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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によつて改正され及び補足された国際博覧会に関する条約の附属書 国際博覧会の参加者による物品の輸入に関する通関規則

[場所] 
[年月日] 1972年11月30日
[出典] 条約集(昭和五十五年 多数国間条約),外務省条約局,1211-1218頁.
[備考] 
[全文] 

千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によつて改正され及び補足された国際博覧会に関する条約の附属書
国際博覧会の参加者による物品の輸入に関する通関規則


   第一条 定義

 この附属書の適用上、

(a) 「輸入税」とは、関税その他輸入に際し又はこれに関連して納付すべき租税をいい、輸入物品に課されるすべての消費税及び国内税を含む。ただし、提供された役務の費用の概算額を限度とする額の手数料及び課徴金であつて、国内産品の間接的な保護又は輸入物品に対する財政上の目的のための課税とならないものを含まない。

(b) 「一時輸入」とは、再輸出することを条件として輸入税並びに輸入禁止及び輸入制限の免除を受けて一時的に輸入することをいう。

   第二条

 一時輸入は、次の物品について認められる。

(a) 国際博覧会における展示又は実演に供するための物品

(b) 国際博覧会における外国の産品の展示に関連して使用される物品。これらの物品には、次の物品を含む。

 (i) 展示される外国の機械又は機器の実演に当たつて必要とされる物品

 (ii) 国際博覧会における外国の陳列館及び陳列場並びに国際博覧会に参加する外国の陳列区域政府代表に割り当てられた場所の建設資材(原材料の状態のものを含む。)及び装飾用品並びにこれらの場所で使用する家具及び電気器具

 (iii) 建設のために使用する器具及び機材並びに輸送手段であつて、国際博覧会に関連する作業に必要なもの

 (iv) 宣伝又は実演のための資材であつて国際博覧会において展示される外国の物品の宣伝のために使用されることが明らかであるもの。例えば、録音物、フィルム及びスライド並びにこれらの物品をしようするために必要な機器

(c) 国際博覧会に関連して使用される資材(通訳装置、録音機器及び教育的、科学的又は文化的な性格を有するフィルムを含む。)

   第三条

 前条にきていする便益は、次のことを条件として与えられる。

(a) 物品が、再輸出される際に同一性の確認をすることができるものであること。

(b) 参加国の陳列区域政府代表が、国際博覧会の閉会後の一定の期間内に再輸出されない物品に課される輸入税の支払を保証すること。この場合において、供託金は、要求されない。招請国の法令に規定するその他の担保(例えば、関税協力理事会の下で作成された千九百六十一年十二月六日の条約に従つて発給されるATAカルネ)も、展示者の申請によつて認められる。

(c) 一時輸入を認める国の税関当局が、この附属書に定める条件を満たしていると認めること。

   第四条

 一時輸入を認められた物品は、この附属書に基づいて与えられる便益の対象となつている間、一時輸入を認めた国の法令が認める場合を除くほか、貸し付けてはならず、使用料又は報酬を得るために使用してはならず、また、国際博覧会の会場から移動させてはならない。これらの物品は、国際博覧会の閉会後できる限り短期間内に、遅くとも三箇月以内に、再輸出しなければならない。税関当局は、正当な理由がある場合には、その国の法令に定める範囲内で、この期間を延長することができる。

   第五条

(a) 腐敗しやすい物品、著しく損傷した物品及び価値をほとんど有しない物品については、前条に定める再輸出の義務にかかわらず、税関当局の決定に従つて次のいずれかの措置がとられることを条件として、再輸出は、要求されない。

 (i) 相当する輸入税の納付

 (ii) 一時輸入を認めた国の国庫への無償の引渡し

 (iii) 一時輸入を認めた国の国庫による費用振込手数料單を伴うことなしに当局の監督の下で行われる減却

 もつとも、当該陳列区域政府代表の要求により、一時輸入を認めた国の国庫による費用負担を伴うことなしに当局の監督の下で滅却される物品については、その物品がいかなるものであつても、再輸出の義務は、課されない。

(b) 一時輸入を認められた物品は、一時輸入を認めた国の法令により外国から直接に輸入される物品について適用される条件及び手続に従うものである場合には、再輸出以外の目的、特に当該一時輸入を認めた国における使用又は消費に充てることができる。

   第六条

 展示されている機械又は機器の実演により一時輸入された物品から国際展示会の開催中に付随的に得られた生産物についても、次条に規定する場合を除くほか、これらの生産物が一時輸入を認められたものとみなして、第四条及び前条の規定を適用する。

   第七条

 次の物品については、その輸入を認める国の税関当局が国際博覧会の性格、入場者の数及び展示者の参加の程度を勘案して当該物品の総価額及び数量が妥当なものであると認める限り、輸入税は徴収されず、輸入禁止及び輸入制限は適用されないものとし、また、一時輸入が認められているものであるときは、再輸出は、要求されない。

(a) 国際博覧会において展示される外国の物品の小型の見本(見本の形状で輸入されたものであるか、ばらで輸入された物品から国際博覧会において作られたものであるかを問わないものとし、飲食物の見本を含み、アルコール飲料、たばこ及び燃料の見本を除く。)。ただし、次の条件を満たすものに限る。

 (i) 国外から無償で供給される物品であつて、專ら、当該国際博覧会において入場者に無償で配布し、かつ、配布を受けた入場者が使用し又は消費するためのものであること。

 (ii) 宣伝用の見本であることを確認することができるものであり、かつ、個々にはほとんど価値を有しないものであること。

 (iii) 商業上の使用には適しないものであり、また、適当な場合には、最も小型の小売用の包装に含まれている量よりも明らかに少ない量を包装したものであること。

 (iv) (ⅲ)に規定する包装をしないで配布する飲食物の見本については、当該国際博覧会において消費されること。

(b)国際博覧会の審査委員会の委員が展示された物品を審査し及び評定する目的で使用し又は消費するために輸入される見本。この場合において、審査及び評定を行なうに当たつて使用され又は消費される日本の性質及び数量を明示する陳列区域政府代表の証明書を提出することを条件とする。

(c) 国際博覧会において專ら実演に供するため又は展示される外国の機械及び機器の実演の際使用するために輸入される物品であつて、その実演の過程で消費され又は損壊するもの。

(d) 印刷物、カタログ、商品案内、価格表、ポスター及びカレンダー(さし絵があるかどうかを問わない。)並びに枠(わく)のついていない写真であつて、国際博覧会において展示される外国の物品の宣伝用として使用されることが明らかであるもの。ただし、国外から無償で供給される物品であつて、專ら当該国際博覧会において入場者に無償で配布するためのものであることを条件とする。

   第八条

 次の物品については、輸入税は徴収されず、輸入禁止及び輸入制限は適用されないものとし、また、一時輸入がみとめられているものであるときは、再輸出は、要求されない。

(a) 国際博覧会における外国の陳列に係る建設、装備、装飾、演出及び環境整備のために輸入されかつ使用される物品(塗料、ワニス、壁紙、噴霧液、花火、種子及び苗を含む。)であつて、使用することにより損壊するもの

(b) 国際博覧会の参加国が発行したカタログ、パンフレット、ポスターその他の公式の印刷物(挿絵があるかどうかを問わない。)

(c) 設計図、図案、書類つづり、記録文書、書式類その他の書類であつて、国際博覧会において使用するためのもの

   第九条

(a) 国際博覧会において展示され又は使用される物品の搬入及び展示され又は使用された物品の搬出に際しての検査及び通関は、可能かつ適当な限り、国際博覧会の会場において行う。

(b) 締約国は、国際在博覧会の重要性にかんがみ適当と認める場合には、自国の領域内で開催される国際博覧会の会場に、合理的な期間、税関事務所を設置するよう努める。

(c) 一時輸入を認められた物品の再輸出は、一度に又は数回に分けて、再輸出の通関事務を行ういずれの税関を通じても行うことができるものとし、再輸出の通関事務を行う税関と輸入の通関事務を行つた税関とは、同一であることを要しない。ただし、輸入者が簡易手続の便益を受けるため当該物品をその輸入の通関事務を行つた税関を通じて再輸出することを約束している場合を除く。

   第十条

この附属書は、次のものの適用を妨げるものではない。  

(a) 締約国が一方的な設置により又は二国間若しくは多数国間の取極により与えており又は与えるこのとある一層広い範囲の便益

(b) 国際博覧会の開催に関する国内法令又は条約の規定であつて、関税に関するもの以外のもの

(c) 国内法令に基づく禁止及び制限であつて、公衆道徳、公の秩序、公共の安全若しくは公衆衛生上の考慮に基づくもの、動植物の防疫上の考慮に基づくもの又は特許、商標、著作権及び複製権の保護に関するもの

   第十一条

 この附属書の適用上、関税同盟又は経済同盟を構成する二以上の締約国の領域は、単一の領域とみなすことができる。