[文書名] 中華人民共和国香港特別行政区基本法
中華人民共和国主席令 第二十六号
『中華人民共和国香港特別行政区基本法』は、付属文書一『香港特別行政区行政長官の選出方法』、付属文書二『香港特別行政区立法会の選出方法と表決手続き』、付属文書三『香港特別行政区で実施される全国的な法律』、および香港特別行政区の区旗、区章の図案を含めて、一九九〇年四月四日、中華人民共和国第七期全国人民代表大会第三回会議で可決されたので、ここに公布し、一九九七年七月一日から実施する。
中華人民共和国主席 楊尚昆
一九九〇年四月四日
序言
香港は古来中国の領土であり、一八四〇年のアヘン戦争以降イギリスに占領された。一九八四年十二月十九日、中英両国政府は香港問題に関する共同声明に調印し、中華人民共和国政府が一九九七年七月一日から香港に対する主権行使を回復することを確認した。これによって、長期にわたった香港の祖国復帰という中国人民の共通の願いが実現した。
国家の統一と領土の保全を擁護し、香港の繁栄と安定を保持するため、また香港の歴史と現実の状況を考慮して、国は香港に対し主権行使を回復するにあたり、中華人民共和国憲法第三一条の規定に基づいて、香港特別行政区を設立し、また「一国二制度」の方針に基づいて、香港で社会主義の制度と政策を実施しないことを決定した。香港に対する国の基本的な方針、政策については、中国政府はすでに中英共同声明のなかで明らかにしている。香港に対する国の基本的な方針、政策の実施を保障するため、全国人民代表大会は中華人民共和国憲法に基づいて、中華人民共和国香港特別行政区基本法を特に制定し、香港特別行政区の実施する制度を規定する。
第一章 総則
第一条 香港特別行政区は中華人民共和国の不可分の一部分である。
第二条 全国人民代表大会は、本法の規定に基づいて高度の自治を実施し、行政管理権、立法権、独立した司法権と終審権を享有する権限を香港特別行政区に授与する。
第三条 香港特別行政区の行政機関と立法機関は、香港の永住民が本法の関係規定に基づいて構成する。
第四条 香港特別行政区は法に依って、香港特別行政区の住民およびその他の人の権利と自由を保障する。
第五条 香港特別行政区は社会主義の制度と政策を実施せず、従来の資本主義制度と生活様式を保持し、五十年間変えない。
第六条 香港特別行政区は法に依って私有財産権を保護する。
第七条 香港特別行政区内の土地と天然資源は国の所有に属し、香港特別行政区政府が責任をもって管理、使用、開発し、賃貸しをするか、あるいは個人、法人または団体の使用または開発に認可を与える。その収入は全部香港特別行政区政府が支配する。
第八条 香港の従来の法律、つまり普通法、衡平法、条例、付属立法と習慣法は、本法と抵触するか、あるいは香港特別行政区立法機関が改正したものを除いて、保留される。
第九条 香港特別行政区の行政機関、立法機関、司法機関は、中国語のほか、英語も使用することができる。英語も公式言語である。
第十条 香港特別行政区は、中華人民共和国の国旗と国章をかかげるほか、香港特別行政区の区旗と区章を使用することもできる。
香港特別行政区の区旗は、はなずおうの五つの花蕊をあしらった紅旗である。
香港特別行政区の区章は、真中にはなずおうの五つの花蕊で、周りは「中華人民共和国香港特別行政区」と「HONGKONG」という字をあしらっている。
第十一条 中華人民共和国憲法第三十一条に基づいて、社会・経済制度、住民の基本的な権利と自由の保障と関係のある制度、行政管理、立法、司法面の制度および関連政策を含め、香港特別行政区の制度と政策は、いずれも本法の規定に依拠するものとする。
香港特別行政区の立法機関が制定するいかなる法律も、本法と抵触してはならない。
第二章 中央と香港特別行政区との関係
第一二条 香港特別行政区は中華人民共和国の高度の自治権を享有する地方行政区域であり、中央人民政府に直轄される。
第十三条 中央人民政府は責任をもって香港特別行政区と関係のある外交事務を管理する。
中華人民共和国外交部は外交事務を処理するための機構を香港に設ける。
中央人民政府は、本法に基づいて関係のある対外事務を自ら処理する権限を香港特別行政区に授与する。
第十四条 中央人民政府は責任をもって香港特別行政区の防衛を管理する。
香港特別行政区政府は責任をもって香港特別行政区の社会治安を維持する。
中央人民政府から派遣されて香港特別行政区に駐屯し防衛の任に当たる軍隊は、香港特別行政区の地方事務に介入しない。香港特別行政区政府は必要のある場合、中央人民政府に駐屯軍を社会治安の維持と災害救助に協力させるよう要請することができる。
駐屯軍要員は全国的な法律を順守するほか、香港特別行政区の法律も順守しなければならない。
駐屯軍の経費は中央人民政府が負担する。
第十五条 中央人民政府は本法第四章の規定に基づいて、香港特別行政区の行政長官と行政機関の主要公務員を任命する。
第十六条 香港特別行政区は行政管理権を享有し、本法の関係規定に基づいて香港特別行政区の行政事務を自ら処理する。
第十七条 香港特別行政区は立法権を享有する。
香港特別行政区立法機関の制定した法律は全国人民代表大会常務委員会に報告し、記録に留めなければならない。記録に留めることは当該法律の発効に影響を及ぼさない。
全国人民代表大会常務委員会は自らに所属する香港特別行政区基本法委員会の意見を求めてのち、香港特別行政区立法機関の制定した法律が本法の中央管理の事務および中央と香港特別行政区との関係についての条項に合致しないと認めた場合、その法律を送り返すことができるが、改正はしない。全国人民代表大会常務委員会によって送り返された法律はただちに失効する。当該法律の失効は、香港特別行政区の法律が別に規定したものを除いて、遡及力をもたない。
第十八条 香港特別行政区で実施される法律は、本法および本法第八条で規定された香港の従来の法律と香港特別行政区立法機関の制定する法律とする。
全国的な法律は、本法付属文書三に列せられたものを除いて、香港特別行政区で実施しない。本法付属文書三に列せられた法律は、香港特別行政区が現地で公布するか立法化して実施する。
全国人民代表大会常務委員会は自らに所属する香港特別行政区基本法委員会および香港特別行政区政府の意見を求めてのち、本法付属文書三に列せられた法律を増減することができる。付属文書三に列せられる法律は、国防、外交と関係のある法律および本法で香港特別行政区の自治の範囲に属さないと規定されたその他の法律に限られる。
全国人民代表大会常務委員会が戦争状態宣言を決定したかあるいは香港特別行政区内で香港特別行政区政府が制御できない、国家の統一または安全に危害を及ぼす動乱が発生して香港特別行政区が緊急事態に入ることを決定した場合、中央人民政府は関係ある全国的な法律を香港特別行政区で実施する命令を発布することができる。
第十九条 香港特別行政区は独立した司法権と終審権を享有する。
香港特別行政区の裁判所は、香港の従来の法律制度と原則が裁判所の裁判権に加えている制限を引き続き保持するほか、香港特別行政区のすべての案件に対し裁判権をもつ。
香港特別行政区の裁判所は国防、外交などの国家行為に対し管轄権をもたない。香港特別行政区の裁判所は案件を審理するなかで、国防、外交など国家行為にかかわる事実問題に遭遇した場合、行政長官が当該問題について出した証明文書を取得しなければならず、前記の文書は裁判所に対し拘束力をもつ。行政長官は証明文書を出す前に、中央人民政府の証明書を取得しなければならない。
第二十条 香港特別行政区は、全国人民代表大会と全国人民代表大会常務委員会および中央人民政府から授与されたその他の権力を享有することができる。
第二十一条 香港特別行政区の住民のなかの中国公民は、法に依って国家事務の管理に参与する。
全国人民代表大会の確定した定員と代表選出方法に基づいて、香港特別行政区の住民のなかの中国公民は香港で香港特別行政区の全国人民代表大会代表を選出し、最高国家権力機関の活動に参加させる。
第二十二条 中央人民政府所属の各部門、各省、自治区、直轄市はいずれも、香港特別行政区が本法に基づいて自ら管理する事務に介入してはならない。
中央の各部門、各省、自治区、直轄市は香港特別行政区に機構を設ける必要がある場合、香港特別行政区政府の同意を求めるとともに、中央人民政府の認可を得なければならない。
中央の各部門、各省、自治区、直轄市が香港特別行政区に設けるすべての機構とその要員はいずれも、香港特別行政区の法律を順守しなければならない。
中国のその他の地区の人は香港特別行政区に入る場合、認可の手続きをとらなければならず、そのうち香港特別行政区に入って定住する人数は、中央人民政府の主管部門が香港特別行政区政府の意見を求めてのち確定する。
香港特別行政区は北京に事務所を設けることができる。
第二十三条 香港特別行政区は反逆、国家分裂、反乱煽動、中央人民政府転覆、国家機密窃取のいかなる行為をも禁止し、外国の政治的組織または団体の香港特別行政区における政治活動を禁止し、香港特別行政区の政治的組織または団体の、外国の政治的組織または団体との関係樹立を禁止する法律を自ら制定しなければならない。
第三章 住民の基本的な権利と義務
第二十四条 香港特別行政区の住民は香港住民と略称し、永住民と非永住民を含む。
香港特別行政区の永住民は下記のものである。
(1)、香港特別行政区成立以前または以後に香港で生まれた中国公民。
(2)、香港特別行政区成立以前または以後に香港に通常連続七年以上居住する中国公民。
(3)、第(1)、(2)項に記されている住民の、香港以外で生まれた中国籍の子女。
(4)、香港特別行政区成立以前または以後に有効な旅行証明書を所持して香港に入り、香港に通常連続七年以上居住するとともに、香港を永住地とする非中国籍の人。
(5)、香港特別行政区成立以前または以後に第(4)項に記されている住民の、香港で生まれた満二十一歳未満の子女。
(6)、第(1)項から第(5)項までに記されている住民以外の、香港特別行政区成立以前に香港にだけ居留権をもつ人。
以上の住民は香港特別行政区で居留権を享有し、香港特別行政区の法律に基づいてその居留権を明記した永住民身分証明書を取得する資格をもつ。
香港特別行政区の非永住民は、香港特別行政区の法律に基づいて香港住民身分証明書を取得する資格をもつが、居留権をもたない人である。
第二十五条 香港の住民は法律の前では一律に平等である。
第二十六条 香港特別行政区の永住民は法に依って選挙権と被選挙権を享有する。
第二十七条 香港の住民は、言論、報道、出版の自由、結社、集会、行進、デモの自由、労働組合を組織しこれに参加し、ストライキを行う権利と自由を享有する。
第二十八条 香港住民の人身の自由は侵犯されない。
香港の住民は勝手なまたは不法な逮捕、拘留、監禁を受けない。勝手なまたは不法な住民の身体の捜査、住民の人身の自由の剥奪または制限を禁止する。住民に対する酷刑、勝手なまたは不法な住民の生命の剥奪を禁止する。
第二十九条 香港住民の住宅とその他の家屋は侵犯されない。住民の住宅とその他の家屋に対する勝手なまたは不法な捜査、侵入を禁止する。
第三十条 香港住民の通信の自由と通信の秘密は法律に基づいて保護される。公共の安全と刑事犯罪の捜査の必要のため関係機関が法的手続きを踏んで通信の検閲をするほか、いかなる部門または個人も、いかなる理由をもってしても、住民の通信の自由と通信の秘密を侵犯してはならない。
第三十一条 香港の住民は香港特別行政区内における移転の自由、その他の国と地域への移住の自由がある。香港の住民は旅行と出入国の自由がある。有効な旅行証明書を所持する人は、法律に基づく制止を受けない限り、香港特別行政区を自由に離れることができ、特別の認可を受ける必要がない。
第三十二条 香港の住民は信仰の自由がある。
香港の住民は宗教信仰の自由があり、公開布教および宗教活考動の挙行と参加の自由がある。
第三十三条 香港の住民は職業選択の自由がある。
第三十四条 香港の住民は学術研究、文学・芸術創作、その他の文化活動を行う自由がある。
第三十五条 香港の住民は秘密裏に法律相談を行い、裁判所に提訴し、弁護士を選んで適時に自己の合法的権益を保護してもらうか法廷で代理人をしてもらい、司法的な救済を獲得する権利をもつ。
香港の住民は行政部門と行政要員の行為について裁判所に提訴する権利をもつ。
第三十六条 香港の住民は法に依って社会福祉を享受する権利をもつ。勤労者の福祉待遇と定年退職後の保障は、法律に基づいて保護される。
第三十七条 香港住民の婚姻の自由と自由意志による出産の権利は、法律に基づいて保護される。
第三十八条 香港の住民は香港特別行政区の法律に基づいて保障されるその他の権利と自由を享有する。
第三十九条 『市民的、政治的権利に関する国際条約』、『経済的、社会的、文化的権利に関する国際条約』および国際労働条約の、香港に適用する関係規定は引き続き有効であり、香港特別行政区の法律を通じて実施される。
香港の住民が享有する権利と自由は、法に依って規定された場合を除き、制限してはならず、この種の制限は本条第一項の規定と抵触してはならない。
第四十条 「新界」の従来の住民の合法的な伝統的権益は、香港特別行政区の保護を受ける。
第四十一条 香港特別行政区内における香港住民以外のその他の人は、本章で規定された香港住民の権利と自由を法に依って享有する。
第四十二条 香港の住民と香港にいるその他の人は、香港特別行政区で実施される法律を順守する義務をもつ。
第四章 政治体制
第一節 行政長官
第四十三条 香港特別行政区行政長官は香港特別行政区の首長であり、香港特別行政区を代表する。
香港特別行政区行政長官は、本法の規定に基づいて中央人民政府と香港特別行政区に対し責任を負う。
第四十四条 香港特別行政区行政長官は、香港に通常連続二十年以上居住し、外国に居留権をもたない香港特別行政区永住民のなかの満四十歳以上の中国公民でなければならない。
第四十五条 香港特別行政区行政長官は地元で選挙または協議を通じて選出され、中央人民政府が任命する。
行政長官の選出方法は、香港特別行政区の実情および順を追って漸進するという原則に基づいて規定し、最終的目標は広範な代表性をもつ指名委員会が民主的手続きを踏んで指名してのち普通選挙で選出されることである。
行政長官の具体的な選出方法は付属文書一『香港特別行政区行政長官の選出方法』が規定する。
第四十六条 香港特別行政区行政長官の任期は五年とし、一期だけ再任できる。
第四十七条 香港特別行政区行政長官は廉潔にして公に奉仕し、職責に忠実でなければならない。
行政長官は就任にあたって、香港特別行政区終審裁判所首席裁判官に財産を申告し、記録に留めなければならない。
第四十八条 香港特別行政区行政長官は下記の職権を行使する。
(1)、香港特別行政区政府を指導する。
(2)、責任をもって本法および本法に基づいて香港特別行政区に適用されるその他の法律を執行する。
(3)、立法会で採択された法案に署名し、法律を公布する。
立法会で可決された財政予算案に署名し、財政予算・決算を中央人民政府に報告して記録に留める。
(4)、政府の政策を決定し、行政命令を出す。
(5)、次の主要政府職員を指名し、中央人民政府に報告して任命を要請する。各司司長、副司長、各局局長、廉政専員、会計検査署署長、警務処処長、入国事務処処長、税関関長。上述政府職員の解任について中央人民政府に提案する。
(6)、法的手続きを踏んで各級裁判所の裁判官を任免する。
(7)、法的手続きを踏んで公職要員を任免する。
(8)、中央人民政府の本法に規定された関係事務についての指令を執行する。
(9)、香港特別行政区政府を代表して、中央から権限を授与された対外事務とその他の事務を処理する。
(10)、財政の収入または支出に関する動議を立法会に提出することを承認する。
(11)、安全と重要な公共利益に対する考慮に基づいて、政府職員または政府の公務に責任を負うその他の要員が立法会またはそれに所属する委員会で証言し、証拠を提供するかどうかを決定する。
(12)、刑事犯罪者を赦免するかあるいはその刑罰を軽減する。
(13)、請願、苦情を処理する。
第四十九条 香港特別行政区行政長官は、立法会の可決した法案が香港特別行政区の全体的利益に合致しないと認めた場合、三カ月以内に当該法案を立法会に差し戻して再審させることができる。立法会が全議員の三分の二以上の多数で再び原案を可決した場合、行政長官は一カ月以内にそれに署名して公布するかあるいは本法第五〇条の規定通りに処理しなければならない。
第五十条 香港特別行政区行政長官が立法会の再度可決した法案への署名を拒否するかあるいは立法会が政府の提出した財政予算案その他の重要法案の可決を拒否し、協議を重ねてもなお意見の一致を見ない場合、行政長官は立法会を解散することができる。
行政長官は立法会を解散する前、行政会議の意見を求めなければならない。行政長官はその期の任期中に一回しか立法会を解散することができない。
第五十一条 香港特別行政区立法会が政府の提出した財政予算案の承認を拒否した場合、行政長官は立法会に臨時支出を申請することができる。立法会が解散されたため支出を承認できない場合、行政長官は新しい立法会が選出されるまでの間、前財政年度の支出標準に基づいて、臨時臨期の支出を許可することができる。
第五十二条 香港特別行政区行政長官は次のいずれかの状況に立ち至った場合、辞職しなければならない。
(1)、重病またはその他の理由で職務遂行能力を失った場合。
(2)、立法会の可決した法案への署名を二度拒否したため立法会を解散し、新たに選出された立法会が問題の原案を全議員の三分の二の多数で再び可決し、行政長官が依然として署名を拒否した場合。
(3)、立法会が財政予算案またはその他の重要法案の可決を拒否したために解散され、新たに選出された立法会が引き続き問題の原案の可決を拒否した場合。
第五十三条 香港特別行政区行政長官が短期間職務を遂行できない場合は、政務司長、財政司長、律政司長の順で臨時にその職務を代行する。
行政長官が空席となった場合は、六カ月以内に本法第四五条の規定に基づいて新しい行政長官を選出しなければならない。行政長官空席期間の職務は、前段の規定通りに代行する。
第五十四条 香港特別行政区行政会議は、行政長官の政策決定を援助する機構である。
第五十五条 香港特別行政区行政会議の構成員は、行政長官が行政機関の主要政府職員、立法会の議員、社会人士のなかから委任し、その任免は行政長官が決定する。行政会議の構成員の任期は彼らを委任した行政長官の任期を超えてはならない。
香港特別行政区行政会議の構成員は、外国に居留権をもたない香港特別行政区永住民のなかの中国公民でなければならない。
行政長官は必要と認めた場合、関係人士を招請して会議に列席させることができる。
第五十六条 香港特別行政区行政会議は行政長官が主宰する。
行政長官は重要政策の決定、立法会への法案提出、付属法規の制定、立法会の解散を行う前に、行政会議の意見を求めなければならない。ただし、人事の任免、規律による制裁、緊急事態の下でとる措置は含まれない。
行政長官が行政会議の多数の構成員の意見を受け入れない場合は、その具体的理由を記録に留めなければならない。
第五十七条 香港特別行政区に廉政公署を設ける。廉政公署は独立して活動を展開し、行政長官に対し責任を負う。
第五十八条 香港特別行政区に会計検査署を設ける。会計検査署は独立して活動を展開し、行政長官に対し責任を負う。
第二節 行政機関
第五十九条 香港特別行政区政府は、香港特別行政区の行政機関である。
第六十条 香港特別行政区政府の首長は、香港特別行政区の行政長官である。
香港特別行政区政府の下に、政務司、財政司、律政司と各局、処、署を設ける。
第六十一条 香港特別行政区の主要政府職員は、香港に通常連続十五年以上居住し、外国に居留権をもたない香港特別行政区永住民のなかの中国公民でなければならない。
第六十二条 香港特別行政区政府は次の職権を行使する。
(1)、政策を制定、執行する。
(2)、各項目の行政事務を管理する。
(3)、本法に規定された、中央人民政府から権限を授与された対外事務を処理する。
(4)、財政予算、決算を編成し、提出する。
(5)、法案、議案、付属法規を制定し、提出する。
(6)、政府職員を立法会に列席し、政府を代表して発言させる。
第六十三条 香港特別行政区律政司は刑事検察工作を主管し、いかなる干渉も受けない。
第六十四条 香港特別行政区政府は法律を順守し、香港特別行政区立法会に対し責任を負う。立法会が可決し、発効した法律を執行し、定期的に立法会に施政報告を行い、立法会議員の質疑に回答し、徴税と公共支出は立法会の承認を経なければならない。
第六十五条 行政機関が諮問組織を設ける従来の制度は引き続き保留される。
第三節 立法機関
第六十六条 香港特別行政区立法会は香港特別行政区の立法機関である。
第六十七条 香港特別行政区立法会は、外国に居留権をもたない香港特別行政区永住民のなかの中国公民からなる。ただし、非中国籍の香港特別行政区永住民と外国に居留権をもつ香港特別行政区永住民も香港特別行政区立法会議員に選出されることができ、その比例は立法会議員の二〇%を超えてはならない。
第六十八条 香港特別行政区立法会は選挙によって選出される。
立法会の選出方法は、香港特別行政区の実情と順を追って漸進するという原則に基づいて規定し、最終的には全議員が普通選挙によって選出される目標を達成する。
立法会の具体的な選出方法と法案、議案の表決手続きは付属文書二『香港特別行政区立法会の選出方法と表決手続き』が規定する。
第六十九条 香港特別行政区立法会の任期は、第一期が二年とするほか、一期四年とする。
第七十条 香港特別行政区立法会が行政長官によって本法の規定に基づいて解散された場合、三カ月以内に本法第六八条の規定に基づいて新たに選出されなければならない。
第七十一条 香港特別行政区立法会主席は、立法会議員の互選によって選出される。
香港特別行政区立法会主席は、香港に通常連続二十年以上居住し、外国に居留権をもたない香港特別行政区永住民のなかの満四十歳以上の中国公民でなければならない。
第七十二条 香港特別行政区立法会主席は次の職権を行使する。
(1)、会議を主宰する。
(2)、議事日程を決定する。政府提出の議案を優先的に議事日程に組み入れねばならない。
(3)、開会の日時を決定する。
(4)、休会期間中に特別会議を召集することができる。
(5)、行政長官の要請に応じて緊急会議を召集する。
(6)、立法会の議事規則に規定されたその他の職権。
第七十三条 香港特別行政区立法会は次の職権を行使する。
(1)、本法の規定に基づき、法的手続きを踏んで、法律を制定、改正、廃止する。
(2)、政府の提案に基づいて財政予算を審査し、承認する。
(3)、徴税と公共支出を承認する。
(4)、行政長官の施政報告を聴取し、審議する。
(5)、政府の活動について質疑する。
(6)、公共利益に関するすべての問題について審議する。
(7)、終審裁判所裁判官と高等裁判所首席裁判官の任免に同意する。
(8)、香港住民の訴願を受け入れ、処理する。
(9)、立法会全議員の四分の一が共同動議を提出し、行政長官に重大な法律違反あるいは瀆職行為がありながら辞職しないと非難し、訴えた場合、立法会でその調査実行が可決されたのち、立法会は終審裁判所首席裁判官に責任をもって独立した調査委員会を設置し、自ら同調査委員会主席に就任するよう依頼することができる。調査委員会は責任をもって調査を行い、立法会に報告書を提出する。同調査委員会が前述の非難と訴えの成立を証明するに足る証拠があると認めた場合、立法会は全議員の三分の二の多数で可決すれば、弾劾案を提出し、中央人民政府に報告して決定を求めることができる。
(10)、前述各項の職権を行使するにあたって、必要がある場合は、関係人士を召喚して証言し、証拠を提供させることができる。
第七十四条 香港特別行政区立法会議員は本法の規定に基づき、法的手続きを踏んで法案を提出するにあたって、それが公共支出または政治体制または政府の管理運営にかかわらない場合、立法会議員が独自にまたは連名で提出することができる。政府の政策にかかわる場合は、提出する前に行政長官の書面による同意を得なければならない。
第七十五条 香港特別行政区立法会の会議を開くための法定定足数は全議員の二分の一を下回ってはならない。
立法会の議事規則は立法会が自ら制定するが、本法と抵触してはならない。
第七十六条 香港特別行政区立法会の可決した法案は、行政長官の署名、公布を待って初めて発効する。
第七十七条 香港特別行政区立法会の議員が立法会の会議で行った発言は、法律による追及を受けない。
第七十八条 香港特別行政区立法会議員は、会議出席中または会議に赴く途中に逮捕されることはない。
第七十九条 香港特別行政区立法会の議員が次のいずれかの状況に置かれた場合、立法会主席は彼が立法会議員の資格を失ったことを宣言する。
(1)、重病またはその他の状況によって職務を遂行できなくなった場合。
(2)、立法会主席の同意を得ずに連続三カ月会議に出席せず、しかも合理的な説明がない場合。
(3)、香港特別行政区永住民としての資格を失ったかまたは放棄した場合。
(4)、政府の委任を受け入れて公務員となった場合。
(5)、倒産あるいは法廷の行った債務償還の裁定を履行しない場合。
(6)、香港特別行政区の域内または域外で刑事犯罪によって有罪とされ、監禁一カ月以上の判決を言い渡され、かつ立法会の会議に出席した議員の三分の二の多数決によってその職務を解任された場合。
(7)、立法会の会議に出席した議員の三分の二の賛成で、不謹慎な行動または誓約違反が非難された場合。
第四節 司法機関
第八十条 香港特別行政区の各級裁判所は香港特別行政区の司法機関であり、香港特別行政区の裁判権を行使する。
第八十一条 香港特別行政区は終審裁判所、高等裁判所、地区裁判所、裁判署法廷とその他の特別法廷を設ける。高等裁判所は上訴法廷と第一審法廷を設ける。
香港特別行政区成立以前に香港で実施されていた司法体制は、香港特別行政区終審裁判所の設立に伴う変更を除いて、保留される。
第八十二条 香港特別行政区の終審権は香港特別行政区終審裁判所に属する。終審裁判所は必要に応じてその他の普通法適用地区の裁判官を招聘して裁判に参加させることができる。
第八十三条 香港特別行政区の各級裁判所の組織と権限は法律によって規定される。
第八十四条 香港特別行政区裁判所は本法第一八条に規定されている香港特別行政区に適用される法律に基づいて案件の裁判を行い、その他の普通法適用地区の司法判例を参考にすることができる。
第八十五条 香港特別行政区裁判所は独立して裁判を行い、いかなる干渉も受けない。司法要員の裁判責務を果たす上での行為は法律による追及を受けない。
第八十六条 香港特別行政区成立以前に香港で実施されていた陪審制度の原則は保留される。
第八十七条 香港特別行政区の刑事訴訟と民事訴訟において、香港特別行政区成立以前に香港で適用されていた原則と当事者が享受していた権利は保留される。
いかなる人も合法的に逮捕されてのち、できるだけ早く司法機関の公正な裁判を受ける権利があり、司法機関に有罪を言い渡されるまではいずれも仮定無罪である。
第八十八条 香港特別行政区裁判所の裁判官は、地元の裁判官と法曹界およびその他の知名人からなる独立した委員会の推薦に基づいて、行政長官が任命する。
第八十九条 香港特別行政区裁判所の裁判官が職務遂行の能力を失うかあるいは裁判官としてふさわしくない行動をとった場合においてのみ、行政長官は終審裁判所の首席裁判官が任命した三人を下回らない地元の裁判官からなる審議廷の提案に基づいて解任することができる。
香港特別行政区終審裁判所の首席裁判官が職務遂行の能力を失うかあるいは首席裁判官としてふさわしくない行動をとった場合においてのみ、行政長官は五人を下回らない地元の裁判官を任命して審議廷を設置し、審査を行わせるとともに、審議廷の提案に基づき、本法に規定されている手続きを踏んで解任することができる。
第九十条 香港特別行政区終審裁判所と高等裁判所の首席裁判官は、外国に居留権をもたない香港特別行政区永住民のなかの中国公民でなければならない。
本法第八十八条、第八十九条で規定された手続きのほか、香港特別行政区の終審裁判所裁判官と高等裁判所首席裁判官の任免は、行政長官が立法会の同意を求めるとともに全国人民代表大会常務委員会に報告して記録に留めなければならない。
第九十一条 香港特別行政区の裁判官以外のその他の司法要員についての従来の任免制度は引き続き保持される。
第九十二条 香港特別行政区の裁判官とその他の司法要員は、本人の司法と専門面の才能に基づいて選任しなければならず、他の普通法適用地区から招聘することもできる。
第九十三条 香港特別行政区成立以前に香港に勤務していた裁判官とその他の司法要員はすべて留任することができ、その勤続年数は保留され、給与、手当、福祉待遇、勤務条件はもとの基準を下回らない。
香港特別行政区成立以前に定年退職したか離職したものを含めて、定年退職したかあるいは規定に基づいて離職した裁判官とその他の司法要員に対し、その国籍と居住地を問わず、香港特別行政区政府はもとの基準を下回らない基準で彼らまたはその家族に当然受けるべき年金、給付金、手当、福祉費を支給する。
第九十四条 香港特別行政区政府は以前香港で実行していたやり方を参照して、地元と他所からまた弁護士が香港特別行政区で勤務、営業することについての規定を行うことができる。
第九十五条 香港特別行政区は全国のその他の地区の司法機関と協議し、法に依って司法面での連係を保ち、相互援助することができる。
第九十六条 中央人民政府の協力と授権の下で、香港特別行政区政府は司法面での相互援助関係について、外国との間で適切な手筈を整えることができる。
第五節 地区組織
第九十七条 香港特別行政区に非政権的な地区組織を設置し、地区管理その他の実務について香港特別行政区政府の諮問に答申するかまたは文化、娯楽、環境衛生などのサービスを提供させることができる。
第九十八条 地区組織の権限と構成は法律によって規定される。
第六節 公務員
第九十九条 香港特別行政区政府の各部門に勤務する公務員は香港特別行政区の永住民でなければならない。本法百一条で別に規定を行っている外国籍公務員あるいは法律に規定されている一定の職級以下のものはこの限りではない。
公務員は職責を忠実に果たし、香港特別行政区政府に対し責任を負わなければならない。
第百条 警察部門を含め香港特別行政区成立以前に香港政府各部門で職務についていた公務員はいずれも留任することができ、その勤続年数は保留され、給与、手当、福祉待遇、勤務条件はもとの基準を下回らない。
第百一条 香港特別行政区政府はもとの香港の公務員のなかの、または香港特別行政区永住民の身分証明書を所持するイギリス籍およびその他の外国籍の人士を政府部門の各級公務員に任用することができる。ただし、各司司長、副司長、各局局長、廉政専員、会計検査署署長、警務処処長、入国事務処処長、税関関長は、外国に居留権をもたない香港特別行政区永住民のなかの中国公民でなければならない。
香港特別行政区政府はまた、イギリス籍とその他の外国籍人士を招聘して政府部門の顧問に任命することができ、必要な場合は香港特別行政区以外から適格者を招聘して政府部門の専門職務、技術職務につかせることができる。上述の外国籍人士は個人の資格でしか招聘を受け入れることができず、香港特別行政区政府に対し責任を負う。
第百二条 香港特別行政区成立以前に定年退職したかあるいは規定に基づいて離職した公務員を含めて定年退職したかあるいは規定に基づいて離職した公務員に対し、その国籍と居住地を問わず、香港特別行政区政府はもとの基準を下回らない基準で彼らかまたはその家族に然るべき年金、給付金、手当、福祉費を支給する。
第百三条 公務員の任命と昇進は本人の資格、経験、才能を基準として行わなければならない。香港のもとの公務員の招聘、雇用、考課、規律、養成・訓練、管理についての制度は、公務員の登用、給与、勤務条件を担当していた専門機構を含め、外国籍公務員に特権的待遇を与える規定を除いて保留される。
第百四条 香港特別行政区行政長官、主要政府職員、行政会議構成員、立法会議員、各級裁判所裁判官とその他の司法要員は就任にあたり、法に依って、中華人民共和国香港特別行政区基本法を擁護し、中華人民共和国香港特別行政区に忠誠を尽くすことを宣誓しなければならない。
第五章 経済
第一節 財政、金融、貿易、工商業
第百五条 香港特別行政区は法に依って個人と法人の財産の取得、使用、処分、相続の権利、および法に依って個人と法人の財産を徴用する時徴用される財産の所有人が補償を得る権利を保護する。
財産徴用の補償は当該財産の当時の実際価値に相当しなければならず、自由に兌換することができ、理由もなく支払いを遅らせてはならない。
企業所有権と外部からの投資は法律によって保護される。
第百六条 香港特別行政区の財政は独立を保持するものとする。
香港特別行政区はその財政収入をすべて自らの目的に使用し、中央人民政府に上納しない。
中央人民政府は香港特別行政区で徴税しない。
第百七条 香港特別行政区の財政予算は歳入に基づいて歳出を決めることを原則とし、収支が均衡を保つように努め、赤字を避け、地元の総生産額の伸び率に見合うようにする。
第百八条 香港特別行政区は独立した租税制度を実施する。
香港特別行政区は以前香港で実行した低税金政策を参照し、税種、税率、税金減免とその他の税務事項は自ら立法化して規定する。
第百九条 香港特別行政区政府は香港の国際金融センターとしての地位を維持するための適切な経済・法律環境を提供する。
第百十条 香港特別行政区の貨幣・金融制度は法律によって規定される。
香港特別行政区政府は自ら貨幣・金融政策を制定し、金融企業と金融市場の経営の自由を保障するとともに法に依って管理、監督する。
第百十一条 香港ドルは香港特別行政区の法定貨幣とし、引き続き流通する。
香港貨幣の発行権は香港特別行政区政府に属する。香港貨幣の発行は一〇〇%の準備金で裏付けられなければならない。香港貨幣の発行制度と準備金制度は法律によって規定される。
香港特別行政区政府は香港貨幣の発行基盤が健全で、発行の手配が香港貨幣の安定維持の目的にかなっていることを確認する条件の下で、法定権限に基づいて香港貨幣を発行または引き続き発行する権限を指定銀行に授けることができる。
第百十二条 香港特別行政区は外国為替管制政策を実行しない。香港貨幣は自由に兌換する。外国為替、金、証券、先物などの市場を引き続き開放する。
香港特別行政区政府は資金の行政区内および内外への自由な流動を保障する。
第百十三条 香港特別行政区の外貨基金は香港特別行政区政府が管理、支配し、主として香港ドルの為替レートの調節に用いられる。
第百十四条 香港特別行政区は自由港としての地位を保ち、法律で別に規定されているものを除いて、関税を徴収しない。
第百十五条 香港特別行政区は自由貿易政策を実行し、貨物、無形財産、資本の自由な移動を保障する。
第百十六条 香港特別行政区は独立した関税地区とする。
香港特別行政区は「中国香港」の名義で、貿易の優遇措置を含めて、関税貿易一般協定、国際繊維取り決めなどの関係国際機構と国際貿易協定に参加することができる。
香港特別行政区が得た、および以前に得て引き続き有効な輸出割当、関税優遇措置および合意したその他の類似の取り決めは、すべて香港特別行政区が享有する。
第百十七条 香港特別行政区はその時の産地規則に基づいて、製品に対し原産地証明書を発行することができる。
第百十八条 香港特別行政区政府は経済的、法律的環境を提供し、各項の投資、技術進歩を奨励するとともに新興産業を開発する。
第百十九条 香港特別行政区政府は然るべき政策を制定して、製造業、商業、観光業、家屋土地不動産業、運輸業、公共事業、サービス業、漁業・農業など各業種の発展を促進し、また環境保全に注意を払う。
第二節 土地契約
第百二十条 香港特別行政区成立以前に認可、決定または延長された、一九九七年六月三十日の期限を超えるすべての土地契約と土地契約に関連するすべての権利は、いずれも香港特別行政区の法律に基づいて引き続き承認、保護される。
第百二十一条 一九八五年五月二十七日から一九九七年六月三十日までの間に認可されたかまたは本来延長権がないのに延長され、期限が一九九七年六月三十日を超えるが二〇四七年六月三十日を超えないすべての土地契約については、借地人は一九九七年七月一日から追加地価を納入しない。ただし、その日の当該土地の土地評価額の三%に相当する借地料を毎年納入しなければならない。借地料はその後、土地評価額の変化に応じて調整する。
第百二十二条 旧契約に基づく土地、村落の土地、狭小宅地および類似の農村の土地については、当該土地の一九八四年六月三十日当時の借地人、または同日以降許可された狭小宅地の借地人で、その父方が一八九八年当時香港の村落の住民であった者は、当該土地の借地人が本人または父方の法定相続人である限り、借地料は従来のままとする。
第百二十三条 香港特別行政区成立以降に期限が切れ、延長権のない土地契約は、香港特別行政区が自ら法律と政策を定めてそれを処理する。
第三節 海運
第百二十四条 香港特別行政区は、関連のある船員管理制度を含めて、香港特別行政区成立以前に香港でとられていた海運運営と管理体制を保持する。
香港特別行政区政府は海運面における具体的職能と責任を自ら定める。
第百二十五条 香港特別行政区は中央人民政府から権限を授けられて引き続き船舶登録を行うとともに、香港特別行政区の法律に基づき、「中国香港」の名義で関係ある証明書を発行する。
第百二十六条 外国の軍用船舶が香港特別行政区に入る場合、中央人民政府の特別許可を受けなければならないほか、その他の船舶は香港特別行政区の法律に基づいてその港湾に出入することができる。
第百二十七条 香港特別行政区の私営海運企業と海運関連企業および私営コンテナ埠頭は、引き続き自由に経営することができる。
第四節 民間航空
第百二十八条 香港特別行政区政府は国際および地域航空センターとしての香港の地位を保持するための条件を提供し、措置をとらなければならない。
第百二十九条 香港特別行政区は、特別行政区成立以前に香港でとられていた民間航空管理制度を引き続き実施するとともに、航空機国籍標識と登録標識に関する中央人民政府の規定に基づいて、自らの航空機登録簿を設ける。
外国の国家航空機が香港特別行政区に進入する場合は、中央人民政府の特別許可を受けなければならない。
第百三十条 香港特別行政区は、空港管理、香港特別行政区飛行情報区内での空中交通サービス提供、および国際民間航空機構の地域的航行計画手続きに規定されたその他の職責の履行を含めて、民間航空の日常業務と技術管理に自ら責任を負う。
第百三十一条 中央人民政府は香港特別行政区政府と協議の上、香港特別行政区に登録し、香港を主要な営業地とする航空会社と中華人民共和国のその他の航空公司のために、香港特別行政区と中華人民共和国のその他の地区との間の往復航空便を提供する措置をとる。
第百三十二条 中華人民共和国のその他の地区とその他の国、地域の間を往復し、香港特別行政区を経由する航空便、および香港特別行政区とその他の国、地域の間を往復し、中華人民共和国の他の地区を経由する航空便に関するすべての民間航空運輸協定は、中央人民政府がこれを締結する。
本条第一段に述べられている民間航空運輸協定を締結するにあたって、中央人民政府は香港特別行政区の特殊な事情と経済的利益を考慮するとともに、香港特別行政区政府と協議すべきである。
中央人民政府が本条第一段で述べられている航空便に関する取り決めを外国政府と協議するにあたって、香港特別行政区政府の代表は中華人民共和国政府代表団のメンバーとして協議に参加することができる。
第百三十三条 香港特別行政区政府は中央人民政府から具体的な権限を授与されて、
(1)、従来からの民間航空運輸協定と取り決めを更新するかあるいは改正することができる。
(2)、香港特別行政区に登録し香港を主要な営業地とする航空会社に航空ルートおよび境界通過、技術的着陸の権利を提供する新しい民間航空運輸協定について交渉し、締結することができる。
(3)、民間航空運輸協定を結んでいない外国または地域との間で、臨時取り決めについて交渉し、締結することができる。
中国内陸部を往復、経由せず、ただ香港だけを往復、経由する定期航空便はすべて、本条で述べられている民間航空運輸協定または臨時取り決めによって規定される。
第百三十四条 中央人民政府は香港特別行政区政府に次の諸権限を授与する。
(1)、本法第百三十三条に述べられている民間航空運輸協定と臨時取り決めを実施するための諸措置についてその他の当局と協議、調印する。
(2)、香港特別行政区に登録し、香港を主要な営業地とする航空会社に許可証を発行する。
(3)、本法第百三十三条に述べられている民間航空運輸協定と臨時取り決めに基づいて航空会社を指定する。
(4)、外国航空会社の中国内陸部を往復、経由する航空便以外のその他の航空便に許可証を発行する。
第百三十五条 香港特別行政区成立以前に香港で登録し、香港を主要な営業地とする航空会社および民間航空関連業種は、引き続き営業することができる。
第六章 教育、科学、文化、体育、宗教、労働、社会奉仕
第百三十六条 香港特別行政区政府は従来の教育制度を基礎として、教育体制と管理、教育使用言語、経費割当、試験制度、学位制度、学歴承認などの政策を含む教育の発展と改善の政策を自ら制定する。
社会団体と個人は、法に依って香港特別行政区で各種の教育事業を経営することができる。
第百三十七条 各種の大学、学校はいずれもその自主性を保持するとともに学術の自由を享有することができ、引き続き香港特別行政区以外のところから教職員を招聘し、教科書を選択、使用することができる。宗教団体の経営する学校は、宗教課程の開設を含め、引き続き宗教教育を行うことができる。
学生は大学、学校を選択し、香港特別行政区以外のところで就学する自由をもつ。
第百三十八条 香港特別行政区政府は漢方医薬・西洋医薬発展と医療衛生サービス促進の政策を自ら制定する。社会団体と個人は法に依って各種の医療衛生サービスを提供することができる。
第百三十九条 香港特別行政区政府は科学技術政策を自ら制定して、科学技術の研究成果、特許、発明創造を保護する。
香港特別行政区政府は香港に適する各種科学、技術の基準と規格を自ら確定する。
第百四十条 香港特別行政区政府は文化政策を自ら制定して、作者が文学芸術創作のなかであげた成果とその合法的権益を法律に依って保護する。
第百四十一条 香港特別行政区政府は宗教信仰の自由を制限せず、宗教団体の内部問題に介入せず、香港特別行政区の法律と抵触しない宗教活動を制限しない。
宗教団体は法に依って財産の取得、使用、処分、相続および資金援助受け入れの権利を享有する。財産面の従来からの権益は依然として保持、保護される。
宗教団体は従来からの方法で宗教大学・学校およびその他の学校、病院、福祉施設を引き続き設立、経営し、その他の社会奉仕を提供することができる。
香港特別行政区の宗教団体と教徒は、その他の地方の宗教団体、教徒との関係を維持し、発展させることができる。
第百四十二条 香港特別行政区政府は従来からある専業制度の保留を踏まえて、各種専業の従事資格の審査、評定に関する方法を自ら制定する。
香港特別行政区成立以前に専業と従事資格を取得していた者は、関係規定と専業規則に基づいて以前の資格を保留することができる。
香港特別行政区政府は、特別行政区成立以前に認可済みの専業と専業団体について認可を保留し、認可された専業団体は専業資格を自ら審査し、授与することができる。
香港特別行政区政府は社会発展の必要に応じ、関係方面に諮問して、新しい専業と専業団体を認可することができる。
第百四十三条 香港特別行政区政府は体育政策を自ら制定する。民間体育団体は法に依って引き続き存在し、発展することができる。
第百四十四条 香港特別行政区政府は以前香港で実施されていた教育、医療・衛生、文化、芸術、娯楽、体育、社会福祉、社会活動など諸方面の民間団体・機構に対する資金援助政策を保持する。以前香港の各資金援助機関に奉職していた要員は従来の制度に基づいて引き続き招聘に応ずることができる。
第百四十五条 香港特別行政区政府は、従来の社会福祉制度を基礎とし、経済条件と社会の必要に基づいてその発展・改善政策を自ら制定する。
第百四十六条 香港特別行政区で社会奉仕に従事するボランティア団体は法律に抵触しない状況の下でその奉仕方式を自ら決めることができる。
第百四十七条 香港特別行政区は労働に関する法律と政策を自ら制定する。
第百四十八条 香港特別行政区の教育、科学、技術、文化、芸術、体育、専業、医療・衛生、労働、社会福祉、社会活動など諸方面の民間団体、宗教団体と大陸部の相応する団体との関係は、相互不隷属、相互不干渉、相互尊重の原則を基礎としなければならない。
第百四十九条 香港特別行政区の教育、科学、技術、文化、芸術、体育、専業、医療・衛生、労働、社会福祉、社会活動など諸方面の民間団体と宗教団体は、世界各国、各地域および国際の関連のある団体との関係を維持し、発展させることができる。それぞれの当該団体は必要に応じて「中国香港」の名義で関係活動に参加することができる。
第七章 対外事務
第百五十条 香港特別行政区政府の代表は、中華人民共和国政府代表団のメンバーとして、香港特別行政区と直接関係のある中央人民政府の外交交渉に参加することができる。
第百五十一条 香港特別行政区は経済、貿易、金融、海運、通信、観光、文化、体育などの分野において、「中国香港」の名義で独自に世界各国、各地域および国際の関連のある機構との関係を維持し、発展させ、関係協定を締結、履行することができる。
第百五十二条 香港特別行政区政府は、国家を単位として参加し、香港特別行政区と関係のある然るべき分野の国際機構と国際会議に代表を派遣し、中華人民共和国代表団のメンバーとして、または中央人民政府と前記の関係国際機構または国際会議が認める資格でこれらに参加するとともに、「中国香港」の名義で意見を発表することができる。
香港特別行政区は国家を参加単位としない国際機構と国際会議に「中国香港」の名義で参加することができる。
中華人民共和国がすでに参加し、香港もなんらかの形で参加している国際機構に対し、中央人民政府は香港特別行政区に適当な形でこれらの機構における地位を引き続き保持させるための必要な措置をとる。
中華人民共和国がまだ参加していないが、香港がすでになんらかの形で参加している国際機構に対しては、中央人民政府は必要に応じて、香港特別行政区を適当な形で引き続きこれらの機構に参加させる。
第百五十三条 中華人民共和国の締結した国際協定については、中央人民政府は香港特別行政区の状況と必要に基づき、香港特別行政区政府の意見を求めてから、香港特別行政区に適用するかどうかを決定する。
中華人民共和国はまだ参加していないが、香港で適用されている国際協定は引き続き適用することができる。中央人民政府は必要に応じて、その他の関係国際協定を香港特別行政区に適用させるため、適当な措置をとるよう香港特別行政区政府に授権するか援助する。
第百五十四条 中央人民政府は香港特別行政区政府に、法律に基づいて、香港特別行政区永住民身分証明書を所持する中国公民に中華人民共和国香港特別行政区旅券を発行し、香港特別行政区のその他の合法的居留者に中華人民共和国香港特別行政区のその他の旅行証明書を発行する権限を授与する。前記の旅券と証明書は各国、各地域に赴く時に有効であり、所持者が香港特別行政区に帰る権利があることを明記する。
香港特別行政区政府は世界各国あるいは各地域の人の入国、滞在、出国に対し、出入国管理を実施することができる。
第百五十五条 中央人民政府は、香港特別行政区政府が各国、各地域と相互査証免除協定を締結するのを援助するかまたはその権限を香港特別行政区政府に授与する。
第百五十六条 香港特別行政区は必要に応じて外国に官営または半官営の経済・貿易機構を設けることができる。それらは中央人民政府に報告して記録に留めなければならない。
第百五十七条 外国が香港特別行政区に領事機構またはその他の官営、半官営の機構を設ける場合は、中央人民政府の許可を受けなければならない。
中華人民共和国と正式の外交関係を樹立している国が香港に設けている領事機構その他の官営機構は保留することができる。
中華人民共和国と正式の外交関係を樹立していない国が香港に設けている領事機構その他の官営機構は、状況に応じて保留を認めるかあるいは半官営の機構に改めることができる。
中華人民共和国が承認していない国は、香港特別行政区に民間機構しか設けることができない。
第八章 本法の解釈と改正
第百五十八条 本法の解釈権は全国人民代表大会常務委員会に属する。
全国人民代表大会常務委員会は香港特別行政区の裁判所に、案件の審理にあたって、本法の香港特別行政区の自治範囲以内の条項について自ら解釈する権限を授与する。
香港特別行政区の裁判所は案件を審理する時、本法のその他の条項についても解釈することができる。ただし、香港特別行政区の裁判所が案件を審理するにあたって、本法の中央人民政府の管理する事務または中央と香港特別行政区との関係に関する条項について解釈する必要があり、当該条項の解釈が案件の判決に影響する場合、当該案件に対し上訴できない最終判決を行う前に、香港特別行政区終審裁判所が全国人民代表大会常務委員会に関係条項について解釈するよう要請しなければならない。全国人民代表大会常務委員会が解釈を加えた条項を香港特別行政区の裁判所が引用する場合、全国人民代表大会常務委員会の解釈を準拠としなければならない。ただし、それ以前に行った判決は影響を受けない。
全国人民代表大会常務委員会は本法を解釈する前に、それに所属する香港特別行政区基本法委員会の意見を求めるものとする。
第百五十九条 本法の改正権が全国人民代表大会に属する。
本法の改正提案権は全国人民代表大会常務委員会、国務院、香港特別行政区に属する。香港特別行政区の改正議案は、香港特別行政区の全国人民代表大会代表の三分の二の多数、香港特別行政区立法会全議員の三分の二の多数と、香港特別行政区行政長官の同意を得てのち、全国人民代表大会に出席する香港特別行政区代表団が全国人民代表大会に提出する。
本法の改正議案は全国人民代表大会の議事日程に入れる前に、香港特別行政区基本法委員会が検討し、意見を提出する。
本法に対するいかなる改正も、中華人民共和国の香港に対する既定の基本方針、政策と抵触してはならない。
第九章 付則
第百六十条 香港特別行政区が成立する時、香港の従来からある法律は、全国人民代表大会常務委員会が本法と抵触すると公布したものを除き、香港特別行政区の法律として採用し、もし以後に一部の法律が本法と抵触することを発見した場合、本法に規定された手続きに基づいて改正するか廃止する。
香港の従来からある法律の下で有効であった文書、証明書、契約、権利と義務は、本法と抵触しない前提の下で引き続き有効であり、香港特別行政区の承認と保護を受ける。
付属文書一
香港特別行政区行政長官の選出方法
一、行政長官は幅広い代表性をもつ選挙委員会が本法に基づいて選出し、中央人民政府が任命する。
二、選挙委員会委員は八百人とし、下記の各界人士によって構成される。
工商・金融界 二百人
専業界 二百人
労働・社会奉仕・宗教など各界 二百人
立法会議員、区域組織代表、香港地区全国人民代表大会代表、香港地区全国政治協商会議委員の代表 二百人
選挙委員会の任期は一期五年とする。
三、各界別の区分、および各界別の選挙委員を選出できる組織は、香港特別行政区が民主、開放の原則にのっとって選挙法を制定して規定する。
各界別の法定団体は、選挙法で規定された割当人数と選挙方法に基づいて自ら選挙委員会委員を選出する。
選挙委員は個人の資格で投票する。
四、百人を下回らない選挙委員は共同で行政長官候補者を指名することができる。各委員は候補者を一名しか指名できない。
五、選挙委員会は指名のリストに基づいて、一人一票の無記名投票で行政長官候補者を選出する。具体的な選挙方法は選挙法によって規定される。
六、初代行政長官は「全国人民代表大会の香港特別行政区初代政府と第一期立法会の選出方法に関する決定」に基づいて選出される。
七、二〇〇七年以降の各代行政長官の選出方法に改正の必要がある場合、立法会全議員の三分の二の多数で可決し、行政長官が同意し、全国人民代表大会常務委員会に報告して批准を受けなければならない。
付属文書二
香港特別行政区立法会の選出方法と表決手続き
一、立法会の選出方法
(1)、香港特別行政区立法会議員は毎期六十人とし、第一期立法会は「全国人民代表大会の香港特別行政区初代政府と第一期立法会の選出方法に関する決定」に基づいて選出される。第二期、第三期立法会の構成は下記の通りである。
第二期
機能団体の選挙する議員 三十人
選挙委員会の選挙する議員 六人
各区の直接選挙する議員 二十四人
第三期
機能団体の選挙する議員 三十人
各区の直接選挙する議員 三十人
各区の直接選挙する議員 三十人
(2)、第一期立法会を除き、上記の選挙委員会はつまり本法付属文書一で規定された選挙委員会である。上記の各区の直接選挙の選挙区の画定、投票方法、各機能界別と法定団体の区分、議員数の割当、選挙方法および選挙委員会の議員選挙方法は、香港特別行政区が提出し、立法会で可決される選挙法によって規定される。
二、立法会の法案、議案の表決手続き
本法に別に規定のあるものを除き、香港特別行政区立法会は法案と議案の表決に対し、下記の手続きを採用する。
政府提出の法案は、会議出席の全議員の過半数の票を獲得した場合、可決したものとする。
立法会議員個人提出の議案、法案および政府法案に対する改正案は、いずれも機能団体によって選出される議員および各区の直接選挙と選挙委員会によって選出される議員の二部分の会議出席議員のそれぞれ過半数による可決を経なければならない。
三、二〇〇七年以降の立法会の選出方法と表決手続き
二〇〇七年以降の香港特別行政区立法会の選出方法と法案、議案の表決手続きは、本付属文書の規定に対し改正を加える必要のある場合、立法会全議員の三分の二の多数で可決し、行政長官が同意し、全国人民代表大会常務委員会に報告して記録に留めなければならない。
付属文書三
香港特別行政区で実施される全国的な法律
下記の全国的な法律は、一九九七年七月一日から香港特別行政区が地元で公布するか立法化して施行する。
一、「中華人民共和国国都、紀年、国歌、国旗に関する決議」
二、「中華人民共和国国慶日に関する決議」
三、「中央人民政府の中華人民共和国国章を公布する命令」と付録−国章の図案、説明、使用方法
四、「中華人民共和国政府の領海に関する声明」
五、「中華人民共和国国籍法」
六、「中華人民共和国外交特権と免責条例」
「中華人民共和国香港特別行政区基本法」に関する決定
一九九〇年四月四日、第七期全国人民代表大会第三回会議で可決
第七期全国人民代表大会第三回会議は、付属文書一「香港特別行政区行政長官の選出方法」、付属文書二「香港特別行政区立法会の選出方法と表決手続き」、付属文書三「香港特別行政区で実施される全国的な法律」、および香港特別行政区の区旗と区章を含めて、「中華人民共和国香港特別行政区基本法」を可決した。「中華人民共和国憲法」第三一条は「国家は必要のある場合には特別行政区を設立することができる。特別行政区内で実行される制度は全国人民代表大会が具体的状況に基づき、法律によってこれを規定する」と規定している。香港特別行政区基本法は「中華人民共和国憲法」に基づき、香港の具体的状況に照らして制定したものであり、憲法に合致するものである。香港特別行政区が設立後に実行する制度、政策、法律は、香港特別行政区基本法を依拠とする。
「中華人民共和国香港特別行政区基本法」は一九九七年七月一日から実施する。
香港特別行政区設立に関する決定
第七期全国人民代表大会第三回会議は「中華人民共和国憲法」第三十一条と第六十二条第一三項の規定に基づいて、次のように決定する。
一、一九九七年七月一日から香港特別行政区を設立する。
二、香港特別行政区の区域は香港島、九竜半島、および管轄する島嶼と周辺海域を含める。香港特別行政区の行政区域図は国務院が別途公布する。
香港特別行政区初代政府と第一期立法会の選出方法に関する決定
一、香港特別行政区初代政府と第一期立法会は、国家の主権、平穏裏の移行を体現する原則に基づいて選出される。
二、一九九六年内に、全国人民代表大会は香港特別行政区準備委員会を設立する。同委員会は責任をもって香港特別行政区成立の関係事項を準備し、本決定に基づいて初代政府と第一期立法会の具体的な選出方法を規定する。準備委員会は大陸部と五〇%を下回らない香港委員からなり、主任委員と委員は全国人民代表大会常務委員会が委任する。
三、香港特別行政区準備委員会は責任をもって香港特別行政区初代政府推選委員会(以下推選委員会と略す)の設立を準備する。
推選委員会はすべて香港の永住民からなり、広範な代表制をもたなければならず、メンバーは香港地区の全国人民代表大会代表と全国政協委員の代表、香港特別行政区成立以前にかつて香港の行政、立法、諮問機構に奉職し、実践的経験をもつ人士および各階層、各界のなかの代表性をもつ人士を含める。
推選委員会は四百人からなり、比率は次の通り。
工商・金融界 二五%
専業界 二五%
労働・末端・宗教など各界 二五%
もとの政界人士、香港地区の全人代代表と全国政協委員の代表 二五%
四、推薦委員会は地元で協議の方式または協議後の指名選挙で初代行政長官人選を推薦し、中央人民政府に報告して任命する。初代行政長官の任期は通常の任期と同じである。
五、初代香港特別行政区政府は、香港特別行政区行政長官が香港特別行政区基本法の規定に基づき、責任をもって組織を準備する。
六、香港特別行政区第一期立法会は六十人からなり、そのうち各区によって直接選出される議員は二十人、選挙委員会によって選出される議員は十人、機能団体によって選出される議員は三十人である。もとの香港最終期立法局の構成が本決定と香港特別行政区基本法の関係規定に合致し、その議員が中華人民共和国香港特別行政区基本法を擁護し、中華人民共和国香港特別行政区に忠誠を尽くすことを願い、かつ香港特別行政区基本法に規定された条件に合致する者は、香港特別行政区準備委員会の確認を経て、香港特別行政区第一期立法会議員になることができる。
香港特別行政区第一期立法会議院の任期は二年とする。
香港特別行政区基本法起草委員会の全人代常務委香港特別行政区基本法委員会設置に関する提案を承認することに関する決定
第七期全国人民代表大会第三回会議は次のように決定する。
一、香港特別行政区基本法起草委員会の全国人民代表大会常務委員会香港特別行政区基本法委員会設置に関する提案を承認する。
二、『中華人民共和国香港特別行政区基本法』を実施する時に全国人民代表大会常務委員会香港特別行政区基本法委員会を設置する。
香港特別行政区基本法起草委員会の全人代常務委香港特別行政区基本法委員会設置に関する提案
一、名称。全国人民代表大会常務委員会香港特別行政区基本法委員会。
二、隷属関係。全国人民代表大会常務委員会の下に設置される工作委員会である。
三、任務。香港特別行政区基本法第十七条、第十八条、第百五十八条、第百五十九条を実施するなかの問題を検討し、全国人民代表大会常務委員会に意見を具申する。
四、構成。メンバーは十二人、その中に法曹界の人士が含まれ、全国人民代表大会常務委員会が内陸部と香港人士それぞれ六人を任命して構成し、任期は五年。香港委員は外国に居留権をもたない香港特別行政区永住民のなかの中国公民でなければならず、香港特別行政区行政長官、立法会主席、終審裁判所首席裁判官が共同指名し、全国人民代表大会常務委員会に報告して任命する。
(『北京週報』一九九〇年第十八号)