地の陸上で使用される特殊な貨物取扱装置であって、到着する船舶内に積載されているものの一時輸入を簡易化すべきである。

5.9 勧告規定

 公的機関は、税関申告の処理を簡易化し、及び貨物の到着前の通関を許可するため、貨物の到着前に提供される情報を利用するための手続を作成すべきである。

5.10 勧告規定

 公的機関は、税関手続の簡易化及び調和に関する国際規約(京都規約)の関連規定及び関連する指針に基づき、貨物の通関のための手続を定めるべきである。

5.11 標準規定

 公的機関は、検査の対象となる貨物を特定するため、危険性の評価を利用することにより、物理的な妨げを法令の遵守を確保するために必要な最小限のものとする。

5.12 勧告規定

 公的機関は、確かな根拠に裏付けられた要請に基づき、必要な場合には、利用可能な手段の範囲内で貨物の物理的な検査を行うべきである。当該検査は、貨物がその輸送手段に船積みされた地点で行い、及び船積みが行われている間は船舶の着岸場所の近辺で、又は一体化された貨物の場合にはコンテナーに積み込まれ、かつ、コンテナーが封印される場所で行うべきである。

5.13 標準規定

 公的機関は、統計の収集のための要求が海上貿易の効率を著しく低下させないことを確保する。

5.14 勧告規定

 公的機関は、通関手続を速やかに行い、かつ、簡易化するため、情報の入手に当たり電子データ交換(EDI)技術を利用すべきである。


    C コンテナー及びパレット

5.15 標準規定

 公的機関は、その規則に従うことを条件として、関税並びに他の租税及び課徴金を課することなくコンテナー及びパレットの一時輸入を許可し、並びに海上交通におけるそれらの使用を促進する。

5.16 勧告規定

 公的機関は、標準規定に規定する規則において、一時輸入されるコンテナー及びパレットが関係国が定める期間内に再輸出されるための簡素な申告を受理することを定めるべきである。

5.17 標準規定

 公的機関は、標準規定に基づいて一の国の領域に入るコンテナー及びパレットが、簡易化された管理手続に基づき及び最小限の書類により、輸入貨物の通関又は輸出貨物の積込みのため、到着港の区域を離れることを許可する。

5.18 標準規定

 締約国政府は、標準規定に基づいて既に一時輸入が認められたコンテナーの修理のためにその部分品が必要とされる場合には、関税並びに他の租税及び課徴金を課することなく、当該部分品の一時輸入を許可する。


    D 予定された目的港で積み卸されない貨物

5.19 標準規定

 公的機関は、貨物申告書に記載された貨物が予定された目的港で積み卸されない場合において、当該貨物が実際には船舶に積み込まれなかったこと又は積み込まれたが他の港で積み卸されたことを確認したときは、貨物申告書の修正を許可する。公的機関は、そのような場合には、制裁を課してはならない。

5.20 標準規定

 公的機関は、貨物が過失又は他の正当な理由により予定された目的港以外の港に積み卸される場合には、当該貨物のその予定された目的港への転送を簡易化する。この規定は、危険な貨物又は禁止され、若しくは制限された貨物については、適用しない。


    E 船舶所有者の責任の限度

5.21 標準規定

 公的機関は、船舶所有者に対し、運送書類又はその写しに当該公的機関が使用するための特別な情報を付することを要求してはならない。ただし、船舶所有者が、輸入者若しくは輸出者である場合又はこれらの者を代理している場合は、この限りでない。

5.22 標準規定

 公的機関は、貨物の通関に関連して輸入者又は輸出者に対して要求する書類の提出又は当該書類の正確性について船舶所有者に責任を負わせてはならない。ただし、船舶所有者が、輸入者若しくは輸出者である場合又はこれらの者を代理している場合は、この限りでない。


   第六節 公衆衛生及び検疫(動物及び植物に関する衛生上の措置を含む。)

6.1 標準規定

 国際保健規則の当事国でない国の公的機関は、当該規則の関連規定を国際海運に適用するよう努力する。

6.2 勧告規定

 衛生上の条件並びに地理的、社会的及び経済的な条件により特定の共通の利害関係を有する締約国政府は、国際保健規則第八十五条の規定に基づく特別な取決めが国際保健規則の適用を促進する場合には、そのような取決めを締結すべきである。

6.3 勧告規定

 特定の動物若しくは植物又はこれらを原料とする産品の輸送に関して検疫証明書又は類似の書類を要求する場合には、これらの証明書及び書類を簡素なものとし、かつ、広く公表すべきであり、また、締約国政府は、これらの証明書及び書類についての要求を標準化するために協力すべきである。

6.4 勧告規定

 公的機関は、船舶の到着が予定される港の衛生当局が当該船舶の到着の前に当該船舶から受領した情報に基づき当該船舶の到着が検疫の対象となる疾病の侵入又はまん延を引き起こさないと認める場合には、実行可能な限りいつでも、当該船舶に対して無線通信により検疫入港許可を与えることを認めるべきである。衛生当局は、実行可能な限り、船舶の入港に先立ち、当該船舶に乗り込むことを認められるべきである。

 6.4.1 標準規定

  公的機関は、船舶の到着の際の衛生上の手続に必要な特別の医療要員及び装備の提供を促進するため、船舶内の疾病を当該船舶の目的港の衛生当局に対して無線通信により速やかに報告することが遵守されるよう船舶所有者の協力を求める。

6.5 標準規定

 公的機関は、すべての旅行代理店その他の関係者が旅客に対して、関係国の公的機関が要求する予防接種の一覧表及び国際保健規則に合致する予防接種証明書の様式を旅客の出発前に十分な余裕をもって提供することを可能とするための措置をとる。公的機関は、広範な受入れを確保するため、予防接種を行う医師が国際予防接種証明書又は国際再予防接種証明書を使用するようすべての可能な措置をとる。

6.6 勧告規定

 公的機関は、国際予防接種証明書又は国際再予防接種証明書への記入のための施設及び予防接種のための施設をできる限り多くの港において提供すべきである。

6.7 標準規定

 公的機関は、衛生上の措置及び手続が直ちに開始され、遅滞なく完了し、及び差別なく適用されることを確保する。

6.8 勧告規定

 公的機関は、公衆衛生に係る措置並びに動物及び農業に係る検疫措置を実施するための適切な施設をできる限り多くの港において維持すべきである。

6.9 標準規定

 乗組員及び旅客の応急手当のための合理的かつ実際的な医療施設については、容易に利用し得るよう国内のできる限り多くの港において維持する。

6.10 標準規定

 港の衛生当局は、公衆衛生にとって重大な危険となる緊急の場合を除くほか、検疫の対象となる疾病によって汚染されていない船舶又は汚染の疑いのない船舶について、他のいずれかの伝染病を理由として、貨物若しくは船用品の積卸し若しくは積込み又は燃料若しくは水の補給を妨げてはならない。

6.11 勧告規定

 動物、動物性の原材料、粗の動物性生産品、動物性の食料品及び検疫の対象となる植物性生産品の輸送は、特別な状況において、関係国が合意した様式による検疫証明書が添付されている場合には、認められるべきである。


   第七節 雑則


    A 保証金その他の形式による担保

7.1 勧告規定

 公的機関は、税関、出入国管理、公衆衛生又は農業に係る検疫に関する国内法令その他これらに類する国内法令に基づく責任を担保するために船舶所有者に対して保証金その他の形式による担保を要求する場合には、可能な限り、単一の包括的な保証金その他の形式による担保の利用を認めるべきである。


    B 港における役務

7.2 勧告規定

 港における公的機関の通常の役務は、通常の執務時間中には無料で提供すべきである。公的機関は、港における役務のための通常の執務時間を通常相当な作業量が生ずる時間に合致するよう設定すべきである。

7.3 標準規定

 締約国政府は、船舶の到着後又は船舶が出発の準備を完了した時に不必要な遅滞を避け、かつ、手続を終えるまでの時間が最小限のものとなるように港における公的機関の通常の役務が提供されるため、すべての実行可能な措置をとる。ただし、船舶の到着予定時刻又は出発予定時刻に関する十分な通報が公的機関に対して行われる場合に限る。

7.4 標準規定

 衛生当局は、審査を受ける者の健康状態を確認するために必要な場合には昼夜いかなる時に行われる健康検査又は追加的な検査(細菌学的検査であるか否かを問わない。)についても、検疫を目的とした船舶への訪問及び船舶の検査(ねずみ族駆除証明書又はねずみ族駆除免除証明書の発給のための検査を除く。)についても、並びに船舶により到着する者の予防接種について又は予防接種証明書の発給についても、課徴金を課してはならない。ただし、これらの措置以外の措置が船舶又はその旅客若しくは乗組員に関して必要であり、かつ、そのために衛生当局が課徴金を課する場合には、当該課徴金は、関係する領域において一律に適用される単一の料金表に従い、及び関係する者の国籍、住所若しくは居所又は船舶の国籍、旗、登録若しくは所有者により差別することなく課する。

7.5 勧告規定

 公的機関の役務を勧告規定に規定する通常の執務時間以外の時間に提供する場合には、当該役務は、妥当な、かつ、提供される役務の実際の費用を超えない条件で提供すべきである。

7.6 標準規定

 公的機関は、港における交通量により適当と認める場合には、貨物及び手荷物に係る手続がそれらの価額又は種類にかかわりなく行われるように役務の提供を確保する。

7.7 勧告規定

 締約国政府は、他の締約国における船舶の到着の際の入出港手続を簡易化することとなる場合には、航海の前又は航海中に他の締約国政府が船舶、旅客、乗組員、手荷物又は貨物を検査し、並びに税関、出入国管理、公衆衛生又は動物及び植物の検疫に関する書類を検査するための特定の便宜を当該他の締約国政府に対して認めるような措置をとるよう努力すべきである。


    C 緊急の援助

 標準規定

7.8

 公的機関は、災害救助活動、海洋汚染への対処若しくはその防止又は海上における安全、住民の安全若しくは海洋環境の保護を確保するために必要な他の緊急の活動に従事する船舶の到着及び出発を簡易化する。

7.9 標準規定

 公的機関は、標準規定に規定する状況に対処するために必要な人員の入国並びに貨物、資材及び設備の通関を最大限可能な限り簡易化する。

7.10 標準規定

 公的機関は、安全上の措置を実施するために必要な特別の設備の迅速な通関を行う。


    D 国内の簡易化委員会

7.11 勧告規定

 締約国政府は、必要かつ適当と認める場合には、この附属書に定める簡易化の要件に基づき海上輸送に関する国の簡易化計画を作成すべきであり、並びに当該簡易化計画が不必要な障害及び遅滞を除去することにより船舶、貨物、乗組員、旅客、郵便物及び船用品の移動を簡易化するためのすべての実際的な措置をとることを目的とするものとなるよう確保すべきである。

7.12 勧告規定

 締約国政府は、簡易化のための措置を採択し、及び実施することを奨励するため、国際海上交通の諸分野に関係し、又はこれら諸分野について責任を有する政府の官庁その他の機関、港湾当局及び船舶所有者の間で海上輸送に関する国内の簡易化委員会又は類似の国内の調整機関を設置すべきである。

注釈 締約国政府は、海上輸送に関する国内の簡易化委員会又は類似の国内の調整機関の設置に当たり、FAL五回章第二号に定める指針を考慮するよう要請される。


{付録1〜3は省略}