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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA)

[場所] 重慶
[年月日] 2010年6月29日
[出典] 台北駐日経済文化代表処
[備考] 
[全文]

海峡両岸経済協力枠組み協議(本協議は関連する手続きが終了後、発効となる)序言

財団法人海峡交流基金会と海峡両岸関係協会は、平等・互恵、順序を踏まえた漸進の原則に従い、海峡両岸の経済・貿易関係強化の念願を達成させた。

双方は、世界貿易機関(WTO)の基本原則に基づき、双方の経済条件を考慮し、双方間の貿易と投資の障害を段階的に軽減あるいは除去し、公平な貿易と投資環境を創造し、「海峡両岸経済協力枠組み協議」(以下、本協議)の調印を通して、双方の貿易と投資関係をより一層増進させ、両岸における経済繁栄と発展にプラスとなる協力メカニズムを構築することに同意した。

協議を経て、以下の通り協議を達成した。

第一章 総則

第一条 目標

本協議の目標は:

一、双方間の経済、貿易、投資協力を強化および増進する。

二、双方の製品貿易とサービス貿易のさらなる自由化を促進し、公平、透明、簡便な投資およびその保障メカニズムを段階的に確立する。

三、経済協力の分野を拡大し、協力メカニズムを確立する。

第二条 協力措置

双方の経済条件を考慮し、以下を含むがこれらに限定されるものではない措置を採り、海峡両岸の経済交流と協力を強化することに双方は同意した。

一、双方間の実質的な数多くの製品貿易の関税と非関税障害を段階的に軽減あるいは除去する。

二、双方間の多くの部門に関わるサービス貿易の制限的な措置を段階的に軽減あるいは除去する。

三、投資保護を行い、双方向の投資を促進する。

四、貿易投資の簡便化および産業交流と協力を促進する。

第二章 貿易と投資

第三条 製品貿易

一、双方は、本協議第7条規定による「製品貿易におけるアーリーハーベスト(早期の実施・解決項目)」の基礎の下、本協議発効後、遅くとも6カ月以内に製品貿易協議についての話し合いを行うと共に、速やかに完成させることに同意した。

二、製品貿易協議の話し合いの内容は、以下を含むがこれらが全てではない:

(一)関税の引き下げあるいは免除の形式;

(二)原産地規則;

(三)税関のプロセス;

(四)非関税措置は、「貿易の技術的障害に関する協定(TBT)」、「衛生植物検疫措置(SPS)」を含むが、これらが全てではない。

(五)貿易救済措置は、世界貿易機関(WTO)の「1994年の関税及び貿易に関する一般協定第6条の実施に関する協定(アンチダンピング協定)」、「補助金及び相殺措置に関する協定」、「セーフガードに関する協定」の各措置および、双方間の製品貿易において適用される双方のセーフガード措置を含む。

三、本条に基づき、製品貿易協議に盛り込む製品は、ゼロ関税即時実行の製品、段階的に減税する製品、例外あるいはその他の製品の3種類に分ける。

四、いかなる一方も、製品貿易協議規定による関税引き下げ公約の基礎の下、関税引き下げの実施を自主的に加速できる。

第四条 サービス貿易

一、双方は、第8条規定による「サービス貿易におけるアーリーハーベスト」の基礎の下、本協議発効後、遅くとも6カ月以内にサービス貿易協議についての話し合いを行い、速やかに完成させることに同意した。

二、サービス貿易協議の話し合いは以下の面において尽力する:

(一)双方間の多くの部門に関連するサービス貿易の制限的な措置を段階的に軽減あるいは除去する。

(二)サービス貿易の幅と内容の深度を継続的に拡大する。

(三)双方のサービス貿易分野における協力を増進する。

三、いかなる一方も、サービス貿易協議の規定において開放を公約した基礎の下で、制限的な措置の開放あるいは除去を自主的に加速することができる。

第五条 投資

一、双方は、本協議の発効後6カ月以内に、本条第2項で述べている事項について話し合いを行うと共に、速やかなる協議の達成に同意した。

二、同協議は以下の事項を含むがこれらが全てではない:

(一)投資保障メカニズムを確立する;

(二)投資関連規定の透明化を向上;

(三)双方の相互投資の制限を段階的に減少;

(四)投資の利便化を促進;

第三章 経済協力

第六条 経済協力

一、本協議の効果を強化ならびに拡大するために、以下を含むがこれらが全てではない協力の強化について双方は同意した。:

(一)知的財産権の保護と協力;

(二)金融協力;

(三)貿易促進および貿易の簡便化;

(四)税関協力;

(五)電子ビジネスの協力;

(六)双方の産業協力戦略と重点分野を研究し、双方の重要項目の協力を推進し、双方の産業協力の中で発生する問題を調整し、解決する;

(七)双方の中小企業協力を推進し、中小企業の競争力を向上させる;

(八)双方の経済・貿易組織による出先機関の相互開設を推進する;

二、双方は、本条の協力事項の具体的計画と内容について、速やかに協議を行うようにする。

第四章 アーリーハーベスト(早期の実施・解決項目)

第7条 製品貿易におけるアーリーハーベスト

一、本協議の目標実現を加速するために、付属文書1に記された製品に対しアーリーハーベスト計画を実施し、同計画は本協議発効後6カ月以内に実施を開始することに双方は同意した。

二、製品貿易におけるアーリーハーベスト計画の実施については以下の規定に従う:

(一)双方は付属文書1で明記しているアーリーハーベスト製品および関税引き下げに基づき、関税引き下げ実施の手配を行う。しかし、双方が各自、その他のWTO全加盟国に対して普遍的に適用している非臨時的な輸入関税の税率が比較的低い場合には、同税率を適用する。

(二)本協議の付属文書1で記している製品は、付属文書2で記した臨時原産地規則に適応する。同規則に基づき認定されたものは、一方で原産された上述の製品となり、もう一方は輸入時にそれに対し関税の優遇を行う。

(三)本協議の付属文書1に記している製品が適用される臨時貿易の救済措置は、本協議第3条第2項第5細目で規定した措置のことを指し、その中で双方のセーフガード措置は本協議の付属文書3に盛り込まれている。

三、双方は、本協議第3条に基づき達成した製品貿易協議の発効日からは、本協議の付属文書2の中で明記した臨時原産地規則と本条第二項第三細目規定による臨時貿易の救済措置規則は適用を終了する。

第八条 サービス貿易におけるアーリーハーベスト

一、本協議の目標実現を加速するために、付属文書4で記したサービス貿易部門に対するアーリーハーベスト計画を実施し、アーリーハーベスト計画は本協議発効後、速やかに実施することに双方は同意した。

二、サービス貿易のアーリーハーベスト計画の実施は下記の規定に従う:

(一)一方は、付属文書4で明記されているサービス貿易のアーリーハーベスト部門および開放措置に基づき、もう一方のサービスおよびサービス提供者が実行する制限的な措置を軽減あるいは除去する。

(二)本協議の付属文書4で記されたサービス貿易部門および開放措置は、付属文書5で規定したサービス提供者の定義を適用する。

(三)双方は、本協議の第4条に基づき達成したサービス貿易協議の発効日より、本協議付属文書5で規定するサービス提供者の定義は適用が終了する。

(四)もしサービス貿易のアーリーハーベスト計画実施により、一方のサービス部門が実質的なマイナス影響をもたらした場合には、影響を受けた側は、相手側と話し合いを要求し、解決方案を求めることができる。

第五章 その他

第九条 例外

本協議のいかなる規定も、一方がWTO規則と同様の例外措置を採るか維持することを妨害する解釈をしてはならない。

第十条 争議の解決

一、双方は、本協議発効後遅くとも6カ月以内に、争議解決の適切なプロセス確立について、話し合いを行うと共に、速やかに協議を達成させ、それにより本協議のいかなる解釈、実施、適用についての争議を解決していく。

二、本条の第一項で示した争議の解決協議の発効前においては、本協議のいかなる解釈、実施、適用についての争議も、双方が協議を通して解決するか本協議第十一条において設立される「両岸経済協力委員会」により、適切な方法で解決を図っていく。

第十一条 メカニズム構築

一、双方は、「両岸経済協力委員会(以下、委員会)」を設立する。委員会は双方が指定した代表により組織され、本協議と関連のある件(→事項)についての処理を担当し、以下は含まれるが全てではない。

(一)本協議の目標を実行するために必要な話し合いを完成させる;

(二)本協議の実行を監督ならびに評価する;

(三)本協議の規定を解釈する;

(四)重要な経済・貿易情報を通知する;

(五)本協議第十条の規定に基づき、本協議に関するいかなる解釈、実施、適用の争議を解決する;

二、委員会は重要性に基づき作業チームを設立し、特定分野の中で本協議に関連する事項を処理することができる。

三、委員会は毎年半年に1度例会を開催し、必要時には双方の同意により臨時会議を招集できる。

四、本協議に関連する実務事項は、双方の実務主管部門が指定した連絡人が連絡の責任を担う。

第十二条 文書の書式

本協議に基づいて行なわれる業務連絡には、双方が取り決めた文書の書式を使用する。

第十三条 付属文書および後続協議

本協議の付属文書および本協議の調印に基づく後続協議については、本協議の1部として構成される。

第十四条 修正

本協議の修正は、双方の協議の同意を経ると共に、書面形式で確認する。

第十五条 発効

本協議の調印後、双方は各自の関連手続きを完成させると共に、書面で相手側へ通知する。本協議は双方が相手側の通知を受領した翌日より発効する。

第十六条 終了

一、一方が本協議を中止するには、書面で相手側に通知する。双方は終了通知発送後、30日以内に協議を開始する。もし、協議において一致が達成されなかった場合、本協議は通知した側が終了通知を発送した日から180日目に終了する。

二、本協議終了後30日以内に、双方は本協議終了により生ずる問題について協議を行う。

本協議は6月29日に調印し、一式4部あり、双方は各2部ずつ保管する。4部の本文中の対応表現が異なる言葉の意味は同じであり、4部の本文は同等の効力を持つ。

付属文書1 製品貿易におけるアーリーハーベスト製品リストおよび関税引下げ計画

付属文書2 製品貿易におけるアーリーハーベスト製品に適用される臨時原産地規則

付属文書3 製品貿易におけるアーリーハーベスト製品に適用される双方のセーフガード措置

付属文書4 サービス貿易におけるアーリーハーベスト部門および開放措置

付属文書5 サービス貿易におけるアーリーハーベスト部門および開放措置が適用されるサービス提供者の定義

財団法人海峡交流基金会董事長(理事長) 江丙坤

海峡両岸関係協会会長 会長 陳雲林