データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 白書:「一国二制度」の香港 特別行政区における実践

[場所] 
[年月日] 2014年6月
[出典] 中国網日本語版(チャイナネット)http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2014-06/19/content_32711388.htm
[備考] 
[全文]

白書:「一国二制度」の香港 特別行政区における実践

目次

前書き

一、香港の円満な祖国復帰の過程

二、特別行政区制度の香港での確立

三、香港特別行政区の各事業は全面的な進歩を遂げた

四、中央政府は香港特別行政区の繁栄と発展を全力でバックアップする

五、「一国二制度」の方針・政策を全面的かつ正確に理解すること

結びの言葉

付録


前書き

 「一つの国、二つの制度」は中国政府が国家の平和統一を実現するために提起した基本的国策である。この「一国二制度」の方針に基づき、中国政府はイギリス政府との外交交渉を通じて過去から残された香港問題を成功裡に解決し、1997年7月1日に香港に対する主権行使を回復し、香港の祖国復帰という長年にわたる中国人民共通の願いが実現した。香港はこの時から植民地統治を脱し、祖国のもとにもどり、祖国大陸部と互いの強みを生かし、ともに発展する広々とした道を歩むことになった。

 香港の祖国復帰により、「一国二制度」は科学的構想から生きた現実となった。中央政府は香港基本法を厳格に踏まえて事を処理し、憲制の責任を真剣に履行し、香港特別行政区の行政長官と政府が法に基づいて政治を行うのをしっかりとサポートした。香港特別行政区は法に基づいて高度な自治を実行し、行政管理権、立法権、独立した司法権と終審権を享有し、引き続き従来の資本主義制度と生活様式を維持して変えず、法律は基本的に変えず、引き続き繁栄と安定を保ち、各種事業を全面的に発展させた。「一国二制度」は香港でますます深く根づき、香港同胞を含めた全国人民の心からの支持と国際社会による幅広い評価を獲得した。

 「一国二制度」は新しく誕生した事象として、実践の中でたえず模索し、開拓しながら前進する必要がある。「一国二制度」の香港特別行政区における実践の道のりを振り返って総括し、「一国二制度」の方針・政策を全面的に正しく理解し貫徹することは、国の主権、安全、発展の利益を守ることに役立ち、香港の長期的な繁栄と安定を保つことに役立ち、「一国二制度」の実践を正しい軌道に沿って前進させることに役立つ。

一、香港の円満な祖国復帰の過程

 1980年代の初め、国家の平和統一を実現するため、国の指導者鄧小平は実に独創的な「一国二制度」の科学的構想を提起し、それをまず香港問題の解決に用いた。鄧小平の論述によれば、「一国二制度」とは一つの中国という前提のもとで、国家の主体は社会主義制度を堅持し、香港、澳門(マカオ)、台湾は従来の資本主義制度を長期的に維持し変えないことを意味する。

 1982年12月4日、第5期全国人民代表大会第5回会議が採択し、公布施行した『中華人民共和国憲法』第31条は、「国は必要がある場合特別行政区を設置することができる。特別行政区内で実行する制度は具体的な状況に応じて全国人民代表大会がこれを法律で定める」としている。これは「一国二制度」の構想を具現したもので、中国政府が国家の平和統一を実現したさいに、いくつかの区域で大陸部とは異なる制度や政策を実行する特別行政区を設置することについて直接の憲法上のよりどころをもったものである。深く掘り下げた調査研究を経て、1983年初頭、中国政府は香港問題の解決について次のような「12カ条」の基本方針・政策を策定した。(1)中国政府は1997年7月1日を期して香港地区に対する主権行使を回復する。(2)主権行使の回復後、憲法第31条の規定により、香港に特別行政区を設置する。香港特別行政区は中央人民政府が直轄し、高度の自治権を享有する。(3)特別行政区は立法権、独立した司法権と終審権を享有する。現行の法律、法令、条例は基本的に変えない。(4)特別行政区政府は同地の人々で構成する。政府の主要官僚は同地で選挙あるいは協商により選出し、中央人民政府が委任する。前香港政府各部門の公務、警務のスタッフは留任することができる。特別行政区の各機構はイギリス人やその他外国籍の者を顧問として招聘することもできる。(5)現行の社会、経済制度は変えず、生活様式は変えない。言論、出版、集会、結社、旅行、移住、通信の自由、宗教信仰の自由を保障する。個人の財産、企業の所有権、合法的相続権、および外来投資はいずれも法律の保護を受ける。(6)香港特別行政区は従来どおり自由港、独立関税地区とする。(7)金融センターとしての地位を維持し、引き続き外国為替、金、証券、先物などの市場を開放し、資金の出入りを自由にし、香港ドルは従来どおり流通し、自由に交換できるものとする。(8)特別行政区の財政は独立を維持する。(9)特別行政区はイギリスと互恵経済関係を結ぶことができる。イギリスの香港における経済的利益は保護される。(10)特別行政区は「中国香港」の名義で、単独に世界各国、各地域、および関連国際組織とのあいだで経済、文化関係を維持、発展させ、協定を結ぶことができる。特別行政区政府は香港に出入りする旅行許可証を自ら発行することができる。(11)特別行政区の社会治安は特別行政区政府が責任をもつ。(12)上述の方針・政策は、全国人民代表大会が香港特別行政区基本法によりこれを定め、50年間変えないものとする。

 1982年9月24日、鄧小平が中国を訪れたイギリス首相サッチャー夫人と会見し、中国政府の香港問題に対する基本的立場を説明し、主権問題は話し合う余地のない問題であり、1997年に中国が香港を取り戻すことを指摘した。この前提のもとに、中英両国は香港をどのように移行させればよいか、かつ15年後に香港をどうするかといった問題を解決するため協議を行った。これを皮切りとして中英間の香港問題に関する交渉の幕が切って落とされた。1984年12月19日、中英両国政府は22ラウンドに及ぶ交渉を経て、北京で『中華人民共和国政府とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国政府の香港問題に関する共同声明』(中英共同声明)に正式に調印し、中華人民共和国政府が1997年7月1日に香港に対する主権行使を回復することを確認した。中国政府は共同声明の中でさらに「12カ条」を核心的内容とする香港に対する基本方針・政策を明らかにした。中英共同声明の調印は香港が祖国復帰の前の移行期に入ったことを示している。13年の移行期のあいだ、中国政府は「一国二制度」の方針・政策を確固として守り、香港同胞にしっかり頼り、さまざまな干渉を断固排し、香港に対する主権行使を回復するためのもろもろの準備作業を整然と推し進めた。

 1985年4月10日、第6期全国人民代表大会第3回会議は、中華人民共和国香港特別行政区基本法起草委員会を設立し、香港基本法を起草することを決定した。同年7月起草委員会が発足し、1990年2月に起草の任務を完了した。その期間は4年8カ月に及んだ。香港基本法の起草過程は高度に民主的でオープンであり、幅広い香港同胞が積極的に起草作業に参与した。起草委員会の59名の委員のうち、香港の各分野からきた委員が23名いた。起草委員会はまた、香港の委員に委託して、香港で180名の各界の人々による基本法諮問委員会を発足させ、広く香港社会各界の意見や提言を聴取した。1988年4月、起草委員会は香港基本法(草案)意見聴取稿を公表し、1989年2月、全国人民代表大会常務委員会は香港基本法(草案)を公布し、前後2回にわたり香港と大陸部で広範に意見を求めた。香港および大陸部の社会各界の人々は進んで討論に参加し、そのうち、香港側だけでも8万件近い意見や提案が出された。香港基本法には香港の同胞を含む全中国人民の共通の意志が具現されており、中華民族の幅広い集団的知恵が凝縮されている。

 1990年4月4日、第7期全国人民代表大会第3回会議は『中華人民共和国香港特別行政区基本法』(香港基本法)を採択し、同時に香港特別行政区の設置を決定した。香港基本法は憲法に基づいて制定された基本的法律であり、香港特別行政区で実行する制度と政策を規定している。それは「一国二制度」の方針・政策の法律化、制度化であり、「一国二制度」の香港特別行政区における実践のために法的保障を与えるものである。鄧小平は香港基本法を高く評価し、「歴史的意義と国際的意義をそなえた法律」であり、「創造的な傑作」であると述べている。

 香港基本法の公布後、中国政府は香港特別行政区成立のための準備作業にとりかかった。1993年7月、全国人民代表大会常務委員会は香港特別行政区準備委員会予備工作委員会(予備委員会)を設置し、1996年1月、全国人民代表大会香港特別行政区準備委員会(準備委員会)が発足した。予備委員会と準備委員会は香港の平穏な移行と政権の順調な引き継ぎを実現するために多くの仕事を行った。

 1997年7月1日、中国政府は香港に対する主権行使を回復し、香港特別行政区が成立し、香港基本法が実施に移された。香港は「一国二制度」「香港人による香港の管理」そして高度な自治といった歴史の新紀元に入った。祖国の大きな家庭の一員として、香港同胞と大陸部の民衆がともに偉大な祖国の尊厳と栄光を享受し、中華民族の偉大な復興の責任と使命をともに担うようになった。

二、特別行政区制度の香港での確立

 憲法と香港基本法が定める特別行政区制度は国がある区域に対してとる特殊な管理制度である。この制度のもとで、中央は香港特別行政区に対する全面的な統治権を擁し、それには中央が直接行使する権力も、香港特別行政区に授権して法に基づく高度な自治を実行させることも含まれている。香港特別行政区の高度な自治権に対し、中央は監督権を有する。

 (一)中央は法に基づいて統治権を直接行使する

 憲法と香港基本法の規定によれば、中央が香港特別行政区に対して直接行使する統治権の権力主体には全国人民代表大会および同常務委員会、国家主席、中央人民政府、中央軍事委員会が含まれる。全国人民代表大会は香港特別行政区の設置を決定し、香港基本法を制定し、これによって香港特別行政区で実行する制度を定め、さらに基本法の改正権を有する。全国人民代表大会常務委員会は香港基本法の解釈権、香港特別行政区行政長官の選出方法および立法会の選出方法改正の決定権、香港特別行政区の立法機関が制定した法律に対する監督権、香港特別行政区が緊急事態に入る場合の決定権、ならびに香港特別行政区に対し新たな授権を行う権利を有する。香港特別行政区は中央人民政府の直轄下にあり、行政長官は中央人民政府に対して責任を負い、中央人民政府は行政長官と主要官僚を任命し、法に基づいて香港特別行政区にかかわる外交事務を管理し、行政長官に指令を発する権力を有する。中央軍事委員会は香港駐留部隊を指導し、防衛の職責を履行する、などなど。中央は法に基づいて憲法と香港基本法が付与した全面的統治権と憲制の責任を履行し、香港特別行政区を実効的に統治する。

 ――香港特別行政区の政権機関を設立する。香港復帰の直前、香港特別行政区準備委員会は、香港特別行政区第1期政府推薦委員会を成立させ、推薦委員会は董建華氏を香港特別行政区の第1期行政長官候補者として選出し、中央人民政府はその後直ちに氏を特別行政区初代行政長官に任命した。推薦委員会はさらに臨時立法会の議員も選出した。初代行政長官の董建華氏は終審裁判所(最高裁判所)の裁判官と高等裁判所の首席裁判官を任命した。上述の作業が完成したことで、中央は香港特別行政区の成立と同時に実効的統治を実施することができるようになった。香港の復帰後、中央人民政府は選挙により選出された行政長官候補者の董建華、曽蔭権、梁振英の各氏を、それぞれ第2期から第4期までの行政長官として任命し、さらに歴代香港特別行政区政府の主要官僚の任免を行った。国家指導者が行政長官や政府の主要官僚の就任式に出席し、その宣誓を監督した。

 ――香港特別行政区行政長官と政府が法に基づいて政治を行うのをサポート、指導する。行政長官は毎年中央政府に対して施政報告を行い、基本法の貫徹・執行の状況など中央政府に対して責任を負うべき事項について報告し、国家指導者は基本法の重要な事項の貫徹・執行について行政長官に指導を与える。中央政府は国務院香港・澳門(マカオ)事務弁公室を設置して国務院が香港・澳門(マカオ)に関する事務を扱う実務機関とし、「一国二制度」の方針・政策や中央の関連指示を貫徹・執行する責任を負い、香港特別行政区政府との業務連絡などの職責を担わせるようにした。また、中央人民政府の駐香港特別行政区連絡事務室を中央政府の香港駐在機関とし、外交部駐香港特派員公署や香港駐留部隊との連絡、香港と大陸部各分野との交流・協力の促進、香港社会各界の人々との連係、台湾関連事務の処理などの職責を履行している。

 ――香港特別行政区にかかわる外交事務を責任をもって管理する。第一に、香港特別行政区が対外的な往来や協力を積極的に展開するのをサポートする。香港が適切な身分で国際組織や国際会議に参与することをサポートする。香港が各種の重要な国際会議を招致するのをサポートし、香港が国際コンベンションセンター、地域法律サービス・紛争解決センターを発展させるのをサポートする。香港の人たちを国際組織のポストに推薦し、香港特別行政区のパスポートがその他の国や地域でビザ免除待遇を獲得するようサポートし、香港特別行政区政府の海外駐在経済貿易事務所が業務を展開することをサポートする。第二に、国際条約が香港特別行政区に適用されるなどの条約・法律問題を適切に処理する。香港に新たに適用された多国間条約と改正案は170件を超える。香港に授権して対外的に締結した投資保護、民用航空、税収、司法協力などの対外協定は338件にのぼる。香港が国際公約の履行審議を受けるのに協力する。また、香港が経済、貿易、金融、海運、通信、観光、文化、スポーツなどの分野において、「中国香港」の名義で単独で世界各国、各地域および関連国際組織との関係を保ち発展させ、関連協定に調印、履行することをサポートする。香港が対外的に司法協力を繰り広げることに授権、協力する。第三に、外国が香港特別行政区に領事機関あるいはその他の政府機関、準政府機関を設置するのを審査認可する。目下、外国が香港で合意に基づき設置した総領事館は66カ所、名誉領事は73名にのぼる。第四に、香港同胞の海外における安全と合法的権益を全力で守り、香港にかかわる領事保護活動を積極的に展開する。おおまかな統計によれば、2013年末までに、中国の在外大使館・領事館は、合計1万件以上の香港にかかわる領事保護案件を処理した。第五に、外部勢力が香港の事務に干渉するのを警戒、制止する。香港の事務は中国の内政であり、個別の国の干渉的言動に対しては、中央政府は速やかに外交ルートを通じて交渉を行う。外交部は香港特別行政区に特派員公署を設置し、外交事務を処理している。

 ――香港特別行政区の防衛を責任をもって管理する。中央政府は1996年1月に中国人民解放軍の香港駐留部隊を創設した。1996年12月30日、第8期全国人民代表大会常務委員会第23回会議は『中華人民共和国香港特別行政区駐軍法』を採択した。1997年7月1日午

 前0時、香港駐留部隊は香港に進駐し、法に基づいて侵略に対する防御・抵抗、香港特別行政区の安全保障、防衛事務負担、軍事施設管理、関連渉外軍事事項の処理など、防衛上の職責を履行するようになった。香港駐留部隊は法に基づく駐留、法に基づく軍管理を堅持し、真剣にもろもろの防衛任務を果たし、海・空のパトロール、海・空の事故捜索救助演習、各軍種・兵種による合同演習、駐屯地に跨る機動演習などの軍事行動を組織し、国家の主権と領土の保全に力強い保障を与えている。香港駐留部隊はまた香港社会の公益活動にも積極的に参加し、兵営を開放し、香港青少年軍事サマーキャンプなどのイベントを催し、軍と地域の相互訪問交流を強化し、香港駐留部隊と香港住民の相互理解と信頼を深め、威風堂々とした部隊、文明的な部隊という良好なイメージを広く醸成している。

 ――憲法と香港基本法が付与した全国人民代表大会常務委員会の職権を行使する。第一に、香港特別行政区の立法機関が制定した法律に対して届出審査を行う。2013年末までに香港特別行政区が全国人民代表大会常務委員会に届け出た法律は全部で570件である。第二に、香港基本法付属文書3に列記されている特別行政区において施行される全国的法律についてその追加・削除を行う。現在全部で12の全国的法律が香港基本法付属文書3に繰り入れられ、香港で施行されている。第三に、香港特別行政区に対して新たに授権を行う。1996年、全国人民代表大会常務委員会は、香港特別行政区政府が、その入境事務所を香港特別行政区の国籍申請受理機関に指定し、国籍法とその解釈が定めるところに基づいてすべての国籍申請について処理する権限を授与した。2006年全国人民代表大会常務委員会は、香港が深圳湾通関所と香港側通関所エリアに対して香港特別行政区の法律に照らして管轄を実施する権限を授与した。第四に、香港基本法に対して解釈を行う。全国人民代表大会常務委員会は1999年、2004年、2005年、2011年にそれぞれ、香港の永久住民が香港以外の場所で産んだ中国籍の子女の香港居留権の問題、行政長官と立法会の選出方法改正の法的手続きの問題、補欠選挙で選出された行政長官の任期の問題、国家免除原則の問題などについて、基本法および同付属文書の関連条項に対して解釈を行った。第五に、香港特別行政区の政治制度の発展の問題に対して決定を行う。全国人民代表大会常務委員会は2004年には、香港特別行政区の2007年行政長官と2008年立法会の選出方法の関連問題について決定を行った。そして2007年には、香港特別行政区の2012年の行政長官と立法会の選出方法、および普通選挙の問題について決定を行った。第六に、香港特別行政区の行政長官と立法会の選出方法改正案を承認、届出受理する。2010年、香港特別行政区の2012年行政長官選出方法改正案を承認し、2012年立法会選出方法と表決手続き改正案の届出を受理した。第七に、香港特別行政区の終審裁判所の裁判官と高等裁判所の首席裁判官の任命あるいは罷免についての届出を受理する、などなど。そのほかにも、香港基本法と全国人民代表大会の関連決議に基づいて、1997年7月1日香港基本法施行時に設立した全国人民代表大会常務委員会香港基本法委員会は、大陸部と香港のメンバーによって構成され、香港特別行政区の立法機関が制定した法律が基本法の中央が管理する事務および中央と香港特別行政区の関係にかかわる条項に合致しているかどうか、また付属文書3に列記された香港に適用する全国的法律の追加・削除、および基本法の解釈あるいは改正などの問題について、全国人民代表大会に対して意見を提供する責任を負う。

 (二)香港特別行政区は法に基づいて高度な自治を実行する

 香港特別行政区の成立後、従来の資本主義制度と生活様式は変えず、法律は基本的に変えない。特別行政区は法に基づいて私有財産権を保護し、自由港および単独関税区の地位を維持し、財政の独立を維持し、独立した税収制度を実施し、経済貿易、金融、教育・科学・文化・医療衛生・スポーツなどの政策を自ら制定する、などなど。香港基本法と全国人民代表大会常務委員会の香港の従来の法律の処理に関する決定に基づき、香港の従来の法律、すなわち普通法、衡平法、条例、附属立法、慣習法は、香港基本法に抵触するか香港特別行政区立法機関が改正したもの以外は、保留される。この基礎を踏まえて、香港特別行政区は法に基づいて高度な自治を実行し、行政管理権、立法権、独立した司法権と終審権を十分に行使する。

 香港特別行政区行政長官は特別行政区の首長であり、香港特別行政区を代表して、中央人民政府に対して責任を負うとともに香港特別行政区に対して責任を負う。行政長官は特別行政区政府の首長でもあり、基本法が授与した特別行政区政府への指導や、基本法の責任ある執行、およびその他さまざまな職権を、法に基づいて履行する。行政長官は職権を行使するさいに、中央人民政府が香港基本法の関連事項について出した指令を執行しなければならない。特別行政区政府は香港の永久住民により基本法の関連規定に照らして構成され、政務司、財政司、律政司と各局、処、署を設置し、基本法が定める政策の制定と執行、各種行政事務の管理などの職権を行使する。特別行政区が享有する行政管理権はきわめて広範なもので、経済、教育、科学、文化、スポーツ、宗教、社会サービス、社会治安、出入境管理などの分野をカバーしている。そのほか、中央政府の授権に基づき、特別行政区はさらに一定の対外事務権を享有する。

 香港特別行政区立法会は特別行政区の立法機関であり、選挙により選出され、かつ基本法に基づいて職権を行使する。その職権には、基本法の定めに基づきかつ法定手続きに従って法律を制定、改正、廃止すること、政府の提案に基づき財政予算を審議、採択すること、税収と公共支出を承認することなどが含まれる。特別行政区が享有する立法権もきわめて広範なもので、基本法に基づいて民事、刑事、商事、訴訟手続きなど特別行政区に適用する各方面の法律を制定することができる。特別行政区立法会の定めた法律は全国人民代表大会常務委員会に届け出て受理されなければならない。全国人民代表大会常務委員会は香港基本法委員会に諮問した後、特別行政区の立法機関が制定したいかなる法律であれ、基本法における中央が管理する事務および中央と特別行政区の関係に関する条項に適合しない場合は、いずれもその法律を差し戻すが、改正は行わない。全国人民代表大会常務委員会が差し戻した法律はただちに失効する。

 香港特別行政区の各級裁判所は特別行政区の司法機関であり、法に基づいて独立して裁判権を行使する。特別行政区の成立後、特別行政区の終審権を行使する終審裁判所が設置された。従来香港特別行政区で実行されていた司法体制は、終審裁判所設置により生じた変化以外は、そのまま保留された。従来香港特別行政区で実施されていた普通法と関連の司法原則、制度は、独立した裁判の原則、先例依拠の原則、陪審制度の原則などを含み、引き続き実行されている。特別行政区の裁判所は国防、外交などの国家行為に対して管轄権がなく、香港の従来の法律制度と原則が裁判所の裁判権に課した制限を引き続き維持するほかは、特別行政区のあらゆる案件に対して裁判権を有する。特別行政区の裁判所は案件の審理にあたってその他の普通法が適用される地域の司法判例を参考にすることができ、終審裁判所は必要に応じてその他の普通法が適用される地域の裁判官が審理に参加するよう要請することができる。

三、香港特別行政区の各事業は全面的な進歩を遂げた

香港特別行政区の成立以来、中央政府と祖国大陸部の強力なサポートのもと、特別行政区政府は香港各界の人々を結束、指導して、難問を克服し、奮闘努力し、「一国二制度」の制度の強みを十分に生かして、香港の社会・経済・政治の大局的安定を維持し、各種事業を発展させ、たえず新たな成果と前進を勝ち取ってきた。

 ――香港住民の基本的権利と自由は十分に保護されている。香港住民が法に基づき享有している基本的権利と自由は、憲法と香港基本法、および香港同地の法律によって十分に保護されている。憲法と香港基本法は憲制レベルで香港特別行政区住民の基本的権利と自由を確実に保障している。香港特別行政区はさらに『性差別条例』『人種差別条例』『個人情報(プライバシー)条例』『独立監察警方処理投訴委員会(監警会)条例』『最低賃金条例』などの法令・条例を採択・実施し、香港住民の権利と自由にさらなる保障を与えている。特別行政区政府は、機会均等委員会、個人情報・プライバシー専員公署、提訴専員公署、法律援助署、監警会、法律援助サービス局、女性委員会、貧困扶助委員会など多くの機関を設置して、住民の基本的権利と自由を広め、保護するようサポートしている。

 そのほか、香港基本法は、香港特別行政区住民の中の中国公民が法に基づいて国家事務の管理に参与することを明確に定めている。全国人民代表大会が確定した定員と代表選出方法に基づいて、香港住民のうちの中国公民によって香港特別行政区の全国人民代表大会代表を選出し、最高国家権力機関の仕事に参加している。香港特別行政区ではすでに前後4期にわたる全国人民代表大会代表選挙を行い、幅広い代表性をそなえた全国人民代表大会代表選挙会議による選挙で毎期36名の代表を生み出してきた。中国人民政治協商会議は従来から香港同胞の参加を重視しており、香港人士特別招請セクターのほか、その他のいくつかのセクターでも香港社会の代表的人士を受け入れている。政治協商会議第12期全国委員会の香港人士特別招請セクターには香港地区の委員が124人、その他16のセクターには香港地区の委員が82人いる。

 ――民主的政治制度を法に基づいて着実に推進している。香港の祖国復帰以前は、イギリスが総督を任命派遣し香港で150年余にわたる植民統治を行っていた。復帰後、香港特別行政区の政府と立法機関は同地の人々により構成されるようになった。行政長官は同地で選挙あるいは協商によって選出され、中央人民政府により任命される。立法機関は選挙によって選出される。香港基本法は行政長官と立法会の全議員を最終的には普通選挙によって選出し、それを香港の民主的政治制度発展の法定目標とすることをはっきりと定めている。香港特別行政区が成立して以来、中央政府と香港特別行政区政府は揺るぐことなく香港基本法と全国人民代表大会常務委員会の関連決議の定めに基づき、行政長官と立法会の選出方法を主な内容とする民主的政治制度を順を追って一歩一歩前進、発展させている。

 行政長官選挙における民主の度合いはたえず高まっている。第1期行政長官の人選は400人で構成される推薦委員会の選挙によって生まれ、第2期から第4期までの行政長官の人選は選挙委員会の選挙によって生まれ、選挙委員会の規模は800人から1200人に増加した。選挙委員会は「商工・金融セクター」「専業セクター」「労働者・社会サービス・宗教等セクター」および「立法会議員、区議会議員の代表、郷議局の代表、香港特別行政区の全国人民代表大会代表、香港特別行政区の全国政治協商会議代表」の四大セクターの人士が同じ比率に基づいて構成され、バランスのとれた参与を示し、広範な代表性をそなえている。

 立法会選挙における直接選挙の要素はたえず増加している。1998年の選挙で選出された第1期立法会は、分区直接選挙による議員20名、職能団体選挙による議員30名、選挙委員会選挙による議員10名で構成されていた。2000年の選挙で選出された第2期立法会は、分区直接選挙による議員24名、職能団体選挙による議員30名、選挙委員会選挙による議員6名で構成されていた。2004年の選挙で選出された第3期立法会と2008年の選挙で選出された第4期立法会は、分区直接選挙による議員と職能団体選挙による議員がそれぞれ30名であった。2012年の第5期立法会選挙では、立法会議員の人数が70人に増え、分区直接選挙による議員と職能団体選挙による議員が各35名となったが、そのうち新たに増えた五つの職能団体選挙による議席は区議会議員による指名で、かつ全香港でそれまで職能団体選挙権のなかった選挙民が一人1票の選挙によって選出したものである。

 普通選挙までのタイムテーブルが設定された。2007年12月29日、第10期全国人民代表大会常務委員会第31回会議は、2017年の香港特別行政区第5期行政長官の選挙では普通選挙による選出方法を認めることに決定した。行政長官が普通選挙で選ばれたのち、香港特別行政区立法会の選挙も全議員を普通選挙で選出することを認めるものとし、行政長官と立法会全議員の普通選挙に向けてタイムテーブルが設定された。2013年12月4日から2014年5月3日まで、香港特別行政区政府は2017年の行政長官と2016年の立法会の選出方法を巡って5カ月に及ぶ公開諮問を行い、普通選挙実現に向けた関連手続きを始動させた。

 ――経済は安定した成長を保っている。経済全般は成長を保っている。1997年から2013年まで、香港の域内総生産(GRP)は年平均実質3.4%の伸びで、一人当たり域内総生産はドル換算で累計39.3%の増加となった。国際通貨基金(IMF)の2013年のデータによれば、購買力平価(PPP)で計算して、香港の域内総生産は世界第35位、一人当たり域内総生産は世界で第7位となった。

 国際金融、貿易、海運センターとしての地位は維持されさらに上昇した。香港は重要な国際銀行業務の中心であり、世界で6番目に大きい証券市場であり、世界で5番目に大きい外国為替市場である。国際金融センターのさまざまな世界ランキングにおいて、香港は上位を占めている。香港は世界で9番目に大きい貿易経済体であり、世界中のほとんどすべての国や地域と貿易関係を保っている。香港は世界最大のコンテナ港の一つであり、世界で4番目に大きい船舶登録センターである。香港国際空港は世界でもっとも忙しい空港の一つで、旅客輸送量は世界第5位、貨物輸送量は長年世界一の座を占め続けている。

 伝統的優位産業はたえず強固になり発展している。貿易・物流、観光、金融、専門サービスおよびその他の商工業支援サービス、以上四つの基幹産業は引き続き重要な役割を果たしている。2012年、四大産業の付加価値は香港の域内総生産のうち58%を占め、吸収した就業者数は就業者総数の47.2%を占めた。香港はさらに文化・クリエイト、イノベーション・科学技術、検査認証、環境保護などの産業の育成と発展にも力を入れている。

 ビジネス環境は良好を保っている。香港は世界中が認める最も自由な経済体の一つである。世界銀行の世界185経済体のビジネス環境に関するランキングで、香港は長年上位に位置している。国連貿易開発会議(UNCTAD)の『2013年世界投資報告』によれば、香港は海外からの直接投資導入の面で世界第3位だった。スイスのローザンヌにある経営開発国際研究所(IMD)の『世界競争力年鑑』のランキングで、香港は長年にわたり世界で最も競争力のある経済体の一つに評価されている。

 ――さまざまな社会事業が新たな段階に歩を進めた。教育事業はアジア太平洋地域でトップレベルの地位を保っている。香港特別行政区政府は引き続き教育投資を拡大しており、2014~2015財政年度の教育総支出予算は753億7000万香港ドルで、政府支出のうち最大の項目となっている。2008~2009学年度から公立学校では12年間の無料教育を実施し始めた。イギリスのタイムズ・ハイアー・エデュケーションが発表した2013年アジア大学ランキングでは、香港大学と香港科学技術大学がトップ10に入り、2013~2014年の世界大学ランキングでは、香港大学は43位になった。基礎教育のレベルを反映した「学習到達度調査(PISA)」の2012年国際調査では、香港は引き続きトップレベルを保っている。

 医療衛生事業はたえず進歩している。2014~2015財政年度に医療サービスに費やされる財政予算支出は524億香港ドルで、政府経常支出の17%を占める。香港の住民は平等に低廉な公立病院のサービスを受けることができる。2012年末現在、香港の各種医療衛生機関のベッド数は合計3万5500床である。香港の新生児死亡率は1997年の4‰から2013年の1.6‰に下がり、世界で新生児死亡率が最も低いところの一つとなっている。2013年、香港の男性と女性の平均寿命はそれぞれ80.9歳、86.6歳となったが、これは世界で平均寿命が最も高い地方の一つである。

 文化・スポーツ事業は盛んに発展している。香港には内外の文化が集まっている。特別行政区政府は文化芸術の多元的発展を奨励し、相互交流を促している。香港ではすでに、潮州人の盂蘭盆会、大坑の火竜踊り、大澳の端午の節句ドラゴンボート、長洲島の太平清醮(伝統的な宗教行事)など独自の行事4件が第三次国家級無形文化財リストに加えられた。香港は2008年の北京オリンピック馬術競技の共催についで、2009年には第5回東アジアスポーツ大会を主催した。ウィンドサーフィン、卓球、自転車、武術などの種目の選手たちはオリンピック、世界選手権、アジア選手権などの国際大会でたびたびりっぱな成績を残している。

 社会保障はしだいに整備されてきている。香港特別行政区政府の社会福祉面の支出総額は1997~1998財政年度の204億香港ドルから2014~2015財政年度予算の619億香港ドルとなり、3.03倍に増えた。香港はすでに多層的で多元化した社会保障と福祉サービス体系を形成している。社会サービス機関は計400余あり、登録されているソーシャルワーカーは1998年末の8300名から現在の1万8000名以上に増えた。特別行政区政府はさらに積極的に公共賃貸住宅の建設を進めており、末端市民が公共賃貸住宅に入居するのを助け、市民が住宅購入するのを資金援助している。香港の約半分の市民は政府の提供する住宅、あるいは資金援助された住宅に住んでおり、そのうち200万人以上が公共賃貸住宅に住み、100万人余が政府資金援助で購入した住宅に住んでいる。

 ――対外往来と国際的影響力はさらに一歩拡大した。対外連係はさらに広がりを見せた。2013年6月までに、香港は中国政府代表団の一員、あるいはその他の適切な身分で、国家を単位として参加する41の政府間国際組織の関連行事に参与し、また、主権国家に参加を限定しない37の政府間国際組織に参加した。香港は中国政府代表団のメンバーあるいはその他の適切な身分で関連の国際会議にのべ1400余回参加し、「中国香港」の名義で国家を参加単位としない国際会議にのべ2万回以上参加し、計1000回以上の国際会議を主催あるいは共催してきた。香港特別行政区はすでに42の国とビザ相互免除協定を結び、150の国や地域が特別行政区のパスポート所持者に対し片務的なビザ免除待遇、または現地ビザを与えている。香港特別行政区はさらに多くの国と民用航空輸送、二重課税防止、投資促進保護、刑事司法協力などの協定を結んでいる。香港特別行政区政府はジュネーブ、ロンドン、東京、ニューヨーク、ベルリンなど11カ所に在外経済貿易事務所を設けている。欧州委員会などの6国際組織が香港に代表機関を設けている。

 優れた専門家が国際組織の重要なポストについている。中央政府の強力なバックアップのもと、香港特別行政区政府衛生署元署長のマーガレット・チャン(陳馮富珍)女史が2006年11月世界保健機関(WHO)の総幹事に当選し、2012年5月には順調に再任された。チャン女史は国連成立以来初めて政府間国際組織の最高責任者となった中国人である。また、香港天文台台長の岑智明氏は2010年2月世界気象機関(WMO)航空気象委員会の議長に選出された。

四、中央政府は香港特別行政区の繁栄と発展を全力でバックアップする

 中央政府は香港の経済発展と民生の改善を終始きわめて重視しており、香港がさまざまな困難と挑戦に対応するよう全力でバックアップし、国家の全体的な発展戦略を策定し推進するさい十分に香港の役割を発揮させ、大陸部と香港の交流・協力を積極的に推し進め、香港が繁栄と安定を保つために強固な後ろ盾となっている。

 (一)香港特別行政区がリスクと試練に対処するのを支援する

 ――香港がアジア金融危機に対処するのをバックアップする。1997年アジア金融危機が勃発し、急速に拡大して、香港ドルは国際投機筋の狙い撃ちを受け、香港の金融市場は激動し、米ドルとの連動為替レート制度も衝撃を受け、金融システムの安定は深刻な危機にさらされた。そのような状況下で、中央政府はいかなる代償も惜しまず香港特別行政区の繁栄と安定を維持し、香港特別行政区政府が連動為替レート制度を守るのを断固バックアップし、人民元を切り下げないことを厳かに宣言した。中央政府のバックアップのもとで、香港特別行政区政府は果敢な措置をとり、金融と社会の安定を維持した。

 ――香港が新型肺炎(SARS)に立ち向かうのをサポートする。2003年前半、新型肺炎(SARS)が香港で猛威をふるい、香港同胞の生命と健康を脅かした。またアジア金融危機の影響からまだ脱却しきれていない香港経済をさらに痛めつけ、デフレで市場は低迷し、失業率は8.7%にのぼった。香港同胞の生命の安全を保障し、香港経済を低迷から抜け出させるため、中央政府は直ちに援助の手をさしのべた。大陸部でも抗感染症の医薬品の需要が逼迫している中、中央政府は無償で香港に大量の抗感染症の医薬品と医療設備を供与した。国家の指導者も自ら疫病の被害が甚大な地域と病院に赴き慰問した。その年の6月29日、大陸部と香港特別行政区政府は『大陸部と香港の経済貿易緊密化協定』(CEPA)に調印し、大陸部と香港の貨物貿易、サービス貿易、貿易投資利便化の3分野での開放措置と実施目標を確定し、その後また大陸部住民の香港への「個人旅行」を認めるなどの政策を実施して、香港のSARS危機脱却、経済の成長回復のために「強心剤」を打った。

 ――香港が国際金融危機に対処するのをバックアップする。2008年後半の国際金融危機勃発後、中央政府は香港が受けた影響をきわめて重視し、同年12月、香港の経済金融の安定と発展を支援するための14項目にわたる政策・措置を打ち出した。2009年1月、中央政府は再度中国人民銀行と香港金融管理局が調印した2000億元の人民元建て通貨スワップ協定を含む一連の政策措置を再び打ち出した。それ以後、中央の指導者が香港を訪問したさいにも、前後して香港の経済発展、民生改善、大陸部との交流・協力強化を支援するさまざまな政策・措置を公布した。これらの政策・措置は香港人の自信を強め、リスクに対処する能力を強化し、香港の経済回復を促すために積極的な役割を果たした。

 (二)香港特別行政区が競争力を強化し高めるのをサポートする

 ――香港の国際金融、貿易、海運センターとしての発展をサポートする。香港が個人向け人民元業務、人民元債券の発行、クロスボーダー貿易の人民元決済試行などを展開するのをサポートし、香港の人民元オフショア市場の先行優位の基礎を固めた。大陸部の企業が香港で上場し資金調達することを引き続き奨励し、またその他の香港金融業の発展をサポートする措置を打ち出した。2013年、香港の人民元決済プラットフォームに参加する銀行の数は216行に達し、香港を経由して処理されたクロスボーダー貿易の人民元決済額は3兆8400億人民元に達し、クロスボーダー貿易の人民元決済総額の82.9%を占めた。香港の人民元取引先の預金および譲渡性定期預金残高は1兆元を突破した。香港はすでに世界最大のオフショア人民元業務センターとなっている。2003年CEPAに調印し、2004年1月に施行して後、大陸部は香港特別行政区政府と次々に10の補充協定に調印、施行した。大陸部は香港を原産地とする製品すべてにゼロ関税を実行し、2013年末現在、貨物貿易の方面では、CEPA項目下で大陸部が香港から輸入した商品の金額は71億6100万ドル、特恵関税は39億8300万元であった。サービス貿易の面では、総計403項目の開放措置をとった。世界貿易機関(WTO)の貿易分類基準に照らせば、CEPAおよび同補充協定を通じて、大陸部が香港のサービス貿易に開放したカテゴリーは149に達し、サービス貿易のカテゴリー総数の93.1%に及ぶ。これは現在大陸部が結んでいる開放度の最も高い自由貿易協定である。そのほか、広東省のサービス業が香港に対して開放した先行試行措置は82項目にのぼる。中央政府は『全国沿海港湾配置計画』『「第12次五カ年計画」総合交通輸送システム計画』などの計画を制定するにあたり、常に香港の国際海運センターの強化と発展の需要に配慮してきた。

 ――香港の観光業、小売業、および大陸部の香港系企業の発展をサポートする。中央政府は香港特別行政区政府の求めに応じて、「個人旅行」の試行都市を逐次拡大し、現在すでに49都市に達し、対象人口は3億人を上回った。2013年末までに、大陸部からはのべ1億2900万人が「個人旅行」の方式で香港観光に訪れた。香港特別行政区政府の推計によれば、2012年だけでも「個人旅行」は香港に域内総生産の1.3%相当の付加価値をもたらし、11万以上の雇用を創出し、域内の雇用総数の3.1%を占めた。香港の中小経営者や末端市民にさらに多くの恩恵をもたらすため、中央政府はまた香港住民が大陸部で個人商工経営を行うことを認め、2013年末現在、大陸部で登記された香港の個人商工経営者は5982社、従業者は1万6476人に達した。中央政府は大陸部での香港系加工貿易企業の発展をきわめて重視し、香港系企業の産業構造転換・高度化を積極的にサポートしている。2009年、広東省は香港・澳門(マカオ)・台湾系の企業が国際金融危機に対処し、産業構造の転換・高度化を加速するのをサポートするための30カ条の政策と措置を公布した。2011年12月、中央政府は『加工貿易の産業構造転換・高度化促進に関する指導意見』を公布し、蘇州、東莞などで加工貿易産業の構造転換・高度化のモデル地区と試行都市の建設を展開し、また中西部地区で段階的産業移転の重点受け入れ地44カ所を建設している。

 (三)香港特別行政区が大陸部と各分野の交流・協力を強めるのをサポートする

 香港の復帰以来、中央政府は香港の繁栄と安定を保つことを国家全体の発展戦略の重要な内容としてきた。「第10次五カ年計画」と「第11次五カ年計画」の要綱には、香港の長期的な繁栄と安定を維持し、香港の国際金融、貿易、海運センターとしての地位を強化することがはっきり打ち出されている。「第12次五カ年計画」の要綱では初めて香港・澳門(マカオ)に関する内容を単独の章とし、かつ国家の発展における香港の戦略的地位をより明確にし、国が香港の競争力の強化向上を支援し、香港の新興産業育成をサポートし、大陸部と香港との経済協力を深化させることを強調している。

 ――香港特別行政区と大陸部の経済貿易協力の深化を支援する。CEPAおよび同補充協定の実施は、香港と大陸部の貿易、投資などの面における制度的な障害を大幅に取り除き、両地域の経済貿易関係を深化させ、両地域の協力分野を広げ、両地域の互恵・ウィンウィンを実現した。現在、大陸部は香港の最大の貿易パートナーである。2013年、香港の統計によれば、香港と大陸部の貿易額は3兆8913億香港ドルに達して、1997年に比べて3.49倍に増え、香港の対外貿易総額の51.1%を占めた。一方、香港は大陸部の最も重要な貿易パートナーであり、主な輸出市場の一つである。香港はまた大陸部の最大の海外融資センターでもある。2013年末現在、香港で上場した大陸部の企業は797社に達し、香港上場企業総数の48.5%を占めた。香港で上場した大陸部企業の時価総額は13兆7000億香港ドルに達し、香港株式市場の時価総額の56.9%を占めた。そのほか、大陸部と香港はそれぞれの外来直接投資の最大の供給源でもある。2013年末現在、大陸部の香港への直接投資は3588億ドル以上で、大陸部の対外直接投資総額の60%近くを占めている。大陸部は累計して香港の投資プロジェクト36万件近くを認可し、実行ベースの香港資本は6656億7000万ドルであり、大陸部の累計外資導入の47.7%を占めた。

 ――香港特別行政区が大陸部の各省・自治区・直轄市、特に広東省との地域協力を強化するのをサポートする。中央政府は前後して「広東・香港協力合同会議」「汎珠江デルタ地域協力・発展フォーラム」の設立を承認し、『珠江デルタ地区改革発展計画要綱(2008~2020年)』『横琴全体発展計画』『深圳前海深港現代サービス業協力区全体発展計画』『広州南沙新区発展計画』の実施を承認し、広東省と香港特別行政区が締結した『広東省・香港協力枠組み協定』を承認し、広東省・香港の協力重点分野を明確にし、珠海市の横琴新区、深圳市の前海深港現代サービス業協力区、広州市の南沙新区の三大協力プラットフォームを構築し、広東省と香港の両地域が力を合わせて、さらに総合的競争力をそなえた世界レベルの都市群、世界の先進的製造業、先進的サービス業の基地を築きあげるよう促している。中央政府はまた香港特別行政区が北京市、上海市と地域協力システムを構築することを承認し、香港特別行政区政府が大陸部に事務機構を設置することをサポートした。香港特別行政区政府は北京に事務所を設置したほか、また前後して広州、上海、成都、武漢にそれぞれ経済貿易事務所を設置し、深圳、重慶、福州には連絡所を設置し、香港と大陸部の関係地域の経済貿易協力およびその他の交流を促進した。

 ――香港特別行政区と大陸部の地域にまたがるインフラ建設と人員・貨物の通関がより便利になるようサポートする。「深圳湾自動車道路大橋 」は2007年に竣工開通し、大陸部と香港の間の4本目の陸上通路となった。2009年に着工し2016年完工予定の「香港・珠海・澳門(マカオ)大橋」は東は香港に接し、西は珠海と澳門(マカオ)をつなぎ、珠江の東岸と西岸を結ぶ新たな輸送ルートになる。「広州・深圳・香港高速鉄道」が全線竣工し開通したあかつきには、香港と全国の高速鉄道網がつながることになる。大陸部と香港のすべての水上、陸上貨物輸送の通関所ではすでに検査結果の完全相互承認を実現している。2013年に香港を訪問した大陸部の観光客はのべ4075万人に達し、1997年と比べて17.3倍に増えた。大陸部を訪れた香港同胞の人数も1997年ののべ3977万人から2013年ののべ7688万人に増えた。

 ――香港特別行政区が大陸部と教育、科学技術、文化などの分野における交流・協力を強めるようサポートする。香港と大陸部の大学が地域にまたがって学生を募集することをサポートし、香港と大陸部の大学が共同で学校を運営することをサポートし、両地域の教師、学生間の交流・協力をサポートしている。香港の大学、科学研究機関、香港サイエンスパークなどが国家重点実験室のパートナー実験室、国家工程技術研究センターの香港センター、国家ハイテク産業化基地を設立することをサポートしている。香港の大学が深圳に研究院を設置することをサポートし、香港の科学技術者や科学技術機関が国家科学技術研究開発プロジェクトを申請し、国の重大科学技術プロジェクトの香港への開放を推進することをサポートしている。2005年に大陸部と香港は『大陸部と香港特別行政区の文化関係緊密化協定』に調印し、文化遺産の保存育成、文化産業の発展と交流などの面で全面的な協力を展開している。中央政府のサポートのもと、香港、澳門(マカオ)と広東省は共同で粤劇(えつげき)をユネスコの「世界無形文化遺産代表作リスト」に登録申請し、認定された。中央政府のサポートのもと、香港サイゴン地質公園もユネスコ認定の世界地質公園として申請し認定された。香港と大陸部が映画を共同制作することをサポートし、CEPA調印以来、香港と大陸部は合わせて322本の映画を共同制作したが、それは大陸部が海外と共同制作した映画総数の70%を占めた。両地域がスポーツ人材の交流、育成、トレーニングなどの面で協力を進めることをサポートし、香港のスポーツ選手を全国スポーツ大会などの競技大会に招待している。香港と大陸部が中国医学・薬学の発展、医療衛生管理、感染症発生状況の通報と予防・治療、および突発的公共衛生事件の通報と緊急協力などの面でも突っ込んだ交流・協力を展開するようサポートしている。

 ――香港特別行政区政府が中央政府の関係部門との交流・協力の仕組みを確立することをサポートする。香港特別行政区政府は中央政府の関係部門と異なるレベル、異なる分野での交流・協力の仕組みを確立し、関連作業を協調、推進している。たとえば、CEPA連合指導委員会を設立し、CEPAの実行を監督し、実行過程で現れた問題を解決し、CEPAの内容の補充や改訂などの立案を行う。また、出入境管理、税関、検査・検疫、金融、公共衛生、観光などの分野で協力の仕組みを確立し、互いに状況を交流し、突発的事件を共同で処理し、不法行為を取り締まるなどする。ほかにも、深圳の前海深港現代サービス業協力区、広州南沙新区、珠海横琴新区の開発・建設に対する指導、協調、サービスを強化するため、中央政府は広東省の前海・南沙・横琴の建設を促進する部門間連合会議制度を確立し、香港特別行政区はメンバー部門の一つとなっている。これらの仕組みは香港と大陸部の互恵協力、双方が関心を持つ地域の発展とガバナンスの問題を処理する上で積極的な役割を発揮している。

 (四)香港の基本的生活物資の安全かつ安定した供給を確保する

 自然環境の制約から、香港が必要とする淡水、野菜、食肉類などの基本的生活物資は主に大陸部から供給されている。1960年代の初めに国が香港に生鮮冷凍食品を供給する「3本の貨物急行列車」を開通させ、また「東深供水プロジェクト」(東江・深圳供水プロジェクト、香港に供水する大型プロジェクト)を建設して以来 、中央政府と関係地方は全力で香港への食品、農産物・副産物、水、電力、天然ガスなどの供給を保障してきた。2013年末現在、香港市場の生きたブタの95%、生きた牛の100%、生きたニワトリの33%、淡水魚介類製品の100%、野菜の90%、小麦粉の70%以上は大陸部から供給され、香港へ供給する食品の合格率はずっと比較的高いレベルを保っている。2013年、広東省は香港と新たに改訂した協定によって香港に6億600万立方メートルの淡水を供給した。1994年から、大亜湾原子力発電所が香港に送電し始め、毎年の電力供給量は香港全体の電力消費総量の4分の1を占めている。2013年、大陸部は香港に25億3100万立方メートルの天然ガスを供給した。

五、「一国二制度」の方針・政策を全面的かつ正確に理解すること

 「一国二制度」は画期的な事業であり、中央にとっては国政運営の重要な課題であり、香港と香港同胞にとっては重要な歴史的転換である。香港特別行政区の各事業が全面的な進展をとげると同時に、「一国二制度」の香港での実践も新たな状況と新たな問題にぶつかっている。香港社会の一部の人たちはまだこの重要な歴史的転換に適応できず、とくに「一国二制度」の方針・政策と基本法に対してあいまいな認識や一面的な理解しかもっていない。現在、香港で見られる経済社会や政治制度発展の問題におけるいくつかの正しくない観点は、みなそれと関係がある。ゆえに、「一国二制度」の香港特別行政区での実践を引き続き推進するには、国家の主権、安全、発展の利益を守り、香港の長期にわたる繁栄と安定を維持するという根本的な宗旨から出発し、「一国二制度」の方針・政策を全面的かつ正確に理解し貫徹しなければならず、一つの国という原則の堅持と二つの制度の相違の尊重、中央の権力の維持と特別行政区の高度な自治権の保障、祖国大陸部の強固な後ろ盾の効果を発揮することと香港自らの競争力を高めること、これらを有機的に結びつけ、いかなる時でも一方をおろそかにしてはならないのである。

 (一)「一国二制度」の含む意味を全面的かつ正確に把握する

 「一国二制度」は一つのまとまりをもった概念である。「一国」とは、中華人民共和国の中で香港特別行政区は国の不可分の一部分であり、中央人民政府の直轄下にある地方行政区域であるということを指す。中華人民共和国は単一制度の国家であり、中央政府は香港特別行政区を含むすべての地方行政区域に対して全面的な統治権をもっている。香港特別行政区の高度な自治権は固有のものではなく、その唯一の源は中央政府からの授権である。香港特別行政区が享有する高度な自治権は完全な自治ではなく、また分権でもなく、中央が授与する地方事務の管理権である。高度な自治権の限度は、中央がどれだけの権力を授与するかによって決まり、香港特別行政区はそれに応じた権力を享有することになり、いわゆる「余剰権力」は存在しない。同時に、憲法は国家の根本的制度が社会主義制度であることを明確に定め、また国家の基本的制度、指導的核心、指導思想などの制度と原則も定めている。「一国」の原則を堅持するにあたって最も根本的なのは、国の主権、安全、発展の利益を守り、国家が実行する根本的制度およびその他の制度と原則を尊重することである。

 「二制度」は、「一国」の中で国家の主体は社会主義制度を実行し、香港など一部の区域は資本主義制度を実行することを指す。ゆえに、「一国」は「二制度」を実行する前提と基礎であり、「二制度」は「一国」に従属しそこから派生するとともに、「一国」の中に統一されている。「一国」の中の「二制度」は決して同じウェイトではなく、国家の主体は必ず社会主義制度を実行しなければならず、これは今後とも変わらない。この前提のもとで、実際から出発し、香港などの一部の区域の歴史と現実の状況を十分に考慮して、それらの区域が長期にわたり資本主義制度を維持することを認める。したがって、国家主体が社会主義制度を堅持することは、香港が資本主義を実行し、繁栄と安定を保つための前提と保障である。香港が従来の資本主義制度を引き続き保ち、香港基本法に基づいて「香港人による香港の管理」と高度な自治を実行するには、必ず「一国」の原則を堅持するという前提のもとに、国家主体が実行する社会主義制度を十分に尊重し、特に国家が実行する政治体制およびその他の制度と原則を尊重しなければならない。大陸部は社会主義制度を堅持すると同時に、香港が実行する資本主義制度を尊重し包容しなければならず、また香港の経済発展や社会管理などの面での成功経験を参照することもできる。「一つの国」の中に「二つの制度」がある以上、互いに尊重し合い、互いに参照し合うのでなければ、長期にわたって調和的に共存し、ともに発展することはできない。

 (二)断固として憲法と香港基本法の権威を守る

 憲法と香港基本法はともに香港特別行政区の憲制の基礎を構成している。憲法は国家の根本的法律として、香港特別行政区を含む中華人民共和国の領土範囲内で最高の法的地位と最高の法的効力をそなえている。香港基本法は憲法に基づいて制定されたもので、香港特別行政区の制度を定めた基本的法律であり、香港特別行政区での憲制的法律の地位をそなえている。香港特別行政区の制度と政策はいずれも香港基本法の規定を根拠とする。香港特別行政区の立法機関が制定するいかなる法律も、みな香港基本法と抵触してはならない。香港特別行政区の行政、立法、司法行為はすべて香港基本法に合致しなければならない。香港特別行政区の個人およびすべての組織・団体は必ず香港基本法を活動の準則としなければならない。同時に、香港基本法は全国的法律として、全国的範囲で適用される。

 香港基本法の諸規定を全面的に把握し、全体として理解しなければならない。香港基本法のすべての規定は香港特別行政区制度の有機的な構成部分であり、各条文間は孤立しておらず、互いに関連しており、香港基本法の一つ一つの条文は必ず全体的な規定の中に置いて理解し、香港特別行政区制度の体系の中に置いて把握しなければならない。香港基本法施行の実践が物語るように、香港基本法の具体的条文を孤立して理解し、一つの方面を強調してもう一つの方面を見落とすなら、紛らわしい解釈ないしは認識上の偏向が生じ、香港基本法の施行は深刻な打撃をこうむるだろう。香港基本法の各項の規定を全面的に理解すれば、特別行政区制度の各構成部分が互いに組み合わさって有機的な全体を構成し、香港住民の基本的権利と自由、香港の繁栄・安定を保障する役割を果たしていることが見てとれるはずである。

 全国人民代表大会および同常務委員会の香港基本法に対する改正権と解釈権を尊重し、擁護しなければならない。香港基本法は、香港基本法の解釈権は全国人民代表大会常務委員会に属し、改正権は全国人民代表大会に属すると定めている。香港基本法は同時に次のように定めている。香港特別行政区の裁判所は案件を審理するにあたって、基本法における香港特別行政区の自治範囲内の条項について解釈することができ、またその他の条項についても解釈できる。このような解釈権は全国人民代表大会常務委員会の授権によるものである。もし香港特別行政区の裁判所が案件を審理するさいに、香港基本法の中央政府の管理する事務または中央と香港特別行政区との関係に関する条項について解釈する必要があり、また当該条項の解釈が案件の判決に影響する場合、当該案件に対し上訴できない最終判決を行う前に、香港特別行政区終審裁判所は全国人民代表大会常務委員会に関係条項について解釈するよう要請しなければならない。全国人民代表大会常務委員会が解釈を加えた条項を香港特別行政区の裁判所が引用する場合、全国人民代表大会常務委員会の解釈に準拠しなければならない。これは香港特別行政区の法的地位と一致している。全国人民代表大会常務委員会が法に基づいて基本法の解釈権を行使することは「一国二制度」と香港の法治を守るための当然の道理であり、特別行政区が基本法を実行することに対する監督であるだけでなく、また特別行政区が高度な自治を実行することに対する保障でもある。

 香港基本法の施行にかかわる制度や仕組みを整備することは、香港基本法の権威をよりよく維持するのに役立つ。香港基本法の施行以来、それにかかわる一連の制度や仕組みがすでに成立し、整備されてきた。たとえば、行政長官の選出方法および立法会の選出方法の変更の面では、行政長官が全国人民代表大会常務委員会に報告を提出し、全国人民代表大会常務委員会が決定を下し、立法会が採択し、行政長官が同意し、全国人民代表大会常務委員会が承認あるいは受理するという「5ステップ」の法的手続きを確立した。基本法の解釈の面では、全国人民代表大会常務委員会は自発的に法律を解釈し、行政長官は国務院に報告を提出し、かつ国務院から全国人民代表大会常務委員会に法律の解釈を仰ぎ、特別行政区終審裁判所から全国人民代表大会常務委員会に法律の解釈を仰ぐ、などの関連手続きと作業の仕組みが確立した。特別行政区の立法の面では、全国人民代表大会常務委員会が特別行政区の法律について受理する作業手順を明確にした。特別行政区と大陸部の司法協力の面では、民事・商事の司法文書を互いに送達し、仲裁の裁決や一部の民事・商事の判決を互いに認可、執行するなどの一連の処置について合意した。行政長官が中央政府に責任を負う面では、行政長官が中央に施政報告を行う制度を確立した。 「一国二制度」の実践がたえず前進するのにつれて、香港基本法の施行はますます深まり、香港基本法の施行にかかわる制度や仕組みも必然的にさらに完全なものとなることが求められている。特に、香港の長期にわたる安定維持を考慮し、香港基本法に定められた中央に属する権力をきちんと行使し、中央と香港特別行政区の関係をしっかりと法制化、規範化の軌道に乗せて運行させることが必要である。

 (三)愛国者を主体とする「香港人による香港の管理」を堅持する

 「香港人による香港の管理」には限界と基準がある。すなわち鄧小平が強調したように、愛国者を主体とする香港人によって香港を管理しなければならない。国家に対して忠誠を尽くすことは政治を行う者が守り従うべき基本的な政治倫理である。「一国二制度」のもとで、行政長官、主要官僚、行政会議のメンバー、立法会の議員、各級裁判所の裁判官とその他の司法要員などを含む香港の管理者は、香港基本法を正しく理解し貫徹実行する重任を負っており、国家の主権、安全、発展の利益を守り、香港の長期にわたる繁栄と安定を維持する職責を担っている。愛国は香港の管理者主体に対する基本的な政治的要求なのである。もし香港の管理者が愛国者を主体とせず、あるいは香港の管理者主体が国家と香港特別行政区に忠誠を尽くさなければ、「一国二制度」の香港特別行政区における実践は正しい方向からそれてしまうだろうし、国家の主権、安全、発展の利益を確実に守ることができないのみならず、香港の繁栄・安定と広範な香港人民の福祉も脅かされ、損なわれることになるだろう。

 愛国者が香港を管理することには法的なよりどころもある。憲法と香港基本法が香港特別行政区の設置を定めているのは、国家の統一と領土保全を擁護し、香港の長期にわたる繁栄と安定を保持するためである。だから、香港基本法は次のように定めている。特別行政区の行政長官、主要官僚、行政会議のメンバー、立法会議長および立法会の80パーセント以上の議員、終審裁判所と高等裁判所の首席裁判官はすべて、外国に居留権をもたない香港特別行政区永久住民の中の中国公民でなければならない。行政長官、主要官僚、行政会議のメンバー、立法会の議員、各級裁判所の裁判官とその他の司法要員が就任するさいには、法に基づいて中華人民共和国香港特別行政区基本法を擁護し、中華人民共和国香港特別行政区に忠誠を尽くすことを宣誓しなければならない。また、行政長官は基本法の執行について中央と特別行政区に責任を負わなければならない。これは国家主権を具現する要請であり、香港管理者の主体が国家に忠誠を尽くすことを確実に保障し、また彼らが中央政府と香港社会の監督を受けること、国家と香港特別行政区および香港住民に対してしっかり責任を負うことを求めている。

 (四)行政長官と特別行政区政府の法に基づく施政を断固支持する

 行政長官は、特別行政区と特別行政区政府の「両者の首長」として、香港が「一国二制度」の方針・政策と基本法を貫徹実行するための筆頭責任者である。中央政府は終始揺るぐことなく、行政長官と特別行政区政府が法に基づいて政治を行い、香港社会の各界の人々を結束し、力を集中して経済を発展させ、適切かつ効果的に民生を改善し、順を追って徐々に民主を推し進め、包容・互助、調和を促すことをサポートしている。

 経済を発展させ、民生を改善することは、広範な香港市民の共通の願いであり、香港特別行政区が社会矛盾を解決し、大局の安定を維持する重要な基礎であり、行政長官と特別行政区政府が法に基づいて政治を行ううえでの主要な任務である。現在、香港は発展の肝心な時期にあり、試練とチャンスが共存している。香港はチャンスをとらえ、経済社会の発展の中に存在する際立った問題の解決に力を入れ、自らの競争力をさらに強化し高め、経済社会の安定的発展を維持し、香港住民の民生と福祉を増進しなければならない。祖国大陸部は終始香港の強固な後ろ盾である。

 中央政府は香港特別行政区が基本法の定めに従い順を追って漸進的に香港の実情に適う民主政治制度を発展させることを引き続き支持している。行政長官は最終的には広範な代表性をもつ指名委員会により民主的手続きを踏んで指名されたのちに普通選挙で選出されるようになり、立法会は最終的には全議員が普通選挙によって選出されるようになる。これは中央政府による厳粛な約束であり、かつ香港基本法の規定と全国人民代表大会常務委員会の関連決定の中に体現されている。中央政府は心から香港の民主的政治制度が前進するよう支援している。行政長官と立法会の普通選挙制度は、必ず国の主権、安全、発展の利益に適い、香港の実情に適い、社会各階層の利益をともに配慮し、バランスのとれた参与の原則を体現し、資本主義の発展に役立ち、特に香港特別行政区が中央人民政府の直轄下にある地方行政区域としての法的地位に適わなければならず、香港基本法と全国人民代表大会常務委員会の関連決定の定めに適わなければならない。普通選挙で選出される行政長官の人選は必ず国を愛し、香港を愛する人物でなければならない。香港社会の各界が上述の原則に照らし、具体的に討論し、共通認識を結集できるならば、行政長官と立法会の全議員は最終的に普通選挙によって選出するという目標を実現することができるだろう。

 香港は自由で開放的で多元的な社会であり、また中外が溶け合った国際都市でもある。社会の調和と安定を守ることは、香港社会の各階層、各界、各方面および外来投資者の共通の利益に適うだけでなく、香港の国際金融、貿易、海運センターとしての地位を維持する重要な条件でもある。中央政府は香港社会の各界が包容・互助、法治尊重、秩序維持の優れた伝統を発揚し、国家の根本的利益と香港の長期的な利益をよりどころとし、大同を求めて小異を残し、互いに理解し助け合い、国を愛し香港を愛する旗じるしのもとで最も幅広い団結を実現し、社会の調和と安定をたえず強化することを引き続き奨励しサポートする。

 (五)大陸部と香港の交流・協力を引き続き推進する

 香港と大陸部の交流・協力は日増しに緊密になっており、香港と大陸部の優位性の相互補完、共同発展の道を広げた。一方では、香港は大陸部の広大な市場と豊かなな要素資源を十分に利用し、国家の急速な発展のチャンスをとらえ、その中から巨大な発展空間と尽きることのない発展の動力を獲得している。また一方では、香港は既存の優位性を引き続き強化し高めることを通じて、国家が外資、人材を導入し、国際的な先進技術と管理経験を吸収し参考にする窓口の役割、国家の「海外へ出て行く」戦略の橋渡しの役割、大陸部の経済成長パターンの転換加速を推進する役割、そして大陸部の経済社会の管理方式を改革する手本としての役割、などを果たしている。

 香港と大陸部の往来が密接になるにつれ、両地域の民衆の間の相互理解はしだいに深まり、香港同胞の国家に対するアイデンティティーと求心力はたえず強まった。香港同胞は国家の発展により関心をもち、国家の現代化建設に積極的に参与すると同時に、大陸部の貧困扶助、教育、婦女児童保護などの公益事業に熱心に取り組んでいる。大陸部が甚大な自然災害を被ったとき、香港同胞はいつも援助を惜しまず、災害救助と災害後の再建を全力で支援し、大陸部の民衆とともに苦難に打ち勝ってきた。これらは香港同胞と大陸部の民衆の間にある血肉の情を十分に示している。

 中央政府は香港特別行政区政府が中央政府の関係部門、大陸部の関係地方とさらに密接な業務連係を確立するようサポートし、香港同胞が大陸部の民衆とより緊密な交流を展開することをサポートし、香港が国家の改革全面深化と対外開放の中で独自の役割を演じることをサポートし、香港と大陸部がより広範でより深い交流・協力を進めるよう引き続き促し、心を合わせて中華民族の共同のふるさとを建設することをサポートしてゆく。

結びの言葉

 「一国二制度」の香港特別行政区での実践は全世界の認める成功を収めた。実践によって十分明らかになったとおり、「一国二制度」は歴史上残された香港問題の最も優れた解決案であり、また香港が復帰後も長期にわたる繁栄と安定を保つ最もよい制度的処置である。「一国二制度」の事業を揺るぎなく推進することは香港同胞を含む全中国人の共通の願いであり、国家と民族の根本的利益に適い、香港の全般的、長期的な利益に適い、また外来投資者の利益にも適う。

 「一国二制度」の事業を引き続き推進する新たな長い道のりにおいては、「一国二制度」の方針・政策を全面的かつ正確に理解し、貫徹することを堅持し、「一国二制度」の実践が正確な軌道に沿って前進することを確かに保障するだけでなく、さらに香港が発展の中で直面する困難と挑戦に積極的、効果的に対応しなければならない。内外の経済環境の深刻な調整局面や変化に直面して、香港は競争力を高めなければならない。香港の長年積み重なった深層レベルの矛盾が日増しに顕著になってきており、社会各界は知恵と力を結集してそれらを解決しなければならない。香港と大陸部の交流・協力がたえず深まるには、両地域の意思疎通と協調を強化し、民衆の切実な問題を適切に処理しなければならない。同時に、外部勢力が香港を利用し中国の内政に干渉する企みを終始警戒し、ごく一部の人間が外部勢力と結託して「一国二制度」の香港での実施を妨害、破壊することを警戒、制止しなければならない。これらの問題を研究しきちんと解決し、「一国二制度」の香港特別行政区での実践を深化することは、「一国二制度」の強大な生命力をさらに明らかに示すに違いない。

 現在、全国人民は自信に満ちて「二つの100年」の奮闘目標と中華民族の偉大な復興という中国の夢の実現のために努力奮闘している。「一国二制度」の香港特別行政区における実践をたえず充実、発展させ、香港の長期的な繁栄と安定を維持することは、中国の夢の重要な構成部分であり、中国の特色ある社会主義制度を完全なものにし発展させ、国のガバナンス体系とガバナンス能力の現代化を推進するための必然的な要求でもある。中央政府はこれまで同様、香港特別行政区政府と広範な香港同胞とともに、「一国二制度」の方針・政策と香港基本法を全面的かつ正確に貫徹し、香港特別行政区の各事業の発展をさらに推進してゆく。われわれは、香港特別行政区が必ずや「一国二制度」の方針・政策と香港基本法の軌道に沿ってしっかりと前進し続け、祖国大陸部とともに中華民族のより良い未来を切り開いていくものと固く信じている。



付 録

 (一)香港経済社会の発展に関する状況

 1. 香港の域内総生産(GRP)は1997年の1兆3700億香港ドルから2013年の2兆1200億香港ドルに増加し、年平均実質成長率は3.4%だった。

 2. 香港特別行政区政府の財政準備金は1997年末の4575億香港ドルから2014年3月末の7557億香港ドルに増え、65.2%増加した。

 3. 香港の外貨準備高は1997年末の928億ドルから2013年末の3112億ドルへ、3.35倍に増えた。

 4. 国際通貨基金(IMF)の2013年のデータによれば、購買力平価(PPP)に換算して、香港の域内総生産は世界第35位、一人当たり域内総生産は世界で第7位となっている。

 5. 香港は重要な国際銀行業務の中心であり、世界で上位100位に入る銀行のうち73行が香港に営業拠点をもっている。

 6. 香港はアジアで2番目、世界で6番目に大きい証券市場であり、2013年末の香港株式市場の時価総額は24兆400億香港ドルに達した。香港での新規公開株による資金調達総額は1665億香港ドルにのぼり、世界第2位を占めた。

 7. 香港は世界で5番目に大きい外国為替市場であり、2013年の外為市場の一日当たり取引高は2746億ドルであった。

 8. 世界経済フォーラム(WEF)が2012年10月に公布した『2012年金融発展度リポート』(The Financial Development Report)によれば、香港の金融業発展指数は世界第1位であり、ロンドンのシティが2013年9月に公布した「世界金融センター指数」(Global Financial Centres Index, GFCI)の順位では、香港は世界第3位となっている。

 9. 香港は世界で9番目に大きい貿易経済体である。香港は専門貿易会社約10万社を擁し、世界中のほとんどすべての国や地域と貿易関係を結んでいる。

 10. 2013年香港の対外商品貿易は総額7兆6200億香港ドルに達し、1997年の3兆700億香港ドルに比べ2.48倍に増えた。

 11. 香港は世界で最も重要な外来直接投資目的地の一つとなっている。国連貿易開発会議(UNCTAD)の『2013年世界投資報告』によれば、香港は外来直接投資導入の面で世界第3位である。2013年末現在、香港で登記している海外企業は1997年末より83%増の9258社である。2013年6月現在、外資の香港地区本部は1997年より52.7%増の1379社である。2013年6月現在、外資の香港地区駐在事務所は1997年より52.5%増の2456社である。

 12. 香港は世界最大のコンテナ輸送港の一つであり、2013年には標準コンテナで合計2228万8000個を取り扱い、1997年より52.9%増えた。

 13. 香港は世界で4番目に大きい船舶登録センターであり、2013年末現在、香港で登録された船舶は2327艘、総トン数は8643万トンにのぼった。

 14. 香港国際空港は世界でもっとも忙しい空港の一つで、世界の100社以上の航空会社がここで営業している。旅客輸送量は世界第5位、貨物輸送量は長年世界一の座を占め続けている。2013年の航空貨物・旅客輸送量はそれぞれ1998年に比べ2.53倍、2.18倍に増加した。

 15. 2013年の「世界国際海運センター競争力指数」によれば、香港は660余の港湾都市(エリア)の中で第3位を占めている。

 16. 香港特別行政区の2014~2015財政年度の教育に費やす経常支出予算は政府の経常支出総額の21.8%、671億3000万香港ドルで、教育に費やす総支出予算は政府支出総額の18.3%、753億7000万香港ドルであり、政府支出のうち最大の項目となっている。2008~2009学年度には、すでに公立学校で12年間の学費免除教育を実施し始めた。

 17. 香港で同地の学位を授ける大学は復帰前の12校から17校に増え、うち8大学は政府の財政支援を受けている。イギリスのタイムズ・ハイアー・エデュケーションが発表した2013年アジア大学ランキングでは、香港大学と香港科学技術大学がトップ10に入り、2013~2014年の世界大学ランキングでは、香港大学は第43位になった。

 18. 2000年の第2四半期から2013年の第3四半期にかけて、香港の短大以上の学歴を有する就業人口が全就業人口に占める割合は23.7%から35.1%に上昇し、そのうち大学の学位を有する就業人口が全就業人口に占める割合は14.5%から26%に上昇した。基礎教育レベルを反映する「国際学習到達度調査(PISA)」が公表した2012年の世界順位では、香港は引き続き上位にランクされており、イギリスのピアソングループが2012年に発表した世界教育レベルランキングでは、香港は世界第3位を占めた。

 19. 2014~2015財政年度に香港特別行政区政府の医療サービスへの財政予算支出は524億香港ドルになり、政府経常支出の17%を占める。

 20. 2012年末現在で、香港の各種医療衛生機関のベッド数は合計3万5500床で、そのうち90%以上の経費を政府財政から支給している公営医療系統は、現在38カ所の公立医院・医療機関を含めて、48の専門外来と73の普通外来を有しており、計6万4000名の従業者、2万7000床のベッド数があり、香港全体の9割の入院医療と3割の外来医療サービスを提供している。

 21. 香港の新生児死亡率は1990年の4‰から2013年の1.6‰に下がり、世界で新生児死亡率が最も低い地方の一つとなっている。2013年、香港の男性と女性の平均寿命はそれぞれ80.9歳、86.6歳で、これは世界で平均寿命が最も高い地方の一つである。

 22. 2013年6月までに、香港は中国政府代表団の一員、あるいはその他の適切な身分で、国家を単位として参加する41の政府間国際組織の関連活動に参加した。その中には国際通貨基金(IMF)、世界銀行、国際民間航空機関(ICAO)、国連食糧農業機関(FAO)、国際刑事警察機構(ICPO)などがある。また、世界貿易機関(WTO)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、世界気象機関(WMO)など、主権国家に参加を限定しない37の政府間国際組織に参加した。香港は中国政府代表団の一員あるいはその他の適切な身分で関連の国際会議にのべ1400回以上参加し、「中国香港」の名義で国家を参加単位としない国際会議にのべ2万回以上参加した。

 23. 香港特別行政区は外国政府要員や学術界、シンクタンクなどの影響力ある人々の訪問を年平均100回以上受け入れている。多くの国の元首や政府首脳は香港を訪れるか香港での国際会議に出席したことがある。香港は1000回以上国際会議を主催あるいは共催してきた。その中には、国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会、世界貿易機関第6回閣僚級会議、国際電気通信連合(ITU)の世界電気通信展、国際海事機構(IMO)外交大会、世界知的所有権機関(WIPO)の地域フォーラム、アジア太平洋郵便連合(APPU)の執行理事会年次総会などがある。

 24. 香港特別行政区はすでに42の国とビザ相互免除協定を結び、150の国や地域が特別行政区のパスポート所持者に対し片務的ビザ免除あるいは現地ビザの待遇を与えている。

 25. 香港特別行政区は67の国と民用航空輸送および民用航空輸送国境通過協定を結び、35の国や地域と二重課税防止協定を結び、17の国と投資促進保護協定などを結び、30の国と刑事司法協力協定を結び、19の国と犯罪人引き渡し協定を結び、13の国と受刑者引き渡し協定を結んでいる。

 26. 香港特別行政区政府はジュネーブ、ブリュッセル、ロンドン、トロント、東京、シンガポール、シドニー、ワシントン、ニューヨーク、サンフランシスコ、ベルリンなどに11の在外経済貿易事務所を設け、香港と関係諸国や地域との経済貿易、投資利益および広報活動などを促進している。

 27. 外国が香港と協議して設置した総領事館は66カ所、名誉領事は73名である。欧州委員会、国際決済銀行(BIS)、国際通貨基金(IMF)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国際金融公社(IFC)、ハーグ国際司法裁判所などの6国際組織が香港に代表機関を設けている。¥

 (二)大陸部と香港との交流・協力に関する状況

 1. 大陸部は香港の最大の貿易パートナーである。香港の統計によれば、2013年、香港と大陸部の貿易額は3兆8913億香港ドルに達して、1997年の3.49倍となり、香港の対外貿易総額の51.1%を占めた。

 2. 香港は大陸部の最も重要な貿易パートナーであり、主な輸出市場の一つである。税関総署の統計によると、2013年、大陸部の香港への輸出額は3847億9000万ドルに達し、大陸部の輸出総額の17.4%を占めた。

 3. 大陸部は香港の外来直接投資の最大の供給源である。香港の統計によれば、2013年末現在、大陸部の香港への直接投資は約3588億ドルを超え、大陸部の対外投資総額の60%近くを占めた。

 4. 香港は大陸部の最大の外来直接投資の供給源である。商務部の統計によると、2013年末までに、大陸部は累計して香港の投資プロジェクト36万件近くを認可し、実行ベースの香港資本は6656億7000万ドルであり、大陸部の累計外部投資導入の47.7%を占めた。香港はまた大陸部の最大の対外投資目的地、融資センターである。2013年末現在、大陸部の香港に対する非金融類累計直接投資は3386億6900万ドルになり、大陸部の対外非金融類累計直接投資総額の59%を占めた。

 5. 2013年末現在、香港で上場した大陸部の企業は797社に達し、香港上場企業総数の48.5%を占めた。香港で上場した大陸部企業の時価総額は13兆7000億香港ドルに達し、香港株式市場の時価総額の56.9%を占めた。

 6. 2013年末、香港の人民元取引先の預金および譲渡性定期預金残高は前年同期比46%増の1兆500億元に達した。人民元の貸出残高は1156億元であり、未償還の人民元債券残高は3100億元に達した。

 7. 大陸部と香港の科学技術協力委員会は香港の大学、科学研究機関、香港サイエンスパークを拠点として、国家重点実験室のパートナー実験室16カ所、国家工程技術研究センター香港研究センター1カ所、国家ハイテク産業化基地2カ所をそれぞれ設立し、香港の大学が深圳に研究院を設置することをサポートし、国の重大科学技術プロジェクトの香港への開放を推進している。

 8. 2010年以来、香港の科学技術者と科学技術機関はすでに国の973計画(国家重点基礎研究発展計画、1997年3月より実施)のプロジェクト4件の申請に成功し、研究助成金1億6000万元を獲得した。

 9. 2013年12月に月面探査機「嫦娥3号」に搭載され、月面着陸に成功した月面ローバー「玉兎号」には、香港理工大学の専門家が開発したカメラ指向システムが使われている。

 10. 2013年末現在、香港は中国科学院の院士(アカデミー会員)と中国工程科学院の院士(アカデミー会員)計39人(外国籍アカデミー会員も含む)を擁しており、香港の88人の科学者が主要メンバーとしてそれぞれ国家自然科学賞、国家科学技術進歩賞、科学技術発明賞など44件の国家科学技術賞を獲得した。

 11. 2012~2013学年度に香港の大学で学ぶ大陸部の学生は約2万2000人であり、2013年10月現在、大陸部の大学で学ぶ香港の学生は1万4000人以上に達した。

 12. 香港大学、香港中文大学、香港理工大学、香港バプティスト大学、香港シティ大学などはそれぞれ大陸部の大学と共同で学校運営をしたり、高等教育機関を設立したりしている。広東、北京、上海、浙江、福建などの省・直轄市と香港は400余組の姉妹校関係を結んでいる。

 13. 2009年、香港、澳門(マカオ)と広東省は共同で粤劇(えつげき)をユネスコの「世界無形文化遺産代表作リスト」に登録申請し、認定された。

 14. 2011年9月、中央政府のサポートのもとで、香港サイゴン地質公園はユネスコ認定の世界地質公園に申請し認定された。

 15. CEPA 調印以来、香港と大陸部は322本の映画を共同制作したが、それは大陸部が海外と共同制作した映画総数の70%を占め、そのうち興行収入が1億元を超えた映画は計61本以上にのぼった。

 中華人民共和国国務院報道弁公室 2014年6月

 2014年初版発行

 「中国網日本語版(チャイナネット)」 2014年6月19日