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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 投資関連協定の締結促進等投資環境整備に向けたアクションプラン(成果の検証と今後の方針)

[場所] 
[年月日] 2021年3月19日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

「投資関連協定の締結促進等投資環境整備に向けたアクションプラン」
(成果の検証と今後の方針)

令和3年3月

総務省
法務省
外務省
財務省
農林水産省
経済産業
省国土交通省


1 成果の検証

 我が国は、2016年に発表した「投資関連協定の締結促進等投資環境整備に向けたアクションプラン」に示された指針に基づき、最終年となる昨年末までの過去5年間にわたり、投資環境整備、とりわけ、投資関連協定の締結を集中的に促進してきた。今般、以下のとおりその成果を検証した。

(1)投資関連協定

・ 本アクションプラン策定以降、20の投資関連協定(45の国・地域)が新たに発効済み又は署名済みとなり、また、16の協定について新規交渉が開始された。その結果、現在交渉中の協定も含めると、最終的には計94の国・地域がカバーされ、我が国の対外直接投資残高の約93%*1*をカバーすることとなる。

・ 本アクションプランにおいて設定された100の国・地域という目標値には到達しなかったが、発効済み又は署名済みの投資関連協定が我が国の対外直接投資残高に占める割合が2016年の約35%から約93%となったこと、TPP11及びRCEPといったマルチの協定、日EU・EPA及び日英EPAといったハイレベルの協定の署名・締結を我が国が主導したこと等を踏まえれば、大きな成果を上げることができたと考えられる。

・ 我が国の発効済み又は署名済みの協定のうち、「自由化型」は34本*2*、「保護型」は20本あり、「自由化型」協定が占める割合は国・地域数ベースで約75%、我が国対外直接投資残高比で約80%となった。

・ 我が国経済界が重視する、内国民待遇、最恵国待遇、資金移転の自由及び一時的なセーフガード措置に関する規律等については、全ての投資関連協定で規定された他、公正衡平待遇及びISDS条項についても、ほとんどの投資関連協定で規定されている。

{図表は省略}

(2)その他

・ 多数国間フォーラムにおいては、2017年に開始した国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)第3作業部会及び投資紛争解決国際センター(ICSID)においてISDS改革に係る議論を行っている。また、2020年には、エネルギー憲章条約(ECT)近代化交渉及び世界貿易機関(WTO)投資円滑化交渉が開始した他、経済協力開発機構(OECD)、アジア太平洋経済協力(APEC)及び国連貿易開発会議(UNCTAD)においても、貿易及び投資関連措置に係る議論が進められており、我が国は、これらの議論に積極的に参加してきている。

・ 電子商取引分野を始めとする新たな企業活動についても、経済連携協定において、サービス章や電子商取引章という形で規律した。2016年以降、我が国は、TPP11や日EU・EPAといったハイレベルな協定を締結したほか、2019年には、日米デジタル貿易協定を締結した。さらに、2020年には、EU離脱後の英国との間で新たな貿易・投資の枠組みを規定する日英EPAを締結し、RCEP協定に署名した。

・ 2016年以降、投資環境整備意見交換会等、定期的に経済界との意見交換を実施し、我が国経済界のニーズの把握に努め、投資関連協定や多数国間フォーラムにおける議論に活かしてきた。

2 今後の方針

 2016年以降、世界経済の更なるグローバル化が進んだ一方で、保護主義的な動きも広がりつつある。2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大は、一部で保護主義的な動きを強めることにもつながっている。

 このような中、我が国は、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋」の実現も念頭に、引き続き自由貿易を推進するとともに、自由で公正なルールに基づく国際経済秩序の形成により積極的に取り組んでいく必要がある。投資関連協定の締結促進は、このような取組の一環であり、海外における我が国投資家の適切な保護の確保や、他国の投資家と比較して劣後しないビジネス環境の整備等を通じ、我が国企業のグローバル・ビジネスの展開にも寄与するものである。

 なお、安全保障と経済を横断する領域で様々な課題が顕在化している中、投資家の保護と安全保障等に係る国家の規制権限との適切なバランスの確保等の観点も十分に踏まえた上で、戦略的な対応をしっかり行っていく必要がある。このような考え方の下、これまでの成果(上記1)を踏まえつつ、今後は以下の方針に基づき、引き続き投資関連協定の締結促進等投資環境の整備に努める。

(1)投資関連協定

 投資関連協定については、本アクションプランにおいて100の国・地域という目標値が設定されたことを踏まえつつ、今後の投資先としての潜在力の開拓や他国の投資家と比較して劣後しないビジネス環境の整備等に向け、引き続き戦略的観点及び質の確保の観点を考慮した取組を進める。

① 現在交渉中の協定については、様々な外交機会も活用しつつ、引き続き早期妥結に取り組む。また、交渉に当たっては、相手国の事情等を考慮しつつ、可能な限り高いレベルの質の確保に努める。

② 新規の投資関連協定については、我が国経済界の具体的ニーズや相手国の投資協定に関する方針を踏まえながら、交渉開始に向けた努力を行う。その際、今後の投資先として潜在性を有する国との交渉開始の可能性につき、中南米及びアフリカを中心に検討する。

③ 締結済みの投資関連協定の見直しについては、これらの協定締結後の投資状況や、我が国経済界の具体的なニーズ、投資関連協定に係る国際的な議論の状況等を踏まえ、どのような対応が適切か関係国と協議を行う。協定の見直しに当たっては、経済・社会状況の変化を踏まえつつ、投資に係る手続の透明性及び予見可能性の向上、行政手続や要件の簡素化・迅速化等も含め、企業のニーズにも対応した制度設計に努める。

④ 協定の実効性の向上の観点からは、一部の経済連携協定に置かれているビジネス環境整備委員会や合同委員会等を活用する。また、官民連携や相手国政府の能力構築支援の観点からも、ODAや公的金融による取組と投資関連協定との相乗効果についても考慮する。締結済み協定の更なる利活用促進に向け、経済関係団体等とも連携しつつ、我が国在外公館や日本貿易振興機構(JETRO)等も活用し、投資関連協定に関する積極的な情報発信に努める。

(2)その他

・ 我が国にとって望ましい投資環境を形成するとともに、自由で公正なルールに基づく国際経済秩序を強化していく観点から、ISDS改革を含め、今後とも多数国間フォーラム等における関連の議論に貢献していく。

・ 2020年に開始したECT近代化交渉及びWTO投資円滑化交渉については、我が国国益を踏まえ、引き続き適切に対応する。

・ 我が国在外公館やJETRO等を活用した情報提供や、相談窓口の設置等を通じ、海外に進出する我が国企業活動の支援にも引き続き取り組む。

・ 我が国企業との意見交換を引き続き継続的に行い、投資環境整備について連携を継続していく。

(了)


{*1* 「直接投資残高地域別統計(資産)(全地域ベース)(2019年末)」(財務省)から算出。以下同じ。}
{*2* 日EU・EPA及び日英EPAは投資保護規律を含まない。}