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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第182号)(最悪の形態の児童労働条約)

[場所] 
[年月日] 1999年6月17日
[出典] 国際労働機関
[備考] 第87回総会で1999年6月17日採択。条約発効日:2000年11月19日。日本は2001年6月18日批准
[全文] 

 国際労働機関の総会は、

 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百九十九年六月一日にその第八十七回会期として会合し、

 児童労働に関する基本的文書である千九百七十三年の就業が認められるための最低年齢に関する条約及び勧告を補足するため、国内的及び国際的な行動(国際的な協力及び援助を含む。)の主要な優先事項として、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための新たな文書を採択することの必要性を考慮し、

 最悪の形態の児童労働の効果的な撤廃のためには、無償の基礎教育の重要性並びに児童の家族の必要に注意を向けつつ児童をそのようなすべての業務から引き離し、かつ、児童の回復及び社会への統合を図ることの必要性を考慮に入れた即時のかつ包括的な行動が必要であることを考慮し、

 千九百九十六年のその第八十三回会期において採択した児童労働の撤廃に関する決議を想起し、

 児童労働はその大部分が貧困により生ずるものであること並びにその長期的な解決策は社会の進歩、特に貧困の軽減及び普遍的な教育をもたらす持続的な経済成長にあることを認識し、

 千九百八十九年十一月二十日に国際連合総会が採択した児童の権利に関する条約を想起し、

 千九百九十八年のその第八十六回会期において採択した労働における基本的な原則及び権利に関する国際労働機関の宣言並びにその実施についての措置を想起し、

 最悪の形態の児童労働の中には他の国際文書、特に千九百三十年の強制労働条約及び千九百五十六年の奴隷制度、奴隷取引並びに奴隷制度に類する制度及び慣行の廃止に関する国際連合の補足条約の対象とされているものもあることを想起し、

 その第八十七回会期の議事日程の第四議題である児童労働に関する提案の採択を決定し、

 その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、

 次の条約(引用に際しては、千九百九十九年の最悪の形態の児童労働条約と称することができる。)を千九百九十九年六月十七日に採択する。

第一条

 この条約を批准する加盟国は、緊急に処理を要する事項として、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃を確保するため即時のかつ効果的な措置をとる。

第二条  

この条約の適用上、「児童」とは、十八歳未満のすべての者をいう。

第 三 条

 この条約の適用上、「最悪の形態の児童労働」は、次のものから成る。

 (a) 児童の売買及び取引、負債による奴隷及び農奴、強制労働(武力紛争において使用するための児童の強制的な徴集を含む。)等のあらゆる形態の奴隷制度又はこれに類する慣行

 (b) 売春、ポルノの製造又はわいせつな演技のために児童を使用し、あっせんし、又は提供すること。

 (c) 不正な活動、特に関連する国際条約に定義された薬物の生産及び取引のために児童を使用し、あっせんし、又は提供すること。

 (d) 児童の健康、安全若しくは道徳を害するおそれのある性質を有する業務又はそのようなおそれのある状況下で行われる業務

第四条

1 前条(d)に規定する業務の種類は、関係のある使用者団体及び労働者団体と協議した上で、関連の国際基準、特に千九百九十九年の最悪の形態の児童労働勧告3及び4の規定を考慮し、国内法令又は権限のある機関によって決定される。

2 権限のある機関は、関係のある使用者団体及び労働者団体と協議した上で、1の規定に基づいて決定された種類の業務がどこに存在するかについて特定する。

3 1の規定に基づいて決定された業務の種類の表は、関係のある使用者団体及び労働者団体と協議した上で、定期的に検討され及び必要に応じて改正される。

第五条  

加盟国は、使用者団体及び労働者団体と協議した上で、この条約を実施するための規定の実施を監視する適当な仕組みを設け又は指定する。

第六条

1 加盟国は、最悪の形態の児童労働を優先的に撤廃するための行動計画を作成し及び実施する。

2 1の行動計画は、関係する政府機関、使用者団体及び労働者団体と協議した上で、適当な場合には他の関係のある集団の意見を考慮に入れて、作成され及び実施される。

第七条

1 加盟国は、この条約を実施するための規定の効果的な実施を確保するため、すべての必要な措置(刑罰又は適当な場合には他の制裁を定め及び適用することを含む。)をとる。

2 加盟国は、児童労働の撤廃における教育の重要性を考慮に入れて、定められた期限までに次のことのための効果的な措置をとる。

 (a) 児童が最悪の形態の児童労働に従事することを防止すること。

 (b) 児童を最悪の形態の児童労働から引き離し、かつ、児童を回復させ及び社会に統合するための必要かつ適当な直接の援助を提供すること。

 (c) 最悪の形態の児童労働から引き離されるすべての児童のため、無償の基礎教育及び可能かつ適当な場合には職業訓練の機会を確保すること。

 (d) 特別な危険にさらされている児童を特定し、及びこれに援助を与えること。

 (e) 女子である児童の特別な事情を考慮すること。

3 加盟国は、この条約を実施するための規定の実施について責任を負う権限のある機関を指定する。

第八条

 加盟国は、この条約を実施するに当たり、国際的な協力又は援助(社会的及び経済的な発展、貧困の撲滅計画並びに普遍的な教育のための支援を含む。)の強化を通じて、相互に援助を行うための適当な措置をとる。

第九条

 この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第十条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国で自国による批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。

2 この条約は、二の加盟国による批准が国際労働事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、自国による批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。

第十一条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。

2 この条約を批准した加盟国で、1の十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。

第十二条

1 国際労働事務局長は、加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録についてすべての加盟国に通報する。

2 国際労働事務局長は、二番目の批准の登録について加盟国に通報する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第十三条  

国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第十四条  

国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。


第十五条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、

 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約が自国について効力を生じたときは、第十一条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。

 (b) この条約は、その改正条約が効力を生ずる日に加盟国による批准のための開放を終了する。

2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第十六条  

この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。