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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成十六年法律第百十二号)(国民保護法)

[場所] 
[年月日] 2004年6月18日
[出典] 総務省
[備考] 令和6年4月1日施行
[全文] 

第一章 総則

第一節 通則

(目的)

第一条 この法律は、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、並びに武力攻撃の国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることの重要性に鑑み、これらの事項に関し、国、地方公共団体等の責務、国民の協力、住民の避難に関する措置、避難住民等の救援に関する措置、武力攻撃災害への対処に関する措置その他の必要な事項を定めることにより、武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号。以下「事態対処法」という。)と相まって、国全体として万全の態勢を整備し、もって武力攻撃事態等における国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施することを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において「武力攻撃事態等」、「武力攻撃」、「武力攻撃事態」、「指定行政機関」、「指定地方行政機関」、「指定公共機関」、「対処基本方針」、「対策本部」及び「対策本部長」の意義は、それぞれ事態対処法第一条、第二条第一号から第七号まで(第三号及び第四号を除く。)、第九条第一項、第十条第一項及び第十一条第一項に規定する当該用語の意義による。

2 この法律において「指定地方公共機関」とは、都道府県の区域において電気、ガス、輸送、通信、医療その他の公益的事業を営む法人、地方道路公社(地方道路公社法(昭和四十五年法律第八十二号)第一条の地方道路公社をいう。)その他の公共的施設を管理する法人及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項の地方独立行政法人をいう。)で、あらかじめ当該法人の意見を聴いて当該都道府県の知事が指定するものをいう。

3 この法律において「国民の保護のための措置」とは、対処基本方針が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関若しくは指定地方公共機関が法律の規定に基づいて実施する次に掲げる措置その他の武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護するため、又は武力攻撃が国民生活及び国民経済に影響を及ぼす場合において当該影響が最小となるようにするための措置(第六号に掲げる措置にあっては、対処基本方針が廃止された後これらの者が法律の規定に基づいて実施するものを含む。)をいう。

 一 警報の発令、避難の指示、避難住民等の救援、消防等に関する措置

 二 施設及び設備の応急の復旧に関する措置

 三 保健衛生の確保及び社会秩序の維持に関する措置

 四 運送及び通信に関する措置

 五 国民の生活の安定に関する措置

 六 被害の復旧に関する措置

4 この法律において「武力攻撃災害」とは、武力攻撃により直接又は間接に生ずる人の死亡又は負傷、火事、爆発、放射性物質の放出その他の人的又は物的災害をいう。

(国、地方公共団体等の責務)

第三条 国は、国民の安全を確保するため、武力攻撃事態等に備えて、あらかじめ、国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針を定めるとともに、武力攻撃事態等においては、その組織及び機能のすべてを挙げて自ら国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施し、又は地方公共団体及び指定公共機関が実施する国民の保護のための措置を的確かつ迅速に支援し、並びに国民の保護のための措置に関し国費による適切な措置を講ずること等により、国全体として万全の態勢を整備する責務を有する。

2 地方公共団体は、国があらかじめ定める国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針に基づき、武力攻撃事態等においては、自ら国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施し、及び当該地方公共団体の区域において関係機関が実施する国民の保護のための措置を総合的に推進する責務を有する。

3 指定公共機関及び指定地方公共機関は、武力攻撃事態等においては、この法律で定めるところにより、その業務について、国民の保護のための措置を実施する責務を有する。

4 国、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、国民の保護のための措置を実施するに当たっては、相互に連携協力し、その的確かつ迅速な実施に万全を期さなければならない。

(国民の協力等)

第四条 国民は、この法律の規定により国民の保護のための措置の実施に関し協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努めるものとする。

2 前項の協力は国民の自発的な意思にゆだねられるものであって、その要請に当たって強制にわたることがあってはならない。

3 国及び地方公共団体は、自主防災組織(災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第二条の二第二号の自主防災組織をいう。以下同じ。)及びボランティアにより行われる国民の保護のための措置に資するための自発的な活動に対し、必要な支援を行うよう努めなければならない。

(基本的人権の尊重)

第五条 国民の保護のための措置を実施するに当たっては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならない。

2 前項に規定する国民の保護のための措置を実施する場合において、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該国民の保護のための措置を実施するため必要最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われるものとし、いやしくも国民を差別的に取り扱い、並びに思想及び良心の自由並びに表現の自由を侵すものであってはならない。

(国民の権利利益の迅速な救済)

第六条 国及び地方公共団体は、国民の保護のための措置の実施に伴う損失補償、国民の保護のための措置に係る不服申立て又は訴訟その他の国民の権利利益の救済に係る手続について、できる限り迅速に処理するよう努めなければならない。

(日本赤十字社の自主性の尊重等)

第七条 国及び地方公共団体は、日本赤十字社が実施する国民の保護のための措置については、その特性にかんがみ、その自主性を尊重しなければならない。

2 国及び地方公共団体は、放送事業者(放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第二十六号の放送事業者をいう。以下同じ。)である指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する国民の保護のための措置については、その言論その他表現の自由に特に配慮しなければならない。

(国民に対する情報の提供)

第八条 国及び地方公共団体は、武力攻撃事態等においては、国民の保護のための措置に関し、国民に対し、正確な情報を、適時に、かつ、適切な方法で提供しなければならない。

2 国、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、国民の保護のための措置に関する情報については、新聞、放送、インターネットその他の適切な方法により、迅速に国民に提供するよう努めなければならない。

(留意事項)

第九条 国民の保護のための措置を実施するに当たっては、高齢者、障害者その他特に配慮を要する者の保護について留意しなければならない。

2 国民の保護のための措置を実施するに当たっては、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施を確保しなければならない。

第二節 国民の保護のための措置の実施

(国の実施する国民の保護のための措置)

第十条 国は、対処基本方針及び第三十二条第一項の規定による国民の保護に関する基本指針に基づき、国民の保護のための措置に関し、次に掲げる措置を実施しなければならない。

 一 警報の発令、避難措置の指示その他の住民の避難に関する措置

 二 救援の指示、応援の指示、安否情報の収集及び提供その他の避難住民等の救援に関する措置

 三 武力攻撃災害への対処に関する措置に係る指示、生活関連等施設の安全確保に関する措置、危険物質等に係る武力攻撃災害の発生を防止するための措置、放射性物質等による汚染の拡大を防止するための措置、被災情報の公表その他の武力攻撃災害への対処に関する措置

 四 生活関連物資等の価格の安定等のための措置その他の国民生活の安定に関する措置

 五 武力攻撃災害の復旧に関する措置

2 指定行政機関の長(当該指定行政機関が合議制の機関である場合にあっては、当該指定行政機関。以下同じ。)及び指定地方行政機関の長は、対処基本方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、第三十三条第一項の規定による指定行政機関の国民の保護に関する計画で定めるところにより、前項各号に掲げる措置のうちその所掌事務に係る国民の保護のための措置を実施しなければならない。

(都道府県の実施する国民の保護のための措置)

第十一条 都道府県知事は、対処基本方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、第三十四条第一項の規定による都道府県の国民の保護に関する計画で定めるところにより、当該都道府県の区域に係る次に掲げる国民の保護のための措置を実施しなければならない。

 一 住民に対する避難の指示、避難住民の誘導に関する措置、都道府県の区域を越える住民の避難に関する措置その他の住民の避難に関する措置

 二 救援の実施、安否情報の収集及び提供その他の避難住民等の救援に関する措置

 三 武力攻撃災害の防除及び軽減、緊急通報の発令、退避の指示、警戒区域の設定、保健衛生の確保、被災情報の収集その他の武力攻撃災害への対処に関する措置

 四 生活関連物資等の価格の安定等のための措置その他の国民生活の安定に関する措置

 五 武力攻撃災害の復旧に関する措置

2 都道府県の委員会及び委員は、対処基本方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、前項の都道府県の国民の保護に関する計画で定めるところにより、都道府県知事の所轄の下にその所掌事務に係る国民の保護のための措置を実施しなければならない。

3 都道府県の区域内の公共的団体は、対処基本方針が定められたときは、都道府県の知事その他の執行機関(以下「都道府県知事等」という。)が実施する国民の保護のための措置に協力するよう努めるものとする。

4 第一項及び第二項の場合において、都道府県知事等は、当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長に対し、その所掌事務に係る国民の保護のための措置の実施に関し必要な要請をすることができる。

(他の都道府県知事等に対する応援の要求)

第十二条 都道府県知事等は、当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置を実施するため必要があると認めるときは、他の都道府県の都道府県知事等に対し、応援を求めることができる。この場合において、応援を求められた都道府県知事等は、正当な理由がない限り、応援を拒んではならない。

2前項の応援に従事する者は、国民の保護のための措置の実施については、当該応援を求めた都道府県知事等の指揮の下に行動するものとする。この場合において、警察官にあっては、当該応援を求めた都道府県の公安委員会の管理の下にその職権を行うものとする。

(事務の委託の手続の特例)

第十三条 都道府県は、当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置を実施するため必要があると認めるときは、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十四及び第二百五十二条の十五の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、その事務又は都道府県知事等の権限に属する事務の一部を他の都道府県に委託して、当該他の都道府県の都道府県知事等にこれを管理し、及び執行させることができる。

(都道府県知事による代行)

第十四条 都道府県知事は、武力攻撃災害の発生により市町村がその全部又は大部分の事務を行うことができなくなったときは、当該市町村の長が実施すべき当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置の全部又は一部を当該市町村長に代わって実施しなければならない。

2 都道府県知事は、前項の規定により市町村長の事務の代行を開始し、又は終了したときは、その旨を公示しなければならない。

3 第一項の規定による都道府県知事の代行に関し必要な事項は、政令で定める。

(自衛隊の部隊等の派遣の要請)

第十五条 都道府県知事は、当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置(治安の維持に係るものを除く。次項及び第二十条において同じ。)を円滑に実施するため必要があると認めるときは、防衛大臣に対し、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八条の部隊等(以下「自衛隊の部隊等」という。)の派遣を要請することができる。

2 対策本部長は、前項の規定による要請が行われない場合において、当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置を円滑に実施するため緊急の必要があると認めるときは、防衛大臣に対し、自衛隊の部隊等の派遣を求めることができる。

3 対策本部長は、前項の規定による求めをしたときは、速やかに、その旨を都道府県知事に通知するものとする。

(市町村の実施する国民の保護のための措置)

第十六条 市町村長は、対処基本方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、第三十五条第一項の規定による市町村の国民の保護に関する計画で定めるところにより、当該市町村の区域に係る次に掲げる国民の保護のための措置を実施しなければならない。

 一 警報の伝達、避難実施要領の策定、関係機関の調整その他の住民の避難に関する措置

 二 救援の実施、安否情報の収集及び提供その他の避難住民等の救援に関する措置

 三 退避の指示、警戒区域の設定、消防、廃棄物の処理、被災情報の収集その他の武力攻撃災害への対処に関する措置

 四 水の安定的な供給その他の国民生活の安定に関する措置

 五 武力攻撃災害の復旧に関する措置

2 市町村の委員会及び委員は、対処基本方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、前項の市町村の国民の保護に関する計画で定めるところにより、市町村長の所轄の下にその所掌事務に係る国民の保護のための措置を実施しなければならない。

3 市町村の区域内の公共的団体は、対処基本方針が定められたときは、市町村の長その他の執行機関(以下「市町村長等」という。)が実施する国民の保護のための措置に協力するよう努めるものとする。

4 第一項及び第二項の場合において、市町村長等は、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、都道府県知事等に対し、その所掌事務に係る国民の保護のための措置の実施に関し必要な要請をすることができる。

5 第一項及び第二項の場合において、市町村長等は、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときは、都道府県知事等に対し、第十一条第四項の規定による要請を行うよう求めることができる。

(他の市町村長等に対する応援の要求)

第十七条 市町村長等は、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を実施するため必要があると認めるときは、他の市町村の市町村長等に対し、応援を求めることができる。この場合において、応援を求められた市町村長等は、正当な理由がない限り、応援を拒んではならない。

2 前項の応援に従事する者は、国民の保護のための措置の実施については、当該応援を求めた市町村長等の指揮の下に行動するものとする。

(都道府県知事等に対する応援の要求)

第十八条 市町村長等は、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を実施するため必要があると認めるときは、都道府県知事等に対し、応援を求めることができる。

2 第十二条第一項後段の規定は、前項の場合について準用する。

(事務の委託の手続の特例)

第十九条 市町村は、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を実施するため必要があると認めるときは、地方自治法第二百五十二条の十四及び第二百五十二条の十五の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、その事務又は市町村長等の権限に属する事務の一部を他の地方公共団体に委託して、当該他の地方公共団体の長等(地方公共団体の長その他の執行機関をいう。以下同じ。)にこれを管理し、及び執行させることができる。

(自衛隊の部隊等の派遣の要請の求め等)

第二十条 市町村長は、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を円滑に実施するため特に必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、第十五条第一項の規定による要請を行うよう求めることができる。

2 市町村長は、前項の規定による求めができないときは、その旨及び当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を円滑に実施するため必要があると認める事項を防衛大臣に連絡することができる。この場合において、防衛大臣は、速やかに、その内容を対策本部長に報告しなければならない。

(指定公共期間及び指定地方公共機関の実施する国民の保護のための措置)

第二十一条 指定公共機関及び指定地方公共機関は、対処基本方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、第三十六条第一項の規定による指定公共機関の国民の保護に関する業務計画又は同条第二項の規定による指定地方公共機関の国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、その業務に係る国民の保護のための措置を実施しなければならない。

2 指定公共機関又は指定地方公共機関は、その業務に係る国民の保護のための措置を実施するため特に必要があると認めるときは、指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は地方公共団体の長に対し、労務、施設、設備又は物資の確保について応援を求めることができる。この場合において、応援を求められた指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに地方公共団体の長は、正当な理由がない限り、応援を拒んではならない。

3 指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は地方公共団体の長等は、当該指定行政機関若しくは指定地方行政機関の所掌事務又は当該地方公共団体の区域に係る国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、指定公共機関又は指定地方公共機関に対し、その業務に係る国民の保護のための措置の実施に関し必要な要請をすることができる。

(安全の確保)

第二十二条 国は指定行政機関、地方公共団体及び指定公共機関が実施する国民の保護のための措置について、都道府県は当該都道府県、市町村並びに指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置について、市町村は当該市町村が実施する当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置について、その内容に応じ、安全の確保に配慮しなければならない。

(武力攻撃等の状況等の公表)

第二十三条 対策本部長は、武力攻撃及び武力攻撃災害の状況並びに住民の避難に関する措置、避難住民等の救援に関する措置その他の国民の保護のための措置の実施の状況について、適時に、かつ、適切な方法により、国民に公表しなければならない。

第三節 国民の保護のための措置の実施に係る体制

(対策本部の所掌事務等)

第二十四条 対策本部は、事態対処法第十二条第一号に掲げるもののほか、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 指定行政機関、地方公共団体及び指定公共機関が実施する国民の保護のための措置の総合的な推進に関すること。

 二 前号に掲げるもののほか、この法律の規定によりその権限に属する事務

2 対策本部に、対策本部長の定めるところにより対策本部の事務(国民の保護のための措置に関する事務に限る。)の一部を行う組織として、武力攻撃事態等現地対策本部を置くことができる。この場合においては、地方自治法第百五十六条第四項の規定は、適用しない。

3 内閣総理大臣は、前項の規定により武力攻撃事態等現地対策本部を置いたときは、これを国会に報告しなければならない。

4 内閣総理大臣は、第二項の規定により武力攻撃事態等現地対策本部を置いたときは当該武力攻撃事態等現地対策本部の名称、所管区域並びに設置の場所及び期間を、当該武力攻撃事態等現地対策本部を廃止したときはその旨を、直ちに、公示しなければならない。

5 武力攻撃事態等現地対策本部に、武力攻撃事態等現地対策本部長及び武力攻撃事態等現地対策本部員その他の職員を置く。

6 武力攻撃事態等現地対策本部長は、対策本部長の命を受け、武力攻撃事態等現地対策本部の事務を掌理する。

7 武力攻撃事態等現地対策本部長及び武力攻撃事態等現地対策本部員その他の職員は、対策副本部長(事態対処法第十一条第三項の対策副本部長をいう。)、対策本部員(同項の対策本部員をいう。)その他の職員のうちから、対策本部長が指名する者をもって充てる。

(都道府県対策本部及び市町村対策本部を設置すべき地方公共団体の指定)

第二十五条 内閣総理大臣は、事態対処法第九条第六項(同条第十三項において準用する場合を含む。)の規定により対処基本方針の案又は対処基本方針の変更の案について閣議の決定を求めるときは、併せて第二十七条第一項の規定により都道府県国民保護対策本部を設置すべき都道府県及び市町村国民保護対策本部を設置すべき市町村の指定について、閣議の決定を求めなければならない。

2 内閣総理大臣は、前項の規定により閣議の決定があったときは、総務大臣を経由して、直ちに、その旨を同項の指定を受けた都道府県の知事及び市町村の長に通知するとともに、これを公示しなければならない。

3 内閣総理大臣は、第一項の指定を解除する必要があると認めるときは、当該指定の解除について、閣議の決定を求めなければならない。

4 第二項の規定は、前項の指定の解除について準用する。

(指定の要請)

第二十六条 都道府県知事は、内閣総理大臣に対し、当該都道府県について前条第一項の指定を行うよう要請することができる。

2 市町村長は、当該市町村の属する都道府県の知事を経由して、内閣総理大臣に対し、当該市町村について前条第一項の指定を行うよう要請することができる。

(都道府県対策本部及び市町村対策本部の設置及び所掌事務)

第二十七条 第二十五条第二項の規定による指定の通知を受けた都道府県の知事及び市町村の長は、第三十四条第一項の規定による都道府県の国民の保護に関する計画及び第三十五条第一項の規定による市町村の国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、都道府県国民保護対策本部(以下「都道府県対策本部」という。)及び市町村国民保護対策本部(以下「市町村対策本部」という。)を設置しなければならない。

2 都道府県対策本部は、当該都道府県及び当該都道府県の区域内の市町村並びに指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置の総合的な推進に関する事務をつかさどる。

3 市町村対策本部は、当該市町村が実施する当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置の総合的な推進に関する事務をつかさどる。

(都道府県対策本部及び市町村対策本部の組織)

第二十八条 都道府県対策本部又は市町村対策本部の長は、都道府県国民保護対策本部長(以下「都道府県対策本部長」という。)又は市町村国民保護対策本部長(以下「市町村対策本部長」という。)とし、それぞれ都道府県知事又は市町村長をもって充てる。

2 都道府県対策本部に本部員を置き、次に掲げる者(道府県知事が設置するものにあっては、第四号に掲げる者を除く。)をもって充てる。

 一 副知事

 二 都道府県教育委員会の教育長

 三 警視総監又は道府県警察本部長

 四 特別区の消防長

 五 前各号に掲げる者のほか、都道府県知事が当該都道府県の職員のうちから任命する者

3 都道府県対策本部に副本部長を置き、前項の本部員のうちから、都道府県知事が指名する。

4 市町村対策本部に本部員を置き、次に掲げる者をもって充てる。

 一 副市町村長

 二 市町村教育委員会の教育長

 三 当該市町村の区域を管轄する消防長又はその指名する消防吏員(消防本部を置かない市町村にあっては、消防団長)

 四 前三号に掲げる者のほか、市町村長が当該市町村の職員のうちから任命する者

5 市町村対策本部に副本部長を置き、前項の本部員のうちから、市町村長が指名する。

6 都道府県対策本部長又は市町村対策本部長は、必要があると認めるときは、国の職員その他当該都道府県又は市町村の職員以外の者を都道府県対策本部又は市町村対策本部の会議に出席させることができる。

7 防衛大臣は、都道府県対策本部長の求めがあった場合において、国民の保護のための措置の実施に関し連絡調整を行う必要があると認めるときは、その指定する職員を都道府県対策本部の会議に出席させるものとする。

8 都道府県知事又は市町村長は、第三十四条第一項の規定による都道府県の国民の保護に関する計画又は第三十五条第一項の規定による市町村の国民の保護に関する計画で定めるところにより、都道府県対策本部又は市町村対策本部に、国民の保護のための措置の実施を要する地域にあって当該都道府県対策本部又は市町村対策本部の事務の一部を行う組織として、現地対策本部を置くことができる。

(都道府県対策本部長及び市町村対策本部長の権限)

第二十九条 都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、当該都道府県及び関係市町村並びに関係指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置に関する総合調整を行うことができる。

2  前項の場合において、関係市町村長等又は関係指定公共機関若しくは指定地方公共機関は、当該関係市町村又は関係指定公共機関若しくは指定地方公共機関が実施する当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置に関して都道府県対策本部長が行う総合調整に関し、当該都道府県対策本部長に対して意見を申し出ることができる。

3 都道府県対策本部長は、国民の保護のための措置の実施に関し、指定行政機関又は指定公共機関と緊密な連絡を図る必要があると認めるときは、当該連絡を要する事項を所管する指定地方行政機関の長(当該指定地方行政機関がないときは、当該指定行政機関の長)又は当該指定公共機関に対し、その指名する職員を派遣するよう求めることができる。

4 都道府県対策本部長は、特に必要があると認めるときは、対策本部長に対し、指定行政機関及び指定公共機関が実施する国民の保護のための措置に関する総合調整を行うよう要請することができる。この場合において、対策本部長は、必要があると認めるときは、所要の総合調整を行わなければならない。

5 市町村対策本部長は、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、当該市町村が実施する当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置に関する総合調整を行うことができる。

6 市町村対策本部長は、特に必要があると認めるときは、都道府県対策本部長に対し、都道府県並びに指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する国民の保護のための措置に関する総合調整を行うよう要請することができる。この場合において、都道府県対策本部長は、必要があると認めるときは、所要の総合調整を行わなければならない。

7 市町村対策本部長は、特に必要があると認めるときは、都道府県対策本部長に対し、指定行政機関及び指定公共機関が実施する国民の保護のための措置に関する第四項の規定による要請を行うよう求めることができる。

8 都道府県対策本部長又は市町村対策本部長は、第一項又は第五項の規定による総合調整を行うため必要があると認めるときは、対策本部長又は都道府県対策本部長に対し、それぞれ当該都道府県又は市町村の区域に係る国民の保護のための措置の実施に関し必要な情報の提供を求めることができる。

9 都道府県対策本部長又は市町村対策本部長は、第一項又は第五項の規定による総合調整を行うため必要があると認めるときは、当該総合調整の関係機関に対し、それぞれ当該都道府県又は市町村の区域に係る国民の保護のための措置の実施の状況について報告又は資料の提出を求めることができる。

10 都道府県対策本部長又は市町村対策本部長は、都道府県対策本部長にあっては当該都道府県警察及び当該都道府県の教育委員会に対し、市町村対策本部長にあっては当該市町村の教育委員会に対し、それぞれ当該都道府県又は市町村の区域に係る国民の保護のための措置を実施するため必要な限度において、必要な措置を講ずるよう求めることができる。

11 都道府県知事等又は市町村長等は、都道府県対策本部又は市町村対策本部の設置の有無にかかわらず、この法律で定めるところにより、国民の保護のための措置を実施することができる。

(都道府県対策本部及び市町村対策本部の廃止)

第三十条 第二十五条第四項において準用する同条第二項の規定による指定の解除の通知を受けた都道府県の知事及び市町村の長は、遅滞なく、都道府県対策本部及び市町村対策本部を廃止するものとする。

(条例への委任)

第三十一条 第二十七条から前条までに規定するもののほか、都道府県対策本部又は市町村対策本部に関し必要な事項は、都道府県又は市町村の条例で定める。

第四節 国民の保護に関する基本指針等

(基本指針)

第三十二条 政府は、武力攻撃事態等に備えて、国民の保護のための措置の実施に関し、あらかじめ、国民の保護に関する基本指針(以下「基本指針」という。)を定めるものとする。

2 基本指針に定める事項は、次のとおりとする。

 一 国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針

 二 次条第一項の規定による指定行政機関の国民の保護に関する計画、第三十四条第一項の規定による都道府県の国民の保護に関する計画及び第三十六条第一項の規定による指定公共機関の国民の保護に関する業務計画の作成並びに国民の保護のための措置の実施に当たって考慮すべき武力攻撃事態の想定に関する事項

 三 国民の保護のための措置に関し国が実施する第十条第一項各号に掲げる措置に関する事項

 四 都道府県対策本部又は市町村対策本部を設置すべき地方公共団体の指定の方針に関する事項

 五 第二号に掲げる国民の保護に関する計画及び国民の保護に関する業務計画を作成する際の基準となるべき事項

 六 国民の保護のための措置の実施に当たっての地方公共団体相互の広域的な連携協力その他の関係機関相互の連携協力の確保に関する事項

 七 前各号に掲げるもののほか、国民の保護のための措置の実施に関し必要な事項

3 内閣総理大臣は、基本指針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4 内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本指針を国会に報告するとともに、その旨を公示しなければならない。

5 政府は、基本指針を定めるため必要があると認めるときは、地方公共団体の長等、指定公共機関その他の関係者に対し、資料又は情報の提供、意見の陳述その他必要な協力を求めることができる。

6 前三項の規定は、基本指針の変更について準用する。

(指定行政機関の国民の保護に関する計画)

第三十三条 指定行政機関の長は、基本指針に基づき、第十条第一項各号に掲げる措置のうちその所掌事務に関し、国民の保護に関する計画を作成しなければならない。

2 前項の国民の保護に関する計画に定める事項は、次のとおりとする。

 一 当該指定行政機関が実施する国民の保護のための措置の内容及び実施方法に関する事項

 二 国民の保護のための措置を実施するための体制に関する事項

 三 国民の保護のための措置の実施に関する関係機関との連携に関する事項

 四 前三号に掲げるもののほか、国民の保護のための措置の実施に関し必要な事項

3 指定行政機関の長は、その国民の保護に関する計画の作成に当たっては、それぞれの指定行政機関の国民の保護に関する計画が一体的かつ有機的に作成されるよう、関係指定行政機関の長の意見を聴かなければならない。

4 指定行政機関の長は、その国民の保護に関する計画を作成するときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議しなければならない。

5 指定行政機関の長は、その国民の保護に関する計画を作成したときは、速やかに、これを都道府県知事及び所管する指定公共機関に通知するとともに、公表しなければならない。

6 指定行政機関の長は、その国民の保護に関する計画を作成するため必要があると認めるときは、関係指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長等並びに指定公共機関及び指定地方公共機関並びにその他の関係者に対し、資料又は情報の提供、意見の陳述その他必要な協力を求めることができる。

7 第三項から前項までの規定は、第一項の国民の保護に関する計画の変更について準用する。ただし、第三項及び第四項の規定は、政令で定める軽微な変更については、準用しない。

(都道府県の国民の保護に関する計画)

第三十四条 都道府県知事は、基本指針に基づき、国民の保護に関する計画を作成しなければならない。

2前項の国民の保護に関する計画に定める事項は、次のとおりとする。

 一 当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置の総合的な推進に関する事項

 二 都道府県が実施する第十一条第一項及び第二項に規定する国民の保護のための措置に関する事項

 三 国民の保護のための措置を実施するための訓練並びに物資及び資材の備蓄に関する事項

 四 次条第一項の規定による市町村の国民の保護に関する計画及び第三十六条第二項の規定による指定地方公共機関の国民の保護に関する業務計画を作成する際の基準となるべき事項

 五 国民の保護のための措置を実施するための体制に関する事項

 六 国民の保護のための措置の実施に関する他の地方公共団体その他の関係機関との連携に関する事項

 七 前各号に掲げるもののほか、当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置に関し都道府県知事が必要と認める事項

3 都道府県知事は、その国民の保護に関する計画の作成に当たっては、指定行政機関の国民の保護に関する計画及び他の都道府県の国民の保護に関する計画との整合性の確保を図るよう努めなければならない。

4 都道府県知事は、その国民の保護に関する計画を作成する場合において、他の都道府県と関係がある事項を定めるときは、当該都道府県の知事の意見を聴かなければならない。

5 都道府県知事は、その国民の保護に関する計画を作成するときは、あらかじめ、総務大臣を経由して内閣総理大臣に協議しなければならない。

6 都道府県知事は、その国民の保護に関する計画を作成したときは、速やかに、これを議会に報告し、並びに当該都道府県の区域内の市町村の長及び関係指定地方公共機関に通知するとともに、公表しなければならない。

7 前条第六項の規定は、都道府県知事がその国民の保護に関する計画を作成する場合について準用する。

8 第三項から前項までの規定は、第一項の国民の保護に関する計画の変更について準用する。ただし、第五項の規定は、政令で定める軽微な変更については、準用しない。

(市町村の国民の保護に関する計画)

第三十五条 市町村長は、都道府県の国民の保護に関する計画に基づき、国民の保護に関する計画を作成しなければならない。

2 前項の国民の保護に関する計画に定める事項は、次のとおりとする。

 一 当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置の総合的な推進に関する事項

 二 市町村が実施する第十六条第一項及び第二項に規定する国民の保護のための措置に関する事項

 三 国民の保護のための措置を実施するための訓練並びに物資及び資材の備蓄に関する事項

 四 国民の保護のための措置を実施するための体制に関する事項

 五  国民の保護のための措置の実施に関する他の地方公共団体その他の関係機関との連携に関する事項

六前各号に掲げるもののほか、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置に関し市町村長が必要と認める事項

3 市町村長は、その国民の保護に関する計画の作成に当たっては、指定行政機関の国民の保護に関する計画、都道府県の国民の保護に関する計画及び他の市町村の国民の保護に関する計画との整合性の確保を図るよう努めなければならない。

4市町村長は、その国民の保護に関する計画を作成する場合において、他の市町村と関係がある事項を定めるときは、当該市町村の長の意見を聴かなければならない。

5 市町村長は、その国民の保護に関する計画を作成するときは、あらかじめ、都道府県知事に協議しなければならない。

6 市町村長は、その国民の保護に関する計画を作成したときは、速やかに、これを議会に報告するとともに、公表しなければならない。

7 第三十三条第六項の規定は、市町村長がその国民の保護に関する計画を作成する場合について準用する。

8 第三項から前項までの規定は、第一項の国民の保護に関する計画の変更について準用する。ただし、第五項の規定は、政令で定める軽微な変更については、準用しない。

(指定公共機関及び指定地方公共機関の国民の保護に関する業務計画)

第三十六条 指定公共機関は、基本指針に基づき、その業務に関し、国民の保護に関する業務計画を作成しなければならない。

2 指定地方公共機関は、都道府県の国民の保護に関する計画に基づき、その業務に関し、国民の保護に関する業務計画を作成しなければならない。

3 前二項の国民の保護に関する業務計画に定める事項は、次のとおりとする。

 一 当該指定公共機関又は指定地方公共機関が実施する国民の保護のための措置の内容及び実施方法に関する事項

 二 国民の保護のための措置を実施するための体制に関する事項

 三 国民の保護のための措置の実施に関する関係機関との連携に関する事項

 四 前三号に掲げるもののほか、国民の保護のための措置の実施に関し必要な事項

4 指定公共機関及び指定地方公共機関は、それぞれその国民の保護に関する業務計画を作成したときは、速やかに、指定公共機関にあっては当該指定公共機関を所管する指定行政機関の長を経由して内閣総理大臣に、指定地方公共機関にあっては当該指定地方公共機関を指定した都道府県知事に報告しなければならない。この場合において、内閣総理大臣又は都道府県知事は、当該指定公共機関又は指定地方公共機関に対し、必要な助言をすることができる。

5 指定公共機関及び指定地方公共機関は、それぞれその国民の保護に関する業務計画を作成したときは、速やかに、これを関係都道府県知事及び関係市町村長に通知するとともに、公表しなければならない。

6 第三十三条第六項の規定は、指定公共機関及び指定地方公共機関がそれぞれその国民の保護に関する業務計画を作成する場合について準用する。

7 前三項の規定は、第一項及び第二項の国民の保護に関する業務計画の変更について準用する。ただし、第四項の規定は、政令で定める軽微な変更については、準用しない。

第五節 都道府県国民保護協議会及び市町村国民保護協議会

(都道府県協議会の設置及び所掌事務)

第三十七条 都道府県の区域に係る国民の保護のための措置に関し広く住民の意見を求め、当該都道府県の国民の保護のための措置に関する施策を総合的に推進するため、都道府県に、都道府県国民保護協議会(以下この条及び次条において「都道府県協議会」という。)を置く。

2 都道府県協議会は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 都道府県知事の諮問に応じて当該都道府県の区域に係る国民の保護のための措置に関する重要事項を審議すること。

 二 前号の重要事項に関し、都道府県知事に意見を述べること。

3 都道府県知事は、第三十四条第一項又は第八項の規定により国民の保護に関する計画を作成し、又は変更するときは、あらかじめ、都道府県協議会に諮問しなければならない。ただし、同項の政令で定める軽微な変更については、この限りでない。

4 第三十三条第六項の規定は、都道府県協議会がその所掌事務を実施する場合について準用する。

(都道府県協議会の組織)

第三十八条 都道府県協議会は、会長及び委員をもって組織する。

2 会長は、都道府県知事をもって充てる。

3 会長は、会務を総理する。

4  委員は、次に掲げる者のうちから、都道府県知事が任命する。

一当該都道府県の区域の全部又は一部を管轄する指定地方行政機関の長又はその指名する職員

 二 防衛大臣が指定する陸上自衛隊に所属する者、海上自衛隊に所属する者及び航空自衛隊に所属する者

 三 当該都道府県の副知事

 四 当該都道府県の教育委員会の教育長、警視総監又は当該道府県の道府県警察本部長及び特別区の消防長

 五 当該都道府県の職員(前二号に掲げる者を除く。)

 六 当該都道府県の区域内の市町村の長及び当該都道府県の区域を管轄する消防長

 七 当該都道府県の区域において業務を行う指定公共機関又は指定地方公共機関の役員又は職員

 八 国民の保護のための措置に関し知識又は経験を有する者

5 委員の任期は、二年とし、再任することを妨げない。委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

6 都道府県協議会に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。

7 専門委員は、関係指定地方行政機関の職員、当該都道府県の職員、当該都道府県の区域内の市町村の職員、関係指定公共機関又は指定地方公共機関の職員及び国民の保護のための措置に関し専門的な知識又は経験を有する者のうちから、都道府県知事が任命する。

8 前各項に定めるもののほか、都道府県協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、都道府県の条例で定める。

(市町村協議会の設置及び所掌事務)

第三十九条 市町村の区域に係る国民の保護のための措置に関し広く住民の意見を求め、当該市町村の国民の保護のための措置に関する施策を総合的に推進するため、市町村に、市町村国民保護協議会(以下この条及び次条において「市町村協議会」という。)を置く。

2 市町村協議会は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 市町村長の諮問に応じて当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置に関する重要事項を審議すること。

 二 前号の重要事項に関し、市町村長に意見を述べること。

3 市町村長は、第三十五条第一項又は第八項の規定により国民の保護に関する計画を作成し、又は変更するときは、あらかじめ、市町村協議会に諮問しなければならない。ただし、同項の政令で定める軽微な変更については、この限りでない。

4 第三十三条第六項の規定は、市町村協議会がその所掌事務を実施する場合について準用する。

(市町村協議会の組織)

第四十条 市町村協議会は、会長及び委員をもって組織する。

2 会長は、市町村長をもって充てる。

3 会長は、会務を総理する。

4 委員は、次に掲げる者のうちから、市町村長が任命する。

 一 当該市町村の区域を管轄する指定地方行政機関の職員

 二 自衛隊に所属する者(任命に当たって防衛大臣の同意を得た者に限る。)

 三 当該市町村の属する都道府県の職員

 四 当該市町村の副市町村長

 五 当該市町村の教育委員会の教育長及び当該市町村の区域を管轄する消防長又はその指名する消防吏員(消防本部を置かない市町村にあっては、消防団長)

 六 当該市町村の職員(前二号に掲げる者を除く。)

 七 当該市町村の区域において業務を行う指定公共機関又は指定地方公共機関の役員又は職員

 八 国民の保護のための措置に関し知識又は経験を有する者

5 第三十八条第五項の規定は、前項の委員について準用する。

6 市町村協議会に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。

7 第三十八条第七項の規定は、前項の専門委員について準用する。この場合において、同条第七項中「当該都道府県の職員」とあるのは「当該市町村の属する都道府県の職員」と、「当該都道府県の区域内の市町村の職員」とあるのは「当該市町村の職員」と、「都道府県知事」とあるのは「市町村長」と読み替えるものとする。

8 前各項に定めるもののほか、市町村協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、市町村の条例で定める。

第六節 組織の整備、訓練等

(組織の整備)

第四十一条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長等並びに指定公共機関及び指定地方公共機関(以下「指定行政機関の長等」という。)は、それぞれその国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要な組織を整備するとともに、国民の保護のための措置に関する事務又は業務に従事する職員の配置及び服務の基準を定めなければならない。

(訓練)

第四十二条 指定行政機関の長等は、それぞれその国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、それぞれ又は他の指定行政機関の長等と共同して、国民の保護のための措置についての訓練を行うよう努めなければならない。この場合においては、災害対策基本法第四十八条第一項の防災訓練との有機的な連携が図られるよう配慮するものとする。

2 都道府県公安委員会は、前項の訓練の効果的な実施を図るため特に必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、当該訓練の実施に必要な限度で、区域又は道路の区間を指定して、歩行者又は車両の道路における通行を禁止し、又は制限することができる。

3 地方公共団体の長は、住民の避難に関する訓練を行うときは、当該地方公共団体の住民に対し、当該訓練への参加について協力を要請することができる。

(啓発)

第四十三条 政府は、武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護するために実施する措置の重要性について国民の理解を深めるため、国民に対する啓発に努めなければならない。


第二章 住民の避難に関する措置

第一節 警報の発令等

(警報の発令)

第四十四条 対策本部長は、武力攻撃から国民の生命、身体又は財産を保護するため緊急の必要があると認めるときは、基本指針及び対処基本方針で定めるところにより、警報を発令しなければならない。

2 前項の警報に定める事項は、次のとおりとする。

 一 武力攻撃事態等の現状及び予測

 二 武力攻撃が迫り、又は現に武力攻撃が発生したと認められる地域

 三 前二号に掲げるもののほか、住民及び公私の団体に対し周知させるべき事項

3 前項の規定にかかわらず、第一項の規定により警報を発令する場合において、前項第二号の地域に該当する地域を特定することができないときは、同号の事項を定めることを要しない。

(対策本部長等による警報の通知)

第四十五条 対策本部長は、前条第一項の規定により警報を発令したときは、直ちに、その内容を指定行政機関の長に通知しなければならない。

2 指定行政機関の長は、前項の規定による通知を受けたときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、その内容を管轄する指定地方行政機関の長、所管する指定公共機関その他の関係機関に通知しなければならない。

3 前項に規定するもののほか、総務大臣は、第一項の規定による通知を受けたときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、その内容を都道府県知事に通知しなければならない。

(都道府県知事による警報の通知)

第四十六条 都道府県知事は、前条第三項の規定による通知を受けたときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、その内容を当該都道府県の区域内の市町村の長、当該都道府県の他の執行機関、当該都道府県知事が指定した指定地方公共機関その他の関係機関に通知しなければならない。

(市町村長による警報の伝達等)

第四十七条 市町村長は、前条の規定による通知を受けたときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、その内容を、住民及び関係のある公私の団体に伝達するとともに、当該市町村の他の執行機関その他の関係機関に通知しなければならない。

2 前項の場合において、市町村長は、サイレン、防災行政無線その他の手段を活用し、できる限り速やかに、同項の通知の内容を住民及び関係のある公私の団体に伝達するよう努めなければならない。

3 都道府県警察は、市町村と協力し、第一項の通知の内容の伝達が的確かつ迅速に行われるよう努めなければならない。

(指定行政機関の長その他の者による警報の伝達)

第四十八条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに都道府県知事等は、第四十五条又は第四十六条の規定による通知を受けたときは、それぞれその国民の保護に関する計画で定めるところにより、速やかに、その内容を学校、病院、駅その他の多数の者が利用する施設を管理する者に伝達するよう努めなければならない。

第四十九条 前条に規定するもののほか、外務大臣、国土交通大臣及び海上保安庁長官は、第四十五条第一項の規定による通知を受けたときは、それぞれその国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、その内容を、外務大臣にあっては外国に滞在する邦人に、国土交通大臣にあっては航空機内に在る者に、海上保安庁長官にあっては船舶内に在る者に伝達するよう努めなければならない。

(警報の放送)

第五十条 放送事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関は、第四十五条第二項又は第四十六条の規定による通知を受けたときは、それぞれその国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、速やかに、その内容を放送しなければならない。

(警報の解除)

第五十一条 対策本部長は、警報の必要がなくなったと認めるときは、当該警報を解除するものとする。

2 第四十五条から前条までの規定は、対策本部長が前項の規定により警報を解除する場合について準用する。

第二節 避難の指示等

(避難措置の指示)

第五十二条 対策本部長は、第四十四条第一項の規定により警報を発令した場合において、住民の避難(屋内への避難を含む。以下同じ。)が必要であると認めるときは、基本指針で定めるところにより、総務大臣を経由して、関係都道府県知事(次項第一号又は第二号の地域を管轄する都道府県知事をいう。以下この節において同じ。)に対し、直ちに、所要の住民の避難に関する措置を講ずべきことを指示するものとする。

2 対策本部長は、前項の規定による指示(以下「避難措置の指示」という。)をするときは、次に掲げる事項を示さなければならない。

 一 住民の避難が必要な地域(以下「要避難地域」という。)

 二 住民の避難先となる地域(住民の避難の経路となる地域を含む。以下「避難先地域」という。)

 三 住民の避難に関して関係機関が講ずべき措置の概要

3 対策本部長は、避難措置の指示をする場合において、離島を含む地域を要避難地域として示すときは、当該離島の避難住民(第五十四条第一項の規定による指示を受けた住民をいい、当該指示に係る地域に滞在する者を含む。以下同じ。)の運送に関し特に配慮しなければならない。

4 対策本部長は、避難措置の指示をしたときは、直ちに、その内容を指定行政機関の長に通知しなければならない。

5 指定行政機関の長は、前項の規定による通知を受けたときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、その内容を管轄する指定地方行政機関の長及び所管する指定公共機関に通知しなければならない。

6 前項に規定するもののほか、総務大臣は、第四項の規定による通知を受けたときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、その内容を関係都道府県知事以外の都道府県知事に通知しなければならない。

7 第四十六条の規定は、都道府県知事が避難措置の指示又は前項の規定による通知を受けた場合について準用する。

8 第四十九条の規定は、外務大臣、国土交通大臣及び海上保安庁長官が第四項の規定による通知を受けた場合について準用する。

(避難措置の指示の解除)

第五十三条 対策本部長は、要避難地域の全部又は一部について避難の必要がなくなったと認めるときは、当該要避難地域の全部又は一部について避難措置の指示を解除するものとする。

2 前項の場合において、対策本部長は、総務大臣を経由して、関係都道府県知事に対し、直ちに、避難措置の指示を解除した旨を通知しなければならない。

3 前条第四項から第八項までの規定は、対策本部長が第一項の規定により避難措置の指示を解除する場合について準用する。

(避難の指示)

第五十四条 避難措置の指示を受けたときは、要避難地域を管轄する都道府県知事は、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、要避難地域を管轄する市町村長を経由して、当該要避難地域の住民に対し、直ちに、避難すべき旨を指示しなければならない。この場合において、当該都道府県知事は、地理的条件、交通事情その他の条件に照らし、当該要避難地域に近接する地域の住民をも避難させることが必要であると認めるときは、当該地域を管轄する市町村長を経由して、当該地域の住民に対し、避難すべき旨を指示することができる。

2 都道府県知事は、前項の規定による指示(以下「避難の指示」という。)をするときは、第五十二条第二項各号に掲げる事項のほか、主要な避難の経路、避難のための交通手段その他避難の方法を示さなければならない。

3 都道府県知事は、避難の指示をする場合において、避難先地域に当該都道府県の区域内の指定都市(地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市をいう。以下同じ。)の区域が含まれるときは、あらかじめ、当該指定都市の長の意見を聴くものとする。

4 第四十七条第二項及び第三項の規定は、市町村長が避難の指示を住民に伝達する場合について準用する。

5 都道府県知事は、避難の指示をしたときは、直ちに、その内容を避難先地域を管轄する市町村長(当該都道府県の区域内の市町村の長に限る。)に通知しなければならない。

6 市町村長は、前項の規定による通知を受けたときは、避難住民を受け入れないことについて正当な理由がある場合を除き、避難住民を受け入れるものとする。

7 都道府県知事は、避難の指示をしたときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、その内容を当該都道府県の区域内の市町村の長(第一項及び第五項の市町村長を除く。)、当該都道府県の他の執行機関、関係指定公共機関及び指定地方公共機関並びに当該都道府県の区域内の避難先地域の避難施設(第百四十八条第一項の避難施設をいう。第百五十条を除き、以下同じ。)の管理者に通知しなければならない。

8 都道府県知事は、避難の指示をしたときは、速やかに、その内容を対策本部長に報告しなければならない。

(避難の指示の解除)

第五十五条 都道府県知事は、第五十三条第一項の規定により要避難地域の全部又は一部について避難措置の指示が解除されたときは、当該要避難地域の全部又は一部について避難の指示を解除しなければならない。

2 都道府県知事は、前条第一項後段の規定により避難の指示をした場合において、当該避難の指示に係る要避難地域に近接する地域の全部又は一部について避難の必要がなくなったと認めるときは、当該地域の全部又は一部について避難の指示を解除するものとする。

3 前条第七項及び第八項の規定は、都道府県知事が前二項の規定により避難の指示を解除した場合について準用する。この場合において、同条第七項中「市町村の長(第一項及び第五項の市町村長を除く。)」とあるのは、「市町村の長」と読み替えるものとする。

(避難の指示に係る内閣総理大臣の是正措置)

第五十六条 内閣総理大臣は、避難の指示に関し対策本部長が行った事態対処法第十四条第一項の総合調整に基づく所要の避難の指示が要避難地域を管轄する都道府県知事により行われない場合において、国民の生命、身体又は財産の保護を図るため特に必要があると認めるときは、対策本部長の求めに応じ、当該都道府県知事に対し、当該所要の避難の指示をすべきことを指示することができる。

2 内閣総理大臣は、前項の規定による指示を行ってもなお所要の避難の指示が当該要避難地域を管轄する都道府県知事により行われないとき、又は国民の生命、身体若しくは財産の保護を図るため特に必要があると認める場合であって事態に照らし緊急を要すると認めるときは、対策本部長の求めに応じ、当該都道府県知事に通知した上で、自ら当該所要の避難の指示をすることができる。

3 前二項の規定は、都道府県知事が前条第一項又は第二項の規定により避難の指示を解除する場合について準用する。

(避難の指示等の放送)

第五十七条 第五十条の規定は、放送事業者である指定公共機関又は指定地方公共機関が第五十四条第七項(第五十五条第三項において準用する場合を含む。)の規定による通知を受けた場合について準用する。

(都道府県の区域を越える住民の避難)

第五十八条 避難措置の指示を受けた場合において、都道府県の区域を越えて住民に避難をさせる必要があるときは、関係都道府県知事は、避難住民の受入れについて、あらかじめ協議しなければならない。

2 前項の場合において、避難先地域を管轄する都道府県知事は、避難住民を受け入れないことについて正当な理由がある場合を除き、避難住民を受け入れるものとする。

3 第一項の場合において、避難先地域を管轄する都道府県知事は、当該都道府県の区域において避難住民を受け入れるべき地域(以下この項及び次項において「受入地域」という。)を決定し、直ちに、その旨を当該受入地域を管轄する市町村長に通知しなければならない。

4 第五十四条第三項の規定は、受入地域に指定都市(当該都道府県の区域内の指定都市に限る。)の区域が含まれる場合について準用する。

5 避難先地域を管轄する都道府県知事は、第三項の規定による決定をしたときは、速やかに、その内容を要避難地域を管轄する都道府県知事に通知しなければならない。

6 第五十四条第六項の規定は、市町村長が第三項の規定による通知を受けた場合について準用する。

7 第五十四条第七項の規定は、都道府県知事が第三項の規定による決定をした場合について準用する。この場合において、同条第七項中「市町村の長(第一項及び第五項の市町村長を除く。)」とあるのは、「市町村の長」と読み替えるものとする。

8 第一項の場合において、要避難地域を管轄する都道府県知事は、第五十五条第一項又は第二項の規定により避難の指示を解除したときは、速やかに、その旨を避難先地域を管轄する都道府県知事に通知するものとする。

9 第五十四条第七項の規定は、都道府県知事が前項の規定による通知を受けた場合について準用する。この場合において、同条第七項中「市町村の長(第一項及び第五項の市町村長を除く。)」とあるのは、「市町村の長」と読み替えるものとする。

(関係都道府県知事の連絡及び協力等)

第五十九条 避難措置の指示を受けた場合において、都道府県の区域を越えて住民に避難をさせる必要があるときは、関係都道府県知事は、住民の避難に関する措置に関し、相互に緊密に連絡し、及び協力しなければならない。

2 前項の場合において、総務大臣は、都道府県の区域を越える住民の避難を円滑に行うため必要があると認めるときは、関係都道府県知事に対し、必要な勧告をすることができる。

(都道府県の区域を越える避難住民の受入れのための措置に係る内閣総理大臣の是正措置)

第六十条 内閣総理大臣は、都道府県の区域を越える避難住民の受入れのための措置に関し対策本部長が行った事態対処法第十四条第一項の総合調整に基づく所要の都道府県の区域を越える避難住民の受入れのための措置が避難先地域を管轄する都道府県知事により講じられない場合において、国民の生命、身体又は財産の保護を図るため特に必要があると認めるときは、対策本部長の求めに応じ、当該都道府県知事に対し、当該所要の都道府県の区域を越える避難住民の受入れのための措置を講ずべきことを指示することができる。

2 内閣総理大臣は、前項の規定による指示を行ってもなお所要の都道府県の区域を越える避難住民の受入れのための措置が当該避難先地域を管轄する都道府県知事により講じられないとき、又は国民の生命、身体若しくは財産の保護を図るため特に必要があると認める場合であって事態に照らし緊急を要すると認めるときは、対策本部長の求めに応じ、当該都道府県知事に通知した上で、自ら又は総務大臣を指揮し、当該所要の都道府県の区域を越える避難住民の受入れのための措置を講じ、又は講じさせることができる。

第三節 避難住民の誘導

(避難実施要領)

第六十一条 市町村長は、当該市町村の住民に対し避難の指示があったときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、関係機関の意見を聴いて、直ちに、避難実施要領を定めなければならない。

2 前項の避難実施要領に定める事項は、次のとおりとする。

 一 避難の経路、避難の手段その他避難の方法に関する事項

 二 避難住民の誘導の実施方法、避難住民の誘導に係る関係職員の配置その他避難住民の誘導に関する事項

 三 前二号に掲げるもののほか、避難の実施に関し必要な事項

3 市町村長は、避難実施要領を定めたときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、その内容を、住民及び関係のある公私の団体に伝達するとともに、当該市町村の他の執行機関、当該市町村の区域を管轄する消防長(消防本部を置かない市町村にあっては、消防団長)、警察署長、海上保安部長等(政令で定める管区海上保安本部の事務所の長をいう。以下同じ。)及び政令で定める自衛隊の部隊等の長並びにその他の関係機関に通知しなければならない。

4 第四十七条第二項の規定は、市町村長が前項の規定により避難実施要領の内容を住民及び関係のある公私の団体に伝達する場合について準用する。

(市町村長による避難住民の誘導等)

第六十二条 市町村長は、その避難実施要領で定めるところにより、当該市町村の職員並びに消防長及び消防団長を指揮し、避難住民を誘導しなければならない。

2 消防に関する事務の全部又は一部を処理する地方公共団体の組合(以下「消防組合」という。)の管理者又は長(地方自治法第二百八十七条の三第二項(同法第二百九十一条の十三において準用する場合を含む。)の規定により管理者又は長に代えて理事会を置く消防組合にあっては、理事。以下同じ。)は、当該消防組合を組織する市町村の長が前項の規定により避難住民を誘導するときは、当該市町村の避難実施要領で定めるところにより、当該消防組合の消防長及び消防団長を指揮し、当該市町村と協力して、避難住民を誘導しなければならない。

3 前二項の場合において、消防団は、消防長又は消防署長の所轄の下に行動するものとする。

4 第二項の場合において、当該消防組合を組織する市町村の長は、当該市町村の避難住民の誘導に関し特に必要があると認めるときは、当該消防組合の管理者又は長に対し、当該消防組合の消防長又は消防団長に対して必要な措置を講ずべきことを指示するよう求めることができる。

5 前三項の規定は、消防に関する事務の全部又は一部を他の地方公共団体に委託した市町村の長が避難住民を誘導する場合について準用する。この場合において、第二項中「消防に関する事務の全部又は一部を処理する地方公共団体の組合(以下「消防組合」という。)の管理者又は長(地方自治法第二百八十七条の三第二項(同法第二百九十一条の十三において準用する場合を含む。)の規定により管理者又は長に代えて理事会を置く消防組合にあっては、理事。以下同じ。)」とあり、前項中「消防組合の管理者又は長」とあるのは「委託を受けた地方公共団体の長」と、第二項及び前項中「当該消防組合を組織する市町村」とあるのは「委託した市町村」と、「当該市町村」とあるのは「当該委託した市町村」と、「当該消防組合の消防長」とあるのは「当該委託を受けた地方公共団体の消防長」と読み替えるものとする。

6 市町村長は、避難住民を誘導するときは、必要に応じ、食品の給与、飲料水の供給、医療の提供その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(警察官等による避難住民の誘導等)

第六十三条 前条第一項の場合において、市町村長は、避難住民を誘導するため必要があると認めるときは、警察署長、海上保安部長等又は自衛隊法第七十六条第一項、第七十八条第一項若しくは第八十一条第二項の規定により出動を命ぜられた自衛隊の部隊等のうち国民の保護のための措置の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等若しくは同法第七十七条の四第一項の規定により派遣を命ぜられた自衛隊の部隊等(以下「出動等を命ぜられた自衛隊の部隊等」という。)の長(政令で定める自衛隊の部隊等の長に限る。)に対し、警察官、海上保安官又は自衛官(以下「警察官等」という。)による避難住民の誘導を行うよう要請することができる。この場合において、市町村長は、その旨を当該市町村の属する都道府県の知事に通知するものとする。

2 都道府県知事は、前条第一項の規定により避難住民を誘導する市町村長から求めがあったとき、又は当該市町村長の求めを待ついとまがないと認めるときは、警視総監若しくは道府県警察本部長、管区海上保安本部長又は前項の自衛隊の部隊等の長に対し、警察官等による避難住民の誘導を行うよう要請することができる。

3 都道府県知事は、第一項の規定による要請について、必要な調整を行うことができる。

(市町村長との協議等)

第六十四条 第六十二条第一項の場合において、警察官等が避難住民を誘導しようとするときは、警察署長、海上保安部長等又は出動等を命ぜられた自衛隊の部隊等の長(次項及び第三項において「警察署長等」という。)は、あらかじめ関係市町村長と協議し、避難実施要領に沿って避難住民の誘導が円滑に行われるよう必要な措置を講じなければならない。

2 市町村長は、警察官等が当該市町村の避難住民を誘導しているときは、警察署長等に対し、避難住民の誘導の実施の状況に関し必要な情報の提供を求めることができる。

3 市町村長は、警察官等が当該市町村の避難住民を誘導している場合において、避難住民の生命又は身体の保護のため緊急の必要があると認めるときは、その必要な限度において、警察署長等に対し、避難住民の誘導に関し必要な措置を講ずるよう要請することができる。

(病院等の施設の管理者の責務)

第六十五条 病院、老人福祉施設、保育所その他自ら避難することが困難な者が入院し、その他滞在している施設の管理者は、これらの者が避難を行うときは、当該避難が円滑に行われるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(避難住民を誘導する者による警告、指示等)

第六十六条 避難住民を誘導する警察官等又は第六十二条第一項若しくは第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)の規定により避難住民を誘導する者は、避難に伴う混雑等において危険な事態が発生するおそれがあると認めるときは、当該危険な事態の発生を防止するため、危険を生じさせ、又は危害を受けるおそれのある者その他関係者に対し、必要な警告又は指示をすることができる。

2 前項の場合において、警察官又は海上保安官は、特に必要があると認めるときは、危険な場所への立入りを禁止し、若しくはその場所から退去させ、又は当該危険を生ずるおそれのある道路上の車両その他の物件の除去その他必要な措置を講ずることができる。

3 前項の規定は、警察官及び海上保安官がその場にいない場合に限り、避難住民を誘導している消防吏員又は自衛官の職務の執行について準用する。

(都道府県知事による避難住民の誘導に関する措置)

第六十七条 都道府県知事は、避難住民の誘導を円滑に実施するため、市町村長に対し、的確かつ迅速に必要な支援を行うよう努めなければならない。

2 都道府県知事は、第六十二条第一項の規定に基づく所要の避難住民の誘導が関係市町村長により行われない場合において、住民の生命、身体又は財産の保護を図るため特に必要があると認めるときは、当該市町村長に対し、当該所要の避難住民の誘導を行うべきことを指示することができる。

3 都道府県知事は、前項の規定による指示を行ってもなお所要の避難住民の誘導が当該関係市町村長により行われないときは、当該市町村長に通知した上で、その職員を指揮し、避難住民を誘導させることができる。

4 都道府県知事は、当該都道府県の区域内の市町村の長が当該都道府県の区域を越えて避難住民の誘導を行うとき、又は当該市町村長から要請があったときは、その職員を指揮し、避難住民の誘導を補助させることができる。

5 前条第一項の規定は、前二項の規定により避難住民を誘導し、又は避難住民の誘導を補助する都道府県の職員について準用する。

(避難住民の誘導に関する措置に係る内閣総理大臣の是正措置)

第六十八条 内閣総理大臣は、避難住民の誘導に関する措置に関し対策本部長が行った事態対処法第十四条第一項の総合調整に基づく所要の避難住民の誘導に関する措置が関係都道府県知事により講じられない場合において、国民の生命、身体又は財産の保護を図るため特に必要があると認めるときは、対策本部長の求めに応じ、当該都道府県知事に対し、当該所要の避難住民の誘導に関する措置を講ずべきことを指示することができる。

(避難住民の復帰のための措置)

第六十九条 市町村長は、第五十五条第一項又は第二項の規定により要避難地域又は要避難地域に近接する地域の全部又は一部について避難の指示が解除されたときは、当該地域の避難住民を当該地域へ復帰させるため、当該地域までの誘導その他必要な措置を講じなければならない。

2 第六十二条及び第六十七条(第五項を除く。)の規定は、前項の規定による避難住民の復帰のための措置について準用する。この場合において、第六十二条第一項中「その避難実施要領」とあるのは「別に定める避難住民の復帰に関する要領」と、同条第二項中「避難実施要領」とあるのは「長が別に定める避難住民の復帰に関する要領」と読み替えるものとする。

(避難住民の誘導への協力)

第七十条 避難住民を誘導する警察官等、第六十二条第一項若しくは第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)若しくは第六十七条第三項の規定により避難住民を誘導する者又は同条第四項の規定により避難住民の誘導を補助する者は、避難住民の誘導のため必要があると認めるときは、避難住民その他の者に対し、当該避難住民の誘導に必要な援助について協力を要請することができる。

2 前項の場合において、警察官等、同項の避難住民を誘導する者及び同項の避難住民の誘導を補助する者は、その要請を受けて避難住民の誘導に必要な援助について協力をする者の安全の確保に十分に配慮しなければならない。

3 前二項の規定は、前条第一項の規定による避難住民の復帰のための措置について準用する。

(避難住民の運送の求め)

第七十一条 都道府県知事又は市町村長は、避難住民を誘導するため、運送事業者である指定公共機関又は指定地方公共機関(都道府県知事にあっては当該都道府県知事が指定した指定地方公共機関、市町村長にあっては当該市町村が属する都道府県の知事が指定した指定地方公共機関に限る。第七十三条第二項から第四項まで及び第七十九条第一項において同じ。)に対し、避難住民の運送を求めることができる。

2 前項の指定公共機関及び指定地方公共機関は、同項の規定による求めがあったときは、正当な理由がない限り、その求めに応じなければならない。

(避難住民の運送に係る総合調整のための通知)

第七十二条 都道府県知事又は市町村長は、指定公共機関又は指定地方公共機関が正当な理由がないのに前条第一項の規定による求めに応じないと認めるときは、指定公共機関にあっては対策本部長に対し、指定地方公共機関にあっては都道府県対策本部長に対し、その旨を通知することができる。

(避難住民の運送に係る内閣総理大臣等の是正措置)

第七十三条 内閣総理大臣は、避難住民の運送に関し対策本部長が行った事態対処法第十四条第一項の総合調整に基づく所要の避難住民の運送が関係指定公共機関により行われない場合において、国民の生命、身体又は財産の保護を図るため特に必要があると認めるときは、対策本部長の求めに応じ、当該指定公共機関に対し、当該所要の避難住民の運送を行うべきことを指示することができる。

2 都道府県知事は、避難住民の運送が関係指定地方公共機関により的確かつ迅速に行われない場合において、住民の生命、身体又は財産の保護を図るため特に必要があると認めるときは、当該指定地方公共機関に対し、所要の避難住民の運送を行うべきことを指示することができる。

3 内閣総理大臣及び都道府県知事は、第四十四条第一項の規定により対策本部長が発令した警報の内容に照らし指定公共機関及び指定地方公共機関の安全が確保されていると認められる場合でなければ、前二項の規定による指示を行ってはならない。

4 内閣総理大臣及び都道府県知事は、指定公共機関及び指定地方公共機関が第一項及び第二項の規定による指示に基づき避難住民の運送を行うときは、当該指定公共機関及び指定地方公共機関に対し、その安全の確保のため、武力攻撃の状況その他必要な情報の提供を行わなければならない。


第三章 避難住民等の救援に関する措置

第一節 救援

(救援の指示)

第七十四条 対策本部長は、第五十二条第一項の規定により避難措置の指示をしたときは、基本指針で定めるところにより、避難先地域を管轄する都道府県知事に対し、直ちに、所要の救援に関する措置を講ずべきことを指示するものとする。

2 対策本部長は、武力攻撃災害による被災者が発生した場合において、当該被災者の救援が必要であると認めるときは、当該被災者が発生した地域を管轄する都道府県知事に対し、所要の救援に関する措置を講ずべきことを指示することができる。

(救援の実施)

第七十五条 都道府県知事は、前条の規定による指示(以下この項において「救援の指示」という。)を受けたときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、当該都道府県の区域内に在る避難住民等(避難住民及び武力攻撃災害による被災者をいう。以下同じ。)で救援を必要としているものに対し、避難施設その他の場所において、次に掲げる救援(以下単に「救援」という。)のうち必要と認めるものを行わなければならない。ただし、その事態に照らし緊急を要し、救援の指示を待ついとまがないと認められるときは、当該救援の指示を待たないで、これを行うことができる。

 一 収容施設(応急仮設住宅を含む。第八十二条において同じ。)の供与

 二 炊き出しその他による食品の給与及び飲料水の供給

 三 被服、寝具その他生活必需品の給与又は貸与

 四 医療の提供及び助産

 五 被災者の捜索及び救出

 六 埋葬及び火葬

 七 電話その他の通信設備の提供

 八 前各号に掲げるもののほか、政令で定めるもの

2 救援は、都道府県知事が必要があると認めるときは、前項の規定にかかわらず、金銭を支給してこれを行うことができる。

3 救援の程度、方法及び期間に関し必要な事項は、政令で定める。

(市町村長による救援の実施等)

第七十六条 都道府県知事は、救援を迅速に行うため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、その権限に属する救援の実施に関する事務の一部を市町村長が行うこととすることができる。この場合において、都道府県知事は、当該事務の実施に関し必要があると認めるときは、市町村長に対し、所要の救援に関する措置を講ずべきことを指示することができる。

2 前項の規定により市町村長が行う事務を除くほか、市町村長は、都道府県知事が行う救援を補助するものとする。

(日本赤十字社による措置)

第七十七条 日本赤十字社は、その国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、都道府県知事が行う救援に協力しなければならない。

2 政府は、日本赤十字社に、政府の指揮監督の下に、救援に関し地方公共団体以外の団体又は個人がする協力(第八十条第一項の協力を除く。)についての連絡調整を行わせることができる。

3 都道府県知事は、救援又はその応援の実施に関し必要な事項を日本赤十字社に委託することができる。

(通信設備の設置に関する協力)

第七十八条 電気通信事業者(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第五号の電気通信事業者をいう。第百三十五条第二項及び第百五十六条において同じ。)である指定公共機関及び指定地方公共機関は、それぞれその国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、避難施設における避難住民等のための電話その他の通信設備の臨時の設置について、都道府県知事が行う救援に対して必要な協力をするよう努めなければならない。

(緊急物資の運送)

第七十九条 指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事若しくは市町村長は、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長にあっては運送事業者である指定公共機関に対し、都道府県知事及び市町村長にあっては運送事業者である指定公共機関又は指定地方公共機関に対し、避難住民等の救援に必要な物資及び資材その他国民の保護のための措置の実施に当たって必要な物資及び資材(次項及び第百五十五条第一項において「緊急物資」という。)の運送を求めることができる。

2 第七十一条第二項、第七十二条及び第七十三条の規定は、緊急物資の運送について準用する。

(救援への協力)

第八十条 都道府県知事又は都道府県の職員は、救援を行うため必要があると認めるときは、当該救援を必要とする避難住民等及びその近隣の者に対し、当該救援に必要な援助について協力を要請することができる。

2 前項の場合において、都道府県知事及び都道府県の職員は、その要請を受けて救援に必要な援助について協力をする者の安全の確保に十分に配慮しなければならない。

(物資の売渡しの要請等)

第八十一条 都道府県知事は、救援を行うため必要があると認めるときは、救援の実施に必要な物資(医薬品、食品、寝具その他政令で定める物資に限る。次条第一項及び第八十四条第一項において単に「物資」という。)であって生産、集荷、販売、配給、保管又は輸送を業とする者が取り扱うもの(以下「特定物資」という。)について、その所有者に対し、当該特定物資の売渡しを要請することができる。

2 前項の場合において、特定物資の所有者が正当な理由がないのに同項の規定による要請に応じないときは、都道府県知事は、救援を行うため特に必要があると認めるときに限り、当該特定物資を収用することができる。

3 都道府県知事は、救援を行うに当たり、特定物資を確保するため緊急の必要があると認めるときは、当該特定物資の生産、集荷、販売、配給、保管又は輸送を業とする者に対し、その取り扱う特定物資の保管を命ずることができる。

4 指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長は、都道府県知事の行う救援を支援するため緊急の必要があると認めるとき、又は都道府県知事から要請があったときは、自ら前三項の規定による措置を行うことができる。

(土地等の使用)

第八十二条 都道府県知事は、避難住民等に収容施設を供与し、又は避難住民等に対する医療の提供を行うことを目的とした臨時の施設を開設するため、土地、家屋又は物資(以下この条及び第八十四条第一項において「土地等」という。)を使用する必要があると認めるときは、当該土地等の所有者及び占有者の同意を得て、当該土地等を使用することができる。

2 前項の場合において土地等の所有者若しくは占有者が正当な理由がないのに同意をしないとき、又は土地等の所有者若しくは占有者の所在が不明であるため同項の同意を求めることができないときは、都道府県知事は、避難住民等に収容施設を供与し、又は避難住民等に対する医療の提供を行うことを目的とした臨時の施設を開設するため特に必要があると認めるときに限り、同項の規定にかかわらず、同意を得ないで、当該土地等を使用することができる。

(公用令書の交付)

第八十三条 第八十一条第二項、第三項及び第四項(同条第一項に係る部分を除く。)並びに前条の規定による処分については、都道府県知事並びに指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、政令で定めるところにより、それぞれ公用令書を交付して行わなければならない。ただし、土地の使用に際して公用令書を交付すべき相手方の所在が不明である場合その他の政令で定める場合にあっては、政令で定めるところにより事後に交付すれば足りる。

2 災害対策基本法第八十一条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。

(立入検査等)

第八十四条 都道府県知事又は指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長は、第八十一条第二項若しくは第四項の規定により特定物資を収用し、若しくは同条第三項若しくは第四項の規定により特定物資の保管を命じ、又は第八十二条の規定により土地等を使用するため必要があるときは、その職員に当該土地若しくは家屋又は当該特定物資を保管させる場所若しくは当該特定物資若しくは物資の所在する場所に立ち入り、当該土地、家屋又は特定物資若しくは物資の状況を検査させることができる。

2 都道府県知事又は指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長は、第八十一条第三項又は第四項の規定により特定物資を保管させたときは、当該保管を命じた者に対し必要な報告を求め、又はその職員に当該特定物資を保管させてある場所に立ち入り、当該特定物資の保管の状況を検査させることができる。

3 前二項の規定により都道府県又は指定行政機関若しくは指定地方行政機関の職員が立ち入る場合においては、当該職員は、あらかじめ、その旨をその場所の管理者に通知しなければならない。

4 前項の場合において、その職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係人の請求があるときは、これを提示しなければならない。

(医療の実施の要請等)

第八十五条 都道府県知事は、大規模な武力攻撃災害が発生した場合において、避難住民等に対する医療の提供を行うため必要があると認めるときは、医師、看護師その他の政令で定める医療関係者に対し、その場所及び期間その他の必要な事項を示して、医療を行うよう要請することができる。

2 前項の場合において、同項の医療関係者が正当な理由がないのに同項の規定による要請に応じないときは、都道府県知事は、避難住民等に対する医療を提供するため特に必要があると認めるときに限り、当該医療関係者に対し、医療を行うべきことを指示することができる。この場合においては、同項の事項を書面で示さなければならない。

3 都道府県知事は、前二項の規定により医療関係者に医療を行うよう要請し、又は医療を行うべきことを指示するときは、当該医療関係者の安全の確保に関し十分に配慮し、危険が及ばないよう必要な措置を講じなければならない。

(応援の指示)

第八十六条 内閣総理大臣は、都道府県知事が行う救援について、他の都道府県知事に対し、その応援をすべきことを指示することができる。

(救援の支援)

第八十七条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、都道府県知事から救援を行うに当たっての支援を求められたときは、救援に係る物資の供給その他必要な支援を行うものとする。

(救援に係る内閣総理大臣の是正措置)

第八十八条 内閣総理大臣は、救援に関し対策本部長が行った事態対処法第十四条第一項の総合調整に基づく所要の救援が関係都道府県知事により行われない場合において、国民の生命、身体又は財産の保護を図るため特に必要があると認めるときは、対策本部長の求めに応じ、当該都道府県知事に対し、当該所要の救援を行うべきことを指示することができる。

2 内閣総理大臣は、前項の規定による指示を行ってもなお所要の救援が当該関係都道府県知事により行われないとき、又は国民の生命、身体若しくは財産の保護を図るため特に必要があると認める場合であって事態に照らし緊急を要すると認めるときは、対策本部長の求めに応じ、当該都道府県知事に通知した上で、自ら又は関係大臣を指揮し、当該所要の救援を行い、又は行わせることができる。

(収容施設等に関する特例)

第八十九条 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十七条の規定は、避難住民等を収容し、又は避難住民等に対する医療の提供を行うための施設(第三項において「収容施設等」という。)であって都道府県知事が臨時に開設するもの(次項及び第三項において「臨時の収容施設等」という。)については、適用しない。

2 都道府県知事は、前項の規定にかかわらず、消防法に準拠して、臨時の収容施設等についての消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設の設置及び維持に関する基準を定め、その他当該臨時の収容施設等における災害を防止し、及び公共の安全を確保するため必要な措置を講じなければならない。

3 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第八十五条第一項本文及び第三項から第五項まで並びに景観法(平成十六年法律第百十号)第七十七条第一項、第三項及び第四項の規定は都道府県知事が行う収容施設等の応急の修繕及び臨時の収容施設等の建築について、建築基準法第八十七条の三第一項本文及び第三項から第五項までの規定は都道府県知事が建築物の用途を変更して臨時の収容施設等として使用する場合における当該臨時の収容施設等について、それぞれ準用する。この場合において、同法第八十五条第五項及び第八十七条の三第五項中「被災者」とあるのは、「避難住民等」と読み替えるものとする。

(臨時の医療施設に関する特例)

第九十条 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第四章の規定は、都道府県知事が臨時に開設する避難住民等に対する医療の提供を行うための施設については、適用しない。

(外国医療関係者による医療の提供の許可)

第九十一条 厚生労働大臣は、大規模な武力攻撃災害が発生した場合において、次の各号に掲げる資格を有する者の確保が著しく困難であり、避難住民等に対して十分な医療を提供することができないと認められ、かつ、外国政府、国際機関等から医療の提供の申出があったときは、それぞれ当該各号に定める法律の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、その従事する区域及び業務の内容を指定して、外国において当該各号に掲げる資格に相当する資格を有する者(第三項において「外国医療関係者」という。)が、必要な限度で医療を行うことを許可することができる。

 一 医師 医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第十七条

 二 歯科医師 歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)第十七条

 三 薬剤師 薬剤師法(昭和三十五年法律第百四十六号)第十九条

 四 看護師 保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項

 五 准看護師 保健師助産師看護師法第三十二条

 六 救急救命士 保健師助産師看護師法第三十一条第一項及び第三十二条

2 厚生労働大臣は、前項の規定による許可をしたときは、速やかに、その旨を当該許可に際して指定した区域を管轄する都道府県知事に通知しなければならない。

3 厚生労働大臣は、第一項の規定による許可を受けた外国医療関係者(以下この条において「許可外国医療関係者」という。)による医療を行う必要がなくなったと認めるときは、当該許可を取り消すものとする。

4 厚生労働大臣は、許可外国医療関係者が、業務に関し犯罪又は不正の行為を行ったとき、その他政令で定める事由に該当するときは、当該許可を取り消すことができる。

5 許可外国医療関係者については、外国において医師、歯科医師、薬剤師、看護師、准看護師又は救急救命士に相当する資格を有する者をそれぞれ医師、歯科医師、薬剤師、看護師、准看護師又は救急救命士とみなして、政令で定める法律の規定を適用する。

6 医師法第十八条、歯科医師法第十八条、薬剤師法第二十条又は救急救命士法(平成三年法律第三十六号)第四十八条の規定は、許可外国医療関係者のうち、それぞれ外国において医師、歯科医師、薬剤師又は救急救命士に相当する資格を有する者については、適用しない。

(外国医薬品等の輸入の承認)

第九十二条 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第十四条の三の規定は避難住民等に対する医療の提供のために必要な医薬品(同法第二条第一項の医薬品をいい、体外診断用医薬品(同条第十四項の体外診断用医薬品をいう。以下この項及び第三項において同じ。)を除く。第三項において同じ。)の輸入について、同法第二十三条の二の八の規定は避難住民等に対する医療の提供のために必要な医療機器(同法第二条第四項の医療機器をいう。第三項において同じ。)又は体外診断用医薬品の輸入について、同法第二十三条の二十八の規定は避難住民等に対する医療の提供のために必要な再生医療等製品(同法第二条第九項の再生医療等製品をいう。第三項において同じ。)の輸入について準用する。この場合において、同法第十四条の三第一項中「第十四条の承認の申請者が製造販売をしようとする物が」とあるのは「厚生労働大臣は」と、「として政令で定めるものである場合には、厚生労働大臣は、同条第二項」とあるのは「を輸入しようとする者に対して、第十四条第二項」と、「薬事審議会の意見を聴いて、その品目」とあるのは「その品目」と、同項第二号中「政令で定めるもの」とあるのは「厚生労働大臣が認めるもの」と、同法第二十三条の二の八第一項中「第二十三条の二の五の承認の申請者が製造販売をしようとする物が」とあるのは「厚生労働大臣は」と、「として政令で定めるものである場合には、厚生労働大臣は、同条第二項」とあるのは「を輸入しようとする者に対して、第二十三条の二の五第二項」と、「薬事審議会の意見を聴いて、その品目」とあるのは「その品目」と、同項第二号中「政令で定めるもの」とあるのは「厚生労働大臣が認めるもの」と、同法第二十三条の二十八第一項中「第二十三条の二十五の承認の申請者が製造販売をしようとする物が」とあるのは「厚生労働大臣は」と、「として政令で定めるものである場合には、厚生労働大臣は、同条第二項」とあるのは「を輸入しようとする者に対して、第二十三条の二十五第二項」と、「薬事審議会の意見を聴いて、その品目」とあるのは「その品目」と、同項第二号中「政令で定めるもの」とあるのは「厚生労働大臣が認めるもの」と読み替えるものとする。

2 厚生労働大臣は、前項において準用する医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第十四条の三第一項、第二十三条の二の八第一項又は第二十三条の二十八第一項の承認を与えた場合において、これらの承認に係る品目の輸入の必要がなくなったと認めるとき、又は保健衛生上の危害の発生若しくはその拡大を防止するため必要があると認めるときは、これらの承認を取り消すことができる。

3 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第八十条第八項の規定は、第一項において準用する同法第十四条の三第一項の規定により輸入される医薬品、第一項において準用する同法第二十三条の二の八第一項の規定により輸入される医療機器若しくは体外診断用医薬品又は第一項において準用する同法第二十三条の二十八第一項の規定により輸入される再生医療等製品について準用する。

(海外からの支援の受入れ)

第九十三条 内閣は、著しく大規模な武力攻撃災害が発生し、法律の規定によっては避難住民等の救援に係る海外からの支援を緊急かつ円滑に受け入れることができない場合において、国会が閉会中又は衆議院が解散中であり、かつ、臨時会の召集を決定し、又は参議院の緊急集会を求めてその措置を待ついとまがないときは、当該支援の受入れについて必要な措置を講ずるため、政令を制定することができる。

2 災害対策基本法第百九条第三項から第七項までの規定は、前項の場合について準用する。

第二節 安否情報の収集等

(市町村長及び都道府県知事による安否情報の収集)

第九十四条 市町村長は、政令で定めるところにより、避難住民及び武力攻撃災害により死亡し又は負傷した住民(当該市町村の住民以外の者で当該市町村に在るもの及び当該市町村で死亡したものを含む。)の安否に関する情報(以下「安否情報」という。)を収集し、及び整理するよう努めるとともに、都道府県知事に対し、適時に、当該安否情報を報告しなければならない。

2 都道府県知事は、前項の規定により報告を受けた安否情報を整理するほか、必要に応じて自ら安否情報を収集し、及び整理するよう努めるとともに、総務大臣に対し、遅滞なく、これらの安否情報を報告しなければならない。

3 安否情報を保有する関係機関は、前二項の規定による安否情報の収集に協力するよう努めなければならない。

(総務大臣及び地方公共団体の長による安否情報の提供)

第九十五条 総務大臣及び地方公共団体の長は、政令で定めるところにより、安否情報について照会があったときは、速やかに回答しなければならない。

2 前項の場合において、総務大臣及び地方公共団体の長は、個人の情報の保護に十分留意しなければならない。

(外国人に関する安否情報)

第九十六条 日本赤十字社は、その国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、総務大臣及び地方公共団体の長が保有する安否情報のうち外国人に関するものを収集し、及び整理するよう努めるとともに、外国人に関する安否情報について照会があったときは、速やかに回答しなければならない。

2  総務大臣及び地方公共団体の長は、前項の規定により日本赤十字社が行う外国人に関する安否情報の収集に協力しなければならない。

3前条第二項の規定は、日本赤十字社が保有する外国人に関する安否情報について回答する場合について準用する。


第四章 武力攻撃災害への対処に関する措置

第一節 通則

(武力攻撃災害への対処)

第九十七条 国は、武力攻撃災害を防除し、及び軽減するため、基本指針で定めるところにより、自ら必要な措置を講ずるとともに、地方公共団体と協力して、武力攻撃災害への対処に関する措置(武力攻撃災害を防除し、及び軽減する措置その他武力攻撃災害による被害が最小となるようにするために実施する措置をいう。以下同じ。)を的確かつ迅速に実施しなければならない。

2 地方公共団体は、当該地方公共団体の区域に係る武力攻撃災害を防除し、及び軽減するため、この法律その他法令の規定に基づき、必要な武力攻撃災害への対処に関する措置を講じなければならない。

3 対策本部長は、武力攻撃災害を防除し、及び軽減するため特に必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、所要の武力攻撃災害への対処に関する措置を講ずべきことを指示することができる。

4 都道府県知事は、当該都道府県の区域に係る武力攻撃災害が著しく大規模であること、その性質が特殊であることその他の事情により、当該武力攻撃災害を防除し、及び軽減することが困難であると認めるときは、対策本部長に対し、当該武力攻撃災害を防除し、及び軽減するため、国において必要な措置を講ずるよう要請することができる。

5 内閣総理大臣は、この法律に規定するもののほか、前項の規定による要請があったときは、対策本部長の求めに応じ、同項の武力攻撃災害を防除し、及び軽減するため、対処基本方針に基づき、関係大臣を指揮し、必要な措置を講じさせなければならない。

6 市町村長は、当該市町村の区域に係る武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、住民の生命、身体又は財産を保護するため緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、第四項の規定による要請を行うよう求めることができる。

7 消防は、その施設及び人員を活用して、国民の生命、身体及び財産を武力攻撃による火災から保護するとともに、武力攻撃災害を防除し、及び軽減しなければならない。

(発見者の通報義務等)

第九十八条 武力攻撃災害の兆候を発見した者は、遅滞なく、その旨を市町村長又は消防吏員、警察官若しくは海上保安官(次項及び第四項において「消防吏員等」という。)に通報しなければならない。

2 消防吏員等は、前項の規定による通報を受けたときは、速やかに、その旨を市町村長に通報しなければならない。

3 市町村長は、前二項の規定による通報を受けた場合において、武力攻撃災害が発生するおそれがあり、これに対処する必要があると認めるときは、速やかに、その旨を都道府県知事に通知しなければならない。

4 消防吏員等は、第一項の規定による通報を受けた場合において、その旨を市町村長に通報することができないときは、速やかに、都道府県知事に通報しなければならない。

5 前二項の規定による通知又は通報を受けた都道府県知事は、必要があると認めるときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、速やかに、その旨を関係機関に通知しなければならない。

(緊急通報の発令)

第九十九条 都道府県知事は、武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、当該武力攻撃災害による住民の生命、身体又は財産に対する危険を防止するため緊急の必要があると認めるときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、武力攻撃災害緊急通報(以下「緊急通報」という。)を発令しなければならない。

2 緊急通報の内容は、次のとおりとする。

 一 武力攻撃災害の現状及び予測

 二 前号に掲げるもののほか、住民及び公私の団体に対し周知させるべき事項

(関係機関への緊急通報の通知等)

第百条 都道府県知事は、前条第一項の規定により緊急通報を発令したときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、その内容を当該都道府県の区域内の市町村の長、当該都道府県の他の執行機関並びに関係指定公共機関及び指定地方公共機関に通知しなければならない。

2 第四十七条の規定は、市町村長が前項の規定による通知を受けた場合について準用する。

3 都道府県知事は、前条第一項の規定により緊急通報を発令したときは、速やかに、その内容を対策本部長に報告しなければならない。

(緊急通報の放送)

第百一条 第五十条の規定は、放送事業者である指定公共機関又は指定地方公共機関が前条第一項の規定による通知を受けた場合について準用する。

第二節 応急措置等

(生活関連等施設の安全確保)

第百二条 都道府県知事は、武力攻撃事態等において、武力攻撃災害の発生又はその拡大を防止するため、次の各号のいずれかに該当する施設で政令で定めるもの(以下この条において「生活関連等施設」という。)のうち当該都道府県の区域内に所在するものの安全の確保が特に必要であると認めるときは、関係機関の意見を聴いて、当該生活関連等施設の管理者に対し、当該生活関連等施設の安全の確保のため必要な措置を講ずるよう要請することができる。

 一 国民生活に関連を有する施設で、その安全を確保しなければ国民生活に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められるもの

 二 その安全を確保しなければ周辺の地域に著しい被害を生じさせるおそれがあると認められる施設

2 指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長は、武力攻撃事態等において、武力攻撃災害の発生又はその拡大を防止するため、生活関連等施設の安全の確保が緊急に必要であると認めるときは、関係機関の意見を聴いて、自ら前項の規定による要請を行うことができる。この場合において、当該要請を行ったときは、直ちに、その旨を当該生活関連等施設の所在する都道府県の知事に通知しなければならない。

3 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに地方公共団体の長等は、武力攻撃事態等においては、武力攻撃災害の発生又はその拡大を防止するため、それぞれその国民の保護に関する計画で定めるところにより、生活関連等施設のうちその管理に係るものについて、警備の強化その他当該生活関連等施設の安全の確保に関し必要な措置を講じなければならない。

4 第一項若しくは第二項の規定による要請に応じて必要な措置を講じようとする生活関連等施設の管理者又は前項の規定により必要な措置を講じようとする指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長若しくは地方公共団体の長等は、都道府県警察、消防機関(消防組織法(昭和二十二年法律第二百二十六号)第九条各号に掲げる機関をいう。第百十九条第三項及び第四項において同じ。)その他の行政機関に対し、その管理に係る生活関連等施設の安全の確保のため必要な支援を求めることができる。

5 都道府県公安委員会又は海上保安部長等は、武力攻撃事態等において、武力攻撃災害の発生又はその拡大を防止するため、都道府県知事から要請があったとき、又は事態に照らして特に必要があると認めるときは、生活関連等施設の敷地及びその周辺の区域のうち、当該生活関連等施設の安全を確保するため立入りを制限する必要があるものを、立入制限区域として指定することができる。

6 都道府県公安委員会及び海上保安部長等は、前項の立入制限区域を指定したときは、速やかに、その旨を生活関連等施設の管理者に通知するとともに、その立入制限区域の範囲、立入りを制限する期間その他必要な事項を公示しなければならない。

7 警察官又は海上保安官は、第五項の立入制限区域が指定されたときは、特に生活関連等施設の管理者の許可を得た者以外の者に対し、当該立入制限区域への立入りを制限し、若しくは禁止し、又は当該立入制限区域からの退去を命ずることができる。

8 内閣総理大臣は、武力攻撃事態等において、武力攻撃災害の発生又はその拡大を防止するため、生活関連等施設及びその周辺の地域の安全の確保が特に必要であると認めるときは、対処基本方針に基づき、関係大臣を指揮し、危険の防除、周辺住民の避難その他当該生活関連等施設の安全の確保に関し必要な措置を講じさせることができる。この場合において、国家公安委員会は、関係都道府県公安委員会に対し、第五項の規定による立入制限区域の指定について必要な指示をすることができる。

(危険物質等に係る武力攻撃災害の発生の防止)

第百三条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに地方公共団体の長は、武力攻撃事態等において、引火若しくは爆発又は空気中への飛散若しくは周辺地域への流出により人の生命、身体又は財産に対する危険が生ずるおそれがある物質(生物を含む。)で政令で定めるもの(以下この条及び第百七条において「危険物質等」という。)に係る武力攻撃災害の発生を防止するため必要があると認めるときは、この法律その他法令の規定に基づき、それぞれその国民の保護に関する計画で定めるところにより、当該危険物質等に係る武力攻撃災害の発生を防止するため必要な措置を講じなければならない。

2 前項の場合において、指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は地方公共団体の長は、危険物質等の占有者、所有者、管理者その他の危険物質等を取り扱う者(次項及び第四項において「危険物質等の取扱者」という。)に対し、危険物質等の取扱所の警備の強化を求めることができる。

3 指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は地方公共団体の長は、武力攻撃事態等において、危険物質等に係る武力攻撃災害の発生を防止するため緊急の必要があると認めるときは、政令で定める区分に応じ、危険物質等の取扱者に対し、次に掲げる措置のうち政令で定めるものを講ずべきことを命ずることができる。

 一 危険物質等の取扱所の全部又は一部の使用の一時停止又は制限

 二 危険物質等の製造、引渡し、貯蔵、移動、運搬又は消費の一時禁止又は制限

 三 危険物質等の所在場所の変更又はその廃棄

4 指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は地方公共団体の長は、前項の措置を講ずべきことを命ずるため必要があると認めるときは、危険物質等の取扱者に対し、危険物質等の管理の状況について報告を求めることができる。

5 前各項の規定は、危険物質等に係る武力攻撃災害が発生した場合において、これを防除し、及び軽減するときについて準用する。

(石油コンビナート等に係る武力攻撃災害への対処)

第百四条 武力攻撃に伴って発生した石油コンビナート等特別防災区域(石油コンビナート等災害防止法(昭和五十年法律第八十四号)第二条第二号の石油コンビナート等特別防災区域をいう。)に係る災害への対処に関する同法の規定の適用については、同法第二十三条第一項及び第二十四条中「石油コンビナート等防災計画」とあるのは「石油コンビナート等防災計画(特定事業者が指定公共機関又は指定地方公共機関である場合にあつては、その国民の保護に関する業務計画及び石油コンビナート等防災計画)」と、同法第二十三条第二項中「石油コンビナート等防災計画」とあるのは「当該市町村の国民の保護に関する計画及び石油コンビナート等防災計画」と、「石油コンビナート等防災本部」とあるのは「都道府県知事、石油コンビナート等防災本部」と、同法第二十六条中「石油コンビナート等防災計画」とあるのは「それぞれその国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画及び石油コンビナート等防災計画」と、「石油コンビナート等防災本部」とあるのは「都道府県知事及び石油コンビナート等防災本部」とする。

(武力攻撃原子力災害への対処)

第百五条 原子力防災管理者(原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第九条第一項の原子力防災管理者をいう。第百九十二条第二号において同じ。)は、武力攻撃に伴って、放射性物質又は放射線が原子力事業所(同法第二条第四号の原子力事業所をいう。第七項において同じ。)外(事業所外運搬(同条第二号の事業所外運搬をいう。以下同じ。)の場合にあっては、当該運搬に使用する容器外。第七項において同じ。)へ放出され、又は放出されるおそれがあると認めるときは、政令で定めるところにより、直ちに、その旨を内閣総理大臣及び原子力規制委員会、所在都道府県知事(同法第七条第二項の所在都道府県知事をいう。以下この条において同じ。)、所在市町村長(同項の所在市町村長をいう。第三項及び第四項において同じ。)並びに関係周辺都道府県知事(同条第二項の関係周辺都道府県知事をいう。以下この条において同じ。)に(事業所外運搬に係る事実の発生の場合にあっては、内閣総理大臣、原子力規制委員会及び国土交通大臣並びに当該事実が発生した場所を管轄する都道府県知事及び市町村長に)通報しなければならない。この場合において、所在都道府県知事及び関係周辺都道府県知事は、関係周辺市町村長(同項の関係周辺市町村長をいう。)にその旨を通報するものとする。

2 内閣総理大臣及び原子力規制委員会(事業所外運搬に係る事実の発生の場合にあっては、内閣総理大臣、原子力規制委員会及び国土交通大臣)は、前項前段の規定による通報を受けたときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、その旨を対策本部長に報告するとともに、関係指定公共機関に通知しなければならない。

3 所在都道府県知事、所在市町村長及び関係周辺都道府県知事(事業所外運搬に係る事実の発生の場合にあっては、当該事実が発生した場所を管轄する都道府県知事及び市町村長。次項において同じ。)は、第一項に規定する事実があると認めるときは、それぞれその国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、その旨を内閣総理大臣及び原子力規制委員会(事業所外運搬に係る事実の発生の場合にあっては、内閣総理大臣、原子力規制委員会及び国土交通大臣)に通報しなければならない。

4 第二項の規定は、内閣総理大臣及び原子力規制委員会(事業所外運搬に係る事実の発生の場合にあっては、内閣総理大臣、原子力規制委員会及び国土交通大臣。以下この項において同じ。)が第一項に規定する事実があると認めるとき、又は内閣総理大臣及び原子力規制委員会が前項の規定による通報を受けたときについて準用する。この場合において、内閣総理大臣及び原子力規制委員会は、併せて所在都道府県知事、所在市町村長及び関係周辺都道府県知事並びに原子力事業者(原子力災害対策特別措置法第二条第三号の原子力事業者をいう。第十三項において同じ。)に通知しなければならない。

5 第一項後段の規定は、所在都道府県知事及び関係周辺都道府県知事が前項後段の規定による通知を受けた場合について準用する。この場合において、第一項後段中「通報する」とあるのは、「通知する」と読み替えるものとする。

6 都道府県知事は、第一項前段の規定による通報又は第四項後段の規定による通知を受けたときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、その旨を関係指定地方公共機関に通知しなければならない。

7 対策本部長は、第二項(第四項において準用する場合を含む。)の規定による報告があった場合において、武力攻撃に伴って放射性物質又は放射線が原子力事業所外へ放出されることにより、人の生命、身体又は財産に対する危険が生ずるおそれがあると認めるときは、直ちに、次に掲げる事項の公示をしなければならない。

 一 武力攻撃に伴って原子力事業所外へ放出される放射性物質又は放射線による被害(以下この条において「武力攻撃原子力災害」という。)の発生又はその拡大を防止するための応急の対策(以下この条において「応急対策」という。)を実施すべき区域(以下この条において「応急対策実施区域」という。)

 二 当該武力攻撃原子力災害に係る事態の概要

 三 前二号に掲げるもののほか、応急対策実施区域内の住民及び公私の団体に対し周知させるべき事項

8 第四十五条及び第四十六条の規定は、対策本部長が前項の公示をした場合について準用する。

9 内閣総理大臣は、第七項の公示があったときは、対策本部長の求めに応じ、対処基本方針に基づき、関係大臣を指揮し、応急対策を実施させなければならない。

10 対策本部長は、第七項の公示をしたときは、直ちに、応急対策実施区域を管轄する都道府県知事に対し、住民の避難その他の所要の応急対策を実施すべきことを指示しなければならない。

11 都道府県知事は、第七項の公示があった場合において、武力攻撃原子力災害の発生又はその拡大を防止するため必要があると認めるときは、市町村長に対し、所要の応急対策を実施すべきことを指示することができる。

12 対策本部長は、第七項の場合において、応急対策を実施する必要がなくなったと認めるときは、速やかに、同項の公示を取り消す旨の公示をするものとする。

13 原子力災害対策特別措置法第二十五条の規定は第一項に規定する事実が発生した場合について、同法第二十六条の規定は第七項の公示があった場合について、同法第二十七条の規定は前項の規定による公示があった場合について準用する。この場合において、同法第二十五条第一項中「第十条第一項の政令で定める事象」とあるのは「第一項に規定する事実」と、同項及び同条第二項中「の定めるところにより」とあるのは「で定める例により」と、同条第一項並びに同法第二十六条第一項第一号、第二号及び第五号中「原子力災害」とあるのは「武力攻撃原子力災害」と、同法第二十五条第二項中「事象」とあるのは「事実」と、同法第二十六条(見出しを含む。)中「緊急事態応急対策」とあるのは「応急対策」と、同条第一項第一号中「原子力緊急事態宣言」とあるのは「第七項の公示の内容」と、「避難の勧告又は指示」とあるのは「住民の避難」と、同項第八号中「原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む。)の拡大の防止」とあるのは「武力攻撃原子力災害の発生又はその拡大の防止」と、同条第二項中「原子力緊急事態宣言」とあるのは「第七項の公示」と、「原子力緊急事態解除宣言」とあるのは「前項の規定による公示」と、同項及び同法第二十七条第二項中「指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関」とあるのは「指定行政機関の長等」と、「法令、防災計画、原子力災害対策指針又は原子力事業者防災業務計画の定めるところにより」とあるのは「法令の規定に基づき、それぞれその国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画で定めるところにより(原子力事業者については、原子力事業者防災業務計画で定める例により)」と、同法第二十六条第三項及び第二十七条第三項中「法令、防災計画、原子力災害対策指針又は原子力事業者防災業務計画の定めるところにより」とあるのは「法令若しくは指定行政機関及び地方公共団体の国民の保護に関する計画で定めるところにより、又は原子力事業者防災業務計画で定める例により」と、「地方公共団体の長その他の執行機関」とあるのは「地方公共団体の長等」と、同条の見出し並びに同条第二項及び第三項中「原子力災害事後対策」とあるのは「事後対策」と、同条第一項中「原子力災害事後対策は」とあるのは「事後対策(前項の規定による公示があった時以後において、武力攻撃原子力災害の発生若しくはその拡大の防止又は武力攻撃原子力災害の復旧を図るため実施すべき対策をいう。以下この条において同じ。)は」と、同項第一号及び第三号中「原子力災害事後対策実施区域」とあるのは「応急対策実施区域その他所要の区域」と、同項第四号中「原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む。)の拡大の防止又は原子力災害の復旧」とあるのは「武力攻撃原子力災害の発生若しくはその拡大の防止又は武力攻撃原子力災害の復旧」と読み替えるものとする。

14 原子力防災専門官(原子力災害対策特別措置法第三十条第一項の原子力防災専門官をいう。)は、第一項前段又は第三項の規定による通報があったときは、その状況の把握のため必要な情報の収集、地方公共団体が行う情報の収集に関する助言その他武力攻撃原子力災害の発生又はその拡大の防止の円滑な実施に必要な業務を行うものとする。

15 国及び地方公共団体は、前二項の規定による措置を講ずる者の安全の確保に関し十分に配慮しなければならない。

(原子炉等に係る武力攻撃災害の発生等の防止)

第百六条 原子力規制委員会(事業所外運搬に係る事実の発生の場合にあっては、原子力規制委員会及び国土交通大臣)は、武力攻撃事態等において、核燃料物質(原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第三条第二号の核燃料物質をいう。以下この条において同じ。)若しくは核燃料物質によって汚染された物又は原子炉(同条第四号の原子炉をいう。以下この条において同じ。)に係る武力攻撃災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、当該武力攻撃災害の発生又はその拡大を防止するため緊急の必要があると認めるときは、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第六十四条第一項に規定する者に対し、同条第三項各号に掲げる区分に応じ、同項の製錬施設、加工施設、試験研究用等原子炉施設、発電用原子炉施設、使用済燃料貯蔵施設、再処理施設、廃棄物埋設施設若しくは廃棄物管理施設又は使用施設の使用の停止、核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の所在場所の変更その他当該核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は原子炉に係る武力攻撃災害の発生又はその拡大を防止するため必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

(放射性物質等による汚染の拡大の防止)

第百七条 内閣総理大臣は、武力攻撃に伴って放射性物質、放射線、サリン等(サリン等による人身被害の防止に関する法律(平成七年法律第七十八号)第二条に規定するサリン等をいう。)若しくはこれと同等以上の毒性を有すると認められる化学物質、生物剤(細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律(昭和五十七年法律第六十一号)第二条第一項に規定する生物剤をいう。)若しくは毒素(同条第二項に規定する毒素をいう。)又は危険物質等による汚染(以下単に「汚染」という。)が生じたことにより、人の生命、身体又は財産に対する危険が生ずるおそれがあると認めるときは、対処基本方針に基づき、関係大臣を指揮し、汚染の発生の原因となる物の撤去、汚染の除去その他汚染の拡大を防止するため必要な措置を講じさせなければならない。この場合において、国民の生命、身体又は財産を保護するため緊急の必要があると認めるときは、併せて被災者の救難及び救助に関する措置その他必要な措置を講じさせなければならない。

2 前項前段の場合において、内閣総理大臣は、国民の生命、身体又は財産を保護するため緊急の必要があると認めるときは、関係都道府県知事に対し、汚染の拡大を防止するため必要な協力を要請することができる。

3 前項の場合において、都道府県知事は、汚染の拡大を防止するための措置を迅速に講ずる必要があると認めるときは、関係市町村長、関係消防組合の管理者若しくは長又は警視総監若しくは道府県警察本部長に対し、必要な協力を要請することができる。

第百八条 前条第一項又は第二項の場合において、指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事は、汚染の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、次に掲げる措置を講ずることができる。

 一 汚染され、又は汚染された疑いがある飲食物、衣類、寝具その他の物件の占有者に対し、当該物件の移動を制限し、若しくは禁止し、又は当該物件を廃棄すべきことを命ずること。

 二 汚染され、又は汚染された疑いがある生活の用に供する水の管理者に対し、その使用若しくは給水を制限し、又は禁止すべきことを命ずること。

 三 汚染され、又は汚染された疑いがある死体の移動を制限し、又は禁止すること。

 四 汚染され、又は汚染された疑いがある飲食物、衣類、寝具その他の物件を廃棄すること。

 五 汚染され、又は汚染された疑いがある建物への立入りを制限し、若しくは禁止し、又は当該建物を封鎖すること。

 六 汚染され、又は汚染された疑いがある場所の交通を制限し、又は遮断すること。

2 前項の規定は、前条第三項の規定により関係市町村長、関係消防組合の管理者若しくは長又は警視総監若しくは道府県警察本部長が汚染の拡大を防止するための措置を講ずる場合について準用する。

(土地等への立入り)

第百九条 指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事は、前二条の規定による措置を講ずるため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、その職員に、他人の土地、建物その他の工作物又は船舶若しくは航空機(次項において「土地等」という。)に立ち入らせることができる。

2 前項の規定により他人の土地等に立ち入ろうとする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係人の請求があるときは、これを提示しなければならない。

3 前二項の規定は、第百七条第三項の規定により関係市町村長、関係消防組合の管理者若しくは長又は警視総監若しくは道府県警察本部長が汚染の拡大を防止するための措置を講ずる場合について準用する。

(協力の要請に係る安全の確保)

第百十条 内閣総理大臣及び都道府県知事は、第百七条第二項及び第三項の規定により関係都道府県知事並びに関係市町村長、関係消防組合の管理者又は長及び警視総監又は道府県警察本部長に対し必要な協力を要請するときは、都道府県、市町村及び消防組合の職員(警察官及び消防吏員を含む。)の安全の確保に関し十分に配慮し、危険が及ばないよう必要な措置を講じなければならない。

(市町村長の事前措置等)

第百十一条 市町村長は、武力攻撃災害が発生するおそれがあるときは、武力攻撃災害が発生した場合においてこれを拡大させるおそれがあると認められる設備又は物件の占有者、所有者又は管理者に対し、武力攻撃災害の拡大を防止するため必要な限度において、当該設備又は物件の除去、保安その他必要な措置を講ずべきことを指示することができる。

2 前項の場合において、都道府県知事は、武力攻撃災害の拡大を防止するため緊急の必要があると認めるときは、自ら同項の規定による指示をすることができる。この場合において、当該指示をしたときは、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。

3 警察署長又は海上保安部長等は、市町村長又は都道府県知事から要請があったときは、第一項の規定による指示をすることができる。この場合においては、前項後段の規定を準用する。

(市町村長の退避の指示等)

第百十二条 市町村長は、武力攻撃災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、当該武力攻撃災害から住民の生命、身体若しくは財産を保護し、又は当該武力攻撃災害の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、必要と認める地域の住民に対し、退避(屋内への退避を含む。第四項において同じ。)をすべき旨を指示することができる。

2 前項の規定による指示(以下この条において「退避の指示」という。)をする場合において、必要があると認めるときは、市町村長は、その退避先を指示することができる。

3 市町村長は、退避の指示をしたときは、速やかに、その旨を都道府県知事に通知しなければならない。

4 市町村長は、退避の必要がなくなったときは、直ちに、その旨を公示しなければならない。この場合においては、前項の規定を準用する。

5  第一項の場合において、都道府県知事は、当該武力攻撃災害から住民の生命、身体若しくは財産を保護し、又は当該武力攻撃災害の拡大を防止するため緊急の必要があると認めるときは、必要と認める地域の住民に対し、自ら退避の指示をすることができる。この場合においては、第二項及び前項前段の規定を準用する。

6 都道府県知事は、退避の指示をしたときは、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。

7 第一項の場合において、市町村長若しくは都道府県知事による退避の指示を待ついとまがないと認めるとき、又はこれらの者から要請があったときは、警察官又は海上保安官は、必要と認める地域の住民に対し、退避の指示をすることができる。この場合においては、第二項及び前項の規定を準用する。

8 第一項及び第二項の規定は、市町村長その他第一項に規定する市町村長の職権を行うことができる者が退避の指示をすることができないと認める場合に限り、出動等を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官の職務の執行について準用する。この場合においては、第六項の規定を準用する。

9 第三項及び第四項の規定は、市町村長が前二項の規定による通知を受けた場合について準用する。

(応急公用負担等)

第百十三条 市町村長は、当該市町村の区域に係る武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、武力攻撃災害への対処に関する措置を講ずるため緊急の必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、当該市町村の区域内の他人の土地、建物その他の工作物を一時使用し、又は土石、竹木その他の物件を使用し、若しくは収用することができる。

2 市町村長は、当該市町村の区域に係る武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、武力攻撃災害への対処に関する措置を講ずるため緊急の必要があると認めるときは、武力攻撃災害を受けた現場の工作物又は物件で当該武力攻撃災害への対処に関する措置の実施の支障となるもの(以下この項及び次項において「工作物等」という。)の除去その他必要な措置を講ずることができる。この場合において、工作物等を除去したときは、当該工作物等を保管しなければならない。

3 都道府県知事は、当該都道府県の区域に係る武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、武力攻撃災害への対処に関する措置を講ずるため緊急の必要があると認めるときは、第一項及び前項前段の規定による措置を講ずることができる。この場合において、工作物等を除去したときは、当該工作物等を保管しなければならない。

4 災害対策基本法第六十四条第三項から第六項までの規定は、第二項後段及び前項後段の場合について準用する。この場合において、同条第三項、第四項及び第六項中「市町村長」とあるのは「市町村長又は都道府県知事」と、同項中「市町村に」とあるのは「市町村又は都道府県に」と読み替えるものとする。

5 災害対策基本法第六十四条第七項から第十項までの規定は、第一項及び第二項前段の場合について準用する。この場合において、同条第七項及び第九項中「前条第二項」とあるのは「災害対策基本法第六十三条第二項」と、同条第七項において準用する同法第六十三条第二項中「その委任を受けて同項に規定する市町村長の職権を行なう市町村の職員が現場にいないとき」とあるのは「都道府県知事による同項に規定する措置を待ついとまがないと認めるとき」と、「要求」とあるのは「要請」と、同法第六十四条第八項及び第九項中「災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官」とあるのは「出動等を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官」と、同項及び同条第十項中「警察署長等」とあるのは「警察署長若しくは海上保安部長等」と、同条第九項中「内閣府令で定める」とあるのは「政令で定める」と、同条第十項中「政令で定める管区海上保安本部の事務所の長」とあるのは「海上保安部長等」と読み替えるものとする。

(警戒区域の設定)

第百十四条 市町村長は、武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、当該武力攻撃災害による住民の生命又は身体に対する危険を防止するため特に必要があると認めるときは、警戒区域を設定し、武力攻撃災害への対処に関する措置を講ずる者以外の者に対し、当該警戒区域への立入りを制限し、若しくは禁止し、又は当該警戒区域からの退去を命ずることができる。

2 前項の場合において、都道府県知事は、当該武力攻撃災害による住民の生命又は身体に対する危険を防止するため緊急の必要があると認めるときは、自ら同項に規定する措置を講ずることができる。この場合において、当該措置を講じたときは、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。

3 第一項の場合において、市町村長若しくは都道府県知事による同項に規定する措置を待ついとまがないと認めるとき、又はこれらの者から要請があったときは、警察官又は海上保安官は、同項に規定する措置を講ずることができる。この場合においては、前項後段の規定を準用する。

4 第一項の規定は、市町村長その他同項に規定する市町村長の職権を行うことができる者がその場にいない場合に限り、出動等を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官の職務の執行について準用する。この場合においては、第二項後段の規定を準用する。

(消火、負傷者の搬送、被災者の救助等への協力)

第百十五条 市町村長若しくは消防吏員その他の市町村の職員、都道府県知事若しくは都道府県の職員又は警察官等は、当該市町村又は都道府県の区域に係る武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、消火、負傷者の搬送、被災者の救助その他の武力攻撃災害への対処に関する措置を講ずるため緊急の必要があると認めるときは、当該市町村又は都道府県の区域内の住民に対し、その実施に必要な援助について協力を要請することができる。

2 前項の場合において、市町村長その他同項に規定する者は、その要請を受けて武力攻撃災害への対処に関する措置の実施に必要な援助について協力をする者の安全の確保に十分に配慮しなければならない。

(漂流物等の処理の特例)

第百十六条 武力攻撃災害が発生した場合において、水難救護法(明治三十二年法律第九十五号)第二十九条第一項に規定する漂流物又は沈没品を取り除いたときは、警察署長又は海上保安部長等は、同項の規定にかかわらず、当該物件を保管することができる。

2 水難救護法第二章の規定は、警察署長又は海上保安部長等が前項の規定により漂流物又は沈没品を保管する場合について準用する。

(武力攻撃災害が発生した場合等の都道府県知事等の指示)

第百十七条 都道府県知事は、武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、緊急の必要があると認めるときは、当該都道府県の区域内の市町村の長若しくは消防長又は水防管理者(水防法(昭和二十四年法律第百九十三号)第二条第三項の水防管理者をいう。)に対し、所要の武力攻撃災害の防御に関する措置を講ずべきことを指示することができる。

2 消防庁長官は、人命の救助等のために特に緊急を要し、前項の規定による都道府県知事の指示を待ついとまがないと認めるときは、当該都道府県の区域内の市町村の長に対し、武力攻撃災害を防御するための消防に関する措置を講ずべきことを自ら指示することができる。この場合において、消防庁長官は、当該都道府県知事に対し、速やかに、その旨を通知するものとする。

(武力攻撃災害を防御するための消防に関する消防庁長官の指示)

第百十八条 消防庁長官は、武力攻撃災害を防御するための消防に関する措置が的確かつ迅速に講じられるようにするため特に必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、当該措置について指示することができる。

(消防の応援等に関する消防庁長官等の指示)

第百十九条 消防庁長官は、武力攻撃災害が発生した市町村(武力攻撃災害がまさに発生しようとしている市町村を含む。以下この条において「被災市町村」という。)の消防の応援又は支援(以下この項及び次項において「消防の応援等」という。)に関し、当該被災市町村の属する都道府県の知事から要請があり、かつ、必要があると認めるときは、当該都道府県以外の都道府県の知事に対し、当該被災市町村の消防の応援等のため必要な措置を講ずべきことを指示することができる。

2 消防庁長官は、前項の場合において、武力攻撃災害の規模等に照らし緊急を要し、同項の要請を待ついとまがないと認められるときは、同項の要請を待たないで、緊急に消防の応援等を必要とすると認められる被災市町村のため、当該被災市町村の属する都道府県以外の都道府県の知事に対し、当該被災市町村の消防の応援等のため必要な措置を講ずべきことを指示することができる。この場合において、消防庁長官は、当該被災市町村の属する都道府県の知事に対し、速やかに、その旨を通知するものとする。

3 都道府県知事は、前二項の規定による消防庁長官の指示に応じ必要な措置を講ずる場合において、必要があると認めるときは、当該都道府県の区域内の市町村の長に対し、消防機関の職員の応援出動等の措置を講ずべきことを指示することができる。

4 消防庁長官は、第一項又は第二項の場合において、人命の救助等のために特に緊急を要し、かつ、広域的に消防機関の職員の応援出動等の措置を的確かつ迅速に講ずる必要があると認められるときは、緊急に当該応援出動等の措置を必要とすると認められる被災市町村のため、当該被災市町村以外の市町村の長に対し、当該応援出動等の措置を講ずべきことを自ら指示することができる。この場合において、消防庁長官は、第一項の場合にあっては当該応援出動等の措置を講ずべきことを指示した市町村の属する都道府県の知事に対し、第二項の場合にあっては当該都道府県の知事及び当該被災市町村の属する都道府県の知事に対し、速やかに、その旨を通知するものとする。

(消防等に関する安全の確保)

第百二十条 消防庁長官及び都道府県知事は、前三条の規定による指示をするときは、これらの規定に規定する措置を講ずるため出動する職員の安全の確保に関し十分に配慮し、危険が及ばないよう必要な措置を講じなければならない。

(感染症等の指定等の特例)

第百二十一条 厚生労働大臣は、武力攻撃事態等において、武力攻撃に伴って既に知られている感染性の疾病(一類感染症(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第六条第二項の一類感染症をいう。)を除く。)が発生し、又は発生するおそれがある場合において、当該疾病について、同法第三章から第七章までの規定の全部又は一部を準用しなければ国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認めるときは、同条第八項の規定にかかわらず、当該疾病を同項の指定感染症として指定することができる。この場合における同法第四十四条の九の規定の適用については、同条第一項及び第二項中「政令で定める期間」とあるのは「厚生労働大臣の定める期間」と、同条第一項中「政令で定めるところにより」とあるのは「厚生労働大臣の定めるところにより」と、同条第二項中「前項の政令で定められた期間」とあるのは「前項の厚生労働大臣の定める期間」と、「当該政令で定められた疾病」とあるのは「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第百二十一条第一項の規定により厚生労働大臣が定めた疾病」と、「同項の政令により」とあるのは「前項の厚生労働大臣の定めるところにより」とする。

2 厚生労働大臣は、武力攻撃事態等において、武力攻撃に伴って検疫法(昭和二十六年法律第二百一号)第二条の検疫感染症以外の感染性の疾病(同法第三十四条の二第一項の新感染症を除く。)が発生し、又は発生するおそれがある場合において、当該疾病について、検疫を行わなければその病原体が国内に侵入し国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認めるときは、同法第三十四条の規定にかかわらず、当該疾病を感染症の種類として指定し、同法第二条の二、第二章及び第四章(第三十四条の二から第四十条までを除く。)の規定のうち厚生労働大臣が定めるものを適用することができる。この場合においては、同法第十六条第三項の規定にかかわらず、厚生労働大臣は、当該感染症の潜伏期間を考慮して、同条第一項の停留の期間を定めることができる。

3 厚生労働大臣は、武力攻撃事態等において、武力攻撃に伴って感染性の疾病(予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第二条第二項のA類疾病(以下この項において「A類疾病」という。)及び同条第三項のB類疾病を除く。)が発生し、又は発生するおそれがある場合において、その発生及びまん延を予防するため特に予防接種を行う必要があると認めるときは、同条第二項第十二号及び第十三号の規定にかかわらず、当該疾病をA類疾病として指定することができる。

(埋葬及び火葬の特例)

第百二十二条 厚生労働大臣は、大規模な武力攻撃災害の発生により埋葬又は火葬を円滑に行うことが困難となった場合において、公衆衛生上の危害の発生を防止するため緊急の必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、厚生労働大臣の定める期間に限り、墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号)第五条及び第十四条に規定する手続の特例を定めることができる。

(保健衛生の確保への協力)

第百二十三条 地方公共団体の長又はその職員は、武力攻撃災害の発生により当該地方公共団体の区域内における住民の健康の保持又は環境衛生の確保に関する措置を講ずるため緊急の必要があると認めるときは、当該地方公共団体の区域内の住民に対し、その実施に必要な援助について協力を要請することができる。

2 前項の場合において、地方公共団体の長及びその職員は、その要請を受けて住民の健康の保持又は環境衛生の確保に関する措置の実施に必要な援助について協力をする者の安全の確保に十分に配慮しなければならない。

(廃棄物処理の特例)

第百二十四条 環境大臣は、大規模な武力攻撃災害の発生による生活環境の悪化を防止することが特に必要であると認めるときは、期間を限り、廃棄物(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。次項及び第三項において「廃棄物処理法」という。)第二条第一項の廃棄物をいう。以下この条において同じ。)の処理を迅速に行わなければならない地域を特例地域として指定することができる。

2 環境大臣は、前項の特例地域(以下この条において単に「特例地域」という。)を指定したときは、特例地域において適用する廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準並びに廃棄物の収集、運搬又は処分を市町村以外の者に委託する場合の基準を定めるものとする。この場合において、これらの基準(以下この条において「特例基準」という。)は、廃棄物処理法第六条の二第二項及び第三項、第十二条第一項並びに第十二条の二第一項に規定する基準とみなす。

3 地方公共団体の長は、特例地域においては、廃棄物処理法第七条第一項本文若しくは第六項本文、第十四条第一項本文若しくは第六項本文又は第十四条の四第一項本文若しくは第六項本文の規定にかかわらず、これらの規定による許可を受けていない者に、特例基準で定めるところにより、廃棄物の収集、運搬又は処分を業として行わせることができる。

4 前項の場合において、地方公共団体の長は、同項の規定により廃棄物の収集、運搬又は処分を業として行う者により特例基準に適合しない廃棄物の収集、運搬又は処分が行われたときは、その者に対し、期限を定めて、当該廃棄物の収集、運搬又は処分の方法の変更その他必要な措置を講ずべきことを指示することができる。

5 環境大臣は、第一項の規定により特例地域を指定し、又は第二項の規定により特例基準を定めたときは、その旨を公示しなければならない。

(文化財保護の特例)

第百二十五条 文化庁長官は、武力攻撃災害による重要文化財等(重要文化財(文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第二十七条第一項の重要文化財をいう。)、重要有形民俗文化財(同法第七十八条第一項の重要有形民俗文化財をいう。)又は史跡名勝天然記念物(同法第百九条第一項の史跡名勝天然記念物をいう。)をいう。以下この項及び第三項において同じ。)の滅失、き損その他の被害を防止するため特に必要があると認めるときは、当該重要文化財等の所有者、管理責任者(同法第三十一条第二項(同法第八十条において準用する場合を含む。)及び同法第百十九条第二項の管理責任者をいう。)、管理団体(同法第三十二条の二第五項(同法第八十条において準用する場合を含む。)及び同法第百十五条第一項の管理団体をいう。)又は同法第百七十二条第一項の規定により重要文化財等を管理する地方公共団体その他の法人(以下この条において「所有者等」という。)に対し、当該重要文化財等について、所在の場所又は管理の方法の変更その他その保護に関し必要な措置を講ずべきことを命じ、又は勧告することができる。

2 文化財保護法第三十六条第二項及び第三項並びに第百八十八条第三項の規定は、前項の場合について準用する。

3 第一項の規定による命令又は勧告に従って必要な措置を講じようとする重要文化財等の所有者等は、文化庁長官に対し、当該重要文化財等の保護のため必要な支援を求めることができる。

4 第一項の場合において、国宝(文化財保護法第二十七条第二項の国宝をいう。以下この条及び第百九十二条第三号において同じ。)若しくは特別史跡名勝天然記念物(同法第百九条第二項の特別史跡名勝天然記念物をいう。以下この条及び第百九十二条第三号において同じ。)の所有者等が第一項の規定による命令に従わないとき、又は所有者等に国宝若しくは特別史跡名勝天然記念物の滅失、き損その他の被害を防止するための措置を講じさせることが適当でないと認めるときは、文化庁長官は、当該国宝又は特別史跡名勝天然記念物について、自ら滅失、き損その他の被害を防止するため必要な措置を講ずることができる。

5 文化財保護法第三十八条第二項、第三十九条第一項及び第二項並びに第百八十六条第一項の規定は、前項の場合について準用する。

6 文化財保護法第三十九条第一項及び第二項の規定は、都道府県の教育委員会(地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)第二十三条第一項の条例の定めるところによりその長が文化財の保護に関する事務を管理し、及び執行することとされた都道府県にあっては、当該都道府県の知事。次項において同じ。)が前項において準用する文化財保護法第百八十六条第一項の規定による委託に基づいて第四項の措置を講ずる場合について準用する。

7 国宝又は特別史跡名勝天然記念物の所有者等は、正当な理由がなくて、第四項の規定に基づいて文化庁長官が講ずる措置又は第五項において準用する文化財保護法第百八十六条第一項の規定による委託に基づいて都道府県の教育委員会が講ずる措置を拒み、妨げ、又は忌避してはならない。

第三節 被災情報の収集等

(被災情報の収集)

第百二十六条 指定行政機関の長等は、それぞれその国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、武力攻撃災害による被害の状況に関する情報(以下「被災情報」という。)の収集に努めなければならない。

2 被災情報を保有する関係機関は、前項の規定による被災情報の収集に協力するよう努めなければならない。

(被災情報の報告)

第百二十七条 市町村長及び指定地方公共機関は、前条第一項の規定により収集した被災情報を、速やかに、都道府県知事に報告しなければならない。

2 都道府県知事は、前条第一項の規定により収集し、又は前項の規定により報告を受けた被災情報を、速やかに、総務大臣に報告しなければならない。

3 総務大臣は、前項の規定により報告を受けた被災情報を、速やかに、対策本部長に報告しなければならない。

4 指定地方行政機関の長及び指定公共機関は、前条第一項の規定により収集した被災情報を、速やかに、当該指定地方行政機関を管轄し、又は当該指定公共機関を所管する指定行政機関の長に報告しなければならない。

5 第三項に規定するもののほか、指定行政機関の長は、前条第一項の規定により収集し、又は前項の規定により報告を受けた被災情報を、速やかに、対策本部長に報告しなければならない。

(被災情報の公表等)

第百二十八条 対策本部長は、前条第三項及び第五項の規定により報告を受けた被災情報を取りまとめ、適時に、当該被災情報を内閣総理大臣に報告するとともに、その内容を国民に公表しなければならない。

2 内閣総理大臣は、前項の規定により報告を受けたときは、速やかに、その内容を国会に報告しなければならない。


第五章 国民生活の安定に関する措置等

第一節 国民生活の安定に関する措置

(生活関連物資等の価格の安定等)

第百二十九条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに地方公共団体の長は、武力攻撃事態等において、国民生活との関連性が高い物資若しくは役務又は国民経済上重要な物資若しくは役務の価格の高騰又は供給不足が生じ、又は生ずるおそれがあるときは、それぞれその国民の保護に関する計画で定めるところにより、生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律(昭和四十八年法律第四十八号)、国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)、物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)その他法令の規定に基づく措置その他適切な措置を講じなければならない。

(金銭債務の支払猶予等)

第百三十条 内閣は、著しく大規模な武力攻撃災害が発生し、国の経済の秩序を維持し及び公共の福祉を確保するため緊急の必要がある場合において、国会が閉会中又は衆議院が解散中であり、かつ、臨時会の召集を決定し、又は参議院の緊急集会を求めてその措置を待ついとまがないときは、金銭債務の支払(賃金その他の労働関係に基づく金銭債務の支払及びその支払のためにする銀行その他の金融機関の預金等の支払を除く。)の延期及び権利の保存期間の延長について必要な措置を講ずるため、政令を制定することができる。

2 災害対策基本法第百九条第三項から第七項までの規定は、前項の場合について準用する。

(特定武力攻撃災害の被害者の権利利益の保全等)

第百三十一条 特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律(平成八年法律第八十五号)第二条から第八条までの規定は、著しく異常かつ激甚な武力攻撃災害が発生した場合について準用する。この場合において、同法第二条の見出し及び第八条中「特定非常災害」とあるのは「特定武力攻撃災害」と、同法第二条第一項中「当該非常災害」とあるのは「当該武力攻撃災害」と、「特定非常災害と」とあるのは「特定武力攻撃災害と」と、「特定非常災害が」とあるのは「特定武力攻撃災害が」と、同項、同法第三条第一項、第四条第一項、第五条第一項及び第五項、第六条並びに第七条中「特定非常災害発生日」とあるのは「特定武力攻撃災害発生日」と、同法第二条第二項、第四条第一項及び第二項、第五条第一項、第六条並びに第七条中「特定非常災害に」とあるのは「特定武力攻撃災害に」と、同法第三条第一項及び第三項中「特定非常災害の」とあるのは「特定武力攻撃災害の」と読み替えるものとする。

(武力攻撃災害に関する融資)

第百三十二条 政府関係金融機関は、大規模な武力攻撃災害が発生したときは、当該大規模な武力攻撃災害に関する特別な金融を行い、償還期限又は据置期間の延長、旧債の借換え、必要がある場合における利率の低減その他実情に応じ適切な措置を講ずるよう努めるものとする。

(通貨及び金融の安定)

第百三十三条 日本銀行は、武力攻撃事態等において、その国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、銀行券の発行並びに通貨及び金融の調節を行うとともに、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を通じ、信用秩序の維持に資するため必要な措置を講じなければならない。

第二節 生活基盤等の確保に関する措置

(電気及びガス並びに水の安定的な供給)

第百三十四条 電気事業者(電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第十七号の電気事業者をいう。)及びガス事業者(ガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)第二条第十二項のガス事業者をいう。)である指定公共機関及び指定地方公共機関は、武力攻撃事態等において、それぞれその国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、電気及びガスを安定的かつ適切に供給するため必要な措置を講じなければならない。

2 水道事業者(水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第五項の水道事業者をいう。)、水道用水供給事業者(同項の水道用水供給事業者をいう。)及び工業用水道事業者(工業用水道事業法(昭和三十三年法律第八十四号)第二条第五項の工業用水道事業者をいう。)である地方公共団体及び指定地方公共機関は、武力攻撃事態等において、それぞれその国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、水を安定的かつ適切に供給するため必要な措置を講じなければならない。

(運送、通信及び郵便等の確保)

第百三十五条 運送事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関は、武力攻撃事態等において、それぞれその国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、旅客及び貨物の運送を確保するため必要な措置を講じなければならない。

2 電気通信事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関は、武力攻撃事態等において、それぞれその国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、通信を確保し、及び国民の保護のための措置の実施に必要な通信を優先的に取り扱うため必要な措置を講じなければならない。

3 郵便事業を営む者及び一般信書便事業者(民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項の一般信書便事業者をいう。)である指定公共機関及び指定地方公共機関は、武力攻撃事態等において、それぞれその国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、郵便及び信書便を確保するため必要な措置を講じなければならない。

(医療の確保)

第百三十六条 病院その他の医療機関である指定公共機関及び指定地方公共機関は、武力攻撃事態等において、それぞれその国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、医療を確保するため必要な措置を講じなければならない。

(公共的施設の適切な管理)

第百三十七条 河川管理施設(河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第三条第二項の河川管理施設をいう。以下この条において同じ。)、道路(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第二条第一項の道路及び道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第二条第八項の自動車道をいう。以下この条において同じ。)、港湾(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)の規定による港湾をいう。以下この条において同じ。)及び空港(空港法(昭和三十一年法律第八十号)第四条第一項各号に掲げる空港及び同法第五条第一項に規定する地方管理空港をいう。以下この条において同じ。)の管理者である指定公共機関及び指定地方公共機関は、武力攻撃事態等において、それぞれその国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、河川管理施設、道路、港湾及び空港を適切に管理しなければならない。

(武力攻撃災害に関する指導、助言等)

第百三十八条 災害に関する研究を業務として行う指定公共機関は、その国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、国、地方公共団体及び他の指定公共機関に対し、武力攻撃災害の防除、軽減及び復旧に関する指導、助言その他の援助を行うよう努めなければならない。

第三節 応急の復旧

(応急の復旧)

第百三十九条 指定行政機関の長等は、その管理する施設及び設備について武力攻撃災害による被害が発生したときは、それぞれその国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、当該施設及び設備について、応急の復旧のため必要な措置を講じなければならない。

(応急の復旧に関する支援の求め)

第百四十条 前条の場合において、都道府県知事等又は指定公共機関は指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長に対し、市町村長等又は指定地方公共機関は都道府県知事等に対し、応急の復旧のため必要な措置に関し支援を求めることができる。


第六章 復旧、備蓄その他の措置

(武力攻撃災害の復旧)

第百四十一条 指定行政機関の長等は、それぞれその国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、武力攻撃災害の復旧を行わなければならない。

(避難及び救援に必要な物資及び資材の備蓄等)

第百四十二条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに地方公共団体の長等は、それぞれその国民の保護に関する計画で定めるところにより、住民の避難及び避難住民等の救援に必要な物資及び資材を備蓄し、整備し、若しくは点検し、又は住民の避難及び避難住民等の救援に必要なその管理に属する施設及び設備を整備し、若しくは点検しなければならない。

(避難住民を受け入れた場合の備蓄物資等の供給)

第百四十三条 都道府県知事及び市町村長は、他の都道府県及び市町村から避難住民等を受け入れたときは、避難住民等の救援のため、その備蓄する物資又は資材を、必要に応じ供給しなければならない。

(物資及び資材の供給の要請)

第百四十四条 都道府県知事又は市町村長は、住民の避難及び避難住民等の救援に当たって、その備蓄する物資又は資材が不足し、国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施することが困難であると認めるときは、都道府県知事にあっては指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長に対し、市町村長にあっては都道府県知事に対し、それぞれ必要な物資又は資材の供給について必要な措置を講ずるよう要請することができる。

(国民の保護のための措置に必要な物資及び資材の備蓄等)

第百四十五条 指定行政機関の長等は、第百四十二条に規定するもののほか、それぞれその国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、その所掌事務又は業務に係る国民の保護のための措置の実施に必要な物資及び資材を備蓄し、整備し、若しくは点検し、又は当該国民の保護のための措置の実施に必要なその管理に属する施設及び設備を整備し、若しくは点検しなければならない。

(災害対策基本法の規定による備蓄との関係)

第百四十六条 第百四十二条及び前条の規定による物資及び資材の備蓄と、災害対策基本法第四十九条の規定による物資及び資材の備蓄とは、相互に兼ねることができる。

(備蓄物資等の供給に関する相互協力)

第百四十七条 指定行政機関の長等は、武力攻撃事態等において、その備蓄する物資及び資材の供給に関し、相互に協力するよう努めなければならない。

(避難施設の指定)

第百四十八条 都道府県知事は、住民を避難させ、又は避難住民等の救援を行うため、あらかじめ、政令で定める基準を満たす施設を避難施設として指定しなければならない。

2 都道府県知事は、前項の規定により避難施設を指定しようとするときは、当該施設の管理者の同意を得なければならない。

(避難施設に関する届出)

第百四十九条 前条第一項の避難施設として指定を受けた施設の管理者は、当該施設を廃止し、又は用途の変更、改築その他の事由により当該施設の現状に政令で定める重要な変更を加えようとするときは、同項の規定による指定をした都道府県知事に届け出なければならない。

(避難施設に関する調査及び研究)

第百五十条 政府は、武力攻撃災害から人の生命及び身体を保護するために必要な機能を備えた避難施設に関する調査及び研究を行うとともに、その整備の促進に努めなければならない。

(職員の派遣の要請)

第百五十一条 地方公共団体の長等は、国民の保護のための措置の実施のため必要があるときは、政令で定めるところにより、指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は特定指定公共機関(指定公共機関である行政執行法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第四項の行政執行法人をいう。)をいう。以下この項及び第百五十三条において同じ。)に対し、当該指定行政機関若しくは指定地方行政機関又は特定指定公共機関の職員の派遣を要請することができる。

2 地方公共団体の委員会及び委員は、前項の規定により職員の派遣を要請しようとするときは、あらかじめ、当該地方公共団体の長に協議しなければならない。

3 市町村長等が第一項の規定による職員の派遣を要請するときは、都道府県知事等を経由してするものとする。ただし、人命の救助等のために特に緊急を要する場合については、この限りでない。

(職員の派遣のあっせん)

第百五十二条 都道府県知事等又は市町村長等は、政令で定めるところにより、総務大臣又は都道府県知事に対し、前条第一項の職員の派遣について、あっせんを求めることができる。

2 都道府県知事等又は市町村長等は、国民の保護のための措置の実施のため必要があるときは、政令で定めるところにより、総務大臣又は都道府県知事に対し、都道府県知事等にあっては地方自治法第二百五十二条の十七第一項の職員の派遣について、市町村長等にあっては同項の職員又は地方独立行政法人法第百二十四条第一項の職員(指定地方公共機関である同法第二条第二項の特定地方独立行政法人(次条において「特定指定地方公共機関」という。)の職員に限る。)の派遣について、あっせんを求めることができる。

3 前条第二項及び第三項の規定は、前二項の規定によりあっせんを求める場合について準用する。

(職員の派遣義務)

第百五十三条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長等並びに特定指定公共機関及び特定指定地方公共機関は、前二条の規定による要請又はあっせんがあったときは、その所掌事務又は業務の遂行に著しい支障のない限り、適任と認める職員を派遣しなければならない。

(職員の身分取扱い)

第百五十四条 災害対策基本法第三十二条の規定は、前条又は他の法律の規定により国民の保護のための措置の実施のため派遣された職員の身分取扱いについて準用する。この場合において、同法第三十二条第一項中「災害派遣手当」とあるのは、「武力攻撃災害等派遣手当」と読み替えるものとする。

(交通の規制等)

第百五十五条 都道府県公安委員会は、住民の避難、緊急物資の運送その他の国民の保護のための措置が的確かつ迅速に実施されるようにするため緊急の必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、区域又は道路の区間を指定して、緊急通行車両(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第三十九条第一項の緊急自動車その他の車両で国民の保護のための措置の的確かつ迅速な実施のためその通行を確保することが特に必要なものとして政令で定めるものをいう。)以外の車両の道路における通行を禁止し、又は制限することができる。

2 災害対策基本法第七十六条第二項、第七十六条の二、第七十六条の三及び第七十六条の五の規定は、前項の規定による通行の禁止又は制限について準用する。この場合において、同法第七十六条の二第五項中「前条第一項」とあり、同法第七十六条の三第五項中「第七十六条第一項」とあるのは「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第百五十五条第一項」と、同条第一項、第三項及び第四項並びに同法第七十六条の五中「災害応急対策」とあるのは「国民の保護のための措置」と、同法第七十六条の三第三項及び第六項中「災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官」とあるのは「出動等を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官」と読み替えるものとする。

(電気通信設備の優先利用等)

第百五十六条 指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は地方公共団体の長は、国民の保護のための措置の実施に必要な通信のため緊急かつ特別の必要があるときは、電気通信事業者がその事業の用に供する電気通信設備を優先的に利用し、又は有線電気通信法(昭和二十八年法律第九十六号)第三条第四項第四号に掲げる者が設置する有線電気通信設備若しくは無線設備を使用することができる。

(赤十字標章等の交付等)

第百五十七条 何人も、武力攻撃事態等において、特殊信号(第一追加議定書(千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書Ⅰ)をいう。以下この項及び次条第一項において同じ。)第八条(m)の特殊信号をいう。次項及び第三項において同じ。)又は身分証明書(第一追加議定書第十八条3の身分証明書をいう。次項及び第三項において同じ。)をみだりに使用してはならない。

2 指定行政機関の長又は都道府県知事は、武力攻撃事態等においては、赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律(昭和二十二年法律第百五十九号。次項及び第四項において「赤十字標章法」という。)第一条及び前項の規定にかかわらず、指定行政機関の長にあっては避難住民等の救援の支援を行う当該指定行政機関の長が所管する医療機関又は当該指定行政機関の職員(その管轄する指定地方行政機関の職員を含む。次条第二項第一号において同じ。)である医療関係者(第八十五条第一項の政令で定める医療関係者をいう。以下この項及び次項において同じ。)に対し、都道府県知事にあってはその管理の下に避難住民等の救援を行う医療機関若しくは医療関係者又は当該避難住民等の救援に必要な援助について協力をする医療機関若しくは医療関係者に対し、これらの者(これらの者の委託により医療に係る業務を行う者を含む。以下この項において同じ。)又はこれらの者が行う医療のために使用される場所若しくは車両、船舶、航空機等(次項及び次条において「場所等」という。)を識別させるため、赤十字標章等(白地に赤十字、赤新月又は赤のライオン及び太陽の標章をいう。次項及び第四項において同じ。)、特殊信号又は身分証明書を交付し、又は使用させることができる。

3 前項に規定する医療機関及び医療関係者以外の医療機関及び医療関係者は、武力攻撃事態等においては、赤十字標章法第一条及び第一項の規定にかかわらず、これらの者(これらの者の委託により医療に係る業務を行う者を含む。以下この項において同じ。)又はこれらの者が行う医療のために使用される場所等を識別させるため、あらかじめ、医療機関である指定公共機関にあっては当該指定公共機関を所管する指定行政機関の長の、医療機関である指定地方公共機関にあっては当該指定地方公共機関を指定した都道府県知事の、その他の医療機関及び医療関係者にあっては当該者が医療を行う地域を管轄する都道府県知事の許可を受けて、赤十字標章等、特殊信号又は身分証明書を使用することができる。

4 赤十字標章法第三条の規定は、武力攻撃事態等においては、適用しない。ただし、対処基本方針が定められる前に同条の許可を受けた者は、武力攻撃事態等においても、同条に規定する傷者又は病者の無料看護を引き続き行う場合に限り、前項の規定にかかわらず、赤十字標章等を使用することができる。

(特殊標章等の交付等)

第百五十八条 何人も、武力攻撃事態等において、特殊標章(第一追加議定書第六十六条3の国際的な特殊標章をいう。次項及び第三項において同じ。)又は身分証明書(同条3の身分証明書をいう。次項及び第三項において同じ。)をみだりに使用してはならない。

2 次の各号に掲げる者(以下この項において「指定行政機関長等」という。)は、武力攻撃事態等においては、前項の規定にかかわらず、それぞれ当該各号に定める職員で国民の保護のための措置に係る職務を行うもの(指定行政機関長等の委託により国民の保護のための措置に係る業務を行う者を含む。)又は指定行政機関長等が実施する国民の保護のための措置の実施に必要な援助について協力をする者に対し、これらの者又は当該国民の保護のための措置に係るこれらの者が行う職務、業務若しくは協力のために使用される場所等を識別させるため、特殊標章又は身分証明書を交付し、又は使用させることができる。

 一 指定行政機関の長 当該指定行政機関の職員

 二 都道府県知事 当該都道府県の職員(次号及び第五号に定める職員を除く。)

 三 警視総監及び道府県警察本部長 当該都道府県警察の職員

 四 市町村長 当該市町村の職員(次号及び第六号に定める職員を除く。)

 五 消防長 その所轄の消防職員

 六 水防管理者 その所轄の水防団長及び水防団員

3 指定公共機関又は指定地方公共機関は、武力攻撃事態等においては、第一項の規定にかかわらず、当該指定公共機関若しくは指定地方公共機関が実施する国民の保護のための措置に係る業務を行う者(当該指定公共機関又は指定地方公共機関の委託により国民の保護のための措置に係る業務を行う者を含む。)若しくは当該指定公共機関若しくは指定地方公共機関が実施する国民の保護のための措置の実施に必要な援助について協力をする者又は当該国民の保護のための措置に係るこれらの者が行う業務若しくは協力のために使用される場所等を識別させるため、あらかじめ、指定公共機関にあっては当該指定公共機関を所管する指定行政機関の長の、指定地方公共機関にあっては当該指定地方公共機関を指定した都道府県知事の許可を受けて、特殊標章又は身分証明書を使用することができる。


第七章 財政上の措置等

(損失補償等)

第百五十九条 国及び地方公共団体は、第八十一条第二項、第三項若しくは第四項(同条第一項に係る部分を除く。)、第八十二条、第百十三条第一項若しくは第三項(同条第一項に係る部分に限る。)、同条第五項(同条第一項に係る部分に限る。)において準用する災害対策基本法第六十四条第七項若しくは第八項、第百二十五条第四項又は第百五十五条第二項において準用する同法第七十六条の三第二項後段(同条第三項又は第四項において準用する場合を含む。)の規定による処分が行われたときは、それぞれ、当該処分により通常生ずべき損失を補償しなければならない。

2 都道府県は、第八十五条第一項の規定による要請に応じ、又は同条第二項の規定による指示に従って医療を行う医療関係者に対して、政令で定める基準に従い、その実費を弁償しなければならない。

3 前二項の規定の実施に関し必要な手続は、政令で定める。

(損害補償)

第百六十条 国及び地方公共団体は、第七十条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)、第八十条第一項、第百十五条第一項又は第百二十三条第一項の規定による要請を受けて国民の保護のための措置の実施に必要な援助について協力をした者が、そのため死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり、又は障害の状態となったときは、政令で定めるところにより、その者又はその者の遺族若しくは被扶養者がこれらの原因によって受ける損害を補償しなければならない。

2 都道府県は、第八十五条第一項の規定による要請に応じ、又は同条第二項の規定による指示に従って医療を行う医療関係者が、そのため死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり、又は障害の状態となったときは、政令で定めるところにより、その者又はその者の遺族若しくは被扶養者がこれらの原因によって受ける損害を補償しなければならない。

3 前二項の規定の実施に関し必要な手続は、政令で定める。

(総合調整及び指示に係る損失の補てん)

第百六十一条 国は、国民の保護のための措置(第百四十一条に規定する武力攻撃災害の復旧に関する措置を除く。)の実施に関し、都道府県又は指定公共機関に対し、事態対処法第十四条第一項の規定により対策本部長が総合調整を行い、又は第五十六条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)、第六十条第一項、第六十八条、第七十三条第一項(第七十九条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第八十八条第一項の規定により内閣総理大臣が指示をした場合において、当該総合調整又は指示に基づく措置の実施に当たって当該都道府県又は指定公共機関が損失を受けたときは、それぞれ、当該都道府県又は指定公共機関に対し、政令で定めるところにより、その損失を補てんしなければならない。ただし、当該都道府県又は指定公共機関の責めに帰すべき事由により損失が生じたときは、この限りでない。

2 都道府県は、国民の保護のための措置の実施に関し、市町村又は指定公共機関若しくは指定地方公共機関に対し、第二十九条第一項の規定により都道府県対策本部長が総合調整を行い、又は第六十七条第二項(第六十九条第二項において準用する場合を含む。)若しくは第七十三条第二項(第七十九条第二項において準用する場合を含む。)の規定により都道府県知事が指示をした場合において、当該総合調整又は指示に基づく措置の実施に当たって当該市町村又は指定公共機関若しくは指定地方公共機関が損失を受けたときは、それぞれ、当該市町村又は指定公共機関若しくは指定地方公共機関に対し、政令で定めるところにより、その損失を補てんしなければならない。ただし、当該市町村又は指定公共機関若しくは指定地方公共機関の責めに帰すべき事由により損失が生じたときは、この限りでない。

3 前二項の規定の実施に関し必要な手続は、政令で定める。

(被災者の公的徴収金の減免等)

第百六十二条 国は、別に法律で定めるところにより、武力攻撃災害による被災者の国税その他国の徴収金について、軽減若しくは免除又は徴収猶予その他必要な措置を講ずることができる。

2 地方公共団体は、別に法律で定めるところにより、又は当該地方公共団体の条例で定めるところにより、武力攻撃災害による被災者の地方税その他地方公共団体の徴収金について、軽減若しくは免除又は徴収猶予その他必要な措置を講ずることができる。

(国有財産等の貸付け等の特例)

第百六十三条 国は、国民の保護のための措置を実施するため必要があると認める場合において、国有財産又は国有の物品を貸し付け、又は使用させるときは、別に法律で定めるところにより、その貸付け又は使用の対価を無償とし、又は時価より低く定めることができる。

2 地方公共団体は、国民の保護のための措置を実施するため必要があると認める場合において、その所有に属する財産又は物品を貸し付け、又は使用させるときは、別に法律で定めるところにより、その貸付け又は使用の対価を無償とし、又は時価より低く定めることができる。

(国民の保護のための措置等に要する費用の支弁)

第百六十四条 法令に特別の定めがある場合を除き、国民の保護のための措置その他この法律の規定に基づいて実施する措置に要する費用は、その実施について責任を有する者が支弁する。

(他の地方公共団体の長等の応援に要する費用の支弁)

第百六十五条 第十二条第一項、第十七条第一項、第十八条第一項、第八十六条又は第百十九条の規定により他の地方公共団体の長等の応援を受けた地方公共団体の長等の属する地方公共団体は、当該応援に要した費用を支弁しなければならない。

2 前項の場合において、当該応援を受けた地方公共団体の長等の属する地方公共団体が当該費用を支弁するいとまがないときは、当該地方公共団体は、当該応援をする他の地方公共団体の長等の属する地方公共団体に対し、当該費用を一時的に立て替えて支弁するよう求めることができる。

(都道府県知事が市町村長の措置を代行した場合の費用の支弁)

第百六十六条 第十四条第一項に規定する市町村がその全部又は大部分の事務を行うことができなくなる前に当該市町村の長が実施した国民の保護のための措置又は当該市町村に対して他の市町村の長が実施した応援のために通常要する費用で、同項に規定する市町村に支弁させることが困難であると認められるものについては、当該市町村の属する都道府県が支弁する。

(市町村長が救援の事務を行う場合の費用の支弁)

第百六十七条 都道府県は、都道府県知事が第七十六条第一項の規定によりその権限に属する救援の実施に関する事務の一部を市町村長が行うこととしたときは、当該市町村長による救援の実施に要する費用を支弁しなければならない。

2 都道府県知事は、第七十六条第一項の規定によりその権限に属する救援の実施に関する事務の一部を市町村長が行うこととしたとき、又は都道府県が救援の実施に要する費用を支弁するいとまがないときは、救援を必要とする避難住民等の現在地の市町村に救援の実施に要する費用を一時的に立て替えて支弁させることができる。

(国及び地方公共団体の費用の負担)

第百六十八条 次に掲げる費用のうち、第百六十四条から前条まで(第百六十五条第二項及び前条第二項を除く。第三項において同じ。)の規定により地方公共団体が支弁したもので政令で定めるものについては、政令で定めるところにより、国が負担する。ただし、地方公共団体の職員の給料及び扶養手当その他政令で定める手当、地方公共団体の管理及び行政事務の執行に要する費用で政令で定めるもの並びに地方公共団体が施設の管理者として行う事務に要する費用で政令で定めるものについては、地方公共団体が負担する。

 一 第二章に規定する住民の避難に関する措置に要する費用

 二 第三章に規定する避難住民等の救援に関する措置に要する費用

 三 第四章に規定する武力攻撃災害への対処に関する措置に要する費用

 四 第百五十九条から第百六十一条までに規定する損失の補償若しくは実費の弁償、損害の補償又は損失の補てんに要する費用(地方公共団体に故意又は重大な過失がある場合を除く。)


2 第四十二条第一項の規定により指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長が地方公共団体の長等と共同して行う訓練に係る費用で第百六十四条の規定により地方公共団体が支弁したものについては、政令で定めるものを除き、国が負担する。

3 前二項の規定により国が負担する費用を除き、第百六十四条から前条までの規定により地方公共団体が支弁する費用については、地方公共団体が負担する。

(国の補助)

第百六十九条 国は、地方公共団体が国民の保護のための措置その他この法律の規定に基づいて実施する措置に要する費用で前条第三項の規定により当該地方公共団体が負担するものについて、予算の範囲内において、その一部を補助することができる。

(起債の特例)

第百七十条 次に掲げる場合においては、政令で定める地方公共団体は、政令で定める年度に限り、地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第五条の規定にかかわらず、地方債をもってその財源とすることができる。

 一 地方税、使用料、手数料その他の徴収金で総務省令で定めるものの武力攻撃災害のための減免で、その程度及び範囲が被害の状況に照らし相当と認められるものによって生ずる財政収入の不足を補う場合

 二 国民の保護のための措置その他この法律の規定に基づいて実施する措置で総務省令で定めるものに通常要する費用で、当該地方公共団体の負担に属するものの財源とする場合

2 前項の地方債は、国が、その資金事情の許す限り、財政融資資金をもって引き受けるものとする。

3 第一項の規定による地方債を財政融資資金で引き受けた場合における当該地方債の利息の定率、償還の方法その他地方債に関し必要な事項は、政令で定める。

(武力攻撃災害の復旧に係る財政上の措置)

第百七十一条 前三条の規定にかかわらず、第百四十一条に規定する武力攻撃災害の復旧に関する措置に係る財政上の措置については、別に法律で定めるところによる。

2 前項の法律においては、武力攻撃災害の復旧に関する措置が的確かつ迅速に実施されるよう国費による必要な財政上の措置を講ずるものとする。

3 政府は、第一項の法律が施行されるまでの間においては、武力攻撃災害の復旧に関する措置が的確かつ迅速に実施されるよう必要な財政上の措置を講ずるものとする。


第八章 緊急対処事態に対処するための措置

(国、地方公共団体等の責務)

第百七十二条 国は、国民の安全を確保するため、緊急対処事態(事態対処法第二十二条第一項の緊急対処事態をいう。以下同じ。)においては、その組織及び機能の全てを挙げて自ら緊急対処保護措置(緊急対処事態対処方針(同項の緊急対処事態対処方針をいう。以下同じ。)が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関若しくは指定地方公共機関が第百八十三条において準用するこの法律の規定に基づいて実施する事態対処法第二十二条第三項第二号に掲げる措置(緊急対処事態対処方針が廃止された後これらの者が法律の規定に基づいて実施する被害の復旧に関する措置を含む。)その他これらの者が当該措置に関し国民の保護のための措置に準じて法律の規定に基づいて実施する措置をいう。以下同じ。)を的確かつ迅速に実施し、又は地方公共団体及び指定公共機関が実施する緊急対処保護措置を的確かつ迅速に支援し、並びに緊急対処保護措置に関し国費による適切な措置を講ずること等により、国全体として万全の態勢を整備する責務を有する。

2 地方公共団体は、緊急対処事態においては、緊急対処事態対処方針に基づき、自ら緊急対処保護措置を的確かつ迅速に実施し、及び当該地方公共団体の区域において関係機関が実施する緊急対処保護措置を総合的に推進する責務を有する。

3 指定公共機関及び指定地方公共機関は、緊急対処事態においては、この法律で定めるところにより、その業務について、緊急対処保護措置を実施する責務を有する。

4 国、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、緊急対処保護措置を実施するに当たっては、相互に連携協力し、その的確かつ迅速な実施に万全を期さなければならない。

(国民の協力等)

第百七十三条 国民は、この法律の規定により緊急対処保護措置の実施に関し協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努めるものとする。

2 前項の協力は国民の自発的な意思にゆだねられるものであって、その要請に当たって強制にわたることがあってはならない。

3 国及び地方公共団体は、自主防災組織及びボランティアにより行われる緊急対処保護措置に資するための自発的な活動に対し、必要な支援を行うよう努めなければならない。

(基本的人権の尊重)

第百七十四条 緊急対処保護措置を実施するに当たっては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならない。

2 前項に規定する緊急対処保護措置を実施する場合において、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該緊急対処保護措置を実施するため必要最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われるものとし、いやしくも国民を差別的に取り扱い、並びに思想及び良心の自由並びに表現の自由を侵すものであってはならない。

(国民の権利利益の迅速な救済)

第百七十五条 国及び地方公共団体は、緊急対処保護措置の実施に伴う損失補償、緊急対処保護措置に係る不服申立て又は訴訟その他の国民の権利利益の救済に係る手続について、できる限り迅速に処理するよう努めなければならない。

(指定行政機関及び指定地方行政機関の実施する緊急対処保護措置)

第百七十六条 指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、緊急対処事態対処方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、その所掌事務に係る緊急対処保護措置を実施しなければならない。

(都道府県の実施する緊急対処保護措置)

第百七十七条 都道府県知事は、緊急対処事態対処方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、当該都道府県の区域に係る緊急対処保護措置を実施しなければならない。

2 都道府県の委員会及び委員は、緊急対処事態対処方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、都道府県知事の所轄の下にその所掌事務に係る緊急対処保護措置を実施しなければならない。

3 第十一条第三項及び第四項の規定は、都道府県知事等が前二項の規定により緊急対処保護措置を実施する場合について準用する。この場合において、同条第三項中「対処基本方針」とあるのは、「緊急対処事態対処方針」と読み替えるものとする。

(市町村の実施する緊急対処保護措置)

第百七十八条 市町村長は、緊急対処事態対処方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、当該市町村の区域に係る緊急対処保護措置を実施しなければならない。

2 市町村の委員会及び委員は、緊急対処事態対処方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、市町村長の所轄の下にその所掌事務に係る緊急対処保護措置を実施しなければならない。

3 第十六条第三項から第五項までの規定は、市町村長等が前二項の規定により緊急対処保護措置を実施する場合について準用する。この場合において、同条第三項中「対処基本方針」とあるのは「緊急対処事態対処方針」と、同条第五項中「第十一条第四項」とあるのは「第百七十七条第三項において準用する第十一条第四項」と読み替えるものとする。

(指定公共機関及び指定地方公共機関の実施する緊急対処保護措置)

第百七十九条 指定公共機関及び指定地方公共機関は、緊急対処事態対処方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、それぞれその国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、その業務に係る緊急対処保護措置を実施しなければならない。

2 第二十一条第二項及び第三項の規定は、指定公共機関及び指定地方公共機関が前項の規定により緊急対処保護措置を実施する場合について準用する。

(安全の確保)

第百八十条 国は指定行政機関、地方公共団体及び指定公共機関が実施する緊急対処保護措置について、都道府県は当該都道府県、市町村並びに指定公共機関及び指定地方公共機関が実施する当該都道府県の区域に係る緊急対処保護措置について、市町村は当該市町村が実施する当該市町村の区域に係る緊急対処保護措置について、その内容に応じ、安全の確保に配慮しなければならない。

(緊急対処事態対策本部の所掌事務等)

第百八十一条 緊急対処事態対策本部(事態対処法第二十三条第一項の緊急対処事態対策本部をいう。次項において同じ。)は、事態対処法第二十四条において準用する事態対処法第十二条第一号に掲げるもののほか、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 指定行政機関、地方公共団体及び指定公共機関が実施する緊急対処保護措置の総合的な推進に関すること。

 二 前号に掲げるもののほか、この法律の規定によりその権限に属する事務

2 第二十四条第二項から第七項までの規定は、緊急対処事態対策本部について準用する。この場合において、同条第二項中「国民の保護のための措置」とあるのは、「緊急対処保護措置」と読み替えるものとする。

(基本指針等の必要記載事項)

第百八十二条 政府は、緊急対処事態に備えて、基本指針において、第三十二条第二項各号に掲げる事項のほか、緊急対処保護措置の実施に関し必要な事項を定めなければならない。

2 指定行政機関の長、都道府県知事、市町村長並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、それぞれその国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画において、第三十三条第二項各号、第三十四条第二項各号、第三十五条第二項各号及び第三十六条第三項各号に掲げる事項のほか、緊急対処保護措置の実施に関し必要な事項を定めなければならない。

3 都道府県知事及び市町村長が前項の規定により緊急対処保護措置の実施に関し必要な事項を定める場合における第三十七条第二項及び第三十九条第二項の規定の適用については、第三十七条第二項第一号及び第三十九条第二項第一号中「国民の保護のための措置」とあるのは、「国民の保護のための措置(緊急対処保護措置を含む。)」とする。

(準用)

第百八十三条 第七条、第八条及び第九条第一項、第一章第二節(第十条、第十一条、第十六条、第二十一条及び第二十二条を除く。)及び第三節(第二十四条並びに第二十九条第四項及び第七項を除く。)、第四十二条、第二章(第五十六条、第六十条、第六十八条及び第七十三条第一項を除く。)、第三章(第八十八条及び第九十三条を除く。)、第四章、第五章第二節及び第三節、第百四十一条、第百四十三条、第百四十四条、第百四十七条及び第百五十一条から第百五十六条まで並びに第七章(第百六十一条第一項を除く。)の規定は、緊急対処事態及び緊急対処保護措置について準用する。この場合において、次の表の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。

{図は省略}


第九章 雑則

(大都市の特例)

第百八十四条 第三章第一節(第七十六条及び第七十九条第二項(第七十一条第二項に係る部分を除く。)を除き、前条において準用する場合を含む。)並びに第百四十八条、第百四十九条、第百五十七条第二項、第百五十九条第二項(前条において準用する場合を含む。)及び第百六十条第二項(前条において準用する場合を含む。)の規定により都道府県又は都道府県知事が処理することとされている事務は、指定都市においては、指定都市又は指定都市の長が処理するものとする。この場合においては、これらの規定中都道府県又は都道府県知事に関する規定は、指定都市又は指定都市の長に関する規定として指定都市又は指定都市の長に適用があるものとする。

2  前項の場合における第七十四条の規定の適用については、同条第一項中「避難先地域を管轄する都道府県知事」とあるのは「避難先地域を管轄する都道府県知事を経由して、避難先地域となる当該都道府県の区域内の指定都市の長」と、同条第二項中「当該被災者が発生した地域を管轄する都道府県知事」とあるのは「当該被災者が発生した地域を管轄する都道府県知事を経由して、当該被災者が発生した当該都道府県の区域内の指定都市の長」とする。

3第一項の場合において、指定都市の長は、第百四十八条第一項の規定による指定をし、又は第百四十九条の規定による届出があったときは、速やかに、その旨を都道府県知事に報告しなければならない。

(特別区についてのこの法律の適用等)

第百八十五条 この法律の適用については、特別区は、市とみなす。

2 第六十二条第二項から第四項まで(これらの規定を第六十九条第二項(第百八十三条において準用する場合を含む。)及び第百八十三条において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)並びに第六十六条第一項及び第七十条(これらの規定を第百八十三条において準用する場合を含む。)の規定は、特別区の長が避難住民を誘導する場合について準用する。この場合において、第六十二条第二項中「消防に関する事務の全部又は一部を処理する地方公共団体の組合(以下「消防組合」という。)の管理者又は長(地方自治法第二百八十七条の三第二項(同法第二百九十一条の十三において準用する場合を含む。)の規定により管理者又は長に代えて理事会を置く消防組合にあっては、理事。以下同じ。)」とあり、同条第四項中「当該消防組合の管理者又は長」とあるのは「都知事」と、同条第二項及び第四項中「当該消防組合を組織する市町村」とあるのは「特別区」と、「当該市町村」とあるのは「当該特別区」と、「当該消防組合の消防長」とあるのは「特別区の消防長」と、「消防団長」とあるのは「当該特別区の消防団長」と読み替えるものとする。

(事務の区分)

第百八十六条 この法律の規定により地方公共団体が処理することとされている事務(都道府県警察が処理することとされているものを除く。)は、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

(政令への委任)

第百八十七条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。


第十章 罰則

第百八十八条 第百三条第三項(同条第五項(第百八十三条において準用する場合を含む。)及び第百八十三条において準用する場合を含む。)の規定による指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長若しくは地方公共団体の長の命令又は第百六条(第百八十三条において準用する場合を含む。)の規定による原子力規制委員会(事業所外運搬に係る事実の発生の場合にあっては、原子力規制委員会及び国土交通大臣)の命令に従わなかった者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第百八十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

 一 第八十一条第三項(第百八十三条において準用する場合を含む。)の規定による都道府県知事(第七十六条第一項(第百八十三条において準用する場合を含む。)の規定によりその権限を市町村長が行う場合にあっては、当該市町村長)の保管命令又は第八十一条第四項(第百八十三条において準用する場合を含む。)の規定による指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長の保管命令に従わず、特定物資を隠匿し、損壊し、廃棄し、又は搬出した者

 二 第百五十七条第一項の規定に違反して同項の特殊信号若しくは身分証明書をみだりに使用し、又は第百五十八条第一項の規定に違反して同項の特殊標章若しくは身分証明書をみだりに使用した者

第百九十条 第百五十五条第一項(第百八十三条において準用する場合を含む。)の規定による都道府県公安委員会の禁止又は制限に従わなかった車両の運転者は、三月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

第百九十一条 第百八条第一項第一号から第三号まで、第五号又は第六号(これらの規定を同条第二項(第百八十三条において準用する場合を含む。)及び第百八十三条において準用する場合を含む。)の規定による指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長若しくは都道府県知事又は市町村長、消防組合の管理者若しくは長若しくは警視総監若しくは道府県警察本部長の命令に従わなかった者は、五十万円以下の罰金に処する。

第百九十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

 一 第八十四条第一項若しくは第二項(これらの規定を第百八十三条において準用する場合を含む。)の規定による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項(第百八十三条において準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者

 二 第百五条第一項前段(第百八十三条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、内閣総理大臣及び原子力規制委員会(事業所外運搬に係る事実の発生の場合にあっては、内閣総理大臣、原子力規制委員会及び国土交通大臣)又は関係地方公共団体の長に通報しなかった原子力防災管理者

 三 第百二十五条第七項(第百八十三条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、国宝又は特別史跡名勝天然記念物の滅失、毀損その他の被害を防止するため必要な措置の実施を拒み、又は妨げた者

第百九十三条 第百二条第七項(第百八十三条において準用する場合を含む。)の規定による警察官若しくは海上保安官の制限若しくは禁止若しくは退去命令又は第百十四条(第百八十三条において準用する場合を含む。)の規定による市町村長、都道府県知事、警察官若しくは海上保安官若しくは出動等を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官の制限若しくは禁止若しくは退去命令に従わなかった者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処する。

第百九十四条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第百八十八条、第百八十九条第一号又は第百九十二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。


附則抄

(施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(調整規定)

第二条 文化財保護法の一部を改正する法律(平成十六年法律第六十一号)の施行の日の前日までの間における第百二十五条の規定の適用については、同条第一項中「第七十八条第一項」とあるのは「第五十六条の十第一項」と、「第百九条第一項」とあるのは「第六十九条第一項」と、「第八十条」とあるのは「第五十六条の十二」と、「第百十九条第二項」とあるのは「第七十四条第二項」と、「第百十五条第一項」とあるのは「第七十二条第一項」と、「第百七十二条第一項」とあるのは「第九十五条第一項」と、同条第二項中「第百八十八条第三項」とあるのは「第百三条第三項」と、同条第四項中「第百九条第二項」とあるのは「第六十九条第二項」と、同条第五項から第七項までの規定中「第百八十六条第一項」とあるのは「第百一条第一項」とする。

(調整規定)

第十四条 景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行の日が建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律の施行の日後となる場合における附則第十二条の規定の適用については、同条中「「第三項」」とあるのは「「第四項」」とする。