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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ABM条約に関する議定書(弾道ミサイル迎撃ミサイル・システムの制限についてのアメリカ合衆国とソヴィエト社会主義共和国連邦の間の条約に関する議定書)

[場所] モスクワ
[年月日] 1974年7月3日
[出典] わが外交の近況(外交青書)19号,151‐152頁.
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 アメリカ合衆国及びソヴィエト社会主義共和国連邦(以下締約国という)は、1972年5月29日に署名されたアメリカ合衆国とソヴィエト社会主義共和国連邦の間の関係に関する基本原則に引き続いて、

 1972年5月26日に署名された弾道ミサイル迎撃ミサイル・システムの制限についてのアメリカ合衆国とソヴィエト社会主義共和国連邦の間の条約(以下条約という)の目的を発展させることを願望して、

 戦略兵器の制限のための一層の措置を採ることが国際の平和と安全の強化に貢献するという両締約国の信念を再確認して、弾道ミサイル迎撃ミサイル・システムの一層の制限が戦略攻撃兵器を制限するより完全な措置に関する恒久的な合意を得るための作業の完成に対してより好ましい条件をつくり出すとの前提に立つて、次のとおり合意した。

第1条

1.各締約国は、将来いずれかの一つの時点で、弾道ミサイル迎撃ミサイル(ABM)システム又はその構成部分の展開を条約第3条で規定されている2地域から1地域へと制限されるものとし、従つて、この議定書の第2条に従つて行われる認められた1地域の他の地域への転換の場合を除き、ABMシステム又はその構成部分を条約第3条によつて認められた2つのABMシステム展開地域のうちの他方の地域に展開する権利を行使しないものとする。

2.従つて、この議定書の第2条で認められる場合を除き、アメリカ合衆国は、ABMシステム又はその構成部分を条約第3条(A)で認められている首都を中心とした地域に展開しないものとし、ソ連邦は、ABMシステム又はその構成部分を条約第3条(B)で認められている大陸間弾道ミサイル(ICBM)のサイロ発射基の展開地域に展開しないものとする。

第2条

1.各締約国は、1977年10月3日から、1978年10月2日までのあいだ、又はその後は、条約第14条で定められている条約の定期的再検討の年であつて、5年の間隔で始まるいずれの年においても、建造の開始に先立つて、常設協議委員会によつて合意された手続に従つて通告が行われるという条件のもとに、現在展開されている地域のABMシステム及びその構成部分を解体又は破壊し、ならびにABMシステム又はその構成部分を条約第3条で認められた代替地域に展開する権利を有する。この権利は一回だけ行使することができる。

2.従つて、そのような通告に際しては、合衆国はICBMサイロ発射基の展開地域にあるABMシステム及びその構成部分を解体又は破壊し、ならびにABMシステム又はその構成部分を条約第3条(A)で認められているその首都を中心とする地域に展開する権利を有し、ソ連邦は、その首都を中心とする地域のABMシステム及びその構成部分を解体又は破壊し、ならびにABMシステム又はその構成部分を条約第3条(B)で認められているICBMサイロ発射基のある地域に展開する権利を有する。

3.ABMシステム又はその構成部分の解体若しくは破壊及び展開ならびにそれらの通告は、条約第8条及び常設協議委員会で合意される手続に従つて実施されるものとする。

第3条

 条約によつて定められた権利及び義務は引き続き効力を有し、この議定書によつて変更された範囲を除き、締約国によつて遵守されなければならない。特に、選定された地域内でのABMシステム又はその構成部分の展開は、条約で定められた基準及びその他の要件によつて引き続き制限される。

第4条

 この議定書は、各締約国の憲法上の手続きに従つて批准されなければならない。この議定書は、批准書の交換の日に効力を生じ、その後は、条約の不可分の一体であるとみなされる。

1974年7月3日モスクワでいずれも等しく正文である英語及びロシア語の2通を作成した。

アメリカ合衆国のために   ソヴィエト社会主義共和国連邦のために

アメリカ合衆国大統領    ソヴィエト共産党中央委員会書記長

リチャード・ニクソン    L.I.ブレジネフ